(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】鶏のせせり肉切剥機構
(51)【国際特許分類】
A22C 17/00 20060101AFI20220930BHJP
A22C 17/02 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A22C17/00
A22C17/02
(21)【出願番号】P 2018107655
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592051187
【氏名又は名称】マトヤ技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】益留 福一
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512837(JP,A)
【文献】特開2017-169465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 17/00
A22C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のターンテーブルの中心方向に鶏の首部が載置可能な溝条を備えた台盤を有するケーシングを複数個配列し、前記ターンテーブルを水平方向に間欠的に一定速度で割り出し回転させ、回転が停止した状態で、前記台盤に鶏の首部を載置する第1ステージと、台盤に載置された鶏の首を両側から一対のブレードを備えたクランプにより挟み付ける共に、押圧板により上方から押圧して真っ直ぐ矯正する第2ステージと、前記ブレードの挟み付けによりさらに上方に盛り上がったせせり肉部を、切剥部により切剥する第3ステージとからな
る鶏せせり肉の切剥機構
において、前記台盤にV字型溝条と一対のガイド壁を設け、このV字型溝条とガイド壁内に鶏の首部を載置すると共に、首部の端面の脊髄孔又は食道孔を台盤に設けた針棒に差し込んで、鶏の首部の曲がりを真っ直ぐに矯正することを特徴とする鶏せせり肉の切剥機構。
【請求項2】
台盤に首部をセットした状態で、さらに、首部の上方から先端に断面がV字状に尖った凸条を有する押圧板により押圧矯正することを特徴とする請求項1記載の鶏せせり肉の切剥機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用鶏の頸部にあるせせり肉(小肉ともいう)は、鶏の頸椎の周りを覆っている一羽の鶏からほんの僅かしか取れない希少な可食部位で、鶏の中でも柔らかく低脂肪で、噛み応えがあり、焼き鳥などで食される貴重な部位である。本発明はこのせせり肉を鶏の首部(頸椎)から切剥する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉から除骨する装置として、例えば、食肉をミンチに加工するチョッパーにおいて、食肉内に混在する軟骨や筋などの骨片類を除去する骨片類除去装置を付設したもの(特許文献1参照。)や所定の骨片等の異物の通過を防ぐ複数のスリットが形成され、このスリットを通過したミンチ状の食肉をスクーレパーで掻き取ることによって除骨する装置(特許文献2参照。)が提案されている。また、投入ステーションより下流に向け、投入ステーションと所定間隔を持つ肩甲骨脱骨ステーションと、同一所定間隔を持つ上腕骨脱骨ステーションの順に等間隔直線状に配設し、上腕骨脱骨ステーションの下流に上腕骨を排出する骨部排出ステーションを設け、固定、可動搬送路を介してワークを懸架状態でタクト搬送させ、その搬送過程で脱骨処理して最終ステーション(排出ステーション)より脱骨した上腕骨を排出する構成の食肉脱骨装置(特許文献3参照。)。他にも、懸架吊部により骨付き肉の露出した首部を把持し、懸架した状態で、骨の長手方向に沿って筋入れ加工を行った後、骨の周囲の肉を引き剥がすことで脱骨する骨付き肉の自動脱骨装置(特許文献4参照。)等が提案されている。
【0003】
本発明者もまた、円盤の中心を支軸に円周方向に複数個配列した受け皿(ダイスカップ)を水平方向に間欠的に一定速度で割り出し回転する回転搬送機構と、この回転搬送機構が停止した状態で、受け皿に載置された鶏のボンジリからボンジリ内の尾骨を打ち抜いて除去する打ち抜きパンチ機構と、除骨後のボンジリを、受け皿を反転させることで装置外に搬出する処理肉払い出し機構とからなる鶏のボンジリ内にある尾骨の除去作業を行う装置を提案している(特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-44024号公報
【文献】特許第3191024号公報
【文献】特許第4327099号公報
【文献】特許第4908148号公報
【文献】特開2017-169465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
せせり肉の切剥作業については、未だ機械化が図られておらず、鶏の細い首からナイフで剥がすという手作業に委ねられたまま現在に至っている。せせり肉は美味しい部位なので需要が多いが、1日に数万羽を処理する工場では人手が足りず廃棄処分されるものが大量にあった。このため、せせり肉の切剥作業の機械化が嘱望されていた。
【0006】
そこで本発明者は、上記従来技術の課題に鑑み、鶏のせせり肉の切剥作業における労力を軽減し、安全かつ効率的に切剥作業を行うことができる鶏のせせり肉切剥機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明の鶏のせせり肉切剥機構は、円盤状のターンテーブルの中心方向に鶏の首部が載置可能な溝条を備えた台盤を有するケーシングを複数個配列し、前記ターンテーブルを水平方向に間欠的に一定速度で割り出し回転させ、回転が停止した状態で、前記台盤に鶏の首部を載置する第1ステージと、台盤に載置された鶏の首を両側から一対のブレードを備えたクランプにより挟み付ける共に、押圧板により上方から押圧して真っ直ぐ矯正する第2ステージと、前記ブレードの挟み付けによりさらに上方に盛り上がったせせり肉部を、切剥部により切剥する第3ステージとからなる鶏せせり肉の切剥機構において、前記台盤にV字型溝条と一対のガイド壁を設け、このV字型溝条とガイド壁内に鶏の首部を載置すると共に、首部の端面の脊髄孔又は食道孔を台盤に設けた針棒に差し込んで、鶏の首部の曲がりを真っ直ぐに矯正することを第1の特徴とする。また、台盤に首部をセットした状態で、さらに、首部の上方から先端に断面がV字状に尖った凸条を有する押圧板により押圧矯正することを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明機構によれば、鶏のせせり肉の切剥作業を手作業の数倍の速さで極めて効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る鶏せせり肉切剥機構の全体構成を示す斜視図である。
【
図3】クランプと押圧板の動作を示す斜視図である。
【
図4】台盤に鶏の首部を載せた状態を示す斜視図である。
【
図5】台盤に鶏の首部をセットした状態を示す斜視図である。
【
図6】台盤に鶏の首部をセットした状態を示す一部断面正面図である。
【
図7】台盤にセットした鶏の首部の押圧状態を示す斜視図である。
【
図8】鶏の首部をクランプした状態を示す斜視図である。
【
図9】鶏の首部をクランプした状態を示す一部断面正面図である。
【
図10】せせり肉部分を切剥する前の状態を示す斜視図である。
【
図11】せせり肉部分切剥中の状態を示す斜視図である。
【
図12】せせり肉部分の切剥終了状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面にしたがって本発明機構の一実施例を説明する。便宜上、同様の構成要件には同一の参照符号を付して説明する。
【0011】
図1及び
図3に示すように、鶏のせせり肉の切剥機構は、床上80cm~90cmの高さに設置された円盤状のターンテーブル5の中心を支軸5bに円周方向に鶏の首部1が載置可能な溝条2aを備えた台盤2有するケーシング7を複数個配列し、ターンテーブル5を水平方向に間欠的に一定速度で割り出し回転させ、回転が停止した状態で、台盤2に鶏の首部1を載置する第1ステージと、台盤2に載置された鶏の首1を両側から一対の先端が尖ったブレート4aを備えたクランプ部4により挟み付ける共に、押圧板6により上方から押圧して真っ直ぐに矯正する第2ステージと、切剥部3により、一対のブレード4aの挟み付けにより上方に盛り上がった肉部であるせせり肉1aを切剥する第3ステージから構成され、鶏の首部1のセットから切剥したせせり肉1aの払い出しまで反復して行うことができるようにされている。
【0012】
ケーシング7は矩形の底プレート7bの前後に立設した一対の縦プレート7aを一体に有する台座であり、このケーシング7内に、台盤2、一対のブレード4a及びクランプ4が取り付けられている。そして、ターンテーブル5の任意の切欠き部5aにその支持柱7dを挿入した状態で、切欠き部5aに連通して形成された固定溝9にハンドルねじ8で着脱自在に取り付けられる。また、クランプ4の駆動は支持柱7dを介して回転ローラー10を上下駆動装置(シリンダー、カムなど:図示せす)で押し上げて行う。
【0013】
図4乃至
図6に示すように、セットする前の鶏の首部1はJ字状に曲がっているので、これを真っ直ぐに矯正する必要がある。このため台盤2上には、V字型溝条2aが設けられており、このV字型溝条2aの両側を凹状断面になるように一対のガイド壁2eを立設して、載置した鶏の首部1が左右に振れないように規制する。このように鶏の首部1を載置すると同時に首部1の端面の脊髄孔又は食道孔1dを台盤2の先端に設けた針棒2dに人手により差し込む。針棒2dに刺すことで曲がった首部1がV字溝条2aに沿って真っ直ぐに矯正される。首部1より胴体側(背中の肋骨部)の湾曲部分1cは台盤2から連続して下方に傾斜した胸受け部2bに載せる。尚、胸受け部2bの下端には台盤ブロック2cが設けられており、この台盤ブロック2cにもV字型溝条2aが形成されている。
【0014】
上記のように台盤2に首部1をセットした状態で、さらに、首部1の上方から、先端に断面がV字状に尖った凸条6bを有する押圧板6aが昇降アーム6の駆動により降下して首部1がさらに真っ直ぐになるように押圧矯正する(
図7参照)。この状態で、クランプ4の一対のブレード4aが首部1の両側斜め下方からさらに挟み付けることで、せせり肉1a部分がさらに上方に押し上げられ盛り上がる(
図8及び
図9参照)。このように、せせり肉1a部分が上方に押し上げられ盛り上がった状態を保持して次行程に移行しながら、押圧板6aは上昇動作する。
【0015】
図10乃至
図12に示すように、次の行程で、モーター3bにより駆動する回転丸刃3aがせせり肉1aと骨1bの境界を首部1の長さ方向に水平に移動することで、せせり肉1aは切剥され、切剥されたせせり肉1a部分は骨1bから離反し、同時に払い出し板3cに押されてコンベア(図示せず)に台座プレート7のシュート板7cを滑落して払い出される。せせり肉1aが切剥されるとせせり肉1a部分を盛り上げていた一対のブレード4aは拡開動作して首部1は解放される。そして、次行程でせせり肉部1aを剥がされた骨1bは払い出し板(図示せず)で払い落とされる。
【符号の説明】
【0016】
1 鶏の首部
1a せせり肉(小肉)
1b 骨(頸椎)
1c 首部の胴体側
1d 脊髄孔又は食道孔
2 台盤
2a V字型溝条
2b 胸肉載置傾斜部
2c 台盤ブロック
2d 針棒
2e ガイド壁
3 切剥部
3a 回転丸刃
3b モーター
3c 払い出し板
4 クランプ
4a ブレード
5 ターンテーブル(円盤)
5a ターンテーブルの切欠き
5b ターンテーブルの支軸
6 昇降アーム
6a 押圧板
6b 押圧板の凸条
7 ケーシング
7a ケーシングの縦プレート
7b ケーシングの底プレート
7c シュート板
7d ケーシングの支持柱
8 ハンドルねじ
9 円盤の固定溝
10 回転ローラー