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特許7149470周波数決定方法、及びロッド位置検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】周波数決定方法、及びロッド位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/16 20060101AFI20220930BHJP
   E21B 7/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
E21B47/16
E21B7/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018191827
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020060036
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(73)【特許権者】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 博人
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】永松 圭介
(72)【発明者】
【氏名】小西 一生
(72)【発明者】
【氏名】財部 繁久
(72)【発明者】
【氏名】奈須 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】武藤 真幸
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-121878(JP,A)
【文献】米国特許第05124953(US,A)
【文献】特開昭56-125595(JP,A)
【文献】特開2014-010014(JP,A)
【文献】特開2017-133296(JP,A)
【文献】特開平08-130511(JP,A)
【文献】米国特許第05159226(US,A)
【文献】特開2014-037739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭打ち機のロッド位置検出に用いる弾性波の周波数の周波数決定方法であって、
ロッドを地盤に貫入しない気中状態で、ロッド先端位置に設置した弾性波発生装置により、入力した複数の入力周波数の各々について、前記入力周波数に対応する弾性波を発生させる工程と、
前記弾性波の各々について、フーリエ変換した弾性波の変換周波数特性の各々を求め、前記変換周波数特性の各々について、変換周波数と信号強度との関係を求める工程と、
前記関係が予め定められた条件となる前記変換周波数特性に対応する前記入力周波数を少なくとも一つ選択することで、前記ロッド位置検出に用いる弾性波の周波数を決定する工程とを含
前記周波数を決定する工程では、
前記関係において、前記変換周波数特性に対応する前記入力周波数の近傍に現れる最大信号強度が、所定の信号強度を超える前記変換周波数特性であって、
前記所定の信号強度となった変換周波数のうちの低い方の変換周波数から前記最大信号強度となった変換周波数までの周波数帯の範囲と、前記最大信号強度の変換周波数から前記所定の信号強度となった変換周波数のうちの高い方の変換周波数までの周波数帯の範囲とが所定の範囲内である前記変換周波数特性のうち、
所定の信号強度を超える前記変換周波数特性であって、前記所定の範囲内である前記変換周波数特性のうち、前記最大信号強度の大きい順、又はピークの前記変換周波数の高い順に複数の前記変換周波数特性に対応する前記入力周波数を選択することで、順番の定められた複数の入力周波数を、前記ロッド位置検出に用いる弾性波の周波数として決定する、
ことを特徴する周波数決定方法。
【請求項2】
前記所定の信号強度は、0.5(mV)~35(V)の間のいずれかの信号強度とし、
前記所定の範囲は、前記最大信号強度の変換周波数fを挟んで0.5×f(kHz)~1.5×f(kHz)の間のいずれかの範囲とする請求項に記載の周波数決定方法。
【請求項3】
前記杭打ち機のロッド位置検出方法であって、
攪拌直後のソイルセメントスラリーにおいて、モルタルフロー試験機によるフロー値が200mm以上の土壌、又はベーンせん断試験によるベーンせん断強さが5kN/m以下である地盤に対して、請求項1又は請求項2に記載の周波数決定方法によって決定された前記周波数の弾性波によって伝送したデータを用いてロッドの位置を検出する、
ことを特徴とするロッド位置検出方法。
【請求項4】
地盤に存する土壌1mに対してセメント量が150~500kgのいずれかの量であり、W/Cが40~300%のいずれかの割合に調整した地盤に対して、請求項1又は請求項2に記載の周波数決定方法によって決定された前記周波数の弾性波によって伝送したデータを用いてロッドの位置を検出する、
ことを特徴とする請求項に記載のロッド位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッドの位置検出に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロッドの内部に、アンテナ部や傾斜センサを備えた傾斜測定装置とアンテナ部材とを収納し、傾斜センサで測定した測定データを、アンテナ部材との間で送受信する技術がある(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、ロッドの掘削ヘッドの内部に測定装置を配置して、測定装置により測定した位置測定データを非開削掘削機のロッドに伝送するようにし、無線の送受信を必要とせずに掘削工具の位置を検出する技術がある(例えば特許文献2)。特許文献1の技術のように、アンテナによってデータを送受信する技術では、ロッドの掘削ヘッドの真上に建物や河川などの障害物がある場合、データを送受信することが困難な状況が考えられる。特許文献2に記載の技術は、そのような状況であっても、ロッドを伝送媒体にすることでデータの受信を可能にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-133296号公報
【文献】特開2014-037739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロッドの先端で測定したデータの伝送には、適切な周波数が用いられることが好ましい。しかし、上記特許文献1、及び特許文献2に記載の技術では、どのような周波数を用いてデータを伝送するかについては開示されていない。
【0006】
本発明は上記事実を鑑みて成されたものであり、ロッドを伝送媒体としたデータの伝送における適切な周波数を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の周波数決定方法は、杭打ち機のロッド位置検出に用いる弾性波の周波数の周波数決定方法であって、ロッドを地盤に貫入しない気中状態で、ロッド先端位置に設置した弾性波発生装置により、入力した複数の入力周波数の各々について、前記入力周波数に対応する弾性波を発生させる工程と、前記弾性波の各々について、フーリエ変換した弾性波の変換周波数の各々を求め、前記変換周波数の各々について、周波数と信号強度との関係を求める工程と、前記関係が予め定められた条件となる前記変換周波数に対応する前記入力周波数を少なくとも一つ選択することで、前記ロッド位置検出に用いる弾性波の周波数を決定する工程とを含む。これにより、ロッドの特性を考慮してデータの伝送に最適な弾性波の周波数を定めることができる。
【0008】
本発明の周波数決定方法は、前記周波数を決定する工程では、前記関係において、前記変換周波数特性に対応する前記入力周波数の近傍に現れる最大信号強度が、所定の信号強度を超える前記変換周波数特性であって、前記所定の信号強度となった変換周波数のうちの低い方の変換周波数から前記最大信号強度となった変換周波数までの周波数帯の範囲と、前記最大信号強度の変換周波数から前記所定の信号強度となった変換周波数のうちの高い方の変換周波数までの周波数帯の範囲とが所定の範囲内である前記変換周波数特性のうち、前記最大信号強度が最も大きい前記変換周波数特性、又はピークの前記変換周波数が最も高い前記変換周波数特性に対応する前記入力周波数を選択するようにしてもよい。これにより、ロッドの特性を考慮してデータの伝送に最適な弾性波の周波数を定めることができる。
【0009】
本発明の周波数決定方法は、前記周波数を決定する工程では、所定の信号強度を超える前記変換周波数特性であって、前記所定の範囲内である前記変換周波数特性のうち、前記最大信号強度の大きい順、又はピークの前記変換周波数の高い順に複数の前記変換周波数特性に対応する前記入力周波数を選択することで、順番の定められた複数の入力周波数を、前記ロッド位置検出に用いる弾性波の周波数として決定するようにしてもよい。これにより、外乱により特定の周波数が受信できないような状況であっても、他の周波数の弾性波によってデータを伝送させることができる。
【0010】
本発明の周波数決定方法は、前記所定の信号強度は、0.5(mV)~35(V)の間のいずれかの信号強度とし、前記所定の範囲は、前記最大信号強度の変換周波数fを挟んで0.5×f(kHz)~1.5×f(kHz)の間のいずれかの範囲とするようにしてもよい。これにより、周波数について多様な条件によって定めることができる。
【0011】
本発明のロッド位置検出方法は、前記杭打ち機のロッド位置検出方法であって、攪拌直後のソイルセメントスラリーにおいて、モルタルフロー試験機によるフロー値が200mm以上の土壌、又はベーンせん断試験によるベーンせん断強さが5kN/m以下である地盤に対して、上記の周波数決定方法によって決定された前記周波数の弾性波によって伝送したデータを用いてロッドの位置を検出する。これにより、ロッドが地盤に貫入している状態に近い条件で、決定した周波数の弾性波によるデータの伝送を行うことができる。
【0012】
本発明のロッド位置検出方法は、地盤に存する土壌1mに対してセメント量が150~500kgのいずれかの量であり、水セメント比(W/C)が40~300%のいずれかの割合に調整した地盤に対して、上記の周波数決定方法によって決定された前記周波数の弾性波によって伝送したデータを用いてロッドの位置を検出するようにしてもよい。これにより、ロッドが地盤に貫入している状態に近い条件で、決定した周波数の弾性波によるデータの伝送を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ロッドの特性を考慮してデータの伝送に最適な弾性波の周波数を定めることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】組み立てた際のロッドの一例を示す図である。
図2】ロッドの先端に弾性波発生装置を設置し、弾性波発生装置から離れた位置の数か所に弾性波受信装置を設置した場合の一例を示す図である。
図3】弾性波をフーリエ変換し、変換周波数と信号強度との関係を表した場合の一例を示す図である。
図4】複数の変換周波数特性の一例を示す図である。
図5】条件を満たさない変換周波数と信号強度との関係の一例を示す図である。
図6】条件を満たさない変換周波数と信号強度との関係の一例を示す図である。
図7】ピークの変換周波数が高い変換周波数特性に対応する入力周波数を選択する場合の一例を示す図である。
図8】ロッドの先端が地中にある状態において、決定した周波数で弾性波を発生させる場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の実施形態に係る周波数決定方法>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の周波数決定方法において、弾性波の周波数を決定するまでの流れについて詳細に説明する。
【0016】
本実施形態における周波数決定方法は、図1に示すような、山留め壁および地盤改良体の構築に用いるために組み立てたロッド5に対して適用する。図1のように組み立てたロッド5に対して、図2に示すようにロッドの先端に弾性波発生装置6を設置し、弾性波発生装置6から離れた位置の数か所に弾性波受信装置7を設置する。図2に示す例では、弾性波受信装置7は、弾性波受信装置7(a)及び弾性波受信装置7(b)の二つを含む。
【0017】
本実施形態における周波数決定方法は、杭打ち機のロッド位置検出に用いる弾性波の周波数の周波数決定方法である。周波数決定方法は、発生工程と、特性確認工程と、決定工程とを含む。発生工程は、ロッド5を地盤に貫入しない気中状態で、ロッド先端位置に設置した弾性波発生装置6により、入力した複数の入力周波数の各々について、入力周波数に対応する弾性波を発生させる工程である。特性確認工程は、発生工程で発生された弾性波の各々をフーリエ変換して弾性波毎の変換周波数特性を得て、得た変換周波数特性毎に、変換周波数と信号強度との関係を求める工程である。決定工程は、特性確認工程で求めた変換周波数特性毎の関係から、予め定められた条件を満たす変換周波数特性に対応する入力周波数を、実際のロッド位置検出に用いる弾性波の周波数として決定する工程である。
【0018】
上記の各工程について、より詳細に説明する。発生工程では、気中において、弾性波発生装置6は様々な周波数の弾性波を発生させる。弾性波発生装置6は、例えばデータを弾性波に変調して発生させることができる装置であり、発生させる弾性波の周波数は変化させながら任意に定めることができる。弾性波発生装置6において任意に定められた周波数のことを、以下では、入力周波数と呼ぶ。弾性波発生装置6は、ロッド5の先端で弾性波を発生させることによって、ロッド5を伝送媒体としてロッド5の先端位置における加速度や磁気データに関するデータを伝送させることができる。ロッド5の先端位置やロッド5の傾斜は、伝送したデータに基づいて検出が可能である。なお、当該検出は、図示しない検出装置によって行うようにすればよい。
【0019】
特性確認工程では、弾性波受信装置7は、弾性波発生装置6で発生させた複数の弾性波を受信し、複数の弾性波の各々をフーリエ変換することで、当該弾性波についての変換周波数特性を求める。変換周波数特性は、変換周波数と信号強度との関係を表す。変換周波数特性における変換周波数と信号強度との関係は、図3に示すような、縦軸に信号強度をとり横軸に変換周波数をとった波形のグラフとして表現される。なお、複数の弾性波受信装置7のうちいずれの弾性波受信装置7を用いてもよいが、本実施形態では、弾性波発生装置6から最も距離が離れた弾性波受信装置7を用いるものとする。また、複数の弾性波受信装置7による結果を比較するようにしてもよい。複数の弾性波受信装置7の結果を比較することで、ピークが出る周波数が同じであればより確実に伝送に適している周波数であることが判断できる。また、変換周波数と信号強度との関係は、グラフとして表現するのではなく、例えば表上に周波数帯毎の代表となる変換周波数と信号強度との値をプロットして表現するようにしてもよい。
【0020】
次に、決定工程では、変換周波数特性の各々について求めた、変換周波数と信号強度との関係に基づいて、当該関係が予め定められた条件となる変換周波数特性に対応する入力周波数を選択する。そして、選択した入力周波数を、ロッド5の位置検出に用いる弾性波の周波数として決定する。変換周波数特性のピークとなる変換周波数は、フーリエ変換前の弾性波を発生させた入力周波数に対応している。そのため、当該弾性波を発生させた入力周波数を、後述するロッド位置検出方法において用いる弾性波の周波数として採用するように決定すればよい。
【0021】
後述するロッド位置検出方法において用いるように決定する弾性波の周波数は、具体的には以下に説明するように、実際に使用するロッド5でデータを伝送させることができ、その中でもデータを速く伝送できる可能性の高い周波数として確認される。
【0022】
例えば、図4のように、複数の変換周波数特性s1~s3が、変換周波数と信号強度との関係を表すグラフとして求められる。変換周波数特性s1~s3のそれぞれに対応する最大信号強度となる変換周波数がf1~f3である。
【0023】
弾性波の周波数を決定するための、変換周波数と信号強度との関係についての条件は以下のように定める。
【0024】
第一に、図3に示す変換周波数と信号強度との関係で示される変換周波数特性のグラフにおいて、信号強度に関する第一の条件を定める。信号強度の最大値である最大信号強度に対応する変換周波数は、変換周波数特性をフーリエ変換により得る前の弾性波を発生させた入力周波数の近傍に現れる。第一の条件は、最大信号強度の基準となる所定の信号強度を定め、最大信号強度が所定の信号強度を超えていること、とする。例えば、図3の例では、所定の信号強度を1(mV)とし、変換周波数特性の最大信号強度が1(mV)以上であることを条件とする。図3の変換周波数特性のグラフでは、最大信号強度aが所定の信号強度1(mV)以上であるため第一の条件を満たす。なお、信号強度(1(mV))は、その計測精度の向上を図るために電圧増幅器にて計測した値であって、実際の値は、0.01(mV)程度である。
【0025】
第二に、図3に示す変換周波数と信号強度との関係で示される変換周波数特性のグラフにおいて、周波数帯の範囲に関する第二の条件を定める。第二の条件は、最大信号強度となった変換周波数を基準に用いた二つの周波数帯の範囲の各々が、所定の範囲内であること、とする。周波数帯の範囲の一つは、所定の信号強度となった変換周波数のうち低い方の変換周波数eから最大信号強度aとなった変換周波数fまでの周波数帯の範囲である。周波数帯の範囲のもう一つは、最大信号強度の変換周波数fから所定の信号強度となった変換周波数のうちの高い方の変換周波数gまでの周波数帯の範囲である。例えば、所定の範囲を最大信号強度の変換周波数fを挟んで±3(Hz)の範囲とする。この場合には、図3の変換周波数特性のグラフでは、変換周波数e~変換周波数fの周波数帯の範囲が2(Hz)であり、変換周波数f~変換周波数gの周波数帯の範囲が2(Hz)であるため、第二の条件を満たす一例を示している。
【0026】
図3に示したように、第一の条件、及び第二の条件を満たす変換周波数特性は、ピークとなる最大信号強度の変換周波数において山なりのピークが確認できるような波形となっている。逆に、図5図6に示すような第一の条件、及び第二の条件を満たさない変換周波数特性、すなわち山なりのピークとならない波形の変換周波数特性は、データの伝送に用いる周波数として選択しないようにすることが考えられる。例えば、図5に示す変換周波数特性のグラフでは、第一の条件は満たすが、第二の条件を満たさない。図6に示す変換周波数特性のグラフでは、第一の条件も第二の条件も満たさない。
【0027】
次に、決定工程において、上記第一の条件、及び第二の条件を満たす変換周波数特性のうち、ピークの変換周波数が最も高い変換周波数特性に対応する入力周波数を選択する。そして、選択した入力周波数をロッド5の位置検出に用いる弾性波の周波数として決定する。例えば、図4のs1~s3の変換周波数特性について、s1、及びs2が第一の条件、及び第二の条件を満たしているとする。この場合には、図7に示すように周波数が高いf2の変換周波数に対応する入力周波数を選択し、選択した入力周波数をロッド5の位置検出に用いる弾性波の周波数として決定する。
【0028】
また、決定工程において、入力周波数の選択は、上記第一の条件、及び第二の条件を満たす変換周波数特性のうち、ピークの変換周波数が最も高い変換周波数特性に対応する入力周波数を選択する方式に限定されるものではなく、他の方式で選択してもよい。例えば、最大信号強度が最も大きい変換周波数特性に対応する入力周波数を選択してもよい。この場合には、例えば、図4のs1~s3の変換周波数特性のうち、s1、及びs2が第一の条件、及び第二の条件を満たしている場合には、最大信号強度が大きいs1の変換周波数特性に対応する入力周波数を選択する。そして、選択した入力周波数をロッド5の位置検出に用いる弾性波の周波数として決定すればよい。
【0029】
このように、上述した条件を満たす特徴的な変換周波数特性に対応する入力周波数をロッド5の位置検出に用いる弾性波の周波数として決定することによって、ロッド5の特性を考慮してデータの伝送に最適な弾性波の周波数を定めることができる。また、ロッド5で伝わりにくい無駄な周波数のデータを送信することがなくなるため、送信に要する時間を短縮できる。
【0030】
また、本実施形態の周波数決定方法では、上記第一の条件、及び第二の条件を満たす変換周波数特性のうち、最大信号強度が大きい順、又はピークの変換周波数が高い順に複数の変換周波数特性に対応する入力周波数を選択してもよい。そして、順番の定められた複数の入力周波数を、ロッド5の位置検出に用いる弾性波の周波数として決定する。この場合には、後述するロッド位置検出方法では、選択した順番で弾性波の周波数を用いるようにする。例えば、変換周波数が高い順を基準にして複数の周波数を決定した場合には、まず複数の周波数のうち最も高い周波数の弾性波を発生させ、弾性波受信装置7で受信できなかった場合に、次に高い周波数の弾性波を発生させるような工程を採用できる。最大信号強度が大きい順を基準にした場合も同様である。
【0031】
このように、順番の定められた複数の周波数を、ロッド位置検出に用いる弾性波の周波数として決定しておくことで、ロッドの位置検出で複数の周波数を順番に用いることができる。例えば、順番の最初の周波数でデータを伝送して、外乱により特定の周波数が受信できないような状況であっても、次以降の順番で定めておいた他の周波数は外乱の影響を受けない場合であれば、他の周波数の弾性波によってデータを伝送させることができる。
【0032】
<本発明の実施形態に係るロッド位置検出方法>
次に、上述した周波数決定方法によって決定した周波数を用いたロッド位置検出方法について説明する。ロッド位置検出方法は、図8に示すように、ロッド5の先端が地中にある状態において、弾性波発生装置6で決定した周波数で弾性波を発生させる。次に、ロッド位置検出方法は、弾性波で伝送させたデータを弾性波受信装置7で受信させ、検出装置でロッド5の先端位置を検出させる。
【0033】
ロッド位置検出方法では、様々な地盤、及び土壌において、決定した周波数の弾性波によるデータの伝送が行えることは言うまでもない。もっとも、以下のような地盤、及び土壌の条件に限定することで、ロッドが地盤に貫入している状態に近い状態で、決定した周波数の弾性波によるデータの伝送が行えるようになり、決定した周波数によってデータを高速かつ確実に伝送できることが可能である。
【0034】
ロッド位置検出方法は、例えば、攪拌直後のソイルセメントスラリーにおいて、モルタルフロー試験機によるフロー値が200mm以上の土壌に対してロッド5による掘削が行われている状況に対して適用する。このような状況で、弾性波発生装置6は、上記の周波数決定方法によって決定された周波数の弾性波を発生させてロッド5でデータを伝送する。弾性波受信装置7は、ロッド5で伝送されたデータを受信し、検出装置に転送する。検出装置は、転送されたデータを用いてロッド5の先端位置を検出する。モルタルフロー試験機は、JIS-R5201のセメントの物理試験方法に準拠したものである。フロー値は、所定のモルタルを所定の手順によってフローコーンに詰め、所定の落下運動等をした後の状態について、モルタルが広がった後の径を最大と認める方向と、これに直角な方向とで測定することにより定められる。なお、ロッド位置検出方法は、例えば、ベーンせん断試験によるベーンせん断強さが5kN/m以下である地盤に対してロッド5による掘削が行われている状況に対して適用してもよい。ベーンせん断試験は、JIS-1411の原位置ベーンせん断試験方法に準拠したものである。ベーンせん断強さは、ロッドの先に付けたベーンを所定の試験深さまで地中に押し込み、回転させたときの回転抵抗から原位置での強さを求めることにより定められる。
【0035】
また、ロッド位置検出方法は、更に、土壌の条件をより気中状態に近い状況に限定することができる。例えば、ロッド位置検出方法は、上記の地盤に存する土壌1mに対してセメント量が150~500kgのいずれかの量であり、水セメント比(W/C)が40~300%のいずれかの割合に調整した地盤に対してロッド5による掘削が行われている状況に適用できる。そして、ロッド位置検出方法では、上記と同様の手順でロッドの先端位置が検出できる。
【0036】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、第一の条件において、所定の信号強度を1(mV)としたが、これに限定されるものではない。例えば、所定の信号強度は、0.5(mV)~35(V)の間のいずれかの信号強度としてもよい。このようにどのような所定の信号強度を用いるかについて事前の試掘等の地盤調査結果に基づき地盤条件を定めることができる。
【0038】
また、上述した実施形態では、第二の条件において、所定の範囲を±3(Hz)の範囲内としたがこれに限定されるものではない。例えば、所定の範囲は、最大信号強度の変換周波数fを挟んで0.5×f(kHz)~1.5×f(kHz)の間のいずれかの範囲とするようにしてもよい。この場合には、例えば、最大信号強度の変換周波数fを挟んで0.5×f(kHz)を所定の範囲とする場合であれば、fがf=2(kHz)であれば0.5×2=±1(kHz)の範囲が所定の範囲となる。また、fがf=3(kHz)であれば0.5×3=±1.5(kHz)が所定の範囲となる。このように、どのような所定の範囲を用いるかについて事前の試掘等の地盤調査結果に基づき地盤条件を定めることができる。
【0039】
また、上述した実施形態では、周波数決定方法により、各工程を実施して周波数を決定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、コンピュータのプログラムを実行して、周波数を決定するようにしてもよい。例えば、プログラムによって、受信した弾性波をフーリエ変換する処理を行い、変換した変換周波数と信号強度との関係を求める処理を行い、予め定められた条件となる変換周波数に対応する入力周波数を選択して周波数を決定する処理を行うようにすればよい。また、プログラムを実行する周波数決定装置によって、プログラムの各処理を行う処理部を構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
5 ロッド
6 弾性波発生装置
7 弾性波受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8