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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】溶剤系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20220929BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019565910
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-27
(86)【国際出願番号】 US2018025983
(87)【国際公開番号】W WO2018222273
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】62/512,993
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リ、ウェンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ズパンシック、ジョセフ ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、ポール
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、トールステン
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-051574(JP,A)
【文献】国際公開第2015/168670(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/139996(WO,A1)
【文献】特開2015-007226(JP,A)
【文献】特開平06-116542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 ー 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤系接着剤組成物であって、
(A)樹脂成分として、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の95~99重量パーセントのポリエステルウレタン樹脂と、
(B)ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の1~5重量パーセントのリン酸エステル化合物であって、下記構造(I):
【化1】
(式中、R が任意の有機基である)を有するリン酸エステル化合物と、
(C)脂肪族イソシアネート硬化剤と、を含む、組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルウレタン樹脂が、ポリエステルポリオールとイソシアネートとの反応生成物である、請求項1に記載の溶剤系接着剤組成物。
【請求項3】
溶剤をさらに含む、請求項1に記載の溶剤系接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の溶剤系接着剤組成物を調製するための方法であって、
ポリエステルウレタン樹脂を提供することと、
リン酸エステル化合物を提供することと、
前記ポリエステルウレタン樹脂と前記リン酸エステル化合物とを混合して、樹脂混合物を形成することと、
前記樹脂混合物を溶剤中で希釈して、希釈樹脂混合物であって、前記希釈樹脂混合物の総重量に基づいて25~55重量パーセントの塗布固形分を有する、希釈樹脂混合物を形成することと、
脂肪族イソシアネート硬化剤を100:1~100:12の混合比(希釈前の樹脂混合物の重量部:脂肪族イソシアネート硬化剤の重量部)で用いて前記希釈樹脂混合物を硬化させることと、を含む、方法。
【請求項5】
前記希釈樹脂混合物が、前記希釈樹脂混合物の総重量に基づいて35~40重量パーセントの塗布固形分を有する、請求項4に記載の溶剤系接着剤組成物を調製するための方法。
【請求項6】
請求項1に記載の接着剤組成物を含む、積層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月31日に出願された米国特許仮出願第62/512,993号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、溶剤系接着剤組成物に関する。より具体的には、本開示は、例えば、高性能積層用接着剤用途で使用するための溶剤系接着剤組成物に関し、本組成物は、箔などの金属構造への改善された接着性、ならびに改善された耐熱性および耐薬品性を呈する。溶剤系接着剤組成物は、リン酸エステル化合物で変性されたポリエステルウレタン樹脂、および脂肪族イソシアネート硬化剤を含む。本開示はさらに、そのような溶剤系接着剤組成物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
接着剤組成物は、多種多様な目的に有用である。例えば、いくつかの接着剤は、基材の層を一緒に接着することにより、2つ以上の基材層を含む積層構造を形成するために使用される。食品、医薬品、および産業用消耗品の包装用の積層フィルムの間に柔軟性の包装用積層用接着剤が適用される。積層用接着剤は、一般に、(1)溶剤系積層用接着剤、(2)無溶剤積層用接着剤、および(3)水性積層用接着剤、という3つのカテゴリーに分類できる。溶剤系カテゴリー内では、比較的良好な耐熱性、耐湿性、および耐薬品性を達成するために、溶剤系ポリウレタンが広く使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
溶剤系接着剤組成物は、高性能積層用途(例えば、レトルト、ホットフィル、ボイルインバッグなど)に使用することができる。そのような用途に必要な高性能を達成するために、エポキシ化ビスフェノールAを含むポリエステル系が一般的に使用される。ビスフェノールAエポキシ樹脂の使用は、昨今、食品包装用のビスフェノールA系材料の認識されている安全性に関する規制および使用者の課題に直面している。
【0005】
したがって、高性能用途、特に高性能用途に使用される積層構造における使用に好適なビスフェノールAを含まない接着剤組成物が望ましい。
【0006】
溶剤系接着剤組成物が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、溶剤系接着剤組成物は、(A)ポリエステルウレタン樹脂および(B)リン酸エステル化合物を含む第1の部分と、(C)脂肪族イソシアネート硬化剤を含む第2の部分とを含む。第2の部分の脂肪族イソシアネート硬化剤(C)は、第1の部分の成分を架橋する。いくつかの実施形態では、リン酸エステル化合物は構造(I)を有し、
【化1】
式中、Rは任意の有機基である。
【0007】
溶剤系接着剤組成物を調製するための方法も開示される。本方法は、ポリエステルウレタン樹脂を提供することと、リン酸エステル化合物を提供することと、ポリエステルウレタン樹脂とリン酸エステル化合物とを混合して樹脂混合物を形成することと、樹脂混合物を溶剤中で希釈して、希釈樹脂混合物の総重量に基づいて25~55重量パーセントの塗布固形分を有する、希釈樹脂混合物を形成することと、脂肪族イソシアネート硬化剤を100:1~100:12の混合比(希釈前の樹脂混合物の重量部:脂肪族イソシアネート硬化剤の重量部)で用いて希釈樹脂混合物を硬化させることと、を含む。
【0008】
開示の接着剤組成物は、ビスフェノールAを含まず、とりわけ、レトルト用途、ホットフィル用途、およびボイルインバッグ用途などの高性能食品包装用途に使用される積層構造における使用に好適である。開示の接着剤組成物は、高性能用途に使用される積層構造に特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示の溶剤系接着剤組成物は、2つ以上の可撓性または剛性の基材を含む積層構造における使用に好適である。いくつかの実施形態では、基材は、低密度または中密度のプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスルホンまたはそれらの混合物から選択されるタイプのもの)、紙、木材および再構成木材製品、ポリマー被覆基材、ワックス被覆板紙、厚紙、パーティクルボード、織物、皮革、および金属(例えば、アルミニウム、鉄、およびその他の非鉄)、金属化プラスチック(例えば、金属化プラスチックフィルム)を含み得る。いくつかの実施形態では、開示の溶剤系接着剤組成物を使用して調製された積層構造は、複数の層/基材を含むことができ、各層/基材は本明細書に記載の材料のうちのいずれかなどである。
【0010】
接着剤組成物は、レトルト処理(例えば、120℃以上の温度への30分以上の曝露)、ホットフィル処理(例えば、66℃以上の温度への30分以上の曝露)、およびボイルインバッグ処理(例えば、100℃以上の温度への30分以上の曝露)(すなわち、高性能用途)に供される積層構造における使用に特に好適である。いくつかの実施形態では、溶剤系接着剤組成物は、深絞り缶および金属蓋または可撓性ヒートシール蓋を備えた容器などの金属食品包装用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、溶剤系接着剤組成物は、食品パウチ、インスタント食品、缶のコーティングなどに使用することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、溶剤系接着剤組成物は、(A)ポリエステルウレタン樹脂および(B)リン酸エステル化合物を含む第1の部分と、(C)脂肪族イソシアネートを含む第2の部分とを含む。第2の部分の脂肪族イソシアネート硬化剤(C)は、第1の部分の成分を架橋し、それによりポリエステル-ウレタン-ポリウレタンポリマーネットワークを生成する。
【0012】
開示の接着剤組成物の2つの部分は、(例えば、積層用の機械に塗布される場合)基材に接触する前に混合される。混合された接着剤はある基材に塗布され、それが乾燥してから、別の基材層が塗布される。その後、積層物を周囲温度または高温で硬化させることができる。
【0013】
第1の部分:(A)ポリエステルウレタン樹脂
いくつかの実施形態では、溶剤系接着剤組成物は、(A)ポリエステルウレタン樹脂を含む第1の部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリエステルウレタン樹脂は、ヒドロキシ末端ポリウレタン樹脂である。好適なヒドロキシ末端ポリウレタン樹脂は、イソシアネート(例えば、モノマーイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート)とポリエステルポリオールとの反応により調製することができる。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含有する任意の化合物である。例えば、ポリイソシアネートは、二量体、三量体などを含んでもよい。そのような反応では、ヒドロキシ末端ポリウレタン樹脂を生産するために、ポリエステルポリオールが過剰に存在する。言い換えれば、ヒドロキシル基のイソシアネート基に対する化学量論比は1より高くあるべきである。
【0014】
本開示による使用に好適なイソシアネートには、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、およびそれらの2つ以上の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。「芳香族イソシアネート」は、芳香族ラジカルに結合したイソシアネートラジカルを含有し、かつ1つ以上の芳香環を含有する、イソシアネートである。「脂肪族イソシアネート」は、他の脂肪族基に結合できる脂肪族ラジカルに結合したイソシアネートラジカル、脂環式ラジカル、または芳香環(ラジカル)を含有する、イソシアネートである。「脂環式ポリイソシアネート」は、化学鎖が環構造を有する脂肪族イソシアネートのサブセットである。
【0015】
好適な芳香族イソシアネートには、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート(「2,6-TDI」)、2,4-トルエンジイソシアネート(「2,4-TDI」)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「2,4’-MDI」)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「4,4′-MDI」)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(「TODI」)、およびそれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
好適な脂肪族イソシアネートは、直鎖状または分岐状のアルキレン残基中に3~16個の炭素原子または4~12個の炭素原子を有し、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)、1,4-ジイソシアナトブタン、1,3-キシリレンジイソシアネート(「1,3-XDI」)、および1,4-キシリレンジイソシアネート(「1,4-XDI」)である。好適な脂環式イソシアネートは、シクロアルキレン残基中に4~18個の炭素原子または6~15個の炭素原子を有する。脂環式ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)、1,3/1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-/1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、およびジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(「H12MDI」)などの、環式結合したNCO基および脂肪族結合したNCO基の両方を指す。
【0017】
好適な脂肪族および脂環式イソシアネートには、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(「TIN」)などのノナントリイソシアネート、ウンデカンジ-およびトリイソシアネートならびにドデカンジ-およびトリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(「H12MDI」)、2-メチルペンタンジイソシアネート(「MPDI」)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(「TMDI」)、ノルボルナンジイソシアネート(「NBDI」)、キシリレンジイソシアネート(「XDI」)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ならびにそれらのダイマー、トリマー、およびそれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
本開示による使用に好適な追加のイソシアネートには、4-メチル-シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、2-ブチル-2-エチルペンタメチレンジイソシアネート、3(4)-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート、2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,4-ジイソシアネート-4-メチル-ペンタン、およびそれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ポリオール」は、分子あたり2つ以上のヒドロキシル基(すなわち、-OH)を有する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「エステル」は、エステル結合を含む化合物を指す。本明細書で使用される場合、「ポリエステル」は、分子あたり2つ以上のエステル結合を含む化合物を指す。ポリエステルおよびポリオールの両方である化合物は「ポリエステルポリオール」である。脂肪族ポリエステルポリオールは、その分子中に芳香環を含有しないポリエステルポリオールである。芳香族ポリエステルポリオールは、その分子中に1つ以上の芳香環を含有するポリエステルポリオールである。
【0020】
いくつかの実施形態では、ポリエステルウレタン樹脂は、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の65~99.5重量パーセントを占める。いくつかの実施形態では、ポリエステルウレタン樹脂は、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の95~99重量パーセントを占める。
【0021】
本開示による使用に好適なポリエステルウレタン樹脂の市販の例には、The Dow Chemical Companyから入手可能なADCOTE(商標)811A EAが挙げられる。
【0022】
第1の部分:(B)リン酸エステル化合物
いくつかの実施形態では、溶剤系接着剤組成物は、(B)リン酸エステル化合物を含む第1の部分を含む。理論に束縛されることなく、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル化合物(B)は、ヒドロキシル基とイソシアネート官能基との間の反応によりイソシアネート硬化試薬(C)と反応し、均一なポリエステル-ウレタン-ポリウレタンネットワークを生成すると考えられる。加えて、リン酸エステル化合物のリン酸エステル官能基は、金属フィルム、金属酸化物被覆フィルム、またはポリマーフィルムの反応部位と反応/複合体化して、接着性を向上させる。
【0023】
いくつかの実施形態では、リン酸エステル化合物は、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル化合物(B)の総重量の0.5~35重量パーセントを占める。いくつかの実施形態では、リン酸エステルは、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル化合物(B)の総重量の0.5~5重量パーセントを占める。
【0024】
いくつかの実施形態では、リン酸エステル化合物は構造(I)を有し、
【化2】
式中、Rは任意の有機基である。構造(I)に示されているペンダント基に加えて、Rは、1つ以上の追加のペンダント-OH基を有する場合も有しない場合もあり、Rは、構造(I)の1つ以上の追加のペンダント基を有する場合も有しない場合もある。-OH基および構造(I)の基(複数可)のうちのいずれか2つ以上は、Rの同じ原子に結合する場合もしない場合もある。好ましくは、各-OH基および構造(I)の各基は、Rの別個の原子に結合する。
【0025】
を特徴付ける簡便な方法は、構造(II)を有する化合物を説明することであり、
【化3】
式中、Rは構造(I)と同じである。構造(II)を有する化合物は、本明細書では「前駆体ポリオール」として知られる。
【0026】
いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、90以上、または200以上、または400以上の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、4,000以下、または2,000以下、または1,200以下、または900以下、または500以下の数平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、200~4,000、または400~2,000、または400~1,200、または400~900の数平均分子量を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、好適な前駆体ポリオールは、アルキル高級ポリオール、単糖、二糖、および構造(III)を有する化合物であり、
【化4】
式中、R、R、R、およびRの各々は、互いに独立して、任意の有機基であり、n、n、およびnの各々は、互いに独立して、0~10の整数である。構造(III)に示されているペンダント基に加えて、Rは、1つ以上の追加のペンダント基を有する場合も有しない場合もある。さらに、ペンダント基のうちの2つ以上は、Rの同じ原子に結合する場合もしない場合もある。いくつかの実施形態では、構造(III)を有する化合物の混合物が存在し、構造(III)の化合物は、n、n、およびnのうちの1つ以上の値が互いに異なる。そのような混合物は、パラメータn、n、またはnの非整数値を述べることにより本明細書で説明され、非整数値は、そのパラメータの数平均を表す。そのような混合物の分子量を評価することが所望される場合には、数平均分子量が使用される。
【0028】
構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、好ましくは、各ペンダント基は、Rの別個の原子に結合する。
【0029】
構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、好ましくは、R、R、およびRのうちの1つ以上は、1~4個の炭素原子、または2~3個の炭素原子、または3個の炭素原子を有する炭化水素基である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、好ましくは、R、R、およびRのうちの1つ以上は、直鎖または環式または分岐状またはそれらの組み合わせであってもよいアルキル基であり、より好ましくは、R、R、およびRのうちの1つ以上は、直鎖または分岐状アルキル基であり、より好ましくは、R、R、およびRのうちの1つ以上は、分岐状アルキル基である。好ましくは、R、R、およびRは、互いに同一である。
【0030】
構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、好ましくは、n、n、およびnのうちの1つ以上は、0~8である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、好ましくは、n、n、およびnのうちの1つ以上は、1以上である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、好ましくは、n、n、およびnのうちの1つ以上は、6以下である。構造(III)を有する前駆体ポリオールのうち、好ましくは、n、n、およびnは、互いに同じである。
【0031】
構造(III)を有する前駆体ポリオールの好ましい群は、R、R、R、およびRの各々がアルキル基である化合物であり、そのような前駆体ポリオールは、本明細書ではアルコキシル化アルキルトリオールとして知られる。トリオールにおいて、n、n、およびnのうちの少なくとも1つが1以上であり、Rが構造(IV)を有する場合、
【化5】
トリオールは、本明細書ではアルコキシル化グリセロールとして知られる。アルコキシル化トリオールにおいて、R、R、およびRの各々が、正確に3個の炭素原子を有する分岐状アルキル基である場合、アルコキシル化トリオールは、本明細書ではプロポキシル化トリオールとして知られる。Rが構造(IV)を有するプロポキシル化トリオールは、本明細書ではプロポキシル化グリセロールとして知られる。
【0032】
アルキル高級ポリオールである前駆体ポリオールのうち、10個以下の炭素原子を有するものが好ましく、6個以下の炭素原子を有するものがより好ましく、3個以下の炭素原子を有するものがより好ましく、グリセロールがより好ましい。
【0033】
より好ましい前駆体ポリオールは、アルキル高級ポリオールおよび構造(III)を有する化合物である。n=n=n=0であり、かつRがアルキル基またはヒドロキシル基を有するアルキル基のいずれかである場合には、構造IVを有する化合物はアルキル高級ポリオールであることに留意されたい。
【0034】
前駆体ポリオールの好ましい群は、アルキルトリオールおよびアルコキシル化アルキルトリオールである。これらのうち、グリセロールおよびアルコキシル化グリセロールがより好ましく、アルコキシル化グリセロールがより好ましい。アルコキシル化グリセロールのうち、プロポキシル化グリセロールが好ましい。
【0035】
好適なリン酸エステル化合物の別のクラスは、ウレタン結合を含むものである。ウレタン結合を含むリン酸エステル化合物は、1つ以上の好適なリン酸官能性ポリオールを、好ましくは1つ以上のジイソシアネートを含む1つ以上のポリイソシアネートと反応させることによって作製される。好ましくは、ポリイソシアネートの量は、反応生成物の一部または全てがリン酸官能性ポリオールであるように十分に低く保たれる。あるいは、ポリオールを最初にポリイソシアネートと反応させて-OH末端プレポリマーを作製し、次にこれをポリリン酸と反応させてもよい。ウレタン結合を有するリン酸エステル化合物は、1,000~6,000の範囲、好ましくは1,200~4,000の範囲、より好ましくは1,400~3,000の範囲の数平均分子量を有することになる。
【0036】
いくつかの実施形態では、リン酸エステル化合物は、前駆体ポリオールおよびリン酸型の酸を含む反応物の反応生成物であり、リン酸エステル化合物は構造(I)を有する。
【0037】
好ましくは、リン酸型の酸および前駆体ポリオールの量は、M:Mの比を次のように決定するために選択される。
hy=前駆体ポリオールの分子あたりのヒドロキシル基の数
=Mhy-2
=(前駆体ポリオールのモル)×(N
=リン酸型の酸に含まれるリン原子のモル数
【0038】
いくつかの実施形態では、M:Mの比は、0.1:1以上、または0.2:1以上、または0.5:1以上、または0.75:1以上である。いくつかの実施形態では、M:Mの比は、1.1:1以下である。
【0039】
いくつかの実施形態では、リン酸型の酸の前駆体ポリオールに対する重量比は、0.005:1以上、または0.01:1以上、または0.02:1以上である。いくつかの実施形態では、リン酸型の酸の前駆体ポリオールに対する重量比は、0.3:1以下、または0.2:1以下、または0.12:1以下である。
【0040】
いくつかの実施形態では、リン酸型の酸はポリリン酸を含有する。いくつかの実施形態では、リン酸型の酸中のポリリン酸の量は、リン酸型の酸の重量に基づいて、75重量%以上、または80重量%以上、または90重量%以上である。ポリリン酸は、様々なグレードで利用可能であり、各グレードは、パーセンテージで特徴付けられる。グレードを決定するためには、純粋なモノマーオルトリン酸は、五酸化リンの含有量が72.4%であるとすることをまず認識する。いずれのグレードのポリリン酸も分析することができ、1モルのポリリン酸(式量は「Fppa」と表示)には、「Nppo」と表示された五酸化リンのモル数が含まれるとして、五酸化リンのパーセンテージ(「PCppo」)は、PCppo=(Nppo×142)/Fppaによって求められ、これはパーセンテージで表される。そうすると、そのポリリン酸のグレードは、パーセンテージで表された割合である:グレード=PCppo/72.4。
【0041】
いくつかの実施形態では、100%以上または110%以上のグレードを有するポリリン酸が使用される。いくつかの実施形態では、150%以下または125%以下のグレードを有するポリリン酸が使用される。
【0042】
いくつかの実施形態では、開示の溶剤系接着剤組成物は、1つ以上のリン酸官能性ポリオールに加えて、1つ以上のリン不含ポリオールを含有する。
【0043】
好適なリン酸エステルおよびそれらの調製に関するさらなる情報は、参照により全体が本明細書に組み込まれるPCT公開第WO/2015/168670号に見ることができる。
【0044】
第2の部分:(C)脂肪族イソシアネート硬化剤
いくつかの実施形態では、溶剤系接着剤組成物は、脂肪族イソシアネート硬化剤(C)を含む第2の部分を含む。いくつかの実施形態では、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル化合物(B)を組み合わせて、樹脂混合物を形成する。樹脂混合物を溶剤中で希釈して、希釈樹脂混合物の総重量に基づいて25~55重量パーセント、または30~45重量パーセント、または35~40重量パーセントの塗布固形分を有する、希釈樹脂混合物を形成する。その後、脂肪族イソシアネート硬化剤(C)を100:1~100:12の混合比(希釈前の樹脂混合物の重量部:脂肪族イソシアネート硬化剤の重量部)で用いて、希釈樹脂混合物を硬化させることができる。
【0045】
用いられる脂肪族イソシアネートは、いずれの好適な脂肪族イソシアネートであってもよい。好適な脂肪族イソシアネートには、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(「TIN」)などのノナントリイソシアネート、ウンデカンジ-およびトリイソシアネート、ドデカンジ-およびトリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(「H12MDI」)、2-メチルペンタンジイソシアネート(「MPDI」)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(「TMDI」)、ノルボルナンジイソシアネート(「NBDI」)、キシリレンジイソシアネート(「XDI」)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ならびにそれらのダイマー、トリマー、およびそれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
上記から推測されるように、本開示は、好ましくは接着剤組成物を形成するために基材への適用前または適用中に、好適なミキサー(例えば、電気的、空気圧的、または他の方法で動力付与される機械的ミキサー)を使用して混合される2部分の使用を企図する。混合は、適用プロセスの前に、適用プロセス中に、または適用プロセスの結果としてなど、プロセス中のいずれの好適な時間に行ってもよい。本ステップの全ては、周囲の室温条件下で実行してもよい。必要に応じて、加熱または冷却を用いてもよい。
【0047】
溶剤系接着剤組成物を調製するための方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、ポリエステルウレタン樹脂を提供し、リン酸エステル化合物を提供し、ポリエステルウレタン樹脂とリン酸エステル化合物とを混合して樹脂混合物を形成し、樹脂混合物を溶剤中で希釈して、希釈樹脂混合物の総重量に基づいて、25~55重量パーセント、または30~45重量パーセント、または35~40重量パーセントの塗布固形分を有する、希釈樹脂混合物を形成し、脂肪族イソシアネート硬化剤を100:1~100:12または100:4~100:10の混合比(希釈前の樹脂混合物の重量部:脂肪族イソシアネート硬化剤の重量部)で用いて希釈樹脂混合物を硬化するさせることと。
【0048】
開示の接着剤組成物は、基材を一緒に結合するために有用である。基材は、類似の材料であっても異なる材料であってもよい。複数の基材層の湿式および乾式接着積層が可能である。開示の接着剤組成物は、グラビア印刷、フレキソ印刷、従来のまたはエアレススプレー、ロールコーティング、ブラシコーティング、巻線ロッドコーティング、ナイフコーティング、またはコーティングプロセス(例えば、カーテン、フラッド、ベル、ディスク、およびディップコーティングプロセス)などの従来の適用技術を用いて所望の基材に適用され得る。接着剤組成物を用いたコーティングは、縁に沿って、または断続的な位置でなど、表面全体または表面の一部のみに行われてもよい。一旦基材に適用されると、組成物は、熱流および空気流の適用、または実質的に全ての溶剤を除去するための何らかの他の好適な手段などによって、乾燥される。
【0049】
開示の接着剤組成物は、高密度、低密度、または中密度のプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ABS、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリフェニレン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスルホンまたはそれらの混合物から選択されるタイプの)、紙、木材および再構成木材製品、ポリマー被覆基材、ワックス被覆板紙、厚紙、パーティクルボード、織物、皮革、および金属(例えば、アルミニウム、鉄、およびその他の非鉄)、金属化プラスチック(例えば、金属化プラスチックフィルム)などの多種多様な1つまたは複数の好適な基材上で使用することができる。接着剤組成物は、包装および密封用途のために特に魅力的である。例えば、プラスチックフィルム、金属フィルム、または金属化プラスチックフィルムを、本開示の接着剤組成物を用いて(例えば、その縁に沿って、または断続的な位置でなど、その表面の全体または少なくとも一部に)積層することができる。いくつかの実施形態では、食品をボイルインバッグ調理用に包装してもよく、または得られた積層物を、何らかの他の物品を密封または包装するために使用してもよい。積層構造にヘビーゲージの箔を用いる場合、得られた積層物を冷間引抜して、食品を充填することができるカップまたは包装を得て、次に同様の積層構造でカバーし密封して、密閉容器を形成することができる。
【0050】
接着剤系の冷間延伸性および最適な性能のためには、最終積層構造が均衡のとれた機械的特性を有することが重要である。均衡のとれた機械的特性により、温度変動のある積層物の製造および使用条件の下で、積層物全体にわたって負荷および応力を分散させることが可能となる。リン酸エステルを含む接着剤は、積層物が向上した機械的特性を有し、積層構造内の負荷および歪みの均衡を取り、転移させることを可能にする。リン酸エステル添加剤ありおよびなしの硬化した純ポリエステル-ウレタン-ポリウレタンの貯蔵弾性率は、0℃で約50~1,500MPa、25℃で0.7~6.0MPa、60℃で0.10~1.50の範囲となる。重要な性能の差異は、配向の関数としての、積層構造で観察される伸び率の方向にある。機械方向および横方向の伸び率は、8.0~10.5%の範囲で両方向により均衡がとれ、機械方向および横方向における差は、リン酸エステルが基材の表面と相互作用し、積層構造にわたる力の分散の差異の均衡を取るのを助ける能力に起因して、0.0~0.30%ほどの絶対値となる。
【実施例
【0051】
これより、例示的な実施例(「IE」)および比較例(「CE」)を考察することによって、本開示をさらに詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲は、当然ながら、これらのIEに限定されない。
【0052】
原材料
実施例は、以下を含む原材料を使用して調製する:ADCOTE(商標)811A EAの商品名でThe Dow Chemical Companyから市販されているポリエステルポリウレタン樹脂、MOR-FREE(商標)200CおよびADCOTE(商標)811Bの商品名でThe Dow Chemical Companyから市販されている脂肪族イソシアネート硬化剤、VORNAOL(商標)CP 450の商品名でThe Dow Chemical Companyから市販されているポリエーテルポリオール、ISONATE(商標)125Mの商品名でThe Dow Chemical Companyから市販されているイソシアネート、Sigma-Aldrichから市販されている115%ポリリン酸、ならびにSigma-Aldrichから市販されている酢酸エチルおよびメチルエチルケトン。
【0053】
酸価(AV)は、ASTM D3655-06(American Society for Testing and Materials,West Conshohocken,PA,USA)の方法によって測定する。
【0054】
ヒドロキシ価(OHN)は、ASTM D 4274-88(American Society for Testing and Materials,West Conshohocken,PA,USA)の方法によって測定する。
【0055】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、2つのPLgel Mix-BおよびPLgel Mixed-Dカラム、ならびにViscotekのトリプル検出器を使用した。ポリスチレン標準を使用して、重量平均分子量および数平均分子量を決定する普遍的検量線を確立した。分析前に、試料をTHFで希釈して、ポリマー濃度を約2.5mg/mlにした。
【0056】
溶液の粘度は、方法ASTM D2196-10(ASTM,West Conshohocken,PA,USA)に従ってBrookfield粘度計を用いて測定する。
【0057】
実施例は、以下を含むフィルムを使用して調製する:Prelam、The Dow Chemical Companyから市販されているADCOTE(商標)/Coreactant Fを3.26g/m(2.00lb/連)で用いて0.00035ミルのアルミ箔に積層された12μm(48ゲージ)のポリエステル(「PET」)フィルム、1.5ゲージのアルミ箔、および厚さ1ミルまたは2ミルのキャストポリプロピレン(「CPP」)フィルム。
【0058】
リン酸エステル接着促進剤の調製
1Lの複数口丸底フラスコをオーブンで乾燥させ、乾燥Nを30分間フラッシュした後、150グラムのVORANOL(商標)CP 450ポリエーテルポリオールを充填し、70mL/分のN掃引下に置いた。シリンジに4グラムの115%ポリリン酸(PPA)を充填した。PPAを、強く攪拌しながらポリエーテルポリオールに滴下した。最小限の温度上昇が観察された。反応器の内容物を100℃に1時間加熱した後、45℃に冷却した。40グラムの酢酸エチルを加えた後、50グラムのISONATE(商標)125Mジイソシアネートをゆっくりと加えた。反応釜を75℃未満に保つために氷バッチを適用することにより、大幅な発熱を制御し、黄色から琥珀色の発色を観察した。次いで、反応器を65℃で1時間維持し、その時点で内容物を冷却して包装した。生成物の特性は次のとおりである:固形分76.0%、112mg KOH/gのOHN、19.0mg KOH/gのAV、1665mPa・sの25℃での粘度、Mn 1700、Mw 4100のSEC分析、2.4、4.4%≦500ダルトン、および16.0%≦1000ダルトンの多分散性。
【0059】
適切な原材料を含む、比較例(「CE」)および例示的な実施例(「IE」)のための詳細な接着剤配合を、表1に要約する。
【表1】
【0060】
純接着剤キャスティングの調製およびDMA/DSC特性評価
様々なポリエステルウレタンおよびポリエステルウレタン/リン酸エステル化合物のブレンド系を、様々な混合比で脂肪族イソシアネート硬化剤を用いて硬化させる。約15グラムのポリエステルウレタンおよびポリエステルウレタン/リン酸エステル化合物のブレンド溶液を取り、それを、ボトル内で様々な混合比で脂肪族イソシアネートと混合することによって、接着剤キャスティングを調製する。接着剤溶液を約15~30分間混合した後、ポリメチルペンテンのペトリ皿に注ぎ入れる。溶剤を平らな表面上、ドラフト内で一晩蒸発させた後、キャスティングを対流式オーブンに入れ、45℃で7日間硬化させる。
【0061】
キャスティングは、Multi-Frequency-Strain Modeを使用してDMA(TA Instruments Q800)によって分析する。-100℃~150℃で1Hzの単一周波数の適用、3℃/分の加熱速度、0.01%のひずみおよび0.01Nの予荷重の適用を使用する。
【0062】
ガラス転移温度(T)は、オートサンプラーを備えたTA Instruments Q100 DSC、およびTA Advantage for Qシリーズソフトウェアを使用したデスクトップコンピューターと連動したRCSを使用して決定する。約10ミリグラムの試料を、アルミニウム密閉蓋付きのT-ゼロパンに置く。試料は、次の条件を使用して実行する。
初期加熱:80℃で5分間。
初期加熱:-85℃×10℃/分→200℃。
冷却サイクル:200℃×10℃/分→-85℃。
2回目の加熱:-85℃×10℃/分→240℃;室温に戻す。
DSCによるTを2回目の加熱サイクルについて報告する。
【0063】
分析した試料の重要な特性を表2に要約する。リン酸エステル接着促進剤をシステムに導入すると、機械的特性がよく維持された均一なポリマーネットワークが形成された。リン酸エステル添加剤ありおよびなしの硬化した純ポリエステル-ウレタン-ポリウレタンの貯蔵弾性率は、0℃で約50~1,500MPa、25℃で0.7~6.0MPa、60℃で0.10~1.50の範囲となる。
【表2】
【0064】
接着剤積層試験
様々なポリエステルウレタンおよびポリエステルウレタン/リン酸エステル化合物のブレンド系を、様々な混合比で脂肪族イソシアネート硬化剤を用いて硬化させる。接着剤配合物の組成を表1に要約する。接着剤溶液を約15~30分間混合した後、マイヤーロッドでPrelamにコーティングして、コーティング重量が約4.48~4.88g/m(2.75~3.00lb/連)になるようにし、続いて、82℃のニップ温度を使用して2ミルのCPPフィルムに積層する。積層物を、45℃の対流式オーブンで最長14日間硬化させる。
【0065】
接着結合強度を、10.0cm/分の速度の、50ニュートンのロードセルを備えたThwing-Albert Tensile Tester(モデルQC-3A)上で15mm幅の積層ストリップに対して決定する。試験結果の説明には、次の略記を使用する:「AS」は接着剤の割れ、「FT」はフィルムの裂け、「FS」はフィルムの伸展、「AT」は接着剤の移り、「AF」は接着不良である。
【0066】
積層物の延伸性は、Instron Tensile Testerを利用して、積層ストリップ25.4mm×175mmの積層ストリップに対する機械方向および横方向の積層の伸び率(箔/CPP)を検査することによって決定する。Instron Tensile Testerの試験条件は次のとおりである。治具ギャップ7.62cm、ロードセル0~50ニュートン、伸長率(ヘッド速度)5.08cm/分、破断時の伸び(%)を記録した。
【0067】
典型的な結合強度データおよび伸び率データを表3に要約する。
【0068】
重要な性能の差異は、配向の関数としての、積層構造で観察される伸び率の方向にある。機械方向および横方向の伸び率は、8.0~10.5%の範囲で両方向により均衡がとれ、機械方向および横方向における差は、リン酸エステルが基材の表面と相互作用し、積層構造にわたる力の分散の差異の均衡を取るのを助ける能力に起因して、0.0~0.30%ほどの絶対値となる。
【表3】
【0069】
上述の実施形態および実施例に記載されたものに加えて、特定の組み合わせの多くの実施形態が本開示の範囲内であり、そのいくつかを以下に記載する。
実施形態1.溶剤系接着剤組成物であって、
(A)ポリエステルウレタン樹脂と、
(B)リン酸エステル化合物と、
(C)脂肪族イソシアネート硬化剤と、を含む、組成物。
実施形態2.ポリエステルウレタン樹脂が、ポリエステルポリオールとイソシアネートとの反応生成物である、実施形態1または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態3.ポリエステルウレタン樹脂が、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の65~99.5重量パーセントを占める、実施形態1もしくは2または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態4.ポリエステルウレタン樹脂が、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の95~99重量パーセントを占める、実施形態1~3または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態5.リン酸エステル化合物が、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の0.5~35重量パーセントを占める、実施形態1~4または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態6.リン酸エステル化合物が、ポリエステルウレタン樹脂(A)およびリン酸エステル(B)の総重量の1~5重量パーセントを占める、実施形態1~5または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態7.リン酸エステル化合物が構造(I)を有し、
【化6】
式中、Rが任意の有機基である、実施形態1~6または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態8.Rが構造(II)を有し、
【化7】
式中、Rが構造(I)と同じである、実施形態1~7または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態9.リン酸エステル化合物がウレタン結合を含む、実施形態1~8または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態10.溶剤をさらに含む、実施形態1~9または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態11.溶剤が、酢酸エチル、メチルエチルケトン、酢酸メチル、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態1~10または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物。
実施形態12.溶剤系接着剤組成物を調製するための方法であって、
ポリエステルウレタン樹脂を提供することと、
リン酸エステル化合物を提供することと、
ポリエステルウレタン樹脂とリン酸エステル化合物とを混合して、樹脂混合物を形成することと、
樹脂混合物を溶剤中で希釈して、希釈樹脂混合物の総重量に基づいて25~55重量パーセントの塗布固形分を有する、希釈樹脂混合物を形成することと、
脂肪族イソシアネート硬化剤を100:1~100:12の混合比(希釈前の樹脂混合物の重量部:脂肪族イソシアネート硬化剤の重量部)で用いて希釈樹脂混合物を硬化させることと、を含む、方法。
実施形態13.希釈樹脂混合物が、希釈樹脂混合物の総重量に基づいて35~40重量パーセントの塗布固形分を有する、実施形態1~12または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物を調製するための方法。
実施形態14.混合比(希釈前の樹脂混合物の重量部:脂肪族イソシアネートの重量部)が100:4~100:10である、実施形態1~13または後続実施形態のいずれか1つに記載の溶剤系接着剤組成物を調製するための方法。
実施形態15.実施形態1~14または後続実施形態のいずれか1つに記載の接着剤組成物を含む、積層構造。
実施形態16.金属基材をさらに含む、実施形態1~15または後続実施形態のいずれか1つに記載の積層構造。
実施形態17.ポリオレフィン基材をさらに含む、実施形態1~16または後続実施形態のいずれか1つに記載の積層構造。