(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】フロントコンタクト間に透明伝導膜を有する結晶系太陽電池およびそのような太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20220929BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L31/04 262
H01L31/06 300
(21)【出願番号】P 2019546075
(86)(22)【出願日】2017-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2017078699
(87)【国際公開番号】W WO2018087201
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-06
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519163924
【氏名又は名称】マイヤー・ブルガー(ジャーマニー)ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シュペルリッヒ・ハンス-ペーター
(72)【発明者】
【氏名】エアフルト・グンター
(72)【発明者】
【氏名】グローセ・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ・マルセル
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-164544(JP,A)
【文献】特表2013-524514(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第03831857(DE,A1)
【文献】特開2012-069538(JP,A)
【文献】特開2016-012590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のドーピングが施されている、半導体材料(10)の第1の領域(101)、および第2のドーピングが施されている、前記半導体材料(10)の第2の領域(102)を有しそれにより前記第1の領域(101)と第2の領域(102)との間には、pn接合が存在し、結晶系太陽電池の受光面の第1の横方向に広がった領域(103)内で、前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)と直接または間接的に導電接触する、第1の非透光性の導電材料から成る、最低でも一つのフロントコンタクト(12)および、該結晶系太陽電池の裏面の第1の横方向に広がった領域(105)内で、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)と直接または間接的に導電接触する、第2の非透光性の導電材料から成る、最低でも一つのバックコンタクト(16)を有している、結晶系太陽電池(1)において、該結晶系太陽電池の受光面側では、第2の横方向に広がった領域(104)内だけに、第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)が、前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)に沿って配置されて、前記最低でも一つのフロントコンタクト(12)に導電接続されていること、前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)と、前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)との間に、電荷キャリアが通り抜けることができる第1の表面パッシベーション膜(11)が配置されていることによって、前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)が、前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)と間接的な導電接触状態にあること、および、該結晶系太陽電池の受光面の前記第2の横方向に広がった領域(104)が、該結晶系太陽電池の受光面の前記第1の横方向に広がった領域(103)とは異なり、
前記第1の透光性の導電材料が、アルミニウム・ドープされた酸化亜鉛またはボロン・ドープされた酸化亜鉛で
あることを特徴とする、結晶系太陽電池(1)。
【請求項2】
前記第1の表面パッシベーション膜(11)が、前記フロントコンタクト(12)と前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)との間にも配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の結晶系太陽電池。
【請求項3】
該結晶系太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域内に、電気絶縁材料から成る薄膜(15)が、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)に沿って配置されていることによって、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)が、前記第2の横方向に広がった領域(106)内においては電気的に絶縁されていること、該結晶系太陽電池の裏面の前記第2の横方向に広がった領域が、該結晶系太陽電池の裏面の前記第1の横方向に広がった領域とは異なることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶系太陽電池。
【請求項4】
該結晶系太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域(106)内に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)に沿って配置されて、前記最低でも一つのバックコンタクト(16)に導電接続されていること、前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)と直接または間接的な導電接触状態にあること、該結晶系太陽電池の裏面の前記第2の横方向に広がった領域(106)が、該結晶系太陽電池の裏面の前記第1の横方向に広がった領域(105)とは異なることを特徴とする、請求項1または2に記載の結晶系太陽電池。
【請求項5】
前記第2の透光性の導電材料が、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)と前記バックコンタクト(16)との間にも配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の結晶系太陽電池。
【請求項6】
前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)と、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)との間に、および/または、前記バックコンタクト(16)と前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)との間に、電荷キャリアが通り抜けることができる第2の表面パッシベーション膜(18)が配置されていることを特徴とする、請求項4または5に記載の結晶系太陽電池。
【請求項7】
前記前記第2の透光性の導電材料が、アルミニウム・ドープされた酸化亜鉛またはボロン・ドープされた酸化亜鉛であることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一つに記載の結晶系太陽電池。
【請求項8】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)が2・10
3~100・10
3S/mの範囲内の導電率を有する第1の透光性の導電材料から成り、かつ/または、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が2・10
3~100・10
3S/mの範囲内の導電率を有する第2の透光性の導電材料から成る、請求項4~
7のいずれか一つに記載の結晶系太陽電池。
【請求項9】
前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)および/または前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、10から100nmまでの範囲内の厚さを有することを特徴とする、請求項4~
8のいずれか一つに記載の結晶系太陽電池。
【請求項10】
前記第1および前記第2の非透光性の導電材料が、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、バナジウム、および、これらを組み合わせたものおよびこれらの合金から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一つに記載の結晶系太陽電池。
【請求項11】
前記第1および/または前記第2の表面パッシベーション膜(11,18)が、1~20nmまでの範囲内の厚さを有し、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、および酸化アルミニウムから成る群から選択される材料から成ることを特徴とする、請求項6に記載の結晶系太陽電池。
【請求項12】
第1の横方向に広がった領域が上面図において太陽電池(1)の受光面の総面積に占める比率は、1.5から3.0%までの範囲内にあることを特徴とする、請求項1~
11のいずれか一つに記載の結晶系太陽電池。
【請求項13】
結晶系太陽電池(1)の製造方法であって、
-第1の領域(101)と第2の領域(102)とを有する半導体材料(10)を準備する工程、前記第1の領域(101)および前記第2の領域(102)には、前記第1の領域(101)と前記第2の領域(102)との間にpn接合が存在するように、ドーピングが施され、
-前記半導体材料(10)の第1の表面(101a)の上に、またはこれに接して、電荷キャリアが通り抜けることができる第1の表面パッシベーション膜(11)を作製する工程、前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)だけが前記第1の表面(101a)と境を接し、
-前記半導体材料(10)の前記第1の表面(101a)の第1の横方向に広がった領域(103)内に位置する前記第1の表面パッシベーション膜(11)の上に、第1の非透光性の導電材料を塗布して、前記第1の非透光性の導電材料と、前記半導体材料(10)の前記第1の表面(101a)の前記第1の横方向に広がった領域(103)内に位置する前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)との間に、最低でも一つの直接的または間接的な導電接触部(12)を作製する工程、
-前記第1の非透光性の導電材料を塗布した後に、前記半導体材料(10)の前記第1の表面の第2の横方向に広がった領域内に位置する前記第1の表面パッシベーション膜(11)の上に、第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)を施す工程、前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)と前記第1の非透光性の導電材料との間の導電接触部、ならびに、前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)と前記半導体材料(10)の前記第1の領域(101)との間の導電接触部を、作製する工程、前記第2の横方向に広がった領域(104)が、前記第1の横方向に広がった領域(103)とは異なり、および、
-前記半導体材料(10)の第2の表面(102a)の第1の横方向に広がっている領域(105)内に、第2の非透光性の導電材料を塗布して、前記第2の非透光性の導電材料と、前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)の前記第1の横方向に広がった領域(105)内に前記半導体(10)の前記第2の領域(102)との間に、最低でも一つの直接的または間接的な導電接触部(16)を作製する工程、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)だけが前記第2の表面(102a)と境を接し、また前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)が、前記半導体材料(10)の前記第1の表面(101a)とは反対側に位置することを有しており、
前記第1の透光性の導電材料が、アルミニウム・ドープされた酸化亜鉛またはボロン・ドープされた酸化亜鉛であり、
アルミニウム・ドープされた酸化亜鉛のアルミニウム
源がトリメチルアルミニウムであり、および、ボロン・ドープされた酸化亜鉛のボロン
源がジボランである方法。
【請求項14】
前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)の前記第1の横方向に広がった領域(105)内に、前記第2の非透光性の導電材料を塗布する工程の前または後に、前記半導体材料(10)の前記第2の領域(102)が、第2の横方向に広がった領域(106)内においては電気的に絶縁されているように、前記半導体材料(10)の前記第2の表面の前記第2の横方向に広がった領域(106)内に位置する前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)に沿って、電気絶縁材料から成る薄膜(15)を施す工程、前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)の前記第2の横方向に広がった領域(106)が、前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)の前記第1の横方向に広がった領域(105)とは異なることを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)の前記第1の横方向に広がった領域(105)内に、前記第2の非透光性の導電材料を塗布する工程の前または後に、前記半導体材料(10)の前記第2の表面の第2の横方向に広がった領域(106)内に位置する前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)に沿って、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)を施す工程、前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)と第2の非透光性の導電材料との間の導電接触部、ならびに、前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)と前記半導体材(10)の前記第2の領域(102)との間の導電接触部を、作製する工程、前記第2の表面(102a)の前記第2の横方向に広がった領域(106)が、前記第2の表面(102a)の前記第1の横方向に広がった領域(105)とは異なることを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記半導体材料(10)の第2の表面(102a)の第1の横方向に広がった複数の領域(105)内に、前記第2の非透光性の導電材料を塗布する工程の前、および、前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)を施す工程の前に、前記半導体材料(10)の前記第2の表面(102a)の上に、またはこれに接して、電荷キャリアが通り抜けることができる第2の表面パッシベーション膜(18)が作製されることを特徴とする、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)に沿って、第1の反射防止膜(14)が、および/または、前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)に沿って、第2の反射防止膜(20)が、施されることを特徴とする、請求項
15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)および前記第1の反射防止膜(14)、および/または、前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)および前記第2の反射防止膜(20)が、一つの設備内で、真空状態が途切れることなく、施されることを特徴とする、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)および/または前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、プラズマゾーン内にプラズマが存在しているPECVDプロセスを利用して析出されることを特徴とする、請求項
15または16に記載の方法。
【請求項20】
前記PECVDプロセスの間に、マイクロ波によりエネルギがプラズマ中に導入されることを特徴とする、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)および/または前記第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、前記半導体材料(10)の被覆されなければならないそれぞれ表面(101a,102a)からプラズマゾーンが空間的に後退されているPECVDプロセスを利用して析出されることを特徴とする、請求項
19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記半導体材料(10)の被覆されなければならない表面(101a,102a)が、直線運動を行いながら前記プラズマソーンを通過すること特徴とする、請求項
19または20に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の透光性の導電材料が、アルミニウム・ドープされた酸化亜鉛またはボロン・ドープされた酸化亜鉛であって、前記PECVDプロセスが、亜鉛の供給元としてのジメチル亜鉛、またはジエチル亜鉛、酸素の供給元としての一酸化二窒素および/または酸素、および不活性ガスおよび/または窒素を出発材料として用いて、実施されることを特徴とする、請求項
20~22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
アルミニウム・ドープされた酸化亜鉛のアルミニウム源としてトリメチルアルミニウムが使用され、および、ボロン・ドープされた酸化亜鉛のボロン源としてジボランが使用されること特徴とする、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
第1の横方向に広がった領域が、上面図において結晶系太陽電池(1)の受光面の総面積に占める比率は、1.5から3.0%までの範囲内にあることを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項26】
半導体材料(10)の第1の表面の第2の横方向に広がった領域(104)において前記第1の表面パッシベーション膜(11)に第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)を塗布した後、200~560℃の範囲の温度の温度処理を行うことを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【請求項27】
第1の反射防止膜(14)および/または第2の反射防止膜(20)を施した後、200~560℃の範囲の温度の温度処理を行うことを特徴とする、請求項
17に記載の方法。
【請求項28】
前記温度処理が、放射照度が1000W/m
2以上の強さで通常の(白色)光を用いた数秒から数分間にわたる薄膜構造全体の照射を含むことを特徴とする、請求項
26または27に記載の方法。
【請求項29】
100~400℃の範囲において、遠隔プラズマを用いるPECVD法を使用して、半導体材料(10)の第1の表面の第2の横方向に広がった領域(104)内だけに、選択的に、第1の透光性の導電材料から成る薄膜が形成されることを特徴とし、かつ、
半導体材料(10)の第1の表面の第2の横方向に広がった領域において前記第1の表面パッシベーション膜(11)に第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)を形成した後、200~560℃の範囲の温度の温度処理を行うことを特徴とする、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光面側の各電気接点の間に透明伝導膜を有している、半導体材料から成る結晶系太陽電池、ならびにそのような太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来型のSi太陽電池は、単結晶系またはほかにも多結晶系の半導体材料の、逆ドーピングが施された二つの領域から成っている。そこでは、半導体材料中にドーパントを導入することによって、または、第1の半導体材料の薄膜の上に同じ半導体材料から成る別の薄膜を施すことによって、第2の薄膜が、第1の薄膜のドーピングとは逆のドーピングを有することによって、両方の領域間のpn直接接合を作製している。そのような太陽電池は、異なる半導体材料から成る、またはn型薄膜とp型薄膜との間にさらにもう一つの真性薄膜を有している(pin接合)ヘテロ・セルとは異なり、ホモ・セルとも呼ばれる。これについては構造を異にする半導体、例えば結晶質ではなく非晶質の半導体も既に、異なる半導体材料であると解釈される。太陽電池の逆ドーピングが施されたこれらの領域は電気的に接触されるが、多くの太陽電池においては、それぞれの接点が半導体材料の互いに反対側に位置する表面上に、すなわち太陽電池の受光面と裏面とに配置されている。太陽電池の性能を向上するために、半導体材料のこれらの表面は、誘電体薄膜を用いてパッシベーションされるケースがままあるが、これらのパッシベーション膜は、太陽電池の受光面側、すなわち光源と向き合った側では透明であり、多くは反射防止効果を示すか、または反射防止膜がこれに補足される。
【0003】
大抵の場合は金属である電気接点の非透光性導電材料によって、半導体材料の内部への光の射し込みが妨げられてしまうのをごく僅かだけにとどめるために、少なくとも太陽電池の受光面側では、これらの電気接点が局所的にしか構成されない。そのためにパッシベーション膜に導電材料が析出されて、引き続いて導電材料がパッシベーション膜を貫通して半導体材料まで拡散されること(ファイヤースルー、焼成)によって、電気接点は作製される。この場合は導電材料と半導体材料との間に直接接触状態が生じる。ファイヤースルーは、560℃超から600℃までの範囲内の温度で実施される。
【0004】
幾つかのタイプの太陽電池(例えばPERC(Passivated Emitter Rear Contact)セル)では、太陽電池の裏面の接触が局所的に限定して行われる一方で、これらの接触部以外の裏面の横方向に広がったそれぞれの部分については、誘電性パッシベーション膜が施されたままとなっている。幾つかの太陽電池では、裏面全体にパッシベーション膜が施されて、膜を貫通する電荷キャリアのトンネル効果により、電気接点が実現されている(TOPCon(Tunnel Oxide Passivated Contact)セル)。これらの対策は、導電材料(金属)と半導体材料間の接触面における電荷キャリアの再結合の低減に資するものである。
【0005】
半導体材料の表面の界面準位の数と作用を最小限化するために、太陽電池のエミッタ、すなわち両半導体領域の内の一方のドーピングはそれほど強くは行われないが、しかしながらそれにより領域の導電率は低下する。高ドーピングしたエミッタでは、表面抵抗率が50から100Ω(Ω/□)までの範囲内に位置するのに対して、弱ドーピングしたエミッタは、100から200Ω(Ω/□)までの範囲内の表面抵抗率を有している。この問題を解決するためのアプローチ策の一例として、電気接点の真下に位置するエミッタの横方向に広がった小さな部分だけに、この部分の表面抵抗率が約60Ω(Ω/□)となるように、強めにドーピングが行われている。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0012179号(特許文献1)に記載される別のアプローチ策では、導電性を示す光を透過する材料、例えば透明導電性酸化物(TCO:transparent conducting oxide)が半導体材料の表面全体に析出されて、それに続いて反射防止膜が施され、その表面に金属が析出されて、引き続いてこの金属が反射防止膜を貫通するようにファイヤースルーが行われる。得られた構造は、太陽電池の受光面上では面全体にわたり導電性を示す光を透過する材料により半導体材料の接触が行われ、この材料もまた、金属接点と導電接続されていることを特徴とする。
【0007】
しかしながらファイヤースルーは、薄膜の積層構造の著しい熱負荷の原因となり、それにより、半導体材料の内部に望まれざる効果を来すこともあれば、導電性を示す光を透過する材料の劣化を来すこともあり、その結果最終的には、半導体材料の電気接触状態を改善する余地にも太陽電池の性能にも、制約を生じている。さらにファイヤースルー工程は、高コストと多大な作業時間が関わる。その上に、導電性を示す光を透過する材料上の金属の付着性に関しても、長期安定性の低下を招き、最終的には太陽電池の故障につながる問題が観察されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2010/0012179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、従来技術のこれらの短所を低減するとともに、特に太陽電池の性能向上と製造コストの低減を可能とする、太陽電池およびそのような太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に記載の結晶系太陽電池および請求項11に記載の方法により解決される。有利な展開構成例および実施形態は、それぞれの従属クレームに見出される。
【0011】
本発明にしたがった結晶系太陽電池は、半導体材料の第1のドーピングが施された第1の領域と、半導体材料の第2のドーピングが施された第2の領域と、太陽電池の受光面の第1の横方向に広がった領域内で半導体の第1の領域と直接または間接的に導電接触する、第1の非透光性の導電材料から成る、最低でも一つのフロントコンタクトと、太陽電池の裏面の第1の横方向に広がった領域内で半導体の第2の領域と直接または間接的に導電接触する、第2の非透光性の導電材料から成る、最低でも一つのバックコンタクトとを有している。光もしくは電磁放射線は、最低でも太陽電池の受光面を介して太陽電池の半導体材料の内部に到達する。太陽電池の受光面および裏面は、太陽電池の互いに反対側に位置する面である。第1のドーピングと第2のドーピングは、第1の領域と第2の領域との間にpn接合が存在するように選定されている。
【0012】
本発明によれば、太陽電池の受光面側では、半導体材料の第1の領域に沿って、第2の横方向に広がった領域内だけに、第1の透光性の導電材料から成る薄膜が配置されて、少なくとも一つのフロントコンタクトに導電接続されている。そこでは、第1の透光性の導電材料から成る薄膜と半導体材料の第1の領域との間に、電荷キャリアが通り抜けることができる第1の表面パッシベーション膜が配置されている。それにより、第1の透光性の導電材料から成る薄膜は、半導体材料の第1の領域と間接的に導電接触した状態にある。太陽電池の受光面の第2の横方向に広がった領域は、太陽電池の受光面の第1の横方向に広がった領域とは異なる。極薄に構成されると好適である表面パッシベーション膜により、半導体材料の表面の化学的パッシベーションが改善される、および/または、半導体材料の表面の界面準位の数および/または効果が低減される。
【0013】
本出願の趣意において、直接的な導電接触とは、二つの導電材料または導電領域間の直接的な物理的オーム接触であると解釈されるものである。これに対して間接的な導電接触とは、上述の両方の導電材料または導電領域の間に、同様に導電性を示すさらにもう一つの材料またはさらにもう一つの領域が位置している、もしくは、誘電性を示すさらにもう一つの材料またはさらにもう一つの領域が位置しているが、誘電性材料もしくは誘電性領域が、電荷キャリアがこれを通り抜けることができるように、構成されている、接触状態であると解釈される。特に誘電性材料または誘電性領域は、電気キャリアがこれを貫通してトンネル効果を示すことができるように、薄く構成されたものであるとよい。
【0014】
太陽電池の受光面または裏面の横方向に広がった領域とは、太陽電池の受光面もしくは裏面が成す平面内に、ある一つの定義済みの面積を有しているような、太陽電池の領域であると解釈されるものである。太陽電池の厚さ方向に沿って、すなわち太陽電池の受光面と裏面とを鉛直に結んだ向きに沿って、太陽電池の受光面もしくは裏面から半導体材料のそれぞれの表面まで延びている。横方向に広がった領域は、受光面もしくは裏面を上面図において、例えば円形、角張った形状、または線形等々、任意の形状を有しているとよい。
【0015】
透光性材料とは、太陽電池の半導体材料によって吸収されるような波長を持つ光もしくは電磁放射線を、殆ど吸収したり反射したりすることなく、透過させるような材料であると解釈される。これに対して非透光性材料とは、太陽電池の半導体材料によって吸収されるような波長を持つ光もしくは電磁放射線を、殆ど透過させることなく、吸収したり反射したりするような材料であると解釈される。
【0016】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜により、太陽電池の性能が向上するが、なぜなら薄膜は、太陽電池の受光面の第2の横方向に広がった領域内に位置する半導体材料の第1の領域から、電荷キャリアを集めて、半導体材料の第1の領域と比べてより高い横方向への導電率によって、従来の技術水準において可能となっているものよりも良好なかたちで、最低でも一つのフロントコンタクトへと運ぶからである。
【0017】
半導体材料として、シリコン、特に単結晶シリコンが導入されると好適である。
【0018】
第1の表面パッシベーション膜は、最低でも一つのフロントコンタクトと半導体材料の第1の領域との間にも配置されていると好適である。
【0019】
好ましい一実施形態においては、太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域内に、電気絶縁材料から成る薄膜が、半導体材料の第2の領域に沿って配置され、それにより半導体材料の第2の領域は、第2の横方向に広がった領域内においては、特に最低でも一つのバックコンタクトを太陽電池の外部の電気端子に接続する電気接続線に対して、電気絶縁されている。太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域は、太陽電池の裏面の第1の横方向に広がった領域とは異なる。
【0020】
別の好ましい実施形態においては、太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域内に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜が、半導体材料の第1の領域に沿って配置されて、最低でも一つのバックコンタクトに導電接続されている。そこでは第2の透光性の導電材料から成る薄膜が、半導体材料の第2の領域と直接または間接的に導電接触した状態にある。太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域は、太陽電池の裏面の第1の横方向に広がった領域とは異なる。
【0021】
最後に記載した実施形態においては、第2の透光性の導電材料が、好適にも半導体材料の第2の領域とバックコンタクトとの間にも、すなわち太陽電池の裏面の第1の横方向に広がった領域にも、配置されている。
【0022】
太陽電池の受光面との関係で記載したのと同様に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜と半導体材料の第2の領域との間に、および/またはバックコンタクトと半導体材料の第2の領域との間に、電荷キャリアが通り抜けることができる第2の表面パッシベーション膜が配置されていると好適である。この場合も、上記で記載した長所がもたらされる。
【0023】
太陽電池の裏面にも透光性の導電材料が配置されている実施形態は、受光面側からも、また裏面側からも、光が半導体材料の内部に射し込むことができる、両面受光型太陽電池にとり非常に有利である。
【0024】
第1の透光性の導電材料、および場合によっては第2の透光性の導電材料は、インジウム・スズ酸化物、フッ素スズ酸化物、アルミニウム・および/またはボロン・ドープ酸化亜鉛、およびアンチモン・スズ酸化物から成る群から選択されたものであると好適である。そこでは第1の透光性の導電材料および場合によっては第2の透光性の導電材料が、2・103から100・103S/mまでの範囲内の導電率、もしくは1・10-4から50・10-4Ωcmまでの範囲内の抵抗率(表面抵抗率<10Ω/□)を有している。
【0025】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜、および/または第2の透光性の導電材料から成る薄膜は、10から100nmまでの範囲内の、非常に好ましくは10から50nmまでの範囲内の厚さを有していると好適である。第2の透光性の導電材料から成る薄膜が、最低でも一つのバックコンタクトと半導体材料との間にも配置されているケースでは、薄膜の厚さが、太陽電池の裏面の第1の横方向に広がった領域内においては、それよりも低減されたものであってもかまわない、例えば太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域内の薄膜の厚さの最低で10%だけしかなくてもかまわない。
【0026】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜および第2の透光性の導電材料から成る薄膜は、同じ材料から成るものであっても、異なる材料から成るものであってもかまわないし、またその厚さも同じであっても異なっていてもかまわない。
【0027】
第1および第2の透光性の導電材料は、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、バナジウム、および、これらを組み合わせたものおよびこれらの合金から成る群から選択されたものであると好適であるが、両者の材料は同じであっても異なっていてもかまわない。第1および第2の透光性の導電材料は、高い導電率、優れた長期安定性、および他のアッセンブリ、例えばソーラーモジュールに接続する際の適性を特色としている。
【0028】
第1および/または第2の表面パッシベーション膜は、1から20nmまでの範囲内の厚さを有し、また、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、および酸化アルミニウムから成る群から選択されている材料から成ると好適である。第1および第2の表面パッシベーション膜の材料および/または厚さは、同じであっても、互いから異なっていてもかなわない。
【0029】
半導体材料の第1の領域は、n導電性を示すようにドーピングされた、100から200Ω(Ω/□)までの範囲内の表面電気抵抗率を有する太陽電池のエミッタであると好適である。このケースでは半導体材料の第2の領域がp型ドープされて、太陽電池のベース(バルク)を形成する。
【0030】
別の実施形態においては、半導体材料の第1の領域がn型ドープされて、太陽電池のベース(バルク)を形成する一方で、半導体材料の第2の領域はp型ドープされて、太陽電池のエミッタを形成し、120から200Ω(Ω/□)までの範囲内の表面電気抵抗率を有している。この実施形態においては、上述のように第2の透光性の導電材料が太陽電池の裏面の第2の横方向に広がった領域内に、または太陽電池の裏面の第1および第2の横方向に広がった領域内に、配置されると非常に有利である。
【0031】
本発明にしたがった結晶系太陽電池の本発明にしたがった製造方法は、第1の領域と第2の領域とを有する半導体材料を準備する工程、半導体材料の第1の表面の上に、またはこれに接して、電荷キャリアが通り抜けることができる第1の表面パッシベーション膜を作製する工程、半導体材料の第1の表面の第1の横方向に広がったそれぞれの領域内に位置している第1のパッシベーション膜の上に、第1の非透光性の導電材料を塗布して、半導体材料の第1の表面の第1の横方向に広がった領域内に、第1の非透光性の導電材料と半導体材料の第1の領域との間の、最低でも一つの直接的または間接的な導電接触部を作製する工程、半導体材料の第1の表面の第2の横方向に広がった領域内に位置している第1の表面パッシベーション膜の上に、第1の透光性の導電材料から成る薄膜を施す工程、および、半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域内に、第2の非透光性の導電材料を塗布して、半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がったこれらの領域内に、第2の非透光性の導電材料と半導体材料の第2の領域との間の、最低でも一つの直接的または間接的な導電接触部を作製する工程を有している。そこでは半導体材料の第1の領域および第2の領域に、第1の領域と第2の領域との間にpn接合が存在するように、ドーピングが行われている。第1の表面は、半導体材料の第1の領域だけがこれと境を接することを特徴とし、製造されることになる太陽電池のいずれにせよ光源と向き合っている側の面、すなわち受光面を具現するものである。第2の表面は、半導体材料の第2の領域だけがこれと境を接することを特徴とし、製造されることになる太陽電池の光源とは反対側の面、すなわち裏面を具現する。したがって半導体材料の第2の表面は、半導体材料の第1の表面とは反対側に位置している。
【0032】
本方法の過程で、好適には、第1の透光性の導電材料から成る薄膜を塗布する工程の間に、薄膜と第1の非透光性の導電材料との間の導電接触部、ならびに第1の透光性の導電材料から成る薄膜と半導体材料の第1の領域との間の導電接触部が作製される。
【0033】
第1の透光性の導電材料を塗布する工程は、本発明によれば、第1の非透光性の導電材料を塗布する工程の後に、すなわち最低でも一つのフロントコンタクトの材料を析出した後に、実施される。半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域の内部に、第2の非透光性の導電材料を塗布して、第2の非透光性の導電材料と半導体材料の第2の領域との間の、最低でも一つの直接的または間接的な導電接触部を作製する工程、すなわち、最低でも一つのバックコンタクトの製造は、フロントコンタクトを析出して製造する工程および第1の透光性の導電材料から成る薄膜を施す工程の前、または後、またはその間に実施されるとよい。第2の非透光性の導電材料を塗布する工程は、フロントコンタクトを析出して製造する工程および第1の透光性の導電材料から成る薄膜を施す工程の前、またはその間に実施されると好適である。
【0034】
任意選択で、第1の非透光性の導電材料を塗布した後には、温度処理が実施される。温度処理により、第1の非透光性の導電材料の、その下側に位置する第1の表面パッシベーション膜の内部への、またはこれを貫通する拡散が引き起こされて、それに伴い、半導体材料の第1の領域に対する直接的な導電接触状態が確立されるか、または半導体材料の第1の領域に対する間接的な導電接触状態が改善される。しかしながらこの温度処理は、ファイヤースルーまたは焼成とは対照的に、約200から560℃までの低温で実施される。温度処理は、好適には第1の透光性の導電材料から成る薄膜を塗布した後にも、非常に好ましくは第1の透光性の導電材料から成る薄膜に沿って反射防止膜を施す工程の後に、行われるが、これには、放射照度が1000W/m2以上の強さで(例えばハロゲンランプの)通常の(白色)光を用いた、数秒(≧10s)から数分間にわたる薄膜構造全体の照射が含まれるとよい。温度処理は、太陽電池の全ての機能性薄膜が施された後に、すなわち第1および第2の非透光性の導電材料、第1および場合によっては第2の透光性の導電材料、場合によっては電気絶縁材料が塗布されて、第1および場合によっては第2の反射防止膜が施された後に、行われることが非常に好ましい。
【0035】
本方法の一実施形態においては、半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域内に、第2の非透光性の導電材料を塗布する工程の前または後に、半導体材料の第2の表面の第2の横方向に広がった領域内に位置している半導体材料の第2の表面に沿って、電気絶縁材料から成る薄膜が施される。それにより、第2の横方向に広がった領域内に位置している半導体材料の第2の領域は電気的に絶縁されるために、裏面がパッシベーションされた太陽電池が作製されることになる。半導体材料の第2の表面の第2の横方向に広がった領域は、半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域とは異なる。第2の非透光性の導電材料を塗布する工程の前に電気絶縁材料を塗布する場合は、電気絶縁材料を半導体材料の第2の表面の面全体に構成することができる。電気絶縁材料は、それに引き続いて、半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域から再び取り去られる。
【0036】
本方法の別の実施形態においては、半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域内に第2の非透光性の導電材料を塗布する工程の前または後に、半導体材料の第2の表面の第2の横方向に広がった領域内に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜が施される。そこでは第2の表面の第2の横方向に広がった領域が、第2の表面の第1の横方向に広がった領域とは異なる領域である。最後に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜と第2の非透光性の導電材料との間、ならびに第2の透光性の導電材料から成る薄膜と半導体材料の第2の領域との間の、導電接触部が作製される。バックコンタクトの製造工程については、フロントコンタクトの製造に関して記載したような実施形態が可能である。換言すると、まず半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域内に、第2の非透光性の導電材料が塗布されて、その後で、半導体材料の第2の表面の第2の横方向に広がった領域内に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜が塗布されるとよい。しかしながら、最初に半導体材料の第2の表面の面全体に沿って、第2の透光性の導電材料から成る薄膜が施されて、引き続いて半導体材料の第2の表面の第1の横方向に広がった領域内に、第2の非透光性の導電材料が塗布される実施形態も可能である。その場合は、半導体材料の第2の領域に対する第2の非透光性の導電材料の接触部が、裏面がパッシベーションされている太陽電池の製造に関して記載されたのと同じ方法で作製されるとよい。
【0037】
第2の非透光性の導電材料を塗布する工程の前、および第2の透光性の導電材料から成る薄膜を施す工程の前に、半導体材料の第2の表面の上に、またはこれに接して、電荷キャリアが通り抜けることができる第2の表面パッシベーション膜が作製されると好適である。
【0038】
好ましい一実施形態においては、第1の透光性の導電材料から成る薄膜に沿って、第1の反射防止膜が施される、および/または、場合によっては第2の透光性の導電材料から成る薄膜に沿って、第2の反射防止膜が施される。したがって少なくとも第1の反射防止膜は、第1の非透光性の導電材料が塗布された後に、塗布される。
【0039】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜および第1の反射防止膜、および/または、場合によっては第2の透光性の導電材料から成る薄膜および第2の反射防止膜はいずれも、一つの設備内で、真空状態が途切れることなく、施されると好適である。それにより、真空状態が途切れている間の、第1の透光性の導電材料から成る薄膜もしくは第2の透光性の導電材料から成る薄膜の吸湿を回避して、ひいてはそれぞれの薄膜を腐食から保護して、それぞれのパラメータの長期安定性を向上することができる。
【0040】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜および/または第2の透光性の導電材料から成る薄膜は、プラズマゾーン内にプラズマが存在しているプラズマ支援化学蒸着(PECVD:Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)プロセスを利用して析出されると好適である。これについて、非常に好ましいのは、半導体材料の表面に引き起こされる損傷が僅かとなるようなプロセスである。そのようなプロセスは、例えば、プラズマがマイクロ波により励起される、および/またはプラズマゾーンが半導体材料の被覆されなければならない表面から空間的に後退している、プラズマ・プロセスである。それにより、透光性の伝導材料が非常に大切に扱われて析出されることが可能となり、高エネルギ・イオンの衝突によって半導体材料のそれぞれの表面が損なわれることはない。さらに、PECVDプロセスを利用してこれらの薄膜を析出することによって、それぞれの非透光性の導電材料上における、それぞれの透光性の導電材料ならびにそれぞれの反射防止膜の成長が悪いという長所がもたらされる(選択プロセス)。それにより、層を成して重なり合った薄膜の込み入った除去作業を不要として、製造後の太陽電池の最低でも一つのフロントコンタクトまたは最低でも一つのバックコンタクトを形成する透光性の導電材料に外部から直接、簡単に電気接触することができる。半導体材料(10)の被覆されなければならない表面(101a、102a)は、析出プロセスの間、直線でプラズマゾーンを通過すると好適である。
【0041】
第1および/または第2の透光性の導電材料は、非常に好ましくはアルミニウムまたはボロンを用いてドープされた酸化亜鉛であると好適である。この材料を対象とした好ましい析出方法は、亜鉛の供給元としてのジエチル亜鉛(DEtZまたはDEZ)またはジメチル亜鉛(DMZ)、酸素の供給元としての一酸化二窒素(N2O、笑気)および/または酸素(O2)、ならびに不活性ガス(アルゴン、ネオン、またはヘリウム)、および/または窒素を出発材料とする、マイクロ波支援PECVDプロセスである。さらにアルミニウム・ドープされた酸化亜鉛を析出するためには、アルミニウム源として好適にはトリメチルアルミニウム(TMAlまたはTMA)が、またボロン・ドープされた酸化亜鉛を析出するためには、ボロン源として好適にはジボラン(B2H6)が、添加される。
【0042】
以下では、幾つかの実施例と図面に基づいて本発明を明らかにし、同じ要素、薄膜または領域は、同じ符号を用いて示されているが、寸法比および厚さ比は、縮尺に基づいて忠実に再現されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】裏面がパッシベーションされている、本発明にしたがった太陽電池(1)の第1の実施形態を示す図である。
【
図2】裏面に第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)を備える、本発明にしたがった太陽電池(1)の第2の実施形態を示す図であり、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、裏面の第2の横方向に広がった領域(106)内だけに配置されている。
【
図3】裏面に第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)を備える、本発明にしたがった太陽電池(1)の第3実施形態を示す図であり、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、裏面の第1の横方向に広がった領域(105)内にも配置されている。
【
図4A】太陽電池の断面図に基づいて、本発明にしたがった方法の例示的な実施形態の工程段階を示す図である。
【
図4B】太陽電池の断面図に基づいて、本発明にしたがった方法の例示的な実施形態の工程段階を示す図である。
【
図4C】太陽電池の断面図に基づいて、本発明にしたがった方法の例示的な実施形態の工程段階を示す図である。
【
図4D】太陽電池の断面図に基づいて、本発明にしたがった方法の例示的な実施形態の工程段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1には、本発明にしたがった結晶系太陽電池(1)の第1の実施形態が断面図で示される。太陽電池(1)は、例えばシリコンから成る単結晶系半導体材料(10)を有し、その内部には第1の領域(101)と第2の領域(102)とが構成され、第1の領域(101)と第2の領域(102)との間にpn接合が存在するように、ドーピングが施されている。このケースにおいては、第1の領域(101)が、n型ドープされて、100から200Ω(Ω/□)の範囲内の表面抵抗率を有し、太陽電池(1)のエミッタとして利用されるのに対して、第2の領域(102)はp型ドープされている。半導体材料(10)は、半導体材料(10)の第1の領域(101)だけと境を接し、太陽電池(1)の受光面(光と向き合った面)である、第1の表面(101a)と、半導体材料(10)の第2の領域(102)だけと境を接し、太陽電池(1)の裏面(光とは反対側の面)である、第2の表面(102a)とを有している。第1の表面(101a)は、第2の表面(102a)の反対側に位置している。第1の表面(101a)は、半導体材料(10)の内部への光の入射を改善する、従来技術にしたがったテクスチャー、すなわち表面構造を有しているとよい。このテクスチャーは、
図1には図示されていない。半導体材料の第1の領域(101)は、n型ドープ用のドーパント、例えばリン(P)、ヒ素(As)、またはアンチモン(Sb)を、例えば拡散法またはイオン注入法を利用して半導体材料中に導入することによって作製された。
【0045】
半導体材料(10)の第1の表面(101a)の上に、または第1の表面(101a)に接して、例えばSiO
2またはSiONから成る第1の表面パッシベーション膜(11)が配置されている。第1の表面パッシベーション膜(11)は、第1の表面(101a)上に析出されるか、または、半導体材料(10)の変換によって、例えば酸化によって、作製されるとよい。その際に
図1に図示された実施形態においては、表面パッシベーション膜(11)により、半導体材料の第1の表面(101a)が、第1の表面(101a)の横方向に広がっている面積全体にわたり覆い隠されている。横方向に広がった面積は、図示される断面図の平面に対して垂直な平面に沿った面積である。
【0046】
太陽電池(1)の受光面側には、第1の非透光性の導電材料、例えばAgから成る、最低でも一つのフロントコンタクト(12)が、図示されたケースにおいては三つのフロントコンタクト(12)が、受光面の第1の横方向に広がった領域(103)内に配置されている。そこでは第1の表面パッシベーション膜(11)が、フロントコンタクト(12)と半導体材料(10)の第1の表面(101a)との間に存在し、このためフロントコンタクト(12)と半導体材料(10)の第1の領域(101)との間に、間接的な導電接触部を生じている。第1の横方向に広がった領域(103)は、太陽電池(1)の受光面を上面図において、すなわち図示される断面図の平面に対して垂直な平面内に、任意の形状を有しているとよい。特に横方向に広がった領域(103)は、直線状に延びる矩形の帯状体または図の平面からさらに奥へと延びる曲がりくねった帯状体であるか、あるいは、円形、楕円形、三角形または多角形、もしくは自由な形状の面であるとよい。その際に第1の横方向に広がった領域(103)は、太陽電池(1)の受光面全体にまたがり、規則的に分散して配置されたものであっても、不規則に分散して配置されたものであってもよい。フロントコンタクト(12)の第1の非透光性の導電材料の厚さは、5から25μmまでの範囲内にある。
【0047】
太陽電池(1)の受光面の第2の横方向に広がった領域(104)内には、第1の透光性の導電材料、例えばAlZnO(アルミニウム・ドープされた酸化亜鉛)から成る薄膜(13)が、第1の表面パッシベーション膜(11)および半導体材料(10)の第1の表面(101a)に沿って配置されている。このため、第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)と半導体材料(10)の第1の領域(101)との間には、間接的な導電接触部が存在している。太陽電池(1)の受光面の第2の横方向に広がった領域(104)は、第1の横方向に広がった領域(103)と境を接して、これらと一緒に、太陽電池(1)の受光面全体を再現している。したがって第2の横方向に広がった領域(104)は、太陽電池(1)の受光面を上面図において、第1の横方向に広がった領域(103)の形状に対して相補的な形状を有している。第1の横方向に広がった領域(103)が、上面図において太陽電池(1)の受光面の総面積に占める比率は、1.5から3.0%までの範囲内にある。
【0048】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)は、10から50nmまでの範囲内の、好適には30nmの厚さを有し、フロントコンタクト(12)と直接電気接触した状態にある。
【0049】
第1の表面パッシベーション膜(11)は、厚さが1から2nmまでと非常に薄いために、電荷キャリアは、半導体材料(10)の第1の領域(101)と、フロントコンタクト(12)もしくは第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)との間に位置する表面パッシベーション膜(11)を通り抜けることができる。
【0050】
太陽電池(1)の受光面の第2の横方向に広がっている各領域(104)内には、それに加えて、窒化ケイ素(SiN)から成る、50から100nmまでの厚さを有する、第1の反射防止膜(14)が配置されている。第1の反射防止膜(14)により、太陽電池(1)に当たる光の反射が低減されて、太陽電池(1)の内部への光の入射が改善される。
【0051】
この実施形態においても、また他の全ての実施形態においても、本発明にしたがった太陽電池(1)の特徴的な点として、第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)、および好適には第1の反射防止膜(14)も、受光面側では第2の横方向に広がった領域(104)内だけに構成されて、第1の横方向に広がった領域(103)内には存在していない。それにより、フロントコンタクトと半導体材料との間に、例えば透明導電酸化物のように、導電性に劣る材料の領域が存在するような構造に対して、一つまたは複数のフロントコンタクト(12)の半導体材料体に対する電気接触状態、および、一つのまたは複数のフロントコンタクト(12)の付着性は、実質的に向上されている。
【0052】
太陽電池(1)の裏面側では、裏面の第1の横方向に広がった領域(105)内に、第2の非透光性の導電材料、例えばAlから成る、最低でも一つのバックコンタクト(16)が、図示されたケースにおいては三つのバックコンタクト(16)が、配置されている。バックコンタクト(16)は、半導体材料(10)の第2の表面(102a)と直接境を接しているために、バックコンタクト(16)と半導体材料(10)の第2の領域(102)との間には、直接的な導電接触部が存在している。裏面の第1の横方向に広がった領域(1105)は、受光面の第1の横方向に広がった領域(103)との関係で既に記載したように、太陽電池(1)の裏面からの上面図において、任意の形状を有しているとよく、また裏面全体にわたり任意で分散されて配置されているとよい。
【0053】
太陽電池(1)の裏面の第2の横方向に広がった領域(106)内には、厚さが5から200nmまでの誘電体薄膜(15)が、半導体材料(10)の第2の表面(102a)に接するように配置されている。誘電体薄膜(15)は、例えば酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、または酸窒化ケイ素、もしくは、p型Si表面のパッシベーションおよび電気絶縁に適している、それ以外の材料から、または、これらの材料の内の数種類から成る薄膜の列から、成っている。この誘電体薄膜(15)は、個々の局在性バックコンタクト(16)を相互に接続している裏面コネクタ部(17)から、半導体材料(10)の第2の表面(102a)を電気的に絶縁する。裏面接続部(17)は、バックコンタクト(16)と同じ材料から成るとよく、またこれと一緒に施工されるとよい。例えば誘電体薄膜(15)は、厚さが20nmの薄い酸化アルミニウム膜(AlOx)と、厚さが140nmの厚い窒化ケイ素膜から成っている。バックコンタクト(16)および裏面コネクタ部(17)の第2の非透光性の導電材料の合計厚さは、3から30μmの範囲内にある、好適には20μmである。
【0054】
太陽電池(1)の裏面の第2の横方向に広がった領域(106)は、第1の横方向に広がった領域(105)と境を接して、これらと一緒に太陽電池(1)の裏面全体を再現している。したがって第2の横方向に広がった領域(106)は、太陽電池(1)の裏面からの上面図において、第1の横方向に広がった領域(105)の形状に対して、相補的な形状を有している。第1の横方向に広がった領域(105)が、上面図において太陽電池(1)の裏面の総面積に占める比率は、1から5%までの範囲内にある。その際に、太陽電池(1)の裏面の第1の横方向に広がった領域(105)の形状、および/または寸法諸元、および/または横方向への分散方式、および/またはその面積が総面積に占める比率は、太陽電池(1)の受光面の第1の横方向に広がった領域(103)の形状、および/または寸法諸元、および/または横方向への分散方式、および/またはその面積が総面積に占める比率と、同じであっても、異なっていてもかまわないし、またこれらに関係なく、太陽電池(1)の裏面の横方向に広がっている面積全体にまたがり、分散されて配置されてもよい。
【0055】
図2に図示された本発明にしたがった結晶系太陽電池(1)の第2の実施形態は、太陽電池(1)が両面受光型太陽電池であり、またその裏面が受光面とほぼ同じように構成されているので、第1の実施形態とは異なる。特に裏面は、誘電体薄膜の代わりに、第2の表面パッシベーション膜(18)、および、第2の横方向に広がった領域(106)内に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)を有している。
【0056】
例えば酸化アルミニウムまたは二酸化ケイ素から成る第2の表面パッシベーション膜(18)は、半導体材料(10)の第2の表面(102a)の上に、またはこれに接して、配置されている。第2の表面パッシベーション膜(18)は、第2の表面(102a)の上に析出されるか、または半導体材料(10)の変換により、例えば酸化により、作製されるとよい。そこでは第2の表面パッシベーション膜(18)により、
図2に図示された実施形態においては、半導体材料の第2の表面(102a)が、第2の表面(102a)の横方向に広がっている面積全体にわたり覆い隠されている。
【0057】
図1との関係で既に述べたように、太陽電池(1)の裏面側では、裏面の第1の横方向に広がった領域(105)内に、第2の非透光性の導電材料、例えばAlから成る、最低でも一つのバックコンタクト(16)が、図示されたケースにおいては二つのバックコンタクト(16)が、配置されている。そこではバックコンタクト(16)と半導体材料(10)の第2の表面(102a)との間に、第2の表面パッシベーション膜(18)が配置され、このためバックコンタクト(16)と半導体材料(10)の第2の領域(102)との間には、間接的な導電接触部が存在している。
【0058】
太陽電池(1)の裏面の第2の横方向に広がった領域(106)内には、第2の透光性の導電材料、例えばZnO(窒素ドープされた酸化亜鉛)またはITO(インジウム・スズ酸化物)から成る薄膜(19)が配置されている。第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)は、バックコンタクト(16)と導電接触し、第2の表面パッシベーション膜(18)を介して、半導体材料(10)の第2の領域(102)とも導電接触している。
【0059】
第2の表面パッシベーション膜(18)は再び1から2nmまでの範囲内の厚さを有し、このため電荷キャリアは、半導体材料(10)の第2の領域(102)と第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)との間に位置する第2の表面パッシベーション膜(18)を通り抜けることができる。第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)は、第2の横方向に広がった領域(106)内においては、10から50nmの範囲内の厚さで構成されている。バックコンタクト(16)の第2の透光性の導電材料の厚さは、3から30μmの範囲内にあり、好適には20μmである。
【0060】
太陽電池(1)の裏面の第2の横方向に広がった領域(106)内には、その上、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素から成る、50から100nmまでの厚さを有する第2の反射防止膜(20)が配置されている。その際に第2の反射防止膜(20)の材料および/または厚さは、第1の反射防止膜の材料および/または厚さと同じであってもかまわないし、異なっていてもかまわない。第2の反射防止膜(20)により、太陽電池(1)の裏面に当たる光の反射が低減され、裏面側から太陽電池の内部への光の入射が改善される。
【0061】
図3には、本発明にしたがった太陽電池(1)の第3の実施形態が断面図で図示されている。ここでは半導体材料(10)の第1の領域(101)がn型ドープされ、第1の表面(101a)と境を接するところには、第1の領域(101)のそれ以外の部分と同じドーピング種類のドーピングが一段と高密に施されている、部分領域(101b)を有している。これに対して第2の領域(102)は、p型ドープされて、120から200Ω(Ω/□)の範囲内の表面抵抗率を有し、太陽電池のエミッタとして利用される(n-PERL BJ)。ここでも第1の表面(101a)は、半導体材料(10)の内部への光の入射を改善するテクスチャー、すなわち表面構造を有しているとよいが、このテクスチャーは
図3には図示されていない。半導体材料(10)の合計厚さが10μm以上である場合は、第1の領域(101)の部分領域(101b)は例えば300nmの厚さを、また第2の領域(102)は600nmの厚さを有している。
【0062】
図1との関係で記載したのと同様に、太陽電池(1)の受光面側には、太陽電池(1)の受光面の第1の横方向に広がった領域(103)内の最低でも一つのフロントコンタクト(12)、第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)、および第1の反射防止膜(14)が配置されている。
【0063】
図2との関係で記載したのと同様に、半導体材料(10)の第2の表面(102a)の上に、またはこれに接して、第2の表面パッシベーション膜(18)、最低でも一つのバックコンタクト(16)、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)、および第2の反射防止膜(20)が配置されている。
図3に図示されている実施形態の太陽電池(1)の裏面と、
図2に図示されている実施形態の太陽電池(1)の裏面との唯一の相違点は、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が、太陽電池(1)の裏面の第2の横方向に広がった領域(106)内だけではなく、太陽電池(1)の裏面の第1の横方向に広がった領域(105)内にも存在している点にある。したがって、バックコンタクト(16)と半導体材料(10)の第2の表面(102a)との間には、第2の表面パッシベーション膜(18)と、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)とが配置されている。
【0064】
第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)は、
図3に図示されている例示的実施形態においては、第1の横方向に広がった領域(105)内に、第2の横方向に広がった領域(106)内よりも僅かな厚さを有しているが、しかしながら、同じ厚さを有するようにしてもよい。
【0065】
図4A~
図4Dに基づいて、本発明にしたがった太陽電池の本発明にしたがった製造方法の例示的な実施形態を記載する。そこではそれぞれの図に、様々な工程段階が終了した後の太陽電池の断面図が示される。
【0066】
図4Aには、第1の領域(101)と第2の領域とが存在している半導体材料(10)が図示されている。場合により構成されている表面テクスチャーは、
図4Aから4Dには図示されていない。半導体材料(10)の第1の表面(101a)の上には、第1の表面パッシベーション膜(11)が面全体に作製されて、半導体材料(10)の第2の表面(102a)の上には、第2の表面パッシベーション膜(18)が面全体に作製されている。これらの薄膜は、二酸化ケイ素から成り、1から2nmまでの厚さを有している。これらは、急速熱酸化法(Rapid Thermal Oxidation)、湿式化学酸化法、またはUVもしくはオゾン支援乾式酸化法(SQi)を利用して作製された。
【0067】
その次の工程段階においては、半導体材料(10)の第1の表面(101a)の上に、第1の非透光性の導電材料から成るフロントコンタクト(12)が作製され、第2の表面(102a)の上に、第2の非透光性の導電材料から成るバックコンタクト(16)が作製される。フロントコンタクトおよびバックコンタクト(12、16)は、スクリーン印刷を利用して、それぞれの表面(101a、102a)の第1の横方向に広がった領域(103、105)内に施行され、例えば銀ペーストから成っている。この工程段階の結果は、
図4Bに図示されている。
【0068】
それに続いて、第1の表面パッシベーション膜(11)の露出している領域、すなわち第1の非透光性の導電材料から成るそれぞれのフロントコンタクト(12)の間の領域の上に、第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)が、ならびに、第2の表面パッシベーション膜(18)の露出している領域、すなわち第2の非透光性の導電材料から成るバックコンタクト(16)の間の領域の上に、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)が施されるが、これは
図4Cに示されている。第1の透光性の導電材料および第2の透光性の導電材料は、アルミニウム・ドープまたはボロン・ドープされた酸化亜鉛であり、いずれも約30nmの厚さを有している。そこでは、それぞれの表面パッシベーション膜(11、18)と境を接する半導体領域(101、102)の伝導モードに応じてドーピングが施されている。
【0069】
図4Dには、第1の反射防止膜(14)を第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)の上に作製し、第2の反射防止膜(20)を第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)の上に作製する工程段階が終了した後の太陽電池が示される。第1の反射防止膜(14)および第2の反射防止膜(20)は窒化ケイ素から成り、厚さはいずれも約60nmである。
【0070】
第1の透光性の導電材料から成る薄膜(13)、第2の透光性の導電材料から成る薄膜(19)、ならびに第1の反射防止膜(14)および第2の反射防止膜(20)を、ここに記載した順序で、同じコーティング設備で作製した。しかしながら、太陽電池の所望の構造が実現される限り、異なるコーティング設備で作製してもよいし、作製の順序も、異なる順序であってもかまわない。
【0071】
最後の工程においては、
図4Dに示される構造が温度処理にかけられる。その際に太陽電池は、約1min(1分)間にわたり200℃から300℃の温度に曝される。追加して、最低でも1000W/m
2の強さである白色光を用いた照射が実施されるとよく、それにより太陽電池のパラメータを改善することができる。しかしながら温度処理工程により、太陽電池の構造に組織上の変化を来すことはない。あくまでも第1および/または第2の非透光性の導電材料だけが、それぞれの第1もしくは第2の表面パッシベーション膜(11もしくは18)の内部に、またはこれを貫通して、拡散できる。その結果、
図2に図示されているように太陽電池が得られるが、コンタクトのファイヤースルーは不要である。表1には、アルミニウム・ドープまたはボロン・ドープされた酸化亜鉛から成る第1および/または第2の透光性の導電材料から成る薄膜のPECVD析出工程に関する例示的なプロセス・パラメータが記載される。これらは、プラズマ空間が、基板の被覆されなければならない表面から空間的に後退している、すなわち離隔されている、遠隔マイクロ波プラズマを用いるPECVD設備に関するものである。それにより、被覆対象である表面の、プラズマからのイオン衝撃による損傷が低減される。
【0072】
【0073】
太陽電池または太陽電池の製造方法の上記実施形態の内の幾つかまたは全ては、それらが、互いに組み合わせる可能性を排除し合うものではない限り、互いに組み合わせることもできる。
【符号の説明】
【0074】
1 太陽電池
10 半導体材料
101 半導体材料の第1の領域
101a 半導体材料の第1の表面
101b 第1の領域の部分領域
102 半導体材料の第2の領域
102a 半導体材料の第2の表面
103 受光面の第1の横に広がった領域
104 受光面の第2の横に広がった領域
105 裏面の第1の横に広がった領域
106 裏面の第2の横に広がった領域
11 第1の表面パッシベーション膜
12 フロントコンタクト
13 第1の透光性の導電材料から成る薄膜
14 第1の反射防止膜
15 誘導体薄膜
16 バックコンタクト
17 裏面コネクタ部
18 第2の表面パッシベーション膜
19 第2の透光性の導電材料から成る薄膜
20 第2の反射防止膜