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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】水性系剥離コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/02 20060101AFI20220929BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20220929BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220929BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220929BHJP
   C09D 125/08 20060101ALI20220929BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20220929BHJP
   C09D 127/08 20060101ALI20220929BHJP
   C09D 131/04 20060101ALI20220929BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20220929BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220929BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C09D201/02
C09D183/04
C09D5/02
C09D7/63
C09D125/08
C09D127/06
C09D127/08
C09D131/04
C09D133/04
C09K3/00 R
B32B27/00 L
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020544943
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 CN2018077513
(87)【国際公開番号】W WO2019165592
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シンホン
(72)【発明者】
【氏名】ティン、リー
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ツイホア
(72)【発明者】
【氏名】チュー、ツァオホイ
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-209284(JP,A)
【文献】特開昭52-075677(JP,A)
【文献】特開2017-057257(JP,A)
【文献】特開2017-177413(JP,A)
【文献】国際公開第2013/058188(WO,A1)
【文献】特開2016-074865(JP,A)
【文献】特表2008-542462(JP,A)
【文献】特開昭56-118457(JP,A)
【文献】特開2016-196609(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0059539(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1886470(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/02
B32B 27/00
C09D 5/02
C09D 7/63
C09D 125/08
C09D 127/06
C09D 127/08
C09D 131/04
C09D 133/04
C09D 183/04
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性系剥離コーティング組成物であって、
(A)共重合可能な酸モノマーを含むビニル系エマルションコポリマーと、
(B)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含むシリコーン系エマルションと、
(C)酸官能基を含むポリマー分散剤と、を含み、
前記水性系剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)対ポリマー分散剤(C)の重量比が、2:1~3:1である、水性系剥離コーティング組成物。
【請求項2】
前記ビニル系エマルションコポリマー(A)が、0.5~5重量パーセントのアルファ-不飽和モノ-または-ジカルボン酸に由来する共重合可能な酸モノマーを含む、請求項に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項3】
前記ビニル系エマルションコポリマー(A)が、前記剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、80~99重量パーセントで存在する、請求項1または2に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項4】
前記ビニル系エマルションコポリマー(A)が、酢酸ビニルモノマー、塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、スチレンモノマー、アクリル酸アルキルモノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される共重合可能なモノマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項5】
前記シリコーン系エマルション(B)が、前記剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.5~8重量パーセントで存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項6】
前記アミン-、ポリオール-官能性シロキサンが、以下の一般式を有し、
【化1】


式中、各Eは、独立して、一価の炭化水素基、ヒドロキシル基、およびアルコキシ基からなる群から選択され、各R1は、独立して、一価の炭化水素基であり、各R2は、独立して、1~10個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、hは、25~1,000であり、jは、0.1~200であり、各R3’’は、以下を含む複素環式窒素含有化合物であり、
【化2】

式中、各R4’’は、独立して、水素原子および式-R2NY2の基からなる群から選択され、各Yは、独立して、水素原子またはY’であり、各Y’は、以下の式の基であり、
【化3】

式中、R2基は、独立して、上記のように特徴付けられ、かつすべてのYがHではないことを条件とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項7】
前記エポキシ-、グリコール-シロキサンが、以下の一般式を有し、
E3SiO-(R1 2SiO)h-(R1R6SiO)j-(R1R7SiO)k-SiE3
式中、各R1は、独立して、一価の炭化水素基であり、R6は、エポキシ含有基であり、R7は、ポリエーテル基であり、各Eは、独立して、一価の炭化水素基、ヒドロキシル基、およびアルコキシ基からなる群から選択され、hは、25~1000であり、jは、0.1~200であり、kは、0.1~200である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項8】
前記ポリマー分散剤(C)が、前記剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.5~5重量パーセントで存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項9】
架橋剤、消泡剤、流動および均染剤、着色剤、レオロジー調整剤、フィルム形成剤、殺生物剤/抗真菌剤、抗酸化剤、界面活性剤/乳化剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤(D)をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性系剥離コーティング組成物。
【請求項10】
水性系剥離コーティング組成物であって、
(A)酢酸ビニルモノマー単位およびアルファ-不飽和モノ-または-ジカルボン酸に由来する酸モノマー単位を含むエマルションコポリマーと、
(B)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含むシリコーン系エマルションと、
(C)酸官能基を含むポリマー分散剤と、を含み、
前記水性系剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)対ポリマー分散剤(C)の重量比が、2:1~3:1である、水性系剥離コーティング組成物。
【請求項11】
求項1~10のいずれか一項に記載の水性系剥離コーティング組成物を含む、ラベルまたはテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感圧接着剤と共に使用するための水性系剥離コーティング組成物に関する。開示される水性系剥離コーティング組成物は、(A)共重合可能な酸モノマーを含むビニル系エマルションコポリマーと、(B)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含むシリコーン系エマルションと、(C)酸官能基を含むポリマー分散剤と、を含む。いくつかの実施形態では、水性系剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)対ポリマー分散剤(C)の重量比は、2:1~3:1である。
【0002】
開示される水性系剥離コーティング組成物は、剥離コーティングから接着剤層へのシリコーンの移行が懸念される感圧接着剤層を含むラベルおよび/またはテープ用途において、特に有用である。開示される剥離コーティング組成物は、少なくとも部分的にシロキサンの存在のために比較的低い剥離力を提供し、共重合可能な酸モノマーを含むビニル系エマルションコポリマー、アミノおよびエポキシ官能基を有するシリコーン系エマルション、ならびに酸官能基を含む分散剤間の化学的および物理的相互作用によるアンカー効果のために低い移行を提供する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野で既知であるように、感圧接着剤の使用は、しばしば、剥離コーティング組成物の使用を必要とする。テープおよび関連用途に対しては、剥離コーティング組成物は、接着剤層が貼り付けられているのとは反対の側に塗布される。ラベルおよび関連用途に対しては、剥離コーティング組成物は、接着剤層と接触する保護カバーシートの側に塗布される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の剥離コーティング組成物は、通常、溶媒、剥離剤、および時には1つ以上の任意の添加剤を本質的に含む、フィルム形成物質または溶液である。より一般的な従来の剥離コーティング組成物間では、有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン中に溶解した熱硬化性シリコーン樹脂を本質的に含むものがある。このタイプの剥離コーティング組成物は、ラベルなどのカバーシートの迅速な剥離、ならびに巻かれた形態のテープおよび他の接着剤保有物品の容易な巻き戻しを提供することにおいて、非常に有用であることが証明されている。しかしながら、それらは、接着剤層へのシリコーンの移動または移行などの問題をしばしば提示する。コーティングされた製品の保管中に通常発生する、この望ましくないシリコーン移行の発生は、接着剤層の汚染に起因する接着力の大幅な減少によって特に証明される。
【0005】
したがって、接着剤層へのシリコーン移行の減少を呈する、感圧接着剤と共に使用するための剥離コーティング組成物が望ましい。
【0006】
水性系剥離コーティング組成物が開示される。開示される水性系剥離コーティング組成物は、感圧接着剤と共に使用するのに特に好適である。いくつかの実施形態では、水性系剥離コーティング組成物は、(A)共重合可能な酸モノマーを含むビニル系エマルションコポリマーと、(B)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含むシリコーン系エマルションと、(C)酸官能基を含むポリマー分散剤と、を含む。いくつかの実施形態では、水性系剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)対ポリマー分散剤(C)の重量比は、2:1~3:1である。開示される剥離コーティング組成物は、とりわけ、マスキングテープ用途における使用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
いくつかの実施形態では、水性系剥離コーティング組成物は、(A)共重合可能な酸モノマーを含むビニル系エマルションコポリマーと、(B)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含むシリコーン系エマルションと、(C)酸官能基を含むポリマー分散剤と、を含む。いくつかの実施形態では、水性系剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)対ポリマー分散剤(C)の重量比は、2:1~3:1である。
【0008】
(A)ビニル系エマルションコポリマー
ビニル系エマルションコポリマー(A)を重合するための方法は、当業者に既知である。
【0009】
いくつかの実施形態では、共重合可能な酸モノマー(A)を含むビニル系エマルションコポリマーは、0.5~5重量パーセントのアルファ-不飽和モノ-または-ジカルボン酸に由来する共重合可能な酸モノマーを含む。好適なモノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸、2-ブテン酸、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、これらの無水物、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0010】
いくつかの実施形態では、ビニル系エマルションコポリマー(A)の残りは、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、およびアルキル(メタ)アクリレートを含むがこれらに限定されない共重合可能な酸モノマーで共重合することができる非官能性共重合可能なモノマーであり、アルキル基は2~10個の炭素原子、およびこれらの組み合わせを含む。
【0011】
ビニル系エマルションコポリマー(A)は、乾燥させたときにフィルムを形成することができなければならない。いくつかの実施形態では、エマルションコポリマー(A)は、0~60℃の範囲内のTgを有するであろう。
【0012】
剥離コーティング組成物における共重合可能な酸モノマー(A)を含むビニル系エマルションコポリマーの量は、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、80~99重量パーセント、または92~97重量パーセントである。
【0013】
(B)シリコーン系エマルション
いくつかの実施形態では、シリコーン系エマルション(B)は、(a)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、(b)エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含む。いくつかの実施形態では、アミン-、ポリオール-官能性シロキサン(a)は、以下の一般式を有し、
【化1】

式中、各Eは、独立して、一価の炭化水素基、ヒドロキシル基、およびアルコキシ基からなる群から選択され、各R1は、独立して、一価の炭化水素基であり、各R2は、独立して、1~10個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、hは、25~1,000であり、jは、0.1~200であり、各R3’’は、以下を含む複素環式窒素含有化合物であり、
【化2】

式中、各R4’’は、独立して、水素原子および式-R2NY2の基からなる群から選択され、各Yは、独立して、水素原子またはY’であり、各Y’は、以下の式の基であり、
【化3】

式中、R2基は、独立して、上記のように特徴付けられ、かつすべてのYがHではないことを条件とする。
【0014】
いくつかの実施形態では、エポキシ-、グリコール-シロキサン(b)は、以下の一般式を有し、
E3SiO-(R1 2SiO)h-(R1R6SiO)j-(R1R7SiO)k-SiE3
式中、各R1は、独立して、一価の炭化水素基であり、R6は、エポキシ含有基であり、R7は、ポリエーテル基であり、各Eは、独立して、一価の炭化水素基、ヒドロキシル基、およびアルコキシ基からなる群から選択され、hは、25~1000であり、jは、0.1~200であり、kは、0.1~200である。
【0015】
いくつかの実施形態では、シリコーン系エマルション(B)は、非イオン性界面活性剤からなる群から選択される1つ以上の界面活性剤(c)をさらに含み得る。成分(c)の量は、シリコーン系エマルション(B)の総乾燥重量に基づいて、約3~25重量パーセントである。
【0016】
いくつかの実施形態では、シリコーン系エマルション(B)は、任意の成分(d)、有機酸をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、任意の成分(d)は、氷酢酸である。シリコン系エマルション(B)における成分(d)の量は、典型的には、シリコン系エマルション(B)の総乾燥重量に基づいて、0~2重量パーセントの範囲である。
【0017】
剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)の量は、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.5~8重量パーセント、または2~5重量パーセントである。
【0018】
(C)ポリマー分散剤
いくつかの実施形態では、水性系剥離コーティング組成物は、酸官能基を含むポリマー分散剤(C)を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、酸官能基を含むポリマー分散剤(C)は、アルファ-不飽和モノ-または-ジカルボン酸に由来する共重合可能な酸モノマーを含む。好適なモノカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-ブテン酸、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、これらの無水物、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、共重合可能な酸モノマーは、無水マレイン酸である。
【0020】
いくつかの実施形態では、酸官能基を含むポリマー分散剤(C)は、カルボキシレートポリカルボン酸コポリマーのナトリウム塩である。
【0021】
いくつかの実施形態では、酸官能基を含むポリマー分散剤(C)は、疎水性モノマーをさらに含む。好適な疎水性モノマーとしては、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジイソブチレン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態では、酸官能基を含むポリマー分散剤(C)は、無水マレイン酸、ジイソブチレンコポリマーのナトリウム塩である。
【0023】
剥離コーティング組成物における酸官能基を含むポリマー分散剤(C)の量は、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.5~5重量パーセント、または0.75~2重量パーセントである。
【0024】
(D)添加剤
いくつかの実施形態では、水性系剥離コーティング組成物は、添加剤(D)をさらに含む。本開示に従う使用に好適な添加剤(D)としては、架橋剤、消泡剤、流動および均染剤、着色剤、レオロジー調整剤、フィルム形成剤、殺生物剤/抗真菌剤、抗酸化剤、界面活性剤/乳化剤、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
エマルションコポリマー(A)を調製した後、次いで、シリコーン系エマルション(B)、分散剤(C)、および任意の添加剤(D)をそれに添加し、溶液が均一になるまで混合する。これは、開示される剥離コーティング組成物を調製する好ましい方法であるが、当該技術分野で既知の他の方法も好適であり得、当該技術分野で既知の方法に従うエマルションコポリマー(A)を構成する成分の重合前または重合中にシリコーン系エマルション(B)を添加する方法を含む。
【実施例
【0026】
本開示を、開示される接着剤組成物および既存の接着剤組成物を例示する例(例示的実施例「IE」、比較例「CE」、総称して「実施例」)を説明することによって、ここで、さらに詳細に説明する。しかしながら、本開示の範囲は、当然ながら、実施例に限定されない。
【表1】
【0027】
ポリ酢酸ビニルコポリマーエマルション「A」の調製
典型的なエマルション重合では、ポリ酢酸ビニルコポリマーを、全モノマーの乾燥重量に基づいて、以下の組成:0.5%アクリル酸、0.25%無水マレイン酸、3%アクリル酸ブチル、および96.25酢酸ビニルで合成する。エマルション固形分含有量は46.5%であり、pHは約7である。
【0028】
シリコーン系エマルション「B」の調製
94部のポリマー(i)を、6部の8421液(エポキシ-、グリコールシリコーン、Dow Corningによって供給)と混合して、均一な混合物を得た。
【化4】
式中、Xのすべての実例の75%は、式
【化5】
を有し、Xの25%は、水素である。
【0029】
次いで、10部のSOFTANOL(商標)90および10部のSOFTANOL(商標)160(Nippon Shokubai Co.,LTDから入手可能)を混合物に添加し、よく混合する。100部の水を高剪断速度で添加して濃厚相エマルションを得、続いて179部の水で段階的に希釈する。最後に、1部の酢酸および0.4部のKATHON(商標)LX(The Dow Chemical Companyによって供給)を、殺生物剤として添加する。
【0030】
ポリマー分散剤「C」の調製
ポリマー分散剤は、50%の酸含有量を有する無水マレイン酸、ジイソブチレン交互コポリマーである。生成物をキシレン中で溶液ポリマーとして合成し、水酸化ナトリウムで中和する。水溶性ナトリウム塩を水性抽出によって有機溶媒から分離し、25重量%固形分で水性分散剤として使用する。
実施例を、表2に特定される配合に従って配合する。
【表2】
【0031】
試験を以下のように実施する。組成物を、0#Meyer Rodを用いてクレープ紙料の粗面に各々塗布し、組成物を希釈して乾燥コーティング重量が約5gsmであることを確実にすることができる。湿紙を、循環オーブンにおいて130℃で15秒間乾燥させる。
【0032】
試験テープは、3M Companyによって供給される3M(商標)2310、またはThe Dow Chemical Companyによって供給されるROBOND(商標)PS-2008である。剥離裏紙を有するテープのエージング条件は、6.86kpa(70g/cm)の圧力で、23℃/55%で3日間または70℃で3日間のエージングである。
【0033】
ステンレス鋼に対する初期接着力を、Federation Internationale des fabricants et transformateurs d’Adhesifs et Thermocollants(「FINAT」)Test Method No.1によって測定する。
【0034】
乾燥させた組成物の巻き戻し接着特性を、FINAT Test Method No.3(低速巻き戻し接着=300mm/分)およびFINAT Test Method No.4(高速巻き戻し接着=1524mm/分、剥離角度を90度に変更)によって測定する。
【0035】
再接着(剥離保持)を、FINAT Test Method No.1に従って、剥離裏紙と接触させて23℃/55%で3日間および70℃で3日間エージングした後の使用済みテープについて試験する。試験基板は、ステンレス鋼である。
【0036】
実施例の性能結果を表3および表4に詳述する。表3は、溶剤系感圧接着剤を用いて行った性能結果を詳述し、表4は、水性系感圧接着剤の結果を詳述する。すべての実施例で、適度な剥離力および比較的高い剥離保持が望ましい。
【表3】
【表4】
【0037】
上で説明される実施形態に加えて、特定の組み合わせの多くの実施形態が本開示の範囲内にあり、それらのうちのいくつかを以下に説明する。
実施形態1.水性系剥離コーティング組成物であって、
(A)共重合可能な酸モノマーを含むビニル系エマルションコポリマーと、
(B)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含むシリコーン系エマルションと、
(C)酸官能基を含むポリマー分散剤と、を含み、
水性系剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)対ポリマー分散剤(C)の重量比が、2:1~3:1である、水性系剥離コーティング組成物。
【0038】
実施形態2.ビニル系エマルションコポリマー(A)が、0.5~5重量パーセントのアルファ-不飽和モノ-または-ジカルボン酸に由来する共重合可能な酸モノマーを含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0039】
実施形態3.ビニル系エマルションコポリマー(A)が、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、80~99重量パーセントで存在する、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0040】
実施形態4.ビニル系エマルションコポリマー(A)が、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、88~92重量パーセントで存在する、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0041】
実施形態5.ビニル系エマルションコポリマー(A)が、酢酸ビニルモノマー、塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、スチレンモノマー、アクリル酸アルキルモノマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される共重合可能なモノマーを含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0042】
実施形態6.ビニル系エマルションコポリマー(A)が、0~60℃のTgを有する、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0043】
実施形態7.シリコーン系エマルション(B)が、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.5~8重量パーセントで存在する、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0044】
実施形態8.シリコーン系エマルション(B)が、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、2~5重量パーセントで存在する、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0045】
実施形態9.アミン-、ポリオール-官能性シロキサンが、一般式
【化6】
を有し、
式中、各Eは、独立して、一価の炭化水素基、ヒドロキシル基、およびアルコキシ基からなる群から選択され、各R1は、独立して、一価の炭化水素基であり、各R2は、独立して、1~10個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、hは、25~1,000であり、jは、0.1~200であり、各R3’’は、以下を含む複素環式窒素含有化合物であり、
【化7】

式中、各R4’’は、独立して、水素原子および式-R2NY2の基からなる群から選択され、各Yは、独立して、水素原子またはY’であり、各Y’は、以下の式の基であり、
【化8】

式中、R2基は、独立して、上記のように特徴付けられ、かつすべてのYがHではないことを条件とする、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0046】
実施形態10.エポキシ-、グリコール-シロキサンが、以下の一般式を有し、
E3SiO-(R1 2SiO)h-(R1R6SiO)j-(R1R7SiO)k-SiE3
式中、各R1は、独立して、一価の炭化水素基であり、R6は、エポキシ含有基であり、R7は、ポリエーテル基であり、各Eは、独立して、一価の炭化水素基、ヒドロキシル基、およびアルコキシ基からなる群から選択され、hは、25~1000であり、jは、0.1~200であり、kは、0.1~200である、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0047】
実施形態11.シリコーン系エマルション(B)が、界面活性剤をさらに含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0048】
実施形態12.シリコーン系エマルション(B)が、氷酢酸などの有機酸をさらに含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0049】
実施形態13.ポリマー分散剤(C)が、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.5~5重量パーセントで存在する、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0050】
実施形態14.ポリマー分散剤(C)が、剥離コーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、0.75~2重量パーセントで存在する、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0051】
実施形態15.ポリマー分散剤(C)が、アルファ-不飽和モノ-または-ジカルボン酸に由来する共重合可能な酸モノマーを含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0052】
実施形態16.ポリマー分散剤(C)が、カルボキシレートポリカルボン酸コポリマーのナトリウム塩を含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0053】
実施形態17.ポリマー分散剤(C)が、疎水性モノマーを含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0054】
実施形態18.ポリマー分散剤(C)が、無水マレイン酸、ジイソブチレンコポリマーのナトリウム塩を含む、先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0055】
実施形態19.架橋剤、消泡剤、流動および均染剤、着色剤、レオロジー調整剤、フィルム形成剤、殺生物剤/抗真菌剤、抗酸化剤、界面活性剤/乳化剤、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤(D)をさらに含む、先行または後続する請求項のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物。
【0056】
実施形態20.水性系剥離コーティング組成物であって、
(A)酢酸ビニルモノマー単位およびアルファ-不飽和モノ-または-ジカルボン酸に由来する酸モノマー単位を含むエマルションコポリマーと、
(B)アミン-、ポリオール-官能性シロキサンと、エポキシ-、グリコール-官能性シロキサンとの混合物を含むシリコーン系エマルションと、
(C)酸官能基を含むポリマー分散剤と、を含み、
水性系剥離コーティング組成物におけるシリコーン系エマルション(B)対ポリマー分散剤(C)の重量比が、2:1~3:1である、水性系剥離コーティング組成物。
【0057】
実施形態21.先行または後続する実施形態のいずれかに記載の水性系剥離コーティング組成物を含む、ラベルまたはテープ。