(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ウエハ位置決め方法及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220929BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01L21/68 A
C23C16/44 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020219268
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2021-02-24
(31)【優先権主張番号】202010345053.2
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516145552
【氏名又は名称】上海新昇半導體科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】劉 麗英
(72)【発明者】
【氏名】曹 共柏
(72)【発明者】
【氏名】林 志▲しん▼
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-037075(JP,A)
【文献】特開2014-127595(JP,A)
【文献】特開2012-227471(JP,A)
【文献】特表2016-538717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜プロセスに適用される、ウエハを位置決めする方法であって、
ステップS1:第1のウエハの第1表面の状態分布を、当該第1のウエハ上で前記薄膜プロセスが実行された後に取得し、前記第1表面は、前記薄膜プロセスにおいて上に薄膜が形成された表面とは反対側の表面であり、
ステップS2:前記第1表面の前記状態分布に従って、前記第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置するかを判定し、前記第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置しない場合に、前記薄膜プロセスに掛けられる第2のウエハの位置決め位置を、前記薄膜プロセス中に当該第2のウエハを前記理想的な位置決め中心に位置決めするように、前記第1表面の前記状態分布に従って調節する、
ことを有
し、
前記第1表面の前記状態分布は、前記第1表面の裏面Z高さ二次導関数(BZDD)分布を有する、
方法。
【請求項2】
前記第1表面の前記BZDD分布は、
半径方向に前記第1のウエハの中心から距離を持つ位置において前記第1表面の高さを検出して、様々な距離及び様々な半径方向で前記第1表面の高さデータを取得することと、
前記高さデータに基づいて様々な半径方向における前記第1表面のZDD分布を計算することと、
を有するステップによって取得される、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1表面の前記状態分布に従って前記第2のウエハの前記位置決め位置を調節するステップは、
各半径方向における前記第1表面の前記ZDD分布の最小値を取得し、
各半径方向における前記ZDD分布の前記最小値を持つ位置と前記第1のウエハの中心との間の半径距離に基づいて、前記第1表面の前記ZDD分布のレーダーチャートを取得し、該レーダーチャートは、各半径方向における前記ZDD分布の前記最小値を持つ前記位置と前記理想的な位置決め中心との間の距離を示し、
前記ZDD分布の前記レーダーチャートに従って、前記第1のウエハが前記理想的な位置決め中心に位置するかを判定し、
前記第1のウエハが前記理想的な位置決め中心に位置しない場合に、前記ZDD分布の前記レーダーチャートに従って前記第2のウエハの前記位置決め位置を調節する、
ことを有する、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1表面の前記状態分布に従って前記第2のウエハの前記位置決め位置を調節するステップは、
前記ZDD分布の前記レーダーチャートに従って前記第1のウエハの中心を取得し、
取得した前記第1のウエハの中心を前記理想的な位置決め中心と比較して、前記理想的な位置決め中心からの前記第1のウエハの中心のバイアスベクトルを取得し、
前記ベクトルに従って前記薄膜プロセス中の前記第2のウエハの前記位置決め位置を調節する、
ことを有する、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記半径方向は、前記第1のウエハの中心から外縁に向かう方向であり、前記半径方向は、前記ウエハの外縁に等間隔で置かれる複数の点によって形成される複数の半径方向を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
半径方向に前記第1のウエハの中心から距離を持つ前記位置は、各半径方向において互いに等間隔で該半径方向上に置かれる複数の位置を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項7】
前記薄膜プロセスは、エピタキシプロセス及び/又は堆積プロセスを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体技術に関し、特に、ウエハ位置決め方法及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜プロセスが半導体製造プロセスに広く適用されており、これは、半導体基板上に薄膜層を形成するものであり、酸化プロセス、エピタキシプロセス、堆積プロセス、及びこれらに類するものを含む。
【0003】
シリコンエピタキシャルウエハは、集積回路にとって最も重要な材料である。これは、マイクロプロセッサユニット(MPU)、論理回路チップ、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、及びこれらに類するものに広く適用されている。シリコンエピタキシャルウエハは、電子デバイスの歩留まり及び特性向上において、研磨ウエハよりも有利である。
【0004】
シリコンエピタキシャルウエハの典型的な製造プロセスでは、エピタキシャル炉内のベース上にシリコン基板ウエハが配置され、そして、一般に、TCS、HCl及びドーパントの雰囲気を用いて、1100℃-1150℃の下で、エピタキシャル成長が行われる。エピタキシ層の厚さは、ベース上の位置に対応してばらつく。ベースの中心にウエハが配置されることを確実にすることで、エピタキシ層の厚さの均一性、エピタキシ層の抵抗率の均一性、エピタキシウエハの平坦性、及びこれらに類するものを含め、エピタキシプロセスの所産を改善することができる。
【0005】
現在、ベース上にウエハを位置決めするための従来方法は、搬送装置の機械式アームによってシリコンウエハをエピタキシャルチャンバ内に搬送し、シリコンウエハとベースのエッジとの間の距離を裸眼で観察して、ウエハがベースの中心に位置付けられているかを判定することを含んでいる。従来方法は、以下に示すような少なくとも2つの欠点を有する。
1. チャンバ内のライトがオンである間だけ行えるに過ぎない。しかしながら、チャンバ内のライトをオンにするには、チャンバをオフにして温度を下げる必要がある。それにより、ルーチンの製造プロセスが遅れる。
2. 実際のエピタキシャルプロセスでは、ウエハは一般に、例えば700℃などの高温下でベース上にロードされる。高温下でのチャンバのガス流及び温度場は室温下でのものとは異なるので、実際のプロセスにおけるウエハのローディング位置は、室温下で予測される位置決め位置とは異なる。それにより、ウエハの最良の位置決め位置を製造プロセス中に満たすことができない。
【0006】
従って、本出願は、上述の問題を解決するウエハ位置決め方法及び半導体製造装置を提供する。
【発明の概要】
【0007】
この発明の概要では、詳細な説明にて更に詳細に説明されることになる一連のコンセプトを、単純化した形態で紹介する。この発明の概要は、特許請求に係る技術的ソリューションの重要な要素又は本質的な技術的特徴を限定することは意図しておらず、また、特許請求に係る技術的ソリューションの範囲を限定することも意図していない。
【0008】
従来技術の問題を解決するために、本出願は、薄膜プロセスに適用されるウエハ位置決め方法を提供し、当該方法は、
ステップS1:第1のウエハの第1表面の状態分布を、当該第1のウエハ上で薄膜プロセスが実行された後に取得し、第1表面は、薄膜プロセスにおいて上に薄膜が形成された表面とは反対側の表面であり、
ステップS2:第1表面の状態分布に従って、第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置するかを判定し、第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置しない場合に、薄膜プロセスに掛けられる第2のウエハの位置決め位置を、薄膜プロセス中に当該第2のウエハを理想的な位置決め中心に位置決めするように、第1表面の状態分布に従って調節する、
ことを有する。
【0009】
一実施形態において、第1表面の状態分布は、第1表面の裏面Z高さ二次導関数(Backside Z height Double Derivative;BZDD)分布を有する。
【0010】
一実施形態において、第1表面のBZDD分布は、
半径方向に第1のウエハの中心から距離を持つ位置において第1表面の高さを検出して、様々な距離及び様々な半径方向で第1表面の高さデータを取得することと、
高さデータに基づいて様々な半径方向における第1表面のZDD分布を計算することと、
を有するステップによって取得される。
【0011】
一実施形態において、第1表面の状態分布に従って第2のウエハの位置決め位置を調節するステップは、
各半径方向における第1表面のZDD分布の最小値を取得し、
各半径方向におけるZDD分布の最小値を持つ位置と第1のウエハの中心との間の直径距離に基づいて、第1表面のZDD分布のレーダーチャートを取得し、該レーダーチャートは、各半径方向におけるZDD分布の最小値を持つ位置と理想的な位置決め中心との間の距離を示し、
ZDD分布のレーダーチャートに従って、第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置するかを判定し、
第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置しない場合に、ZDD分布のレーダーチャートに従って第2のウエハの位置決め位置を調節する、
ことを有する。
【0012】
一実施形態において、第1表面の状態分布に従って、薄膜プロセスに掛けられる第2のウエハの位置決め位置を調節するステップは、
ZDD分布のレーダーチャートに従って第1のウエハの中心を取得し、
取得した第1のウエハの中心を理想的な位置決め中心と比較して、理想的な位置決め中心からの第1のウエハの中心のバイアスベクトルを取得し、
ベクトルに従って薄膜プロセス中の第2のウエハの位置決め位置を調節する、
ことを有する。
【0013】
半径方向は、第1のウエハの中心から外縁に向かう方向である。一実施形態において、上記半径方向は、ウエハの外縁に等間隔で置かれる複数の点によって形成される複数の半径方向を含む。
【0014】
一実施形態において、半径方向に第1のウエハの中心から距離を持つ上記位置は、各半径方向において互いに等間隔で該半径方向上に置かれる複数の位置を含む。
【0015】
一実施形態において、薄膜プロセスは、エピタキシプロセス及び/又は堆積プロセスを有する。
【0016】
本出願はまた、薄膜プロセスに適用される半導体製造装置を提供し、当該半導体製造装置は、
薄膜プロセス中にウエハを担持するウエハキャリアと、
ウエハをウエハキャリア上の理想的な位置決め中心に位置決めする位置決め装置であり、プロセッサと実行可能なプログラム命令とを有する位置決め装置と、
を有し、
位置決め装置は、プロセッサが上記実行可能なプログラム命令を実行するときに、上述の方法のうちのいずれかの方法を実行する。
【0017】
一実施形態において、当該半導体製造装置は更に、ウエハをウエハキャリアへと搬送する搬送装置を有し、ステップS2において、第1表面の状態分布に従って第2のウエハの位置決め位置を調節するステップは、第1表面の状態分布に従って搬送装置を調節することを有する。
【0018】
本出願によれば、薄膜プロセス後に、薄膜プロセスにおいて上に薄膜が形成された表面とは反対側のウエハ表面の状態分布が検出される。そして、それに従ってウエハ位置が調節される。プロセス温度下でチャンバ内のウエハ位置を調節することが可能であり、それ故に、薄膜プロセス中にウエハを理想的な位置決め中心に位置決めすることができる。薄膜層及びウエハ全体(すなわち、エピタキシウエハ)の品質を高めることができ、薄膜プロセスの所産を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本出願の一実施形態に従ったウエハ位置決め方法を例示するフローチャートである。
【
図2】
図2は、本出願の一実施形態に従った半導体製造装置におけるベースの構造を例示する概略図である。
【
図3A】
図3A及び3Bは、本出願の一実施形態に従った第1のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートである。
【
図3B】
図3A及び3Bは、本出願の一実施形態に従った第1のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートである。
【
図4A】
図4A及び4Bは、本出願の一実施形態に従った第2のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートである。
【
図4B】
図4A及び4Bは、本出願の一実施形態に従った第2のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートである。
【
図5】
図5は、本出願の一実施形態に従った半導体製造装置における搬送装置を例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この開示が、完全なものとなり、その範囲を当業者に十分に伝えるものとなるよう、実施形態例が提供される。本開示の実施形態の完全なる理解を提供するために、例えば具体的なコンポーネント、デバイス、及び方法の例などの数多くの具体的詳細事項が説明される。当業者に明らかになることには、これら具体的詳細事項は必ずしも使用される必要がないものであり、これら実施形態例は、数多くの異なる形態で具現化されることができ、また、本開示の範囲を限定するように解釈されるべきでない。一部の実施形態例において、周知のプロセス、周知のデバイス構造、及び周知の技術は、詳細には説明されていない。
【0021】
本発明の完全なる理解のため、本発明の技術的ソリューションを説明するために、以下の説明にて詳細なステップが詳述される。本発明の好適実施形態が以下の通り詳細に説明されることになるが、その詳細な説明に加えて、本発明は他の実施形態も有し得る。
【0022】
ここで使用される用語は、特定の実施形態例のみを説明する目的でのものであり、限定するものであるとの意図はない。ここで使用されるとき、単数形の“a”、“an”、及び“the”は、文脈が明確に別のことを指し示していない限り、複数形も同様に含むことを意図することがある。用語“有する”、“有している”、“含んでいる”、及び“持っている”は、包含的であり、従って、述べられる機構、整数、ステップ、処理、要素、及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、1つ以上の他の機構、整数、ステップ、処理、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。ここに記載される方法ステップ、プロセス、及び処理は、実行の順序として具体的に特定されない限り、説明又は図示される特定の順序でのそれらの実行を必ず必要とするとして解釈されるべきでない。追加又は代替のステップが使用され得ることも理解されるべきである。
【0023】
理解されるべきことには、本発明は、様々な形態で実施されることができ、開示される例の範囲に限定されるように解釈されるべきでない。それどころか、これらの例は、十分且つ完全な開示を達成して、当業者に本発明の範囲を十分に受け止めてもらうために提供されている。図面においては、明瞭さの目的で、層及び領域の大きさ及び相対的大きさが誇張されていることがある。図面において、同じ参照符号は同じ要素を指し示す。
【0024】
例
例1
従来技術の問題を解決するために、本出願は、薄膜プロセスに適用されるように特徴付けられるウエハ位置決め方法を提供し、当該方法は、
ステップS1:第1のウエハの第1表面の状態分布を、当該第1のウエハ上で薄膜プロセスが実行された後に取得し、第1表面は、薄膜プロセスにおいて上に薄膜が形成された表面とは反対側の表面であり、
ステップS2:第1表面の状態分布に従って、第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置するかを判定する、
ことを有し、
第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置しない場合に、薄膜プロセスに掛けられる第2のウエハの位置決め位置が、薄膜プロセス中に当該第2のウエハを理想的な位置決め中心に位置決めするように、第1表面の状態分布に従って調節される。
【0025】
従来のウエハ位置決め方法では、チャンバの温度を室温まで下げる必要があるため、ルーチンの製造プロセスが大幅に遅れる。また、チャンバ内の実際のプロセス温度は一般に高く、例えば700℃であり、室温で予測されるウエハ位置の変化を引き起こす。それにより、製造プロセス中にウエハの理想的な位置決め位置を満足することができない。本出願のウエハ位置決め方法は、プロセス温度下でウエハ位置を達成することが可能であり、チャンバの温度低下を防ぐ。ウエハの位置決めを、高効率、短時間、且つ高精度に行うことができる。従って、ウエハ上の薄膜の品質を高めることができ、薄膜プロセスの所産を向上させることができる。
【0026】
本出願のウエハ位置決め方法を、
図1、2、3A-3B、及び4A-4Bを参照して例示的に説明する。
図1は、本出願の一実施形態に従ったウエハ位置決め方法を例示するフローチャートである。
図2は、本出願の一実施形態に従った半導体製造装置におけるベースの構造を例示する概略図である。
図3A及び3Bは、本出願の一実施形態に従った第1のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートである。
図4A及び4Bは、本出願の一実施形態に従った第2のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートである。
【0027】
図1を参照するに、この方法は、ステップS1:第1のウエハ上で薄膜プロセスが実行された後に第1のウエハの第1表面の状態分布を取得することを行い、第1表面は、薄膜プロセスにおいて上に薄膜が形成された表面とは反対側の表面である。
【0028】
半導体製造プロセスにおいて、薄膜プロセスは一般に、酸化プロセス、堆積プロセス、及びエピタキシプロセスを含む。本出願において、薄膜プロセスは、堆積プロセス及び/又はエピタキシプロセスを含む。堆積プロセス及びエピタキシプロセスにおいて、特定の環境条件を有する化学物質の雰囲気下にウエハが配置され、化学物質がウエハ表面に堆積し、薄膜となるように成長する。薄膜の堆積及び成長は、ウエハ表面状態に非常に敏感である。ウエハの状態分布は異なる位置決め位置によって影響されるので、ウエハ上に形成される薄膜及びウエハ全体の状態及び品質が、それによって影響される。薄膜プロセス中にウエハを理想的な位置決め中心に正確に位置決めする必要がある。
【0029】
薄膜プロセスでは、処理チャンバ内のウエハローディングデバイス、すなわち、ベースの影響により、薄膜プロセス後の膜形成面とは反対側のウエハ表面上に様々な状態分布が形成される。一実施形態において、ウエハがウエハローディングデバイス上にロードされ、それによって影響されるので、ウエハエッジは一般に様々な分布を持つ。この特徴に基づき、本出願は、薄膜形成面とは反対側の表面であるウエハの第1表面の状態分布の検出結果に基づいて、ウエハ位置決め位置を調節する。プロセス温度下でウエハ位置決め位置を調節し、薄膜プロセス中にウエハが理想的な位置決め中心に位置決めされるようにし、そして、ウエハ全体(エピタキシウエハ)の膜厚の均一性、抵抗率の均一性、及び例えばSFQRなどの平坦性を含め、薄膜プロセスの所産を向上させることが可能である。
【0030】
図2を参照するに、薄膜プロセスで使用される典型的なウエハローディングデバイスの概略図が示されている。典型的なエピタキシャルプロセスにおいて、エピタキシャル装置の処理チャンバは、ウエハ100を担持するためのベース200を含み、ベース200は、第1の部分201及び第2の部分202を含む。第2の部分202は、薄膜プロセス中にウエハを支持するとともにウエハを冷却するために適用されるものであり、ウエハの直径よりも僅かに小さい内径Dを持つ。薄膜プロセスにおいて、第2の部分202は、ウエハの第1表面に接触し、すなわち、ウエハの薄膜形成面とは反対側の表面に接触し、ウエハ100の第1表面の加熱状態に対して様々な影響を生じさせ、それにより、ウエハ100の第1表面の状態が影響される。
【0031】
本出願では、第1のウエハの第1表面の状態分布に基づいて、第1のウエハの位置決めが的確であるかを判定し、そして、位置決め精度を効果的に高めるために、続くウエハ位置決めのための指示を提供する。それに加えて、調節は、裸眼による判定を用いずに、計算に基づいており、薄膜プロセスの処理条件下で行われることができる。それにより、以下の問題、すなわち、位置決めを処理チャンバの停止中に行わなければならず、また、室温と処理温度との間での位置決めの変動のために最良の位置決めを達成することができない、という問題が回避される。さらに、本出願では、位置決め方法が、薄膜層の表面状態ではなく第1表面の状態に基づくので、膜均一性に対する薄膜プロセス自体の影響を排除することができ、ウエハ位置決めの精度を高めることができる。
【0032】
実施形態において、第1のウエハは少なくとも1つのウエハを含む。第1のウエハは、薄膜プロセスに掛けられる1つ又は複数のウエハを含む。例えば、連続薄膜プロセスでは、第1ボックスのウエハを配置するための位置決めが行われ、第1ボックスのウエハに対して薄膜プロセスが行われ、そして、第1ボックスに対する薄膜プロセスの後に、第1ボックス内のいずれか1つ又は複数のウエハの第1表面の状態分布が取得される。すなわち、薄膜プロセスに掛けられた第1のウエハの第1表面の状態分布が、第2のウエハの薄膜プロセスに先立って取得される。
【0033】
一実施形態において、第1のウエハの状態分布は、第1のウエハの表面のBZDD(裏面Z高さ二次導関数)分布を含む。BZDD分布は、ウエハ表面の高さを検出し、高さから二次導関数を計算し、ウエハ裏面の高さ分布データを得ることによって取得される。例えばエピタキシプロセスなどの薄膜プロセスの後、ウエハが第2の部分202と接触する位置での基板ウエハ表面のBZDD分布の値が最も小さい。それは、ベース200の第2の部分202の冷却などによって影響され得る。ウエハが第2の部分202と接触する位置は、
図2において丸印Aによって示されている。ウエハ外縁の方向に沿ったウエハ表面上のBZDD分布の最小値の分布に基づいて、薄膜プロセス中にウエハが第2の部分202の中心、すなわち、理想的な位置決め中心に位置決めされているかを判定することができる。
【0034】
強調しておくべきことには、この例において、第1表面の高さに関して適用されるBZDD分布は、単に説明のための例である。当業者が理解することには、等価な効果を得るために、例えば厚さの均一性、抵抗率の均一性、及びSFQRなどの平坦性など、ウエハの第1表面の状態分布を反映する任意の手段を本出願に適用することができる。
【0035】
一実施形態において、第1ウエハ表面のBZDD分布を取得する方法は、
ステップS21:半径方向に第1のウエハの中心から距離を持つ位置において第1表面の高さを検出して、様々な距離及び様々な半径方向で第1表面の高さデータを取得することと、
ステップS22:高さデータに基づいて様々な半径方向における第1表面のZDD分布を計算することと、
を含む。
【0036】
半径方向は、第1のウエハの中心から外縁に向かう方向である。一実施形態において、半径方向は、複数の半径方向を含む。それらの半径方向は、点同士の間に等しい間隔を有してウエハ外縁に置かれる複数の点によって形成され、これが意味することは、いずれの2つの隣接し合う半径方向によっても等しい角度が形成されるということである。一実施形態において、2つの隣接し合う半径方向によって形成される角度は5°であり、その結果、合計72個の半径方向がセットされる。
【0037】
一実施形態において、半径方向に第1のウエハの中心から距離を持つ位置は、複数の位置を含む。それらの位置は、いずれの2つの隣接し合う位置の間にも等しい間隔を有して、1つの半径方向上に置かれる。全ての半径方向が複数の位置を持つことができる。一実施形態において、間隔は0.2mmである。これらの位置が各半径方向上で検出されることになる。
【0038】
上述の半径方向の数及び位置の数は、例示的に示したものであり、限定するものではなく、第1ウエハ表面の分布状態を反映することができる限り、如何なる数の半径方向及び位置が適用されてもよい。
【0039】
第1表面上で、様々な半径方向及び様々な距離で高さデータを取得した後、複数の異なる半径方向で第1のウエハの第1表面の高さのZDD(BZDDとしても知られる)分布が計算される。一実施形態において、以下のステップが含まれる。
【0040】
ステップS221:半径方向θごとの第1のウエハの中心からその位置までの距離が同じである点での高さの平均高さZavg(R)が計算される。
【0041】
ステップS222:平均高さZavgと、第1のウエハの中心からその位置までの距離Rとに基づいて、S=dZavg(R)/dRを用いて半径方向の勾配Sを得る。このステップで、Matlabソフトウェアをフィッティングに適用することができる。
【0042】
【0043】
以上の計算から、第1のウエハの第1表面の様々な位置におけるZDD値を得ることができ、さらに、第1のウエハの第1表面の高さのZDD(BZDD)分布を得ることができる。BZDD分布に基づいて、第1のウエハの中心が上述の第1表面高さによって取り囲まれる円の中心であるかを判定することができ、それにより、薄膜プロセス中に第1のウエハがベースの中心、すなわち、理想的な位置決め中心に位置するかを判定することができる。
【0044】
引き続き
図1を参照するに、ステップS2が行われる。これは、第1の表面の状態分布に従って、第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置するかを判定する。第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置しない場合、薄膜プロセスに掛けられる第2のウエハの位置決め位置が、薄膜プロセス中に当該第2のウエハを理想的な位置決め中心に位置決めするように、第1表面の状態分布に従って調節される。
【0045】
第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置するかを判定するために、ZDD分布に基づく判定ステップを以下に例示する。
【0046】
この例では、BZDD分布が判定ステップに適用される。しかしながら、第1のウエハの第1表面の任意の状態分布を本出願に適用して、等価な効果を達成することができる。
【0047】
先ず、各半径方向で第1のウエハのBZDD分布の最小値が取得される。
【0048】
一実施形態において、BZDD分布は、例えば冷却のファクタなど、ベース200の第2の部分202によって影響を受け、すなわち、第1のウエハのエッジにおける第1表面の状態分布が影響を受ける。従って、BZDD分布データを得るために、第1のウエハのエッジにおける第1表面の高さのみがスクリーニングに掛けられて分析される。例えば、第1のウエハ100は、300mmの直径を持ち、薄膜製造装置のベース200の第2の部分202は、290mmの内径Dを持つ。従って、BZDD分布と、BZDD分布の最小値とを得るために、半径140-148mmにおける第1のウエハ100の高さデータが使用される。
【0049】
各半径方向でBZDD分布の最小値を持つ位置に従って、第1ウエハ表面のZDD分布のレーダーチャートが作成される。ZDD分布のレーダーチャートは、第1のウエハの位置決め中心と各半径方向でBZDD分布の最小値を持つ位置との間の距離を示す。理解されるべきことには、高さ検出に使用される第1のウエハの中心は、薄膜プロセスの理想的な位置決め中心、すなわち、第1のウエハそれ自体の中心と同じである。
図3A及び
図3Bを参照するに、本出願の一実施形態に従った第1のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートが示されている。
図3Aは、ベース上への第1のウエハのローディングを示す上面図である。
図3Bは、
図3Aに従った第1のウエハのZDD分布のレーダーチャートである。
図3Bに示されるように、各点は、各半径方向でBZDD分布の最小値を持つ位置であり、その位置と、理想的な位置決め中心O、すなわち、第1のウエハそれ自体の中心と、の間の距離を示す。
【0050】
ZDD分布のレーダーチャートに従って、第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置するかが決定される。第1のウエハが理想的な位置決め中心に位置しない場合、薄膜プロセスに掛けられる第2のウエハの位置決め位置が、ZDD分布のレーダーチャートに従って調節される。ZDD分布のレーダーチャートは、ウエハ上の様々な半径方向におけるBZDD分布の最小値の分布を示す。
【0051】
図3Aに示されるように、第1のウエハ100は、ベース200の理想的な位置決め中心に位置しておらず、ZDD分布のレーダーチャートは、ベース200の理想的な位置決め中心Oから著しく逸脱した凸凹な円を示している。重要なことには、第1のウエハは、理想的な位置決め中心に位置しておらず、それ故に、ZDD分布のレーダーチャートに基づいた、第2のウエハの位置決めの調節が必要とされる。
【0052】
同様に、第2のウエハは少なくとも1つのウエハを含む。第2のウエハは、薄膜プロセスに掛けられる1つ以上のウエハを含む。例えば、連続薄膜プロセスでは、1ボックスのウエハ又は1枚のウエハを配置するための位置決めが行われる。従って、第1のウエハの第1表面の状態分布がステップS1から得られた後に、ここでは限定されるものではないが、1ボックスのウエハの又は1枚のウエハに対して、以下の位置決めステップを行うことができる。
【0053】
ZDD分布のレーダーチャートに従った第2のウエハの位置決めの例示的な調節を以下に説明する。
【0054】
先ず、薄膜プロセスにおける第1のウエハの位置決め中心が、ZDD分布のレーダーチャートから取得される。
図3Bを参照するに、ZDD分布のレーダーチャートから取得される薄膜プロセスにおける第1のウエハの位置決め中心は、Pである。位置決め中心を取得する方法は、画像シミュレーションを含む。画像シミュレーションソフトウェアを適用して、ZDD分布のレーダーチャートを円としてシミュレートし、その円を位置決めすることで、その中心を薄膜プロセスにおける第1のウエハの位置決め中心として得る。
【0055】
次いで、薄膜プロセスにおける第1のウエハの位置決め中心と理想的な位置決め中心とを比較して、理想的な位置決め中心からの第1のウエハの中心のバイアスベクトルを得る。
この例では、
図3Bに示すように、理想的な位置決め中心はOであり、薄膜プロセスにおける第1のウエハの位置決め中心はPである。重要なことには、実際の中心Pが理想的な位置決め中心Oから外れており、バイアスベクトルが更に取得される。
図3Bに示すように、バイアスベクトルO→Pは、長さρと、X軸に対して戻り角αの方向とを有している。
【0056】
ベクトルO→Pを適用して、薄膜プロセスにおける第2のウエハの位置決め位置を調節する。本出願の一実施形態において、位置決め位置の調節後の第2のウエハのZDD分布のレーダーチャートが、
図4A及び
図4Bに示されている。
図4Aは、ベース200上への第2のウエハ300のローディングを示す上面図である。
図4Bは、第2のウエハのZDD分布のレーダーチャートである。
図4Bに示すように、第2のウエハのZDD分布のレーダーチャートCは、理想的な位置決め中心Oと重なった円の中心Pを有し、すなわち、第2のウエハの調節された中心は、理想的な位置決め中心に位置している。
【0057】
一実施形態において、ウエハを位置決めする方法及び薄膜プロセスの完了後に、ウエハ上の薄膜の平坦度が検出される。ウエハエッジから2mmの位置で、26mm×8mmの大きさを持つサンプルをサンプリングして検査した。本出願の位置決め方法を適用することにより、ウエハ表面の平坦度SFQRを20%-80%に改善することができる。
【0058】
本出願によれば、薄膜プロセス後の第1のウエハの第1表面の状態分布を検出することにより、処理温度下でウエハ位置決めの調節を行うことができる。薄膜プロセスにおける理想的な位置決め中心にウエハを配置することができ、それにより、薄膜の厚さ均一性、抵抗率均一性、及び例えばSFQRなどのエピタキシャルウエハ全体の平坦性を高めることができる。
【0059】
例2
本出願は、薄膜プロセスに適用される半導体製造装置を提供する。当該製造装置は、薄膜プロセス中にウエハを担持するウエハキャリアと、ウエハキャリア上でウエハを理想的な位置決め中心に位置付ける位置決め装置とを有する。位置決め装置は、プロセッサと、そこに記憶される実行可能なプログラム命令とを有する。プロセッサが実行可能プログラム命令を実行するとき、位置決め装置は、例1で説明した方法を実行する。
【0060】
図2、
図5、及び
図3A-
図3Bを参照するに、例示的な半導体製造装置が示されている。
図2は、本出願の一実施形態に従った半導体製造装置におけるベースの構造を例示する概略図である。
図3A及び3Bは、本出願の一実施形態に従った第1のウエハ上のZDD分布のレーダーチャートである。
図5は、本出願の一実施形態に従った半導体製造装置における搬送装置を例示する概略図である。
【0061】
一実施形態において、ウエハローディングデバイスはベースを含む。
図2を参照するに、ベース200は、第1の部分201及び第2の部分202を含んでいる。第1の部分201は、ウエハを第2の部分202上に制限する。第2の部分202は、薄膜プロセス中にウエハを支持するとともにウエハを冷却するものである。
【0062】
一実施形態において、当該半導体製造装置は更に、ウエハをウエハローディングデバイスへと搬送する搬送装置を含む。厚さ分布に従って第2のウエハの位置決め位置を調節するステップは、厚さ分布に従って搬送装置を調節することを有する。
【0063】
一実施形態において、搬送装置は機械式アームを含む。
図5を参照するに、搬送装置は機械式アーム400を含んでいる。機械式アーム400を介してウエハ100がベース200に搬送される。ベース200は、トライペン(tri-pen)デバイス500を含んでいる。機械式アーム400がウエハ100を運んで、ベース200の上まで延びると、トライペンデバイス500が、機械式アーム400を超えて持ち上がって、ウエハ100を担持する。機械式アーム400が後退すると、トライペンデバイス500が下がって、ウエハ100をベース200上に配置する。機械式アーム400の延びる位置を調節することができ、それにより、ベース200上のウエハ100のローディング位置が調節される。以上に従って、ウエハの位置決めが達成される。
【0064】
一実施形態において、薄膜プロセスに掛けられる第2のウエハの位置決め位置を第1のウエハの第1表面の状態分布に従って調節するステップは、第1表面の状態分布に従って機械式アームを調節することを有する。
【0065】
一実施形態において、第1ウエハ表面の表面分布を表すためにBZDD分布が適用される。各半径方向のBZDD分布の最小値に基づいてZDD分布のレーダーチャートが作成される。ZDD分布のレーダーチャートに従って第2のウエハの位置決め位置が調節される。
図3A及び3Bに示すように、第1のウエハのZDD分布のレーダーチャートに基づいて、長さρとX軸に対して戻り角αの方向とを持つバイアスベクトルO→Pが得られる。それにより、バイアスベクトルO→Pに従って機械式アームの位置が調節される。
【0066】
一実施形態において、バイアスベクトルO→Pに従って横方向及び/又は縦方向のオフセットを調節することができ、それにより、第2のウエハの位置決め位置を調節することができる。例えば、バイアスベクトルO→Pに基づいて、ウエハが左に0.07mmずれ、上に0.06mmずれていることが計算されて得られる。機械式アームを、0.07mmの右オフセット且つ0.06mmの下オフセットに調節することができる。従って、第2のウエハは、ベースの理想的な位置決め中心にロードされることができる。
【0067】
一実施形態において、ウエハを位置決めする方法及び薄膜プロセスの完了後に、ウエハ上の薄膜の平坦度が検出される。ウエハエッジから2mmの位置で、26mm×8mmの大きさを持つサンプルをサンプリングして検査した。本出願の位置決め方法を適用することにより、ウエハ表面の平坦度SFQRを20%-80%に改善することができる。
【0068】
以上、好適な実施形態及び例を参照して本発明を詳細に開示したが、理解されるべきことには、これらの実施形態及び例は、限定的な意味ではなく例示的な意味であることを意図している。企図されることには、当業者には直ちに変更及び組み合わせが浮かぶことになり、そのような変更及び組み合わせは、本発明の精神内にあり且つ以下の請求項並びに均等なシステム及び方法の範囲内にある。