(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/135 20160101AFI20220929BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20220929BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20220929BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220929BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A23L33/135
A61K35/745
A61K35/74 A
A61P25/00
A61P25/28
(21)【出願番号】P 2021537406
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030425
(87)【国際公開番号】W WO2021025154
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2019146115
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD NITE BP-02623
(73)【特許権者】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 崇
(72)【発明者】
【氏名】平工 明里
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 紀介
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0354696(US,A1)
【文献】国際公開第2018/215573(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/130859(WO,A1)
【文献】特開平09-023848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23C
A61K
A61P
FSTA/CAplus/WPIDS/AGRICOLA/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分とする、学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物。
【請求項2】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記記憶能が作業記憶能である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
飲食品組成物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物の製造における、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分とする、学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
学童期に発達する能力のひとつに記憶能がある。学童たちの記憶力の向上をサポートする様々な技術がこれまでに開発されている。記憶力の増強に有効な成分として、例えば、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸などが見出されたほか、ホップ抽出物に含まれるフムロン類を有効成分とする記憶力増強作用を有する機能性飲食品などが開発されている(特許文献1)。
【0003】
一方、ビフィドバクテリウム属細菌は、ヒトの腸内に最も多く存在する善玉菌として知られており、プロバイオティクスの一種として様々な活用がなされている。ビフィドバクテリウム属細菌の中にも、記憶に関連する効果を発揮するものがある。
例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA-999を含む食用組成物は、記憶に関連することが知られている、海馬の脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor, BDNF)の発現を増加させることが報告されている(特許文献2)。このほかにも、ビフィドバクテリウム・ビフィダムNITE BP-31を有効成分とする、新生児向けの脳機能改善用組成物が開発されている。具体的には、新版K式発達検査2001による評価として、特定の新生児において発達指数が有意に向上することが確認されている(特許文献3)。
【0004】
しかし、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスが、それを摂取した又は投与された乳幼児のその後の学童期における記憶能向上に有効であるとの報告はされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-224193号公報
【文献】特表2011-517568号公報
【文献】国際公開第2017/179602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、学童期の記憶能を向上する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスが、それを摂取した又は投与された乳幼児のその後の学童期における記憶能向上に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分とする、学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物を提供する。
前記組成物は、前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスが、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記記憶能が作業記憶能であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、飲食品組成物であることを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、それを摂取した又は投与された乳幼児のその後の学童期における記憶能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
尚、本明細書では、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分とする、学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物を、「本発明の組成物」と記載することがある。本発明の組成物は混合物を含む概念であり、その成分が均一であるか不均一であるかを問わない。
また、本明細書では、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを、「本発明の細菌」と記載することがある。
【0012】
本発明の組成物は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分として含む。同細菌はビフィドバクテリウム属細菌であり、グラム陽性の偏性嫌気性桿菌である。
尚、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスは、単にビフィドバクテリウム・インファンティスと表記される場合がある。
【0013】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスの具体例としては、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスBi-26(DuPont Danisco)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスR0033(Lallemand)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスCECT7210(Biopolis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスCECT2710(Biopolis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスEVC001(Evolve BioSystems)が挙げられる。
【0014】
NITE BP-02623の受託番号が付与された細菌は、2018年1月26日付で、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、NITE BP-02623の受託番号で、ブダペスト条約に基づく国際寄託がなされたものである。同細菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスM-63と同一の細菌である。
【0015】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623は、上記寄託菌に制限されず、上記寄託菌と実質的に同等の細菌であってもよい。上記寄託菌と実質的に同等の細菌とは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスに分類される細菌であって、それを乳幼児期に摂取した又は投与された対象の学童期において、該対象の記憶能を向上させることができ、さらにその16SrRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託菌の16SrRNA遺伝子の塩基配列に対して、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託菌と同一の菌学的性質を有する細菌である。また、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623には、同細菌を親株とする変異株及び遺伝子組換え株も含まれる。
このことは、上記の他の菌にも同様に適用される。
【0016】
本発明において、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスは1株を用いてもよく、2株以上を用いてもよい。
【0017】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスは、同細菌を培養することにより容易に増殖させることができる。培養する方法は、同細菌が増殖できる限り特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌(ビフィズス菌)の培養に通常用いられる方法を必要により適宜修正して用いることができる。例えば、培養温度は25~50℃でよく、30~40℃であることが好ましい。また、培養は好ましくは嫌気条件下で行われ、例えば、炭酸ガス等の嫌気ガスを通気しながら培養することができる。また、液体静置培養等の微好気条件下で培養してもよい。
【0018】
培養に用いる培地としては、特に限定されず、ビフィドバクテリウム属細菌の培養に通常用いられる培地を必要により適宜修正して用いることができる。すなわち、炭素源としては、例えば、ガラクトース、グルコース、フルクトース、マンノース、セロビオース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デンプン、デンプン加水分解物、廃糖蜜等の糖類を資化性に応じて使用できる。窒素源としては、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩類や硝酸塩類を使用できる。また、無機塩類としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マンガン、硫酸第一鉄等を用いることができる。また、ペプトン、大豆粉、脱脂大豆粕、肉エキス、酵母エキス等の有機成分を用いてもよい。また、調製済みの培地としては、例えばMRS培地を好適に用いることができる。
【0019】
本発明の細菌は、培養後、得られた培養物をそのまま用いてもよく、希釈又は濃縮して用いてもよく、培養物から回収した菌体を用いてもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、培養後に加熱、及び凍結乾燥等の種々の追加操作を行うことができる。尚、本発明の細菌は、生菌であっても死菌であってもよい。死菌としては、加熱等により殺菌された死菌が挙げられる。
【0020】
本発明の細菌は、それを乳幼児期に摂取した又は投与された対象の学童期において、該対象の記憶能を向上する作用を有する。したがって、本発明の細菌は、学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物の有効成分として使用することができる。
【0021】
本発明の組成物を摂取する又は投与される対象としては、ヒト、ヒト以外の哺乳動物が挙げられる。ヒト以外の哺乳動物としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ハムスター、モルモット等が例示される。
【0022】
対象がヒトである場合、本発明の組成物を摂取する又は投与される対象は、その乳幼児期に、母親との分離(すなわち、母子分離)を経験してもよいし、経験しなくてもよい。母子分離は、例えば、母親と子の分離が短時間ではあるが日常生活における母親と子の分離である。例えば、1日の大部分を共に生活する母親と子が、1日の数時間だけ子が保育園等に預けられることにより分離することが挙げられる。母親と子が分離する時間としては、例えば、1日あたり3時間以上、12時間以下が挙げられる。
対象がヒト以外の哺乳動物であれば、本発明の組成物を摂取する又は投与される対象は、その乳幼児期に、飼育者との分離を経験してもよいし、経験しなくてもよい。
【0023】
本発明の組成物は、対象が乳幼児期に摂取する又は投与されるものである。
本発明の「乳幼児期」とは、「乳児期及び幼児期」を指すものとする。
【0024】
本発明の「乳児期」とは、対象がヒトである場合には、出生時から満1歳未満(満1歳を迎える日の前日まで)を指すものとする。「乳児期」とは、母乳などの乳を主な栄養源としている時期を指すものとする。
【0025】
本発明の「幼児期」とは、対象がヒトである場合には、満1歳を迎えた日から学童期に入る前までを指すものとする。好ましくは、満1歳を迎えた日から、満6歳を迎える日及び小学校就学日のいずれか早い日の前日までを指すものとし、また、満1歳を迎えた日から満6歳を迎える日の前日であってもよい。
【0026】
よって、本発明の組成物は、対象がヒトである場合には、出生時から学童期に入る前までに摂取する又は投与されるものであることが好ましい。尚、対象がヒト以外の哺乳動物である場合には、「学童期」を「成長期」と読み替えるものとする。
【0027】
また、本発明の組成物は、対象がヒトである場合には、出生時から満3歳未満(満3歳を迎える日の前日まで)に摂取する又は投与されるものであることがより好ましく、乳児期に摂取する又は投与されるものであることがさらに好ましく、満3か月から満1歳未満(満1歳を迎える日の前日まで)に摂取する又は投与されるものであることがよりさらに好ましい。
【0028】
対象がヒト以外の哺乳動物である場合の当該時期については、これらに相当する時期に換算すればよい。
例えば、後述する実施例ではラットを用いた実験結果を示す。
対象がヒトである場合の「乳児期」は、ラットにおいては出生時から満20日齢に相当する。以下同様に、ウシにおいては出生時から満10週齢となる日の前日に相当する。ヤギにおいては出生時から満10週齢となる日の前日に相当する。ヒツジにおいては出生時から満12週齢となる日の前日に相当する。ブタにおいては出生時から満8週齢となる日の前日に相当する。サルにおいては出生時から満14週齢となる日の前日に相当する。イヌにおいては出生時から満6週齢となる日の前日に相当する。ネコにおいては出生時から満6週齢となる日の前日に相当する。マウスにおいては出生時から満20日齢に相当する。ハムスターにおいては出生時から満20日齢に相当する。モルモットにおいては出生時から満20日齢に相当する。
【0029】
対象がヒトである場合の「幼児期」は、ラットにおいては満21日齢から満5週齢となる日の前日に相当する。以下同様に、ウシにおいては満10週齢から満1歳となる日の前日に相当する。ヤギにおいては満10週齢から満1歳となる日の前日に相当する。ヒツジにおいては満12週齢から満1歳となる日の前日に相当する。ブタにおいては満8週齢から満4か月齢となる日の前日に相当する。サルにおいては満14週齢から満1.5歳となる日の前日に相当する。イヌにおいては満6週齢から満6か月齢となる日の前日に相当する。ネコにおいては満6週齢から満6か月齢となる日の前日に相当する。マウスにおいては満21日齢から満5週齢となる日の前日に相当する。ハムスターにおいては満21日齢から満5週齢となる日の前日に相当する。モルモットにおいては満21日齢から満5週齢となる日の前日に相当する。
【0030】
対象がヒトである場合の「満3歳」は、ラットにおいては満4週齢に相当する。以下同様に、ウシにおいては満6か月齢に相当する。ヤギにおいては満6か月齢に相当する。ヒツジにおいては満6か月齢に相当する。ブタにおいては満3か月齢に相当する。サルにおいては満9か月齢に相当する。イヌにおいては満3か月齢に相当する。ネコにおいては満3か月齢に相当する。マウスにおいては満4週齢に相当する。ハムスターにおいては満4週齢に相当する。モルモットにおいては満4週齢に相当する。
【0031】
対象がヒトである場合の「満3か月」は、ラットにおいては満5日齢に相当する。以下同様に、ウシにおいては満2.5週齢に相当する。ヤギにおいては満2.5週齢に相当する。ヒツジにおいては満3週齢に相当する。ブタにおいては満2週齢に相当する。サルにおいては満3週齢に相当する。イヌにおいては満1.5週齢に相当する。ネコにおいては満1.5週齢に相当する。マウスにおいては満5日齢に相当する。ハムスターにおいては満5日齢に相当する。モルモットにおいては満5日齢に相当する。
【0032】
対象がヒトである場合の「満1歳」は、ラットにおいては満21日齢に相当する。以下同様に、ウシにおいては満10週齢に相当する。ヤギにおいては満10週齢に相当する。ヒツジにおいては満12週齢に相当する。ブタにおいては満8週齢に相当する。サルにおいては満14週齢に相当する。イヌにおいては満6週齢に相当する。ネコにおいては満6週齢に相当する。マウスにおいては満21日齢に相当する。ハムスターにおいては満21日齢に相当する。モルモットにおいては満21日齢に相当する。
【0033】
本発明の組成物は、それを乳幼児期に摂取した又は投与された対象の学童期において、該対象の記憶能を向上する作用を有する。
本発明の「学童期」とは、対象がヒトである場合には、満6歳を迎える日及び小学校就学日のうちのいずれか早い日から、満12歳を迎える日及び小学校就学終了日のうちのいずれか遅い日までを指すものとし、また、満6歳を迎える日から満12歳を迎える日であってもよい。尚、対象がヒト以外の哺乳動物である場合には、「学童期」を「成長期」と読み替えるものとする。
【0034】
対象がヒト以外の哺乳動物である場合の当該時期については、これらに相当する時期に換算すればよい。
例えば、後述する実施例ではラットを用いた実験結果を示す。
対象がヒトである場合の「学童期」は、ラットにおいては満5週齢から満8週齢までに相当する。以下同様に、ウシにおいては満1歳から満2歳に相当する。ヤギにおいては満1歳から満2歳に相当する。ヒツジにおいては満1歳から満2歳に相当する。ブタにおいては満4か月齢から満7か月齢に相当する。サルにおいては満1.5歳から満3歳に相当する。イヌにおいては満6か月齢から満1歳に相当する。ネコにおいては満6か月齢から満1歳に相当する。マウスにおいては満5週齢から満8週齢に相当する。ハムスターにおいては満5週齢から満8週齢に相当する。モルモットにおいては満5週齢から満8週齢に相当する。
【0035】
本発明の記憶能は、作業記憶能と参照記憶能とを含む。尚、作業記憶能はワーキングメモリ、空間作業記憶能、短期記憶能と称されることがあるが、本発明での作業記憶能とは、活動とともに取得された情報(空間認識、情動、感覚など)を総合的に情報処理し、短期的に記憶することで、作業をより効率的に実行する能力とする。
一方で、参照記憶能は空間参照記憶能、長期記憶能と称されることがある。
【0036】
学童期の作業記憶能向上は、対象がラットのような哺乳動物であれば、例えば、後述の実施例のように、8方向放射状迷路試験により評価が可能である。該試験により記憶能が評価できることは当分野の技術常識である。詳細は、例えば「日薬理誌, 130,112~116(2007)」などに記載されている。簡潔に言えば、記憶能が作業記憶能である場合には、制限給餌した動物が8方向放射状迷路の8方向のアームすべてに設置された食餌をすべて回収するまでにかかった時間や一度侵入したアームに再侵入した回数で評価できる。記憶能が参照記憶能である場合には、8方向放射状迷路のうち4方向のみに食餌を設置し食餌のあるアームに正しく侵入した回数で評価できる。
対象がヒトである場合には、例えば、Automated Working Memory Assessment(AWMA)により評価が可能である。
【0037】
作業記憶能は学習の土台となる能力であるため、作業記憶能の向上により広く学習能力の向上が期待できる。
【0038】
学童期の記憶能向上によって予防又は改善され得る疾患、障害、症状、症候(本明細書では、「疾患等」と記載することがある。)としては、例えば、学習障害(例えば、読字障害、書字表出障害、計算障害、幾何学障害、失算症、失名詞症など)などが挙げられる。
【0039】
本発明の組成物における本発明の細菌の含量は、組成物の態様によって適宜設定されるが、総量で、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfu/gまたは1×105~1×1012cfu/mlの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfu/gまたは1×106~1×1010cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfu/gまたは1×106~1×109cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましい。
尚、本明細書では、「cfu」は、colony forming unit(コロニー形成単位)を表す。また、本明細書では、本発明の細菌が死菌の場合、cfu/gまたはcfu/mlは、個細胞/gまたは個細胞/mlと置き換えることができる。
【0040】
本発明の組成物の摂取量又は投与量は、組成物の形態、用法、対象、対象の齢、性別、及びその他の条件等により適宜設定されるが、それを乳幼児期に摂取した又は投与された対象の学童期において、該対象の記憶能を向上する作用が発揮される限り特に制限されない。本発明の細菌の総量として、1日当たりかつ100g体重当たり、1×104~1×1013cfuの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfuの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfuの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfuの範囲内であることがさらに好ましい。
尚、本明細書では、本発明の細菌が死菌の場合、cfuは、個細胞と置き換えることができる。
また、本発明の組成物は、1日1回又は複数回に分けて摂取又は投与することができる。また、数日又は数週間に1回の摂取又は投与としてもよいが、毎日投与することが好ましい。また、投与期間は7日以上が好ましい。
【0041】
本発明の組成物は、経口的に摂取する又は投与することができるが、これに限られず、例えば経鼻的に摂取又は投与するもの、胃瘻や腸瘻により摂取又は投与するものでもよい。例えば、対象に対して経鼻胃栄養チューブ等によって摂取又は投与してもよい。
【0042】
本発明の組成物は、飲食品組成物、飼料組成物、又は医薬組成物として利用できる。
例えば、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分とする、学童期の記憶能向上のための乳幼児用飲食品組成物;
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分とする、成長期の記憶能向上のための乳幼児用飼料組成物;又は、
ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを有効成分とする、学童期の記憶能向上のための乳幼児用医薬組成物を提供することができる。
以下、それぞれ、「本発明の飲食品組成物」、「本発明の飼料組成物」、「本発明の医薬組成物」と記載することがある。
【0043】
本発明の飲食品組成物は、本発明の細菌を含有する限り特に制限されない。飲食品組成物としては、液状、ペースト状、ゲル状固体、粉末等の形態を問わず、飲食品であってもよく、錠菓、流動食等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品;水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、グミ、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、ゼリー、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶漬けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;特別用途食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品);栄養補助食品等が挙げられる。
また、本発明の飲食品組成物は、サプリメントであってもよく、例えばタブレット状のサプリメントであってもよい。サプリメントである場合には、一日当りの食事量及び摂取カロリーについて他の食品に影響されることなく、本発明の細菌を摂取できる。
【0044】
本発明の飲食品組成物は、通常の飲食品の原料に、本発明の細菌を添加することにより製造することができ、本発明の細菌を添加すること以外は、通常の飲食品と同様にして製造することができる。本発明の細菌の添加は、飲食品組成物の製造工程のいずれの段階で行ってもよい。また、添加した本発明の細菌による発酵工程を経て、飲食品組成物が製造されてもよい。そのような飲食品組成物としては、乳酸菌飲料、及び発酵乳等が挙げられる。また、搾乳された母乳や調製乳に添加する態様も挙げられ、添加後の乳を乳幼児に摂取させることも想定される。
【0045】
本発明の飲食品組成物には、飲食品組成物製造のための原料、及び食品添加物等、飲食品組成物の製造工程又は製造後に飲食品組成物に添加されるものも含まれる。例えば、本発明の細菌は、発酵乳製造用スターターとして使用することができる。また、本発明の細菌を、製造された発酵乳に後から添加することもできる。
【0046】
また、本発明の飲食品組成物には、本発明の効果を損なわない限り、公知の又は将来的に見出されるプレバイオティクス効果を有する成分又はプレバイオティクス効果を補助する成分を使用することができる。例えば、本発明の飲食品組成物は、ホエイタンパク質、カゼインタンパク質、大豆タンパク質、若しくはエンドウ豆タンパク質(ピープロテイン)等の各種タンパク質若しくはその混合物、分解物;ロイシン、バリン、イソロイシン若しくはグルタミン等のアミノ酸;ビタミンB6若しくはビタミンC等のビタミン類;クレアチン;クエン酸;フィッシュオイル;又は、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース等のオリゴ糖等の成分と、本発明の細菌とを配合して製造することができる。
【0047】
本発明の飲食品組成物における本発明の細菌の含量は、飲食品組成物の態様によって適宜設定されるが、総量で、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfu/gまたは1×105~1×1012cfu/mlの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfu/gまたは1×106~1×1010cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfu/gまたは1×106~1×109cfu/mlの範囲内であることがよりさらに好ましい。
【0048】
本発明の飲食品組成物の摂取量は、飲食品組成物の形態、用法、対象、対象の齢、性別、及びその他の条件等により適宜設定されるが、それを乳幼児期に摂取した対象の学童期において、該対象の記憶能を向上する作用が発揮される限り特に制限されない。本発明の細菌の総量として、1日当たりかつ100g体重当たり、1×104~1×1013cfuの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfuの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfuの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfuの範囲内であることがさらに好ましい。
尚、本発明の飲食品組成物は、1日1回又は複数回に分けて摂取することができる。また、数日又は数週間に1回の摂取としてもよいが、毎日投与することが好ましい。また、投与期間は7日以上が好ましい。
【0049】
本発明の飲食品組成物は、単独で摂取してもよいし、他の飲食品組成物若しくは飲食品又は医薬組成物若しくは医薬と共に摂取してもよい。例えば、学童期の記憶能向上のための、他の乳幼児用飲食品組成物若しくは乳幼児用飲食品又は乳幼児用医薬組成物若しくは乳幼児用医薬等と共に摂取してもよい。
【0050】
本発明の飲食品組成物は、乳幼児用であって、その成長後の学童期の記憶能向上のため等との用途が表示された飲食品組成物又は飲食品として販売することができる。また、これ以外でも、上記用途によって二次的に生じる効果を表す文言であれば、使用できることはいうまでもない。
【0051】
前記「表示」とは、需要者に対して上記用途を知らしめるための全ての行為を意味し、上記用途を想起・類推させうるような表示であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び媒体等の如何に拘わらず、すべて本発明の「表示」に該当する。しかしながら、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により表示することが好ましい。
具体的には、本発明の飲食品組成物又は飲食品に係る商品又は商品の包装に上記用途を記載する行為、商品又は商品の包装に上記用途を記載したものを譲渡し、引渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁気的(インターネット等)方法により提供する行為等が例示でき、特に包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等への表示が好ましい。
【0052】
また、表示としては、行政等によって許可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示)であることが好ましい。例えば、保健機能食品など、より具体的には保健機能食品、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、栄養機能食品、医薬用部外品等としての表示を例示することができ、その他消費者庁によって認可される表示、例えば、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、これに類似する制度にて認可される表示を例示できる。後者の例としては、特定保健用食品としての表示、条件付き特定保健用食品としての表示、身体の構造や機能に影響を与える旨の表示、疾病リスク低減表示、科学的根拠に基づいた機能性の表示等を例示することができる。さらに詳細には、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令(平成二十一年八月三十一日内閣府令第五十七号)に定められた特定保健用食品としての表示(特に保健の用途の表示)、及びこれに類する表示等を例示することができる。
【0053】
さらに、対象がヒトである場合であって、対象が乳幼児期に摂取するものである場合の本発明の飲食品組成物の一例として、乳児用ミルク(例えば、乳児用調製粉乳等)や幼児用ミルク(例えば、幼児用調製粉乳等)が挙げられる。本発明におけるラクトフェリン;ヒトミルクオリゴ糖、フラクトオリゴ糖及びガラクトオリゴ糖などのプレバイオティクス;カゼイン、大豆、ホエイ又はスキムミルク由来のタンパク質;ラクトース、サッカロース、マルトデキストリン、デンプンまたはそれらの混合物などの炭水化物;脂質(例えば、パームオレイン、ヒマワリ油、ヒマワリ油);及び、日常の食物に不可欠なビタミン類及びミネラル等を含有することができ、また、これらの群から選択される1種又は2種以上を含有することができる。特に、当該「乳児用ミルク」は、好ましくは生後4~12ヶ月、より好ましくは生後4~6ヶ月の乳児が母乳の代わりとして飲むことができるように意図された、それだけで乳児の栄養的要求を満たす食品をいう。
【0054】
本発明の飼料組成物としては、ペットフード、家畜飼料、及び養魚飼料等が例示される。本発明の飼料組成物は、一般的な飼料又はその原料、例えば、穀類、粕類、糠類、魚粉、骨粉、油脂類、脱脂粉乳、ホエー、鉱物質飼料、又は酵母類等に本発明の細菌を混合することにより製造することができる。製造された飼料組成物は、一般的な哺乳動物、家畜類、養魚類、及び愛玩動物等に投与することが可能である。
【0055】
本発明の飼料組成物における本発明の細菌の含量は、飼料組成物の態様によって適宜設定されるが、総量で、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfu/gまたは1×105~1×1012cfu/mlの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfu/gまたは1×106~1×1010cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfu/gまたは1×106~1×109cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましい。
【0056】
対象に対する本発明の飼料組成物の投与量は、飼料組成物の形態、用法、対象、対象の齢、性別、及びその他の条件等により適宜設定されるが、それを乳幼児期に投与された対象の成長期において、該対象の記憶能を向上する作用が発揮される限り特に制限されない。本発明の細菌の総量として、1日当たりかつ100g体重当たり、1×104~1×1013cfuの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfuの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfuの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfuの範囲内であることがさらに好ましい。
尚、本発明の飼料組成物は、1日1回又は複数回に分けて対象に投与することができ、また、数日又は数週間に1回の投与としてもよいが、毎日投与することが好ましい。また、投与期間は7日以上が好ましい。
【0057】
本発明の飼料組成物は、単独で対象に投与してもよいし、他の飼料組成物若しくは飼料又は医薬組成物若しくは医薬と共に投与してもよい。例えば、成長期の記憶能向上のための、他の乳幼児用飼料組成物若しくは乳幼児用飼料又は乳幼児用医薬組成物若しくは乳幼児用医薬等と共に投与してもよい。
【0058】
本発明の医薬組成物は、本発明の細菌を含有する限り特に制限されない。本発明の医薬組成物としては、本発明の細菌をそのまま使用してもよく、生理的に許容される液体又は固体の製剤担体を配合し製剤化して使用してもよい。
【0059】
本発明の医薬組成物の剤形は特に制限されず、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤、及び点鼻剤等を例示できる。また、製剤化にあたっては、製剤担体として通常使用される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、界面活性剤、又は注射剤用溶剤等の添加剤を使用することができる。
【0060】
また、前記製剤担体としては、剤形に応じて、各種有機又は無機の担体を用いることができる。固形製剤の場合の担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0061】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、マンニット、ソルビット等の糖誘導体;トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、α‐デンプン、デキストリン、カルボキシメチルデンプン等のデンプン誘導体;結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルラン;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウム等の珪酸塩誘導体;リン酸カルシウム等のリン酸塩誘導体;炭酸カルシウム等の炭酸塩誘導体;硫酸カルシウム等の硫酸塩誘導体等が挙げられる。
【0062】
結合剤としては、例えば、上記賦形剤の他、ゼラチン;ポリビニルピロリドン;マクロゴール等が挙げられる。
【0063】
崩壊剤としては、例えば、上記賦形剤の他、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン等の化学修飾されたデンプン又はセルロース誘導体等が挙げられる。
【0064】
滑沢剤としては、例えば、タルク;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;コロイドシリカ;ピーガム、ゲイロウ等のワックス類;硼酸;グリコール;フマル酸、アジピン酸等のカルボン酸類;安息香酸ナトリウム等のカルボン酸ナトリウム塩;硫酸ナトリウム等の硫酸塩類;ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム等のラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物等の珪酸類;デンプン誘導体等が挙げられる。
【0065】
安定剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等のアルコール類;塩化ベンザルコニウム;無水酢酸;ソルビン酸等が挙げられる。
【0066】
矯味矯臭剤としては、例えば、甘味料、酸味料、香料等が挙げられる。
なお、経口投与用の液剤の場合に使用する担体としては、水等の溶剤、矯味矯臭剤等が挙げられる。
【0067】
本発明の医薬組成物における本発明の細菌の含量は、剤形、用法、対象、対象の齢、性別、疾患等の種類、その程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、総量で、1×104~1×1013cfu/gまたは1×104~1×1013cfu/mlの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfu/gまたは1×105~1×1012cfu/mlの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfu/gまたは1×106~1×1010cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfu/gまたは1×106~1×109cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましい。
【0068】
対象に対する本発明の医薬組成物の投与量は、剤形、用法、対象、対象の齢、性別、疾患等の種類、その程度、及びその他の条件等により適宜設定されるが、それを乳幼児期に投与された対象の学童期において、該対象の記憶能を向上する作用が発揮される限り特に制限されない。本発明の細菌の総量として、1日当たりかつ100g体重当たり、1×104~1×1013cfuの範囲内であることが好ましく、1×105~1×1012cfuの範囲内であることがより好ましく、1×106~1×1010cfuの範囲内であることがさらに好ましく、1×106~1×109cfuの範囲内であることがさらに好ましい。
【0069】
本発明の医薬組成物の投与時期は、対象の乳幼児期であれば特に限定されず、適宜投与時期を選択することが可能である。また、予防的に投与してもよい。また、投与形態は製剤形態、対象、対象の齢、性別、疾患等の種類、その程度、その他の条件等に応じて決定されることが好ましい。なお、本発明の医薬組成物は、いずれの場合も1日1回又は複数回に分けて投与することができる。また、数日又は数週間に1回の投与としてもよいが、毎日投与することが好ましい。また、投与期間は7日以上が好ましい。
【0070】
本発明の医薬組成物は、単独で投与してもよいし、他の医薬組成物若しくは医薬、飲食品組成物若しくは飲食品、又は飼料組成物若しくは飼料と共に投与してもよい。例えば、学童期の記憶能向上のための、他の乳幼児用医薬組成物若しくは乳幼児用医薬、乳幼児用飲食品組成物若しくは乳幼児用飲食品、又は乳幼児用飼料組成物若しくは乳幼児用飼料等と共に投与してもよい。
【0071】
さらに、本発明は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕学童期の記憶能向上のための乳幼児用組成物を製造における、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスの使用。
〔2〕学童期の記憶能向上における使用のための、乳幼児用のビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス。
〔3〕ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスの予防的又は改善的有効量を、予防又は改善を必要とする乳幼児に投与する段階を含む、学童期の記憶能向上によって予防又は改善され得る疾患等の予防方法又は改善方法。
〔4〕学童期の記憶能向上のための、乳幼児用のビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスの使用。
〔5〕学童期の記憶能向上に用いられる、乳幼児用のビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス。
〔6〕ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティス、又は本発明の組成物を、乳幼児に投与する段階を含む、学童期の記憶能向上によって予防又は改善され得る疾患等を予防する方法又は改善する方法。
〔7〕ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを乳幼児に投与する段階を含む、学童期の記憶能を向上する方法;又は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスを乳幼児である対象に投与する段階を含む、対象の学童期における記憶能を向上する方法。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0073】
以下の実施例では、被験動物としてSprague-Dawley (SD)系ラット(東京実験動物株式会社)を用いた。当該ラットは、室温(22±3℃)、12時間の明暗周期(明期7:00-19:00)の飼育室にて飼育し、摂食(CE-2、日本クレア株式会社)および飲水は自由とした。
【0074】
〔実施例1〕
(被験動物の準備)
本実施例では、初回妊娠16日目の雌(F0)を、新生仔が生まれるまでの間は1ケージに1匹ずつ、外部が見えないプラスチック製の飼育ケージ(410mm×260mm)にて飼育した。出産後、新生仔(F1)は出生日をPostnatal day (PND) 0とし、PND1で同腹仔を最大10匹、雄と雌がほぼ半数ずつになるよう間引きした。
本実施例ではF1の雄のみを使用した。母子分離(Maternal separation, MS)処置前に体重測定およびアニマルマーカー(室町機械株式会社)による標識を行った。MS処置はPND5からPND21までの15時から18時の3時間行った。
MS処置の手順は次の通りである。MS処置開始の1時間前に、ホームケージを実験室(室温25℃)に移動し、環境に馴化させ、母親をホームケージから別のケージに移動させた後、仔(雄のみ隔離)をホームケージから、プラスチック製の何も入っていない個別ケージ(245mm×160mm)に移し、母親を再びホームケージに戻した。個別ケージは、アクリル製の5段デシケーター(内寸法430mm×1330mm×500mm)内にある個別ケージであり、各ケージの床下には保温マットを置いてケージの温度が25~27℃となるようにした。MS処置を行わない仔は常時母親と同居させた。
【0075】
(8方向放射状迷路試験)
PND5からPND21まで、試験群には被験物質として、生理食塩水に懸濁したビフィドバクテリウム・ロンガム・サブスピーシーズ・インファンティスNITE BP-02623(森永乳業株式会社)溶液を1日1回、5×10
8 CFU/100g体重(溶液として0.5mL/100g体重)を経口投与し、対照群にはコントロール物質として等量のSTスターチ(日澱化学株式会社)を懸濁した溶液を1日1回、経口投与した。PND42(6週齢)からPND49(7週齢)のラットを用いて8方向放射状迷路試験を行った。
本試験では、8つのアーム(55cm×10cm)とセントラルエリア(直径30cmの八角形)で構成され、各アームが透明なアクリル製の壁で囲われた装置を使用した。全アームの先端には小さく砕いたフード(CE-2、日本クレア)を設置した。
動物は、試験3日前、試験2日前、及び試験1日前に1日45分間の制限給餌を行った。また、該試験1日前には、動物を装置に入れて自由に行動させる慣らし処置も行った。その翌日を試験開始日(試験1日目)として試験6日目まで、1日1回の試験を実施した。各回の試験実施の1時間以上前にラットを試験室へ移動して馴致した。試験では、動物を装置のセントラルエリアに入れ、全アームの先端に設置したフードをすべて摂取するまでの時間(タスク達成時間)を計測するとともに、すでにフードを摂取したアームに再度侵入したエラー回数を計測した。動物の行動はビデオ録画した。
結果を
図1に示す。タスク達成時間は、試験3日目以降において、対照群に比べて試験群が低値の結果を示した。これは、タスクをより効率的に実行できるようになったという作業記憶能の向上を示している。