(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】回転ノズル
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
E02D3/12 102
(21)【出願番号】P 2020057029
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】矢部 浩史
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英次
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123598(JP,A)
【文献】特開2008-194611(JP,A)
【文献】特開平02-268853(JP,A)
【文献】特開2005-161156(JP,A)
【文献】特開平05-096209(JP,A)
【文献】特開2018-150774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
B05B 1/00-3/18
B05B 7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に噴射ノズルから流体を高圧噴射させて該地盤の削孔と改良を行う地盤改良装置に用いられ、前記流体の噴射力の反力により回転する回転ノズルにおいて、
前記流体が流通する流体通路が形成された固定部の軸部を中心として該流体通路に連通する流体通路が形成された回転部を回転自在に設け、
前記固定部の流体通路に対する鉛直面外に前記回転部の流体通路の一部を斜めに傾斜させて外周側に向けて形成し、
前記傾斜した流体通路の一部の先端に先端口を設け、この先端口に噴射ノズルを取り付けて、該噴射ノズルから噴射される前記流体の噴射力の反力により前記軸部を中心として前記回転部を回転自在にし、
かつ、前記固定部と前記回転部との間に形成される空間を封止すると共
に、前記固定部に形成された他の流体通路から供給される流体により膨張変形して前記回転部にブレーキを掛ける弾性体を前記空間の開口に設けたことを特徴とする回転ノズル。
【請求項2】
請求項1記載の回転ノズルであって、
前記固定部に前記軸部の流体通路
及び前記他の流体通路とは
異なる別の流体通路を形成し、
前記別の流体通路から供給される
異物混入防止用の流体を前記固定部と前記回転部との間の隙間より排流自在にしたことを特徴とする回転ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転ノズルであって、
前記固定部と前記回転部の相対向する面側に該回転部の回転状況を検知する回転検出センサを設けたことを特徴とする回転ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の削孔と改良を行う地盤改良装置に用いられる回転ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転ノズルとして、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に記載された回転ノズルは、地盤中に噴射ノズルから流体を高圧噴射させて該地盤の削孔と改良を行う地盤改良装置に用いられ、流体の噴射力の反力により回転するものである。即ち、回転ノズルは、流体が流通する流体通路が形成された固定部の軸部を中心として、該流体通路に連通する流体通路が形成された回転部を回転自在に設け、この回転部の流体通路の一部を固定部の流体通路に対して所定角度傾斜させて外周側に向けて形成し、この傾斜した流体通路の先端口に噴射ノズルを取り付けて、該噴射ノズルから噴射される流体の噴射力の反力により軸部を中心として回転部を回転自在にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の回転ノズルでは、回転部の回転数を地盤の削孔や改良の目的に見合った状態に制御する方法が見当たらなかった。さらに、地盤の削孔や改良を行う際に、土中で固定部と回転部の間に形成された隙間に土砂やゴミ等の異物が混入して回転部の回転が止まる問題も生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、地盤の土中内での回転部の回転を制御することができる回転ノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、地盤中に噴射ノズルから流体を高圧噴射させて該地盤の削孔と改良を行う地盤改良装置に用いられ、前記流体の噴射力の反力により回転する回転ノズルにおいて、前記流体が流通する流体通路が形成された固定部の軸部を中心として該流体通路に連通する流体通路が形成された回転部を回転自在に設け、前記固定部の流体通路に対する鉛直面外に前記回転部の流体通路の一部を斜めに傾斜させて外周側に向けて形成し、前記傾斜した流体通路の一部の先端に先端口を設け、この先端口に噴射ノズルを取り付けて、該噴射ノズルから噴射される前記流体の噴射力の反力により前記軸部を中心として前記回転部を回転自在にし、かつ、前記固定部と前記回転部との間に形成される空間を封止すると共に、前記固定部に形成された他の流体通路から供給される流体により膨張変形して前記回転部にブレーキを掛ける弾性体を前記空間の開口に設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の回転ノズルであって、前記固定部に前記軸部の流体通路及び前記他の流体通路とは異なる別の流体通路を形成し、前記別の流体通路から供給される異物混入防止用の流体を前記固定部と前記回転部との間の隙間より排流自在にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の回転ノズルであって、前記固定部と前記回転部の相対向する面側に該回転部の回転状況を検知する回転検出センサを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、回転部にブレーキを掛ける弾性体を固定部と回転部との間に形成される空間の開口に設けたことにより、地盤の土中内での回転部の回転を制御することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、固定部に軸部の流体通路とは別の流体通路を形成し、この別の流体通路から供給される流体を固定部と回転部との間の隙間より排流自在にしたことにより、固定部と回転部との間の隙間に土砂やゴミ等の異物が混入するのを防止することができ、回転部の安定した回転を確保することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、固定部と回転部の相対向する面側に該回転部の回転状況を検知する回転検出センサを設けたことにより、地盤の土中内での回転部の回転数を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の回転ノズルの断面図である。
【
図3】
図1中III-III線に沿う断面図である。
【
図5】上記回転ノズルの回転原理を示す説明図である。
【
図6】上記回転ノズルの回転部にブレーキを掛けた状態を示す断面図である。
【
図7】上記回転ノズルの固定部と回転部との間の隙間からエアを排気した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態の回転ノズルの断面図、
図2は回転ノズルの正面図、
図3は
図1中III-III線に沿う断面図、
図4は
図1中IV-IV線に沿う断面図、
図5は回転ノズルの回転原理を示す説明図、
図6は回転ノズルの回転部にブレーキを掛けた状態を示す断面図、
図7は回転ノズルの固定部と回転部との間の隙間からエアを排気した状態を示す断面図である。
【0015】
図1に示すように、回転ノズル1は、地盤(図示省略)中に噴射ノズル25から水或いはセメントスラリー等の流体Sを高圧噴射させて該地盤の削孔と改良を行う地盤改良装置(図示省略)に用いられるものであり、流体Sが流通する主流体通路(流体通路)12が中心に突出した軸部(シャフト)11まで形成されたホルダーである固定部10と、主流体通路12に連通する副流体通路(流体通路)21が形成され、固定部10の軸部11を中心として流体Sの噴射力の反力により回転する回転体である回転部20と、を備えている。
【0016】
固定部10は大径の円柱状に形成されており、その前面10aの中央には、小径で円柱段差状の軸部11が一体突出形成されている。この軸部11には、前後に位置する各ボールベアリング23を介して回転部20が回転自在に支持されている。
【0017】
固定部10の主流体通路12は、固定部10の後面10bに突出した突出部分10cの中央より大径内周面部12aと、円錐内面部12bと、軸部11の大径側から小径側に形成された小径内周面部12cと、この小径内周面部12cの先端より直角に曲がった連通路12dと、を有している。そして、主流体通路12の大径内周面部12aより回転部20の副流体通路21内へと流体Sが供給されるようになっている。
【0018】
図1に示すように、回転部20は、固定部10の外径と同径の円柱状に形成されており、その中央に固定部10の軸部11が挿通される断面円形の中心孔22が形成されている。
【0019】
また、
図1、
図2に示すように、回転部20の副流体通路21は、固定部10の主流体通路12に連通する円環状通路21aと、この円環状通路21aから前面20a側に向けて放射状で且つ180°隔てて形成された一対の分岐通路(一部)21b,21bと、を有している。尚、
図1に示すように、回転部20の中心孔22と副流体通路21の円環状通路21aとの間の隙間は、中心孔22に形成された各円環状凹部22aに嵌合されるシールリング24により流体Sが漏れないように閉塞されている。
【0020】
つまり、
図1、
図2に示すように、回転部20には、副流体通路21の円環状通路21aに連通する一対の分岐通路21b,21bが固定部10の水平である主流体通路12に対する鉛直面外に三次元的に所定角度θ傾斜させて回転部20の外周側から前面20aに向けて放射状に形成されている。そして、この傾斜した各分岐通路21bの先端には、先端口21cが設けられている。この一対の先端口21c,21cには、噴射ノズル25がネジ止めによりそれぞれ取り付けられていて、各噴射ノズル25から噴射される流体Sの噴射力の反力により固定部10の軸部11を中心として回転部20が回転するようになっている。
【0021】
詳述すると、
図1、
図2に示すように、固定部10の軸部11に対して回転部20の一対の分岐通路21b,21bが所定角度θ傾斜していることにより、各分岐通路21bの先端口21cに取り付けられた噴射ノズル25から流体Sが高圧噴射された際に、回転部20が上記の噴射力により、固定部10の軸部11を中心として回転するようになっている。即ち、
図5に示すように、噴射ノズル25から高圧噴射される流体Sの噴射力をFとすると、固定部10の軸部11に直交する面内において噴射力Fの水平分力であるF×sinθ=F’が作用する。この水平分力F’が推進力(反力)となって、回転部20が固定部10の軸部11を中心として回転するようになっている。
【0022】
さらに、
図1、
図6に示すように、回転部20の後面20bには、断面円形の凹部20cが形成されている。この凹部20cと固定部10の軸部11との間には、空間26が形成されている。これら固定部10の軸部11と回転部20の凹部20cとの間に形成された空間26内には、固定部10に形成されたブレーキ専用のエアライン(他の流体通路)13からエア(流体)Aが供給されるようになっている。また、空間26の開口26aには、エアホース14を介してブレーキ専用のエアライン13から供給されるエアAにより膨張変形して回転部20にブレーキを掛ける硬質ゴム(弾性体)27が該開口26aを閉塞するように設けられている。この硬質ゴム27は、断面横U字の円環状に形成されていて、円環状の支持部材28を介して抜け止め自在に設けられている。これにより、硬質ゴム27の内周部27aは、固定部10の軸部11の段差大径部の外周面11bに圧接されていると共に、硬質ゴム27の外周部27bは、回転部20の凹部20cの内周面20dに圧接されている。
【0023】
また、
図1、
図7に示すように、固定部10の前面10aと硬質ゴム27との間には、第2の空間29が形成されている。この第2の空間29内には、固定部10に軸部11の主流体通路12
及びブレーキ専用のエアライン13とは別に形成された排気専用のエアライン(別の流体通路)15から
異物混入防止用のエア(流体)Aが供給されるようになっている。そして、エアホース16を介して排気専用のエアライン15から第2の空間29内に供給されるエアAは、固定部10の前面10aと回転部20の後面20bとの間に形成された隙間tより外へ排気(排流)されるようになっている。この外へ排気されるエアAにより、隙間tに混入しようとする土砂やゴミ等の異物Bが吹き飛ばされるようになっている。
【0024】
さらに、
図1に示すように、固定部10の軸部11の段差大径部の前面11cと該前面11cに相対向する回転部20の凹部20cの底面20e側には、回転部20の回転状況を検知する近接センサ(回転検出センサ)30が設けられている。
【0025】
図1、
図3に示すように、近接センサ30は、回転部20の凹部20cの底面20eに取り付けられ、凹部31aと凸部31bとを交互に有する円環板状のリング31と、この円環板状のリング31の凹部31aと凸部31bの数から回転部20の回転数を計算して検出するセンサ部32と、このセンサ部32からの検出信号を地上へ出力するケーブル33と、を備えている。尚、円環板状のリング31に形成された凹部31aと凸部31bとの間隔を密にする(凹凸の数を増やす)ことで、近接センサ30の精度を向上させることができる。
【0026】
以上実施形態の回転ノズル1によれば、地盤の削孔や改良を行う際に、
図6に示すように、回転部20にブレーキを掛ける硬質ゴム27を固定部10の軸部11の段差大径部の外周面11bと回転部20の凹部20cの内周面20dとの間に形成される空間26の開口26aに設け、ブレーキ専用のエアライン13から供給されるエアAにより硬質ゴム27を膨張変形させて回転部20にブレーキを掛けるようにし、ブレーキ圧力を地上から操作することで、地盤の土中内での回転部20の回転を制御することができる。
【0027】
また、地盤の削孔や改良を行う際に、
図7に示すように、固定部10に軸部11の主流体通路12とは別の流体通路としての排気専用のエアライン15を形成し、この排気専用のエアライン15から供給されるエアAを固定部10の前面10aと回転部20の後面20bとの間の隙間tより常に排気するようにしたことで、固定部10の前面10aと回転部20の後面20bとの間の隙間tに土砂やゴミ等の異物Bが混入するのを防止することができ、回転部20の安定した回転を確保することができる。
【0028】
さらに、地盤の削孔や改良を行う際に、
図1に示すように、固定部10の軸部11の段差大径部の外周面11bと回転部20の凹部20cの底面20e間に回転部20の回転数を検出する近接センサ30を設けたことにより、地盤の土中内での回転部20の回転数を把握することができる。
【0029】
尚、前記実施形態の回転ノズルによれば、回転部の前面側に一対の噴射ノズルを傾斜させて設けたが、回転部の外周面側にも噴射ノズルを複数傾けて設けても良い。この形態の場合において、回転ノズルを用いて地盤の削孔を行う際に、前面側の傾斜する噴射ノズルと外周面側の傾斜する噴射ノズルの両方のノズルから高圧水を噴射して削孔を行い、地盤改良を行う際に、主流体通路の先端側にスチールボールを入れて前面側の傾斜する噴射ノズルへの副流体通路を閉じ、外周面側の傾斜する噴射ノズルよりセメントスラリーを高圧噴射して地盤改良を行う。
【0030】
また、前記実施形態によれば、傾斜する噴射ノズルを回転部の前面側に一対設けたが、3つ以上設けたり、回転部の外周面側に傾斜する噴射ノズルを複数設けても良い。
【0031】
さらに、前記実施形態によれば、回転部の前面側に噴射ノズルを傾斜させて設け、回転部の中心孔より露出する固定部の軸部の前面には、噴射ノズルを設けていないが、固定部の軸部の先端まで主流体通路を形成して、回転部の中心孔より露出する固定部の軸部の前面に噴射ノズルを傾斜させることなく設けても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 回転ノズル
10 固定部
11 軸部
11c 前面(相対向する面)
12 主流体通路(流体通路)
13 ブレーキ専用のエアライン(他の流体通路)
15 排気専用のエアライン(別の流体通路)
20 回転部
20e 底面(相対向する面)
21 副流体通路(流体通路)
21a 円環状通路
21b 分岐通路(一部)
21c 先端口
25 噴射ノズル
26 空間
26a 開口
27 硬質ゴム(弾性体)
30 近接センサ(回転検出センサ)
S 水或いはセメントスラリー等(流体)
A エア(流体)
F 噴射力
F’ 反力
θ 傾斜角度
t 隙間