(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】フィードバック補償を用いたアクティブノイズコントロール
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G10K11/178 120
(21)【出願番号】P 2020543283
(86)(22)【出願日】2018-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2018054007
(87)【国際公開番号】W WO2019158216
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504147933
【氏名又は名称】ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ザフィロプロス, ニコス
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ, マルクス
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517683(JP,A)
【文献】特開平10-247088(JP,A)
【文献】特開2010-244053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0267898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間に存在する音を表す誤差信号を生成するように構成されるエラーセンサと、
前記対象空間に存在する不要音に対応する参照信号を生成するように構成される参照センサと、
前記エラーセンサ及び前記参照センサと動作可能に結合され
るアクティブノイズコントローラであって、前記アクティブノイズコントローラは、前記参照信号及び前記誤差信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音を表す相殺信号を生成するように構成される、アクティブノイズコントローラと、
前記アクティブノイズコントローラと動作可能に結合され
るトランスデューサであって、
前記トランスデューサは、前記相殺信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音と減殺的に干渉する音を生成するように構成され、
前記トランスデューサは、音声信号に基づいて音を生成するようにさらに構成される、トランスデューサと、
を備え、
前記アクティブノイズコントローラは、前記音声信号に基づいて、前記トランスデューサから前記参照センサへのフィードバック経路を介して伝達される音声信号成分を表す参照信号成分を前記参照信号から除去するようにさらに構成され
、前記アクティブノイズコントローラは、固定フィードバック経路モデリングフィルタを備え、前記固定フィードバック経路モデリングフィルタは、前記音声信号が供給され、除去すべき前記参照信号成分を提供し、前記フィードバック経路の伝達関数の推定である予め決定された伝達関数を有する、音低減システム。
【請求項2】
前記アクティブノイズコントローラは、前記音声信号に基づいて、前記トランスデューサから前記エラーセンサへの二次経路を介して伝達される音声信号成分を表す誤差信号成分を前記誤差信号から除去するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アクティブノイズコントローラは、
二次経路モデリングフィルタを備え、前記二次経路モデリングフィルタは、前記音声信号が供給され、除去すべき前記誤差信号成分を提供し、前記二次経路の伝達関数の推定である伝達関数を有す
る、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記二次経路モデリングフィルタは、前記二次経路モデリングフィルタの伝達関数を、前記音声信号と、誤差信号成分が除去された前記誤差信号とに基づいて、前記二次経路の前記伝達関数に適応させるように構成される、請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記音声信号が前記トランスデューサ及び前記二次経路モデリングフィルタの少なくとも一方に供給される前に、前記音声信号を等化するように構成される音声プリプロセッサをさらに備える、請求項3~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、マルチチャネル音低減システムであり、
前記エラーセンサは、対象空間に存在する前記音を表すL>1個の誤差信号を生成するように構成され、
前記参照センサは、前記対象空間に存在する前記不要音に対応するK>1個の参照信号を生成するように構成され、
前記トランスデューサは、M>1個の音声信号に基づいて前記音を生成するように構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記二次経路モデリングフィルタは、前記二次経路モデリングフィルタの伝達関数を、最小二乗平均処理方式に従って適応させるようにさらに構成される、請求項
4に記載のシステム。
【請求項8】
前記トランスデューサ及び前記二次経路モデリングフィルタの少なくとも一方に供給する前に、前記音声信号を前処理するように構成される音声プリプロセッサをさらに備える、請求項
3に記載のシステム。
【請求項9】
前記アクティブノイズコントローラは、最小二乗平均処理方式に従って動作するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記最小二乗平均処理方式は、フィルタードX最小二乗平均処理方式である、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
対象空間に存在する音を表す誤差信号を生成することと、
前記対象空間に存在する不要音に対応する参照信号を生成することと、
前記参照信号及び前記誤差信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音を表す相殺信号を生成することと、
前記相殺信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音と減殺的に干渉する音を生成することと、
音声信号に基づいて前記対象空間に音を生成することと、
前記音声信号に基づいて
、トランスデューサか
ら参照センサへのフィードバック経路を介して伝達される音声信号成分を表す参照信号成分を前記参照信号から除去することと、
前記音声信号に基づく固定フィードバック経路モデリングを提供し、前記音声信号と、前記トランスデューサから前記参照センサへの前記フィードバック経路の伝達関数の推定である予め決定された伝達関数とに基づいて、除去すべき前記参照信号成分を提供することと、
を含む、音低減方法。
【請求項12】
前記音声信号に基づいて、トランスデューサからエラーセンサへの二次経路を介して伝達される音声信号成分を表す誤差信号成分を前記誤差信号から除去することをさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記音声信号に基づく二次経路モデリング
、及び、前記音声信号
と、トランスデューサからエラーセンサへの二次経路の伝達関数の推定である伝達関数
とに基づいて、除去すべき前記誤差信号成分を提供するこ
とをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記二次経路モデリングは、前記二次経路モデリングの伝達関数を、前記音声信号と、誤差信号成分が除去された前記誤差信号とに基づいて、前記二次経路の前記伝達関数に適応させることを含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
二次経路モデリングを受ける前記音声信号及び前記音声信号に基づいて前記音が生成される前の前記音声信号を前処理することをさらに含み、前記音声信号を前処理することは、前記音声信号を少なくとも等化することを含む、請求項13~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
対象空間に存在する音を表すL>1個の誤差信号を提供することと、
前記対象空間に存在する不要音に対応するK>1個の参照信号を提供することと、
M>1個の音声信号に基づいて前記対象空間に第1の音を提供することと、
をさらに含む、請求項11~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記二次経路モデリングは、前記二次経路モデリングの伝達関数を、最小二乗平均処理方式に従って適応させることをさらに含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの音が前記音声信号に基づいて生成され、前記音声信号が二次経路モデリングを受ける前に、前記音声信号を前処理することをさらに含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項19】
前記相殺信号を生成することは、最小二乗平均処理方式に従って動作することを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項20】
前記最小二乗平均処理方式は、フィルタードX最小二乗平均処理方式である、請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
コンピュータによって実行された場合
に前記コンピュータに請求項
11~
20のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を含
むコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアクティブノイズコントロールに関し、より詳細にはオーディオシステムで使用されるアクティブノイズコントロールに関する。
【背景技術】
【0002】
アクティブノイズコントロール(ANC)を含む音低減を使用して、不要な音波と減殺的に干渉する音波を生成し得る。減殺的に干渉する音波は、ラウドスピーカーを介して、不要な音波と結合するように生成され得る。ANCは、音楽などの所望の音波も生成され得る状況においても所望され得る。オーディオまたはビジュアルシステムは、所望の音波を生成するための様々なラウドスピーカーを含み得る。これらのラウドスピーカーは、減殺的に干渉する音波と、所望の音波とを生成するために同時に使用され得る。
【0003】
ANCシステムは、減殺的干渉の対象となる領域に近接する残留音を検出するためのエラーマイクロフォンを含み得る。検出された残留音に基づいて、減殺的に干渉する音波を調整するための誤差信号が生成される。しかしながら、減殺的に干渉する音波が、所望の音波も生成するラウドスピーカーによって生成される場合、エラーマイクロフォンは所望の音波も検出し得、これは誤差信号に含まれ得る。このように、ANCシステムは、所望の音波など、干渉させたくない音波を追跡し得る。さらに、ANCシステムでは、共通のラウドスピーカーによって生成される所望の音波は、それぞれのソースで不要な音波を拾得する加速度計や参照マイクロフォンなどの参照センサにフィードバックされ得る。これにより、減殺的干渉が不正確に生成され得、アクティブノイズコントロールシステムは、所望の音波と減殺的に干渉する音波を生成し得る。そのため、アクティブノイズコントロールシステムにおいて、所望の音波と不要な音波との間の干渉を低減する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示的な音低減システムは、対象空間に存在する音を表す誤差信号を生成するように構成されるエラーセンサと、対象空間に存在する不要音に対応する参照信号を生成するように構成される参照センサと、を含む。このシステムは、エラーセンサ及び参照センサと動作可能に結合され、参照信号及び誤差信号に基づいて、対象空間に存在する不要音を表す相殺信号を生成するように構成される、アクティブノイズコントローラと、アクティブノイズコントローラと動作可能に結合され、相殺信号に基づいて、対象空間に存在する不要音と減殺的に干渉する音を生成するように構成され、音声信号に基づいて音を生成するようにさらに構成される、トランスデューサと、をさらに含む。アクティブノイズコントローラは、音声信号に基づいて、トランスデューサから参照センサへのフィードバック経路を介して伝達される音声信号成分を表す参照信号成分を参照信号から除去するようにさらに構成される。
【0005】
例示的な音低減方法は、対象空間に存在する音を表す誤差信号を生成することと、対象空間に存在する不要音に対応する参照信号を生成することと、参照信号及び誤差信号に基づいて、対象空間に存在する不要音を表す相殺信号を生成することと、を含む。この方法は、相殺信号に基づいて、対象空間に存在する不要音と減殺的に干渉する音を生成することと、音声信号に基づいて対象空間に音を生成することと、音声信号に基づいて、トランスデューサから参照センサへのフィードバック経路を介して伝達される音声信号成分を表す参照信号成分を参照信号から除去することと、をさらに含む。
【0006】
他のシステム、方法、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面を検討すれば、当業者に明らかであり、または明らかになろう。全てのそのような追加のシステム、方法、特徴、及び利点は、本説明に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されるものとする。
【0007】
このシステムは、添付の図面及び以下の説明を参照してよりよく理解され得る。図中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに重点を置いている。さらに、図中では、同様の参照番号は、異なる図を通して対応する部分を指す。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
対象空間に存在する音を表す誤差信号を生成するように構成されるエラーセンサと、
前記対象空間に存在する不要音に対応する参照信号を生成するように構成される参照センサと、
前記エラーセンサ及び前記参照センサと動作可能に結合され、前記参照信号及び前記誤差信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音を表す相殺信号を生成するように構成される、アクティブノイズコントローラと、
前記アクティブノイズコントローラと動作可能に結合され、前記相殺信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音と減殺的に干渉する音を生成するように構成され、音声信号に基づいて音を生成するようにさらに構成される、トランスデューサと、
を備え、
前記アクティブノイズコントローラは、前記音声信号に基づいて、前記トランスデューサから前記参照センサへのフィードバック経路を介して伝達される音声信号成分を表す参照信号成分を前記参照信号から除去するようにさらに構成される、
音低減システム。
(項目2)
前記アクティブノイズコントローラは、前記音声信号に基づいて、前記トランスデューサから前記エラーセンサへの二次経路を介して伝達される音声信号成分を表す誤差信号成分を前記誤差信号から除去するようにさらに構成される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記アクティブノイズコントローラは、前記音声信号が供給され、除去すべき前記参照信号成分を提供し、前記フィードバック経路の伝達関数の推定である伝達関数を有するフィードバック経路モデリングフィルタを備える、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記フィードバック経路モデリングフィルタは、前記フィードバック経路モデリングフィルタの伝達関数を、前記音声信号と、参照信号成分が除去された前記参照信号とに基づいて、前記フィードバック経路の前記伝達関数に適応させるように構成される、項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記フィードバック経路モデリングフィルタは、前記フィードバック経路モデリングフィルタの伝達関数を、最小二乗平均処理方式に従って適応させるようにさらに構成される、項目4に記載のシステム。
(項目6)
前記アクティブノイズコントローラは、前記音声信号が供給され、除去すべき前記誤差信号成分を提供し、前記二次経路の伝達関数の推定である伝達関数を有する二次経路モデリングフィルタを備える、項目2に記載のシステム。
(項目7)
前記二次経路モデリングフィルタは、前記二次経路モデリングフィルタの伝達関数を、前記音声信号と、誤差信号成分が除去された前記誤差信号とに基づいて、前記二次経路の前記伝達関数に適応させるように構成される、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記二次経路モデリングフィルタは、前記二次経路モデリングフィルタの伝達関数を、最小二乗平均処理方式に従って適応させるようにさらに構成される、項目7に記載のシステム。
(項目9)
前記トランスデューサ及び前記二次経路モデリングフィルタの少なくとも一方に供給する前に、前記音声信号を前処理するように構成される音声プリプロセッサをさらに備える、項目6に記載のシステム。
(項目10)
前記アクティブノイズコントローラは、最小二乗平均処理方式に従って動作するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記最小二乗平均処理方式は、フィルタードX最小二乗平均処理方式である、項目10に記載のシステム。
(項目12)
対象空間に存在する音を表す誤差信号を生成することと、
前記対象空間に存在する不要音に対応する参照信号を生成することと、
前記参照信号及び前記誤差信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音を表す相殺信号を生成することと、
前記相殺信号に基づいて、前記対象空間に存在する前記不要音と減殺的に干渉する音を生成することと、
音声信号に基づいて前記対象空間に音を生成することと、
前記音声信号に基づいて、前記トランスデューサから前記参照センサへのフィードバック経路を介して伝達される音声信号成分を表す参照信号成分を前記参照信号から除去することと、
を含む、音低減方法。
(項目13)
前記音声信号に基づいて、トランスデューサからエラーセンサへの二次経路を介して伝達される音声信号成分を表す誤差信号成分を前記誤差信号から除去することをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記音声信号に基づくフィードバック経路モデリングと、前記音声信号及びトランスデューサから参照センサへのフィードバック経路の伝達関数の推定である伝達関数に基づいて、除去すべき前記参照信号成分を提供することと、さらに含む、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記フィードバック経路モデリングは、前記フィードバック経路モデリングの伝達関数を、前記音声信号と、参照信号成分が除去された前記参照信号とに基づいて、前記フィードバック経路の前記伝達関数に適応させることを含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記フィードバック経路モデリングは、前記フィードバック経路モデリングの伝達関数を、最小二乗平均処理方式に従って適応させることをさらに含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記音声信号に基づく二次経路モデリングと、前記音声信号及びトランスデューサからエラーセンサへの二次経路の伝達関数の推定である伝達関数に基づいて、除去すべき前記誤差信号成分を提供することと、をさらに含む、項目13に記載の方法。
(項目18)
前記二次経路モデリングは、前記二次経路モデリングの伝達関数を、前記音声信号と、誤差信号成分が除去された前記誤差信号とに基づいて、前記二次経路の前記伝達関数に適応させることを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記二次経路モデリングは、前記二次経路モデリングの伝達関数を、最小二乗平均処理方式に従って適応させることをさらに含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
少なくとも1つの音が前記音声信号に基づいて生成され、前記音声信号が二次経路モデリングを受ける前に、前記音声信号を前処理することをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目21)
前記相殺信号を生成することは、最小二乗平均処理方式に従って動作することを含む、項目12に記載の方法。
(項目22)
前記最小二乗平均処理方式は、フィルタードX最小二乗平均処理方式である、項目21に記載の方法。
(項目23)
コンピュータによって実行された場合に、前記コンピュータに項目12~22のいずれか一項に記載の方法を実施させる命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】音声信号が入力されるフィードフォワードタイプの例示的な基本的な単一チャネル音低減システムを示す概略図である。
【
図2】参照信号に対する適応信号補償及び誤差信号に対する固定誤差信号補償を備える例示的な単一チャネル音低減システムを示す概略図である。
【
図3】音声信号が入力されるフィードフォワードタイプの例示的な基本的なマルチチャネル音低減システムを示す概略図である。
【
図4】参照信号に対する適応信号補償及び誤差信号に対する固定信号補償を備える例示的なマルチチャネル音低減システムを示す概略図である。
【
図5】参照信号に対する適応信号補償及び誤差信号に対する適応誤差信号補償を備える例示的なマルチチャネル音低減システムを示す概略図である。
【
図6】参照信号に対する固定信号補償及び誤差信号に対する固定信号補償を備える例示的なマルチチャネル音低減システムを示す概略図である。
【
図7】音低減システムを実装する例示的な車両の上面図である。
【
図8】例示的な音低減方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ANCシステムは、ANCとの重大な干渉なしに、すなわち、車両内での音声(音楽及び/または声)の品質の劣化なしに、高音質が維持されることを条件として、車両オーディオシステムなどのオーディオシステムなどに基づき得、統合され得、または組み合わせられ得る。たとえば、ラウドスピーカー、アンプ、マイクロフォン、プロセッサなどの少なくとも一部のパーツ及びユニットを車両オーディオシステムと共有するロードノイズキャンセルシステムでは、ラウドスピーカーによって音声信号、すなわち、所望の信号に基づいて生成された音は、加速度センサ及び/またはマイクロフォンなどの参照センサにフィードバックされ得る。ラウドスピーカーと参照センサとの間の振動及び/または音響フィードバックの基本的なメカニズムについて、
図1及び
図3を参照して以下で説明する。本明細書では、不要音とは、車両のエンジン音やロードノイズなどを含むあらゆる種類のノイズなどの、聴取者にとって耳障りなあらゆる音であるが、たとえば、聴取者が電話をかけたい場合は、音楽や他人の声であり得る。しかしながら、音楽や声は、聴取者が聞きたい場合には所望音であり得る。他のタイプの所望音は、車両を運転している運転者に対するフィードバック情報としての役割を果たす場合、警告信号または車両エンジン音でさえあり得る。そのため、不要音は相殺すべき音であり、所望音は相殺すべきでない音である。
【0010】
図1を参照すると、例示的な単一チャネルフィードフォワードANCシステム100及び例示的な物理的環境が、ブロック図形式で表されている。一例では、ノイズなどの不要音x(n)は、不要音x(n)のソース(図示せず)から、マイクロフォン入力信号成分d(n)を形成するマイクロフォン102までの、音響一次経路101と呼ぶ物理経路を横断し得る。マイクロフォン102は、
図1に示す例示的なシステムにおいて減算演算を実行する減算ノードで表される。一次経路101は、不要音x(n)をフィルタリングして、マイクロフォン入力信号成分d(n)で表されるフィルタリングされた不要音を提供するz領域伝達関数P(z)を有し得る。不要音x(n)は、不要音を物理及びデジタルの両方で表し、デジタル表現は、アナログ/デジタル(A/D)変換器を使用して生成され得る。不要音x(n)はまた、アンチノイズ発生器104に含まれ得る適応フィルタ103への入力として使用され得る。適応フィルタ103は、z領域伝達関数W(z)を有し得、所望のアンチノイズ信号u(n)を出力として生成するために入力信号をフィルタリングするように動的に適応するよう構成されるデジタルフィルタであり得る。
【0011】
アンチノイズ信号u(n)と、所望の信号、たとえば、音声信号プロセッサ105によって処理された音声信号m(n)、すなわち、処理済み音声信号m’(n)は、ラウドスピーカー106を駆動するために結合され得る。音声信号m(n)の処理は任意選択であり、たとえば、クロスオーバーフィルタリング、等化、制限、ラウドネスフィルタリング、ゲイン調整、遅延などのうちの少なくとも1つを含み得る。あるいは、処理は適用されなくてもよい。アンチノイズ信号u(n)と処理済み音声信号m’(n)とを結合することにより、ラウドスピーカー106からの音波出力y(n)が生成される。
図1に示す例示的なシステムでは、ラウドスピーカー106は、アンチノイズ信号u(n)及び処理済み音声信号m’(n)に対して総和演算を実行し、ラウドスピーカー出力y(n)を提供する総和ノードで表される。ラウドスピーカー出力y(n)は、ラウドスピーカー106からマイクロフォン102に延伸する、音響二次経路107と呼ぶ物理経路を進む音波であり得る。
図1に示す例示的なシステムにおける二次経路107は、z領域伝達関数S(z)を有する。伝達関数S(z)でフィルタリングされたラウドスピーカー出力y(n)、すなわち、入力信号成分
【化1】
、及び伝達関数P(z)でフィルタリングされた不要音x(n)、すなわち、入力信号成分d(n)は、マイクロフォン102によって受け取られ得、それらの差は、誤差信号e(n)で表されるマイクロフォン出力である。他の例では、任意の数のラウドスピーカー及びマイクロフォンが存在し得る。
【0012】
マイクロフォン102の出力信号、すなわち、誤差信号e(n)は、アンチノイズ発生器104に含まれ得るフィルタコントローラ108に送られる。フィルタコントローラ108は、様々な可能な適応制御構造、たとえば、最小二乗平均(LMS)、再帰的最小二乗平均(RLMS)、正規化最小二乗平均(NLMS)、または他の任意の適切なアルゴリズムのうちの1つを実装し得る。フィルタコントローラ108はまた、フィルタ109によってフィルタリングされた不要音x(n)を入力として受け取る。フィルタ109は、z領域伝達関数
【化2】
を有し得、伝達関数S(z)をシミュレート、推定、またはモデリングするように構成される。フィルタコントローラ108は、更新信号に応じて適応フィルタ103を更新する。このように、適応フィルタ103は、不要なノイズx(n)及び更新信号を受け取って、アンチノイズ信号y(n)を提供することにより不要なノイズx(n)をより正確に相殺するようにする。
【0013】
ラウドスピーカー出力y(n)は、z領域伝達関数F(z)を有するフィードバック経路110を介して不要にフィードバックされ、アンチノイズ信号y(n)に対応するフィードバック音y’(n)として、不要音x(n)と干渉する。
図1では、この干渉は総和ノード111で表され、総和ノード111は、フィードバックされたアンチノイズ信号y’(n)を不要音x(n)に加算し、その結果、適応フィルタ103は、フィードバックされたアンチノイズ信号y’(n)によって破損した入力信号x(n)を表す信号x(n)+y’(n)を入力として受け取る。LMSアルゴリズム(フィルタコントローラ108で利用)と、プレフィルタ(フィルタ109を使用)とを組み合わせることにより、FxLMS制御方式が確立される。
【0014】
音声信号m(n)を表す成分は、誤差信号e(n)の処理を通じて、マイクロフォン入力信号成分
【化3】
から除去され得る。次に
図2を参照すると、
図1に関して上述したANCシステム100に基づき得る例示的なANCシステム200では、音声信号m(n)は、(処理済み)音声信号m(n)の音波による二次経路107の横断を反映するように処理され得る。この処理は、推定二次経路フィルタ201を用いて二次経路107の伝達関数S(z)を推定することによって実行され得、推定二次経路フィルタ201は、z領域推定二次経路伝達関数
【化4】
を、推定二次経路フィルタ201を横断する音声信号m(n)に適用する。推定二次経路フィルタ201は、二次経路107の通過による音声信号m(n)の音波への影響をシミュレートまたはモデリングし、出力信号s(n)*m(n)を生成するように構成される。
図2から分かるように、音声信号プロセッサ105は省略されているので、音声信号m(n)はラウドスピーカー106に直接供給される。
図1に示すシステムと同様に、ラウドスピーカー106は信号y(n)を生成し、これはフィードバック経路110を介して総和ノード111にフィードバックされ、そこで信号y’(n)として到着する。総和ノード111は信号x(n)+y’(n)を出力し、これは適応フィルタ103とフィルタ109とに供給される。フィルタ109は信号x’(n)を出力し、これはフィルタコントローラ108に送られる。
【0015】
マイクロフォン入力信号成分d(n)及び
【化5】
を含み、誤差信号e(n)で表されるマイクロフォン入力信号は、減算ノード202で示すように音声信号m(n)を表す成分が除去されるよう処理され得る。これは、推定伝達関数
【化6】
を有する推定経路フィルタ201によってフィルタリングされた音声信号m(n)を、減算ノード202において誤差信号e(n)から減算することで行われ得る。あるいは、他の任意のメカニズム、手順、または方法を利用して、S(z)でフィルタリングされた音声信号m(n)を誤差信号e(n)から除去し得る。減算ノード202の出力は、修正済み誤差信号e’(n)であり、これは、ラウドスピーカー106によってアンチノイズ信号y(n)に基づいて生成された音と、不要なノイズx(n)に対応する音との間の減殺的干渉の後に残っている可聴音を表し得る。
【0016】
さらに、例示的なANCシステム200は推定フィードバック経路フィルタ203を含み得、これは音声信号m(n)を受け取り、z領域伝達関数
【化7】
によって音声信号m(n)をフィルタリングして、
【化8】
でフィルタリングされた音声信号m(n)を総和ノード111に提供することによって、フィードバック経路110を介して総和ノード111にフィードバックされる音声信号m(n)を表す成分が、総和ノード111において負の符号で示すように除去されるようにする。これは、総和ノード111において
【化9】
でフィルタリングされた音声信号を反転させ、反転された信号を入力信号x(n)に加算することによって行われ得る。あるいは、フィルタリングされた音声信号を減算することができ、またはフィードバックされた信号を除去するための他の任意のメカニズム、手順、もしくは方法を利用することができる。推定フィードバック経路フィルタ203は、フィードバック経路110の通過による音声信号m(n)の音波への影響をシミュレートまたはモデリングするように構成される。音声信号m(n)はフィルタコントローラ204に送られ、これは様々な適応制御方式、たとえば、最小二乗平均(LMS)、再帰的最小二乗平均(RLMS)、正規化最小二乗平均(NLMS)、または他の任意の適切な制御アルゴリズムを実装し得る。フィルタコントローラ204はまた、信号x(n)+y’(n)を入力として受け取り、更新信号を介して適応フィルタ203を更新する。
【0017】
図1に関連して上述した単一チャネルフィードフォワードANCシステム100の基本構造は、
図3に示すマルチチャネルシステム300にも適用することができる。例示的なマルチチャネルシステム300は、K個の不要な信号x(n)用のK個の参照入力チャネルと、M個の音声信号m(n)または処理済み音声信号m’(n)用のM個の音声入力チャネルと、二次経路107を介して伝達されたノイズ相殺音y(n)を表すL個のマイクロフォン入力信号成分
【化10】
をマイクロフォン102で生成するためのL個のノイズ相殺チャネルと、を含む。さらに、適応フィルタ103は信号x(n)+y’(n)を受け取り、これは、不要な信号x(n)と、フィードバックされたラウドスピーカー出力y(n)を表す信号y’(n)との総和である。
【0018】
同様に、
図2に関連して上述した単一チャネルANCシステム200の基本構造は、
図4に示すマルチチャネルシステム400にも適用することができる。例示的なマルチチャネルシステム400は、K個の不要な信号x(n)用のK個の参照入力チャネルと、M個の音声信号m(n)用のM個の音声入力チャネルと、ノイズ相殺音を表すL個のマイクロフォン入力信号成分
【化11】
をマイクロフォン102で生成するためのL個のノイズ相殺チャネルと、を含む。さらに、M個の音声信号m(n)は音声信号プロセッサ401で処理された後、処理済み音声信号m’(n)として、ラウドスピーカー106、推定経路フィルタ201、適応フィルタ203、及びフィルタコントローラ204に供給される。
【0019】
図5に示すように、
図4に示すシステムを変更して、フィルタ201が適応フィルタになり、音声信号プロセッサ401によって処理された後の音声信号m(n)を受け取るようにし得る。
図5に示す、システム500と呼ぶシステムはフィルタコントローラ501をさらに含み、フィルタコントローラ501は、処理済み音声信号m’(n)及び修正済み誤差信号e’(n)を受け取り、処理済み音声信号m’(n)及び修正済み誤差信号e’(n)に基づいて、様々な適応制御方式、たとえば、最小二乗平均(LMS)、再帰的最小二乗平均(RLMS)、正規化最小二乗平均(NLMS)、または他の任意の適切な制御アルゴリズムのうちの1つに従って、フィルタ201を制御する。
【0020】
図6に示すように、
図4に示すシステムを変更して、推定フィードバック経路フィルタ203が、予め決定された伝達関数
【化12】
を有する固定フィルタになるようにし得る。
【0021】
図2、
図4、及び
図5に示すシステムのフィードバック補償は、音声信号m(n)または処理済み音声信号m’(n)を参照として使用する適応的な方式に基づいている。音声信号m(n)の処理は、たとえば、クロスオーバーフィルタリング、等化、制限、ラウドネスフィルタリング、ゲイン調整、遅延などのうちの少なくとも1つを含み得る。音声信号m(n)は、任意の適切な音声ソース、たとえば、車両のヘッドユニットによって提供され得る。自動車などの車両で利用される場合、フィードバック補償のためのマルチチャネル適応アルゴリズムは、ラウドスピーカー(複数可)などの二次ソースと、参照信号、すなわち、不要な入力x(n)を拾得する加速度計及び/または参照マイクロフォンなどの参照センサとの間で強い機械的結合(参照センサが振動センサの場合)または音響的結合(参照センサがマイクロフォンの場合)を示すチャネルに少なくとも配備される。上述のフィードバック補償は、さらに任意の誤差信号補償の概念と組み合わせられ得るが、それにもかかわらず、それとは独立して実装することができる。
【0022】
フィードバック補償(参照信号に適用)及び/またはフィードフォワード補償(誤差信号に適用)は、適応的であってもなくてもよい。たとえば、フィードバック経路は、一度測定した後、記憶してさらに処理したり(
図6を参照)、処理中に繰り返し測定したり(
図2、
図4、及び
図5を参照)することができる。同様に、二次経路である音声信号経路は、一度測定した後、記憶してさらに処理したり(
図2、
図4、
図6を参照)、処理中に繰り返し測定したり(
図5を参照)することができる。適応的または非適応的な誤差信号補償は、音声信号の、具体的には音声信号のスペクトル部分(たとえば、低周波数部分)を不要に相殺しないように構成される。理想的には、目標は、エラーセンサに拾得される音声信号を完全にブロックすることであり、ひいては、ANCシステム、たとえば、ロードノイズキャンセル(RNC)システムなどにより音声信号部分が意図せず相殺されないようにすることである。当然、
図2、
図4、
図5、及び
図6に示すように、フィードバック補償と誤差信号補償との両方の概念が組み合わせられれば、音声信号の部分がそのように意図せず相殺されないようにするさらに優れた能力を実現することができる。
【0023】
図7を参照すると、例示的なANCシステム700が、例示的な車両701に実装され得る。一例では、ANCシステム700は、車両701に関連する不要音を低減または除去するように構成され得る。たとえば、不要音は、たとえば、タイヤ703に関連するロードノイズ702(
図7に破線矢印で表す)であり得る。しかしながら、様々な不要音、たとえば、エンジンノイズまたは車両701に関連する他の任意の不要音などが、低減または除去の対象となり得る。ロードノイズ702は、少なくとも1つの参照センサを介して検出され得る。一例では、少なくとも1つの参照センサは、2つの加速度計704であり得、これらは、タイヤ703の現在の動作状況に基づく、ロードノイズ702のレベルを示すロードノイズ信号705を生成し得る。他の音検出の方法、たとえば、マイクロフォン、非音響センサ、またはタイヤ703またはエンジン706などの車両701に関連する可聴音を検出するのに適した他の任意のセンサが実装され得る。ロードノイズ信号705は、参照信号としてANCシステム700に送られる。
【0024】
車両701は、様々なオーディオ/ビデオコンポーネントを含み得る。
図7では、車両701は、オーディオシステム707を含むものとして示しており、オーディオシステム707は、音声/視覚情報を提供するための様々なデバイス、たとえば、AM/FMラジオ、CD/DVD プレーヤー、携帯電話、ナビゲーションシステム、MP3プレーヤー、またはパーソナルミュージックプレーヤーインターフェースを含み得る。オーディオシステム707は、ダッシュボード708に、たとえば、その中に配置されたヘッドユニット709に組み込まれ得る。オーディオシステム707はまた、モノラル、ステレオ、5チャンネル、及び7チャンネル動作、または他の任意の音声出力構成用に構成され得る。オーディオシステム707は、車両701内の複数のラウドスピーカーを含み得る。オーディオシステム707は、トランク710内などの車両701内の様々な場所に配置され得る1つまたは複数のアンプ(図示せず)などの他のコンポーネントも含み得る。
【0025】
一例では、車両701は、後部棚713上またはその内部に配置され得る左後方ラウドスピーカー711及び右後方ラウドスピーカー712などの複数のラウドスピーカーを含み得る。車両701はまた、車両の後ドア716及び717内にそれぞれ取り付けられた左側ラウドスピーカー714及び右側ラウドスピーカー715を含み得る。車両701はまた、車両の前ドア720、721内にそれぞれ取り付けられた左前方ラウドスピーカー718及び右前方ラウドスピーカー719を含み得る。車両701はまた、ダッシュボード708内に配置された中央ラウドスピーカー722を含み得る。他の例では、車両701内のオーディオシステム707の他の構成が可能である。
【0026】
一例では、中央ラウドスピーカー722を使用して対象空間723内で聞こえ得るロードノイズ702を低減するためのアンチノイズを送り得る。一例では、対象空間723は、運転者の耳に近接する領域であり得、それは運転席725のヘッドレスト724に近接し得る。
図7では、マイクロフォン726などのエラーセンサが、ヘッドレスト724内に、ヘッドレスト724に、またはヘッドレスト724に隣接して配置され得る。マイクロフォン726は、
図2、
図4、
図5、及び
図6に関して説明したような方法でANCシステム700に接続され得る。
図7では、ANCシステム700及びオーディオシステム707は、中央ラウドスピーカー722に接続され、それにより、オーディオシステム707及びANCシステム700によって生成された信号が組み合わせられて、中央ラウドスピーカー722が駆動され、ラウドスピーカー出力727(破線矢印で表す)が生成され得る。このラウドスピーカー出力727は、音波として生成され得、その結果、アンチノイズは、対象空間723内のロードノイズ702に減殺的に干渉する。車両701内の1つまたは複数の他のラウドスピーカーが、相殺音、すなわちアンチノイズを含む音波を生成するように選択され得る。さらに、マイクロフォン726は、1つまたは複数の所望の対象空間内の車両全体の様々な位置に配置され得る。
【0027】
図7からわかるように、ANCシステムは、不要音と減殺的に干渉する音を生成することを目的としている。不要音は、たとえば、車両が道路を走行することによって発生するロードノイズまたはエンジンノイズであり得る。同時に、たとえば、ユーザが楽しむためのラジオの歌や声など、車両に座っているユーザが望ましいと考える他の音を生成することを目的としている。したがって、ANCシステムは、(たとえば、所望音を生成するオーディオシステムに関連して)不要なロードノイズと減殺的に干渉する音を生成する。所望の音声信号は、ラウドスピーカー722などの1つまたは複数のラウドスピーカーにより受け取られて、対象空間内に所望音が生成される。しかしながら、所望音は、加速度計704などの参照センサ、及び/またはマイクロフォン726などのエラーセンサに送られ、音声信号を再び参照する相殺すべきでない信号成分を、参照信号及び/または誤差信号内に生成し得る。
【0028】
図8を参照すると、例示的な音低減方法は、対象空間に存在する音を表す誤差信号を生成すること(801)と、対象空間に存在する不要音に対応する参照信号を生成すること(802)と、参照信号及び誤差信号に基づいて、対象空間に存在する不要音を表す相殺信号を生成すること(803)と、を含む。この方法は、相殺信号に基づいて、対象空間に存在する不要音と減殺的に干渉する音を生成すること(804)と、対象空間に音声信号を再生すること(805)と、音声信号に基づいて、トランスデューサから参照センサへのフィードバック経路を介して伝達される音声信号成分を表す参照信号成分を参照信号から除去すること(806)と、をさらに含む。
【0029】
本開示の実施形態は、一般に、複数の回路、電気デバイス、及び/または少なくとも1つのコントローラを提供する。回路、少なくとも1つのコントローラ、及び他の電気デバイス、ならびにこれら各々によって提供される機能性への全ての言及は、本明細書で例示及び説明したものだけを包含するように限定されることを意図するものではない。開示した様々な回路(複数可)、コントローラ(複数可)、及び他の電気デバイスに特定のラベルが割り当てられ得るが、そのようなラベルは、様々な回路(複数可)、コントローラ(複数可)、及び他の電気デバイスの動作の範囲を限定することを意図していない。そのような回路(複数可)、コントローラ(複数可)、及び他の電気デバイスは、所望する特定のタイプの電気的実施態様に基づく任意の方法で互いに組み合わせられ得、及び/または分離され得る。
【0030】
本明細書に開示した任意のコンピュータ、プロセッサ、及びコントローラは、任意の数のマイクロプロセッサ、集積回路、メモリデバイス(たとえば、FLASH(登録商標)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM)、またはそれらの他の適切な変形)、及び本明細書に開示した動作(複数可)を実施するために協働するソフトウェアを含み得ることを認識されたい。加えて、開示した任意のコントローラは、任意の1つまたは複数のマイクロプロセッサを利用して、開示した任意の数の機能を実施するようにプログラムされる非一時的コンピュータ可読媒体内に具現化されるコンピュータプログラムを実行する。さらに、本明細書で提供する任意のコントローラは、ハウジングと、ハウジング内に配置される様々な数のマイクロプロセッサ、集積回路、及びメモリデバイス(たとえば、FLASH(登録商標)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EEPROM))と、を含む。開示したコンピュータ(複数可)、プロセッサ(複数可)、及びコントローラ(複数可)はまた、本明細書で論じた他のハードウェアベースのデバイスとの間でそれぞれ、データを受信及び送信するためのハードウェアベースの入力及び出力も含む。
【0031】
実施形態の説明は、例示及び説明の目的で提示している。実施形態に対する好適な修正及び変形は、上記の説明に照らして実行され得、または方法を実践することから得られ得る。たとえば、特に明記しない限り、記載した方法の1つまたは複数は、適切なデバイス及び/またはデバイスの組み合わせによって実行され得る。記載した方法及び関連する行為はまた、本出願に記載した順序に加えて様々な順序で、並行して、及び/または同時に実行され得る。記載したシステムは、本質的に例示的なものであり、追加の要素を含み得、及び/または要素を省略し得る。
【0032】
本出願で使用する場合、単数形で記載した、「a」または「an」という語が先行する要素またはステップは、排除の記載がない限り、複数の前記要素またはステップを排除しないものとして理解されたい。さらに、本開示の「一実施形態」または「一実施例」への言及は、列挙した特徴も組み込んだ追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図していない。「第1」、「第2」、及び「第3」などの用語は、単にラベルとして使用しており、数的要件または特定の位置的順序をそれらの物体に課すことを意図していない。
【0033】
本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明の範囲内でさらに多くの実施形態及び実施態様が可能であることは、当業者には明らかであろう。具体的には、当業者は、異なる実施形態から様々な特徴を入れ替えられることを認識するであろう。これらの技術及びシステムは、特定の実施形態及び実施例の状況で開示しているが、これらの技術及びシステムが、具体的に開示した実施形態を超えて、他の実施形態及び/またはそれらの使用例及び自明の変更例に拡張され得ることが理解されよう。