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特許7149387電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法
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  • 特許-電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法 図1
  • 特許-電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20220929BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02J3/14 130
H02J3/00 170
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021126935
(22)【出願日】2021-08-02
(65)【公開番号】P2022028108
(43)【公開日】2022-02-15
【審査請求日】2021-10-18
(31)【優先権主張番号】202010764337.5
(32)【優先日】2020-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521340953
【氏名又は名称】上海千貫節能科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】800 Dongchuan Rd.,Minhang District,Shanghai,200240,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】何光宇
(72)【発明者】
【氏名】肖居承
(72)【発明者】
【氏名】范帥
(72)【発明者】
【氏名】周歡
(72)【発明者】
【氏名】何果紅
(72)【発明者】
【氏名】李川江
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-106028(JP,A)
【文献】特開2007-129859(JP,A)
【文献】特表2014-521303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力システムの事故が発生した場合、電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、最初に第1段階の応答を実行し、ミリ秒レベルの周波数最低点制御を完了し、この方法により、有効電力不足の一部が回復するステップS1と、
第1段階の応答が終了した後、この電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、第1段階の周波数制御偏差をリアルタイムで検知すると同時に、第2段階の応答を開始し、周波数応答パラメータの自己適応化校正を実行し、それによって負荷周波数がプリセット周波数値の近くに回復するステップS2と、
電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、後続の周波数調整タスクを実行するステップS3と、を含むことを特徴とする電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法。
【請求項2】
前記電気機器レベルの負荷周波数制御システムには、電気機器レベルのスマートソケット、ローカル側のエネルギー情報ゲートウェイ、およびクラウドプラットフォームが含まれ、
前記電気機器レベルドのスマートソケットには、周波数などの電気情報の収集と報告、独立した分析と計算、ゲートウェイのパラメータと命令の受信、電気開閉制御などの機能があり、
前記ローカル側のエネルギー情報ゲートウェイの役割は、管轄区域内のすべてのスマートソケットを管理し、区域の電気データを整理、分析、報告し、監視センターから指示を受け取り、必要なパラメータと指示をスマートソケットに送信することであり、
前記クラウドプラットフォームの役割は、発電側とグリッド側とのリアルタイムの情報相互作用を行い、電力消費側のデータを発電所と電力網会社にフィードバックし、発電側・グリッド側の重要なシステムパラメータをゲートウェイへフィードバックすることであることを特徴とする請求項1に記載の電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法。
【請求項3】
S2では、周波数応答パラメータの自己適応化校正を実行するときに、主にHcor、TRcor及びPcorの3つの主要なシステム周波数応答パラメータを校正することにより、周波数制御偏差の検知を実現し、この3つの値は、キャリブレーションモデルを介して計算でき、キャリブレーションモデルは以下の通りであり、
【数5】
ここで、Δωは回転速度の増分、その大きさは時間とともに変化する変化値、eは周波数の二乗平均平方根誤差であり、HcorとTRcorはそれぞれパラメータHとTの校正値、Hは慣性定数、Tは再熱時定数、Pcorはリアルタイム有効電力不足の校正値、fは第2段階のスライディングタイムウィンドウでのリアルタイム周波数監視曲線、tstartとtendはそれぞれスライディングタイムウィンドウの周波数開始時間と終了時間、Tはスライディングタイムウィンドウの長さ、ΩとΩは、それぞれパラメータHcorとTRcorの可能な値の集合であり、
uminとPumaxは、それぞれ不確実性によって引き起こされる可能性のある最小および最大の有効電力偏差であり、ディスパッチセンターによって提供でき、PICRは、第1段階の応答量であり、第2段階が実行されるとき、PICRは既知の量であることを特徴とする請求項2に記載の電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法。
【請求項4】
cor、TRcor、Pcor、mine及びPALRを取得した後、電気機器レベルの負荷周波数制御システムが校正値に従って応答校正を開始することを特徴とする請求項3に記載の電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法。
【請求項5】
システム周波数応答モデルは、電力ショック下での電力システムの周波数変化特性を記述するために使用され、システム周波数応答モデルでは、システム入力は障害電力であり、その符号は、発電側の電力増加に対して正であることを特徴とする請求項4に記載の電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法。
【請求項6】
システム周波数応答モデルに基づいて、速度増分Δωの計算式を設計し、まず、tを時間、f(t)をリアルタイム周波数、fを初期周波数、fを定格周波数とし、Pをステップ関数として考える場合、つまり、P(t)=Pstepu(t)、ここでu(t)は単位ステップ関数、Pstepはシステム電力不足である場合、速度増分Δωの計算式は以下の通りであり、
【数6】
ここで、Fは高圧タービンの総出力のパーセンテージ、Dは減衰係数、Kは機械的パワーゲイン係数、Rはガバナパラメータを表し、残りのパラメータはすべて、前述のパラメータから計算でき、中間パラメータに属することを特徴とする請求項5に記載の電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムの技術分野、特に電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの設備の割合の増加に伴って、電力システムの慣性が減少し、周波数リスクが大幅に増加する。ソースと負荷の二重の不確実性により、システム周波数制御の難しさがより一層に増加し、システムのセキュリティは大きな課題に直面し、現在では、強力なロバスト性と高精度を備えたシステム周波数の適応制御方法が緊急に必要とされている。
【0003】
従来の電力システムの周波数の自己適応化制御方法には、主に以下の欠点がある。(1)フィーダーレベル・バスバーレベルで測定検知と適応制御を行う場合、電気機器レベル・機器レベル・ソケットレベルに到達できず、精密化とインテリジェント化の程度が不十分である。(2)主にソース負荷の不確実性に対して数学的モデリングを行って自己適応化制御を実現し、周波数変化を直接検知して迅速に自己適応化校正を行うことはできない。一般的な周波数制御シナリオへの適用は難しく、実用性も不十分である。
【0004】
この目的のために、本発明は、電力システムにおける事故後の周波数回復制御のための電気機器レベルの負荷への自己適応化校正応答方法を確立する。周波数回復過程でのソース負荷などの不確実性の影響に直面し、電気機器レベルの制御機能を備えたスマートソケットを介して周波数制御の偏差を検知し、それによって周波数応答パラメータの適応校正を実行できる。そして最後に、秒レベルで電気機器レベルの負荷への自己適応化校正応答を実現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するために、電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0007】
電力システムの事故が発生した場合、電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、最初に第1段階の応答を実行し、ミリ秒レベルの周波数最低点制御を完了し、この方法により、有効電力不足の一部が回復するステップS1と、
第1段階の応答が終了した後、この電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、第1段階の周波数制御偏差をリアルタイムで検知すると同時に、第2段階の応答を開始し、周波数応答パラメータの適応校正を実行し、それによって負荷周波数がプリセット周波数値の近くに回復するステップS2と、
電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、後続の周波数調整タスクを実行するステップS3と、を含む、電気機器レベルの負荷周波数制御システムの負荷への自己適応化校正応答方法。
【0008】
ここで、前記電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、電気機器レベルのスマートソケット、ローカル側のエネルギー情報ゲートウェイ、およびクラウドプラットフォームを含み、
前記電気機器レベルドのスマートソケットには、周波数などの電気情報の収集と報告、独立した分析と計算、ゲートウェイのパラメータと命令の受信、電気開閉制御などの機能があり、前記ローカル側のエネルギー情報ゲートウェイの役割は、管轄区域内のすべてのスマートソケットを管理し、区域の電気データを整理、分析、報告し、監視センターから指示を受け取り、必要なパラメータと指示をスマートソケットに送信することであり、
前記クラウドプラットフォームの役割は、発電側とグリッド側とのリアルタイムの情報相互作用を行い、電力消費側のデータを発電所と電力網会社にフィードバックし、発電側・グリッド側の重要なシステムパラメータをゲートウェイへフィードバックすることである。
【0009】
ここで、S2では、周波数応答パラメータの自己適応化校正を実行するときに、主にHcor、TRcor及びPcorの3つの主要なシステム周波数応答パラメータを校正することにより、周波数制御偏差の検知を実現する。この3つの値は、キャリブレーションモデルを介して計算でき、キャリブレーションモデルは以下の通りである。
【数1】
ここで、Δωは回転速度の増分、その大きさは時間とともに変化する変化値、eは周波数の二乗平均平方根誤差であり、HcorとTRcorはそれぞれパラメータHとTの校正値、Hは慣性定数、Tは再熱時定数、Pcorはリアルタイム有効電力不足の校正値、fは第2段階のスライディングタイムウィンドウでのリアルタイム周波数監視曲線、tstartとtendはそれぞれスライディングタイムウィンドウの周波数開始時間と終了時間、Tはスライディングタイムウィンドウの長さ、ΩとΩは、それぞれパラメータHcorとTRcorの可能な値の集合である。
uminとPumaxは、それぞれ不確実性によって引き起こされる可能性のある最小および最大の有効電力偏差であり、ディスパッチセンターによって提供でき、PICRは、第1段階の応答量であり、第2段階が実行されるとき、PICRは既知の量である。
【0010】
さらに、システム周波数応答モデルから、定常状態の周波数fssの式は以下の通りとなる。
【数2】
cor、TRcor、Pcor、mine及びPALRを取得した後、電気機器レベルの負荷周波数制御システムが校正値に従って応答校正を開始する。
【0011】
ここで、システム周波数応答モデルは、電力ショック下での電力システムの周波数変化特性を記述するために使用され、システム周波数応答モデルでは、システム入力は障害電力であり、その符号は、発電側の電力増加に対して正である。
【0012】
ここで、システム周波数応答モデルに基づいて、式(1)の速度増分Δωを設計し、まず、tを時間、f(t)をリアルタイム周波数、fを初期周波数、fを定格周波数としてマークし、Pをステップ関数として考える場合、つまり、P(t)=Pstepu(t)、ここでu(t)は単位ステップ関数、Pstepはシステム電力不足である場合、速度増分Δωは以下の通りである。
【数3】
ここで、α、ω、φ等は以下の通りである。
【数4】
ここで、Fは高圧タービンの総出力のパーセンテージ、Dは減衰係数、Kは機械的パワーゲイン係数、Rはガバナパラメータを表し、残りのパラメータはすべて、前述のパラメータから計算でき、中間パラメータに属する。
【発明の効果】
【0013】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下のとおりである。電力システムにおける大規模な電力損失事故に直面した場合、本発明は、ソケットレベルで初期段階の応答誤差および全体的な有効電力不足偏差を適応的に検知し、周波数応答パラメータを自己適応的に校正し、秒レベルで電気機器レベルの負荷への自己適応化校正応答を実現し、電力システムの周波数制御の精度とロバスト性を向上させ、システムの安全性を向上させるのに役立つ。これは、優れた実際のプロモーションとアプリケーションの価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下では、実施例の説明で使用される図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明の図面は、本発明のいくつかの実施例にすぎない。当業者にとって、創造的な仕事なしで、他の図面はこれらの図面から得ることができる。
【0015】
図1図1は、本発明の電気機器レベルの負荷周波数制御システムの模式図である。
図2図2は、本発明のシステムの周波数応答モデルの模式図である。
図3図3は、本発明の実施例における自己適応化校正応答前後の周波数制御結果の比較図である。
図4図4は、本発明の実施例における自己適応化パラメータ校正の結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施例における添付の図面を参照しながら本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施例は、すべての実施例ではなく、本発明の実施例の一部にすぎない。本発明の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0017】
本発明は、1種類の技術的解決手段を提供する:この制御システムは、表1において以下のパラメータを提供する。
【0018】
表1:システム周波数応答パラメータ
【表1】
【0019】
上記のパラメータを式(5)に代入すると、各パラメータの計算値は次のようになる。
【0020】
システム事故について、508MWユニットがt=1sで突然動作を終了するように設定され、Pstep=508MW、f=60Hz、電気機器レベルの負荷周波数制御システムは、すぐに第1段階の応答(t=1.8s)を実行し、応答量はPICR=221.7MWである。同時に、極端なシナリオでの不確実性のために、-71.4MWの応答偏差が発生する。第2段階では、t=1.8sから、周波数偏差の検知と校正を開始する。
【0021】
適応校正応答に関連するパラメータ設定:Ωの値の範囲は[25,35]、Hcorのトラバーサルステップ長は0.1、Ωの値の範囲は[15,25]、TRcorのトラバーサルステップ長は0.1である。
uminとPumaxはそれぞれ-100MWと100MW、Pcorトラバースステップ長は1MWである。
【0022】
7秒以内の自己適応化周波数校正プロセスを例にとると、tstartとtendはそれぞれ1.8秒と8.8秒であり、スライド時間ウィンドウの長さはT=7秒であり、f図3の「初期応答段階」曲線のtstartとtendとの間の周波数曲線である。上記のパラメータに基づいて、最初にエルゴード法を使用して式(1)を解くと、Hcor=29.6、TRcor=23.4、Pcor=358.6MW、mine=0.078Hzが得られる。
最後に、式(4)から、第2段階の実際の応答量(適応応答量)PALRは194.7MWである。計算には一定の時間がかかるため(この場合、測定された計算には約1.6秒かかる)、最終的に第2段階の応答の応答遅延は8.8s-1.8s+1.6s=8.6sになる。
【0023】
任意のタイミングで開始する自己適応化校正応答プロセスの場合、上記プロセスに従ってパラメータ条件を式(1-5)に代入して、リアルタイムの自己適応化パラメータ校正結果を取得でき、図4の表2に示すように、図4の表2の最大および最小の適応応答容量を、校正前の容量と比較し、図3に示すように、校正された定常状態周波数は59.8Hzの定常状態目標に近いことがわかる。上記のことから、この特許によって提案された方法によると、精度とロバスト性を有する負荷周波数制御を提供できることを示している。
【0024】
本明細書の説明において、「一つの実施例」、「例」、「具体的な例」などの用語を参照する説明は、この実施例または例と組み合わせて説明される特定の特徴、構造、材料または特性が本発明の少なくとも一つの実施例または例に含まれることを意味する。本明細書では、上記の用語の模式説明は、必ずしも同じ実施例または例を指すとは限らない。さらに、記載された特定の特徴、構造、材料、または特性は、任意の1つまたは複数の実施例または例において適切な方法で組み合わせることができる。
【0025】
上に開示された本発明のさらなる実施例は、本発明を解明するのを助けるためにのみ使用される。さらなる実施例は、すべての詳細を詳細に説明するわけではなく、また、本発明を記載された発明を実施するための形態のみに限定するものでもない。明らかに、この明細書の内容によれば、多くの修正や変更を加えることができる。本明細書は、当業者が本発明を十分に理解して使用できるように、本発明の原理および実際の用途をよりよく説明するために、これらの実施例を選択し、具体的に説明する。本発明は、特許請求の範囲およびそれらの全範囲および同等物によってのみ制限される。
図1
図2
図3
図4