(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】特定の輪郭からラフ軌道を求める方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4103 20060101AFI20220929BHJP
G05B 19/18 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G05B19/4103 Z
G05B19/4103 A
G05B19/18 D
(21)【出願番号】P 2021524104
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019066605
(87)【国際公開番号】W WO2020015952
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-13
(31)【優先権主張番号】102018117245.1
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521017664
【氏名又は名称】ケバ インダストリアル オートメーション ジャーメニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フランク
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-118995(JP,A)
【文献】特表2009-521028(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005061570(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重畳された運動を行うための少なくとも2つの相互に冗長な駆動装置を有する工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求める方法であって、
前記
特定の輪郭は、輪郭結節
点P
0
~
P
n+1
及びそれぞれの輪郭部分関
数p
0
~
p
n
によって部分的に定義された輪郭関
数P
j
、
p
j
によって決定され、それぞれの輪郭部分関
数p
j
は2つの隣り合った輪郭結節
点P
j
、
P
j+1
を結び、
前記ラフ軌道は、ラフ軌道結節
点Q
0
~
Q
n+1
及びそれぞれのラフ軌道部分関
数q
0
~
q
n
によって部分的に定義されたラフ軌道関
数Q
j
、
q
j
によって決定され、それぞれのラフ軌道部分関
数q
j
は2つの隣り合ったラフ軌道結節
点Q
j
、
Q
j+1
を結び、
それぞれの輪郭結節
点P
j
に対して、それぞれの割り当てられたラフ軌道結節
点Q
j
は、ラフ軌道結節
点Q
j
を含む2つの隣り合っ
たラフ軌道部分関
数q
j-1
、
q
j
の傾きの差が最小となり
、ラフ軌道結節
点Q
j
から輪郭結節
点P
j
までの距離が特定の距離条件を満たすように求められる、方法。
【請求項2】
前記特定の距離条件は、前記輪郭結節
点P
j
と前記割り当てられたラフ軌道結節
点Q
j
との間の距離が所定の限界
値Δ以下であることを要求することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記輪郭関
数P
j
、
p
j
は複数の次元で定義され
、輪郭結節
点P
j
と割り当てられたラフ軌道結節
点Q
j
との間の距離が所定の限界
値Δ以下であるという前記
特定の距離条件は、前記距離がそれぞれの次元で
前記次元の所定の限界
値Δ以下であることを要求し、特
に限界
値Δは全ての次元で等しいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記限界
値Δは前記駆動装置の1つのそれぞれの最大変位に一致することを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
それぞれの輪郭結節
点P
j
に対して前記それぞれの割り当てられたラフ軌道結節
点Q
j
を求めることは、前記ラフ軌道関
数Q
j
、
q
j
の2つのそれぞれ隣り合ったラフ軌道部分関
数q
j-1
、
q
j
の傾きの差の自乗の総和が最小となるように、それらのラフ軌道結節
点Q
j
を求めることを要することを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載の方法。
【請求項6】
前記輪郭関
数P
j
、
p
j
は複数の次元で定義され、前記ラフ軌道関
数Q
j
、
q
j
の2つのそれぞれ隣り合ったラフ軌道部分関
数q
j-1
、
q
j
の傾きの差の自乗の総和が最小となるように、それらのラフ軌道結節
点Q
j
を求めることは、それぞれの次元で前記ラフ軌道結節
点Q
j
の座標を別々に求めることを要することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ラフ軌道部分関
数q
0
~
q
n
はそれぞれの線形関数によって形成されることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載の方法。
【請求項8】
前記ラフ軌道部分関
数q
0
~
q
n
は前記ラフ軌道結節
点Q
0
~
Q
n+1
のスプライン補間によって生成されることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載の方法。
【請求項9】
ラフ軌道結節
点Q
0
~
Q
n0+1
及びそれぞれのラフ軌道部分関
数q
0
~
q
n0
の第1のラフ軌道部分が、始点P
0からP
n0+1までの距離条
件2Δ、インデックスn0 < n及び
インデックスk = 0に関して、第1の反復で決定され、後続の反復、
インデックスk > 0において、ラフ軌道結節
点Q
k
~
Q
nk+1
及びそれぞれのラフ軌道部分関
数q
k
~
q
nk
のさらなるラフ軌道部分、
インデックスnk = k+1,..., n及び
インデックスk < nが、輪郭結節点P
kからP
nk+1までの距離条
件2Δに関して、
インデックスnk = nまで決定され、少なくとも
さらなるラフ軌道
結節点Q
k、好ましくは少なくとも
さらなる2つ
のラフ軌道
結節点Q
k-1、Q
kが後続の反復の始点として設定されることを特徴とする、請求項1から8の何れかに記載の方法。
【請求項10】
さらなるラフ軌道結節
点Q
k
~
Q
nk+1
及びそれぞれのラフ軌道部分関
数q
k
~
q
nk
の後続のラフ軌道部分の反復計算に対して
、インデックスkが1だけ変わり、従って
インデックスk := k+1が後続の反復に適用されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重畳された運動を行うための少なくとも2つの相互に冗長な駆動装置を有する工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような工作機械は、特定の2又は3次元の輪郭を有するワーク又は描線を作成できるように、例えば、木材、金属、又はプラスチックのワークの、フライス加工、レーザー切断、水ジェット切断、又は彫刻において、又は製図機(プロッター)として使用される。固定された、又は可動式、特に回転式の工具は、加工が完了すると、ワークが所望の最終的な輪郭を有するように、駆動装置を用いて特定の輪郭に沿って移動し得る。
【0003】
所望の最終的な輪郭の進路に依存して、工具は、しばしば、短時間で比較的長い距離を移動しなければならならず、結果として、激しい加速力及び/又は減速力にも晒される。工具のそれぞれの所望の移動方向に対してただ1つの駆動装置を有する工作機械は、この点で、それらの性能の限界にすぐに達する。加工の速度は、しばしば、駆動装置の速度及び/又は加速度の限界内に留まるために、許容可能なレベルより低く下げられなければならない。
【0004】
これは、工作機械のそれぞれの移動方向に対して冗長な駆動装置として知られているものを使用することで回避される。このために、ローダイナミック駆動装置が設けられる。ローダイナミック駆動装置は、比較的大きい変位で動くことができるが、その比較的大きい質量のために、低い運動状態しか有しない。さらに、第2のハイダイナミック駆動装置が設けられる。ハイダイナミック駆動装置は、一方でローダイナミック駆動装置によって移動することができ、他方で高速及び高加速又は高減速で工具を移動させることができる。しかし、ハイダイナミック駆動装置の最大変位は一般に制限される。
【0005】
それぞれの移動方向に対して冗長な駆動装置でこのような工作機械を制御できるように、ワークが加工されることになる輪郭をラフ軌道と精密軌道に分割することが従来から行われている。この場合、ローダイナミック駆動装置はラフ軌道データで制御されるが、ハイダイナミック駆動装置は精密軌道データで同時に制御される。
【0006】
ラフ軌道と精密軌道への輪郭の分割、及び工作機械の対応する制御は、だいたい知られており、例えばDE 103 55 614 B4及びEP 0 594 699 B1に記載されている。ラフ軌道を算出する場合、少なくともハイダイナミック駆動装置の制限された変位を考慮に入れなければならない。これは、さもなければ、ワークが誤って加工されるからである。さらに別の制限パラメータも有利に軌道の計算において考慮される。これにより、一般に、ラフ軌道はやや低周波数の運動成分を含むが、精密軌道は高周波数の運動成分を有する。一般に、ラフ軌道及び精密軌道は、ラフ軌道を求めた後、輪郭からラフ軌道を引くことで精密軌道を決定するようにして算出される。
【0007】
EP 1 963 935 B1は、位置案内されながら通過されるラフ軌道を求めるさらに別の方法を記載している。ここで、通過される初期軌道はコンピュータに設定され、初期軌道は初期関数によって記述され、それにより、スカラー軌道パラメータを初期関数に代入することで、それぞれ対応する初期軌道上の位置が決定され、スカラー軌道パラメータは、時間と異なっており、初期軌道に沿って進む経路に特徴的なものである。コンピュータは、スカラー軌道パラメータの関数としての初期軌道に、ローパス特性を有するフィルタリングを施し、このようにしてラフ関数を求め、それにより、スカラー軌道パラメータをラフ関数に代入することで、それぞれ対応するラフ軌道上の位置が決定される。ここで、ローパス特性はスカラー軌道パラメータに関するものである。コンピュータは、初期軌道からラフ軌道までの距離がスカラー軌道パラメータの値に無関係に常に所定の限界を下回るようにラフ関数を求める。
【0008】
換言すれば、EP 1 963 935 B1は、ローダイナミック駆動装置による移動のためのラフ関数を算出する方法を提案しており、当該ラフ関数は、移動パラメータに依存する初期軌道がこの移動パラメータに関してフィルタリングを施されることで算出される。ローパスフィルタリングを施された関数は、初期軌道からこの関数までの距離が移動パラメータの全範囲に亘って所定の限界を下回るかどうかについて検査される。ローパスフィルタリングを施された関数に基づいて、上述の限界が守られることを条件に、ラフ軌道を求めるために、さらなる近似が任意に漸進的に行われてもよい。
【0009】
2010年8月に提出された、ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンの数学及びコンピュータサイエンス、物理学及び地理学の学部のMarco Bock氏による博士論文"Steuerung von Werkzeugmaschinen mit redundanten Achsen"[冗長な軸を有する工作機械の制御](http://geb.uni-giessen.de/geb/volltexte/2011/7970/pdf/BockMarco_2010_11_19.pdf)は、工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求めるさらに別の様々な方法を記載している。
【0010】
第1の例示的な実施形態によれば、ラフ関数は、初期軌道のスプライン表現の制御点を含む第1の特徴的な中間ベクトルを最初に求めることで求められてもよい。これに基づいて、制御点を含み、第2中間軌道を定義する第2の特徴的な中間ベクトルが、スプライン表現の第1の特徴的な中間ベクトルから求められてもよい。制御点は、第1シーケンスの直接に連続した中間ベクトルの対の加重又は非加重平均によって求められてもよい。これに基づいて、第3中間ベクトルが対応する方法で算出されてもよい。この中間軌道の二重の決定の後、初期軌道からラフ関数としての中間軌道までの幾何学的な距離が軌道パラメータに沿って特定の限界を下回っているかどうかを求めなければならない。このために、初期軌道のスプラインベクトルがラフ関数の中間軌道のスプラインベクトルと比較されてもよく、これらの距離の最大値は距離の上限を提供し、それは次に特定の基準の順守のための限界と比較されてもよい。
【0011】
第2の例示的な実施形態では、初期軌道上のそれぞれの軌道位置は、初期軌道のスプライン表現に基づいて、軌道パラメータの複数のスカラー値に対して求められてもよい。これらの値の対に基づいて、第1中間軌道が上述のサンプリングによって定められる。スカラー軌道パラメータの区間内のラフ関数の第2中間軌道は、第1中間軌道上の位置の加重又は非加重平均によって決定されてもよい。第2中間軌道は、限界の順守に関して、初期軌道と、又は補助限界を考慮に入れて第1のサンプリングされた中間軌道と比較されてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特定の輪郭に依存して、公知の軌道分割の方法が満足のいく結果を提供できないことがある。ある状況下では、公知の方法は、非常に計算集約的であり、それに応じて長い計算時間を必要とすることがある。また、軌道分割から生じる加工時間が、工作機械の物理的能力に対応しておらず、従って延ばされることがあり得る。
【0013】
従って、本発明によって扱われる課題は、公知の方法と比較して改善された、最初に述べられた種類の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題は請求項1の特徴を有する方法によって解決される。前記方法の有利な実施形態は従属請求項に示される。
【0015】
重畳された運動を行うための少なくとも2つの相互に冗長な駆動装置を有する工作機械を制御するために特定の輪郭からラフ軌道を求める方法が提案される。輪郭は、輪郭結節点P0~Pn+1及びそれぞれの輪郭部分関数p0~pnによって部分的に定義された輪郭関数(Pj, pj)によって決定され、それぞれの輪郭部分関数pjは2つの隣り合った輪郭結節点Pj、Pj+1を結び、ラフ軌道は、ラフ軌道結節点Q0~Qn+1及びそれぞれのラフ軌道部分関数q0~qnによって部分的に定義されたラフ軌道関数(Qj, qj)によって決定され、それぞれのラフ軌道部分関数qjは2つの隣り合ったラフ軌道結節点Qj、Qj+1を結び、それぞれの輪郭結節点Pjに対して、それぞれの割り当てられたラフ軌道結節点Qjは、このラフ軌道結節点Qjを含む2つの隣り合ったラフ軌道部分関数qj-1、qjの、傾きの差、特に傾きの差の大きさが最小となり、ラフ軌道結節点Qjから輪郭結節点Pjまでの距離が特定の距離条件を満たすように求められる。
【0016】
輪郭結節点Pjは、j = 0からn+1に関して、特定の輪郭を再現する2次元又は3次元のサンプリング点(xj, yj)又は(xj, yj, zj)である。以下で2次元の場合を考える。それは3次元にも転換され得る。
【0017】
提案された方法はわずかな計算量で実行され得る。それにより、非常に滑らかなラフ軌道関数が得られ、ラフ軌道結節点における傾きの変化が最小限にされるため、ローダイナミックな駆動装置は、可能な限り最も高速度で、特に、低加速度又は低減速度で、殆どぎくしゃくせずに駆動され得る。ここで、特定の距離条件は、解かれる最適化問題に対する制約を与え、ラフ軌道と元の輪郭との間の距離が特定の限界内に留まることを保証する。
【0018】
先行技術とは対照的に、本発明による方法は、個々の値の加重又は非加重平均によるローパスフィルタリングを伴わない。さらに、輪郭からラフ軌道までの距離が常にスカラー軌道パラメータの値と無関係に所定の限界を下回るかどうかを検査することは、提供されず、必要でもない。これは、対応する検査が、制約として数学的な最適化の基礎となる特定の距離条件によって既に本質的に提供されているからである。
【0019】
ここで、本発明による軌道分割の基礎を提供する上述の輪郭は、必ずしも、加工されるワークの最終的な輪郭である必要がないことに留意すべきである。この場合、例えば工具を使用した材料除去を考慮に入れることも任意に可能である。例えば、フライスを使用する場合、その主軸頭の直径を考慮に入れてもよい。
【0020】
有利に、特定の距離条件は、輪郭結節点Pjと割り当てられたラフ軌道結節点Qjとの間の距離が所定の限界値Δ以下であることを要求する。これは、最適化問題を解くための先に説明された制約の具体的な発展を構成する。
【0021】
所定の限界値Δはハイダイナミック駆動装置の変位に適切に基づいている。
【0022】
有利な発展によれば、輪郭関数(Pj, pj)は複数の次元で定義され、輪郭結節点Pjと割り当てられたラフ軌道結節点Qjとの間の距離が所定の限界値Δ以下であるという距離条件は、前記距離がそれぞれの次元でその次元の所定の限界値Δ以下であることを要求し、特に限界値Δは全ての次元で等しい。それぞれの次元が別々に扱われ得るので、結果として、ラフ軌道結節点を求めることがさらに簡単になり得る。
【0023】
さらに別の有利な発展によれば、それぞれの輪郭結節点Pjに対してそれぞれの割り当てられたラフ軌道結節点Qjを求めることは、ラフ軌道関数(Qj, qj)の2つのそれぞれ隣り合ったラフ軌道部分関数qj-1、qjの傾きの差の自乗の総和が最小となるように、それらのラフ軌道結節点Qjを求めることを要する。この最適化は、最大限に滑らかな傾きを持ったラフ軌道関数(Qj, qj)の輪郭という点で、特に優れた結果を提供する。この最適化問題は、行列表現として簡単に再定式化され得、その場合に二次問題又は二次計画法と呼ばれる。そのような最適化問題のための適切な解法、特に数値解法は、当業者によく知られており、以下に例示される。
【0024】
有利に、輪郭関数(Pj, pj)は複数の次元で定義され、ラフ軌道関数Qj、qjの2つのそれぞれ隣り合ったラフ軌道部分関数qj-1、qjの傾きの差の自乗の総和が最小となるように、それらのラフ軌道結節点Qjを求めることは、それぞれの次元でラフ軌道結節点Qjの座標を別々に求めることを要する。従って、上述の最小限にされる和はそれぞれの次元に対して別々に同様に考慮される。これにより、結果として、計算量がさらに低減される。
【0025】
有利な発展によれば、ラフ軌道部分関数q0~qnはそれぞれの線形関数によって形成される。換言すれば、ラフ軌道結節点Q0~Qn+1はそれぞれ直線で結ばれる。その結果、複雑な補間ステップが不要となり、結果として、ラフ軌道の生成に必要な計算時間がはっきりと低減され得る。
【0026】
しかし、代わりに、ラフ軌道結節点Q0~Qn+1のスプライン補間によってラフ軌道部分関数q0~qnを生成することも可能である。その結果、ラフ軌道のさらに滑らかな進路、従って駆動装置のさらにぎくしゃくしない動きが達成され得る。
【0027】
ラフ軌道は、一般に、前記方法の1回限りの適用によって、全体の輪郭から求められ得る。しかし、多くの場合、輪郭の進路は部分的にだけ知られ、輪郭の終点までのさらなる進路は前記方法においてまだ知られていないか、又は、輪郭点Pjの数が多すぎるため、前記方法を迅速に適用できない。このために、ラフ軌道が輪郭に関して部分的に求められ得るように前記方法を反復的に適用することが有利に提案される。従って、ラフ軌道を求める方法の有利なさらに別の発展では、ラフ軌道結節点Q0~Qn0+1及びそれぞれのラフ軌道部分関数q0~qn0の第1のラフ軌道部分が、輪郭点P0~Pn0+1、n0 < n及びk = 0から決定され得る。ここで、最も遠いPn0+1は距離ノルム||Pn0+1 - P0||∞ > 2Δから得られる。距離Δは、例えば、駆動装置、好ましくはハイダイナミック駆動装置の最大の(一方向の)変位でもよい。その後、ラフ軌道結節点Qk~Qnk+1及びそれぞれのラフ軌道部分関数qk~qnkのさらなるラフ軌道部分、nk = k+1,..., n及びk < nが、点PkとPnk+1間の距離条件2Δ、即ち||Pnk+1 - Pk||∞ > 2Δに関して、後続の反復、k > 0において決定され得る。反復はnk = nまで行われる。
【0028】
先行のラフ軌道部分の少なくともラフ軌道点Qk、好ましくは少なくとも2つのラフ軌道点Qk-1、Qkが後続の反復の始点として有利に設定されてもよく、その他の点では輪郭点Pk+1~Pnk+1が考慮される。
【0029】
このように、輪郭は部分的にラフ軌道に変換されてもよい。第1の輪郭部分P0~Pn0+1に対して、前記方法は、インデックス点0から、始点P0と終点Pn0+1間の距離が距離限界2Δを超えないという距離条件によって定義されるインデックス点n0まで適用される。後続のラフ軌道部分に対して、新たな初期値k < nkが初期値として使用されてもよく、点Pkに基づいて、距離条件2Δを満たすそこから最大限に遠い点Pnkが次に定められてもよい。先行のラフ軌道部分の少なくともラフ軌道点Qk、特に2つの点Qk-1、Qkが後続の反復の始点として使用される。その結果、1つのラフ軌道部分から次のラフ軌道部分への移行の際の跳びは回避され、移行域における傾きは最小限にされ得る。
【0030】
前述の方法は部分的なラフ軌道を積み上げることを必要とする。さらなるラフ軌道部分のラフ軌道部分関数の反復計算に対して、インデックスkが1インデックス値だけ変わり、従ってk := k+1が後続の反復に適用されることが有利であるとわかっている。その結果、計算されるラフ軌道部分の窓はちょうど輪郭点Pjの距離だけ位置を変える。このため、ラフ軌道点Q0~Qn0+1が最初に計算され、インデックス値n0は、距離条件に従って、||Pn0+1 - P0||∞ > 2Δから得られ、即ち、始点P0から輪郭点Pn0+1までの距離が2Δよりかろうじて大きくなるように、可能な限り最小のインデックス値n0が見つけられる。次の反復では、ラフ軌道点Q1~Qn1等が求められ、インデックス値n1は、今度は距離条件||Pn1+1 - P1||∞ > 2Δから求められる.ここで、第1のラフ軌道部分のQ0及びQ1が、点P0及びP1に代えて、第2の反復に対して初期値として有利に使用される。このため、次のラフ軌道部分のために、輪郭の元の進路のただ1つ又は複数のさらなる輪郭点Pjが新たに追加され、先行の反復の最初の点又は点Q0及びQ1が含まれる。このため、先に算出されたラフ軌道点Qk-1及びQkが後続の反復のラフ軌道部分の始点を定め、前記方法はnk = nになるまで続けられる。それぞれのさらなるラフ軌道部分を1だけ変えることがラフ軌道関数の決定に最適であるとわかっている。
【0031】
さらなる利点は図面及び関連した図面の説明から明らかになる。図面は本発明の例示的な実施形態を示す。図面、明細書、及び特許請求の範囲は、組み合わされた多数の特徴を含む。また、当業者は、便宜的に、これらの特徴を個別に考慮して、それらを組み合わせて、意味のあるさらに別の組合せを得るだろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】特定の輪郭、及び本発明による方法によって求められた関連したラフ軌道の模式図である。
【
図2】特定の輪郭、及び本発明による方法によって求められた関連したラフ軌道の模式図である。
【
図3】特定の輪郭、及び本発明による方法によって求められた関連したラフ軌道の模式図である。
【
図4】特定の輪郭、及び本発明による方法によって求められた関連したラフ軌道の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による方法は、(X, Y)平面で定義された2次元輪郭の軌道分割に基づいて、例として以下に説明される。勿論、他の次元への一般化は可能である。軌道分割は、例えば、各移動方向に対して2つの冗長な駆動装置を有する工作機械のために行われる。輪郭は、例えば、CNC工作機械の運転のために一般に行われているように、1次、3次、又は5次のスプラインによって描かれてもよい。しかし、他の輪郭描写も利用可能である。
【0034】
出発点は、少なくとも平面(X, Y)で輪郭結節点Pj = (xj
0, yj
0)、j = 0,…, n+1によって定義される輪郭である。
【0035】
2つの隣り合った輪郭結節点P
j、P
j+1間の長さs
jは、
【数1】
によって定義される。簡単のため、2つの隣り合った輪郭結節点P
j、P
j+1は傾き
【数2】
を有する直線で結ばれていると仮定する。この輪郭は、ここで、ローダイナミック駆動装置を制御するためのラフ軌道関数(Q
j, q
j)によって分割され、当該関数は、ラフ軌道結節点Q
j = (x
j, x
y)、j = 0,…, n+1、及びラフ軌道結節点Q
jを結ぶラフ軌道部分関数q
j、j = 0,…, nによって定義され、ローダイナミック駆動装置は、滑らかな進路を有し、従って、速い進行速度を有し、低加速度及び減速度を有し、殆どぎくしゃく動かない。これを達成することは、所望の緩やかな変化を得るために、ラフ軌道結節点Q
jにおける、2つの隣り合ったラフ軌道部分関数q
j-1、q
jの傾きの差、より正確に傾きの差の絶対値|dx
j - dx
j-1|又は|dy
j - dy
j-1|が小さくなければならないことを意味する。
【0036】
それぞれの駆動装置がそれぞれの次元x、yに割り当てられるので、次元x、yは相互に独立して考慮されてもよい。算出ステップはただx成分に基づいて以下で説明される。y成分及び任意にz成分は対応する方法で求められる。
【0037】
2つの隣り合ったラフ軌道部分関数q
j-1、q
j間の傾きの変化が小さいという条件は、例えば、関数
【数3】
が最小限にされることとして、同等に表され得る。これは最小二乗法に相当する。若干の変形後、関数f(x)は、
【数4】
と表され得る。ここで、Qは疎に配列された対称半正定値帯行列であり、それは長さs
jの逆数の情報を収容し、xは個々の成分のベクトルx = (x
0,…, x
n+1)
Tを表す。
【0038】
この最適化問題を解くための制約として、ラフ軌道結節点Q
j、j = 0,…, n+1は、それぞれの関連した輪郭結節点P
jの周りの一辺Δの特定の窓内に位置していなければならない。これは、条件||Q
j - P
j||
∞≦Δ、又は条件
【数5】
によって表され得る。ここで、Δは、概して、ハイダイナミック精密駆動装置の変位限界と相関する。駆動装置は、輪郭に沿って移動する際、輪郭結節点P
0から開始し、輪郭結節点P
n+1で終了すべきである。このため、問題は、上述の制約下で関数f(x)を最小限にする点x
j、j = 0,…, n+1を見つけることにある。この問題は、
【数6】
と書かれ得る。これは二次最適化問題又は二次計画法として知られている。
【0039】
この最適化問題を解くための多くの迅速な方法が当業者に知られている。勾配法、有効制約法、内点法、又はクリロフ部分空間法の部類、特に共役勾配法のような数値法が例として挙げられ得る。
【0040】
ラフ軌道結節点Q0、Qj+1がこのようにして求められると、ラフ軌道部分関数q0~qjは、直線によって(1次スプライン補間に相当する)、又は3次以上のスプライン補間によって、隣り合ったラフ軌道結節点Qj、Qj+1を結ぶことで決定されてもよい。
【0041】
図1から
図3は、それぞれ、始点P
0及び終点P
n+1を有する例示的な輪郭関数(P
j, p
j)を、本発明による方法によって求められたラフ軌道関数(Q
j, q
j)、並びに関連した始点Q
0及び終点Q
n+1と共に示す。
【0042】
図4は、
図1と類似したラフ軌道決定の一例を示す。実線で図示された輪郭関数(P
j, p
j)に基づいて、インデックスnまでの全ての輪郭関数は、前記方法の個別の適用によって、破線で示されたラフ軌道(Q
j, q
j)に変換され得る。これは既に
図1に描かれている。
【0043】
前記方法の反復適用の際に、輪郭関数は、サブ部分k~n
k、n
k = k+1,…, n及びk < nに再分割されてもよく、それぞれの最大のインデックス値n
kは距離条件2Δを満たす。それぞれのラフ輪郭部分のサイズはハイダイナミック駆動装置の移動空間の全体に対応するように選択され得る。従って、それぞれのラフ輪郭部分において考慮される輪郭点の集合のためのnkを定めるための始点P
kから始めて、
【数7】
が適用される。第1の反復に対して、輪郭点P
0~P
n0+1が考慮される。即ち、k=0であり、点P
0から点P
n0までの距離2Δという距離条件にちょうど対応するインデックス値n0が求められる。第1のラフ軌道点Q
0~Q
n0+1は前記方法の適用によってそれらから決定される。
【0044】
それぞれのさらなる反復に対して、k := k+1が設定され、最大インデックスnk、nk = k+1,…, nが同様に求められ、後続のラフ軌道部分がインデックス値距離1だけずれ、即ちk := k+1が計算される。従って、1からn1までのラフ軌道点が第2の反復に対して決定され、点jからnjまでのラフ軌道点が後続の反復jに対して決定される。先行のラフ輪郭部分のラフ点Qk-1、Qkはそれぞれの場合でそれぞれのラフ輪郭部分の始点として使用され、その他の点では輪郭点Pk+1~Pnk+1が考慮される。このため、先に計算されたラフ輪郭部分の最初の1つ以上のラフ点は、変更されないまま、それぞれの後続のラフ輪郭部分に導入され、インデックスはそれぞれの場合にインデックス値k := k+1だけ位置を変える。最終的に、それぞれの後続の反復において、インデックス値kが1だけ増加するので、nk = nになるまで、さらに1つのラフ軌道点のみが追加される。前記方法は多くてn回適用され得る。先行の部分の、少なくとも最初の、好ましくは最初の2つのラフ軌道点、又は最初の複数のラフ軌道点が後続の部分の始点として使用されるので、1つのラフ輪郭部分から次のラフ輪郭部分への移行の際に、移行域のラフ軌道の傾きを最小限にすることを保証できる。
【0045】
ラフ軌道点Q
~
jを有し反復法から得られたラフ軌道曲線が、一点鎖線で示され、全ての点P
0~P
n+1(
図1参照)に1回だけ前記方法を適用して得られたラフ軌道点Q
jと比較されている。初期輪郭への近似が改善され得ることは明らかであり、輪郭点の数の低減に反復回数の増加が必要とされる。