(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】特定の輪郭からラフ軌道を求める方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4103 20060101AFI20220929BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G05B19/4103 A
G05B19/18 D
(21)【出願番号】P 2021524103
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066604
(87)【国際公開番号】W WO2020015951
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】102018117244.3
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521017664
【氏名又は名称】ケバ インダストリアル オートメーション ジャーメニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザファート オイゲン
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-118995(JP,A)
【文献】特表2009-521028(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005061570(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重畳された運動を行うための少なくとも2つの相互に冗長な駆動装置を有する工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求める方法であって、
前記
特定の輪郭は輪郭関数によって決定され、前記輪郭関数は、少なくとも、昇順のインデックスをもつ輪郭結節
点P
0
~
P
n+1
、及び前記輪郭結節
点P
0
~
P
n+1
に割り当てられた輪郭部分関
数p
0
~
p
n
によって部分的に定められ、輪郭開始結節
点P
0
を有し、
前記ラフ軌道はラフ軌道関数によって決定され、前記ラフ軌道関数は、昇順のインデックスをもつラフ軌道結節
点Q
0
~
Q
n+1
によって部分的に定められ、ラフ軌道開始結節
点Q
0
を有し、
まず、ラフ軌道開始結節
点Q
0
が前記輪郭開始結節
点P
0
に一致するようにおかれ、次に、それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
に基づき、前記ラフ軌道開始結節
点Q
0
で始まる反復が行われ、
第1反復ステップでは、インデックス
値kが前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
のインデックス
値j以上である前記輪郭結節
点P
j
~
P
n
に基づいて、可能な限り最小のインデックス
値kを有し、前記
それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
からの距離がまだ特定の距離条件を満た
す輪郭結節
点P
k
が求められ、
第2反復ステップでは、前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
に続き、前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
と前記第1反復ステップで求められた輪郭結節
点P
k
との間の接続線上にあり、又は、前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
と、P
j
とP
k
との間の部分輪郭の重心との間の接続線上にあり、前記
それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
からの距離が前記
それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
から前記第1反復ステップで求められた輪郭結節
点P
k
までの距離に重み係数を掛けたものに一致するそれぞれの次のラフ軌道結節
点Q
j+1
が求められ、前記係数は、インデックス
値jが前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
のインデックス
値jに等し
い輪郭部分関
数p
j
の軌道
長s
j
を、インデックス
値jが前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
のインデックス
値jに等しい前記輪郭結節
点P
j
と前記第1反復ステップで求められた輪郭結節
点P
k
との間の前記輪郭部分関
数p
j
~
p
k-1
の軌道
長s
j
~
s
k-1
の和で割ったときの商から得られる、方法。
【請求項2】
前記輪郭関数は、スプライン、特に、1次、3次、又は5次のスプラインであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特定の距離条件は少なくとも第1及び第2距離サブ条件を備え、前記求められる輪郭結節
点P
k
は前記距離サブ条件の少なくとも1つを満たさなければならず
、第1距離サブ条件は、前記求められる輪郭結節
点P
k
に関して、インデックス
値jが前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
のインデックス
値jに等しい前記輪郭結節
点P
j
と前記求められる輪郭結節
点P
k
との間の軌道
長s
j
~
s
k
の和が所定の限界
値Δ以下であり、インデックス
値jが前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
のインデックス
値jに等しい前記輪郭結節
点P
j
と前記求められる輪郭結節
点P
k
の直後
の輪郭結節
点P
k+1
との間の軌道
長s
j
~
s
k+1
の和が前記所定の限界
値Δより大きいことを要求し、前記第2距離サブ条件は、前記求められる輪郭結節
点P
k
に関して、
前記求められる輪郭結節点P
k
と前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
との間の距離が前記所定の限界
値Δの1/2以下であり、前記求められる輪郭結節
点P
k
の直後の前記輪郭結節
点P
k+1
と前記それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
との間の距離が前記所定の限界
値Δの1/2より大きいことを要求することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラフ軌道関数は、前記ラフ軌道結節
点Q
0
~
Q
n+1
に割り当てられたそれぞれのラフ軌道部分関
数q
0
~
q
n
によってさらに定められ、前記第2反復ステップでは、前記
それぞれのラフ軌道開始結節
点Q
j
に割り当てられた前記それぞれのラフ軌道部分関
数q
j
が線形関数によって形成されることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載の方法。
【請求項5】
前記ラフ軌道関数は、前記ラフ軌道結節
点Q
0
~
Q
n+1
に割り当てられたそれぞれのラフ軌道部分関
数q
0
~
q
n
によってさらに定められ、前記ラフ軌道部分関
数q
0
~
q
n
は、前記ラフ軌道結節
点Q
0
~
Q
n
のスプライン補間によって生成されていることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記
所定の限界
値Δは前記駆動装置の1つの最大変位に一致することを特徴とする、請求項3
、又は請求項3を引用する請求項4若しくは5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重畳された運動を行うための少なくとも2つの相互に冗長な駆動装置を有する工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような工作機械は、特定の2又は3次元の輪郭を有するワーク又は描線を作成できるように、例えば、木材、金属、又はプラスチックのワークの、フライス加工、レーザー切断、水ジェット切断、又は彫刻において、又は製図機(プロッター)として使用される。固定された、又は可動式、特に回転式の工具は、加工が完了すると、ワークが所望の最終的な輪郭を有するように、駆動装置を用いて特定の輪郭に沿って移動し得る。
【0003】
所望の最終的な輪郭の進路に依存して、工具は、しばしば、短時間で比較的長い距離を移動しなければならならず、結果として、激しい加速力及び/又は減速力にも晒される。工具のそれぞれの所望の移動方向に対してただ1つの駆動装置を有する工作機械は、この点で、それらの性能の限界にすぐに達する。加工の速度は、しばしば、駆動装置の速度及び/又は加速度の限界内に留まるために、許容可能なレベルより低く下げられなければならない。
【0004】
これは、工作機械のそれぞれの移動方向に対して冗長な駆動装置として知られているものを使用することで回避される。このために、ローダイナミック駆動装置が設けられる。ローダイナミック駆動装置は、比較的大きい変位で動くことができるが、その比較的大きい質量のために、低い運動状態しか有しない。さらに、第2のハイダイナミック駆動装置が設けられる。ハイダイナミック駆動装置は、一方でローダイナミック駆動装置によって移動することができ、他方で高速及び高加速又は高減速で工具を移動させることができる。しかし、ハイダイナミック駆動装置の最大変位は一般に制限される。
【0005】
それぞれの移動方向に対して冗長な駆動装置でこのような工作機械を制御できるように、ワークが加工されることになる輪郭をラフ軌道と精密軌道に分割することが従来から行われている。この場合、ローダイナミック駆動装置はラフ軌道データで制御されるが、ハイダイナミック駆動装置は精密軌道データで同時に制御される。
【0006】
ラフ軌道と精密軌道への輪郭の分割、及び工作機械の対応する制御は、だいたい知られており、例えばDE 103 55 614 B4及びEP 0 594 699 B1に記載されている。ラフ軌道を算出する場合、少なくともハイダイナミック駆動装置の制限された変位を考慮に入れなければならない。これは、さもなければ、ワークが誤って加工されるからである。さらに別の制限パラメータも有利に軌道の計算において考慮される。これにより、一般に、ラフ軌道はやや低周波数の運動成分を含むが、精密軌道は高周波数の運動成分を有する。一般に、ラフ軌道及び精密軌道は、ラフ軌道を求めた後、輪郭からラフ軌道を引くことで精密軌道を決定するようにして算出される。
【0007】
EP 1 963 935 B1は、位置案内されながら通過されるラフ軌道を求めるさらに別の方法を記載している。ここで、通過される初期軌道はコンピュータに設定され、初期軌道は初期関数によって記述され、それにより、スカラー軌道パラメータを初期関数に代入することで、それぞれ対応する初期軌道上の位置が決定され、スカラー軌道パラメータは、時間と異なっており、初期軌道に沿って進む経路に特徴的なものである。コンピュータは、スカラー軌道パラメータの関数としての初期軌道に、ローパス特性を有するフィルタリングを施し、このようにしてラフ関数を求め、それにより、スカラー軌道パラメータをラフ関数に代入することで、それぞれ対応するラフ軌道上の位置が決定される。ここで、ローパス特性はスカラー軌道パラメータに関するものである。コンピュータは、初期軌道からラフ軌道までの距離がスカラー軌道パラメータの値に無関係に常に所定の限界を下回るようにラフ関数を求める。
【0008】
換言すれば、EP 1 963 935 B1は、ローダイナミック駆動装置による移動のためのラフ関数を算出する方法を提案しており、当該ラフ関数は、移動パラメータに依存する初期軌道がこの移動パラメータに関してフィルタリングを施されることで算出される。ローパスフィルタリングを施された関数は、初期軌道からこの関数までの距離が移動パラメータの全範囲に亘って所定の限界を下回るかどうかについて検査される。ローパスフィルタリングを施された関数に基づいて、上述の限界が守られることを条件に、ラフ軌道を求めるために、さらなる近似が任意に漸進的に行われてもよい。
【0009】
2010年8月に提出された、ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンの数学及びコンピュータサイエンス、物理学及び地理学の学部のMarco Bock氏による博士論文"Steuerung von Werkzeugmaschinen mit redundanten Achsen"[冗長な軸を有する工作機械の制御](http://geb.uni-giessen.de/geb/volltexte/2011/7970/pdf/BockMarco_2010_11_19.pdf)は、工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求めるさらに別の様々な方法を記載している。
【0010】
第1の例示的な実施形態によれば、ラフ関数は、初期軌道のスプライン表現の制御点を含む第1の特徴的な中間ベクトルを最初に求めることで求められてもよい。これに基づいて、制御点を含み、第2中間軌道を定義する第2の特徴的な中間ベクトルが、スプライン表現の第1の特徴的な中間ベクトルから求められてもよい。制御点は、第1シーケンスの直接に連続した中間ベクトルの対の加重又は非加重平均によって求められてもよい。これに基づいて、第3中間ベクトルが対応する方法で算出されてもよい。この中間軌道の二重の決定の後、初期軌道からラフ関数としての中間軌道までの幾何学的な距離が軌道パラメータに沿って特定の限界を下回っているかどうかを求めなければならない。このために、初期軌道のスプラインベクトルがラフ関数の中間軌道のスプラインベクトルと比較されてもよく、これらの距離の最大値は距離の上限を提供し、それは次に特定の基準の順守のための限界と比較されてもよい。
【0011】
第2の例示的な実施形態では、初期軌道上のそれぞれの軌道位置は、初期軌道のスプライン表現に基づいて、軌道パラメータの複数のスカラー値に対して求められてもよい。これらの値の対に基づいて、第1中間軌道が上述のサンプリングによって定められる。スカラー軌道パラメータの区間内のラフ関数の第2中間軌道は、第1中間軌道上の位置の加重又は非加重平均によって決定されてもよい。第2中間軌道は、限界の順守に関して、初期軌道と、又は補助限界を考慮に入れて第1のサンプリングされた中間軌道と比較されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特定の輪郭に依存して、公知の軌道分割の方法が満足のいく結果を提供できないことがある。ある状況下では、公知の方法は、非常に計算集約的であり、それに応じて長い計算時間を必要とすることがある。また、軌道分割から生じる加工時間が、工作機械の物理的能力に対応しておらず、従って延ばされることがあり得る。
【0013】
従って、本発明によって扱われる課題は、公知の方法と比較して改善された、最初に述べられた種類の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は請求項1の特徴を有する方法によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に示される。
【0015】
重畳された運動を行うための少なくとも2つの相互に冗長な駆動装置を有する工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求める方法が提案される。輪郭は輪郭関数によって決定され、輪郭関数は、少なくとも、昇順のインデックスをもつ輪郭結節点P0~Pn+1、及び輪郭結節点P0~Pn+1に割り当てられた輪郭部分関数p0~pnによって部分的に定められ、輪郭開始結節点P0を有し、ラフ軌道はラフ軌道関数によって決定され、ラフ軌道関数は、昇順のインデックスをもつラフ軌道結節点Q0~Qn+1によって部分的に定められ、ラフ軌道開始結節点Q0を有し、まず、ラフ軌道開始結節点Q0が輪郭開始結節点P0に一致するようにおかれ、次に、それぞれのラフ軌道開始結節点Qjに基づき、ラフ軌道開始結節点Q0で始まる反復が行われ、
第1反復ステップでは、インデックス値kがそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjのインデックス値j以上である輪郭結節点Pj~Pn+1に基づいて、可能な限り最小のインデックス値kを有し、ラフ軌道開始結節点Qjからの距離がまだ特定の距離条件を満たすその輪郭結節点Pkが求められ、
第2反復ステップでは、それぞれのラフ軌道開始結節点Qjに続き、それぞれのラフ軌道開始結節点Qjと第1反復ステップで求められた輪郭結節点Pkとの間の接続線上にあり、又は、それぞれのラフ軌道開始結節点Qjと、PjとPkとの間の部分輪郭の重心との間の接続線上にあり、ラフ軌道開始結節点Qjからの距離がラフ軌道開始結節点Qjから第1反復ステップで求められた輪郭結節点Pkまでの距離に重み係数を掛けたものに一致するそれぞれの次のラフ軌道結節点Qj+1が求められ、係数は、インデックス値jがそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjのインデックス値jに等しいその輪郭部分関数pjの軌道長sjを、インデックス値jがそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjのインデックス値jに等しい輪郭結節点Pjと第1反復ステップで求められた輪郭結節点Pkとの間の輪郭部分関数pj~pk-1の軌道長sj~sk-1の和で割ったときの商から得られる。
【0016】
提案された方法は、非常に簡単に構成され、ただ1回の最初の工程後にラフ軌道の最終的な結果を提供する。多数回の計算の繰り返しは不要である。スカラー軌道パラメータに依存する形式への輪郭又は初期軌道の再計算又は再パラメータ化も同様に不要であり、それは公知の解決法と比較して正に最初から計算時間を節約できることを意味する。
【0017】
前記方法は、元の輪郭の開始点を基礎にして、反復的に、即ち結節点から結節点へラフ軌道を構築するという驚くほど簡単な着想に基づいている。輪郭の開始結節点、又は前回の反復で算出されたラフ軌道結節点Qjに基づいて、次のラフ軌道結節点Qj+1が求められる。このために、窓が、ラフ軌道開始結節点又はラフ軌道開始結節点Qjの周りに、この内側にある全ての点が前記特定の距離条件を満たすように配置される。この距離条件は、有利に、輪郭に対応する全ての目標点が、結局は輪郭とラフ軌道間の差である精密軌道によっても実際に到達され得ることを保証するために、ハイダイナミック駆動装置の最大変位に基づいている。
【0018】
ラフ軌道開始結節点Qjに基づいて、まだこの窓内に留まる輪郭の結節点Pkが求められる。換言すれば、輪郭の次の結節点Pk+1、即ちインデックス値が1だけ増えたその結節点は、既にこの窓外に位置するだろう。実際面では、距離条件をもはや満たさない最初の後続の点Pk+1が求められた後、その前の点が点Pkとして選択される。
【0019】
この輪郭結節点Pkが見つけられると、ラフ軌道開始結節点Qjから特定された輪郭結節点Pkまで概念的な線が引かれ、求められる新たな次のラフ軌道結節点Qj+1はこの接続線上に位置しなければならない。
【0020】
あるいは、概念的な線は、ラフ軌道開始結節点Qjから、輪郭結節点Pjから輪郭結節点Pkまでの部分輪郭の重心まで引かれてもよく、求められる新たな次のラフ軌道結節点Qj+1はこの接続線上に位置しなければならない。重心は、例えば、ラフ軌道開始結節点Qjに割り当てられ又はそれに幾何学的に最も近い輪郭点Pjと、まだ距離基準を満たす輪郭点Pkとの間の初期輪郭部分の幾何学的な重心の形成によって求められてもよい。最も簡単な場合、これはPjとPk間の輪郭部分の中心点でもよいが、それはこの輪郭部分上の全ての中間の輪郭点Pj、Pj+1~Pkの幾何学的な重心でもよい。このようにして又は別の方法によって形成された重心はラフ軌道開始結節点Qjから延伸する概念的な線を定義する役目を果たし、当該概念的な線上に次のラフ軌道結節点Qj+1が割り当てられる。
【0021】
この点に関して、ラフ軌道開始結節点Qjに基づいて、次のラフ軌道開始結節点Qj+1は、伸長した輪郭に従い、最も遠い点Pkの方向に位置し、又は輪郭の重心の方向に位置してもよい。後者は特に非常に起伏又は角度のある輪郭に適している。
【0022】
次のラフ軌道結節点Qj+1を一意に定義するために必要なラフ軌道開始結節点Qjからの距離は、ラフ軌道開始結節点Qjから、見つけられた輪郭結節点Pkまでの距離によって決定され、この距離は、それぞれの探索手順の基礎をなすそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjのインデックス値jに一致するインデックス値jを有する輪郭部分関数pjの軌道長sjを、基礎をなす軌道開始結節点Qjのインデックス値jに一致するインデックス値jを有する輪郭結節点Pjと見つけられた輪郭結節点Pkとの間の輪郭部分関数pj~pk-1の軌道長sj~sk-1の和Sで割ったときの商から得られる係数で重み付けされる。
【0023】
このようにして求められた次のラフ軌道結節点Qj+1は、次の反復で新たなラフ軌道開始結節点になる。
【0024】
先行技術とは対照的に、本発明による方法は、個々の値の加重又は非加重平均によるローパスフィルタリングを伴わない。さらに、輪郭からラフ軌道までの距離が常にスカラー軌道パラメータの値と無関係に所定の限界を下回るかどうかを検査することは、提供されず、必要でもない。これは、それぞれの反復ステップ中に次のラフ軌道結節点を選択することが、それ自体で、既に、当該距離がハイダイナミック駆動装置の最大変位を超えないことを保証しているからである。
【0025】
ここで、本発明による軌道分割の基礎を提供する上述の輪郭は、必ずしも、加工されるワークの最終的な輪郭である必要がないことに留意すべきである。この場合、例えば工具を使用した材料除去を考慮に入れることも任意に可能である。例えば、フライスを使用する場合、その主軸頭の直径を考慮に入れてもよい。
【0026】
輪郭関数は、有利に、スプライン、特に、1次、3次、又は5次のスプラインである。このような描写は、例えばCNC加工法において慣例的に使用され、円は、一般に5次スプラインによって描写される。
【0027】
本発明の1つの有利な発展によれば、特定の距離条件は少なくとも第1及び第2距離サブ条件を備え、求められる輪郭結節点Pkは距離サブ条件の少なくとも1つを満たさなければならず、第1距離サブ条件は、求められる輪郭結節点Pkに関して、インデックス値jがそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjのインデックス値jに等しい輪郭結節点Pjと求められる輪郭結節点Pkとの間の軌道長sj~skの和が所定の限界値Δ以下であり、インデックス値jがそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjのインデックス値jに等しい輪郭結節点Pjと求められる輪郭結節点Pkの直後の輪郭結節点Pk+1との間の軌道長sj~sk+1の和が所定の限界値Δより大きいことを要求し、第2距離サブ条件は、求められる輪郭結節点Pkに関して、求められる輪郭結節点P
k
とそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjとの間の距離が所定の限界値Δの1/2以下であり、求められる輪郭結節点Pkの直後の輪郭結節点Pk+1とそれぞれのラフ軌道開始結節点Qjとの間の距離が所定の限界値Δの1/2より大きいことを要求する。
【0028】
既に述べられたように、所定の限界値Δはハイダイナミック駆動装置の変位に適切に基づいている。第1距離サブ条件は元の輪郭の軌道長の限界を定義するが、分かりやすく言えば、第2距離サブ条件はそれぞれの探索窓の寸法を定義する。
【0029】
上述の2つの条件の1つだけが方法の1つの工程において全ての反復ステップに対して規則的に選択され、条件は、最初から選択されてもよいし、輪郭特性に基づいて最初に選択されてもよい。しかし、2つの条件の組み合わせが方法のシーケンスに対して使用されてもよい。さらに、第1条件及び第2条件を部分的に使用することが考えられる。2つの距離サブ条件において別の輪郭結節点Pkが見つけ出される場合、2つの点のどちらを選択すべきかを決定する基礎として、追加の条件が定義及び使用されてもよい。
【0030】
第1距離サブ条件の場合、条件を満たす点を見つけることができないならば、又は見つけられた輪郭結節点がラフ軌道開始結節点Qjと同じインデックス値jをもつならば、輪郭結節点Pj+1が求められる輪郭結節点Pkとして選択される。第2距離サブ条件で述べられた距離は、必ずしもユークリッドノルムに従った距離である必要はなく、代わりに、他のノルム、例えば、最大値ノルム、又は行和ノルムに基づいてもよい。ユークリッドノルムが使用された場合、上述の探索窓は円形状を有するが、最大値ノルムが使用された場合、探索窓は、矩形状、特に正方形状を有する。ハイダイナミック駆動装置の異なった移動方向の変位は慣例的に相互に独立しているので、最大値ノルム又は行和ノルムに従って距離を定義することが適切である。
【0031】
さらに別の有利な発展によれば、ラフ軌道関数は、ラフ軌道結節点Q0~Qn+1に割り当てられたそれぞれのラフ軌道部分関数q0~qnによってさらに定められ、第2反復ステップでは、ラフ軌道開始結節点Qjに割り当てられたそれぞれのラフ軌道部分関数qjが線形関数によって形成される。このため、ラフ軌道部分関数q0~qnはそれぞれの直線でラフ軌道結節点Q0~Qn+1を結ぶ。
【0032】
代替的な発展によれば、ラフ軌道関数は、ラフ軌道結節点Q0~Qn+1に割り当てられたそれぞれのラフ軌道部分関数q0~qnによってさらに定められ、ラフ軌道部分関数q0~qnは、ラフ軌道結節点Q0~Qn+1のスプライン補間によって生成されていることもあり得る。この場合、3次以上のスプラインが有利に使用される。上述の線形関数は反復中に同様に求められ得るが、ある状況下では、ラフ軌道部分関数を求める際、ラフ軌道結節点が求められるまで、スプライン補間を行わないことが適切である場合もある。
【0033】
さらなる利点は図面及び関連した図面の説明から明らかになる。図面は本発明の例示的な実施形態を示す。図面、明細書、及び特許請求の範囲は、組み合わされた多数の特徴を含む。また、当業者は、便宜的に、これらの特徴を個別に考慮して、それらを組み合わせて、意味のあるさらに別の組合せを得るだろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】ラフ軌道を求めるための本発明による方法の反復の模式図である。
【
図2】特定の輪郭、及び本発明による方法によって求められた関連したラフ軌道の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明による方法は、(X, Y)平面で定義された2次元輪郭の軌道分割に基づいて、例として以下に説明される。勿論、他の次元への一般化は可能である。軌道分割は、例えば、各移動方向に対して2つの冗長な駆動装置を有する工作機械のために行われる。輪郭は、例えば、CNC工作機械の運転のために一般に行われているように、1次、3次、又は5次のスプラインによって描かれてもよい。しかし、他の輪郭描写も利用可能である。
【0036】
輪郭部分jは、開始点又は輪郭結節点P
j = (x
j, y
j)、パラメータ区間[0, s
j]、及び輪郭部分関数p
jによって定義される。ここで、s
jは輪郭部分の弧長であり、輪郭部分関数p
jは輪郭部分の進路を描写する。
図1及び
図2の例では、関数p
jは線形関数である。
【0037】
従って、ラフ軌道が求められる輪郭は、関数(Pj, sj, pj)、j = 0,…, nによって定義される。
【0038】
軌道長sjに基づくパラメータ表示の代わりに、他の任意の所望のパラメータ表示、例えば時間又はデカルト座標x, yを用いたパラメータ表示も選択できることに留意すべきである。
【0039】
ここで、本発明による方法を用いて、ローダイナミック駆動装置を制御するための滑らかなラフ軌道(Q
j, s
j, q
j)、j = 0,…, nを、このラフ軌道の距離が特定の限界値を超えないように求める。従って、ラフ軌道は、次の条件
【数1】
を満たさなければならない。本発明による方法は反復法である。まず、ラフ軌道開始結節点Q
0は輪郭の開始結節点P
0に一致する。少なくとも以下の2つのステップが反復jの範囲内で行われる。
【0040】
第1ステップでは、次の2つの条件
【数2】
のうち第1又は第2条件の何れかを満たし、k ≧ jをもつ第1輪郭結節点P
kが求められる。2つの条件1又は2の1つだけが方法の1つの工程に規則的に適用される。適用される条件は、不変に設定されてもよいし、連続性、曲率の振舞い等の輪郭特性に基づいて選択されてもよい。2つの条件の1つが部分的に適用されることも考えられる。
【0041】
条件(1)についてそのような点が検出され得ない場合、又は条件(2)についてk = jである場合、求められる輪郭結節点Pkは輪郭結節点Pj+1と定められる。
【0042】
図1は、p = ∞、即ち最大値ノルムについて、可能な限り最小のインデックス値kをもつ輪郭結節点P
kを求める様子を示す。最大値ノルムに従って距離を算出することで、探索窓Fは一辺Δの正方形の形状を有し、求められる輪郭結節点は探索窓F内に位置しなければならない。
図1から明らかなように、点P
kはまだ探索窓F内にあるが、次の点P
k+1は既に探索窓外に位置している。この点に関して、まだ距離ノルムを満たす輪郭結節点P
kが求められているが、次の点P
k+1はもはや前記ノルムを満たしていない。実際面では、まず、点P
k+1が距離条件を破った点として求められ、それにより、その前にある点P
kが特定される。
【0043】
第2反復ステップでは、式
【数3】
によって、輪郭結節点P
jと第1反復ステップで求められた輪郭結節点P
kとの間の輪郭部分関数p
j~p
kの軌道長s
j~s
kの和Sが算出される。輪郭結節点P
jのインデックス値jはそれぞれのラフ軌道開始結節点Q
jのインデックス値jに等しい。
図1において、軌道長s
j~s
kの和はΣs
lと表記されている。S、s
j、Q
j、及びP
kに基づいて、次のラフ軌道結節点
【数4】
及び割り当てられたラフ軌道部分関数
【数5】
が求められる。
【0044】
ラフ軌道開始結節点Qjと次のラフ軌道結節点Qj+1を結ぶ破線はラフ軌道部分関数qjを表している。
【0045】
そして、次の反復j+1が行われる。反復jで求められた次のラフ軌道結節点Qj+1の値は次の反復j+1において新たなラフ軌道開始結節点を形成する。
【0046】
図2は、ラフ軌道(Q
j, s
j, Q
j)が本発明による方法によって同様に求められるさらに別の輪郭(P
j, s
j, p
j)を示す。
【0047】
ここで、まだ探索窓F内にある輪郭結節点P
kを見つけることで、ラフ軌道開始結節点Q
jに基づいて、それぞれのラフ軌道結節点Q
j+1、及び割り当てられたラフ軌道部分関数q
j(s)を求めることが、
図1を参照して説明された方法と同様の方法で行われている。