(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】砥粒帯鋸刃
(51)【国際特許分類】
B23D 61/12 20060101AFI20220929BHJP
B28D 1/08 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B23D61/12 B
B28D1/08
(21)【出願番号】P 2021021017
(22)【出願日】2021-02-12
(62)【分割の表示】P 2016089528の分割
【原出願日】2016-04-27
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】504279326
【氏名又は名称】株式会社アマダマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】長野 裕二
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌之
(72)【発明者】
【氏名】辻本 晋
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-145726(JP,A)
【文献】特開2008-044018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 61/12
B24B 3/00-3/60
B24B 21/00-39/06
B24D 3/00-99/00
B26D 1/46
B27B 33/06
B28D 1/00-7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの切削加工に用いられる砥粒帯鋸刃であって、
エンドレス状の台金と、
前記台金の一側縁部に周方向に沿って電着されかつ刃先側が同一平面上に形成されかつ砥粒を含む砥粒層と、を具備し、
前記砥粒層は、
前記砥粒帯鋸刃の帯厚方向の一方側へ突出した複数の第1突出部と、
前記帯厚方向の他方側へ突出した複数の第2突出部と、を含み、
前記台金の一側縁部に前記砥粒層を複数の領域に分断する複数の分断部が前記周方向に間隔を置いて形成され、
前記砥粒層はニッケルめっきによって電着
され、
前記砥粒層における複数の領域の周方向の長さは、交互に変化している、
砥粒帯鋸刃。
【請求項2】
前記第1突出部同士の間隔及び前記第2突出部同士の間隔は前記周方向に沿ってそれぞれ変化している、請求項1に記載の砥粒帯鋸刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石英ガラス、光学ガラス、セラミックス、又はシリコン等からなるワークの切断加工又は溝加工等の切削加工に用いられる砥粒帯鋸刃(電着帯鋸刃)に関する。
【背景技術】
【0002】
広く普及している一般的な砥粒帯鋸刃は、連続型とセグメント型と歯切り型の3つのタイプからなるものである。連続型の砥粒帯鋸刃においては、エンドレス状の台金の一側縁部に、ダイヤモンド砥粒等の砥粒を含む砥粒層が全周(砥粒帯鋸刃の全周)に亘って帯状に連続して電着されている。セグメント型の砥粒帯鋸刃においては、エンドレス状の台金の一側縁部に、砥粒を含む複数のセグメント砥粒層が周方向(砥粒帯鋸刃の周方向)に間隔を置いて電着されている。歯切り型の砥粒帯鋸刃においては、エンドレス状の台金の一側縁部に周方向に間隔を置いて凸状に形成された複数の歯に、砥粒を含む砥粒層がそれぞれ電着されている(後述の実施例参照)。
【0003】
連続型の砥粒帯鋸刃においては、砥粒層が全周に亘って帯状に連続して電着されており、砥粒の量が多いことから、1個当たりの砥粒にかかる切削負荷が小さく、砥粒の脱落を抑えて、安定した切削加工を行うことができる。しかしながら、切削加工中に、ワークと砥粒帯鋸刃との間に隙間がほとんどなく、ワークと砥粒帯鋸刃との間に切削油等の切削液を安定的に供給し又はワークと砥粒帯鋸刃との間から切屑を安定的に排出することが困難である。その結果、ワークの切削長が長く又は砥粒帯鋸刃の送り速度が高い切削条件において、切れ味が低下して、ワークの切断面の切れ曲がりが発生することになる。
【0004】
一方、セグメント型の砥粒帯鋸刃においては、複数のセグメント砥粒層の周方向の離隔によって、ワークと砥粒帯鋸刃との間に隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性を高めて、良好な切れ味を維持することができる。同様に、歯切り型の砥粒帯鋸刃においても、歯切りによる複数の砥粒層の周方向の離隔によって、ワークと砥粒帯鋸刃との間に隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性を高めて、良好な切れ味を維持することができる。しかしながら、セグメント型及び歯切り型の砥粒帯鋸刃においては、砥粒の量が少なく、1個当たりの砥粒にかかる切削負荷が大きくなる。その結果、ワークの切削長が長く又は砥粒帯鋸刃の送り速度が高い切削条件において、砥粒の脱落が多くなり、ワークの切断面の切れ曲がりが発生することになる。
【0005】
そして、一般的な砥粒帯鋸刃に代わり、砥粒の脱落を抑えつつ、切削液の供給性及び切屑の排出性を高めることができる砥粒帯鋸刃が開発されている(特許文献1参照)。その先行技術に係る砥粒帯鋸刃の構成を簡単に説明すると、次の通りである。
【0006】
先行技術に係る砥粒帯鋸刃においては、エンドレス状の台金の一側縁部に、砥粒層が全周(砥粒帯鋸刃の全周)に亘って帯状に連続して電着されている。また、砥粒層の一側縁部(一側部)には、帯厚方向の一方側へ突出した複数の第1突出部が周方向(砥粒帯鋸刃の周方向)に等間隔に形成されている。砥粒層の他側縁部(他側部)には、帯厚方向の他方側へ突出した複数の第2突出部が周方向に等間隔に形成されている(後述の実施例参照)。
【0007】
従って、先行技術に係る砥粒帯鋸刃においては、砥粒層が全周に亘って帯状に連続して電着されており、砥粒の量が多いことから、1個当たりの砥粒にかかる切削負荷が小さく、砥粒の脱落を抑えて、安定した切削加工を行うことができる。また、複数の第1突出部の周方向の離隔及び複数の第2突出部の周方向の離隔によって、ワークと砥粒帯鋸刃の間に隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性を高めて、良好な切れ味を維持して、ワークの切断面の切れ曲がりを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ワークの切削長がより長く又は砥粒帯鋸刃の送り速度がより高い高負荷の切削条件においては、ワークと砥粒帯鋸刃との間に切削液を供給し難くなったり、ワークと砥粒帯鋸刃との間から切屑を排出し難くなったりする。その結果、切れ味が低下して、ワークの切断面の切れ曲がりが発生することになる。つまり、高負荷の切削条件において、良好な切れ味を維持して、ワークの切断面の切れ曲がりを抑えて、安定した切削加工を行うことは容易でないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、台座に内部応力による歪が発生することを抑制する砥粒帯鋸刃を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の態様は、ワークの切削加工に用いられる砥粒帯鋸刃であって、砥粒帯鋸刃は、エンドレス状の台金と、台金の一側縁部に周方向に沿って電着されかつ刃先側が同一平面上に形成されかつ砥粒を含む砥粒層とを具備する。砥粒層は、砥粒帯鋸刃の帯厚方向の一方側へ突出した複数の第1突出部と、砥粒帯鋸刃の帯厚方向の他方側へ突出した複数の第2突出部とを含む。台金の一側縁部に砥粒層を複数の領域に分断する複数の分断部が周方向に間隔を置いて形成され、砥粒層はニッケルめっきによって電着され、砥粒層における複数の領域の周方向の長さは、交互に変化している。
【0012】
本発明の態様によると、前述のように、前記台金の一側縁部に前記砥粒層が前記周方向に沿って電着されている。これにより、前記砥粒帯鋸刃を構成する砥粒の量が多く、1個当たりの前記砥粒にかかる切削負荷が小さく、砥粒の脱落を抑えることができる。
【0013】
また、前述のように、前記砥粒層に帯厚方向の両側へそれぞれ突出した複数の前記第1突出部及び複数の前記第2突出部が前記周方向に間隔を置いて形成されている。これにより、複数の前記第1突出部の離隔及び複数の前記第2突出部の離隔によって、ワークと前記砥粒帯鋸刃との間に隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性を高めることができる。
【0014】
更に、前述のように、前記台金の一側縁部に複数の前記分断部が前記周方向に間隔を置いて形成されている。これにより、複数の前記分断部の空間、換言すれば、前記砥粒層を前記帯厚方向に横断する複数の空間によって、ワークと前記砥粒帯鋸刃との間に十分な隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前述のように、砥粒の脱落を抑えつつ、ワークと前記砥粒帯鋸刃との間に十分な隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性をより高めることができる。そのため、本発明によれば、ワークの切削長がより長く又は砥粒帯鋸刃の送り速度がより高い高負荷の切削条件においても、良好な切れ味を維持して、ワークの切断面の切れ曲がりを抑えて、安定した切削加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)は、第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の刃先側(切削作用部側)から見た図、
図1(b)は、第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図である。
図1(c)は、
図1(b)におけるIC-IC線に沿った拡大断面図、
図1(d)は、
図1(b)におけるID-ID線に沿った拡大断面図、
図1(e)は、
図1(b)におけるIE-IE線に沿った拡大断面図である。
【
図2】
図2(a)は、第2実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の刃先側から見た図、
図2(b)は、第2実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図である。
図2(c)は、
図2(b)におけるIIC-IIC線に沿った拡大断面図、
図2(d)は、
図2(b)におけるIID-IID線に沿った拡大断面図、
図2(e)は、
図2(b)におけるIIE-IIE線に沿った拡大断面図である。
【
図3】
図3(a)は、第3実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の刃先側から見た図、
図3(b)は、第3実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図である。
【
図4】
図4(a)は、第4実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の刃先側から見た図、
図4(b)は、第3実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図である。
【
図5】
図5(a)は、第5実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の刃先側から見た図、
図5(b)は、第5実施形態に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図である。
【
図6】
図6(a)は、比較例1に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図、
図6(b)は、比較例2に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図、
図6(c)は、比較例3に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図である。
【
図7】
図7(a)は、比較例4に係る砥粒帯鋸刃の一部を刃先側から見た図、
図7(b)は、比較例4に係る砥粒帯鋸刃の一部の側面図である。
【
図8】
図8(a)は、比較品1の切削試験の結果として3カット後のダイヤモンド砥粒の脱落状態を示す刃先側から見た写真図である。
図8(b)は、比較品2の切削試験の結果として3カット後のダイヤモンド砥粒の脱落状態を示す刃先側から見た写真図である。
図8(c)は、比較品3の切削試験の結果として1カット後のダイヤモンド砥粒の脱落状態を示す刃先側から見た写真図である。
図8(d)は、比較品4の切削試験の結果として3カット後のダイヤモンド砥粒の脱落状態を示す刃先側から見た写真図である。
【
図9】
図9(a)は、実施品1の切削試験の結果として3カット後のダイヤモンド砥粒の脱落状態を示す刃先側から見た写真図である。
図9(b)は、実施品2の切削試験の結果として3カット後のダイヤモンド砥粒の脱落状態を示す刃先側から見た写真図である。
図9(c)には、実施品2の切削試験の結果として3カット後の分断部周辺のダイヤモンド砥粒の脱落状態を示す刃先側から見た写真図である。
【
図10】
図10は、実施品1、実施品2、及び比較品1~4の切削試験の結果として、ダイヤモンド砥粒の脱落度合い及びワークの切断面の切れ曲がり量を示す表図である。
【
図11】
図11は、実施品1、実施品1A~1Dの切削試験の結果として、分断部の割合とダイヤモンド砥粒の脱落度合いとの関係を示す表図である。
【
図12】
図12は、実施品1、実施品1E~1Hの切削試験の結果として、分断部の割合とワークの切断面の切れ曲がり量との関係を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態(第1~第5実施形態)について
図1から
図5を参照して説明する。
【0018】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「帯厚方向」とは、砥粒帯鋸刃の厚み方向のことをいい、「帯幅方向」とは、砥粒帯鋸刃の幅方向ことをいい、「周方向」とは、砥粒帯鋸刃の周方向のことをいう。
図1から
図5において、「T」は、帯厚方向、「W」は、帯幅方向、「C」は、周方向、「R」は、砥粒帯鋸刃の走行方向(進行方向)をそれぞれ指している。
【0019】
(第1実施形態)
図1(a)から
図1(e)に示すように、第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃10は、例えば石英ガラス、光学ガラス、セラミックス、又はシリコン等からなるワーク(図示省略)の切断加工又は溝加工等の切削加工に用いられものである。また、砥粒帯鋸刃10は、帯鋸盤(図示省略)における複数の鋸刃ホイール(図示省略)に巻回して装着される。
【0020】
砥粒帯鋸刃10は、エンドレス状の台金12を具備しており、台金12は、例えばバネ鋼又はステンレス鋼等の高靱性の帯鋼からなるものである。また、台金12の帯幅(帯幅方向の長さ)は、用途に応じて適宜に設定されるが、通常、10~100mmに設定されている。台金12の帯厚(帯厚方向の長さ)は、用途に応じて適宜に設定されるが、通常、0.2~2.0mmに設定されている。
【0021】
台金12の一側縁部には、砥粒層14がニッケルめっきによって台金12の周方向に沿って電着されており、砥粒層14は、ダイヤモンド砥粒、立方晶窒化ホウ素(CBN)砥粒、又は酸化アルミナ(Al2O3)砥粒等の砥粒を含んでいる。また、砥粒の粒度は、用途に応じて適宜に設定されるが、通常、#325/400~#40/50、好ましくは、#230/270~#40/50に設定されている。
【0022】
砥粒層14の一側縁部(一側部)には、帯厚方向の一方側へ突出した複数の第1突出部16が周方向に間隔を置いて形成されている。砥粒層の他側縁部(他側部)には、帯厚方向の他方側へ突出した複数の第2突出部18が周方向に間隔を置いて形成されている。複数の第1突出部16及び複数の第2突出部18は、周方向に沿って帯厚(台金12の厚み)の中心線に対称となるように整合して配置されている。また、各第1突出部16の周方向の長さS1は、一定の長さであるが、一定の長さでなくてもよい。第1突出部16間の間隔S2は、一定の長さであるが、一定の長さでなくてもよい。更に、各第2突出部18の周方向の長さK1は、各第1突出部16の周方向の長さS1と同じであって、一定の長さであるが、一定の長さでなくてもよい。第2突出部18間の間隔K2は、第1突出部16間の間隔S2と同じであって、一定の長さであるが、一定の長さでなくてもよい。なお、説明の便宜上、
図1(b)において、第1突出部16の側面視形状の一部を省略している。
【0023】
台金12の一側縁部には、砥粒層14を複数の領域(切削領域)Aに分断する複数の分断部20が周方向に間隔を置いて形成されている。換言すれば、台金12の一側縁部には、砥粒層14のない複数の非砥粒層20が周方向に間隔を置いて形成されている。また、砥粒層14の各領域Aには、複数の第1突出部16及び複数の第2突出部18が含まれている。
【0024】
砥粒層14の各領域Aの周方向の長さP1は、一定の長さであり、500mm以下、好ましくは、20~500mmに設定されている。砥粒層14の各領域Aの周方向の長さP1を500mm以下に設定したのは、500mmを超えると、ワークの切削長が長い場合に、砥粒帯鋸刃10の切削作用を奏する部分に分断部20が存在しないことが多くなり、切削油等の切削液の供給性及び切屑の排出性が悪化することが懸念されるからである。砥粒層14の各領域Aの周方向の長さP1を好ましくは20mm以上に設定したのは、20mm未満であると、砥粒帯鋸刃10を構成する砥粒の量を多くして、1個当たりの砥粒にかかる切削負荷を十分に小さくすることが困難になるからである。
【0025】
各分断部(非砥粒層)20の周方向の長さP2は、一定の長さであるが、一定の長さでなくてもよい。また、各分断部20の周方向の長さP2は、1.0mm以上、好ましくは1.0~6mmに設定されている。各分断部20の周方向の長さP2を1.0mm以上に設定したのは、1.0mm未満であると、各分断部20を形成するためのマスキング処理が困難になるからである。各分断部20の周方向の長さP2を好ましくは6mm以下に設定したのは、6mmを超えると、砥粒帯鋸刃10を構成する砥粒の量を多くして、1個当たりの砥粒にかかる切削負荷を十分に小さくすることが困難になるからである。
【0026】
砥粒層14の各領域Aの周方向の長さP1と各分断部20の周方向の長さP2の和に対する各分断部20の周方向の長さP2の割合P2/(P1+P2)は、0.2~17%に設定されている。換言すれば、台金12の周長(電着帯鋸刃10の周長)に対する複数の分断部20における周方向の総長の割合(分断部20の割合)P2/(P1+P2)は、0.2~17%に設定されている。分断部20の割合P2/(P1+P2)を0.2%以上に設定したのは、0.2%未満であると、切削液の供給性及び切屑の排出性をより高めることが困難になるからである。分断部20の割合P2/(P1+P2)を17%以下に設定したのは、17%を超えると、砥粒帯鋸刃10を構成する砥粒の量を多くして、1個当たりの砥粒にかかる切削負荷を十分に小さくすることが困難になるからである。
【0027】
続いて、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0028】
前述のように、台金12の一側縁部に砥粒層14が周方向に沿って電着され、分断部20の割合P2/(P1+P2)が17%以下に設定されている。これにより、砥粒帯鋸刃10を構成する砥粒の量が多くなり、1個当たりの砥粒にかかる切削負荷を十分に小さくして、砥粒の脱落を十分に抑えることができる。
【0029】
また、前述のように、砥粒層14に帯厚方向の両側へそれぞれ突出した複数の第1突出部16及び複数の第2突出部18が周方向に間隔を置いて形成され、砥粒層14の各領域Aに複数の第1突出部16及び複数の第2突出部18が含まれている。これにより、複数の第1突出部16の離隔及び複数の第2突出部18の離隔によって、ワークと砥粒帯鋸刃10との間に隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性を高めることができる。
【0030】
更に、前述のように、台金12の一側縁部に複数の分断部20が周方向に間隔を置いて形成され、分断部20の割合P2/(P1+P2)が0.2%以上に設定されている。これにより、複数の分断部20の空間、換言すれば、砥粒層14を帯厚方向に横断する複数の空間によって、ワークと砥粒帯鋸刃10との間に十分な隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性をより高めることができる。
【0031】
台金12の一側縁部に複数の分断部20が周方向に間隔を置いて形成されているため、砥粒層14をニッケルめっきによって電着する際に、台金12に内部応力による歪が発生することを抑えることができる。
【0032】
従って、第1実施形態によれば、前述のように、砥粒の脱落を十分に抑えつつ、ワークと砥粒帯鋸刃10との間に十分な隙間を確保して、切削液の供給性及び切屑の排出性をより高めることができる。そのため、第1実施形態によれば、ワークの切削長がより長く又は砥粒帯鋸刃10の送り速度がより高い高負荷の切削条件においても、良好な切れ味を維持して、ワークの切断面の切れ曲がり及びワークの切削面粗さ(切断面粗さ)のバラツキを抑えて、安定した切削加工を行うことができる。
【0033】
また、第1実施形態によれば、前述のように、砥粒層14をニッケルめっきによって電着する際に、台金12に内部応力による歪が発生することを抑えることができる。そのため、第1実施形態によれば、砥粒帯鋸刃10の製造工程の中から、台金12の歪を除去する歪取り等の処理を省略して、砥粒帯鋸刃10の製造コストの低減を図ることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図2(a)から
図2(e)に示すように、第2実施形態に係る砥粒帯鋸刃22は、第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃10(
図1参照)と同様の構成を有している。以下、砥粒帯鋸刃22の構成のうち、砥粒帯鋸刃10と異なる構成について説明する。なお、砥粒帯鋸刃22における複数の構成要素のうち、砥粒帯鋸刃10における構成要素と対応するものについては、図面中に同一符号を付してある。
【0035】
砥粒帯鋸刃22においては、複数の第1突出部16及び複数の第2突出部18は、周方向に沿って交互に配置されている。なお、説明の便宜上、
図2(b)において、第1突出部16の側面視形状の一部を省略している。
【0036】
そして、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する他に、次のような効果を奏する。
【0037】
即ち、複数の第1突出部16及び複数の第2突出部18が周方向に沿って交互に配置されていることにより、ワークの切削溝の側壁(図示省略)からの切削衝撃を緩和して、ワークの切断面の切れ曲がりをより抑えることができる。
【0038】
(第3実施形態)
図3(a)(b)に示すように、第3実施形態に係る砥粒帯鋸刃24は、第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃10(
図1参照)と同様の構成を有している。以下、砥粒帯鋸刃24の構成のうち、砥粒帯鋸刃10と異なる構成について説明する。なお、砥粒帯鋸刃24における複数の構成要素のうち、砥粒帯鋸刃10における構成要素と対応するものについては、図面中に同一符号を付してある。
【0039】
砥粒帯鋸刃24においては、砥粒層14の各領域Aの周方向の長さP1は、一定の長さでなく、砥粒層14における複数の領域Aの周方向の長さP1は、交互に変わっている。換言すれば、砥粒層14における長い複数の領域A及び短い複数の領域Aは、周方向に沿って交互に配置されている。なお、説明の便宜上、
図3(b)において、第1突出部16の側面視形状の一部を省略している。
【0040】
そして、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する他に、次のような効果を奏する。
【0041】
即ち、砥粒層14における長い複数の領域A及び短い複数の領域Aが周方向に沿って交互に配置されていることにより、切削騒音を低減して、作業環境の向上を図ることができる。
【0042】
(第4実施形態)
図4(a)(b)に示すように、第4実施形態に係る砥粒帯鋸刃26は、第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃10(
図1参照)と同様の構成を有している。以下、砥粒帯鋸刃26の構成のうち、砥粒帯鋸刃10と異なる構成について説明する。なお、砥粒帯鋸刃26における複数の構成要素のうち、砥粒帯鋸刃10における構成要素と対応するものについては、図面中に同一符号を付してある。
【0043】
砥粒帯鋸刃26においては、各第1突出部16の側面視形状(帯幅方向の一方側から見た形状)は、矩形状になっている。図示は省略するが、各第2突出部18の側面視形状(帯幅方向の他方側から見た形状)は、矩形状であって、各第1突出部16の側面視形状と同じ形状になっている。また、第1突出部16間の間隔S2及び第2突出部18間の間隔K2は、一定の長さになっていない。なお、説明の便宜上、
図4(b)において、第1突出部16の側面視形状の一部を省略している。
【0044】
そして、第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する他に、次のような効果を奏する。
【0045】
即ち、各第1突出部16の側面視形状及び各第2突出部18の側面視形状がそれぞれ矩形状になっていることにより、ワークと第1突出部16等との接触面積が増えて、ワークの切削面粗さのバラツキをより抑えることができる。また、第1突出部16間の間隔S2及び第2突出部18間の間隔K2が一定の長さになっていないことにより、切削騒音を低減して、作業環境の向上を図ることができる。
【0046】
(第5実施形態)
図5(a)(b)に示すように、第5実施形態に係る砥粒帯鋸刃28は、第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃10(
図1参照)と同様の構成を有している。以下、砥粒帯鋸刃28の構成のうち、砥粒帯鋸刃10と異なる構成について説明する。なお、砥粒帯鋸刃28における複数の構成要素のうち、砥粒帯鋸刃10における構成要素と対応するものについては、図面中に同一符号を付してある。
【0047】
砥粒帯鋸刃28においては、各第1突出部16の上流側の端面16fは、帯幅方向に対して下流側へ傾斜している。図示は省略するが、各第2突出部18の上流側の端面18fは、帯幅方向に対して下流側へ傾斜している。そして、各第1突出部16の上流側の端面16fの帯幅方向に対する傾斜角θ及び各第2突出部18の上流側の端面18fの帯幅方向に対する傾斜角は、10~70度、好ましくは、35~55度に設定されている。各第1突出部16の上流側の端面16fの帯幅方向に対する傾斜角θ等を10度以上に設定したのは、10度未満であると、切屑の排出性をより一層高めることが困難になるからである。各第1突出部16の上流側の端面16fの帯幅方向に対する傾斜角θ等を70度以下に設定したのは、70度を超えると、各第1突出部16等と台金12との接合強度の低下が懸念されるからである。なお、説明の便宜上、
図5(b)において、第1突出部16の側面視形状の一部を省略している。
【0048】
そして、第5実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する他に、次のような効果を奏する。
【0049】
即ち、各第1突出部16の上流側の端面16f及び各第2突出部18の上流側の端面18fが帯幅方向に対して下流側へそれぞれ傾斜していることにより、切屑の排出性をより一層高めて、高負荷の切削条件においても、より安定した切削加工を行うことができる。
【0050】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他、種々の態様で実施可能である。そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【実施例】
【0051】
本発明の実施例(比較例1~4、実施品1、実施品1A~1H、実施品2、比較品1~4、及び切削試験)について
図6から
図12を参照して説明する。
【0052】
なお、
図6及び
図7において、「T」は、帯厚方向、「W」は、帯幅方向、「C」は、周方向をそれぞれ指している。
【0053】
(比較例1)
図6(a)に示すように、比較例1に係る砥粒帯鋸刃30は、一般的な連続型の砥粒帯鋸刃である。砥粒帯鋸刃30においては、エンドレス状の台金12の一側縁部に、ダイヤモンド砥粒等の砥粒を含む砥粒層32が全周(砥粒帯鋸刃30の全周)に亘って帯状に連続して電着されている。
【0054】
(比較例2)
図6(b)に示すように、比較例2に係る砥粒帯鋸刃34は、一般的なセグメント型の砥粒帯鋸刃である。砥粒帯鋸刃34においては、エンドレス状の台金12の一側縁部に、ダイヤモンド砥粒等の砥粒を含む複数のセグメント砥粒層36が周方向に間隔を置いて電着されている。
【0055】
(比較例3)
図6(c)に示すように、比較例3に係る砥粒帯鋸刃38は、一般的な歯切り型の砥粒帯鋸刃である。砥粒帯鋸刃38においては、エンドレス状の台金12の一側縁部に間隔を置いて形成された複数の歯40に、ダイヤモンド砥粒等の砥粒を含む砥粒層42がそれぞれ電着されている。
【0056】
(比較例4)
図7(a)(b)に示すように、比較例4に係る砥粒帯鋸刃44は、先行技術に係る砥粒帯鋸刃(特許第4397193号公報参照)である。砥粒帯鋸刃44においては、エンドレス状の台金12の一側縁部に、ダイヤモンド砥粒等の砥粒を含む砥粒層46が台金12の全周に亘って連続して電着されている。また、砥粒帯鋸刃10(
図1参照)と同様に、砥粒層46には、帯厚方向の両側へそれぞれ突出した複数の第1突出部16及び複数の第2突出部18が周方向に間隔を置いて形成されている。なお、説明の便宜上、
図7(b)において、第1突出部16の側面視形状の一部を省略している。
【0057】
(実施品1、実施品1A~1H、実施品2、及び比較品1~4)
第1実施形態に係る砥粒帯鋸刃を実施品1及び実施品1A~1Hとして、第2実施形態に係る砥粒帯鋸刃を実施品2としてそれぞれ試作した。また、比較例1に係る砥粒帯鋸刃を比較品1として、比較例2に係る砥粒帯鋸刃を比較品2として、比較例3に係る砥粒帯鋸刃を比較品3として、比較例4に係る砥粒帯鋸刃を比較品4としてそれぞれ試作した。
【0058】
ここで、実施品1において、砥粒層の領域の周方向の長さP1(
図1(a)参照)を30mm、分断部の周方向の長さP2(
図1(a)参照)を1mmに設定した。実施品1Aにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を30mm、分断部の周方向の長さP2を5mmに設定した。実施品1Bにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を30mm、分断部の周方向の長さP2を6mmに設定した。実施品1Cにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を30mm、分断部の周方向の長さP2を7mmに設定した。実施品1Dにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を30mm、分断部の周方向の長さP2を10mmに設定した。
【0059】
実施品1Eにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を100mm、分断部の周方向の長さP2を1mmに設定した。実施品1Fにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を500mm、分断部の周方向の長さP2を1mmに設定した。実施品1Gにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を550mm、分断部の周方向の長さP2を1mmに設定した。実施品1Hにおいて、砥粒層の領域の周方向の長さP1を700mm、分断部の周方向の長さP2を1mmに設定した。実施品2において、砥粒層の領域の周方向の長さP1を30mm、分断部の周方向の長さP2を1mmに設定した。
【0060】
実施品1、実施品1A~1H、実施品2において、第1突出部の周方向の長さS1(
図1(a)参照)、第1突出部間の間隔S2(
図1(a)参照)、第2突出部の周方向の長さK1(
図1(a)参照)、第2突出部間の間隔K2(
図1(a)参照)をそれぞれ5mmに設定した。比較品2において、セグメント砥粒層の周方向の長さ、セグメント砥粒層間の間隔をそれぞれ5mmに設定した。比較品4において、第1突出部の周方向の長さ、第1突出部間の間隔、第2突出部の周方向の長さ、第2突出部間の間隔をそれぞれ5mmに設定した。
【0061】
実施品1、実施品1A~1H、実施品2、及び比較品1~4において、台金の帯幅を67mm、台金の厚みを1.3mm、周長(砥粒帯鋸刃の周長)を9560mmにそれぞれ設定した。また、1社の電着メーカに砥粒層等の電着を依頼し、実施品1、実施品1A~1H、実施品2、及び比較品1~4において、ダイヤモンド砥粒の粒度(#60/80)、ダイヤモンド砥粒の集中度、及びダイヤモンド砥粒の埋め込み量をそれぞれ同じに設定した。
【0062】
(切削試験)
帯鋸盤(株式会社アマダマシンツール製、PCSAW-720)における一対の鋸刃ホイール(図示省略)に実施品1を巻回して装着した。そして、所定の切削条件(鋸速330m/分及び送り速度15mm/分)の下で、石英ガラスからなる500mm角のワークに対して切断加工を実施品1の切削試験として行った。同様に、一対の鋸刃ホイールに実施品2及び比較品1~4を順次巻回して装着し、前記所定の切削条件の下で、石英ガラスからなる500mm角のワークに対して切断加工を実施品2及び比較品1~4の切削試験として順次行った。なお、切削試験には、切削液として水溶性切削油を使用し、原則として、3カットの切断加工を行ったが、比較品3の切削試験の場合には、1カットの切断加工のみを行った。
【0063】
そして、実施品1、実施品2、及び比較品1~4の切削試験の結果として、ダイヤモンド砥粒の脱落状態の様子をまとめると、
図8(a)(b)(c)(d)及び
図9(a)(b)(c)に示すようになる。また、実施品1、実施品2、及び比較品1~4の切削試験の結果として、ダイヤモンド砥粒の脱落度合い及びワークの切断面の切れ曲がり量をまとめると、
図10に示すようになる。なお、本実施例において、ワークの切断面の切れ曲がり量とは、3カット後のワークの切断面の上端を基準として、ワークの切断面が手前側又は奥行き側に傾斜した場合における最大量のことである。
【0064】
即ち、
図8(a)及び
図10に示すように、比較品1の場合には、ダイヤモンド砥粒の脱落は少なかったが、ワークの切断面の切れ曲がり量が0.50mmと大きくなった。これは、ダイヤモンド砥粒の量が多いことから、1個当たりのダイヤモンド砥粒にかかる切削負荷が小さいが、高負荷の切削条件において水溶性切削油の供給性及び切屑の排出性が悪化したことによるものと考えられる。本実施例において、高負荷の切削条件とは、切削長が500mmと長くかつ送り速度が15mm/分と高い切削条件のことをいう。
【0065】
図8(b)及び
図10に示すように、比較品2の場合には、ダイヤモンド砥粒の脱落は多く、4カット目以降の切削加工ができない状態であった。これは、ダイヤモンド砥粒の量が比較品1のダイヤモンド砥粒の半分程度で少ないことから、高負荷の切削条件において1個当たりのダイヤモンド砥粒にかかる切削負荷が増大したことによるものと考えられる。
【0066】
図8(c)及び
図10に示すように、比較品3の場合には、1カット目の切削加工で、ダイヤモンド砥粒の脱落が激しく、2カット目以降の切削加工ができない状態であった。これは、ダイヤモンド砥粒の量が比較品2のダイヤモンド砥粒よりも少ないことから、高負荷の切削条件において1個当たりのダイヤモンド砥粒にかかる切削負荷がより増大したことによるものと考えられる。
【0067】
図8(d)及び10に示すように、比較品4の場合には、ダイヤモンド砥粒の脱落は少なく、ワークの切断面の切れ曲がり量が0.20mmで比較品1の場合に比べて少なくなった。これは、ダイヤモンド砥粒の量が多いことから、1個当たりのダイヤモンド砥粒にかかる切削負荷が小さいこと、及び複数の第1突出部の周方向の離隔等によってワークと砥粒帯鋸刃の間に隙間を確保して、水溶性切削油の供給性及び切屑の排出性を高めることができたことによるものと考えられる。しかしながら、比較品4の場合には、ワークの切断面の切れ曲がり量が0.20mm未満にできず、ワークの切断面の切れ曲がりを十分に抑えることができなかった。これは、高負荷の切削条件において水溶性切削油の供給性及び切屑の排出性が悪化したことによるものと考えられる。
【0068】
図9(a)及び
図10に示すように、実施品1の場合には、ダイヤモンド砥粒の脱落が極めて少なく、ワークの切断面の切れ曲がり量が0.05mmで比較品2及び比較品3の場合に比べて十分に少なくすることができた。これは、複数の第1突出部の離隔等の他に、複数の分断部の空間によってワークと砥粒帯鋸刃との間に十分な隙間を確保して、高負荷の切削条件においても水溶性切削油の供給性及び切屑の排出性を維持できたことによるものと考えられる。
【0069】
図9(b)(c)及び
図10に示すように、実施品2の場合にも、ダイヤモンド砥粒の脱落が極めて少なく、ワークの切断面の切れ曲がり量が0.04mmで比較品2及び比較品3の場合に比べて十分に少なくすることができた。これにより、複数の第1突出部及び複数の第2突出部が周方向に沿って交互に配置されていても、周方向に沿って帯厚(台金の厚み)の中心線に対称となるように整合して配置されている場合と同様の効果を奏することが確認された。
【0070】
実施品1、実施品1A~1Dの切削試験の結果として、分断部の割合とダイヤモンド砥粒の脱落度合いとの関係をまとめると、
図11に示すようになる。
【0071】
即ち、
図11に示すように、実施品1、実施品1A、実施品1Bの場合には、ダイヤモンド砥粒の脱落が極めて少ない状態であることが確認された。また、実施品1、実施品1C、実施品1Dの場合には、ダイヤモンド砥粒の脱落が少ないことが確認された。つまり、分断部の割合を17%以下に設定することにより、高負荷の切削条件においてもダイヤモンド砥粒の脱落をより十分に抑えることができることが判明した。
【0072】
実施品1、実施品1E~1Hの切削試験の結果として、分断部の割合とワークの切断面の切れ曲がり量との関係をまとめると、
図12に示すようになる。
【0073】
即ち、
図12に示すように、実施品1の場合、実施品1E~1Hの場合において、ワークの切断面の切れ曲がり量が0.20mm未満になり、ワークの切断面の切れ曲がりを十分に抑えることができることが確認できた。特に、実施品1の場合、実施品1Eの場合、実施品1Fの場合には、ワークの切断面の切れ曲がり量が0.10mm未満になり、ワークの切断面の切れ曲がりをより十分に抑えることができることが確認できた。つまり、分断部の割合を17%以下に設定しかつ砥粒層の領域の周方向の長さP1を500mm以下に設定することにより、高負荷の切削条件においてもワークの切断面の切れ曲がりを十分に抑えることが判明した。
【符号の説明】
【0074】
10 第1実施形態に係る電着帯鋸刃
12 台金
14 砥粒層
16 第1突出部
16f 第1突出部の上流側の端面
18 第2突出部
18f 第2突出部の上流側の端面
20 分断部(非砥粒層)
A 領域(切削領域)
22 第2実施形態に係る砥粒帯鋸刃
24 第3実施形態に係る砥粒帯鋸刃
26 第4実施形態に係る砥粒帯鋸刃
28 第5実施形態に係る砥粒帯鋸刃
30 比較例1に係る砥粒帯鋸刃
32 砥粒層
34 比較例2に係る砥粒帯鋸刃
36 セグメント砥粒層
38 比較例3に係る砥粒帯鋸刃
40 歯
42 砥粒層
44 比較例4に係る砥粒帯鋸刃
46 砥粒層