(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】プレート培地上にストリークされた試料からの自動化された微生物コロニーカウントのための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/06 20060101AFI20220929BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220929BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/34 D
G01N21/27 A
(21)【出願番号】P 2021028048
(22)【出願日】2021-02-25
(62)【分割の表示】P 2018506805の分割
【原出願日】2016-04-22
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517370191
【氏名又は名称】ビーデー キーストラ ビー.ヴィー.
(73)【特許権者】
【識別番号】517370205
【氏名又は名称】ワイルズ,ティモシー エム.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】ワイルズ,ティモシー エム.
(72)【発明者】
【氏名】マーセルポイル,ラファエル ロドルフ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-516144(JP,A)
【文献】特表2005-502354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0253660(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0278136(US,A1)
【文献】国際公開第2009/061183(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/147610(WO,A2)
【文献】国際公開第2013/166337(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
C12M 1/00-3/10
G01N 21/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンに従って培養物を接種され、培養されたプレート培地上のコロニー形成ユニットの数を推定するための自動化方法であって、
前記培養物の培養後に、前記プレート培地上のデジタル画像を取得することと、
前記デジタル画像から、前記画像内のコロニー候補を識別することと、
前記所定のパターンに従って前記デジタル画像を線形化することと、
前記デジタル画像の
線形化された座標
に沿って前記コロニー候補をプロットすることと、
前記線形化されたデジタル画像内の前記コロニー候補のピクセルに基づいて、前記プレート培地上のコロニー形成ユニットの数を推定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記画像が取得された前記プレート培地は、連続したジグザグパターンに沿ってストリークされる磁気的に制御された粒子を用いて接種され、前記デジタル画像は、前記ジグザグストリーキングパターンが前記線形化された
デジタル画像の
X軸であるように、前記ジグザグストリーキングパターンに従って
プロットされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁気的に制御される粒子の初期粒子荷重は、
前記コロニー候補のプロットから推定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記初期粒子荷重を推定することは、
前記線形化された画像の
X軸に沿った起点からの距離を選択することと、
前記選択された距離は、前記ジグザグストリーキングパターンに沿った距離を示し、
前記選択された距離において前記粒子によってコロニー形成ユニットが
前記培地上に放出される確率を求めることと、
前記選択された距離より前記
X軸に沿って起点から離れている前記デジタル画像内に存在するコロニー形成ユニットの数をカウントすることと、
を含み、
前記推定された初期粒子荷重は、前記求められた確率と、前記コロニー形成ユニットのカウントされた数との間の比
から推定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記距離は、前記選択された距離より前記線形化された画像の起点から離れた距離にある前記画像内に微生物増殖のコンフルエント領域が存在しないように選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記線形化された画像の前記
X軸に沿った複数の距離を選択することと、
前記選択された距離ごとに、前記選択された距離より、前記主軸に沿って前記線形化された画像の起点から離れている前記デジタル画像内に存在する前記コロニー形成ユニットの数をカウントすることと、
前記距離ごとのコロニー形成ユニットのカウントされた数に基づいて、前記コロニー形成ユニットを含む前記粒子の一箇所が前記培地と接触するときに、前記粒子によってコロニー形成ユニットが前記培地上に放出される確率を計算することと、
を更に含み、
所与の距離において前記粒子によってコロニー形成ユニットが放出される確率を求めることは、前記コロニー形成ユニットを含む前記粒子の一箇所が前記培地と接触するときに前記粒子によってコロニー形成ユニットが前記培地上に放出される前記計算された確率に基づく、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記デジタル画像をメモリに記憶される複数の分布モデルと比較することであって、各分布モデルは、所与の初期粒子荷重と、
前記粒子が前記培地と
接触
するときにコロニー形成ユニットが前記培地上に放出される所与の確率との場合の、撮像プレートにわたるコロニー形成ユニットの予想分布を示すことと、
前記比較された分布モデルに少なくとも部分的に基づいて、前記初期粒子荷重を求めることと、
を更に含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記線形化された画像の前記
X軸に沿った前記起点からの距離を選択することと、
コロニー候補に関連付けられた、前記選択された距離におけるピクセ
ルを特定することと、
前記
ピクセルに基づいて、前記初期粒子荷重を推定することと、
を更に含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記培養物の培養後に、前記プレート培地の複数のデジタル画像を取得することであって、各デジタル画像は、1つ以上のコロニー候補を含むことと、
前記コロニー候補の少なくともいくつかがコンフルエント領域を形成する1つのデジタル画像を識別することと、
前記デジタル画像内の前記コンフルエント領域を形成する前記コロニー候補がコンフルエント領域を形成するために結合されない早期のデジタル画像を識別することと、
前記早期のデジタル画像に基づいて、前記コンフルエント領域内のコロニー形成ユニットの数を推定することと、
を更に含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
プロセッサに、プレート培地上のコロニー形成ユニットの数を推定する方法を実行させるように構成されたプログラム命令が符号化されたコンピュータ可読メモリストレージ媒体であって、前記方法は、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を含む、コンピュータ可読メモリストレージ媒体。
【請求項11】
生体試料を接種された培養培地内の増殖を評価するためのシステムであって、
前記培養培地のデジタル画像を捕捉するための画像取得デバイスと、
前記培養培地に前記生体試料を接種するためのパターンに関する情報を記憶するメモリと、
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法に従う方法を行うよう命令を実行するように動作可能な1つ以上のプロセッサと、
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2015年4月23日に出願された米国仮特許出願第62/151,688号及び2016年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/318,488号の出願日の利益を主張するものであり、これらの仮特許出願の開示は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
微生物増殖の検出のための培養プレートのデジタル画像がますます注目されている。微生物増殖を検出するためにプレートを撮像する技法が、国際公開第2015/114121号に記載されており、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。そのような技法を用いると、研究室のスタッフは、もはや直接検査することによりプレートを読み出す必要はなく、プレート検査のために高品質デジタル画像を用いることができる。研究室ワークフロー及び意思決定を培養プレートのデジタル画像の調査にシフトすることにより、効率を改善することもできる。画像は、運用者又は適切な技能を有する別の人物によって更にまとめるために、運用者によってマーク付けすることができる。更なる画像を取得し、二次プロセスを誘導するのに用いることもできる。
【0003】
コロニーの検出、コロニーの計数、コロニーの個体群分化及びコロニーの同定は、近代の微生物学撮像システムのための目的を定義する。これらの目的を可能な限り早期に実現することにより、患者に結果を送達する目標が迅速に達成され、そのような結果及び解析が経済的にもたらされる。研究室のワークフロー及び意思決定を自動化することにより、目標を達成することができる速度及びコストを改善することができる。
【0004】
微生物増殖の証拠を検出するための撮像技法に関して大きな進歩がなされたが、自動化されたワークフローをサポートするそのような撮像技法を拡張することが依然として求められている。微生物増殖を示すための培養プレートを調査するための装置及び方法は、プレート調査の高度に視覚的な特性に部分的に起因して、自動化するのが困難である。これに関して、自動化された解釈に基づいて、培養プレート画像を自動的に解釈し、行われる次のステップ(例えば、コロニーの同定、感受性試験等)を決定することができる技法を開発することが望ましい。
【0005】
例えば、特にコロニーが異なるサイズ及び形状であり、互いに接触しているときに、プレート培養物におけるコロニーをカウントすることは困難である可能性がある。これらの問題は、成長が既にプレートのいくつかの領域において重なり合っているときに悪化する。これらの理由により、可能な場合、培養プロセスにおいて早期にCFUをカウントすることが好ましい。一方、コロニーの少なくともいくらかの増殖を可能にするために、培養時間が依然として必要とされている。このため、一方では、コロニーが増殖することを可能にされる時間が長いほど、コロニーはより多く、背景と及び互いにコントラストをなし始め、それらのコロニーをカウントするのがより容易になる。しかし、他方で、コロニーがあまりに長く増殖するのを許され、プレートを満たし、及び/又は互いに接触し始め、それにより、プレート上にコンフルエント領域を形成する場合には、コロニーを互いに対比するのがより難しくなり、カウントするのをより難しくする。相対的に乏しいコントラストであっても、コロニーを互いから分離するのに十分なだけコロニーが依然として小さい培養時間においてコロニーを検出することが可能である場合、又はコロニーがプレート上でコンフルエント領域を形成するほど十分に大きいときであっても、コロニーカウントを推定できる場合、この問題を解決することができる。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様は、プレート培地上の微生物増殖を評価するための自動化方法であって、生体試料を接種された培養培地を準備することと、接種された培養培地を培養することと、培養後に、第1の時点(t1)において接種された培地の第1の画像を取得することと、更なる培養後に、第2の時点(t2)において接種された培地の第2の画像を取得することと、第2の画像内のピクセルの座標が第1の画像内の対応するピクセルの座標と概ね同じであるように、第1の画像を第2の画像と位置合わせすることと、第2の画像の画像特徴を第1の画像特徴と比較することと、時点t1から時点t2までの画像特徴変化に基づいて、第2の画像の画像特徴をコロニー候補として分類することと、培養培地上に接種された生体試料内の共通の微生物に由来すると判断されたコロニー候補の場合に、コロニー候補をカウントすることと、カウントされたコロニーの数が、メモリに記憶されたカウント閾値を満たすか、又は超えており、著しい増殖を示すか否かを判断することと、を含む、方法を対象とする。
【0007】
いくつかの例では、カウントされたコロニーの数が閾値を満たすか、又は超える場合には、本方法は、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)を用いてコロニーのうちの少なくとも1つを同定することと、少なくとも1つのコロニーを抗菌物質感受性に関して試験することと、MALDI及び抗菌物質感受性試験結果を含む報告を出力することと、を更に含むことができる。複数のカウント閾値をメモリに記憶することができ、各カウント閾値は、異なる微生物に関連付けられる。
【0008】
いくつかの例では、第2の画像の画像特徴をコロニー候補として分類することは、第2の画像のコントラスト情報を特定することであって、コントラスト情報は、第2の画像のピクセル間の差を示す空間コントラスト情報、及び第2の画像のピクセルと、先行する画像の対応するピクセルとの間の差を示す時間コントラスト情報、のうちの少なくとも1つを含むことと、コントラスト情報に基づいて、第2の画像内の物体を識別することと、第1の画像及び第2の画像に関連付けられたピクセル情報から識別された物体の1つ以上の物体特徴を取得することであって、物体は、物体特徴に基づいてコロニー候補として分類されることと、を含むことができる。本方法は、コロニー候補ごとに、コロニー候補に関連付けられたピクセル情報に基づいて、コロニー候補がコロニーであるか、又はアーチファクトであるかを判断することを更に含むことができ、アーチファクトであると判断されたコロニー候補はカウントされない。コロニー候補がコロニーであるか、又はアーチファクトであるかを判断することは、第1の画像及び第2の画像のそれぞれにコロニー候補が存在し、第2の画像において第1の画像内よりも閾値増殖係数だけ大きいか否かを判断することを更に含むことができ、両方の画像内に存在し、第2の画像において少なくとも閾値増殖係数だけ大きいコロニー候補は、コロニーとして分類される。コロニー候補がコロニーであるか、又はアーチファクトであるかを判断することは、第2の画像内に存在し、第1の画像内に存在しないコロニー候補の場合に、第2の画像内の物体に関連付けられたピクセル情報から識別された物体の1つ以上の物体特徴を取得することと、1つ以上の物体特徴に基づいて、コロニー候補がコロニーである確率を求めることと、求められた確率を所定の閾値確率値と比較することであって、求められた確率が所定の閾値確率値より大きい場合には、コロニー候補がコロニーとして分類されることと、を更に含むことができる。本方法は、(i)両方の画像内に存在し、第2の画像内で大きくないコロニー候補、及び(ii)第1の画像内に存在するが、第2の画像内に存在しないコロニー候補を、明確なアーチファクトとして分類することと、第1の画像及び第2の画像のそれぞれに存在し、第2の画像において閾値増殖係数だけ大きいコロニー候補を明確なコロニーとして分類することと、明確なアーチファクト及び明確なコロニーの組み合わせに基づいて、アーチファクト確率値を計算することであって、コロニー候補がコロニーである求められた確率は、アーチファクト確率に更に基づくことと、を更に含むことができる。
【0009】
いくつかの例では、物体特徴は、物体形状、物体サイズ、物体エッジ、物体色、物体のピクセルの色、色相、ルミナンス及びクロミナンスのうちの少なくとも1つを含むことができる。本方法は、背景特徴情報を取得することを更に含むことができ、この背景特徴情報は、培地タイプ及び培地色を含み、物体は、背景特徴情報に更に基づいて、コロニー候補として分類される。いくつかの例では、第1の画像を第2の画像と位置合わせすることは、第2の画像内のピクセルの極座標が第1の画像内の対応するピクセルの極座標と同じであるように、第1の画像及び第2の画像のそれぞれのピクセルに極座標を割り当てることを含むことができる。
【0010】
本開示の別の態様は、所定のパターンに従って培養物を接種され、培養されたプレート培地上のコロニー形成ユニット(colony forming units:コロニー形成単位)の数を推定するための自動化方法であって、培養物の培養後に、プレート培地上のデジタル画像を取得することと、デジタル画像から、画像内のコロニー候補を識別することと、所定のパターンに従ってデジタル画像を線形化することと、デジタル画像の線形化された座標のピクセルに従ってコロニー候補をプロットすることと、線形化されたデジタル画像内のコロニー候補のピクセルに基づいて、プレート培地上のコロニー形成ユニットの数を推定することと、を含む、方法を対象とする。
【0011】
いくつかの例では、画像が取得されたプレート培地は、連続したジグザグパターンに沿ってストリークされる磁気的に制御された粒子を用いて接種することができ、デジタル画像は、ジグザグストリーキングパターンが線形化された画像の主軸であるように、ジグザグストリーキングパターンに従って線形化することができる。磁気的に制御される粒子の初期粒子荷重は、コロニー候補のプロットから推定することができる。初期粒子荷重を推定することは、線形化された画像の主軸に沿った起点からの距離を選択することと、選択された距離において粒子によってコロニー形成ユニットが放出される確率を求めることと、選択された距離より主軸に沿って起点から離れているデジタル画像内に存在するコロニー形成ユニットの数をカウントすることと、を含むことができ、推定された初期粒子荷重は、求められた確率と、コロニー形成ユニットのカウントされた数との間の比に等しい。距離は、選択された距離より線形化された画像の起点から離れた距離にある画像内に微生物増殖のコンフルエント領域が存在しないように選択することができる。本方法は、線形化された画像の主軸に沿った複数の距離を選択することと、選択された距離ごとに、選択された距離より、主軸に沿って線形化された画像の起点から離れているデジタル画像内に存在するコロニー形成ユニットの数をカウントすることと、距離ごとのコロニー形成ユニットのカウントされた数に基づいて、コロニー形成ユニットを含む粒子の一箇所が培地と接触するときに、粒子によってコロニー形成ユニットが培地上に放出される確率を計算することと、を更に含むことができる。所与の距離において粒子によってコロニー形成ユニットが放出される確率を求めることは、コロニー形成ユニットを含む粒子の一箇所が培地と接触するときに粒子によってコロニー形成ユニットが培地上に放出される計算された確率に基づくことができる。
【0012】
いくつかの例では、本方法は、デジタル画像をメモリに記憶される複数の分布モデルと比較することであって、各分布モデルは、所与の初期粒子荷重と、培地との接触が行われるときにコロニー形成ユニットが培地上に放出される所与の確率との場合の、撮像プレートにわたるコロニー形成ユニットの予想分布を示すことと、比較された分布モデルに少なくとも部分的に基づいて、初期粒子荷重を求めることと、を更に含むことができる。
【0013】
いくつかの例では、本方法は、線形化された画像の主軸に沿った起点からの距離を選択することと、コロニー候補に関連付けられた、選択された距離におけるピクセルの部分を特定することと、特定された部分に基づいて、初期粒子荷重を推定することと、を更に含むことができる。
【0014】
いくつかの例では、本方法は、培養物の培養後に、プレート培地の複数のデジタル画像を取得することであって、各デジタル画像は、1つ以上のコロニー候補を含むことと、コロニー候補の少なくともいくつかがコンフルエント領域を形成する1つのデジタル画像を識別することと、デジタル画像内のコンフルエント領域を形成するコロニー候補がコンフルエント領域を形成するために結合されない早期のデジタル画像を識別することと、早期のデジタル画像に基づいて、コンフルエント領域内のコロニー形成ユニットの数を推定することと、を更に含むことができる。
【0015】
本開示の更に別の態様は、プロセッサに、方法を実行させるように構成されたプログラム命令が符号化されたコンピュータ可読メモリストレージ媒体を対象とする。本方法は、プレート培地上の微生物増殖を評価するための、又はプレート培地上のコロニー形成ユニットの数を推定するための上記の方法のいずれかとすることができる。
【0016】
本開示のまた更なる態様は、生体試料を接種された培養培地における増殖を評価するためのシステムを対象とする。本システムは、培養培地のデジタル画像を捕捉するための画像取得デバイスと、メモリと、方法を行うよう命令を実行するように動作可能な1つ以上のプロセッサとを備える。いくつかの例において、メモリは、1つ以上の異なる培養培地における1つ以上の異なる有機体に関する微生物増殖の予測量に関する情報を記憶することができ、実行された命令によって行われる方法は、プレート培地上の微生物増殖を評価するための上記の方法のうちのいずれか1つとすることができる。他の例において、メモリは、培養培地に生体試料を接種するためのパターンに関する情報を記憶することができ、実行された命令によって行われる方法は、プレート培地上のコロニー形成ユニットの数を推定するための上記の方法のうちのいずれか1つとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の態様による、培養物を撮像解析及び試験するためのシステムの概略図である。
【
図2】本開示の態様による、培養物を撮像解析及び試験するための自動化された研究室ワークフロールーチンを示すフローチャートである。
【
図3A】本開示の態様による、コロニー形態が経時的に変化するときのコロニー形態の視覚表現を示す画像である。
【
図3B】本開示の態様による、コロニー形態が経時的に変化するときのコロニー形態の視覚表現を示す画像である。
【
図3C】本開示の態様による、コロニー形態が経時的に変化するときのコロニー形態の視覚表現を示す画像である。
【
図3D】異なる照明条件下のコロニーの視覚的表示を示す画像である。
【
図3E】異なる照明条件下のコロニーの視覚的表示を示す画像である。
【
図4】本開示の態様による、コロニーをカウントするための例示的なルーチンのフローチャートである。
【
図5】本開示の態様による、コロニー候補のグローバルリストを収集するための例示的なルーチンのフローチャートである。
【
図6】本開示の態様による、コロニー候補をソートするための例示的なルーチンのフローチャートである。
【
図7】本開示の態様による、統計解析に基づいてコロニーをカウントするための例示的なルーチンのフローチャートである。
【
図8】本開示の態様による、プレート培地に試料をストリークするためのストリーキングパターンの画像である。
【
図9A】本開示の態様による、識別されたコロニー候補の画像のグラフィック表示である。
【
図9B】
図8に示されるストリーキングパターンのグラフ表示である。
【
図10A】本開示の態様による、コロニー形成ユニット(CFU)分布モデルのためのグラフィック表示である。
【
図10B】本開示の態様による、コロニー形成ユニット(CFU)分布モデルのためのグラフィック表示である。
【
図11A】本開示の態様による、
図8に示されるプレートの主軸に沿ったコンフルエンス比のグラフ表示である。
【
図11B】本開示の態様による、コロニー増殖シミュレーションのグラフィック表示である。
【
図12】コロニー増殖を伴うプレートメディアの2つの画像を並べて示す図である。
【
図13】本開示の態様による、経時的に撮影された一連の画像である。
【
図15A】本開示の態様による、分離係数の決定のグラフィック表示である。
【
図15B】本開示の態様による、分離係数の決定のグラフィック表示である。
【
図15C】本開示の態様による、分離係数の決定のグラフィック表示である。
【
図16A】画像の試料コロニーの、ズームされ向きを変えられた画像を有する、撮像プレートのセクションを示す図である。
【
図16B】画像の試料コロニーの、ズームされ向きを変えられた画像を有する、撮像プレートのセクションを示す図である。
【
図16C】本開示の態様による、それぞれ、
図16Bの拡大された断面の極変換された画像である。
【
図17】
図2のルーチンのタイムラインを、比較可能なマニュアル実行されるプロセスのタイムラインと比較するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、プレート培地の1つ以上のデジタル画像においてカウントされる識別されたコロニーの数に少なくとも部分的に基づいて、プレート培地における微生物増殖を特定及び解析する装置及び方法を提供する。本明細書において説明される方法の多くは、完全に又は部分的に自動化することができ、例えば、完全に又は部分的に自動化される研究室ワークフローの一部として統合される。
【0019】
本明細書に記載のシステムは、微生物の同定及びそのような微生物の微生物増殖検出のために微生物学試料を撮像する光学系において実施することが可能である。本明細書に詳細に記載されていない多くのそのような市販のシステムが存在する。1つの例は、BD Kiestra(商標)ReadAコンパクトインテリジェント培養及び撮像システムである。他の例示的なシステムは、国際公開第2015/114121号及び米国特許出願公開第2015/0299639号に記載されているものを含み、それらの全体が、引用することにより本明細書の一部をなす。そのような光学的撮像プラットフォームは、当業者には既知であり、本明細書に詳細に説明されない。
【0020】
図1は、プレート培地の高品質撮像を提供するための処理モジュール110及び画像取得デバイス120(例えば、カメラ)を有するシステム100の概略図である。処理モジュール及び画像取得デバイスは、プレート培地上で培養される培養物の増殖を可能にするために、プレート培地を培養するための培養モジュール(図示せず)等の他のシステムコンポーネントに更に接続され、それによって、これらと更にインタラクトすることができる。そのような接続は、培養のための標本を受け取り、これらをインキュベーターに、次にインキュベーターと画像取得デバイスとの間に移送する追跡システムを用いて、完全に又は部分的に自動化することができる。
【0021】
処理モジュール110は、システム100の他のコンポーネントに、様々なタイプの情報の処理に基づいてタスクを実行するように命令することができる。プロセッサ110は、1つ以上の動作を実行するハードウェアとすることができる。プロセッサ110は、中央処理装置(CPU)等の任意の標準的なプロセッサとすることもできるし、又は特定用途向け集積回路(ASIC)若しくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等の専用プロセッサとすることもできる。1つのプロセッサブロックが示されているが、システム100は、並列に動作する場合もしない場合もある複数のプロセッサ、又はインキュベーター及び/又は画像取得デバイス120内の試料容器に関する情報を記憶及び追跡するための他の専用ロジック及びメモリを含むこともできる。これに関して、処理ユニットは、限定ではないが、システム内の標本のロケーション(インキュベーター又は画像取得デバイス、内部のロケーション及び/又は向き等)、培養時間、捕捉画像のピクセル情報、試料のタイプ、培養培地のタイプ、予防処置情報(例えば、有害な標本)等を含む、システム100内の標本に関するいくつかのタイプの情報を追跡及び/又は記憶することができる。これに関して、プロセッサは、本明細書に記載の様々なルーチンを完全に又は部分的に自動化することが可能であり得る。1つの実施形態において、本明細書に記載のルーチンを実行するための命令は、非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、ソフトウェアプログラム)上に記憶することができる。
【0022】
図2は、培養物を撮像、解析、及び任意選択で試験するための例示的な自動化された研究室ルーチン200を示すフローチャートである。ルーチン200は、Kiestra(商標)Total Lab Automation又はKiestra(商標)Work Cell Automation(双方ともBecton, Dickenson & Co.社製)等の自動化された微生物学研究室システムによって実施することができる。例示的なシステムは、相互接続されたモジュールを含み、各モジュールは、ルーチン200の1つ以上のステップを実行するように構成される。
【0023】
202において、培養培地が準備され、生体試料を接種される。培養培地は、光学的に透明な容器とすることができ、それによって、生体試料は、様々な角度から照明されている間、容器内で観測することができる。接種は所定のパターンを辿ることができる。試料をプレート上にストリークするためのストリーキングパターン及び自動化方法は、当業者には既知である。1つの自動化方法は、磁気制御されたビーズを用いてプレート上に試料をストリークする。
【0024】
本開示のいくつかの例において、ジグザグパターンに従ってプレートにわたって粒子がストリークされる(例えば、
図8を参照)。ジグザグパターンの開始点及び終了点は、プレートの両端に位置することができる(例えば、プレートの直径に概ね等しい距離だけ分離される)。そのような例において、プレートの「主軸」は、ジグザグパターンの開始点から始まり、終了点において終わる直線と考えることができる。
【0025】
204において、培地は、生体試料の増殖を可能にするために培養される。
【0026】
206において、培地及び生体試料の1つ以上のデジタル画像が捕捉される。以下でより詳細に説明されるように、培地のデジタル撮像は、培養プロセス中に複数回(例えば、培養の開始時、培養の最中の時点、培養の終了時に)行うことができ、それによって、培地の変化を観測及び解析することができる。培地の撮像は、インキュベーターから培地を除去することを含むことができる。複数の画像が異なる時点において培地から取得されるが、培地は、撮像セッション間に更なる培養のためにインキュベーターに返される場合がある。
【0027】
208において、生体試料は、捕捉されたデジタル画像からの情報に基づいて解析される。デジタル画像の解析は、画像内に含まれるピクセル情報の解析を含むことができる。いくつかの例において、ピクセル情報は、ピクセル単位で解析することができる。他の例において、ピクセル情報は、ブロック単位で解析することができる。また更なる例では、ピクセルは、ピクセルの全体領域に基づいて解析することができ、それによって、領域内の個々のピクセルのピクセル情報を、個々のピクセルの情報を組み合わせるか、試料ピクセルを選択するか、又は以下でより詳細に説明される統計的ヒストグラム動作等の他の統計的動作を用いることによって導出することができる。本開示において、「ピクセル」に適用されるものとして記載されている動作は、ブロック又は他のピクセルのグループに同様に適用可能であり、「ピクセル」という語は、本明細書ではそのような適用を含むように意図される。
【0028】
解析は、増殖が培地において検出されるか否かを判断することを含むことができる。画像解析の観点から、(物体とその隣接する環境との間の差に基づいて)撮像される物体を識別することによって、次に経時的に物体の変化を特定することによって、画像内で増殖を検出することができる。本明細書においてより詳細に説明するように、これらの差及び変化は共に「コントラスト」の形態をとる。増殖を検出することに加えて、208における画像解析は、検出される増殖の量を量子化し、別個のコロニーを識別し、姉妹コロニーを識別すること等を更に含むことができる。
【0029】
210において、生体試料(特に、識別された姉妹コロニー)が量的に大きな増殖を呈するか否かが判断される。増殖が見つからない場合、又は僅かな量の増殖しか見つからない場合、ルーチン200は220に進むことができ、220において、最終報告が出力される。210から220に進む場合、最終報告は、大量の増殖がないことを示すか、又は正常細菌叢の増殖を報告する可能性が高い。
【0030】
生体試料が、量的に大きな増殖を呈すると判断される場合、212において、以前の解析に基づいて、1つ以上のコロニーを画像から選び出すことができる。コロニーを選び出すことは、完全に自動化されたプロセスとすることができ、このプロセスにおいて、選び出されたコロニーの各々がサンプリングされ、試験される。代替的に、コロニーを選び出すことは、部分的に自動化されたプロセスとすることができ、このプロセスにおいて、複数のコロニー候補が自動的に同定され、デジタル画像において視覚的に運用者に提示され、それによって、運用者は、サンプリング及び更なる試験のための1つ以上の候補の選択を入力することができる。選択された又は選び出されたコロニーのサンプリングは、それ自体をシステムによって自動化することができる。
【0031】
214において、有機体懸濁液における試料をプレート培養すること等によって、サンプリングされたコロニーが、更なる試験のために用意される。216において、試料が、マトリックス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)撮像を用いて試験され、元の培地からサンプリングされた標本のタイプが同定される。218において、試料は、更に又は代替的に抗生物質感受性試験(AST)にかけられ、同定された標本のための可能な処置が特定される。
【0032】
220において、最終報告において試験結果が出力される。報告は、MALDI及びASTの結果を含むことができる。上述したように、報告は、標本増殖の量子化を示すこともできる。このため、自動化システムは、接種された培養培地で開始し、培養物において見つかった標本に関する最終報告を、追加の入力をほとんど又は全く行うことなく生成することが可能である。
【0033】
図2の例示的なルーチン等のルーチンにおいて、検出及び同定されたコロニーは、多くの場合に、コロニー形成単位(CFU)と呼ばれる。CFUは、1つ又はいくつかの細菌として開始する微小物体である。プレート内でカウントすることができるCFUの数に基づいて、量的増殖を測定することができる。しかしながら、上記で説明されたように、CFUの数は必ずしも直接カウントできるとは限らない。例えば、CFUは、互いに接触するか、又は混ざり合う場合があり、それにより、個別のユニットがカウントされないコンフルエント領域を形成する。そのような状況において、本開示は、プレート培地に適用されるストリーキングパターン、プレートにわたってストリークされるときにストリーキング手段がいかに迅速に排出されるかの知識、特定のタイプのコロニーがカウントされる場合の標準サイズ及び増殖速度等の既知の情報と、プレートの1つ以上のデジタル画像から収集される被測定情報との組み合わせに基づいて、コロニーカウントを推定する方法を提供する。そのような推定は、上記のシステム及びルーチンによって自動化することができる。
【0034】
推定された増殖が著しいか否かの判断は、推定されたコロニーカウントを所定の閾値と比較することによって引き出すことができる。所与のプレート及び/又はコロニーに対して2つ以上の閾値が設定される場合がある。例えば、コロニー増殖は、コロニーが増殖している培地によって影響を及ぼされる場合がある。それゆえ、1つの培地において著しい増殖を引き起こすものが、別の培地では著しい増殖を引き起こさない場合があり、異なる閾値が設定される場合がある。さらに、高い閾値が満たされるまで、1つのタイプの細菌の場合の試験が正当化されない場合があるが、特に有害な、又は危険な細菌の場合の試験(例えば、妊婦の試験におけるB群連鎖球菌)は、低い閾値が満たされる場合であっても、場合によっては1つのコロニーがカウントされる程度であっても、正当化される場合がある。それゆえ、そのシステムは複数の閾値を記憶し、適切な状況下で様々な閾値のそれぞれを適用することができることは理解されたい。
【0035】
経時的に、バクテリアは、増殖してコロニーを形成する。細菌がプレート内に配置されたときからの時間において早期であるほど、検出される細菌が少なく、結果として、コロニーが小さくなり、背景に対するコントラストが低くなる。言い換えると、コロニーサイズが小さいほど、より小さな信号をもたらし、一定の背景における信号が小さいほど、結果としてコントラストが小さくなる。これは、以下の式によって反映される。
【数1】
【0036】
コントラストは、画像内のCFU等の物体又は他のアーチファクトを識別する際の重要な役割を果たすことができる。物体は、明るさ、色及び/又はテクスチャが背景と大きく異なっている場合、画像内で検出することができる。物体が検出されると、解析は、検出された物体のタイプを識別することも含むことができる。そのような識別は、識別された物体のエッジの平滑性等のコントラスト測定値、又は物体の色及び/又は明るさの均一性(又は均一性の欠如)にも依拠することができる。このコントラストは、画像センサによって検出されるためには、画像のノイズ(背景信号)に勝るように十分大きくなくてはならない。
【0037】
人間のコントラストの知覚(ウェバーの法則によって支配される)は限られている。最適な条件下で、人間の目は、1%の光レベル差を検出することができる。画像測定値(例えば、明るさ、色、コントラスト)の品質及び信頼性は、測定の信号対雑音比(SNR)によって特徴付けることができ、ここで、100のSNR値(又は40db)が、ピクセル輝度と無関係に、人間の検出能力に合致する。高SNR撮像情報及び既知のピクセル毎SNR(SNR per pixel)情報を利用したデジタル撮像技法は、これらのコロニーがまだ人間の目に見えない場合であっても、コロニーの検出を可能にすることができる。
【0038】
本開示において、コントラストは少なくとも2つの方法で、空間的に及び時間的に収集することができる。空間コントラスト又はローカルコントラストは、単一の画像における所与の領域(例えば、ピクセル、又は隣接するピクセルのグループ)と、その周囲との間の色又は明るさの差を量子化する。時間コントラスト(temporal contrast)又はタイムコントラスト(time contrast)は、1つの画像の所与の領域と、異なる時点において取得された別の画像内のその同じ領域との間の色又は明るさの差を量子化する。時間コントラストを支配する定式は、空間コントラストのものと類似している。
【数2】
【0039】
ここで、t2はt1に続く時点である。所与の画像の空間コントラスト及び時間コントラストの双方を用いて物体を識別することができる。識別された物体は、それらの重要性(例えば、それらがCFUであるか、正常細菌叢であるか、塵であるか等)を判断するように更に試験することができる。
【0040】
図3A及び
図3Bは、時間コントラストが撮像された試料に対し有することができる効果の視覚的実証を提供する。
図3Aに示す画像は、異なる時点に捕捉され(左から右、上の行から下の行)、試料における全体的な増殖を示す。
図3Aにおいて増殖が顕著であるが、
図3Bの対応するコントラスト時間画像から、増殖が更により顕著であり、シーケンスの更に早期において気づくことができる。明確にするために、
図3Cは、
図3Bのズームされたセクションを示す。
図3Cに見て取ることができるように、コロニーの一部分が長く撮像されているほど、コントラスト画像においてより明るいスポットが作成される。このようにして、各コロニーの質量中心を、コロニーの明るい中心又はピークによって示すことができる。このため、経時的に得られる画像データは、コロニー形態における変化における重大な情報を明らかにすることができる。
【0041】
背景に対する物体の空間コントラスト又は時間コントラストを最大限にするために、システムは、異なる背景における異なる入射光を用いて画像を捕捉することができる。例えば、上面照明法、底面照明法、側面照明法のうちの任意のものを、黒い背景又は白い背景で用いることができる。
【0042】
図3D及び
図3Eは、撮像された試料に対し照明法条件が有し得る効果の視覚的実証を与える。
図3Dにおける画像は、上面照明法を用いて捕捉されたのに対し、
図3Eにおける画像は、底面法照明を用いて、概ね同じ時点(例えば、顕著でも大量でもない増殖が生じた時点に十分近い)に捕捉された。見て取ることができるように、
図3D及び
図3Eの試料における画像の各々は、いくつかのコロニーを含むが、コロニーに関する追加の情報(この場合、溶血)は、
図3Eの画像における背面照明法又は底面照明法により見ることができるのに対し、同じ情報は、
図3Dの画像において把握するのが困難である。
【0043】
所定の時点において、複数の照明条件下で複数の画像を捕捉することができる。画像は、照明光レベル、照明角、及び/又は物体とセンサとの間で展開されるフィルター(例えば、赤色、緑色及び青色フィルター)に起因してスペクトルが異なる、異なる光源を用いて捕捉することができる。この方式において、画像取得条件は、光源位置(例えば、上面、側面、底面)、背景(例えば、黒、白、任意の色、任意の輝度)、及び光スペクトル(例えば、赤色チャネル、緑色チャネル、青色チャネル)の観点で変動することができる。例えば、第1の画像は、上面照明及び黒色背景を用いて捕捉することができ、第2の画像は、側面照明及び黒色背景を用いて捕捉することができ、第3の画像は、底面照明及び背景なし(すなわち、白色背景)を用いて捕捉することができる。さらに、特定のアルゴリズムを用いて、使用する空間コントラストを最大限にするために、1組の変動する画像取得条件を生成することができる。これらの又は他のアルゴリズムは、所与のシーケンスに従って及び/又は或る期間にわたって画像取得条件を変動させることによって、時間コントラストを最大限にするのにも有用とすることができる。いくつかのそのようなアルゴリズムは、国際公開第2015/114121号に記載されている。
【0044】
図4は、コントラストに少なくとも部分的に基づいて、撮像プレートを解析するための例示的なルーチンを示すフローチャートである。
図4のルーチンは、
図2のルーチン200の例示的なサブルーチンとみなすことができ、
図2の206及び208が、少なくとも部分的に
図4のルーチンを用いて実行されるようになっている。
【0045】
402において、第1のデジタル画像は、時点t1において捕捉される。時点t1は、撮像プレート内の細菌がいくつかの目に見えるコロニーを少なくとも形成し始めたが、それらのコロニーがまだ、互いに接触し始めていない、又は重なり合っていないような、培養プロセスが始まった後の時点とすることができる。
【0046】
404において、座標が第1のデジタル画像の1つ以上のピクセルに割り当てられる。いくつかの場合、座標は、撮像プレートの中心点から延在する径座標と、中心点の周りの角座標とを有する極座標とすることができる。座標は、後のステップにおいて、第1のデジタル画像を、異なる角度から及び/又は異なる時点に取得されたプレートの他のデジタル画像と位置合わせするのに役立つように用いることができる。いくつかの場合、撮像プレートは、特定のランドマーク(例えば、中心を外れたドット又はライン)を有することができ、第1の画像内のランドマークを覆うピクセル(複数の場合もある)の座標を、他の画像内の同じランドマークを覆うピクセル(複数の場合もある)に割り当てることができるようになっている。他の場合、画像自体を、未来の位置合わせのための特徴とみなすことができる。
【0047】
406において、第2のデジタル画像は、時点t2において捕捉される。時点t2は、撮像プレート内のコロニーが更に増殖する機会を得た、t1後の時点である。t1において小さすぎて見ることができなかった更なるコロニーもt2において見ることができる。また、時点t2におけるコロニーは互いに接触し始めたか、又は重なり合い始めた可能性がある。
【0048】
408において、第2のデジタル画像は、以前に割り当てられた座標に基づいて、第1のデジタル画像と位置合わせされる。画像を位置合わせすることは、例えば、国際公開第2015/114121号に記載の方法及びシステムを用いた画像の正規化及び標準化を更に含むことができる。
【0049】
410において、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像に基づいて、コロニー候補のグローバルリストが収集される。コロニー候補のグローバルリストは、更なる試験(
図1のルーチンと同様)が望ましい場合があるコロニーの場合がある、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像内の任意の物体を識別することができる。
【0050】
412において、グローバルリスト内に含まれるコロニー候補がそれぞれソートされる。コロニー候補をソートすることは、候補ごとに、その候補が実際にはアーチファクトであるか、又はコロニーであるかを識別することを伴う。後に更に詳細に説明されるように、場合によっては、所与の候補がアーチファクトであるか、又はコロニーであるかを明確に判断できない場合がある。それにもかかわらず、確率的な、又は曖昧な判断が行われる場合があり、その判断に従って候補がソートされる場合がある。
【0051】
414において、コロニーと識別されたソートされたコロニー候補がカウントされる。後に更に詳細に説明されるように、コロニーをカウントすることは、個々のコロニー間のコンフルエンスに起因して必ずしも簡単であるとは限らない。それゆえ、本開示は、第2のデジタル画像の統計解析に基づいてカウントするための方法及び技法を提供する。
【0052】
416において、推定されたコロニーカウントを含む最終報告が出力される。最終報告は、任意選択で、カウントされたコロニー間の群れ形成確率(swarming probability)のような、推定されたコロニーカウントの精度に影響を与える付加情報を含む場合がある。群れ形成は、コロニーのコンフルエンスを指しており、その結果として、個々のコロニーを個別に識別できない群れが生成される。場合によっては、群れ形成確率は、あらかじめ設定された閾値(例えば、50%)を超える場合にのみ報告される場合がある。
【0053】
図5は、コロニー候補のグローバルリストを収集するための例示的なルーチン500を示すフローチャートである。
図5のルーチンは、
図4の410が
図5のルーチンを用いて少なくとも部分的に実行されるように、
図4のルーチン400の例示的なサブルーチンと考えることができる。
【0054】
502において、第2のデジタル画像のコントラスト情報が求められる。コントラスト情報は、ピクセル単位で収集することができる。例えば、第2のデジタル画像のピクセルを、第1のデジタル画像の(同じ座標における)対応するピクセルと比較して、時間コントラストの存在を判断することができる。さらに、第2のデジタル画像の隣接するピクセルを、互いに比較するか、又は背景ピクセルに既知の他のピクセルと比較して、空間コントラストの存在を判断することができる。ピクセルの色及び/又は明るさにおける変化はコントラストを示し、1つの画像から次の画像、又は1つのピクセル(又はピクセルの領域)から次のピクセル(又はピクセルの領域)へのそのような変化の大きさを、測定、計算、推定又は他の形で求めることができる。時間コントラスト及び空間コントラストの双方が所与の画像について求められる場合、画像の所与のピクセルの全体コントラストを、その所与のピクセルの空間コントラスト及び時間コントラストの組み合わせ(例えば、平均、加重平均)に基づいて求めることができる。
【0055】
504において、第2のデジタル画像内の物体は、502において計算されるコントラスト情報に基づいて識別される。類似のコントラスト情報を有する第2のデジタル画像の隣接するピクセルは、同じ物体に属するとみなすことができる。例えば、隣接するピクセルとそれらの背景との間、又はピクセルと第1のデジタル画像におけるそれらの明るさとの間の差が概ね同じである(例えば、所定の閾値量内にある)場合、ピクセルは、同じ物体に属するとみなすことができる。例として、システムは、大きなコントラスト(例えば、閾値量を超える)を有する任意のピクセルに「1」を割り当てることができ、次に、全て「1」を割り当てられた隣接するピクセルのグループを、物体として識別することができる。物体には、同じラベルを有するピクセルが一定の特性を共有するように、特定のラベル又はマスクを与えることができる。このラベルは、後のプロセスの間に、他の物体及び/又は背景から物体を区別するのに役立つことができる。
【0056】
デジタル画像における物体を識別することは、デジタル画像を複数の領域(例えば、前景及び背景)に分割又は区分することを含むことができる。分割の目標は、コンポーネントを解析することが容易になるように、画像を複数のコンポーネントの表現に変更することである。画像分割は、画像内の対象物体を位置特定することに用いられる。[ここに相互参照を加える]
【0057】
506において、(504によって識別される)所与の物体の特徴を特徴付けることができる。物体の特徴の特徴付けは、物体の記述的統計(例えば、エリア、反射率、サイズ、光学密度、色、プレートロケーション等)を導出することを含むことができる。記述的統計は、(例えば、SHQI画像から、コントラスト画像から)物体に関して収集された情報の集合の或る特定の特徴を最終的に量的に記述することができる。そのような情報は、種、濃度、混合物、時間及び培地の関数として評価することができる。一方、少なくともいくつかの場合、物体を特徴付けることは、物体の特徴に関する質的情報の集合から始まることができ、ここで、質的情報は、その後、量的に表される。以下の表1は、質的に評価することができ、その後、量的表現に変換することができる例示的な特徴のリストを与える。
【0058】
【0059】
形状、又は視覚的に観察されるまでの時間等の物体のいくつかの特徴は、全体として物体について一回測定することができる。他の特徴は、数回(例えば、ピクセルごと、共通y座標を有するピクセルの行ごと、共通x座標を有するピクセルの列ごと、共通の角座標を有するピクセルの射線(ray)ごと、共通径座標を有するピクセルの円について)測定することができ、次に、例えばヒストグラムを用いて、単一の測定値に組み合わせることができる。例えば、ピクセルごとの色、増殖速度、又はピクセルの行、列、射線若しくは円ごとのサイズ等を測定することができる。
【0060】
508において、特徴付けられた特徴に基づいて物体がコロニーの候補であるか否かが判断される。コロニー候補判断は、量的特徴(例えば、上記の表1に示すスコア)、又はそのサブセットを分類器に入力することを含むことができる。分類器は、物体を評価するために、教師あり機械学習アルゴリズムを実施するための混同行列、又は教師なし機械学習アルゴリズムを実施するためのマッチング行列を含むことができる。教師あり学習は、物体が、可能性のある有機体の制限された組(例えば、2つ又は3つ)と区別される場合に好ましい場合がある(この場合、アルゴリズムは、トレーニングデータの比較的限られた組に対しトレーニングすることができる)。対照的に、教師なし学習は、物体が、可能性のある有機体のデータベース全体から区別される場合に好ましい場合がある。この場合、包括的な、又は更には十分なトレーニングデータを提供することが困難である。混同行列又はマッチング行列の場合、差別化は、範囲において数値的に測定することができる。例えば、所与の物体の対について、「0」は2つの物体が互いに区別されるべきであることを意味し得るのに対し、「1」は、物体を互いに差別化することが困難であることを意味し得る。
【0061】
508において、物体がコロニー候補であると判断される場合には、510において、それがコロニー候補のグローバルリストに追加される。そうでない場合には、ルーチン500は、その物体をグローバルリストに追加することなく終了する(そして、ルーチン400の412で継続する場合がある)。
【0062】
デジタル画像のコントラスト情報に基づいてコロニー候補を識別するための更なるルーチン及びサブルーチンが、「COLONY CONTRAST GATHERING」と題する、同一出願人によって所有された、同時係属の出願において論じられており、その開示はその全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0063】
図6は、コロニー候補をソートするための例示的なルーチン600を示すフローチャートである。
図6のルーチンは、
図4の412が
図6のルーチンを用いて少なくとも部分的に実行されるように、
図4のルーチン400の例示的なサブルーチンと考えることができる。
図4のサブルーチンとして、ルーチン600が、グローバルリスト上に現れるコロニー候補ごとに繰返し適用される場合がある。
【0064】
602において、コロニー候補が増殖しているか否かが判断される。増殖は、(a)第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像の両方におけるコロニー候補の存在と、(b)コロニー候補のサイズが、第1のデジタル画像内より、第2のデジタル画像内で著しく大きいこととによって示される場合がある。サイズの変化が著しいと見なされるか否かは、サイズの変化を所定の増殖閾値と比較することによって判断される場合があり、それにより、増殖閾値を満たすか、又は超える変化が著しいと見なされる。
【0065】
コロニー候補が増殖していると見なされる場合には、コロニー候補は正当であると確認され、コロニーと識別される。そうでない場合には、ルーチン600は604において継続し、第1のデジタル画像及び第2のデジタル画像の両方においてコロニー候補が存在するか否かが判断される。
【0066】
コロニー候補が両方の画像内に存在すると判断される場合には(2つの画像間に著しい増殖がなかったことを意味する)、コロニー候補がアーチファクトとして識別される。そうでない場合には、ルーチン600は606において継続し、第2のデジタル画像内にコロニー候補が存在するか否かが判断される。
【0067】
第2のデジタル画像内にコロニー候補が存在しない場合には(コロニー候補が第1の画像内にのみ存在し、その後、消失したことを意味する)、コロニー候補がアーチファクト(例えば、t1とt2との間にプレートから吹き飛ばされた可能性が高い埃片)として識別される。そうでない場合には、そのコロニー候補が、時点t1において、単に、目で見ることができるほど十分に増殖しなかったコロニーであるか、又は時点t1とt2との間にプレート上に吹き飛ばされた埃片のようなアーチファクトであるかを判断するために、更なる解析が実行される。
【0068】
608において、コロニー候補が第1のデジタル画像内に現れないという知識を与えられると、コロニー候補の特徴が、第2のデジタル画像からの情報のみに基づいて特徴付けられる。特徴付けは、色、サイズ、形状及び表面のような静的特徴に頼ることができる(
図5のステップ506に関連して上記で説明された)。
【0069】
610において、コロニー候補が実際にコロニーである全体確率が、その特徴付けに少なくとも部分的に基づいて求められる。例えば、物体の特徴付けられた特徴が、予想されるコロニータイプ(すなわち、グローバルリストに含まれ、
図6においてカウントされるコロニータイプ)の特徴と比較される場合がある。一実施形態において、比較は
図5のステップ508と同じようにして実行され、その場合、「0」は、物体が予想されるコロニータイプであることを意味するのに対して、「1」は、物体が予想されるコロニータイプでないことを意味し、「0」と「1」との間の数は、物体が予想されるコロニータイプである確率を示し、その確率はコロニー確率とも呼ばれる。
【0070】
場合によっては、コロニー確率は610の全体確率とすることができる。代替的には、610における判断は更に、画像内のアーチファクトについて集められた情報に基づくことができる。そのような情報は、画像内の物体がアーチファクトである可能性を判定するアーチファクト確率を含むことができる。
図6の例において、アーチファクト確率を求めるために、アーチファクトである(例えば、t
1とt
2との間に増殖がない、t
1内にのみ存在し、t
2内に存在しない)、又はコロニーである(例えば、t
1とt
2との間の著しい増殖)と明確に判断される物体が、612において入力として与えられる。612のアーチファクト確率は、その後、コロニー確率と組み合わせられ、全体確率がもたらされる。一実施形態において、コロニー確率及びアーチファクト確率は、以下の式に従って組み合わせられる。
【数3】
【0071】
614において、全体確率が所定の閾値(例えば、50%)と比較される。全体確率が閾値を満たすか、又は超える場合には、コロニー候補がコロニーと識別される。そうでない場合には、コロニー候補がアーチファクトと識別される。
【0072】
図5及び
図6のルーチンは、識別されたコロニーを分類するのに有用であるが、それらのルーチンは、各コロニーが個別のコロニーであり、複数のコロニーのコンフルエンスでないことを確実にしない。それゆえ、コロニーとして識別されたコロニー候補は、必ずしも個別の要素としてカウントできるのではなく、むしろ、推定技法を用いてカウントすることができる。
【0073】
図7は、統計解析に基づいてコロニーをカウントするための例示的なルーチン700を示すフローチャートである。
図7のルーチンは、
図4の414が
図7のルーチンを用いて少なくとも部分的に実行されるように、
図4のルーチン400の例示的なサブルーチンと考えることができる。
図7のルーチンは、所定のストリーキングパターンに従って、撮像プレート上にコロニーをストリークするために、磁気的に制御された粒子の使用を仮定した。当業者であれば、
図7のルーチンの根底にある概念は、以下に説明される以外の、様々なストリーキング媒体、技法及びパターンの場合に適応させることができることは理解されたい。
【0074】
702において、第2のデジタル画像は、ストリーキングパターンに従って線形化され、そのストリーキングパターンに沿って、撮像プレートが、磁気的に制御された粒子によってストリークされる。ストリーキングパターンを示すために、
図8は、プレート培地における試料増殖の画像を示す。その画像は、画像の右下から始まり、左上に向かって終わるジグザグパターンをデジタル形式で重ね合わせられる。ジグザグパターンは、培地をストリークするために使用される磁気的に制御された粒子のストリーキングパターンを示す。
【0075】
明確にするために、デジタル画像を線形化することは、ジグザグパターンがx軸に沿って直線に展開されるように、線形化された画像のx軸に沿ってジグザグパターンのピクセルをプロットすることと考えることができる。ジグザグパターンに直接重ならないデジタル画像のピクセルごとに、ピクセルは、そのピクセルに(例えば、線形化された画像のy軸に沿って)最も近いジグザグパターンの部分に関連付けることができる。線形化された画像は、粒子が経時的にストリーキングパターンに沿って移動するのに応じて、粒子によって培地上に堆積されるコロニーの密度勾配を示すのに有用である。
【0076】
704において、各コロニー候補が、第2のデジタル画像の線形化された座標に沿ってプロットされる。言い換えると、培地上に堆積されたコロニーの密度勾配は、線形化された画像を用いて評価される。
図9Aは、あらかじめ識別された(例えば、
図5のルーチン500からの)コロニー候補のグラフィック表示である。
図9Bは、ジグザグパターンのグラフィック表示である。
図9A及び
図9Bの表示を重ね合わせることによって、パターン起点(画像の最も左の端部)からジグザグパターンに沿った全てのコロニー候補の距離を計算することができる。
【0077】
706において、初期粒子荷重(ミリメートルあたりのCFUで測定される濃度)が、線形化された第2のデジタル画像内に存在するプロットされたコロニーに基づいて推定される。初期粒子荷重を推定するための計算は、本明細書において、mm単位で測定される幅(W)(「接触幅」とも呼ばれる)を有し、mm2単位で測定される表面積(SA)を有する経路をストリークする粒子の場合に与えられる。
【0078】
初期点として、粒子の表面上の所与の点の場合に、その点は、平均して、ジグザグパターンに沿って粒子が進む「B」mmごとに一度、プレートと接触することに留意されたい。ただし、
【数4】
である。
【0079】
所与の点がコロニー形成ユニット(CFU)を装填されると仮定する場合には、所与の点と培地との間の接触が行われるときにCFUが培地上に放出される確率(PR)は0と1との間の数字として特徴付けることができる。
【0080】
粒子がストリーキング経路に沿って距離x(mm単位で測定される)だけ進んだ時点まで、所与の点にあるCFUが放出された確率(P
NR(x))は、以下の関係に従って与えられる。
【数5】
【0081】
粒子が進行し、CFUを放出するにつれて、粒子上に存在するCFU荷重が減少する。粒子がストリーキングパターン沿ってこれまでに距離xだけ進行した所与の時点において粒子上に存在する全CFU荷重は、K(x)として特徴付けることができる。K(x)は更に、初期粒子荷重K
0(すなわち、ストリーキングパターンが始まる前、それゆえ、任意のCFUが放出される前の粒子のCFU荷重)の関数として表すことができる。
【数6】
【0082】
K(x)は線形化されたデジタル画像に基づいて推定することもできる。特に、粒子上に最初に装填されたCFUの全てがストリーキングパターンの完了によって培地上に放出される、それゆえ、任意の所与の距離xにおける粒子上の残りの荷重は
【数7】
として、すなわち、距離xを過ぎたところでデジタル画像内に示されるコロニーの数として特徴付けることができると仮定することができる。(実際には、その総和の上限は、∞ではなく、ストリーキングパターンの長さとすべきであるが、全てのCFUがストリーキングパターンの終わりまでに放出されるという仮定を与えられるとき、無限大の上限が同様に許容可能である。)
【0083】
K(x)の推定値を用いるとき、その推定値は、初期粒子荷重K
0について解くために、上記の式に代入することができる。実際には、以下の式によって示されるように、K(x)を推定することができる任意の所与の距離x(例えば、x1、x2、x3等)の場合に、K
0について独立して解くこともできる。
【数8】
【0084】
上記の例において、放出確率P
Rが仮定されたが、上記の一連の式を用いて、ストリーキングパターンに沿った
【数9】
の推定値のうちの2つ以上を使用してP
Rについて解くこともできることに更に留意されたい。以下は、距離x1及びx2の場合に推定されたK(x)値を用いてP
Rについて解くための公式の一例である。
【数10】
【0085】
P
Rについて解くと、以下の式に従って、P
R及びK(x)の求められた値を用いて、K
0を推定することができる。
【数11】
【0086】
推定されるK(x)の値が多いほど、PR及びK0の推定値が正確になる場合があることに留意されたい。それゆえ、上記の例はx1及びx2のみを用いてK0を推定するが、他の例は更なる距離(例えば、x3)を使用することができる。
【0087】
代替的には、PRは、コロニー、培地、粒子の既知の特徴、又はその任意の組み合わせに基づく所定の値とすることができ、その場合、K0は、単一の所与の距離xにおけるK(x)の推定値に基づいて推定することができる。
【0088】
分布モデル
上記の計算に加えて、撮像プレート上のコロニーは、デジタル画像と分布モデルとの比較に基づいて推定することができる。
図10A及び
図10Bは、所与の粒子放出確率(P
R)に基づくCFU分布モデルを示す。
図10A及び
図10Bはそれぞれ、様々な初期粒子荷重の場合のCFUの分布を示す(最も左の画像における、小さな初期荷重、例えば、10
2から、最も右の画像における、大きな初期粒子荷重、例えば、10
5までに及ぶ)。分布モデルは、放出確率及びコロニーサイズのような変数を考慮に入れるように変更することもできる。
図10A及び
図10Bの例において、放出確率は0.14に設定される。
図10Aにおいて、コロニーサイズは直径1.66mmに設定される。
図10Bにおいて、コロニーサイズは、それより小さい直径に設定される。したがって、所与の試料のための放出確率及びコロニーサイズを知った上で、分布モデルを用いて、分布が同じように現れる画像のための初期粒子荷重を推定することができる。
【0089】
コンフルエンス比
コロニーカウント推定を改善するために、コンフルエンス比も利用することができる。コンフルエンス比は、コロニー候補に関連付けられた、プレートの主軸に沿った所与の距離におけるピクセルの関数である。コンフルエンス比は以下の式によって特徴付けることができる。
【数12】
【0090】
図11Aは、起点から終点までのストリーキングパターンの主軸に沿って測定されるような、プレートのコンフルエンス比を示す。
図11Aの例において、プレート上の予想CFUは4800であった。
図11Bは、0.185の放出確率と、直径約2mmのコロニーサイズとを有する、4800CFU初期荷重の場合のシミュレーションの結果を示す。本例において見ることができるように、
図11Aのプレート内に示されるコンフルエンス及び
図11Bのシミュレーションは、互いに非常によく似ている。
【0091】
コンフルエンス比を用いて、接線ゼロ交差(tangent line zero crossing)を識別することもでき、それは、コンフルエント領域が主に、又はほとんど終了する、主軸に沿った点である(例えば、コンフルエントコロニーより個別のコロニーが多く、コンフルエント領域が、その点を通って延在し、主軸に対して垂直な線に沿ってピクセルの50%未満を占める等)。
【0092】
上記の例から、プレートの主軸に沿った予想コンフルエンス比が、初期荷重(CFU/ml)、プレートが撮像されている所与の時点における分離されたコロニーのサイズ、及び所与の培養時間に大きく依存することを認識されたい。これらの要因を強調するために、
図12は、類似のコンフルエンス比を有するが、著しく異なるCFU荷重を有する2つのプレートを並べて示す。上側のプレートは全部で約39500CFUの黄色ブドウ球菌を含むのに対して、下側のプレートは、約305CFUの緑膿菌を含む。とりわけ、これらのプレートのコンフルエンス比は
図11Aに示されるプレート(18時間の培養後の血液寒天培地上の約4800CFUの霊菌を有する)と概ね同じである。[発明者:「接線ゼロ交差」法とは何か?]
【0093】
時系列解析
コンフルエント領域内のCFU含有量を推定する別の方法は、過去の画像を用いて、コンフルエント領域を個別のコロニーに分割することによって、時系列解析を実行することである。上記で述べられたように、所与の時点においてコンフルエンスを有するコロニーは、それでも、より早期の時点で個別であり、個々にカウント可能な場合がある。それゆえ、コロニーのうちの少なくともいくつかについてコンフルエンス条件がまだ満たされていなかった早期の培養時間からのコンフルエント領域の画像を用いて解析を行うことができる(例えば、セグメンテーションルーチンを実行する、ボロノイ図を構築する等)。その後、この解析を用いて、進行中の変化を経時的に追跡し、後続の時点において個別のコロニーの識別を維持するのを助けることができる。
【0094】
図13は、経時的に撮影された一連の画像を示す。
図13において、各行は、培養中の指定された時点:それぞれ(下から上に)8時間、12時間、16時間及び20時間におけるデジタル画像(左側)、セグメンテーション結果(中央)及びコントラスト画像(右側)を含む。セグメンテーション画像及びコントラスト画像は、「COLONY CONTRAST GATHERING」と題する、同一出願人によって所有された、同時係属の出願においてより詳細に記述されており、その開示はその全体を引用することにより本明細書の一部をなす。
【0095】
上記のコロニー推定技法、分布モデル、コンフルエンス比及び時系列解析の結果は、より正確な推定値を与えるために、又は先行する推定値の正確さを確認するために、互いに組み合わせて使用できることは当業者には認識されよう。
【0096】
物体特徴
図5に関連して上記で論じたように、撮像プレート上の物体の特徴は、撮像プレート上で行われる画像解析の一部として特徴付けることができる。特徴付けられた特徴は、静的特徴(単一の画像に関する)及び動的画像(複数の画像に関する)の双方を含むことができる。
【0097】
静的特徴は、所与の時点における物体属性及び/又は周囲の背景を反映することを目的とする。静的特徴は以下を含む。
(i)重心:これは、座標空間(例えば、x-y、極)における撮像された物体の重心を与える静的特徴である。物体の重心は、物体の極座標のように、所与の照明法条件及び背景条件下で特徴組の不変性を与える。重心は、まず、画像内の全てのコロニーのための重み付けされた質量中心を求めることによって取得することができる(Mは、全ての検出されたコロニーのためのバイナリマスクである)。重み付けされた質量中心は、画像の各ピクセルが等しい値であるという仮定に基づいて求めることができる。次に、所与のコロニーのための重心を、以下の式によってx-y座標において記述することができる(ここで、E={p|p∈M}であり(Eは現在のコロニーのバイナリマスクである)、x座標の範囲は、[0,画像幅]であり、y座標の範囲は、[0,画像高さ]であり、各ピクセルは1単位である)。
【数13】
(ii)極座標:これも静的特徴であり、重心等の撮像プレート上のロケーションを更に特徴付けるために用いることができる。通常、極座標は、径方向軸(d)及び角度軸(Θ)に沿って測定され、プレート中心の座標は[0,0]である。igv
(x,y)の座標d及びΘは、(dについて、ミリメートル単位で、Θについて、度単位で)以下の式によって与えられる(ここで、kは、ピクセルをミリメートルに対応させるピクセル密度であり、「バーコード」は、プレートと以前の及び/又は未来の画像との位置合わせを確実にするための、撮像プレートのランドマーク特徴である)。
【数14】
(iii)画像ベクトル:次に、二次元極座標は、1次元画像ベクトルに変換することができる。画像ベクトルは、径方向軸の関数として(通常、コロニーの中心が最も高い輝度を有する)、及び/又は角度軸の関数として画像のピクセルの輝度を特徴付けることができる。多くの場合に、画像ベクトルは、撮像された物体間の類似性/差異をより正確に分類することができる。
(iv)所与の物体の形状及びサイズを記述する形態学的特徴
(a)エリア:これは形態学的特徴であり、撮像された物体(「ブロブ」とも呼ばれる)におけるピクセルの数に基づいて求めることができる。ただし、物体の孔はカウントしない。ピクセル密度が利用可能であるとき、エリアは、物理的サイズ(例えば、mm
2)において測定することができる。そうではなく、ピクセル密度が利用可能でないとき、ピクセルの総数はサイズを示すことができ、ピクセル密度(k)は1に等しくなるようにセットされる。1つの実施形態において、エリアは、以下の式を用いて計算される。
【数15】
(b)外周:物体の外周も形態学的特徴であり、物体のエッジを測定し、エッジの総長を合算することによって求めることができる(例えば、1平方ユニットのエリアを有する単一のピクセルは、4ユニットの外周を有する)。このエリアに関して、長さは、ピクセルユニット(例えば、kが利用可能でないとき)又は物理的長さ(例えば、kが利用可能であるとき)の観点で測定することができる。いくつかの状況において、外周は、物体における任意の孔の外周も含むことができる。さらに、内側の角を2ではなく
【数16】
としてカウントすることによって、ラダー効果(ladder effect)(斜めのエッジがラダー状のボックスにデジタル化されるときに結果として生じる)を補償することができる。1つの実施形態では、外周は、以下の式を用いることによって求めることができる。
【数17】
(c)循環性:物体の循環性も形態学的特徴であり、エリア及び外周の組み合わせに基づいて求めることができる。1つの実施形態では、循環性は、以下の式を用いて計算される。
【数18】
(d)半径変動係数(RCV:radius coefficient of variation):これも形態学的特徴であり、N個全ての方向における物体の平均半径
【数19】
又は重心から延在する角度θと、半径σ
Rの標準偏差との比をとることによって、物体の半径の変動を示すのに用いられる。1つの実施形態では、この値は、以下の式を用いて計算することができる。
【数20】
(v)他の検出された物体及びプレート壁エッジに対する精密な調査の下での物体の近傍の地形学的関係を記述する、コンテクスト特徴。例えば、撮像されたコロニーの場合、コロニーの1つのコンテクスト特徴は、コロニーが自由であるか、制限された自由空間を有するか、又はリソースへのアクセスを求めて他の周囲のコロニーと競合しているかであり得る。そのような特徴は、同じ知覚環境で増殖するコロニーを分類し、及び/又は異なる環境内で増殖するコロニーを区別するのに役立つ傾向にある。
(a)影響領域:これは、物体と、その近傍物体との間の空間を検討するコンテクスト特徴であり、解析下の物体が拡張して(他の異なる物体が拡張して、その同じ領域を最初に占有することなく)占有する場合がある領域を予測する。影響の領域は、
図14に示す図等のボロノイ図の形態で表すことができる。これは、コロニー1401と、その近傍のコロニー、例えば1405との間の距離dに基づく影響領域(影付き)を示す。1つの実施形態において、物体のエッジから影響領域のエッジへの距離(D
NC)は、以下の式を用いて特徴付けることができる。
【数21】
(b)プレート壁への距離:これは、最近傍のプレート壁からの物体のエッジの距離(D
PW)を計算するコンテクスト特徴である。1つの実施形態において、この距離は、以下の式を用いて特徴付けることができる。
【数22】
(c)分離係数:これは、物体のサイズ、及び(例えば、別の物体、プレート壁の)最近傍のエッジへの距離に基づいて、所与の物体の相対的分離を特徴付けるコンテクスト特徴である。
図15A~
図15Cは、分離係数の態様を示す。
図15Aは、最近傍のエッジがプレート壁に対しコロニーから距離dにある例を示す。
図15B及び
図15Cは、最近傍のエッジが別のコロニーに属する例を示す。そのような場合、解析下のコロニーを中心として周りに円が描かれ、次に、円が近傍のコロニーに接触するまで拡張される(
図15Bにおけるように、最初は小さく、その後、
図15Cにおけるように大きくなる)。
図15A~
図15Cの実施形態において、分離係数(IF)は、以下の式を用いて特徴付けることができる。
【数23】
(d)近傍占有比:これは、所与の物体についての所与の距離d内のプレートの境界を画されたボロノイ影響領域(V)のエリア断片を特徴付けるコンテクスト特徴である。1つの実施形態では、近傍占有比(OR)は、以下の式を用いて特徴付けることができる(この式の場合、E={p|p∈V,dist(p,igv
(x,y))<d}である)。
【数24】
(e)相対近傍占有比:いくつかの例では、所与の距離dは、所定の係数(
【数25】
)を乗算された物体の平均半径を用いて導出することができる。結果は、相対近傍占有比(RNOR)であり、以下の式を用いて所与の係数xについて導出することができる。
【数26】
(vi)所与の物体の光特性を記述するスペクトル特徴。色(赤色光、緑色光及び青色光チャネル、色相、ルミナンス及びクロミナンス、又は任意の他の色空間変換)、テクスチャ及びコントラスト(経時的及び/又は空間にわたる)が、そのような特徴の例である。スペクトル特徴は、コロニーマスクを用いた培養中に様々な時点において及び/又は様々な照明条件下で捕捉された画像から導出することができ、所与のコロニーのためのボロノイ影響領域に更に関連付けることができる。
(a)チャネル画像:これは、特定のカラーチャネル(例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B))を用いて画像をスペクトル分解するのに用いられるスペクトル特徴である。
(b)ルマ:これもまた、RGBチャネルを入力として用いて画像の明るさを特徴付けるのに用いられるスペクトル特徴である。
(c)色相:これは、画像のエリアが、知覚した色(例えば、赤色、黄色、緑色、青色)又はそれらの組み合わせに類似して見えるように特徴付けられているスペクトル特徴である。色相(H
2)は、通常、以下の式を用いて特徴付けられる。
【数27】
(d)クロマ:これは、エリアが同様に白で照明される場合に、その明るさに対し画像のエリアの彩度を特徴付けるスペクトル特徴である。クロマ(C
2)は、通常、以下の式を用いて特徴付けられる。
【数28】
(31)[最大コントラストのために確保されている]
(vii)解析される物体の近傍における培地の変化を記述する背景特徴。例えば、撮像されたコロニーの場合、変化は、コロニーの周りの微生物増殖(例えば、溶血の兆候、PHの変化、又は特定の酵素反応)によって生じ得る。
【0098】
動的特徴は、物体属性及び/又は周囲の背景の変化を経時的に反映することを目的とする。時系列処理により、静的特徴を経時的に関係付けることが可能になる。これらの特徴の別個の一次導関数及び二次導関数は、経時的に特徴付けられるそのような特徴における変化の瞬間「速度」及び「加速度」(又は横ばい若しくは減速度)を与える。動的特徴の例は以下を含む。
(i)経時的に上記の静的特徴を追跡するための時系列処理。所与の培養時点に測定された各特徴を、その相対的培養時間に従って参照し、特徴が、後の培養時点において測定される特徴に関係付けられることを可能にすることができる。画像の時系列を用いて、上記で説明したように、経時的に現れ、増殖するCFU等の物体を検出することができる。物体の以前に捕捉された画像の進行中の解析に基づいて、自動化されたプロセスによって、撮像のための時点をプリセット又は定義することができる。各時点において、画像は、単一の取得構成の全シリーズのための、又は、複数の取得構成から捕捉された画像のシリーズ全体としての、所与の取得構成とすることができる。
(ii)経時的な上記の特徴(例えば、上記で論じたような増殖速度の追跡)に対する変化の瞬間速度及び加速度(又は横ばい若しくは減速度)を与えるための、そのような特徴の別個の一次導関数及び二次導関数。
(a)速度:経時的な特徴の一次導関数。特徴xの速度(V)は、(x単位)/時間の観点で特徴付けることができ、Δtは、以下の式に基づく、時間単位で表される期間である。
【数29】
(b)加速度:速度の一次導関数でもある、経時的な特徴の二次導関数。加速度(A)は、以下の式に基づいて特徴付けることができる。
【数30】
【0099】
動的特徴は、培養の経過中の、物体の色取得の現れの変化を含むことができる。色の動的変化によって、所与の時点では同じ色を表すが、異なる時点において異なる色を表す場合がある物体を更に区別できるようになる。したがって、2つの物体の場合の色取得の現れが時間的に異なる場合、それら2つの物体が異なる(例えば、異なる有機体である)との結論を下すのを助けることになる。逆に、2つの物体の色の経時的な変化が同じである(例えば、色空間内で同じ経路に従う)場合には、これら2つの物体は、同じである(例えば、同じタイプ又は種類の有機体である)とみなすことができる。
【0100】
上記の画像特徴は、物体又は物体のコンテクストから測定され、様々な培地及び培養条件において増殖する有機体の特異性を捕捉することを目的とする。列挙された特徴は、包括的であることを意図するものではなく、任意の当業者が、当該分野において知られている多岐にわたる既知の画像処理ベースの特徴に従ってこの特徴組を変更、拡大又は制限することができる。
【0101】
画像特徴は、画像内のピクセルごと、ピクセルグループごと、物体ごと、又は物体グループごとに収集することができる。画像の領域を、更には画像全体をより包括的に特徴付けるために、収集された特徴の分布をヒストグラムに構成することができる。そのヒストグラム自体は、入ってくる画像特徴データを解析するか、又は別の方法で処理するために、「COLONY CONTRAST GATHERING」と題する、同一出願人によって所有された、同時係属の出願において記述される特徴のような、いくつかの統計的特徴に頼ることができる。
【0102】
画像位置合わせ
経時的に複数の画像が取得されるとき、それらの画像から有効な時間推定を得るために、画像の非常に正確な位置合わせが必要となる。そのような位置合わせは、機械位置合わせデバイス及び/又はアルゴリズム(例えば、画像追跡、画像マッチング)によって達成することができる。当業者であれば、この目標を達成するためのこれらの解決策及び技法を認識している。
【0103】
例えば、プレート上の物体の複数の画像が収集される場合、物体のロケーションの座標を決定することができる。後続の時点に収集される物体の画像データは、次に、座標に基づいて以前の画像データと関連付けることができ、次に、これらを用いて、経時的な物体の変化を求めることができる。
【0104】
(例えば、分類器への入力として用いられるときの)画像の高速で有益な使用のために、画像の不変性を最大限にするように、これらの画像を空間的基準において記憶することが重要である。コロニーのための基本形状記述子は通常円形であるので、極座標系を用いてコロニー画像を記憶することができる。コロニー質量中心は、コロニーが最初に検出されるとき、コロニーのロケーションの中心として特定することができる。中心点は、後に、コロニーの各後続の画像の極変換のための原点中心(origin center)としての役割を果たすことができる。
図16Aは、中心点「O」を有する撮像プレートのズームされた部分を示す。点「O」から延びる2つの射線「A」及び「B」が(明確にするために)画像の上に重ね合わされて示される。各射線はそれぞれのコロニー(円で囲まれている)と交差する。
図16Aの円で囲まれたコロニーが、
図16Bの画像1611及び1612において更に詳細に示される。
図16Bにおいて、画像1611(射線「A」に交差するコロニー)は、画像1613の径方向の軸が画像1612の径方向の軸と位置合わせされるように、向きを変えられて画像1613(「A’」)にされ、それによって、向きを変えられた画像の最も左の部分が、
図16Aの点「O」に最も近くなり、向きを変えられた画像の最も右の部分が、点「O」から最も遠くなる。この極の向き変更により、(照明等の要素に関して)撮像プレートの異なる方向に向けられたコロニーのより容易な解析が可能になる。
【0105】
図16Cにおいて、極変換は、
図16Bの画像1611、1612及び1613の各々について完成する。極変換画像1621、1622及び1623において、それぞれの向きを変更された画像1611、1612及び1613の径方向軸(各それぞれの撮像されたコロニーの中心から延在する)が、
図16Cの画像における左から右にプロットされ、(それぞれのコロニーの)角度軸が上から下にプロットされる。
【0106】
極画像ごとに、径方向軸及び/又は角度軸に沿って、例えば、形状特徴及び/又はヒストグラム特徴(例えば、物体の色又は輝度の平均及び/又は標準偏差)を用いて、要約した1次元ベクトルの組を生成することができる。回転を検討するときに、形状及びヒストグラム特徴がほとんど不変である場合であっても、いくつかのテクスチャ特徴が、回転時に大きな変動を示す可能性があり、このため、不変性は保証されない。したがって、照明ごとに同じ観点又は角度からコロニー画像の各々を提示することに大きな利点がある。なぜなら、次に、物体のテクスチャの差を用いて互いを区別することができるためである。照明条件は、ほとんどの場合、プレート撮像中心の周りの角度位置にリンクされた変動を示すので、コロニー及びプレート中心を通る射線(
図16の画像1611、1612及び1613の各々において線として示される)は、各画像極変換のための原点(Θ)としての役割を果たすことができる。
【0107】
SNRの改善
通常の照明条件下で、光子ショット雑音(センサに到来する光子の到着率における統計的変動)が、検出システムのSNRを制限する。最近のセンサは、有効平方ミクロンあたり約1700個~約1900個の電子であるフルウェルキャパシティを有する。このため、プレート上の物体を撮像する際、主な関心事は、物体を撮像するために用いられるピクセルの数ではなく、センサ空間内で物体によって覆われるエリアである。センサのエリアを増大させることにより、撮像される物体のためのSNRが改善する。
【0108】
画像品質は、センサを飽和させることなく(フレームごとのピクセルごとに記録することができる光子の最大数)、光子雑音がSNRを支配する照明条件(光子雑音=
【数31】
)を用いて画像を捕捉することによって改善することができる。SNRを最大化するために、画像平均化技法が共通して用いられる。暗い領域のSNRは、明るい領域のSNRよりもはるかに低いので、以下の式によって示すように、これらの技法を用いて大きな明るさ(又は色)の差を有する画像に対処する。
【数32】
【0109】
ここで、Iは、センサにおける電子ストリームによって生成される平均電流である。物質の吸収/反射における差及び電磁スペクトルにわたる光に起因して色が知覚されるとき、捕捉された色に対する信頼性は、高SNRを有する輝度を記録するシステムの能力に依拠する。画像センサ(例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ等)は、当業者によく知られており、本明細書において詳細に説明されない。
【0110】
従来のSNR撮像制限を克服するために、撮像システムは、画像取得中に撮像プレートの解析を行い、解析に基づいて、照明条件及び露出時間をリアルタイムで調整することができる。このプロセスは、引用することにより本明細書の一部をなす、国際公開第2015/114121号に記載されており、包括的に、管理された高品質撮像(SHQI:Supervised High Quality Imaging)として参照される。システムは、異なるカラーチャネル内のプレートの様々な明るさの領域のための撮像条件をカスタマイズすることもできる。
【0111】
画像の所与のピクセルx、yについて、現在のフレームN中に取得されたピクセルのSNR情報を、以前の又は後続の取得されたフレーム(例えば、N-1、N+1)中に取得された同じピクセルのSNR情報と組み合わせることができる。例として、組み合わされたSNRは、以下の式によって指示される。
【数33】
【0112】
新たな取得により画像データを更新した後、取得システムは、環境制約(例えば、対象領域内のピクセルあたり必要とされる最小SNR)に従って、SNRを最大にする最良の次の取得時点を予測することができる。例えば、明るい条件及び暗い条件の最適照明において捕捉された2つの画像の情報をマージすることにより、2つのみの取得において暗い領域のSNRが
【数34】
だけ上がるとき、非飽和状態で捕捉される5つの画像の平均をとることにより、暗い領域(最大輝度の10%)のSNRが
【数35】
だけ上がる。
【0113】
応用形態
本開示は、主に、通常の尿の報告量(CFU/mlバケットグループ)をシミュレートするために、様々な希釈の生理食塩水において行われる試験に基づく。分離株ごとの懸濁液が、0.5マクファーランド濁度標準液に対し調節され、BD Urine Vacutainerチューブ(型番364951)において、推定される1×106、1×105、5×104、1×104、1×103及び1×102CFU/mlの懸濁液において希釈物を準備するのに用いられた。標本チューブは、標準的な尿のストリーキングパターン、すなわち、#4Zigzag(プレートあたり0.01mlの分注)を用いた、Kiestra InoqulA(WCA1)を使用して処理された。
【0114】
全ての取得される画像は、既知の物体ピクセルサイズ、正規化された照明条件、及びピクセルごとの帯域ごとの高い信号対雑音比を用いて、スペクトルの平衡をとられたレンズの幾何収差及び色収差について補正された。本明細書に記載される方法及びシステムにおいて用いるのに適したカメラは、当業者によく知られており、本明細書において詳細に説明されない。例として、4メガピクセルカメラを用いて90mmプレート画像を捕捉することにより、コロニーが適切なコントラストを有する直径において100μmの範囲内にあるとき、最大で30コロニー/mm2のローカル密度(>105CFU/プレート)の計数が可能になるはずである。
【0115】
試料プレートをストリークするために使用された磁性ローリング粒子(magnetic rolling bead)は、直径5mm、外周15.7mm及び表面積78mm2であった。培地との平均接触面は約4mm2であり、それは、直径が概ね2.2mmの接触円板を表す。
【0116】
以下の培地を用いて、培地上で増殖したコロニーのコントラストが評価された。
【0117】
TSAII5%羊血液(BAP):尿培養のために広く用いられる非選択培地。
【0118】
BAV:コロニー形態及び溶血に基づくコロニー計数及び推定IDのために用いられる。
【0119】
MacConkeyII寒天培地(MAC):最も一般的なグラム陰性UTI病原体のための選択的培地。MACは、コロニーを生成する乳糖の分化のために用いられる。MACは、プロテウスの遊走も阻害する。BAP及びMACは、尿培養のために一般的に広く用いられる。いくつかの培地は、いくつかのグラム陰性の部分阻害に起因して、コロニーのカウントに用いることを推奨されない。
【0120】
コリスチンナリジクス酸寒天培地(CNA):最も一般的なグラム陽性UTI病原体のための選択的培地。CNAは、尿培養のためにMACほど一般的に用いられないが、グラム陰性コロニーの過度な増殖が生じた場合に、コロニーの同定に役立つ。
【0121】
CHROMAgarオリエンタシオン(CHROMA):尿培養のために広く用いられる非選択培地。CHROMAは、コロニーの色及び形態に基づくコロニーの計数及びIDのために用いられる。大腸菌及びエンテロコッカス属は、培地によって同定され、確認試験を必要としない。CHROMAは、コストに起因して、BAPほど用いられない。混合試料の場合、CLED培地も用いられた。
【0122】
システイン・乳糖電解質欠損(CLED)寒天培地:乳糖発酵に基づく尿中病原体のコロニー計数及び推定IDのために用いられる。
【0123】
標本処理BD Kiestra(商標)InoqulA(商標)を用いて、細菌学標本の処理を自動化し、標準化を可能にし、一貫した高品質のストリーキングを確保した。BD Kiestra(商標)InoqulA(商標)標本プロセッサは、磁性ローリング粒子技術を使用して、カスタマイズ可能なパターンを用いて培地プレートをストリークする。
【0124】
図17は、自動化された試験プロセス1700(例えば、
図2のルーチン200)のタイムラインを、比較可能なマニュアル実行される試験プロセス1705のタイムラインと比較するフローチャートの対を示す。各プロセスは、試験のための標本が研究室において受け取られる(1710、1715)ことから開始する。次に、各プロセスは、培養1720、1725に進み、培養中、標本は数回撮像することができる。自動化されたプロセスにおいて、自動化された評価1730は、概ね12時間の培養の後に行われ、その時間後、標本内に大きな増殖があるか又は増殖がない(若しくは通常の増殖)かを明確に判断する(1740)ことができる。上記の開示から示されるように、自動化プロセスにおいてコロニーを分類し、カウントするために統計的方法を使用することは、わずか12時間後であっても、著しい増殖があったか否かを判断する能力を大きく改善する。対照的に、マニュアルプロセスにおいて、マニュアル評価1735は、培養プロセスが始まってほぼ24時間が経過するまで行うことができない。24時間経過して初めて、標本内に大きな増殖があるか又は増殖がない(若しくは通常の増殖)かを明確に判断する(1745)ことができる。
【0125】
自動化プロセスの使用は、より高速のAST及びMALDIの試験も可能にする。自動化プロセスにおけるそのような試験1750は、初期評価1730の直後に開始することができ、結果は、24時間マークまでに取得(1760)及び報告(1775)することができる。対照的に、マニュアルプロセスにおけるそのような試験1755は、多くの場合、36時間マークに近づくまで開始することができず、データを見直し(1765)、報告する(1775)ことができるようになるには、更に8時間~12時間を要する。
【0126】
まとめると、マニュアル試験プロセス1705は、最大で48時間かかることが示され、18時間~24時間の培養期間を必要とし、その後初めてプレートが増殖について評価され、試料がどの程度長く培養されていたか更に追跡する方法はない。対照的に、自動試験プロセス1700は、(背景と、及び互いと比較して、)コロニー間の比較的乏しいコントラストであっても検出することができ、微生物学者がタイミングを追跡する必要なく撮像及び培養を行うことができるため、標本を特定し、更なる試験(例えば、AST、MALDI)のために準備することができるようになる前に、12時間~18時間の培養しか必要とせず、プロセス全体は、約24時間以内に完了することができる。このため、本開示の自動化プロセスは、本明細書に記載のコントラスト処理の支援により、試験結果の品質又は正確度に悪影響を及ぼすことなく、より高速な試料の試験をもたらす。
【0127】
本発明は特定の実施形態を参照しながら本明細書において説明されてきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び応用形態を例示するにすぎないことは理解されたい。それゆえ、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に数多くの変更を加えることができること、及び他の構成を考案することができることは理解されたい。