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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-28
(45)【発行日】2022-10-06
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20220929BHJP
   B21B 1/02 20060101ALI20220929BHJP
   G06F 3/0482 20130101ALI20220929BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G05B19/05 L
B21B1/02 Z
G06F3/0482
G06F3/01 510
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022070118
(22)【出願日】2022-04-21
【審査請求日】2022-04-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176833
【氏名又は名称】三菱製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 諒
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121351(JP,A)
【文献】特開2021-065971(JP,A)
【文献】特開2019-188531(JP,A)
【文献】特開2019-101476(JP,A)
【文献】特開2010-271928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/04-19/05
G05B 19/18-19/46
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの自由度を有する分塊圧延機を操作するための操作装置であって、
圧延材に圧下して圧延する圧延ロールと、
前記圧延材を支持して前記圧延ロールに向けて搬送するローラテーブルと、
前記ローラテーブルに支持された圧延材を前記ローラテーブルの搬送方向とは交差する方向に移動させるマニピュレータと、
複合現実の表示が可能であり、前記分塊圧延機が含まれる視界において前記分塊圧延機の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部のデータを含む画像を前記視界に重ね合わせて表示するスマートグラス
を含み、
前記分塊圧延機の少なくとも二つの自由度は、パススケジュールにしたがう前記マニピュレータによる前記圧延ロールのカリバーの選択と、前記圧延ロールの圧下量とを含む操作装置。
【請求項2】
前記スマートグラスは、前記分塊圧延機の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部のデータを含む画像が、それぞれ前記分塊圧延機の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部の該当部分に関連付けられるように表示する請求項1に記載の操作装置。
【請求項3】
前記スマートグラスは、前記分塊圧延機が含まれる視界において死角となる部分を撮像した画像をさらに表示する請求項1に記載の操作装置。
【請求項4】
前記スマートグラスは、前記視界に表示する画像の配置を任意に設定することができる請求項1に記載の操作装置。
【請求項5】
前記スマートグラスは、前記視界に表示する画像の内容の少なくも一部の選択が可能なメニューを表示し、前記メニューを操作することで前記表示する画像の内容の少なくとも一部を変更する請求項1に記載の操作装置。
【請求項6】
前記スマートグラスはスピーカを含み、前記スピーカは前記分塊圧延機の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部のデータに関連付けられた音を出力する請求項1に記載の操作装置。
【請求項7】
前記分塊圧延機に提供する制御信号を生成するプログラマブルロジックコントローラと、前記プログラマブルロジックコントローラから受け取ったデータを画像データに変換して前記スマートグラスに提供する表示器用コンピュータをさらに含む請求項に記載の操作装置。
【請求項8】
前記スマートグラスに提供する画像データは、前記パススケジュール、前記圧下量及び前記カリバーを含む請求項に記載の操作装置。
【請求項9】
ハンドヘルドコントローラと、前記ハンドヘルドコントローラから受け取った入力データを前記プログラマブルロジックコントローラに対応するように変換して前記プログラマブルロジックコントローラに提供するコントローラ用コンピュータとをさらに含む請求項に記載の操作装置。
【請求項10】
前記スマートグラスは前記パススケジュールを表示し、前記ハンドヘルドコントローラから前記パススケジュールを変更する入力があると、前記コントローラ用コンピュータは前記ハンドヘルドコントローラから入力されたデータを変換して前記プログラマブルロジックコントローラに送り、前記プログラマブルロジックコントローラは前記コントローラ用コンピュータからのデータに基づいて前記パススケジュールを変更する請求項に記載の操作装置。
【請求項11】
前記プログラマブルロジックコントローラは前記パススケジュールを変更すると前記変更したパススケジュールのデータを前記表示器用コンピュータに送り、前記表示器用コンピュータは前記プログラマブルロジックコントローラからの前記変更したパススケジュールのデータを画像データに変換して前記スマートグラスに送り、前記スマートグラスは前記変更したパススケジュールの画像を表示する請求項に記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械を操作するための操作装置に関し、例えば分塊圧延機を操作するための操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続鋳造設備から供給されるか又は加熱炉で均熱されたスラブ、ブルーム、ビレットなどの鋼塊をロールで圧延して所定のサイズの鋼片に加工するために分塊圧延機が使用されている(特許文献1を参照)。分塊圧延機の運転には、鋼塊へのロールの圧下を一人のオペレータが操作し、ロールに向けて搬送される鋼塊を搬送方向とは交差する方向に移動するマニピュレータをもう一人のオペレータが操作するため、二人のオペレータを配置していた。
【0003】
一方、作業者の視界に入る設備等の実景に稼働状況などの情報を重畳して表示することができるスマートグラスの技術が提供されている(特許文献2を参照)。また、鋼管手入れガイダンスシステムであって、鋼管の疵手入れをするオペレータに、探傷工程で検出した鋼管の疵の位置をレーザーポインターで示すとともに、何番目の疵でどの程度の疵であるかをウェアラブルモニターで眼前に表示する技術が開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-67501号公報
【文献】特開2017-102242号公報
【文献】特開2018-36139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した分塊圧延機のように、機械の有する複数の自由度について同時に操作するため、複数の運転にオペレータが必要とされることがあった。省力化の観点から、機械の運転に必要なオペレータの人員を削減することが求められている。
【0006】
この発明は、上述の実情に鑑みて提案されるものであって、運転のために複数のオペレータを必要としていた機械について、人員を削減することができるような機械の操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、この出願に係る操作装置は、少なくとも二つの自由度を有する機械を操作するためのものであって、複合現実の表示が可能であり、機械が含まれる視界において機械の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部のデータを含む画像を視界に重ね合わせて表示するスマートグラスを含む。
【0008】
スマートグラスは、機械の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部のデータを含む画像が、それぞれ機械の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部の該当部分に関連付けられるように表示してもよい。スマートグラスは、機械が含まれる視界において死角となる部分を撮像した画像をさらに表示してもよい。
【0009】
スマートグラスは、視界に表示する画像の配置を任意に設定することができてもよい。スマートグラスは、視界に表示する画像の内容の少なくも一部の選択が可能なメニューを表示し、メニューを操作することで表示する画像の内容の少なくとも一部を変更してもよい。スマートグラスはスピーカを含み、スピーカは機械の少なくとも二つの自由度の少なくとも一部のデータに関連付けられた音を出力してもよい。
【0010】
機械は、分塊圧延機であって、圧延材に圧下して圧延する圧延ロールと、圧延材を支持して圧延ロールに向けて搬送するローラテーブルと、ローラテーブルに支持された圧延材をローラテーブルの搬送方向とは交差する方向に移動させるマニピュレータとを含み、機械の少なくとも二つの自由度は、パススケジュールにしたがうマニピュレータによる圧延ロールのカリバーの選択と、圧延ロールの圧下量とを含んでもよい。
【0011】
分塊圧延機に提供する制御信号を生成するプログラマブルロジックコントローラと、プログラマブルロジックコントローラから受け取ったデータを画像データに変換してスマートグラスに提供する表示器用コンピュータをさらに含んでもよい。スマートグラスに提供する画像データは、パススケジュール、圧下量及びカリバーを含んでもよい。
【0012】
ハンドヘルドコントローラと、ハンドヘルドコントローラから受け取った入力データをプログラマブルロジックコントローラに対応するように変換してプログラマブルロジックコントローラに提供するコントローラ用コンピュータとをさらに含んでもよい。
【0013】
スマートグラスはパススケジュールを表示し、ハンドヘルドコントローラからパススケジュールを変更する入力があると、コントローラ用コンピュータはハンドヘルドコントローラから入力されたデータを変換してプログラマブルロジックコントローラに送り、プログラマブルロジックコントローラはコントローラ用コンピュータからのデータに基づいてパススケジュールを変更してもよい。
【0014】
プログラマブルロジックコントローラはパススケジュールを変更すると変更したパススケジュールのデータを表示器用コンピュータに送り、表示器用コンピュータはプログラマブルロジックコントローラからの変更したパススケジュールのデータを画像データに変換してスマートグラスに送り、スマートグラスは変更したパススケジュールの画像を表示してもよい。
【発明の効果】
【0015】
この出願に係る操作装置は、機械の運転のために必要とされていた複数の人員を削減し、省力化を実現することができる。また、オペレータの操作を支援し、オペレータによるヒューマンエラーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】操作装置の概略的な構成を示す図である。
図2】スマートグラスの斜視図である。
図3】ハンドヘルドコントローラの平面図である。
図4】分塊圧延機の平面図である。
図5】分塊圧延機の左側面図である。
図6】オペレータ室から見下ろした分塊圧延機である。
図7】オペレータ室からスマートグラスを介して見下ろした分塊圧延機である。
図8】操作装置を用いて分塊圧延機を操作する一連の工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、操作装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態では、操作対象の機械として分塊圧延機を例示するが、本実施の形態は分塊圧延機に限られずの他の種類の機械の操作に適用することもできる。
【0018】
図1は、操作装置20の概略的な構成を示す図である。操作装置20において、スマートグラス10、プロジェクタ21及びビデオカメラ22は、表示器用パーソナルコンピュータ(以下、パーソナルコンピュータは、PCという。)25に接続している。スマートグラス10と表示器用PC25は、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth)などの無線回線により接続されているが、これに限らず、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)などの有線回線によって接続されてもよい。プロジェクタ21及びビデオカメラ22と表示器用PC25とは、USBなどの有線回線により接続されている。表示器用PC25は、さらにプログラマブルロジックコントローラ(以下、プログラマブルロジックコントローラは、PLCという。)27に接続している。表示器用PC25とPLC27とは、イーサネットなどによって接続されている。
【0019】
表示器用PC25は、PLC27から提供された一般のデータをスマートグラス10及びプロジェクタ21のような表示器用の適切な画像データに変換してスマートグラス10及びプロジェクタ21に提供している。また、ビデオカメラ22から提供された映像データに所定の変換を施してスマートグラス10及びプロジェクタ21に提供している。
【0020】
また、操作装置20において、ハンドヘルドコントローラ30はコントローラ用PC26に接続し、コントローラ用PC26はイーサネットによってPLC27に接続している。ハンドヘルドコントローラ30とコントローラ用PC26とは、USBなどの有線回線によって接続されてもよいし、Bluetoothなどの無線回線により接続されてもよい。コントローラ用PC26は、ハンドヘルドコントローラ30への入力信号を一般のデータ信号に変換してPLC27に提供している。PLC27は、操作装置20の操作対象である分塊圧延機100に接続され、分塊圧延機100の運転を操作するための制御信号を生成している。PLC27には、分塊圧延機100から動作状態などを知らせる信号が送られている。
【0021】
図2は、スマートグラス10の斜視図である。スマートグラス10は、一般の眼鏡と類似した構造を有し、スマートグラス10を装着するオペレータの左眼及び右眼に対応する一組の表示部12と、表示部12を支持するとともに、左右の両端近くで耳掛けを形成するフレーム11とを有している。表示部12は、透明な樹脂などによって形成され、オペレータがスマートグラス10を装着したときに、オペレータの視界に画像などを重畳して表示することにより複合現実を実現する。スマートグラス10は、このような複合現実を可能にするように、図示しない画像を提供する光学システムや画像信号を処理するためのプロセッサを有している。また、スマートグラス10は、オペレータに対して音を発するために、左右の耳掛け少なくとも一方の付近にスピーカ13を有している。スマートグラス10は、図示しないインターフェース装置を介してブルートゥース(登録商標)やUSBなどにより表示器用PC25と通信することができる。
【0022】
図3は、ハンドヘルドコントローラ30の平面図である。ハンドヘルドコントローラ30は、コンピュータゲームを楽しむために提供されるゲーミングコントローラとしてPCのUSB端子に接続することができる各種のUSBコントローラが流通しているため、容易に入手することができる。
【0023】
ハンドヘルドコントローラ30は、操作するオペレータが両手で担持できる程度の大きさの筐体を有している。筐体の右半分の前面には、筐体の右半分の右端を右手で握ったときに右手の親指が来る位置に右スティック31が配置され、右スティック31の図中右上の親指が届く範囲に4個の押ボタンを一組として配置されたアクションボタン33が配置されている。また、筐体の右半分の上端には、筐体の右端を右手で握ったときに人差し指が来る位置に右押ボタン32が配置されている。
【0024】
ハンドヘルドコントローラ30の筐体の左半分は、筐体の右半分に略鏡映対称な形状を有している。筐体の左半分の前面には、筐体の左半分の左端を左手で握ったときに左手の親指が来る位置に左スティック37が配置され、左スティック37の図中左上の親指が届く位置に十字ボタン38が配置されている。また、筐体の左半分の上端には、筐体の左半分の左端を左手で握ったときに人差し指がある位置に左押ボタン36が配置されている。
【0025】
図4は、分塊圧延機100の平面図である。図5は、分塊圧延機100の左側面図である。図5の左側面図では、分塊圧延機100の圧下機構120のみを取り出して示している。図5に示すように、分塊圧延機100の圧下機構120は、下ロール101及び上ロール102から構成される一組の圧延ロールを有している。下ロール101及び上ロール102は挟持する圧延材の鋼塊200を回転して搬送するとともに、上ロール102は鋼塊200を圧下して鋼塊200を圧延する。下ロール101及び上ロール102には、鋼塊200を所定幅に圧延することができるように、軸方向に対応する位置に、周方向に延びる所定幅で所定深さの溝状のカリバー101a、102aが並列に形成されている。上ロール102の圧下量は、圧下機構120の上部に取り付けられた圧下量表示盤121のダイヤルゲージに表示される。
【0026】
図4に示すように、分塊圧延機100は分塊圧延のラインに沿って設けられている。ラインの上流側から供給されたスラブ、ブルーム、ビレットなどの略直方体状の鋼塊200は、ラインの方向を搬送方向として搬送され、分塊圧延機100によって加工される。ラインの上流側となる圧下機構120の前面には、ラインの上流に進む順に前面フィードローラ103、第1前面ローラテーブル104及び第2前面ローラテーブル105が設けられている。ラインの下流側となる圧下機構120の後面には、ラインの下流に進む順に後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107が設けられている。第1前面ローラテーブル104、第2前面ローラテーブル105及び後面ローラテーブル107は、鋼塊200を支持するとともに、鋼塊200をラインの上流方向又は下流方向に搬送することができる。前面フィードローラ103及び後面フィードローラ106は、それぞれ鋼塊200を支持し、鋼塊200を圧下機構120に向けて供給する。なお、分塊圧延機100には第2前面ローラテーブル105のラインの上流側にさらに他のローラテーブルが設けられてもよく、後面ローラテーブル107の下流側にさらに他のローラテーブルが設けられてもよい。
【0027】
第1前面ローラテーブル104の上には、ワークサイドから延び、第1前面ローラテーブル104に支持された鋼塊200を押してドライブサイドに向けて移動させる前面ワークサイドマニピュレータ111と、ドライブサイドから延び、第1前面ローラテーブル104に支持された鋼塊200を押してワークサイドに向けて移動させる前面ドライブサイドマニピュレータ112とが設けられている。ここで、ワークサイドは、分塊圧延機100のラインセンターに対して作業側であり図中下側である。ドライブサイドは、ラインセンターに対して駆動装置が設置された側であり、図中上側である。前面ワークサイドマニピュレータ111及び前面ドライブサイドマニピュレータ112は、第1前面ローラテーブル104の上で対向し、それぞれラインを横切る方向、すなわち鋼塊200の搬送方向を横切る方向について駆動される。そして、前面ワークサイドマニピュレータ111及び前面ドライブサイドマニピュレータ112は、鋼塊200が圧下機構120の下ロール101及び上ロールの所望のカリバー101a、102aに向かうように鋼塊200の位置を設定する。
【0028】
前面ワークサイドマニピュレータ111には、第1前面ローラテーブル104に支持された鋼塊200を転回させるためのフック119が設けられている。このフック119は、略直方体状の形状を有する鋼塊200に前面ワークサイドマニピュレータ111を当接させ、搬送方向に延びる鋼塊200の角部に引っ掛けて持ち上げることにより、鋼塊200の略矩形状の断面について搬送方向を軸として鋼塊200を略90度の転回をさせて圧下向きを変えるための転回装置を構成している。
【0029】
後面ローラテーブル107の上には、ワークサイドから延び、後面ローラテーブル107に支持された鋼塊200を押してドライブサイドに向けて移動させる後面ワークサイドマニピュレータ113と、ドライブサイドから延び、後面ローラテーブル107に支持された鋼塊200を押してワークサイドに向けて移動させる後面ドライブサイドマニピュレータ114とが設けられている。後面ワークサイドマニピュレータ113及び後面ドライブサイドマニピュレータ114は、後面ローラテーブル107の上で対向し、それぞれ鋼塊200の搬送方向を横切る方向について駆動される。そして、後面ワークサイドマニピュレータ113及び後面ドライブサイドマニピュレータ114は、鋼塊200が圧下機構120の下ロール101及び上ロールの所望のカリバー101a、102aに向かうように鋼塊200の位置を設定する。
【0030】
図4には、オペレータ室50も示されている。オペレータ室50は、分塊圧延機100に鋼塊200が供給される第1前面ローラテーブル104、第2前面ローラテーブル105などのラインの上流側の真上に設けられている。オペレータ室50においては、圧下機構120の左側面を見下ろすことができるように、窓ガラスが嵌められた窓51の窓際に向かって作業台56とオペレータ席55とが設けられている。作業台56には、オペレータ席55に座ったオペレータが装着するスマートグラス10、オペレータが操作するハンドヘルドコントローラ30が用意されている。また、作業台56上にはプロジェクタ21も備えられている。プロジェクタ21は、窓ガラスや図示しないスクリーンに画像を投影することができる。
【0031】
また、図4には、ビデオカメラ22も示されている。ビデオカメラ22は、圧下機構120の右側面側に設置されている。ビデオカメラ22は、オペレータ席55のオペレータからは死角になるような圧下機構120の後面となる圧下機構120の右側面側の映像を撮像している。
【0032】
図6は、オペレータ室50の窓51から見下ろした分塊圧延機100を示す図である。正面には分塊圧延機100の対向する圧下機構120の左側面が見え、窓51の真下から圧下機構120に向かって第1前面ローラテーブル104など圧下機構120の上流側のラインが延びている。圧下機構120の圧下量表示盤121には、上ロール102の圧下量が表示されている。第1前面ローラテーブル104上にはラインの方向を長手方向として鋼塊200が載置されている。鋼塊200は、圧下機構120の下ロール101及び上ロールの所望のカリバー101a、102aに向かうように、前面ワークサイドマニピュレータ111及び前面ドライブサイドマニピュレータ112によって、鋼塊200の搬送方向を横切る方向について位置が設定されている。
【0033】
図7は、オペレータ室50からスマートグラス10を介して見下ろした分塊圧延機100を示す図である。スマートグラス10の表示部12には分塊圧延機100に重畳して画像が表示されることにより複合現実が実現されている。詳しくは、分塊圧延機100を含む視界内において、分塊圧延機100に一部が重なるように、表示部12に表示する画像の種類のメニューとなる画像一覧の画像301が表示されている。画像一覧の画像301においては、表示可能な画像の種類として、圧下量表示画像、パススケジュール画像及び後面モニタ画像の3種類が、それぞれの選択又は非選択を示すチェックボックスとともに示されている。なお、表示可能な画像には、表や文字なども含まれるものとする。対応するチェックボックスを選択又は非選択とすることにより該当する種類の表示又は非表示とを切り替えることができるが、圧下量表示画像、パススケジュール画像及び後面モニタ画像のいずれもチェックボックスにチェックが入れられて選択され、これらすべての種類が表示されている。このような画像一覧の画像301における選択又は非選択は、ハンドヘルドコントローラ30を操作することで入力することができる。視界における画像一覧の画像301の位置も、ハンドヘルドコントローラ30を操作することで上下及び左右の方向に移動することができる。
【0034】
同様にスマートグラス10を介する分塊圧延機100を含む視野において、上ロール102の圧下量を示す圧下量表示画像302が、関連する上ロール102の近くの位置に分塊圧延機に100に一部が重なるように表示されている。圧下量表示画像302には、「ロール圧下量」のタイトルとロール圧下量の数値が表示されている。パススケジュールを示すパススケジュール画像303も、関連する下ロール101及び上ロール102の近くの位置に分塊圧延機100に一部が重なるように表示されている。パススケジュール画像303には、「パススケジュール」のタイトルと、対応するパス番号、カリバー番号及び鋼塊200の厚さが表として表示されている。カリバー番号はパススケジュール画像303に含まれているが、圧延に使用するカリバー番号を表示する別の画像を追加してもよい。視界における圧下量表示画像302及びパススケジュール画像303の位置も、それぞれハンドヘルドコントローラ30を操作することで上下及び左右の方向に移動することができる。
【0035】
図4に示したようにビデオカメラ22は分塊圧延機100の右側面側に配置され、オペレータ室50の視点からは圧下機構120の後面側にある。ビデオカメラ22によって撮像した映像を表示する後面モニタ画像304は、関連する圧下機構120と重なるように表示されている。後面モニタ画像304も、ハンドヘルドコントローラ30を操作することで上下及び左右の方向に移動することができる。
【0036】
図8は、操作装置20を用いて分塊圧延機100を操作する分塊圧延の一連の工程を示すフローチャートである。操作装置20を用いて分塊圧延機100を操作するときには、一人のオペレータがオペレータ室50のオペレータ席55に作業台56に向かって座り、スマートグラス10を装着して窓51から操作対象の分塊圧延機100を見下ろして作業の状況を確認しながら両手で把持したハンドヘルドコントローラ30を操作する。このとき、スマートグラス10の表示部12には図7に示したように、見下ろした分塊圧延機100に重畳して圧下量表示画像302、パススケジュール画像303及び後面モニタ画像304が表示され、複合現実が実現される。分塊圧延の一連の工程は、このような複合現実の環境において実施される。
【0037】
最初のステップS1においては、第1前面ローラテーブル104及び第2前面ローラテーブル105を駆動し、ラインの上流側にある連続鋳造設備又は加熱炉から搬送されてきた鋼塊200を受け入れる。オペレータはハンドヘルドコントローラ30を操作し、ラインの上流側から鋼塊200を受け入れ、順に第2前面ローラテーブル105及び第1前面ローラテーブル104によって搬送し、第1前面ローラテーブル104において対向する前面ワークサイドマニピュレータ111と前面ドライブサイドマニピュレータ112との間で支持されるようにする。
【0038】
ステップS1において、第2前面ローラテーブル105及び第1前面ローラテーブル104におけるラインの下流方向への鋼塊200の搬送は、ハンドヘルドコントローラ30の例えば十字ボタン38に割り付けてもよい。例えば、オペレータが十字ボタン38の上側を押すことによって鋼塊200のラインの下流への搬送を指示してもよい。なお、十字ボタン38の左側を押すことによって下流への搬送を指示してもよく、十字ボタン38を離すと鋼塊200の搬送が停止されてもよい。第2前面ローラテーブル105及び第1前面ローラテーブル104のラインの下流側にある前面フィードローラ103、後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107も第2前面ローラテーブル105及び第1前面ローラテーブル104に同期して鋼塊200をラインの上流方向又は下流方向へ搬送するように構成されていてもよい。
【0039】
ステップS2においては、鋼塊200を転回する。ステップS1において第1前面ローラテーブル104において対向する前面ワークサイドマニピュレータ111と前面ドライブサイドマニピュレータ112との間で支持された鋼塊200に向けて前面ワークサイドマニピュレータ111を前進させ、前面ワークサイドマニピュレータ111が略直方体状の鋼塊200に一つの面に当接するようにする。前面ワークサイドマニピュレータ111の前進と同時に、前面ドライブサイドマニピュレータ112を後退させてもよい。そして、鋼塊200の一つの面に当接した前面ワークサイドマニピュレータ111に設けられているフック119を鋼塊200の下に差し込み、鋼塊200の一つの面の下の角部に引っ掛けて持ち上げ、鋼塊200がラインに沿った搬送方向を軸として略90度にわたり回転し、一つの面が上になるように転回させる。
【0040】
ステップS2における前面ワークサイドマニピュレータ111の操作は、ハンドヘルドコントローラ30の例えば右スティック31を操作することによって、前面ワークサイドマニピュレータ111の動作を指示してもよい。例えば、オペレータが右スティック31を左に倒すことによって前面ワークサイドマニピュレータ111の前進を指示し、右に倒すことによって後退を指示してもよい。右スティック31によって強さが3段階に制御でき、右スティック31を左右に倒す角度に応じて前面ワークサイドマニピュレータ111を前後に移動させる位置を3段階で指示できるようにしてもよい。右スティック31によって前面ワークサイドマニピュレータ111を前後に移動させる3段階に応じて、スマートグラス10のスピーカ13から区別できるような音を出力してオペレータに知らせるようにしてもよい。
【0041】
同様に、ハンドヘルドコントローラ30の右スティック31を操作することによって、前面ドライブサイドマニピュレータ112の動作を指示してもよい。例えば、オペレータが右スティック31を上に倒すことによって前面ドライブサイドマニピュレータ112の前進を指示し、下に倒すことによって後退を指示してもよい。前面ドライブサイドマニピュレータ112についても、右スティック31を上下に倒す角度に応じて前面ワークサイドマニピュレータ111を前後に移動させる位置を3段階で指示してもよい。右スティック31によって前面ドライブサイドマニピュレータ112を前後に移動させる3段階に応じて、スマートグラス10のスピーカ13から区別できるような音を出力してオペレータに知らせるようにしてもよい。前面ドライブサイドマニピュレータ112に対応する音は、前面ワークサイドマニピュレータ111と対応する音と区別できるような音であってもよい。
【0042】
鋼塊200の角部に前面ワークサイドマニピュレータ111のフック119を引っ掛けて持ち上げ、鋼塊200を転回させる操作は、ハンドヘルドコントローラ30の例えば左スティック37を操作することによって、フック119の上下方向の位置を指示してもよい。例えば左スティック37を下に倒すとフック119が上昇し、下に倒すと下降するようにすることができる。右スティック31と同様に、左スティック37も強さの程度を3段階で指示することができ、左スティック37を上下に倒す角度に応じてフック119を上昇又は下降させる位置を3段階で指示するようにしてもよい。左スティック37によってフック119を上昇又は下降させる3段階の位置に応じて、スマートグラス10のスピーカ13から区別できるような音を出力してオペレータに知らせるようにしてもよい。フック119に対応する音は、前面ワークサイドマニピュレータ111及び前面ドライブサイドマニピュレータ112に対応する音と区別できるような音であってもよい。
【0043】
ステップS3においては、鋼塊200を位置決めする。鋼塊200は、ステップS2において転回されて第1前面ローラテーブル104に支持されている。位置決めは、前面ワークサイドマニピュレータ111の前進又は前面ドライブサイドマニピュレータ112の前進によって鋼塊200をラインに交差する方向、すなわち搬送方向に交差する方向に所定の位置まで移動させることによって行う。オペレータは、スマートグラス10の表示部12において分塊圧延機100を含む視界内に表示されたパススケジュール画像303を見て第1回のパスが第2カリバーであることを確認し、鋼塊200が下ロール101及び上ロール102に形成された複数のカリバー101a、102aの内で第2カリバーに対応する位置にあるように移動させる。
【0044】
なお、必要がある場合には、オペレータはパススケジュール画像303に表示されたパススケジュールを変更することができる。この場合には、ハンドヘルドコントローラ30の適切なボタンを操作して分塊圧延機100を操作するモードからパススケジュールの編集などをするモードに切り換える。そして、スマートグラス10の表示部12に表示されたパススケジュール画像303を見ながらハンドヘルドコントローラ30を操作してパススケジュールを編集する。例えば、パスの削除や追加をしたり、特定のパスのカリバーや数値を変更したりすることができる。ハンドヘルドコントローラ30に入力されたパススケジュールを変更するデータは、コントローラ用PC26によってPLC27に対応する一般のデータに変換されてPLC27に送られ、PLC27においてパススケジュールが変更される。PLC27において変更されたパススケジュールは、一般のデータとしてコントローラ用PC26に送られ、画像データに変換されてスマートグラス10に送られ、変更されたパススケジュール画像303として表示される。パススケジュールの編集を終えると、オペレータはハンドヘルドコントローラ30の適切なボタンを操作してパススケジュールの編集などをするモードから分塊圧延機100を操作するモードに切り換える。
【0045】
ステップS4においては、1パス目の圧延のために上ロール102を所定の位置まで移動する。このため、ハンドヘルドコントローラ30の例えばアクションボタン33の4つのボタンの内で上部のボタンに上ロール102を上昇させる動作に割り当て、下部のボタンに上ロール102を下降させる動作に割り当て、オペレータが上部のボタン及び下部のボタンを操作することにより、上ロール102が所定の高さに移動するようにしてもよい。オペレータは、スマートグラス10の表示部12において分塊圧延機100を含む視界内に表示されたパススケジュール画像303を見て第1回のパスでは第2カリバーで鋼塊200を厚さ310.0mmに圧延することを確認し、圧下量表示画像302を見ながら上ロール102が適切な圧下量になるようにアクションボタン33の上部のボタン又は下部のボタンを押して上ロール102の昇降を操作する。ここで、上ロール102の圧下量は、圧下量表示盤121にも表示されるが、圧下量表示画像302には数値となって表示される。
【0046】
ステップS5においては、1パス目の圧延を実行する。ステップS3において第1前面ローラテーブル104上で第2カリバーに対応するように位置決めされていた鋼塊200を第1前面ローラテーブル104、前面フィードローラ103、後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107によって圧下機構120を超えてラインの下流方向に向かうように所定の速度で搬送する。圧下機構120においては、下ロール101及び上ロール102は上流方向に隣接する前面フィードローラ103から供給された鋼塊200をラインの下流方向に送るように所定の回転方向(以下、順方向という。)に回転するとともに、鋼塊200が第2カリバーによって所定の厚さまで圧延され、下流方向に隣接する後面フィードローラ106に進むようにする。1パス目の圧延を終えた鋼塊200は、ラインの下流方向に後面フィードローラ106を越えて後面ローラテーブル107まで搬送される。
【0047】
第1前面ローラテーブル104、前面フィードローラ103、後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107による鋼塊200のラインの下流方向への搬送は、ステップS1と同様に、ハンドヘルドコントローラ30の例えば十字ボタン38を操作することによってもよい。例えば、オペレータが十字ボタン38の上側を押すことによって鋼塊200のラインの下流への搬送を指示してもよい。なお、十字ボタン38の下側を押すことによって上流への搬送を指示してもよく、十字ボタン38を離すと鋼塊200の搬送が停止されてもよい。第1前面ローラテーブルのラインの下流側にある前面フィードローラ103、後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107は、第1前面ローラテーブル104に同期して鋼塊200をラインの上流方向又は下流方向に搬送するように構成されていてもよい。
【0048】
圧下機構120の下ロール101及び上ロール102の回転は、ハンドヘルドコントローラ30の例えば左押ボタン36を押圧することによって始動可能とされ、さらに例えば十字ボタン38の上側を押して鋼塊200をラインの下流側に搬送する指示を出すことによって順方向の回転が始動されてもよい。鋼塊200は圧延を終えると、圧下機構120からラインの下流方向に後面フィードローラ106を越えて搬送されて後面ローラテーブル107上に支持される。圧下機構120の下ロール101及び上ロール102は、圧延を終えると回転が自動的に停止されてもよい。ここで、後面ローラテーブル107上に支持された鋼塊200のように圧下機構120の下流側はオペレータ室50からの死角となってオペレータが目視することはできないが、スマートグラス10の表示部12において分塊圧延機100を含む視界内に表示された後面モニタ画像304の映像によって確認することができる。
【0049】
ステップS6においては、2パス目の圧延のために上ロール102を所定の位置まで移動する。このため、ハンドヘルドコントローラ30の例えばアクションボタン33の4つのボタンの内で上部のボタンに割り当てられた上ロール102を上昇させる動作、下部のボタンに割り当てられた上ロール102を下降させる動作について、オペレータが上部のボタン及び下部のボタンを操作することにより、上ロール102が所定の高さに移動するようにしてもよい。オペレータは、スマートグラス10の表示部12において分塊圧延機100を含む視界内に表示されたパススケジュール画像303を見て第2回のパスの第1回のパスと同じく第2カリバーで鋼塊200を今度は250.0mmに圧延することを確認し、圧下量表示画像302を見ながら上ロール102が適切な圧下量になるようにアクションボタン33の上部のボタン又は下部のボタンを押して上ロール102の昇降を操作する。
【0050】
ステップS7においては、2パス目の圧延を実行する。ステップS5の1パス目の圧延を受けた鋼塊200は、後面ローラテーブル107上において第2カリバーに対応する位置に搬送されている。この鋼塊200を後面ローラテーブル107、後面フィードローラ106、前面フィードローラ103及び第1前面ローラテーブル104によって圧下機構120を超えてラインの上流方向に向かうように所定の速度で搬送する。圧下機構120においては、下ロール101及び上ロール102は下流方向に隣接する後面フィードローラ106から供給された鋼塊200をラインの上流方向に送るように所定の回転方向(以下、逆方向という。)に回転し、鋼塊200を第2カリバーによって所定の厚さまで圧延して上流方向に隣接する前面フィードローラ103に提供する。2パス目の圧延を終えた鋼塊200は、ラインの上流方向に前面フィードローラ103を越えて第1前面ローラテーブル104まで搬送される。ここで、後面ローラテーブル107上に支持された鋼塊200のように圧下機構120の下流側はオペレータ室50からの死角となってオペレータが目視することはできないが、スマートグラス10の表示部12において分塊圧延機100を含む視界内に表示された後面モニタ画像304の映像によって確認することができる。
【0051】
後面ローラテーブル107、後面フィードローラ106、前面フィードローラ103及び第1前面ローラテーブル104による鋼塊200のラインの上流方向への搬送は、ステップS1及びS5と同様に、ハンドヘルドコントローラ30の十字ボタン38を操作することによってもよい。例えば、オペレータが十字ボタン38の下側を押すことによって鋼塊200のラインの上流への搬送を指示してもよい。なお、十字ボタン38の上側を押すことによって下流への搬送を指示してもよく、十字ボタン38を離すと鋼塊200の搬送が停止されてもよい。後面ローラテーブル107のラインの上流側にある後面フィードローラ106、前面フィードローラ103及び第1前面ローラテーブル104は、後面ローラテーブル107に同期して鋼塊200をラインの上流方向又は下流方向に搬送するように構成されていてもよい。
【0052】
圧下機構120の下ロール101及び上ロール102の回転は、ハンドヘルドコントローラ30の例えば左押ボタン36を押圧することによって始動可能とされ、さらに例えば十字ボタン38の下側を押して鋼塊200をラインの上流側に搬送する指示を出すことによって逆方向の回転が始動されてもよい。鋼塊200は圧延を終えると、圧下機構120からラインの上流方向に後面フィードローラ106を越えて搬送されて第1前面ローラテーブル104上に支持される。圧下機構120の下ロール101及び上ロール102は、圧延を終えると回転が自動的に停止されてもよい。
【0053】
ステップS7の第2パスの圧延に続いて、さらに所望の回数のパスまで圧延を続けてもよい。例えば、図7のスマートグラス10の表示部12において分塊圧延機100を含む視界内に表示されたパススケジュール画像303のように、第9パスまで圧延を続けてもよい。所望の回数のパスが終了すると、次のステップS8に進む。
【0054】
ステップS8においては、鋼塊200を搬出する。圧延を終えた鋼塊200は、第1前面ローラテーブル104又は後面ローラテーブル107に支持されている。この鋼塊200を第1前面ローラテーブル104、前面フィードローラ103、後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107によってライン下流方向にある次の工程に向けて搬出する。前面フィードローラ103と後面フィードローラ106との間にある圧下機構120は、第1前面ローラテーブル104に支持された鋼塊200が通過できるように上ロール102は上昇している。第1前面ローラテーブル104、前面フィードローラ103、後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107による鋼塊200のラインの下流方向への搬送は、ステップS1、S5及びS7と同様に、ハンドヘルドコントローラ30の十字ボタン38を操作することによってもよい。例えば、オペレータが十字ボタン38の上側を押すことによって鋼塊200のラインの下流への搬送を指示してもよい。なお、十字ボタン38の下側を押すことによって上流への搬送を指示してもよく、十字ボタン38を離すと鋼塊200の搬送が停止されてもよい。第1前面ローラテーブル104のラインの下流側にある前面フィードローラ103、後面フィードローラ106及び後面ローラテーブル107も第1前面ローラテーブル104に同期して鋼塊200をラインの上流方向又は下流方向へ搬送するように構成されていてもよい。
【0055】
本実施の形態の操作装置においては、スマートグラス10の表示部12において分塊圧延機100を含む視界内に圧下量表示画像302、パススケジュール画像303及び後面モニタ画像304が表示され複合現実が実現されている。圧下量表示画像302は関連する上ロール102の近くに、パススケジュール画像303は関連する圧下機構120の近くに、後面モニタ画像304も死角を発生させている圧下機構の近くに、該当する自由度等と関連付けられて表示されている。また、圧下量表示画像302、パススケジュール画像303及び後面モニタ画像304の位置は視界内で上下及び左右に所望の位置に移動することができ、画像一覧の画像301によって所望の画像のみを選択して表示することもできる。このような複合現実の提供によって、オペレータによる分塊圧延作業の全体の把握が容易になり、オペレータは他を参照することなくスマートグラス10の複合現実によって支援されて分塊圧延の作業を実施することができるようになる。したがって、分塊圧延の作業を1人のオペレータによって実施することが可能になり、作業をするオペレータの負担も軽減される。
【0056】
このように、本実施の形態の操作装置によると、分塊圧延機100を1人のオペレータにより操作することができる。また、本実施の形態の操作装置は、分塊圧延機100に限らず、複合現実を実現することによって二つの自由度を有する機械の操作を容易に把握することにより、一人のオペレータで操作することを可能にしている。したがって、本実施の形態によると、分塊圧延機100などの機械の操作に必要な人員を削減することにより、省力化を達成することができる。また、オペレータの操作を支援し、オペレータによるヒューマンエラーを削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明は、分塊圧延機など機械の操作に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 スマートグラス
12 表示部
13 スピーカ
20 操作装置
22 ビデオカメラ
25 表示器用PC
26 コントローラ用PC
27 PLC
100 分塊圧延機
101 下ロール
102 上ロール
200 鋼塊
【要約】
【課題】分塊圧延機100の運転に必要なオペレータの人員を削減する。
【解決手段】分塊圧延機100を操作する操作装置20は、分塊圧延機100を含む視界に画像を表示してオペレータに複合現実を提供するスマートグラス10と、ハンドヘルドコントローラ30と、分塊圧延機100を制御するPLC27と、PLC27からの信号を画像データに変換してスマートグラスに提供する表示器用PC25と、ハンドヘルドコントローラ30への入力信号を変換してPLCに提供するコントローラ用PC26とを有している。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8