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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】地中熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/35 20160101AFI20220929BHJP
   F24T 50/00 20180101ALI20220929BHJP
   F24T 10/15 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
F03D9/35
F24T50/00
F24T10/15
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021092298
(22)【出願日】2021-06-01
(62)【分割の表示】P 2019121569の分割
【原出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021139370
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】峯▲崎▼ 晃洋
(72)【発明者】
【氏名】三上 恭伸
(72)【発明者】
【氏名】久米 毅志
(72)【発明者】
【氏名】内藤 泰文
(72)【発明者】
【氏名】増田 宏
(72)【発明者】
【氏名】守谷 憲和
(72)【発明者】
【氏名】小西 智樹
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-119306(JP,A)
【文献】特開2007-107288(JP,A)
【文献】特開2006-052588(JP,A)
【文献】特開2005-326128(JP,A)
【文献】特開昭58-222984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/35
F03G 7/04
F24T 50/00
F24T 10/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントが連結されていて地中熱の高い地層に埋設された筒体と、
前記筒体に装着されていて熱媒を流通させる第一の熱交換器と、
前記筒体に設置されていて前記筒体の内部空間内において、前記内部空間の中央領域と前記筒体の内周面近傍領域との温度差による熱対流で生じる風力によって回転する風車により発電する風力発電装置と、
を備えたことを特徴とする地中熱利用システム。
【請求項2】
前記セグメントにはケーシング管が装着され、前記ケーシング管の内部にU字状に形成された前記第一の熱交換器が装着されている請求項1に記載された地中熱利用システム。
【請求項3】
前記セグメントには閉鎖空間を形成するケーシング管が装着され、前記第一の熱交換器は前記ケーシング管の内部に熱媒を流通させている請求項1に記載された地中熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数のセグメントからなる筒体を地中熱の高い地層に埋設して、熱交換器内を流通する熱媒を高温の地層の地熱と熱交換することで採熱して利用する地中熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山間地等に構築される送電用鉄塔や橋梁の基礎杭を利用して熱交換器を地中に埋設し、その熱交換器内を流通する熱媒を高温の周囲地層と熱交換させることで周囲の地層から採熱する熱交換システムが知られている。この熱交換システムは、例えば地中を1か所ずつ掘削してその内部に熱媒を流通させる配管状の熱交換器を個別に設置して埋め戻している。
熱交換器は比較的低温の蒸気や熱水等の熱媒を地中に供給して地中熱の高い地層で地熱と熱交換して、高温になった熱媒を地上に取り出している。採取した熱エネルギーは、発電や、橋梁路面や道路路面の融雪設備、農業用ハウスの暖房設備、建築物の暖房設備等に利用されている。
【0003】
また、例えば特許文献1に記載された場所打ちコンクリート杭では、杭外周部の外周面に熱伝導率の高い筒状の鋼管を設置し、鋼管の全外周面を地熱温度の高い地盤の透水層と接触させる。そして、熱交換パイプを鋼管の内面に接するように配設することで、熱交換パイプ内を循環する熱媒に地熱を効率よく伝達させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-97984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した熱交換システムでは1か所ずつ掘削して熱交換器を地中に埋設するため、広域的に地熱を採取するためには時間とコストがかかるという不具合がある。
また、特許文献1に記載された熱交換装置は、場所打ちコンクリート杭の外周面に鋼管を設置し、その内面に熱交換パイプを配設するため、施工コストが高く構造も煩雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、施工コストが低廉で、地熱を効率よく熱交換して利用できる地中熱利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る地中熱利用システムは、複数のセグメントが連結されていて地中熱の高い地層に埋設された筒体と、筒体に装着されていて熱媒を流通させる第一の熱交換器と、筒体の内部空間に設置されていて熱媒を流通させる第二の熱交換器と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、地中に埋設されたセグメントの筒体に第一の熱交換器を装着しているため地中熱の高い地層の地熱を筒体に装着された第一の熱交換器内の熱媒と熱交換し、第一の熱交換器内の熱媒を回収して採熱すると共に、筒体の内部空間に装着された第二の熱交換器内の熱媒を地中熱の高い地層の地熱と熱交換して採熱できるため、施工が簡単で低コストであり、効率よく熱交換して採熱することができる。
【0008】
本発明に係る地中熱利用システムは、複数のセグメントが連結されていて地中熱の高い地層に埋設する筒体と、セグメントに装着されていて熱媒を流通させる第一の熱交換器と、筒体に設置されていて筒体の内部空間内の温度差による熱対流で生じる風力によって回転する風車により発電する風力発電装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、地中熱の高い地層の地熱を筒体に装着された第一の熱交換器の熱媒と熱交換して第一の熱交換器の高温の熱媒を回収して採熱すると共に、筒体の内部空間では中央領域と内周面近傍領域との温度差による熱対流により風車を回転させて、風力発電装置で発電することができる。
【0009】
本発明に係る地中熱利用システムは、地中に埋設された地中構造物と、地中構造物の周囲に複数のセグメントが連結されて配設されていて地中熱の高い地層に埋設された筒体と、筒体に装着されていて熱媒を流通させる第一の熱交換器と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、杭や柱等の地中構造物の周囲に複数のセグメントからなる筒体が埋設されて第一の熱交換器が装着されているため、筒体に装着した第一の熱交換器によって地熱を熱交換して採熱すると共に、地中構造物を筒体で補強して耐震性と耐久性を向上できる。
【0010】
本発明に係る地中熱利用システムは、複数のセグメントが連結されていて地中熱の高い地層に埋設された筒体と、セグメントに装着されていて熱媒を流通させる第一の熱交換器と、筒体の内部空間に形成された放水路または換気坑と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、筒体に装着した第一の熱交換器によって地熱を熱交換して採熱すると共に、筒体の内部空間を放水路または換気坑として利用できるため筒体の内部空間を有効利用できる。
【0011】
また、セグメントにはケーシング管が装着され、ケーシング管の内部にU字状に形成された第一の熱交換器が装着されていることが好ましい。
筒体のセグメントにケーシング管が装着されており、このケーシング管にU字状の第一の熱交換器が装着されているため、地中熱の高い地層の地熱を筒体のケーシング管に装着した第一の熱交換器と筒体の内部空間の地中に埋設した第二の熱交換器とで熱交換して採熱することができる。また、第一の熱交換器はケーシング管内に挿入されて保護されるため耐久性が高い。しかも、第一の熱交換器自体はケーシング管に対して交換可能であり、メンテナンス性が高く経済的に優位である。
【0012】
また、セグメントには閉鎖空間を形成するケーシング管が装着され、第一の熱交換器はケーシング管の内部に熱媒を流通させていてもよい。
第一の熱交換器の熱媒はケーシング管内の閉鎖空間に充満された状態で周囲の地中熱の高い地層Tの地熱との間で熱交換され、高温となった熱媒は閉鎖空間内で上方に移動して第一の熱交換器を通して地上に引き上げられて採熱される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る地中熱利用システムによれば、例えば地中に散在し、或いは集中して存在する地中熱の高い地層の地熱を、筒体をなすセグメントに設けた第一の熱交換器と筒体の内部空間に設けた第二の熱交換器によって、広域的に採取して適宜の用途に利用することができる。
【0014】
また、本発明に係る地中熱利用システムは、筒体を形成するセグメントに設けた第一の熱交換器で地熱と熱交換すると共に、筒体の内部空間に設けた風力発電装置、放水路または換気坑によって別の用途に効率的に利用できる。
また、地中構造物の外周側に設けた筒体の熱交換器の熱媒と地熱と熱交換すると共に、筒体によって地中構造物を補強して耐震性と耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態による地中熱利用システムを示すもので、セグメントの筒体を地中熱の高い地層に埋設した説明図である。
図2】セグメントの斜視図である。
図3】筒体の平面図である。
図4】筒体のセグメントに設けたケーシング管に熱交換器を収納した縦断面図である。
図5図4に示すセグメントのケーシング管同士の連結構造を示す要部断面図である。
図6】セグメントのケーシング管に熱交換器を装着した縦断面図である。
図7】セグメントに熱交換器を装着した縦断面図である。
図8】筒体の変形例を示す水平断面図である。
図9】本発明の第二実施形態による地熱利用システムの縦断面図である。
図10図9に示す筒体と熱交換器の水平断面図である。
図11】本発明の第三実施形態による地熱利用システムの縦断面図である。
図12】本発明の第四実施形態による地中熱利用システムの縦断面図である。
図13】本発明の第五実施形態による地中熱利用システムの縦断面図である。
図14】地中熱利用システムに用いる既設地中構造物の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の各実施形態による地中熱利用システムについて添付図面を参照して説明する。
図1乃至図7は本発明の第一実施形態による地中熱利用システム1を示すものである。
この地中熱利用システム1は、図2に示すセグメント2を円板状に連結したセグメントリング3を千鳥組(またはいも継ぎ)で上下方向に例えば4段組付けた筒体4を有している。筒体4は地中に埋設されており、例えば3段目のセグメントリング3が地中熱の高い地層Tに対向している。
図2に示すセグメント2は、略円弧状に形成された一対の主桁板6と、平板状に形成された一対の継手板7と、を備えていて、全体に略四角形で円弧版状に湾曲して形成されている。その外周面(地山側)にスキンプレート8が形成されている。
【0017】
セグメント2の内周面は開放空間とされているが、内周面にもスキンプレート8を配設してもよい。これら主桁板6、継手板7、スキンプレート8とで金属製セグメントの筐体10を構築し、内部は空間とされている。筐体10は高強度で熱交換をスムーズに行うために熱伝導率の良い金属、例えばスチール、アルミ、ステンレス等で形成されている。
セグメント2の筐体10の対向する一対の主桁板6の間には所定間隔で複数のケーシング管12が装着されている。ケーシング管12も熱伝導を行うために例えばスチール、アルミ、ステンレス等の熱伝導率の良い金属で形成されている。ケーシング管12内には後述する管状の熱交換器15が装着可能である。
【0018】
セグメント2の筐体10の対向する主桁板6にはボルト等のリング継手13が配設され、対向する継手板7にはボルト等のセグメント継手14が配設されている。そのため、セグメント2は継手板7同士をセグメント継手14で連結することで、例えば図1及び図3に示すセグメントリング3を構築できる。主桁板6同士をリング継手13で連結することでセグメントリング3同士を上下に連結することができる。
【0019】
図4及び図5は地中熱利用システム1の上下段に連結されたセグメント2のケーシング管12を示すものである。ケーシング管12内には開口を通して管状の熱交換器15が装着されている。熱交換器15は中空の管体が例えば略U字状に湾曲して形成されており、ケーシング管12内に挿入可能である。熱交換器15として、図4に示すシングルUチューブの他に2組のUチューブが交差して配置されたダブルUチューブや3組のUチューブを交差させたトリプルUチューブ等を採用できる。
熱交換器15は例えば鋼管パイプであり、その内部には熱交換用の熱媒が流通している。地熱採取用の熱媒として例えば蒸気、熱水、不凍液、或いはブライン等を用いることができる。熱交換器15内の熱媒は地中熱の高い地層Tにおいて高温の地熱と熱交換される。
【0020】
ケーシング管12は、図5に示すように、一方の端部が主桁板6から突出する凸部からなるほぞ12aを形成し、他方の端部はほぞ12aと嵌合するためのほぞ穴12bを形成している。ケーシング管12の内部には図5に示す管状の熱交換器15が嵌挿可能とされている。
図6に示す例では、セグメント2は上下二段で千鳥組の構成を示している。二段のセグメント2内をケーシング管12が図6に示すようにほぞ12aとほぞ穴12bで連結されて延びている。略U字管状の熱交換器15は熱媒が上下二段(図1に示すように四段でもよい)のセグメント2のケーシング管12内部を循環しており、周囲の地中熱の高い地層Tの地熱を筐体10内のケーシング管12を介して熱交換器15の熱媒と熱交換し、高温の熱媒が回収される。
【0021】
筒体4のセグメントリング3が図1に示すように4段等の多段であれば、ケーシング管12は上下方向に4段のセグメント2内で互いに上下に連結されて連通している。そして、ケーシング管12内に挿入される熱交換器15は4段のケーシング管12内を延びて下端部近傍で略U字状に湾曲して形成されている。ケーシング管12の下端部には下蓋17が設けられていてもよい。
【0022】
図6はケーシング管12と熱交換器15の別の配置構成例を示すものである。
図6において、熱交換器15が第一配管15aと第二配管15bとに分割されている。
しかも、上段のセグメント2のケーシング管12は上端開口に上蓋16を有し、下段のセグメント2のケーシング管12は下端開口に下蓋17を有している。上段のケーシング管12と下段のケーシング管12はほぞ12aとほぞ穴12bとで互いに連結されている。
そのため、上段のケーシング管12と下段のケーシング管12の内部は一体の閉鎖空間20を形成する。
熱交換器15の第一配管15aはケーシング管12の上蓋16を貫通した直後に閉鎖空間20内に開口を有し、第二配管15bは上蓋16を貫通して下方に延びて下蓋17の近傍で閉鎖空間20に開口している。
【0023】
そして、熱交換器15の第二配管15bの開口から比較的低温の熱媒が閉鎖空間20内に放出される。熱媒はケーシング管12内の上蓋16と下蓋17の間の閉鎖空間20に充満された状態で周囲の地中熱の高い地層Tの地熱との間で熱交換される。高温となった熱媒はケーシング管12の閉鎖空間20内で上方に移動して第一配管15aの開口を通して第一配管15a内に流入して地上に引き上げられる。
この配置構成例では、ケーシング管12の閉鎖空間20を熱交換に利用して熱交換器15の第一配管15aと第二配管15bで熱媒を循環できる。
【0024】
図7は熱交換器15の更に別の配置構成例であり、ケーシング管12を備えていない。
この配置構成例では、上下段のセグメント2の上下の主桁板6に貫通孔21が形成され、この貫通孔21内に略U字状の熱交換器15を挿入することができる。この場合、最下段のセグメント2の下側の主桁板6に貫通孔21が形成されないため、熱交換器15内の放熱を抑制することができる。熱交換器15内に充填された熱媒は各セグメント2に装着された状態で内部の空気を介して周囲の地中熱の高い地層Tの地熱との間で熱交換される。
なお、セグメント2の筒体4は円筒状に形成したが、筒体4の構成は円筒状に限定されない。例えば、断面矩形、小判型、楕円形、異形、扁平断面、直線状等、任意の断面形状に構築できる。
【0025】
本実施形態による地中熱利用システム1では、例えば図4に示すように、セグメント2の主桁板6に装着したケーシング管12内に配管状の熱交換器15を装着した構成を採用するものとする。そして、図3に示すように、地盤を掘削して例えば4段のセグメントリング3からなる筒体4が埋設されており、筒体4の4段のセグメントリング3に各セグメント2に装着したケーシング管12を通してU字状の熱交換器15が装着されている。
この状態で、U字状の熱交換器15は下端のセグメント2の下端部の主桁板6の近傍に延びている。地中熱の高い地層Tに接触する筒体4内で熱交換器15内の熱媒は比較的低温の状態で供給され、例えば地中に散在し、或いは集中して存在する地中熱の高い地層Tの地熱と熱交換されて地上に搬送されて採熱される。
【0026】
また、図3に示すように、筒体4の内部空間23には所定間隔で例えばU字状の熱交換器15が直接設置されており、その隙間には土が埋め戻されている。ここで、内部空間23に挿入する熱交換器15は少なくとも地中熱の高い地層Tまで延びていればよい。内部空間23内に埋設された熱交換器15も、地中熱の高い地層Tから筒体4及び埋設された土を伝達された高温の地熱が熱交換器15内の熱媒と熱交換されて地上に搬送されて採熱される。
【0027】
本実施形態による地中熱利用システム1は上述した構成を備えており、次にその施工方法について説明する。
例えば地盤を掘削することで地中熱の高い地層Tを含む地層に略円柱状の立て坑を形成し、その外周側の壁面にセグメント2をセグメント継手14により連結して順次構築してセグメントリング3を構築する。そして、地上に向けて千鳥組またはいも継ぎによりリング継手13とセグメント継手14を用いて順次セグメントリング3を上段に向けて連結して施工し、図1及び図3に示す筒体4を構築する。
各セグメント2にケーシング管12が装着されている場合には、セグメント2の主桁板6同士の連結時にケーシング管12のほぞ12aとほぞ穴12bとを連結する。
【0028】
次に図4に示すように、筒体4の上面に設けたケーシング管12の開口から下方のセグメント2に装着したケーシング管12に向けてU字状の熱交換器15を挿入する。4段のセグメントリング3を構築した筒体4では熱交換器15をケーシング管12の下端の下蓋17近傍まで差し込む。
そして、筒体4の内部空間23内には所定間隔でU字状の熱交換器15を設置して保持し、掘削した土を埋め戻す。これによって、図3に示す地中熱利用システム1を短時間で簡単に構築でき、しかも低コストである。
【0029】
地中熱の高い地層Tの地熱は筒体4の各セグメント2を介してケーシング管12内の熱交換器15内の熱媒と熱交換されて、高温となった熱媒が熱交換器15内を地上に送られて採熱される。また、筒体4の内部空間23内で地中に埋められた熱交換器15は埋め戻された地盤を通して地中熱の高い地層Tの地熱が伝達され、熱交換器15内の熱媒と熱交換されて高温となった熱媒が熱交換器15内を地上に送られて採熱される。
なお、熱交換器15は図6に示すようにケーシング管12内の閉鎖空間20内に熱媒を放出して熱交換後に熱交換器15内に取り出してもよい。或いは、図7に示すように、セグメント2内にケーシング管12を装着せず、貫通孔21を通して直接、熱交換器15を装着してもよい。
【0030】
上述したように、本第一実施形態による地中熱利用システム1によれば、地盤を1か所掘削するだけで埋め込まれた筒体4の各セグメント2に熱交換器15を装着し、更に筒体4の内部空間23に熱交換器15を直接地中に埋め込んでいる。そのため、地中熱利用システム1を1回の掘削で短時間で施工できるため、従来の地中に個別に埋設した熱交換器と比較して、施工が容易で施工コストを大幅に低廉にすることができる。
しかも、地中熱の高い地層Tの地熱を筒体4の熱交換器15とその内部空間23内の地中に埋設した熱交換器15とで熱交換して採熱することができる。
また、熱交換器15はケーシング管12内に挿入されて保護される場合には耐久性が高い。しかも、熱交換器15自体はケーシング管12に対して交換可能であり、メンテナンス性が高く経済的に優位である。
【0031】
以上、本発明の第一実施形態による地中熱利用システム1について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本第一実施形態の変形例や他の実施形態等について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0032】
図8は上述した第一実施形態の変形例による地中熱利用システム1の筒体4Aを示すものである。
図8に示すセグメント2Aは円弧状に湾曲しておらず、平板状に形成されている。しかも、各セグメント2Aは個々に適宜長さに形成されている。このセグメント2Aは水平断面視略L字状に組み合わせて筒状をなす筒体4Aに構築されている。例えば、各セグメント2Aの主桁板6には主桁板6間を連通する貫通孔21が形成され、この貫通孔21内に熱交換器15が嵌挿されて装着されている(図7参照)。筒体4Aが例えば4段のセグメントリング3で構築されている場合には、熱交換器15は最上段の主桁板6から貫通孔21を通して最下段の主桁板6近傍まで延びている。
【0033】
そして、各セグメント2Aはその内部に水平断面視略L字状の内部空間23を構築しており、この内部空間23内に所定間隔で熱交換器15が装着された状態で土が埋め戻されている。なお、熱交換器15を受け入れるセグメント2Aの構成は図4に示すようにケーシング管12を装着してもよいし、図6に示すようにケーシング管12内の閉鎖空間20に熱交換器15の第一配管15a及び第二配管15bを開口させてもよい。
【0034】
次に図9及び図10は本発明の第二実施形態による地中熱利用システム1Aを示すものである。
図9及び図10において、地盤を略円筒状に掘削してセグメント2を例えばいも継ぎで構築してなる筒体4を施工する。筒体4の各セグメント2内にはU字状の熱交換器15が直接貫通孔21内に装着されている。更に、筒体4内の円筒状の内部空間23における対向する位置で、地上側から垂下させた熱交換器15の第一配管15a及び第二配管15bを少なくとも地中熱の高い地層Tの領域まで降下させている。そして、地中熱の高い地層Tのレベルで、筒体4の空間内で熱交換器15の中間配管15cが蛇行して水平方向に配列されており、その両端部が第一配管15a及び第二配管15bにそれぞれ連結されている。
【0035】
そのため、地中熱の高い地層Tの地熱が筒体4の各セグメント2内に配設されたU字状の熱交換器15の熱媒と熱交換されて高温の熱媒が地上に送られて採熱される。また、筒体4の内部空間23では熱交換器15の第二配管15b内を流通する比較的低温の熱媒が、地中熱の高い地層Tと同レベルの中間配管15c内を流通する間に地熱と熱交換され、高温の熱媒が中間配管15cから第一配管15aを流通して地上に送られて採熱される。
【0036】
次に本発明の第三実施形態による地中熱利用システム1Bについて図11により説明する。
図11において、地中に例えば円筒状の筒体4が埋設されており、各セグメント2には上述したように例えばケーシング管12及び熱交換器15または熱交換器15が装着されている。そして、筒体4の内部空間23には熱交換器15や土等は設けられておらず、空間を形成している。そして、この内部空間23は集中豪雨対策用の地下放水路として有効活用されている。内部空間23は鉛直方向に設置されているが、これに代えて、あるいはこれに加えて水平方向に延びる地下放水路としての筒体4の内部空間23を備えていてもよい。
或いは、筒体4の内部空間23は図示しない道路トンネルに接続された換気坑として有効活用してもよい。
【0037】
次に本発明の第四実施形態による地中熱利用システム1Cについて図12により説明する。
図12において、地中に例えば円筒状の筒体4が埋設されており、各セグメント2には上述したようにケーシング管12および熱交換器15または熱交換器15が装着されている。筒体4の内周面は何も設けない内部空間23とされ、熱交換器15や土等は埋設されていない。筒体4の地上に露出する上端部には風車28が設置されている。風車28は風力発電装置29に接続されており、風車28の回転に応じて風力発電するようになっている。
【0038】
筒体4の略円柱状の内部空間23において、上端部には風車28が設置され、下端部は地盤の地層で封止されている。筒体4の内部空間23内において、筒体4の内周面近傍領域S1は地中熱の高い地層Tとセグメント2に装着された熱交換器15との熱交換の影響により比較的高温になるが、内部空間23の中央領域S2は地中熱の高い地層T及び熱交換器15から離間しているため比較的低温とされている。
そのため、筒体4の内部空間23内において、中央領域S2と内周面近傍領域S1との温度差による熱対流が発生する。即ち、内部空間23の中央領域S2では比較的低温の空気が降下し、底部付近では中央領域S2から放射状に外側に流れて筒体4の内周面近傍領域S1を比較的高温の空気となって上昇するという対流現象が生じる。筒体4の内周面近傍領域S1を上昇する比較的高温の空気は筒体4の上端部で風車28を回転させ、風車28の回転を受けて風力発電装置29によって発電を行うことができる。また、筒体4の中央では比較的低温の外気が中央領域S2に降下して流入する。
【0039】
そのため、本第四実施形態による地中熱利用システム1Cによれば、地中熱の高い地層Tに接触する筒体4の各セグメント2に設けた熱交換器15によって地熱と熱交換され、熱交換器15内の高温となった熱媒が地上に送られて採熱される。しかも、筒体4内の内部空間23において、熱対流によって中央領域S2を降下して外側に湾曲して内周面近傍領域S1を上昇する空気の流れにより、風車28を回転させて風力発電装置29で風力発電することができる。
【0040】
次に本発明の第五実施形態による地中熱利用システム1Dについて図13及び図14により説明する。
図13において、地中に例えば杭や柱等の既設地中構造物32が埋設されている。そして、図14に示すように、既設地中構造物32の外周面に、地中熱利用システム1Dを構築する円筒状の筒体4が埋設されている。この筒体4は、複数のセグメント2を周方向及び上下方向にリング継手13及びセグメント継手14を介して連結させて、既設地中構造物32を囲うようにリング状に施工されている。
【0041】
本実施形態において、各セグメント2には例えば主桁板6間にケーシング管12が装着されており、上下方向の各セグメント2間でケーシング管12同士がほぞ12aとほぞ穴12bとによって連結されている。そして、上下方向に連結されたケーシング管12内に熱交換器15を装着することで、本実施形態による地中熱利用システム1Dが構築されている。
なお、地中構造物は先に埋設された既設地中構造物32に限定されるものではなく、筒体4と共に新設施工して埋設する地中構造物でもよい。
【0042】
本実施形態による地中熱利用システム1Dでは、地中に埋設された既設地中構造物32の周囲を筒体4からなる地中熱利用システム1Dで囲うことによって地中熱の高い地層Tの地熱を熱交換器15の熱媒と熱交換して採熱し利用できる。
既設地中構造物32の周囲に地中熱利用システム1Dを設けたことによって、既設地中構造物32の補強効果が得られ、既設地中構造物32の耐用年数と耐震性が向上する。しかも、既設地中構造物32が老朽化した設備である場合には、地中熱利用システム1Dによって一層の補強効果と耐用年数及び耐震性の向上が図れる。
【0043】
なお、上述した地中熱利用システム1において、筒体4の内部空間23内に熱交換器15を設置すると共に土で埋設するようにしたが、土で埋設しなくてもよく、熱交換器15の周囲に空気が充填されていてもよい。
また、筒体4の各セグメント2に装着された熱交換器15は第一の熱交換器に含まれ、内部空間23内に配設された熱交換器15は第二の熱交換器に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1、1A、1B、1C 地中熱利用システム
2、2A セグメント
3 セグメントリング
4、4A 筒体
6 主桁板
7 継手板
12 ケーシング管
15 熱交換器
15a 第一配管
15b 第二配管
15c 中間配管
16 上蓋
17 下蓋
20 閉鎖空間
23 内部空間
28 風車
29 風力発電装置
32 既設地中構造物
S1 内周面近傍領域
S2 中央領域
T 地中熱の高い地層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14