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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】運搬車両及び車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/19 20160101AFI20220929BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220929BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60W20/19 ZHV
G05D1/02 Y
B60W10/08 900
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021053395
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 大輝
(72)【発明者】
【氏名】金井 政樹
(72)【発明者】
【氏名】板東 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】魚津 信一
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-094994(JP,A)
【文献】特開2017-089505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/19
G05D 1/02
B60W 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機で発電した電力によって電動モータを駆動し、前記電動モータの駆動で走行する運搬車両であって、
前記運搬車両の位置を検出する位置検出装置と、
前記運搬車両の速度を検出する速度検出装置と、
予め設定された地図情報に基づいて前記運搬車両を制御する車両制御装置と、
を備え、
前記車両制御装置は、
前記地図情報と照合され前記位置検出装置で検出した前記運搬車両の位置と、前記速度検出装置で検出した前記運搬車両の速度とに基づいて、積込機による前記運搬車両への積込作業の作業進捗又は前記運搬車両の前方を走行する先行車両の運搬作業の作業進捗を算出し、
算出した前記作業進捗に基づいて、前記作業進捗が所定の割合を超えると予測される時刻から前記運搬車両が加速を開始すると予測される時刻までの時間を加速準備時間として算出し、
算出した前記加速準備時間に基づいて、前記加速準備時間の間に前記発電機を発電させることを特徴とする運搬車両。
【請求項2】
前記運搬車両の積載量を検出する積載量検出装置を更に備え、
前記車両制御装置は、
前記積載量検出装置で検出した積載量に基づいて前記積込機による前記運搬車両への積込作業が完了するまでの積込作業時間を推定し、推定した前記積込作業時間に基づいて前記積込作業の作業進捗を算出する請求項1に記載の運搬車両。
【請求項3】
前記運搬車両と前記先行車両との距離を検出する距離検出装置を更に備え、
搬送路を分割した走行区間がそれぞれ座標を示す複数のノードで分割されて設定された場合において、前記先行車両が走行している走行区間に含まれる全てのノードのうち前記運搬車両に最も近いノードから最も遠いノードまでの距離を前記先行車両の走行区間経路長としたとき、
前記車両制御装置は、
前記距離検出装置で検出した前記運搬車両と前記先行車両との距離と、前記位置検出装置で検出した前記運搬車両の位置と、前記地図情報に記載されるノード情報と、前記速度検出装置で検出した前記運搬車両の速度とに基づいて、前記先行車両の速度と前記先行車両の前記走行区間経路長とを算出し、
算出した前記先行車両の速度と前記走行区間経路長とに基づいて、前記先行車両の運搬作業の作業進捗を算出する請求項1に記載の運搬車両。
【請求項4】
発電機で発電した電力によって電動モータを駆動し前記電動モータの駆動で走行する運搬車両と、前記運搬車両に対して積込作業を行う積込機と、前記運搬車両と通信可能に接続されたサーバと、を備える車両制御システムであって、
前記運搬車両は、該運搬車両の位置を検出する位置検出装置と、該運搬車両の速度を検出する速度検出装置と、予め設定された地図情報に基づいて前記運搬車両を制御する車両制御装置とを備え、
前記サーバは、
前記運搬車両から送信され前記地図情報と照合された前記運搬車両の位置と前記運搬車両の速度とに基づいて、前記積込機による前記運搬車両への積込作業の作業進捗又は前記運搬車両の前方を走行する先行車両の運搬作業の作業進捗を算出し、
算出した前記作業進捗に基づいて、前記作業進捗が所定の割合を超えると予測される時刻から前記運搬車両が加速を開始すると予測される時刻までの時間を加速準備時間として算出し、
前記運搬車両の前記車両制御装置は、前記サーバで算出した前記加速準備時間に基づいて、前記加速準備時間の間に前記発電機を発電させることを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
前記運搬車両は、該運搬車両の積載量を検出する積載量検出装置を更に備え、
前記サーバは、
前記運搬車両から送信された前記運搬車両の積載量に基づいて、前記積込機による前記運搬車両への積込作業が完了するまでの積込作業時間を推定し、
推定した前記積込作業時間に基づいて前記積込作業の作業進捗を算出する請求項4に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記運搬車両は、該運搬車両と前記先行車両との距離を検出する距離検出装置を更に備え、
搬送路を分割した走行区間がそれぞれ座標を示す複数のノードで分割されて設定された場合において、前記先行車両が走行している走行区間に含まれる全てのノードのうち前記運搬車両に最も近いノードから最も遠いノードまでの距離を前記先行車両の走行区間経路長としたとき、
前記サーバは、
前記運搬車両から送信された前記運搬車両の位置と前記運搬車両の速度と前記運搬車両と前記先行車両との距離と前記地図情報に記載されるノード情報とに基づいて、前記先行車両の速度と前記先行車両の前記走行区間経路長とを算出し、
算出した前記先行車両の速度と前記走行区間経路長とに基づいて、前記先行車両の運搬作業の作業進捗を算出する請求項4に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬車両及び車両制御システムに関し、特に露天掘り鉱山等に適用される運搬車両及び車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
露天掘り鉱山等において、オペレータが搭乗することなく自律走行する無人車両(運搬車両)と、無線通信回線を介して無人車両と通信する管制局とを備える車両制御システムが知られている。無人車両では、電動モータがエンジン(発電機)により発電した電力を受けて車輪を駆動するシリーズハイブリッド方式が一般的である。この方式では、減速時や停車時に発電量を低く抑えるように発電機を制御することで燃料消費を抑制し、燃費効率の向上が図られている。しかし、アクセル操作を検知してから加速に必要な電力を発電しはじめる速度制御を実施する場合、十分な加速性能を発揮できる状態になるまで時間を要する。このため、減速後の加速時又は発進時に加速性能が悪く、生産性が低下する問題が生じる。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に記載のモータ四輪駆動車のモータ出力制御装置を上記無人車両に適用することが検討される。特許文献1に記載のモータ出力制御装置は、オペレータの加速操作が予測されると発電機を発電出力できる状態にし、加速操作を検知すると電動モータへの電力供給を開始する。従って、例えばオペレータがブレーキを解除したことを検知すると発電機を発電出力できる状態で待機させ、オペレータの加速操作を検知すると電動モータに電力を供給し、発進時の加速性能を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3891176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のモータ出力制御装置では、発電時間がオペレータの操作に依存するため、以下のような問題が新たに発生する。すなわち、例えば油圧ショベル(積込機)による無人車両への積込作業のように、油圧ショベルからの指示があるまで無人車両が発進するタイミングを把握できない場面、あるいは無人車両の前方に停止中の先行車両が存在し、該先行車両が発進するまで無人車両の発進タイミングを把握できない場面では、十分な加速性能を発揮できる状態になるまでの発電時間を確保できないため、加速性能の向上を実現し難い。
【0006】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、加速性能の向上を実現できる運搬車両及び車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る運搬車両は、発電機で発電した電力によって電動モータを駆動し、前記電動モータの駆動で走行する運搬車両であって、前記運搬車両の位置を検出する位置検出装置と、前記運搬車両の速度を検出する速度検出装置と、予め設定された地図情報に基づいて前記運搬車両を制御する車両制御装置と、を備え、前記車両制御装置は、前記地図情報と照合され前記位置検出装置で検出した前記運搬車両の位置と、前記速度検出装置で検出した前記運搬車両の速度とに基づいて、積込機による前記運搬車両への積込作業の作業進捗又は前記運搬車両の前方を走行する先行車両の作業進捗を算出し、算出した前記作業進捗に基づいて、前記作業進捗が所定の割合を超えると予測される時刻から前記運搬車両が加速を開始すると予測される時刻までの時間を加速準備時間として算出し、算出した前記加速準備時間に基づいて、前記加速準備時間の間に前記発電機を発電させることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る運搬車両では、積込機による運搬車両への積込作業の作業進捗又は先行車両の作業進捗によって運搬車両の加速開始が左右された場合に、車両制御装置は、地図情報と照合され位置検出装置で検出した運搬車両の位置と速度検出装置で検出した運搬車両の速度とに基づいて積込作業の作業進捗又は先行車両の作業進捗を算出し、算出した作業進捗に基づいて加速準備時間を算出し、算出した加速準備時間の間に発電機を発電させる。このようにすれば、電動モータが十分な加速性能を発揮できる出力に達するまでの発電時間を確保できるので、加速を開始するときに、運搬車両の発進又は加速を素早く実施することができる。その結果、運搬車両の加速性能の向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運搬車両の加速性能の向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】無人車両が用いられた露天掘り鉱山の作業現場を示す概略図である。
図2】無人車両が搬送路内を走行する際の様子を示す図である。
図3】実施形態に係る無人車両を示すブロック図である。
図4】地図情報のテーブル例を示す図である。
図5】加速準備時間算出部の処理内容を示すフローチャートである。
図6】待機時加速準備時間算出の処理内容を示すフローチャートである。
図7】積載量の時間変化の例を示す図である。
図8】運搬時加速準備時間算出の処理内容を示すフローチャートである。
図9】先行車両が走行区間内を走行する際の様子を示す図である。
図10】制御目標生成部の処理内容を示すフローチャートである。
図11】速度目標値生成時の速度と時刻との関係を示す図である。
図12】実施形態に係る車両制御システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る運搬車両及び車両制御システムの実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
[運搬車両]
まず、本発明に係る運搬車両の実施形態を説明する。以下の説明において、運搬車両が露天掘り鉱山の作業現場(図1参照)において自律走行可能な無人車両の例を挙げるが、本発明の運搬車両は、オペレータが車両に搭乗して操縦する車両や、遠隔操作による操縦を行う車両であっても良い。
【0013】
図1に示すように、露天掘り鉱山の作業現場では、掘削作業及び積込作業を行う1台以上の積込機30と、積込機30から積み込まれた土砂や鉱石等を運搬する1台以上の無人車両20(無人車両20-1、無人車両20-2…)とが協働で作業を行う。これらの無人車両20及び積込機30は、無線通信回線40によって互いに通信可能に構成されている。具体的には、露天掘り鉱山内等には複数の無線基地局41が設置されており、無人車両20と積込機30は、これらの無線基地局41を介して互いに送受信を行っている。そして、無人車両20は、作業現場の形状及び地形等に基づいて設定された搬送路10内を走行する。
【0014】
図2は無人車両が搬送路内を走行する際の様子を示す図である。図2に示す走行経路11は、搬送路10内の曲線を示すデータであり、所定の間隔で配置されたノード12を複数有する。これらのノード12は、走行経路11上の座標を示すデータである。無人車両20は、走行経路11との偏差が最小となるように自律走行してもよく、ノード12上を通過するように自律走行してもよい。
【0015】
また、図2に示す走行区間13は、搬送路10を分割した領域であり、1個の走行区間13に1台の無人車両20のみを走行させ、無人車両20同士で干渉をしない自律走行を実現する。走行区間13は、ノード12ごとに分割されて設定されてもよく、複数のノード12で1個の走行区間13となるように分割されて設定されてもよい。本実施形態では、走行経路11は搬送路10の中心を通る曲線と設定され、ノード12は走行経路11上に等間隔に位置するものと設定されている。
【0016】
図3は実施形態に係る無人車両を示すブロック図である。図3において、無人車両20の構成をより分かり易くするために、該無人車両20との協働作業を行う積込機30も示す。また、図3において、無人車両20と積込機30をそれぞれ1台ずつ示しているが、2台以上存在する場合についてもそれぞれ同様の構成である。
【0017】
積込機30については、積込機本体に対して上下方向に回動自在に設けられた作業フロントを有する油圧ショベルの例を示すが、油圧ショベルに限定されず、例えばホイールローダ等であってもよい。
【0018】
積込機30は、ハードウェア構成として、発進指示入力装置300及び無線通信装置310を備えている。発進指示入力装置300は、例えば積込機30から無人車両20に発進指示を出すスイッチであり、積込機30のオペレータの操作によって作動される。発進指示は、無線通信回線40を介して積込機30から無人車両20に信号を送信するようにしてもよく、積込機30のホーン鳴動であってもよい。無線通信装置310は、例えば無線通信回線40と接続するための無線機である。積込機30は、無線通信装置310を介して無人車両20との間で情報の送受信を行う。
【0019】
無人車両20は、例えば自律走行可能なダンプトラックであり、車体と、車体の前側に取り付けられた左右一対の前輪と、車体の後側に取り付けられた左右一対の後輪と、車体に起伏可能に支持された荷台とを備えている。後輪は、例えば駆動輪であり、該後輪に取り付けられた走行モータ(電動モータ)によって駆動されている。走行モータは、例えばインバータ制御され、車体に内蔵された発電機(本実施形態では、エンジン)で発電した電力を受けて回転する。なお、駆動輪は前輪であっても良い。
【0020】
また、図3に示すように、無人車両20は、記憶装置200、無線通信装置210、及び車両制御装置220を備えている。更に、無人車両20には、積載センサ(積載量検出装置)230、位置センサ(位置検出装置)240、速度センサ(速度検出装置)250、及び距離センサ(距離検出装置)260等の各種センサが取り付けられている。
【0021】
記憶装置200は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム、データベース等が格納されている。この記憶装置200は、地図情報記憶部201を有する。地図情報記憶部201には、地図情報のテーブルなどが格納されている。
【0022】
地図情報のテーブルには、例えば図4に示すようにノード12のノードIDごとに、ノード12が含まれる走行区間13の走行区間IDと、ノード12の座標を含むノード情報と、走行経路11の曲率と搬送路10の勾配の両方あるいはいずれか一方に基づいた制限速度と、搬送路10の勾配と、無人車両20の作業内容が少なくとも記載されている。無人車両20の作業内容として、積込機30が無人車両20に積込作業を行う座標にあるノード12では「待機」と設定され、それ以外のノード12では「運搬」と設定されている。
【0023】
無線通信装置210は、例えば無線通信回線40と接続するための無線機である。無人車両20は、無線通信装置210を介して積込機30との間で情報の送受信を行う。
【0024】
車両制御装置220は、無人車両20の車両全体制御を行うものである。この車両制御装置220は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって無人車両20の走行や操作等に関する各制御を行う。
【0025】
図3に示すように、車両制御装置220は、加速準備時間算出部221、制御目標生成部222、自律走行制御部223、及び車体駆動部224を備えている。加速準備時間算出部221は、センサ情報に基づいて積込機30による無人車両20への積込作業の作業進捗又は無人車両20の前方を走行する先行車両(無人車両)の作業進捗を算出し、算出した作業進捗に基づいて無人車両20の加速準備時間を算出する。ここでの加速準備時間は、積込機30による無人車両20への積込作業の作業進捗又は無人車両20の前方を走行する先行車両の作業進捗が所定の割合を超えると予測される時刻から無人車両20が加速を開始すると予測される時刻までの時間であり、更に「待機時加速準備時間」と「運搬時加速準備時間」とに分けられている。その詳細な説明は後述する。なお、無人車両20が加速を開始すると予測される時刻は、言い換えれば、加速が要求される時刻である。
【0026】
制御目標生成部222は、少なくとも地図情報と加速準備時間算出部221で算出した加速準備時間とに基づいて、制御目標を生成する。生成した制御目標には、速度目標値及び発電出力目標値が少なくとも含まれている。例えば、制御目標生成部222は、地図情報と、無人車両20の位置と無人車両20の速度とに基づいて速度目標値を生成し、生成した速度目標値と加速準備時間算出部221で算出した加速準備時間とに基づいて、発電機制御用速度目標値を生成する。更に、制御目標生成部222は、生成した発電機制御用速度目標値と上記地図情報とに基づいて発電出力目標値を生成する。
【0027】
自律走行制御部223は、制御目標生成部222により生成された制御目標に基づいて、無人車両20を自律走行させる制御指令を生成する。生成した制御指令には、ブレーキペダル操作量、アクセルペダル操作量、操舵角操作量、及び発電機操作量のうち少なくとも1つが含まれている。例えば、自律走行制御部223は、制御目標生成部222で生成した発電出力目標値に基づいて、該発電出力目標値を実現できるように上記加速準備時間の間に発電機を発電させるための発電機操作量を生成する。
【0028】
車体駆動部224は、自律走行制御部223により生成された制御指令に従って、無人車両20を制動させるためのブレーキ操作、無人車両20の操舵角を変更するための操舵モータ、無人車両20を走行させるための走行モータ、及び走行モータが消費する電力を発電する発電機の作動等を行うことで、無人車両20を走行させる。
【0029】
積載センサ230は、無人車両20の積載量を検出する装置である。例えば、無人車両20のサスペンションに作用する荷重や、油圧シリンダ内の作動油の圧力などを計測することで、無人車両20の積載量を検出する。
【0030】
位置センサ240は、例えばGPS(Global Positioning System)装置等であり、無人車両20の位置を検出する。検出された無人車両20の位置は予め設定された地図情報と照合される。
【0031】
速度センサ250は、例えば車輪速センサであり、無人車両20の速度を検出する。ここでは、速度センサ250に代えて、例えばGPS装置で求めた車両位置情報の時間変化に基づいて車両速度を検出するようにしてもよい。
【0032】
距離センサ260は、無人車両20と該無人車両20の周囲にある物体(例えば、先行車両)との距離を検出するためのものであり、例えばミリ波レーダであってもよく、LIDAR(Light Detection And Ranging)であっても良い。また、ミリ波レーダやLIDARに代えて、ステレオカメラで取得した画像から距離を検出するようにしてもよい。
【0033】
以下、図5を基に加速準備時間算出部221の処理内容について説明する。図5は加速準備時間算出部の処理内容を示すフローチャートである。
【0034】
図5に示すように、まず、加速準備時間算出部221は、記憶装置200の地図情報記憶部201から上述の地図情報を取得する(ステップS10)。続いて、加速準備時間算出部221は、位置センサ240から無人車両20の位置を取得し、更に速度センサ250から無人車両20の速度を取得する(ステップS11及びS12)。なお、地図情報取得、位置取得及び速度取得の順序は、上述の内容に限定されず、適宜入れ替えてもよく、一つのステップで同時に取得するようにしてもよい。
【0035】
続いて、加速準備時間算出部221は、取得した地図情報と無人車両20の位置と無人車両20の速度とに基づいて、無人車両20に割り当てられたノード12のノードIDを取得し、取得したノードIDに基づいて無人車両20の作業内容を取得する(ステップS13)。ノードIDは、無人車両20の位置から最も近いノード12のノードIDであってもよく、無人車両20の進行方向の前方にある複数のノード12のうち最も近いノード12のノードIDであってもよい。作業内容は、ノードIDと紐づいた作業内容を取得してもよく、あるいは無人車両20速度に基づいて取得してもよい。そして、無人車両20速度に基づいて作業内容を取得する場合、例えば無人車両20速度が0でないときは「運搬」を取得し、無人車両20速度が0であって且つノードIDと紐づいた作業内容が「待機」であるときは「待機」を取得する。
【0036】
続いて、加速準備時間算出部221は、作業内容が「待機」であるか否かを判定する(ステップS14)。作業内容が「待機」であると判定した場合、加速準備時間算出部221は待機時加速準備時間を算出する(ステップS15)。一方、作業内容が「待機」でないと判定した場合、加速準備時間算出部221は運搬時加速準備時間を算出する(ステップS16)。ステップS15又はS16が終わると、加速準備時間算出部221は、算出した加速準備時間(待機時加速準備時間又は運搬時加速準備時間)を制御目標生成部222に出力する(ステップS17)。これによって、一連の処理は終了する。
【0037】
次に、図6及び図7を用いて上記ステップS15の待機時加速準備時間算出の処理内容を詳細に説明する。図6は待機時加速準備時間算出の処理内容を示すフローチャートであり、図7は積載量の時間変化の例を示す図である。
【0038】
図6に示すように、加速準備時間算出部221は、まず積載センサ230から積載量を取得する(ステップS150)。続いて、加速準備時間算出部221は、取得した積載量に基づいて積込作業時間を推定する(ステップS151)。具体的には、加速準備時間算出部221は、待機時であって積込機30による積込作業を受けている無人車両20の、積載量の推移関係(図7参照)に基づいて、積込機30による無人車両20への積込作業が完了するまでの積込作業時間を推定する。
【0039】
図7は、積込機30による無人車両20への積込作業時に、無人車両20の積載量の時間変化を示すものであり、積込機30の作業速度が一定である前提とされる。横軸は時刻を示し、縦軸は積載量を示す。また、図7では積み込みを5回行う例を示すが、積み込みの回数は5回に限定されるものではない。
【0040】
加速準備時間算出部221は、1回目の積み込みから2回目の積み込みまでの時間tと1回目の積込量wとに基づいて、積み込みを開始してから無人車両20の最大積載量(すなわち、設計上の最大積載量)mまでにかかる時間を積込作業時間τとして下記式(1)で算出することで、積込作業時間の推定を行う。
【0041】
【数1】
【0042】
続いて、加速準備時間算出部221は、推定した積込作業時間に基づいて、積込作業の作業進捗を算出する(ステップS152)。具体的には、加速準備時間算出部221は、積み込みを開始してからの経過時間を上記推定した積込作業時間で割って得られる割合を、積込機30の作業進捗として算出する。
【0043】
続いて、加速準備時間算出部221は、算出した作業進捗に基づいて、加速準備時間を算出する(ステップS153)。具体的には、加速準備時間算出部221は、例えば現在の時刻と算出した作業進捗とに基づいて作業進捗の進行速度を算出する。その後、加速準備時間算出部221は、算出した進行速度に基づいて、作業進捗が所定の割合(例えば90%)を超えると予測される時刻から無人車両20が加速を開始すると予測される時刻までの時間を加速準備時間として算出する。ここでの割合は、蓄積された経験値等に基づいて設定されている。無人車両20が加速を開始すると予測される時刻は、例えば現在の時刻と上述推定した積込作業時間τとに基づいて算出される。
【0044】
なお、ステップS151では、加速準備時間算出部221は、最大積載量mに代えて、積込機30から発進指示を受信したときの積載量の平均値を用いて積込作業時間τを算出してもよい。また、加速準備時間算出部221は、積込作業時間として、積み込みが開始されてから積込機30から発進指示を受信するまでの経過時間の平均値を用いてもよい。
【0045】
積込機30から発進指示を受信したときの積載量の平均値、及び、積み込みが開始されてから積込機30から発進指示を受信するまでの経過時間の平均値は、例えば記憶装置200に蓄積された積載量もしくは経過時間のデータに基づいてそれぞれ算出される。なお、記憶装置200に蓄積されるデータ量を削減するために、運搬回数ごとの積載量又は経過時間のデータを全て記憶せずに、所定期間(例えば1日)ごとに積載量の平均値と経過時間の平均値とをそれぞれ算出し、算出した該所定期間の平均値データのみを記憶装置200に蓄積し、蓄積された平均値を用いて上記平均値を算出するようにしてもよい。
【0046】
また、ステップS152では、加速準備時間算出部221は、積込作業の作業進捗として、最大積載量に対する積み込まれた量の割合を用いてもよく、積込機30から発進指示を受信したときの積載量の平均値に対する積み込まれた量の割合を用いてもよい。
【0047】
次に、図8及び図9を用いて上記ステップS16の運搬時加速準備時間算出の処理内容を詳細に説明する。図8は運搬時加速準備時間算出の処理内容を示すフローチャートであり、図9は先行車両が走行区間内を走行する際の様子を示す図である。そして、図8に示す運搬時加速準備時間算出の処理は、図9に示す場面を想定して行われる。
【0048】
図9に示す場面では、無人車両20(無人車両20-1)が走行する走行区間13-1の前方にある走行区間13-2を先行車両(無人車両20-2)が走行し、無人車両同士の干渉を回避するために、先行車両が走行区間13-2を出るまで、無人車両20は走行区間13-2に進入することが禁止されている。このとき、無人車両20は走行区間13-2の手前で停車するように減速して走行する。
【0049】
図8に示すように、加速準備時間算出部221は、まず距離センサ260から無人車両20の進行方向の前方に位置する先行車両と無人車両20との車間距離を取得する(ステップS160)。続いて、加速準備時間算出部221は、取得した先行車両との車間距離と、ステップS11で取得した無人車両20の位置とに基づいて、先行車両位置を算出する(ステップS161)。
【0050】
続いて、加速準備時間算出部221は、算出した先行車両位置と、ステップS10で取得した地図情報とに基づいて、先行車両に割り当てられたノードIDを取得する(ステップS162)。ノードIDは、先行車両位置から最も近いノード12のノードIDであってもよく、先行車両の進行方向の前方にある複数のノード12のうち最も近いノード12のノードIDであってもよい。
【0051】
続いて、加速準備時間算出部221は、取得ノードIDとステップS10で取得した地図情報とに基づいて、先行車両が位置する走行区間13-2内のノード情報を取得する(ステップS163)。このとき、加速準備時間算出部221は、取得したノードIDに対応する走行区間IDを持つ全てのノード12のノード情報を取得する。
【0052】
続いて、加速準備時間算出部221は、取得したノード情報に基づいて先行車両の走行区間経路長を算出する(ステップS164)。具体的には、加速準備時間算出部221は、図9に示すように、ノード情報に含まれる座標情報から隣り合うノード12間の距離L1、L2、・・・Lnをそれぞれ算出し、更に算出したこれらの距離の合計値を走行区間経路長として算出する。
【0053】
続いて、加速準備時間算出部221は、ステップS160で取得した車間距離に基づいて、無人車両と先行車両との相対速度を算出する(ステップS165)。具体的には、加速準備時間算出部221は、車間距離の時間変化に基づいて、無人車両20と先行車両との相対速度を算出する。
【0054】
続いて、加速準備時間算出部221は、算出した相対速度と、ステップS12で取得した無人車両20の速度とに基づいて、先行車両速度を算出する(ステップS166)。
【0055】
続いて、加速準備時間算出部221は、ステップS161で算出した先行車両位置と、ステップS164で算出した走行区間経路長とに基づいて、先行車両の作業進捗を算出する(ステップS167)。具体的には、加速準備時間算出部221は、まず図9に示すように、先行車両の基準位置(例えば車両の重心位置)P2から走行経路11に垂線を引き、該垂線と走行経路11との交点(すなわち、垂線の足)P1を特定する。次に、加速準備時間算出部221は、特定した交点P1と無人車両20(無人車両20-1)に最も近いノード12-1との距離を、走行区間13-2における先行車両の走行距離として算出する。次に、加速準備時間算出部221は、算出した先行車両の走行距離を上記走行区間経路長(ステップS164で算出)で割って得られた割合を、先行車両の作業進捗として算出する。
【0056】
続いて、加速準備時間算出部221は、ステップS166で算出した先行車両速度と、ステップS164で算出した走行区間経路長とに基づいて、先行車両の作業進捗の進行速度を算出する(ステップS168)。具体的には、加速準備時間算出部221は、先行車両速度を走行区間経路長で割った値を作業進捗の進行速度として算出する。
【0057】
続いて、加速準備時間算出部221は、ステップS167で算出した作業進捗と、ステップS168で算出した作業進捗の進行速度とに基づいて、作業進捗が所定の割合(例えば90%)を超えると予測される時刻から無人車両20が加速を開始すると予測される時刻までの時間を加速準備時間として算出する(ステップS169)。ここでの割合は、蓄積された経験値等に基づいて設定されている。無人車両20が加速を開始すると予測される時刻は、すなわち、先行車両が無人車両20の前方にある走行区間13-2を出る時刻であり、例えば現在の時刻と上述の先行車両速度及び走行区間経路長とに基づいて算出される。
【0058】
なお、ステップS166では、加速準備時間算出部221は、先行車両速度として、先行車両に割り当てられたノード12と対応する制限速度を用いてもよい。また、ステップS169では、加速準備時間算出部221は、加速準備時間として、先行車両が無人車両20の前方にある走行区間13-2を出る時刻を算出してもよい。
【0059】
次に、図10を用いて制御目標生成部222の処理内容を説明する。図10は制御目標生成部の処理内容を示すフローチャートである。
【0060】
図10に示すように、制御目標生成部222は、まず記憶装置200の地図情報記憶部201から地図情報を取得する(ステップS200)。続いて、制御目標生成部222は、位置センサ240から無人車両20の位置を取得し、更に速度センサ250から無人車両20の速度を取得する(ステップS201及びS202)。なお、地図情報取得、位置取得及び速度取得の順序は、上述の内容に限定されず、適宜入れ替えてもよく、一つのステップで同時に取得するようにしてもよい。
【0061】
続いて、制御目標生成部222は、加速準備時間算出部221から加速準備時間(待機時加速準備時間又は運搬時加速準備時間)を取得する(ステップS203)。
【0062】
続いて、制御目標生成部222は、取得した地図情報と無人車両20の位置と無人車両20の速度とに基づいて、無人車両20に割り当てられたノード12のノードIDを取得し、取得したノードIDに基づいて無人車両20の作業内容を取得する(ステップS204)。ノードIDは、無人車両20の位置から最も近いノード12のノードIDであってもよく、無人車両20の進行方向の前方にある複数のノード12のうち最も近いノード12のノードIDであってもよい。作業内容は、ノードIDと紐づいた作業内容を取得してもよく、あるいは無人車両20速度に基づいて取得してもよい。そして、無人車両20速度に基づいて作業内容を取得する場合、例えば無人車両20速度が0でないときは「運搬」を取得し、無人車両20速度が0であって且つノードIDと紐づいた作業内容が「待機」であるときは「待機」を取得する。
【0063】
続いて、制御目標生成部222は、ステップS200で取得した地図情報とステップS201で取得した無人車両20の位置とに基づいて、次走行区間ノードを取得する(ステップS205)。具体的には、制御目標生成部222は、図9に示すように、無人車両20(無人車両20-1)の前方にある走行区間13-2(言い換えれば、次走行区間)に含まれる複数のノード12のうち最も近いノード12-1のノードIDを取得する。
【0064】
続いて、制御目標生成部222は、取得した次走行区間ノードとステップS201で取得した無人車両20の位置とに基づいて、走行区間内走行距離を算出する(ステップS206)。具体的には、制御目標生成部222は、無人車両20の位置から次走行区間ノード(すなわち、ノード12-1)までの距離を走行区間内走行距離として算出する。
【0065】
続いて、制御目標生成部222は、作業内容が「待機」であるか否かを判定する(ステップS207)。そして、作業内容が「待機」であると判定した場合、かつ積込機30からの発進指示の受信前である場合、制御目標生成部222は無人車両20の速度を0に維持する速度目標値を生成する(ステップS208)。なお、作業内容が「待機」であると判定した場合、かつ積込機30からの発進指示の受信後である場合、制御目標生成部222は次走行区間ノードと対応する制限速度を速度目標値として生成する。
【0066】
一方、作業内容が「待機」でないと判定した場合、制御目標生成部222は、ステップS202で取得した無人車両20の速度とステップS206で算出した走行区間内走行距離とに基づいて、速度目標値を生成する(ステップS209)。具体的には、次走行区間に先行車両が存在する場合、制御目標生成部222は、図11に示す速度目標値生成時の速度と時刻との関係を用いて、走行区間内走行距離に達する時刻に速度が0となるように、減速して停止する速度目標値を生成する。なお、次走行区間に先行車両が存在しない場合、制御目標生成部222は、次走行区間ノードと対応する制限速度を速度目標値として生成する。
【0067】
図11において、横軸は時刻を示し、縦軸は速度を示す。また、実線で示すのは速度目標値であり、太い破線で示すのは発電機制御用速度目標値であり、細い破線で示すのは次走行区間ノードと対応する制限速度である。図9に示す場面では、次走行区間(走行区間13-2)を先行車両が走行しているため、制御目標生成部222は、実線で示す速度目標値に従い、速度が徐々に低下して走行区間内走行距離に達するときに0となるように、速度目標値を生成する。このようにすれば、無人車両20の速度は速度目標値に従って制御される。
【0068】
ステップS208又はS209が終わると、制御目標生成部222は、生成した速度目標値とステップS203で取得した加速準備時間とに基づいて、発電機制御用速度目標値を生成する(ステップS210)。具体的には、制御目標生成部222は、図11の太い破線で示すように、無人車両20が加速を開始すると予測される時刻から無人車両20が発揮できる最大加速度で加速しはじめる発電機制御用速度目標値を生成し、更に次走行区間ノードのノードIDに対応する制限速度まで加速する発電機制御用速度目標値を生成する。
【0069】
続いて、制御目標生成部222は、生成した発電機制御用速度目標値とステップS200で取得した地図情報とに基づいて、車輪トルクを算出する(ステップS211)。具体的には、制御目標生成部222は、生成した発電機制御用速度目標値と、地図情報に含まれた搬送路10の勾配とに基づいて車輪トルクを算出する。
【0070】
続いて、制御目標生成部222は、算出した車輪トルクに基づいて発電出力目標値を生成する(ステップS212)。具体的には、制御目標生成部222は、車輪トルクと走行モータの抵抗とに基づき、無人車両20が加速を開始すると予測される時刻で、実際に無人車両20が加速する速度制御が実施された場合であっても、十分な加速性能を発揮できる発電出力目標値を生成する。
【0071】
続いて、制御目標生成部222は、速度目標値と発電出力目標値とを自律走行制御部223に出力する(ステップS213)。これによって、一連の処理は終了する。
【0072】
そして、自律走行制御部223は、制御目標生成部222から出力された発電出力目標値に対し、該発電出力目標値を実現できるように上記加速準備時間の間に発電機を発電させるための発電機操作量を生成する。例えば自律走行制御部223は、発電機の応答特性を1次遅れの伝達関数でモデル化したときの時定数Tを用いて、発電出力目標値が立ち上がる時刻の3T秒前にステップ状の発電機操作量を与える。1次遅れの伝達関数では、ステップ入力に対して3T秒後に出力が定常値の90%の値に達することから、3T秒前に事前に発電機操作量を与えることで加速を開始すると予測される時刻までに十分な発電出力目標値を発生させることが可能となる。
【0073】
本実施形態の無人車両20では、積込機30による無人車両20への積込作業の作業進捗又は先行車両の作業進捗によって無人車両20の加速開始が左右された場合に、車両制御装置220は、予め設定された地図情報と照合され位置センサ240で検出した無人車両20の位置と速度センサ250で検出した無人車両20の速度とに基づいて積込作業の作業進捗又は先行車両の作業進捗を算出し、算出した作業進捗に基づいて加速準備時間を算出し、算出した加速準備時間の間に発電機を発電させる。このようにすれば、電動モータが十分な加速性能を発揮できる出力に達するまでの発電時間を確保できるので、無人車両20が加速を開始するときに、無人車両20の発進又は加速を素早く実施することができる。その結果、無人車両20の加速性能の向上を実現することができる。
【0074】
[車両制御システム]
以下、図12を基に本発明に係る車両制御システムの実施形態を説明する。図12は実施形態に係る車両制御システムを示す概略構成図である。図12に示すように、本実施形態の車両制御システム1は、複数の無人車両20Aと、複数の積込機30と、これらの無人車両20A及び積込機30の作業を管理するサーバ50と、を備えている。無人車両20A、積込機30及びサーバ50は、無線通信回線40(図1参照)によって互いに通信可能に接続されている。
【0075】
そして、本実施形態の無人車両20Aは、車両制御装置220Aが加速準備時間算出部221を備えない点において、上述の無人車両20と異なっている。一方、サーバ50は、加速準備時間算出機能を有する。すなわち、本実施形態の車両制御システム1は、上述無人車両20の加速準備時間算出部221の機能をサーバ50に備え付けるシステムである。
【0076】
具体的には、図12に示すように、無人車両20Aの車両制御装置220Aは、制御目標生成部222、自律走行制御部223及び車体駆動部224を備えている。また、車両制御装置220Aは、積載センサ230で検出した無人車両20Aの積載量、予め設定された地図情報と照合され位置センサ240で検出した無人車両20Aの位置、速度センサ250で検出した無人車両20Aの速度、距離センサ260で検出した先行車両との車間距離、及び地図情報記憶部201に格納された地図情報を定期的に無線通信装置210を介してサーバ50に送信する。なお、車両制御装置220Aは、サーバ50から要求があった場合にのみ、これらのセンサで検出した各情報及び地図情報をサーバ50に送信するようにしてもよい。
【0077】
サーバ50は、例えば演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、記憶されたプログラムの実行によって無人車両20A及び積込機30の管理等に関する各制御を行う。
【0078】
このサーバ50は、無線通信装置510と加速準備時間算出装置500とを備えている。無線通信装置510は、例えば無線通信回線40と接続するための無線機である。サーバ50は、無線通信装置510を介して無人車両20A又は積込機30との間で情報の送受信を行う。例えば、サーバ50は、無線通信装置510を介して無人車両20Aから送信された各情報と、積込機30から送信された各情報とを受信して集約する。また、サーバ50は、無人車両20Aへの指令等、積込機30への指令等を無線通信装置510を介して送信する。
【0079】
加速準備時間算出装置500は、上述の加速準備時間算出部221と同様な構造及び機能を有する。すなわち、この加速準備時間算出装置500は、上述の加速準備時間算出部221と同様に、無人車両20Aの位置と無人車両20Aの速度とに基づいて、積込機30による無人車両20Aへの積込作業の作業進捗又は無人車両20Aの前方を走行する先行車両の作業進捗を算出し、算出した作業進捗に基づいて、作業進捗が所定の割合を超えると予測された時刻から無人車両20Aが加速を開始すると予測される時刻までの時間を加速準備時間として算出する。加速準備時間算出装置500は、算出した加速準備時間を無線通信装置510を介して無人車両20Aの制御目標生成部222に送信する。
【0080】
本実施形態の車両制御システム1によれば、上述した無人車両20と同様な作用効果を得られるほか、複数の無人車両20A及び積込機30からの情報を集約し、集約した情報に基づいて加速準備時間を算出するので、無人車両20が自車のみで取得した情報に基づいて加速準備時間を算出する場合と比べて、加速準備時間の算出精度を更に高めることができる。
【0081】
なお本実施形態において、積込機30による無人車両20Aへの積込作業の作業進捗と、待機時加速準備時間とを算出する際に、加速準備時間算出装置500は、無人車両20Aの積載センサ230で検出した積載量に代えて積込機30から送信された姿勢情報及び積込量情報を用いても良く、無人車両20Aの積載センサ230で検出した積載量に加えて更に積込機30から送信された姿勢情報及び積込量情報も用いても良い。この場合、無人車両20Aの積載センサ230で取得した積載量が離散的な情報であることに対し、積込機30のセンサで取得した積載量が連続的な情報であるので、算出された作業進捗の精度を高めることができる。その結果、加速準備時間をより高精度に算出できるので、加速性能を向上する効果を一層高めることができる。
【0082】
また、無人車両20Aの前方を走行する先行車両の作業進捗と、運搬時加速準備時間とを算出する際に、加速準備時間算出装置500は、無人車両20Aの距離センサ260で検出した車間距離に代えて、先行車両の位置センサ240及び速度センサ250で検出した情報に基づいて作業進捗を算出するのが好ましい。このようにすれば、加速準備時間をより早期に算出することが可能となり、発電時間の確保が容易となるので、加速性能の向上をより確実に実現できる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0084】
1 車両制御システム
10 搬送路
11 走行経路
12 ノード
13 走行区間
20,20A 無人車両(運搬車両)
30 積込機
40 無線通信回線
50 サーバ
200 記憶装置
201 地図情報記憶部
210 無線通信装置
220,220A 車両制御装置
221 加速準備時間算出部
222 制御目標生成部
223 自律走行制御部
224 車体駆動部
230 積載センサ(積載量検出装置)
240 位置センサ(位置検出装置)
250 速度センサ(速度検出装置)
260 距離センサ(距離検出装置)
300 発進指示入力装置
500 加速準備時間算出装置
【要約】
【課題】加速性能を向上できる運搬車両及び車両制御システムを提供する。
【解決手段】無人車両20は、発電機で発電した電力によって電動モータを駆動し、電動モータの駆動で走行する車両であって、無人車両20の位置を検出する位置センサ240と、無人車両20の速度を検出する速度センサ250と、無人車両20を制御する車両制御装置220とを備える。車両制御装置220は、位置センサ240で検出した無人車両20の位置と、速度センサ250で検出した無人車両20の速度とに基づいて、積込機30による無人車両20への積込作業の作業進捗又は先行車両の作業進捗を算出し、算出した作業進捗が所定の割合を超えると予測される時刻から無人車両20が加速を開始すると予測される時刻までの時間を加速準備時間として算出し、算出した加速準備時間の間に発電機を発電させる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12