(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20220929BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220929BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220929BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/36
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081704
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506253012
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】杜 安邦
(72)【発明者】
【氏名】莊 子毅
(72)【発明者】
【氏名】王 炳傑
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-182947(JP,A)
【文献】特開平07-206983(JP,A)
【文献】特開2006-008854(JP,A)
【文献】特開平11-060914(JP,A)
【文献】特開2015-180760(JP,A)
【文献】特開2013-194166(JP,A)
【文献】特開2018-141052(JP,A)
【文献】特開平10-130467(JP,A)
【文献】特開2016-003260(JP,A)
【文献】特開2005-067912(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0057125(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08K 3/013
C08K 3/22
C08K 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び、
(C)無機フィラー、
を含み、
前記無機フィラー(C)は、シリカ、アルミナ、又はそれらの組み合わせを含み、
前記無機フィラー(C)は、
ジブロモメタン及びエタノールを常温常圧下で混合することで得られる、比重
2.18の試験液体と混合され、
25℃、4200rpmの回転速度で5分間遠心分離し、遠心分離後12時間放置した際に、前記無機フィラー(C)の一部は、前記
試験液体中に懸濁され、前記無機フィラー(C)の全重量に対する前記無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の比は、
0より大きく、且つ0.6未満である、
ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機フィラー(C)は、前記無機フィラー(C)の全重量に基づき、少なくとも90重量%のシリカを含む、
ことを特徴とする請求項
1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリカは、溶融シリカである、
ことを特徴とする請求項
2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリカは、球形シリカである、
ことを特徴とする請求項
3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記無機フィラー(C)は、以下の粒度分布:
D90/D10が2~40であり、D99は30μm以下である、
を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は溶媒フリーである、
ことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、常温常圧下で、1000Pa・s以下の粘度を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(A)は、フェノールエポキシ樹脂、クレゾールエポキシ樹脂、ナフタレンエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化剤(B)は、無水物、イミド化合物、スルホニウム塩、アミノ含有化合物、ヒドロキシル含有化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂(A)、前記硬化剤(B)及び前記無機フィラー(C)の全重量に基づき、前記エポキシ樹脂(A)及び前記硬化剤(B)の総含有量は5重量%~25重量%であり、前記無機フィラー(C)の含有量は、75重量%~95重量%である、
ことを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1乃至1
0のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化して形成される、
ことを特徴とするパッケージング材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、特に、特定の条件を満たす無機フィラーを含むエポキシ樹脂系樹脂組成物を提供する。本発明の樹脂組成物は、半導体基板のパッケージング材料として、特に大口径ウエハのパッケージング材料として、使用することができる。
【背景技術】
【0002】
半導体製造業では、ウエハを保護するためにパッケージング材料を使用することにより、保護層がしばしばウエハ上に形成される。ウエハレベルパッケージングは、ウエハを小さなチップにカットした後にチップをパッケージングすることよりむしろウエハ上で直接チップをパッケージングすることを示す。一般に、ウエハレベルパッケージングは、以下の利点:より広い帯域幅、より高速なパッケージング、よりよい信頼性、及び低いエネルギー消費量の利点を提供することができる。最近、大口径ウエハ(例えば、12インチ以上のウエハ)の開発を考慮し、ウエハに使用するためのパッケージング材料の機械的強度及び寸法安定性の要求が厳格となってきている。樹脂組成物への無機フィラーの添加は、それから提供されるパッケージング材料の寸法安定性を改善することができるが、無機フィラーを含むパッケージング材料は、その後のファンアウト・ウエハレベルパッケージング中に、欠陥を引き起こすボイドを通常有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した技術的問題に鑑み、本発明は、エポキシ樹脂系樹脂組成物と、その樹脂組成物を使用して形成されるパッケージング材料と、に関連する。特定の条件を満たす無機フィラーをエポキシ樹脂系樹脂組成物中で使用することにより、その樹脂組成物を硬化して得られる材料は、グラインド後にボイドが生じず、従って、パッケージング用途に、特に大口径ウエハのパッケージングに適している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、樹脂組成物を提供することであり、樹脂組成物は、以下の成分:
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び、
(C)無機フィラー、
を含み、
無機フィラー(C)は、2.16~2.19の範囲の比重を有する液体と混合され、無機フィラー(C)の一部は、液体中に懸濁され、無機フィラー(C)の全重量に対する無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の比は、0.6未満である、
ことを特徴とする。
【0005】
いくつかの実施形態において、無機フィラー(C)の全重量に対する無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の比は、0より大きい。
【0006】
いくつかの実施形態において、無機フィラー(C)は、無機フィラー(C)の全重量に基づき、少なくとも90重量%のシリカを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、シリカは、溶融シリカである。
【0008】
いくつかの実施形態において、シリカは、球形シリカである。
【0009】
いくつかの実施形態において、無機フィラー(C)は、以下の粒度分布:
D90/D10が2~40であり、D99は30μm以下である、
を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、樹脂組成物は溶媒フリーであり、樹脂組成物は、常温常圧下で、1000Pa・s以下の粘度を有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂(A)は、フェノールエポキシ樹脂、クレゾールエポキシ樹脂、ナフタレンエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、硬化剤(B)は、無水物、イミド化合物、スルホニウム塩、アミノ含有化合物、ヒドロキシル含有化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機フィラー(C)の全重量に基づき、エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)の総含有量は5重量%~25重量%であり、無機フィラー(C)の含有量は、75重量%~95重量%である。
【0014】
本発明の別の目的は、上述した樹脂組成物を硬化して形成されるパッケージング材料を提供することである。
【0015】
上記の目的、本発明の技術的特徴及び利点をより明らかにするため、本発明を以下のいくつかの実施形態を参照して詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明の精神から離れることなく、本発明を様々な実施形態において実施することができ、明細書に記載されている実施形態に限定されるべきではない。
【0017】
付加的に説明されていない限り、本明細書及び請求項に記載の「a」、「the」等の表現は、単数形と複数形との両方を含むべきである。
【0018】
付加的に説明されていない限り、本明細書及び請求項に記載の「第1」、「第2」等の表現は、特定の意味を有せず説明されている要素又は構成要素を区別するために単に使用されている。これらの表現は、何らの優先順位を示すものではない。
【0019】
本明細書で使用されているように、「Dn」の用語は、粒度分布の累積パーセンテージがn体積%に達するときの粒径を指す。つまり、「D10」は、粒度分布の累積パーセンテージが10体積%に達するときの粒径を指す。「D50」は、粒度分布の累積パーセンテージが50体積%に達するときの粒径を指す。「D90」は、粒度分布の累積パーセンテージが90体積%に達するときの粒径を指す。「D99」は、粒度分布の累積パーセンテージが99体積%に達するときの粒径を指す。粒度分布とは、レーザー粒度分析計を用いて分析したフィラーの粒径の分布グラフを指す。
【0020】
本明細書で使用されているように、「常温常圧」は、温度が25℃であり及び圧力が1気圧である環境を指す。「溶媒フリー」の用語は、溶媒の含有量が、仮に存在するとしても、樹脂組成物の全重量に基づき0.5重量%を上回らないことを意味する。
【0021】
本明細書で使用されているように、無機フィラーの「懸濁部分」は、無機フィラーが液体と混合された場合に、特定の比重を有し液体の表面で懸濁する、及び液体内で懸濁する無機フィラーを含む。換言すると「懸濁部分」は、液体内で沈殿していない部分を示す。
【0022】
従来技術と比較して、本発明の際だった特徴は、本発明の樹脂組成物が特定の条件を満たすエポキシ樹脂、硬化剤及び無機フィラーを使用し、樹脂組成物を硬化して得られる材料は特にボイドがなく、従ってウエハパッケージングに、特に大口径ウエハパッケージングに適していることにある。以下、本発明の樹脂組成物の成分及び調製方法について詳細に説明する。
【0023】
1.樹脂組成物
【0024】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、及び無機フィラー(C)を必須成分として含み、必要に応じて使用され得る他の任意の成分を含む。
【0025】
1.1.エポキシ樹脂(A)
【0026】
本明細書で使用されているように、エポキシ樹脂(A)の種類は、特に限定されない。一般的なエポキシ樹脂は、フェノール系エポキシ樹脂と脂環式エポキシ樹脂とを含む。フェノール系エポキシ樹脂の例は、フェノールエポキシ樹脂、クレゾールエポキシ樹脂、ナフタレンエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂を含むが、これらに限られない。クレゾールエポキシ樹脂の例は、オルトクレゾールエポキシ樹脂、メタクレゾールエポキシ樹脂、及びパラクレゾールエポキシ樹脂を含むが、これらに限られず、オルトクレゾールエポキシ樹脂が好ましい。ビスフェノールエポキシ樹脂の例は、ビスフェノールAエポキシ樹脂及びビスフェノールFエポキシ樹脂を含むが、これに限られない。それぞれのフェノールエポキシ樹脂は、好ましくはノボラックフェノールエポキシ樹脂である。脂環式エポキシ樹脂の例は、ジクロロペンタジエンエポキシ樹脂、水素化ビスフェノールAエポキシ樹脂、及び(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートを含むが、これに限られない。前述したエポキシ樹脂は、単独で又は、これらのいくつかの混合物で、又は他のエポキシ樹脂と組み合わせて、使用することができる。
【0027】
本発明の好適な実施形態において、エポキシ樹脂(A)は、常温常圧下で液体のエポキシ樹脂である。特にエポキシ樹脂(A)は、常温常圧下で1000Pa・s未満の粘度を有するエポキシ樹脂である。常温常圧下で液体であるエポキシ樹脂を使用することによって、本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の各成分を分散させるための溶媒を添加する必要性をなくすことができる。つまり、樹脂組成物を硬化させて得られる材料は、加熱及び硬化中の溶媒の揮発によって生ずる気泡、ボイド等のような欠陥を有しないように、樹脂組成物を溶媒フリーとすることができる。そのような欠陥は、パッケージング用途には好ましくない。
【0028】
本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂の含有量は特に限定されない。一般に、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機フィラー(C)の全重量に基づき、エポキシ樹脂(A)の含有量は、4.5重量%~15重量%の範囲であることができる。例えば、エポキシ樹脂(A)の含有量は、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%、10重量%、10.5重量%、11重量%、11.5重量%、12重量%、12.5重量%、13重量%、13.5重量%、14重量%、又は14.5重量%である、又は本明細書に記載の数値の任意の2つの値の間の範囲内であることができる。
【0029】
1.2.硬化剤(B)
【0030】
本明細書で使用されるように、硬化剤は、1つ又は複数のエポキシ官能基の開環反応を開始し、エポキシ樹脂との架橋硬化反応を受けることができる成分を指す。硬化剤の種類は、1つ又は複数のエポキシ官能基の開環反応を開始し、エポキシ樹脂との架橋硬化反応を受けることができる限り、特に限定されない。硬化剤の例は、無水物、イミド化合物、スルホニウム塩、アミノ含有化合物及びヒドロキシル含有化合物を含むが、これらに限定されない。前述した硬化剤は、単独で又は、これらのいくつかの混合物で、又は他の硬化剤と組み合わせて、使用することができる。
【0031】
無水物は、一無水物、二無水物、ポリ無水物、及び前述の無水物と他の共重合可能なモノマーとの共重合体を含むが、これらに限られない。一無水物の例は、無水酢酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、4-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、又はヘキサヒドロフタル酸無水物を含むが、これらに限られない。二無水物の例は、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物又はピロメリト酸二無水物を含むが、これらに限られない。ポリ無水物の例は、メリット酸三無水物を含むが、これに限られない。無水物と他の共重合可能なモノマーとの共重合体の例は、スチレンと無水マレイン酸との共重合体を含むが、これに限られない。
【0032】
イミド化合物はビスマレイミド化合物及びイミダゾール化合物を含むが、これらに限られない。ビスマレイミド化合物の例は、1,2-ビスマレイミドエタン、1,6-ビスマレイミドヘキサン、1,3-ビスバレイミドベンゼン、1,4-ビスマレイミドベンゼン、2,4-ビスマレイミドトルエン、4,4’-ビスマレイミドジフェニルメタン等を含むが、これらに限られない。前述のビスマレイミド化合物は、単独で、又はこれらのいくつかの混合物で、又は他のビスマレイミド化合物と組み合わせて使用することができる。イミダゾール化合物の例は、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-フェニルイミダゾール、及び1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールを含むが、これらに限られない。前述したイミダゾール化合物は、単独で、又はこれらのいくつかの混合物で、又は他のイミダゾール化合物と組み合わせて使用することができる。
【0033】
スルホニウム塩の例は、Sanshin Chemicalから入手可能なモデル番号SI-45L、SI-60L、SI-80L、SI-100L、SI-110L、SI-150L及びSI-150Lの製品を含むが、これらに限られない。
【0034】
アミノ含有化合物の例は、ジアミノジフェニルスルホン(DSS)、ジアミノジフェニルメタン(DDM)、アミノトリアジンノボラック(ATN)樹脂、ジシアンジアミド(DICY)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、メタンジアミン、及びイソホロンジアミンを含むが、これらに限られない。前述のアミノ含有化後物は、単独で、又はこれらのいくつかの混合物で、又は他のアミノ含有化合物と組み合わせて使用することができる。
【0035】
ヒドロキシル含有化合物は、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF及びノボラック樹脂を含むが、これらに限られない。ヒドロキシル含有化合物は、単独で、これらのいくつかの混合物として、他のヒドロキシル含有混合物と組み合わせて使用することができる。
【0036】
本発明の好適な実施形態において、硬化剤(B)は、常温常圧下で液体の硬化剤である。特に、硬化剤(B)は、常温常圧下で1000Pa・s未満の粘度を有する硬化剤である。添付の実施例において、無水物及びスルホニウム塩が使用される。
【0037】
本発明の樹脂組成物において、硬化剤(B)の含有量は、所望の硬化効果を提供可能な限り、特に限定されない。一般に、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機フィラー(C)の全重量に基づき、硬化剤(B)の含有量は、0.1重量%~15重量%の範囲であることができる。例えば、硬化剤(B)の含有量は、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%、10重量%、10.5重量%、11重量%、11.5重量%、12重量%、12.5重量%、13重量%、13.5重量%、14重量%、又は14.5重量%である、又は本明細書に記載の数値の任意の2つの数値の間の範囲内であることができる。
【0038】
加えて、本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機フィラー(C)の全重量に基づき、エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計含有量は、5重量%~25重量%の範囲であることができる。例えば、エポキシ樹脂(A)及び硬化剤(B)の合計含有量は、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、又は24重量%である、若しくは本明細書に記載の任意の2つの値の間の範囲内であることができる。
【0039】
1.3 無機フィラー(C)
【0040】
本発明の樹脂組成物において、無機フィラー(C)は、以下の条件:
無機フィラー(C)が、2.16、2.17、2.18又は2.19の比重のような、2.16~2.19の範囲の比重を有する液体と混合された場合に、無機フィラー(C)の一部が液体中に懸濁し、無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の無機フィラー(C)の全重量に対する比は、0.6未満、好ましくは0.4未満である、
を満たす。好ましくは、無機フィラー(C)が2.18の比重を有する液体と混合された場合、無機フィラー(C)の一部が液体中に懸濁され、無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の、無機フィラー(C)の全重量に対する比は、0.6未満であり、好ましくは0.4未満である。無機フィラー(C)が前述の条件を満足する場合、本発明の樹脂組成物を硬化させて得られた硬化された製品は、ボイド欠陥を有さず、パッケージング用途に好ましいことが発見された。ここで、上記の比重を有する限り、液体の種類は特に限定されない。例えば、液体は、溶媒、いくつかの溶媒の混合物、若しくは1つ又は複数の溶質及び1つ又は複数の溶媒を含む溶液であることができる。本発明のいくつかの実施形態において、液体は、ジブロモメタンとエタノールとの混合物である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の、無機フィラー(C)の全重量に対する比は、0より大きく且つ0.6より小さく、好ましくは、0より大きく且つ0.4より小さい。例えば、無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の、無機フィラー(C)の全重量の比は、0.001、0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、又は0.39であることができ、若しくは本明細書に記載の任意の2つの値の間の範囲内であることができる。
【0042】
無機フィラー(C)が上記条件を満たすことを前提として、無機フィラー(C)の種類は、特に限定されない。無機フィラー(C)の例は、シリカ、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク粉末、マイカ粉末及び窒化ホウ素を含むが、これらに限られない。前述のフィラーは、単独で、又はそれらのいくつかの混合物で、又は他のフィラーと組み合わせて使用することができる。本発明のいくつかの実施形態において、無機フィラー(C)は、シリカ、アルミナ又はそれらの組み合わせを含む。
【0043】
本発明の好適な実施形態において、無機フィラー(C)はシリカを含み、無機フィラー(C)の全重量に基づき、シリカの含有量は90重量%以上である。例えば、シリカの含有量は、90.5重量%、91重量%、91.5重量%、92重量%、92.5重量%、93重量%、93.5重量%、94重量%、94.5重量%、95重量%、95.5重量%、96重量%、96.5重量%、97重量%、97.5重量%、98重量%、98.5重量%、99重量%、99.5重量%、又は100重量%、若しくは本明細書に記載の任意の2つの値の間に入る範囲内であることができる。いかなる理論にも制限されることなく、無機フィラー(C)が、少なくとも90重量%のシリカを含む場合、パッケージング材料の寸法安定性及び機械的特性を改善することが好ましいと考えられる。
【0044】
本発明の好適な実施形態において、無機フィラー(C)は、溶融シリカを含む。溶融シリカは、アモルファスシリカを指す。一般に、シリカがアモルファスか否かを判断するための方法は、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、ラマン分光法、X線回折(XRD)、及び透過型電子顕微鏡(TEM)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本発明の樹脂組成物で使用することができる無機フィラーの形は、球形、フレーク、短棒、繊維、又は立方体形であることができるが、これらに特に限定されない。本発明の好適な実施形態において、球形のシリカを使用する。いかなる理論にも制限されることなく、球形の無機フィラーは、樹脂組成物中でより均一に分散することができ、その後の用途に好適であると考えられる。
【0046】
加えて、本発明の樹脂組成物において、無機フィラー(C)は、好ましくは特定の粒度分布を含む。具体的には、無機フィラー(C)のD90/D10は、好ましくは2~40の範囲である。例えば、無機フィラー(C)のD90/D10は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38又は39である、若しくは本明細書に記載の任意の2つの値の間の範囲内であることができる。加えて、無機フィラー(C)のD99は、好ましくは30μm以下である。例えば、無機フィラー(C)は、29μm、28μm、27μm、26μm、25μm、24μm、23μm、22μm、21μm、20μm、19μm、18μm、17μm、16μm、15μm、14μm、13μm、12μm、11μm、10μm、9μm、8μm、7μm、6μm、5μm、4μm、3μm、2μm、1μm、0.9μm、0.8μm、0.7μm、0.6μm、0.5μm、0.4μm、0.3μm、0.2μm、又は0.1μmであることができる、若しくは、本明細書に記載の任意の2つの値の間の範囲内であることができる。無機フィラーの粒度分布が、所定の範囲内に入る場合、樹脂組成物の粘度を低くすることができ、樹脂組成物を硬化して得られる材料は、より優れたTg及び機械的強度を得ることができる。本発明の好適な実施形態において、無機フィラー(C)のD50は、5μm~10μmの範囲である。例えば、無機フィラー(C)のD50は、5.5μm、6μm、6.5μm、7μm、7.5μm、8μm、8.5μm、9μm、又は9.5μmであることができる、若しくは、本明細書に記載の任意の2つの値の間の範囲内であることができる。無機フィラーのD50が、所定の範囲内に入る場合、樹脂組成物は、低粘度でありながら、改善されたパッケージング充填性を有することができる。
【0047】
加えて、無機フィラー(C)と樹脂組成物の他の成分との相溶性を高めるために、及び樹脂組成物の加工性を向上させるために、無機フィラー(C)は、樹脂組成物に添加される前に、例えばカップリング剤で表面修飾されてもよい。カップリング剤の例は、これらに限られないが、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤及びポリシロキサンカップリング剤を含み、シランカップリング剤が好適である。特定の表面修飾方法は、当業者には一般的な知識であり、本発明の主要な特徴の1つではないため、詳細には説明しない。
【0048】
本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)及び無機フィラー(C)の全重量に基づき、無機フィラー(C)の含有量は、75重量%~95重量%の範囲であることができる。例えば、無機フィラー(C)の含有量は、76重量%、77重量%、78重量%、79重量%、80重量%、81重量%、82重量%、83重量%、84重量%、85重量%、86重量%、87重量%、88重量%、89重量%、90重量%、91重量%、92重量%、93重量%又は94重量%であることができる、若しくは、本明細書に記載の任意の2つの値の間の範囲内であることができる。無機フィラー(C)の含有量が所定の範囲を下回る場合、樹脂組成物を硬化して得られる材料の機械的強度は、不十分となり得る。反対に、無機フィラー(C)の含有量が所定の範囲を上回る場合、樹脂組成物の粘度は、その後の用途には高すぎる可能性がある。
【0049】
1.4 他の任意成分
【0050】
本発明の樹脂組成物は、製造時に樹脂組成物の加工性を適応的に改善するために、又は樹脂組成物を加工して得られる材料の物理化学特性を改善するために、必要に応じて、以下に説明する触媒、並び当技術分野で既知の添加剤のような他の任意の成分を更に含んでもよい。当技術分野で既知の添加剤の例は、難燃剤、カーボンブラック、着色剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤、チキソトロープ剤、レベリング剤、カップリング剤、離型剤、防カビ剤、安定剤、抗酸化剤、及び抗菌剤を含むが、これらに限られない。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態において、1つ又は複数のエポキシ官能基の開環反応を促進するため、及び樹脂組成物の硬化温度をより低くするために、触媒が樹脂組成物に更に添加される。触媒の種類は、1つ又は複数のエポキシ官能基の開環反応を促進する及び樹脂組成物の硬化温度をより低くする限り、特に限定されない。触媒の好適な例は、三級アミン、イミダゾール、有機ホスフィン化合物、アミジン、及びそれらの誘導体を含むが、これらに限られない。触媒は、単独で、又はこれらのいくつかの混合物で、又は触媒と組み合わせて使用することができる。添付の実施例において、有機ホスフィン化合物を触媒として使用する。
【0052】
一般に、樹脂組成物の全重量に基づき、触媒の含有量は、0.05重量%~2重量%であることができる。例えば、触媒の含有量は、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、又は1.9重量%であることができ、又は本明細書に記載の任意の2つの値の間の範囲であることができるが、本発明はそれらに限られない。
【0053】
1.5.樹脂組成物の調製
【0054】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の各成分を攪拌機で均一に混合し、得られた混合物を溶媒内に溶解させる又は分散させることによって、後続の加工のためのワニスに調製してもよい。溶媒は、樹脂組成物の成分を溶解又は分散させることができるが、樹脂組成物の成分とは反応しない任意の不活性溶媒であることができる。不活性溶媒の例は、トルエン、γ-ブチロラクトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ブタノン、アセトン、キシレン、メチルイソブチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン(NMP)を含むが、これらに限られない。
【0055】
加えて、上述したように、本発明の樹脂組成物は、溶媒フリーとすることができるため、樹脂組成物を硬化して得られる材料は、加熱及び硬化の間に溶媒が揮発することで生ずる気泡、ボイド等のような欠陥を有しない。本発明の溶媒フリー樹脂組成物は、パッケージング材料を提供するために好適であり、低VOC(揮発性有機化合物)に対する環境要件に更に準拠することができる。例えば、本発明の溶媒フリー樹脂組成物は、以下のようにして調製することができる。最初に、樹脂組成物の各成分(液体エポキシ樹脂(A)、液体硬化剤(B)及び無機フィラー(C)を含むが、触媒は含まない)を、ガラス反応がまに入れ、密閉された常圧下で、25℃、1~2rpmの回転速度で3時間、混合する。次に、触媒を反応がま内に入れ、密閉された常圧下で、25℃、1~2rpmの回転速度で0.5時間、混合して、プレ混合樹脂組成物を得る。その後、プレ混合樹脂組成物を、3本ローラーミル内に入れ、0.5~1rpmの初期回転速度で3回混合し、次の工程のための半硬化(Bステージ)樹脂組成物を得る。
【0056】
2.パッケージング材料
【0057】
本発明は、上述した樹脂組成物によって提供されるパッケージング材料も提供し、パッケージング材料は、上述した樹脂組成物を硬化することで形成される。つまり、パッケージング材料は、完全に硬化された(つまり、Cステージ)樹脂組成物から得られる材料である。樹脂組成物の硬化工法は、特に限定されない。本発明のいくつかの実施形態において、樹脂組成物は加熱により硬化される。
【0058】
本発明のパッケージング材料は、高い機械強度と耐候性を有するため、ウエハ又は他の半導体装置のパッケージングでの使用に好適である。半導体装置の例は、太陽電池、有機発光ダイオード表示装置を含むが、これらに限られない。しかしながら、本発明のパッケージング材料は、上述したパッケージング用途に限られず、風力タービン発電機のブレードのような表面保護が要求される任意の他の物のパッケージング使用されることもできる。
【0059】
3.実施例
【0060】
3.1.検査方法
【0061】
本発明を、以下の実施形態によって更に説明する。測定機器及び方法は、それぞれ以下である。
【0062】
(無機フィラーの懸濁部分の重量試験)
【0063】
第1に、ジブロモメタン(純度>99%、比重は2.497g/cm3)及びエタノール(純度>95%、比重は0.810g/cm3)を、常温常圧下で混合し、比重2.18を備える10mlの試験液体を得る。次に、1gの無機フィラーと10mlの試験液体とを、内径が9mm~12mmの範囲の試験管に加える。試験管を、25℃、4200rpmの回転速度で5分間遠心分離し、次に、遠心分離後12時間放置する。放置後、無機フィラーの懸濁部分を試験管から取り出し、120℃で60分焼成し、その後計量する。得られた重量は、無機フィラーの懸濁部分の重量である。上記のように、無機フィラーの懸濁部分は、試験液体の表面及び試験液体の中で懸濁された無機フィラーの部分を含み、つまり、懸濁部分は、試験液体中で沈殿しない部分を指す。
【0064】
(フィラーの粒度分布測定)
【0065】
無機フィラーの粒度分布は、レーザー粒度分析計(モデル:Mastersizer 2000、Malvernから入手可能)を使用して分析する。光エネルギーが150未満、レーザー強度が65%を超え、レーザオブスキュレーションが1%~5%の範囲になるように、分析前に自動光学補正とバックグラウンド補正が実施される。分析条件は、以下のように、スクリーン上の鋼球の量は40であり、試験サンプルの重量は5g~10gであり、モードはエアフローであり、圧力は2.0barであり、供給速度は70%であり、測定回数は5回である。シリカの屈折率は1.45であり、アルミナの屈折率は1.768である。
【0066】
(曲げ強度試験)
【0067】
第1に、樹脂組成物を型に流し込み、150℃で4時間加熱硬化し、長さ80mm、幅10mm、及び厚さ4mmの試験片を得る。その後、試験片を引っ張り試験機(モデル:HT-2402、Hung Ta Instrumentより入手可能)内に置き、支点間の距離を64mmとし、試験速度を2mm/分とする。試験片が破断したときの強度値を曲げ強度として記録し、曲げ強度の単位はkgf/mm2である。
【0068】
(熱膨張係数試験)
【0069】
第1に、樹脂組成物を型に流し込み、次に、150℃下で4時間、加熱硬化させ、高さ2.8mm、上幅4mm、下幅5mm、及び長さ3mmの試験片を得る。その後、熱機械分析器(モデル:TMA-7、Perkin-Elmerから入手可能)を使用して、試験片の熱膨張係数を測定する。測定条件は、以下のように、加熱速度5℃/分で250度まで加熱、搭載する量は10gである。Tgよりも低い温度下での熱膨張係数を計算して得られる熱膨張係数をα1-CTEと呼ぶ。この試験では、パッケージング材料のα1-CTEを、40℃~90℃の範囲の温度で算出する。熱膨張係数の単位は、ppm/℃である。
【0070】
(ボイド検出)
【0071】
第1に、樹脂組成物を、長さ10mm、幅10mm、高さ4mmの型に流し込む。樹脂組成物を150℃で4時間加熱硬化し、試験片を得る。試験片を、低速精密切断機(モデル:MINITOM、STRUERSから入手可能)を使用して10mm×10mm×4mmの直方体にカットする。次に、試験片を、20mm×20mm×5mmの2つの透明なアクリル板の間に置き、瞬間接着剤で冷間固定する。低速精密切断機によって試験片の中心位置を合わせ、試験片とアクリル板とを中央で2つに切断し、断面のサンプルを得る。次に、サンプルの断面を、No.1000のCarbiMet研磨紙及びNo.2000のCarbiMet研磨紙を使用して、順番に5分間、それぞれ研磨する。その後、サンプルを、研磨機のフランネル回転ディスク上に置き、MasterPrepアルミナ最終研磨懸濁液(アルミナの粒径:0.05μm)を使用して研磨する。研磨時間は5分である。走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、500Xで研磨サンプルを観察し、2μm×2μmを超える長さ×幅のボイドが存在するか否かを検出する。ここで、観察範囲は180μm×240μmである。2μm×2μmを超える長さ×幅のボイドの数が0の場合、ボイド検出の結果は合格であり、「合格」として記録される。2μm×2μmを超える長さ×幅のボイドの数が1以上の場合、ボイド検出の結果は不合格であり、「不合格」として記録される。加えて、いくつかの実施形態は、0.5μm×0.5μmを超える長さ×幅のボイドが存在するか否かを確認するために更に検出された。
【0072】
3.2.実施例及び比較例で使用した原料のリスト
【0073】
【0074】
3.3.樹脂組成物の調製及び特性の測定
【0075】
実施例1~9及び比較例1~4の樹脂組成物を、表2-1~2-3に示す割合に従って調製した。第1に、液体エポキシ樹脂(A)、液体硬化剤(B)及び無機フィラー(C)をガラス反応がまに入れ、常圧、25℃で1rpm~2rpmの回転速度で3時間混合した。次に、触媒を反応がまに加え、密閉常圧及び25℃、1rpm~2rpmの回転速度で0.5時間混合し、プレ混合樹脂組成物を得た。その後、プレ混合組成物を、3本ローラーミル(モデル:NR-84A、NORITAKEから入手可能)内に置き、0.5rpm~1rpmの初期回転速度で3回混合し、各樹脂組成物(Bステージ)を得た。
【0076】
使用したフィラーの粒度分布と、実施例1~9及び比較例1~4の樹脂組成物の懸濁部分の比率とを、上述した検査方法に従って測定した。その結果を表2-1~2-3に挙げる。
【0077】
加えて、曲げ強度、α1-CTE及びボイド欠陥を含む、実施例1~9及び比較例1~4の樹脂組成物の硬化された製品の特性を上述した検査方法に従って測定した。その結果を表3-1~3-2に挙げる。
【0078】
表2-1:実施例1~4の樹脂組成物の組成及び特性
【表2-1】
【0079】
表2-2:実施例5~9の樹脂組成物の組成及び特性
【表2-2】
【0080】
表2-3:比較例1~4の樹脂組成物の組成及び特性
【表2-3】
【0081】
表3-1:実施例1~9及び比較例1~4の樹脂組成物を硬化させた製品の特性
【表3-1】
【0082】
表3-2:実施例3及び7の樹脂組成物を硬化させた製品の特性
【表3-2】
【0083】
表3-1に示すように、本発明の樹脂組成物を硬化させた製品は、ボイド欠陥がなく、優れた寸法安定性(α1-CTE)及び曲げ強度を備える。詳細には、樹脂組成物中に含まれる無機フィラーが所定の懸濁部分の比を満たす場合に、樹脂組成物から調製されたパッケージング材料がボイド欠陥を有しないことを、実施例1~9は示している。更に、実施例1~5及び7~9は、樹脂組成物中に含まれる無機フィラーが所定の懸濁部分の比を満たし、且つ所定の粒度分布(つまり、D90/D10が好ましくは2~40の範囲であり、D99が好ましくは30以下である)を満たす場合に、樹脂組成物から調製されたパッケージング材料は、より優れた機械強度及び寸法強度を備えることができ、ボイド欠陥を有さないことを示す。更には、実施例9は、無機フィラーがシリカ以外のフィラーを含むことができ、パッケージング材料が、優れた機械強度及び寸法強度を有し、無機フィラーが全体として所定の懸濁部分の比と粒度分布とを有する限り、ボイド欠陥を有さないことを示す。加えて、表3-2に示すように、無機フィラー(C)の全重量に対する無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の比が0.4未満である場合、それにより得られるパッケージング材料は、より厳密なボイド検出試験に合格することができる(つまり、0.5μm×0.5μmを超えるボイドが存在しない)。
【0084】
これに対し、表3-1に示すように、本発明によらない樹脂組成物を硬化して得られた材料は、ボイド欠陥を有する。樹脂組成物に含まれる無機フィラーが懸濁部分の比の所定の条件を満たさない場合、樹脂組成物から調製されるパッケージング材料は、ボイド欠陥を有するだろう。加えて、比較例3は、無機フィラーが好適な粒度分布を有しない場合、樹脂組成物から調製されるパッケージング材料は、低下した機械強度及び寸法安定性を備えるであろうことを示す。
【0085】
上述した実施例は、本発明の原理及び有効性を説明し、それらの発明的な特徴を示すために使用される。この分野の当業者は、記載された本発明の開示及び示唆に基づき、それらの原理及び精神から離れることなく、様々な変形及び置換を進めることができる。従って、本発明の保護の範囲は、添付の請求項に定義されたものである。
【0086】
[付記]
[付記1]
(A)エポキシ樹脂、
(B)硬化剤、及び、
(C)無機フィラー、
を含み、
前記無機フィラー(C)は、2.16~2.19の範囲の比重を有する液体と混合され、前記無機フィラー(C)の一部は、前記液体中に懸濁され、前記無機フィラー(C)の全重量に対する前記無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の比は、0.6未満である、
ことを特徴とする樹脂組成物。
【0087】
[付記2]
前記無機フィラー(C)の全重量に対する前記無機フィラー(C)の懸濁部分の重量の比は、0より大きい、
ことを特徴とする付記1に記載の樹脂組成物。
【0088】
[付記3]
前記無機フィラー(C)は、前記無機フィラー(C)の全重量に基づき、少なくとも90重量%のシリカを含む、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の樹脂組成物。
【0089】
[付記4]
前記シリカは、溶融シリカである、
ことを特徴とする付記3に記載の樹脂組成物。
【0090】
[付記5]
前記シリカは、球形シリカである、
ことを特徴とする付記3又は4に記載の樹脂組成物。
【0091】
[付記6]
前記無機フィラー(C)は、以下の粒度分布:
D90/D10が2~40であり、D99は30μm以下である、
を有する、
ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0092】
[付記7]
前記樹脂組成物は溶媒フリーである、
ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0093】
[付記8]
前記樹脂組成物は、常温常圧下で、1000Pa・s以下の粘度を有する、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0094】
[付記9]
前記エポキシ樹脂(A)は、フェノールエポキシ樹脂、クレゾールエポキシ樹脂、ナフタレンエポキシ樹脂、ビスフェノールエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0095】
[付記10]
前記硬化剤(B)は、無水物、イミド化合物、スルホニウム塩、アミノ含有化合物、ヒドロキシル含有化合物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、
ことを特徴とする付記1乃至9のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0096】
[付記11]
前記エポキシ樹脂、前記硬化剤(B)及び前記無機フィラー(C)の全重量に基づき、前記エポキシ樹脂(A)及び前記硬化剤(B)の総含有量は5重量%~25重量%であり、前記無機フィラー(C)の含有量は、75重量%~95重量%である、
ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【0097】
[付記12]
付記1乃至11のいずれか1つに記載の樹脂組成物を硬化して形成される、
ことを特徴とするパッケージング材料。