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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】改質システム
(51)【国際特許分類】
   C10L 3/08 20060101AFI20220929BHJP
   C10L 3/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C10L3/08
C10L3/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021133316
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】平馬 弘章
(72)【発明者】
【氏名】小林 和之
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅史
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-67397(JP,A)
【文献】特開昭55-65798(JP,A)
【文献】特開2017-137978(JP,A)
【文献】特開2010-186620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 3/00
F17C 7/00,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化石油ガスの貯蔵タンク内に発生するボイルオフガスに含まれる硫黄成分を除去する除去装置と、
上記除去装置により上記硫黄成分が除去される前の上記ボイルオフガスまたは上記除去装置により上記硫黄成分が除去された上記ボイルオフガスを加熱する第1加熱装置と、
上記除去装置により上記硫黄成分が除去されると共に上記第1加熱装置により加熱された上記ボイルオフガスと、水蒸気との混合ガスを昇圧する第1昇圧装置と、
上記第1昇圧装置により昇圧された上記混合ガスと、上記貯蔵タンクからの上記液化石油ガスとを原料にして、メタンと水素とを含む改質ガスに変換する改質装置と
を備える、改質システム。
【請求項2】
請求項1に記載の改質システムにおいて、
上記改質装置からの上記改質ガスの熱を利用して上記ボイルオフガスを加熱する第2加熱装置を備える、改質システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の改質システムにおいて、
上記貯蔵タンクからの上記液化石油ガスを昇圧して上記改質装置に供給する第2昇圧装置と、
上記第2昇圧装置により昇圧された上記液化石油ガスの熱を利用して上記ボイルオフガスを加熱する第3加熱装置と
を備える、改質システム。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1つに記載の改質システムにおいて、
上記貯蔵タンクからの上記ボイルオフガスを昇圧して、上記除去装置に供給する第3昇圧装置を備える、改質システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、改質システムに関し、液化石油ガス(LPG)をメタンと水素とを含む改質ガスに変換する改質システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、改質システムとしては、液化石油ガス(LPG)を改質してメタン濃度を高くした燃料ガスをエンジンに供給するものがある(例えば、特開2019-74053号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
上記改質システムでは、LPG貯蔵タンクに貯蔵されているLPGは温度を下げて気液平衡状態としているが、断熱構造のLPG貯蔵タンク内のLPGに自然入熱等が作用することでボイルオフガス(BOG)が発生して、LPG貯蔵タンク内に充満する。このようなLPG貯蔵タンク内に発生したBOGを再液化装置により液化させて再びLPG貯蔵タンクに戻す技術がある(例えば、特開2010-13594号公報(特許文献2)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-74053号公報
【文献】特開2010-13594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記改質システムは、内航のLPG燃料船へ搭載される場合、改質システム圧は8bar~9bar程度であった。そのような改質システムの技術を外航のLPG燃料船へ適用することを考えた場合、システムが大型化して再液化装置などの種々のエネルギー損失が増大するという問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、エネルギー消費を低減できる改質システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一態様に係る改質システムは、
液化石油ガスの貯蔵タンク内に発生するボイルオフガスに含まれる硫黄成分を除去する除去装置と、
上記除去装置により上記硫黄成分が除去される前の上記ボイルオフガスまたは上記除去装置により上記硫黄成分が除去された上記ボイルオフガスを加熱する第1加熱装置と、
上記除去装置により上記硫黄成分が除去されると共に上記第1加熱装置により加熱された上記ボイルオフガスと、水蒸気との混合ガスを昇圧する第1昇圧装置と、
上記第1昇圧装置により昇圧された上記混合ガスと、上記貯蔵タンクからの上記液化石油ガスとを原料にして、メタンと水素とを含む改質ガスに変換する改質装置と
を備える。
【0008】
上記構成によれば、液化石油ガスの貯蔵タンク内に発生するボイルオフガスに含まれる硫黄成分を除去装置により除去し、硫黄成分が除去されたボイルオフガスを第1加熱装置により加熱する(または、液化石油ガスの貯蔵タンク内に発生するボイルオフガスを第1加熱装置により加熱し、加熱されたボイルオフガスに含まれる硫黄成分を除去装置により除去する)。次に、第1加熱装置により加熱されたボイルオフガスと水蒸気との混合ガスを第1昇圧装置により昇圧し、昇圧された混合ガスと、貯蔵タンクからの液化石油ガスとを原料にして、改質装置によりメタンと水素とを含む改質ガスに変換する。これによって、ボイルオフガスと液化石油ガスとを原料にしてメタンと水素とを含む改質ガスを生成でき、生成された改質ガスをエンジンの燃料として利用できる。このように、再液化装置を用いることなくボイルオフガスを有効活用することで、システム全体のエネルギー消費を低減できる。また、改質装置に供給する原料を予め第1昇圧装置により昇圧することにより、改質装置の出口側で燃料供給圧まで改質ガスを昇圧する昇圧装置が必要なくなるので、システムを小型化できる。
【0009】
また、一実施形態の改質システムでは、
上記改質装置からの上記改質ガスの熱を利用して上記ボイルオフガスを加熱する第2加熱装置を備える。
【0010】
上記実施形態によれば、第1加熱装置によりボイルオフガスを加熱する前に、改質装置からの改質ガスの熱を利用して第2加熱装置によりボイルオフガスを加熱することによって、第1加熱装置の加熱量を低減でき、システム全体のエネルギー消費をより低減できる。
【0011】
また、一実施形態の改質システムでは、
上記貯蔵タンクからの上記液化石油ガスを昇圧して上記改質装置に供給する第2昇圧装置と、
上記第2昇圧装置により昇圧された上記液化石油ガスの熱を利用して上記ボイルオフガスを加熱する第3加熱装置と
を備える。
【0012】
上記実施形態によれば、貯蔵タンクからの液化石油ガスを第2昇圧装置により昇圧し、昇圧された液化石油ガスの熱を利用して第3加熱装置によりボイルオフガスを加熱することによって、第1加熱装置の加熱量を低減でき、システム全体のエネルギー消費をより低減できる。
【0013】
また、一実施形態の改質システムでは、
上記貯蔵タンクからの上記ボイルオフガスを昇圧して、上記除去装置に供給する第3昇圧装置を備える。
【0014】
上記実施形態によれば、貯蔵タンクからのボイルオフガスを第3昇圧装置により昇圧して、昇圧されたボイルオフガスを除去装置に供給することによって、第1昇圧装置の入口側で水蒸気と混合可能な圧力までボイルオフガスを予め昇圧することができる。ここで、エンジンの排ガスの熱を利用して生成された高圧水蒸気またはボイラーにより生成された高圧水蒸気が用いられる場合に、高圧水蒸気と混合するためにボイルオフガスを予め昇圧しておく必要がある。
【発明の効果】
【0015】
以上より明らかなように、この発明によれば、再液化装置を用いることなくボイルオフガスを有効活用することで、エネルギー消費を低減できる改質システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の一形態の改質システムの構成図である。
図2】上記改質システムの改質装置の構成図である。
図3】比較例の改質システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の改質システムを図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の一形態の改質システム1の構成図である。この改質システム1は、プロパンCやブタンC10などを主成分とするLPG(液化石油ガス)を改質してメタンリッチガスを生成する。この実施形態の改質システム1は、LPG運搬船へ搭載される。
【0019】
<改質システムの構成>
この実施形態の改質システム1は、図1に示すように、ポンプP1と、サービスタンクT2と、気化器10と、第1熱交換器11と、ポンプP2と、第2熱交換器12と、硫黄除去装置13と、ヒータ14と、ブースターポンプP3と、改質装置20と、バッファタンクT3とを備えている。
【0020】
LPG貯蔵タンクT1からのLPG(液体)をポンプP1により昇圧する。ポンプP1からのLPG(液体)をサービスタンクT2に貯める。サービスタンクT2からのLPG(液体)を気化器10により気化させる。第1熱交換器11は、LPG貯蔵タンクT1からのBOG(ボイルオフガス)と気化器10からのLPG(気体)との間で熱交換を行う。第1熱交換器11で加熱されたBOGをポンプP2により昇圧する。第2熱交換器12は、ポンプP2からのBOGと改質装置20からの改質ガスとの間で熱交換を行う。第2熱交換器12で加熱されたBOGに含まれる硫黄成分を硫黄除去装置13により除去する。硫黄除去装置13により硫黄成分が除去されたBOGをヒータ14により加熱する。ヒータ14により加熱されたBOGと高圧水蒸気との混合ガスをブースターポンプP3により昇圧する。第1熱交換器11からのLPG(気体)とブースターポンプP3からの混合ガスとを原料にして、改質装置20によりメタンCHと水素Hとを含む改質ガスに変換する。バッファタンクT3は、改質装置20からの改質ガスを貯える。
【0021】
ヒータ14は第1加熱装置の一例であり、第2熱交換器12は第2加熱装置の一例であり、第1熱交換器11は第3加熱装置の一例である。また、ブースターポンプP3は第1昇圧装置の一例であり、ポンプP1は第2昇圧装置の一例であり、ポンプP2は第3昇圧装置の一例である。また、硫黄除去装置13は除去装置の一例である。
【0022】
なお、ブースターポンプP3は、LPG運搬船に既設のBOG用の再液化装置のポンプ機能を用いてもよい。これにより、従来、BOGをLPG貯蔵タンクに戻すのに消費していたエネルギーを、BOGと高圧水蒸気との混合ガスの昇圧に利用することができる。
【0023】
上記バッファタンクT3からの改質ガスは、主エンジンEG1に燃料として供給されると共に、発電用エンジンEG2,EG3に燃料として供給される。また、改質システム1に供給する高圧水蒸気は、主エンジンEG1の排ガスの熱を利用する排ガスエコノマイザー30により生成する。
【0024】
また、改質装置20からの水は、水タンクT4に貯えられる。この水タンクT4の水は、水蒸気を生成するための水として排ガスエコノマイザー30に供給される。
【0025】
<改質装置の構成>
改質装置20は、図2に示すように、開閉弁V1と、熱交換器21と、加熱器22と、脱硫器23と、熱交換器24と、加熱器25と、改質器26とを備えている。
【0026】
第1熱交換器11からのLPG(気体)の供給を開閉弁V1により制御する。熱交換器21は、開閉弁V1を介して供給されたLPG(気体)と改質ガスとの間で熱交換を行う。熱交換器21で加熱されたLPG(気体)を加熱器22により加熱する。加熱器22により加熱されたLPG(気体)に含まれる硫黄成分を脱硫器23により除去する。熱交換器24は、第2の混合ガスと改質ガスとの間で熱交換を行う。熱交換器24で加熱された第2の混合ガスを加熱器25により加熱する。改質器26は、熱交換器24と加熱器25により加熱された第2の混合ガスをメタンCHと水素Hとを含む改質ガスに変換する。ここで、第2の混合ガスとは、脱硫器23からの硫黄成分を除去されたLPG(気体)とブースターポンプP3からの混合ガス(BOGと水蒸気とを含む)とを混合したものである。
【0027】
改質器26は、LPG(気体)とBOGと水蒸気とを原料にして、改質触媒(ニッケルNi、ルテニウムRuなど)を利用したメタン化反応によりメタンCHを主成分とする改質ガスに変換する。
【0028】
改質器26からの改質ガスは、熱交換器24と熱交換器21とを介して第2熱交換器12(第2加熱装置)に供給されてBOGと熱交換され、BOGの加熱に利用される。
【0029】
また、改質装置20は、第2熱交換器12からの改質ガスと冷却水供給源(図示せず)からの水との間で熱交換する熱交換器27と、熱交換器27で冷却された改質ガスを貯えるタンク28と、タンク28からの改質ガスの供給を制御する開閉弁V2と、タンク28からの改質ガスの循環を制御する開閉弁V3と、タンク28から開閉弁V3を介して供給される改質ガスを、開閉弁V1を介して供給されるLPG(気体)に混合させるための循環ブロワ29とを備えている。タンク28からの改質ガスは、開閉弁V2を介してバッファタンクT3(図1に示す)に供給される。また、タンク28は、熱交換器27で冷却された改質ガスに含まれる水を分離して水タンクT4(図1に示す)に回収される。
【0030】
なお、改質装置20の構成は、図2に示す構成に限らず、LPGを原料にしてメタンCHと水素Hとを含む改質ガスに変換する他の構成の改質装置を用いてもよい。
【0031】
この実施形態の改質システム1の各部の圧力や温度は、一例として次のとおりである。
LPG貯蔵タンクT1からのBOGの温度:10℃~20℃
ポンプP2により昇圧されたBOGの圧力:4bar
サービスタンクT2内の圧力:18bar
気化器10の出口側のLPG(気体)の温度:100℃
第1熱交換器11から改質装置20に供給されるLPG(気体)の温度:60℃
排ガスエコノマイザー30からの水蒸気の圧力,温度:4bar、165℃
ブースターポンプP3からの混合ガスの圧力:最大18bar
改質装置20から第2熱交換器12に供給される改質ガスの温度:150℃~200℃
改質装置20からバッファタンクT3に供給される改質ガスの圧力:15bar
【0032】
上記構成の改質システム1では、LPG貯蔵タンクT1内に発生するBOGに含まれる硫黄成分を硫黄除去装置13により除去し、硫黄成分が除去されたBOGをヒータ14(第1加熱装置)により加熱する。次に、ヒータ14により加熱されたBOGと高圧水蒸気との混合ガスをブースターポンプP3(第1昇圧装置)により昇圧し、昇圧された混合ガスと、LPG貯蔵タンクT1からのLPGとを原料にして、改質装置20によりメタンCHと水素Hとを含む改質ガスに変換する。なお、LPG貯蔵タンクT1内に発生するBOGをヒータ14により加熱した後、加熱されたBOGに含まれる硫黄成分を硫黄除去装置13により除去してもよい。
【0033】
上記改質システム1によれば、LPGとBOGとを原料にしてメタンCHと水素Hとを含む改質ガスを生成でき、生成された改質ガスを主エンジンEG1および発電用エンジンEG2,EG3の燃料として利用できる。これにより、再液化装置を用いることなくBOGを有効活用することで、システム全体のエネルギー消費を低減できる。
【0034】
また、LPGは、主成分であるプロパンCやブタンC10により、エンジンがノッキング(異常燃焼)を起こしやすいため、船舶機関の主流である希薄燃焼方式のガスエンジンの燃料として直接使用することはできないが、この改質システム1によりLPGから変換されたメタンCHと水素Hを含む改質ガスを、希薄燃焼方式のガスエンジンの燃料として利用することができる。これにより、ノッキングを抑制しつつエンジン効率を向上できる。
【0035】
また、上記改質システム1では、改質装置20に供給する原料を予めブースターポンプP3(第1昇圧装置)により昇圧することにより、改質装置20の出口側で主エンジンEG1などの燃料供給圧まで改質ガスを昇圧する昇圧装置が必要なくなるので、システムを小型化できる。
【0036】
また、ヒータ14によりBOGを加熱する前に、改質装置20からの改質ガスの熱を利用して第2熱交換器12(第2加熱装置)によりBOGを加熱することによって、ヒータ14の加熱量を低減でき、システム全体のエネルギー消費をより低減できる。
【0037】
また、LPG貯蔵タンクT1からのLPGをポンプP1(第2昇圧装置)により昇圧し、昇圧されたLPGの熱を利用して第1熱交換器11(第3加熱装置)によりBOGを加熱することによって、ヒータ14の加熱量を低減でき、システム全体のエネルギー消費をより低減できる。
【0038】
また、LPG貯蔵タンクT1からのBOGをポンプP2(第3昇圧装置)により昇圧して、昇圧されたBOGを硫黄除去装置13に供給することによって、ブースターポンプP3の入口側で水蒸気と混合可能な圧力までBOGを予め昇圧することができる。ここで、主エンジンEG1の排ガスの熱を利用して排ガスエコノマイザー30で生成された高圧水蒸気と混合するため、BOGを高圧水蒸気の圧力程度に予め昇圧しておく必要がある。
【0039】
また、改質装置20は、従来よりも原料の供給圧力を高くすることにより改質反応が促進されるので、小型化が図れる。
【0040】
<比較例>
図3は、比較例の改質システム101の構成図を示している。この比較例の改質システム101は、LPG貯蔵タンクT1からのBOGを液化する再液化装置40とガス昇圧システム50とガス冷却器60とボイラー70とを備える点と、第1,第2熱交換器11,12とポンプP2と硫黄除去装置13とヒータ14とブースターポンプP3がない点で図1に示す改質システム1と相違する。なお、図3に示す改質システム101は、比較のために説明するためのものであって、本発明の改質システムではない。
【0041】
上記改質システム101では、LPG貯蔵タンクT1で発生したBOGを、再液化装置40を用いて液化して貯蔵タンクT1に戻している。
【0042】
また、改質装置20からの改質ガスの圧力が例えば8barと低いため、ガス昇圧システム50により昇圧(例えば15bar)し、昇圧された改質ガスをガス冷却器60により冷却してバッファタンクT3に貯める。
【0043】
また、排ガスエコノマイザー30から改質装置20に供給される高圧水蒸気の圧力を例えば9.5barとした場合、排ガスエコノマイザー30での高圧水蒸気の生成量が低下する。このため、排ガスエコノマイザー30だけでは十分な量の高圧水蒸気が得られないので、ボイラー70を用いて高圧水蒸気を補っている。
【0044】
このように比較例の改質システム101では、再液化装置40によりエネルギー消費が増える(例えば300kW)。また、ガス昇圧システム50によりエネルギー消費が増える(例えば200kW~300kW)。さらに、ボイラー70の運転に燃料が必要なため、ボイラー70によるエネルギー消費も増える(例えば300kW~400kW)。
【0045】
ところで、この改質システム101において、ポンプP1を使用して、上流の原料送出圧力を単純に高圧化(16bar~18bar)させることで、ガス昇圧システム50を省いた改質システムを構成することが考えられる。この場合、改質装置20に供給されるLPGの圧力に合わせて高圧水蒸気の圧力を例えば9.5barとすると、排ガスエコノマイザー30の高圧水蒸気の生成量が低下するため、逆にボイラー70でのエネルギー消費が増える(例えば800kW)。このため、ボイラー70の運転コストが跳ね上がり、エネルギー消費の改善が見込めない。
【0046】
これに対して、この発明の実施の形態の改質システム1では、BOGとLPGとを原料にしてメタンCHと水素Hとを含む改質ガスを生成でき、再液化装置を用いてBOGをLPG貯蔵タンクT1に回収することなく、主エンジンEG1および発電用エンジンEG2,EG3の燃料としてBOGを有効に活用して、システム全体のエネルギー消費を低減できる。
【0047】
上記実施形態では、LPG運搬船へ搭載された改質システム1について説明したが、LPG運搬船に限らず、メタンCHと水素Hなどを燃料とするエンジンを備えた他のシステムに本発明の改質システムを適用してもよい。
【0048】
この発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…改質システム
10…気化器
11…第1熱交換器(第3加熱装置)
12…第2熱交換器(第2加熱装置)
13…硫黄除去装置
14…ヒータ(第1加熱装置)
20…改質装置
30…排ガスエコノマイザー
EG1…主エンジン
EG2,EG3…発電用エンジン
P1…ポンプ(第2昇圧装置)
P2…ポンプ(第3昇圧装置)
P3…ブースターポンプ(第1昇圧装置)
T1…LPG貯蔵タンク
T2…サービスタンク
T3…バッファタンク
T4…水タンク
V1,V2,V3…開閉弁
21,24,27…熱交換器
22,25…加熱器
23…脱硫器
26…改質器
28…タンク
29…循環ブロワ
【要約】
【課題】エネルギー消費を低減できる改質システムを提供する。
【解決手段】改質システム1は、LPG(液化石油ガス)貯蔵タンクT1内に発生するBOG(ボイルオフガス)に含まれる硫黄成分を除去する硫黄除去装置13と、硫黄除去装置13により硫黄成分が除去される前のBOGを加熱するヒータ14(第1加熱装置)と、硫黄除去装置13により硫黄成分が除去されると共に、ヒータ14により加熱されたBOGと水蒸気との混合ガスを昇圧するブースターポンプP3(第1昇圧装置)と、ブースターポンプP3により昇圧された混合ガスと、LPG貯蔵タンクT1からのLPGとを原料にして、メタンCHと水素Hとを含む改質ガスに変換する改質装置20とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3