(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】擬似接着ラベル
(51)【国際特許分類】
G09F 3/00 20060101AFI20220930BHJP
G09F 3/10 20060101ALI20220930BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220930BHJP
B42D 11/00 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
G09F3/00 D
G09F3/10 H
G09F3/00 E
B32B27/32 E
B42D11/00 E
(21)【出願番号】P 2018231611
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100195888
【氏名又は名称】竹原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】茂木 友秀
(72)【発明者】
【氏名】加茂 雅康
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特許第4870998(JP,B2)
【文献】特開2017-30218(JP,A)
【文献】特開2017-56631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 1/00- 5/04
B32B 1/00-43/00
B42D 1/00-15/00
B42D 15/04-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、第一樹脂層、第二樹脂層、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に積層され、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層との間が擬似接着されており、
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層のうちの一方の層(α)は、シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む樹脂組成物(A)から形成された層であり、
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層のうちの他方の層(β)は、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)から形成された層であり、
オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なる、擬似接着ラベル。
【請求項2】
オレフィン系樹脂(X1)の含有量が、樹脂組成物(A)の全量基準で、50質量%以上である、請求項1に記載の擬似接着ラベル。
【請求項3】
シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)が、1/99以上である、請求項1又は2に記載の擬似接着ラベル。
【請求項4】
オレフィン系樹脂(X2)の含有量が、樹脂組成物(B)の全量基準で、50質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項5】
オレフィン系樹脂(X1)及びオレフィン系樹脂(X2)の一方の樹脂がエチレン由来の構成単位を有し、他方の樹脂がプロピレン由来の構成単位を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の擬似接着ラベル。
【請求項6】
エチレン由来の構成単位の含有量が、前記一方の樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上であり、
プロピレン由来の構成単位の含有量が、前記他方の樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上である、請求項5に記載の擬似接着ラベル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の擬似接着ラベルの製造方法であって、以下の工程(1)~(4)を含む、擬似接着ラベルの製造方法。
工程(1):シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つシリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を含む樹脂組成物(A)を調製する。
工程(2):シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)を調製する。但し、オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なるものとする。
工程(3):樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの一方を第一樹脂層とし、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの他方を第二樹脂層として、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とが擬似接着された状態で、且つ、基材と前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とがこの順で積層された積層体を作製する。
工程(4):前記第二樹脂層の擬似接着面とは反対側の面に粘着層と剥離シートとをこの順で積層する。
【請求項8】
工程(1)において、シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)を、1/99以上に調整し、
工程(3)において、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とをそれぞれ押出温度200℃以上の共押出により基材上に積層して前記積層体を作製する、請求項7に記載の擬似接着ラベルの製造方法。
【請求項9】
工程(1)において、シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)を、30/70以上に調整し、
工程(3)において、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とをそれぞれ押出温度280℃以上の共押出により基材上に積層して前記積層体を作製する、請求項7に記載の擬似接着ラベルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似接着ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
擬似接着ラベルは、被着体に貼付した後、擬似接着した層間を起点として基材を容易に剥離できるラベルであり、例えば、配送伝票や情報隠蔽ラベル等として実用化されている。
このような擬似接着ラベルとして、特許文献1には、基材、第一樹脂層、第二樹脂層、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に積層され、第一樹脂層と第二樹脂層との間が擬似接着され、第一樹脂層と第二樹脂層の組み合わせがポリエチレン及びポリプロピレン等である擬似接着ラベルが開示されている。このような構成を有する擬似接着ラベルは、粘着剤層により被着体に貼付した後、擬似接着された第一樹脂層と第二樹脂層の層間で容易に剥離できる性質を利用し、所望のタイミングで、基材が第一樹脂層とともに第二樹脂層から剥離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以降の説明では、第二樹脂層から剥離されて擬似接着ラベルから分離される基材と第一樹脂層とをまとめて「分離基材」ともいう。
【0005】
ところで、擬似接着ラベルの生産性及び加工性を向上させる観点から、基材上に第一樹脂層と第二樹脂層を積層する際の樹脂組成物の押出温度を高めることが望ましいと考えられる。
しかしながら、特許文献1に開示されている擬似接着ラベルのように、第一樹脂層と第二樹脂層が共にオレフィン系樹脂から形成される場合、これらがポリエチレンとポリプロピレンのように互いに異なるオレフィン系樹脂の組み合わせであっても、第一樹脂層と第二樹脂層を形成する際に樹脂組成物の押出温度を高くすると、第一樹脂層と第二樹脂層との層間での剥離ができない不具合が生じ得る。つまり、第一樹脂層と第二樹脂層とを擬似接着することができない不具合が生じ得る。
また、第一樹脂層と第二樹脂層とを一時的に接着することができたとしても、後の加工の段階で、第一樹脂層と第二樹脂層との層間において剥離が生じることがあり、加工時剥離耐性が十分ではないこともある。
このような問題がある一方で、第一樹脂層と第二樹脂層の双方にオレフィン系樹脂を用いることは、材料の入手の容易性やコスト面を踏まえると、擬似接着ラベルを提供する上では望ましいことであるといえる。
【0006】
そこで、本発明は、第一樹脂層と第二樹脂層を形成するための樹脂としてオレフィン系樹脂を用いることができ、生産性及び加工性に優れるとともに、安定した擬似接着性を示す、擬似接着ラベル及び擬似接着ラベルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、基材、第一樹脂層、第二樹脂層、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に積層され、第一樹脂層と第二樹脂層との間が擬似接着され、第一樹脂層と第二樹脂層を形成するための樹脂組成物としてオレフィン系樹脂を用いた擬似接着ラベルについて、第一樹脂層及び第二樹脂層のうちの一方の層を形成するための樹脂組成物中に特定の樹脂を配合することによって、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記[1]~[9]に関する。
[1]基材、第一樹脂層、第二樹脂層、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に積層され、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層との間が擬似接着されており、
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層のうちの一方の層(α)は、シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む樹脂組成物(A)から形成された層であり、
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層のうちの他方の層(β)は、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)から形成された層であり、
オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なる、擬似接着ラベル。
[2]オレフィン系樹脂(X1)の含有量が、樹脂組成物(A)の全量基準で、50質量%以上である、上記[1]に記載の擬似接着ラベル。
[3]シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)が、1/99以上である、上記[1]又は[2]に記載の擬似接着ラベル。
[4]オレフィン系樹脂(X2)の含有量が、樹脂組成物(B)の全量基準で、50質量%以上である、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の擬似接着ラベル。
[5]オレフィン系樹脂(X1)及びオレフィン系樹脂(X2)の一方の樹脂がエチレン由来の構成単位を有し、他方の樹脂がプロピレン由来の構成単位を有する、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の擬似接着ラベル。
[6]エチレン由来の構成単位の含有量が、前記一方の樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上であり、
プロピレン由来の構成単位の含有量が、前記他方の樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上である、上記[5]に記載の擬似接着ラベル。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の擬似接着ラベルの製造方法であって、以下の工程(1)~(4)を含む、擬似接着ラベルの製造方法。
工程(1):シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つシリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を含む樹脂組成物(A)を調製する。
工程(2):シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)を調製する。但し、オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なるものとする。
工程(3):樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの一方を第一樹脂層とし、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの他方を第二樹脂層として、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とが擬似接着された状態で、且つ、基材と前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とがこの順で積層された積層体を作製する。
工程(4):前記第二樹脂層の擬似接着面とは反対側の面に粘着層と剥離シートとをこの順で積層する。
[8]工程(1)において、シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)を、1/99以上に調整し、
工程(3)において、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とをそれぞれ押出温度200℃以上の共押出により基材上に積層して前記積層体を作製する、上記[7]に記載の擬似接着ラベルの製造方法。
[9]工程(1)において、シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)を、30/70以上に調整し、
工程(3)において、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層とをそれぞれ押出温度280℃以上の共押出により基材上に積層して前記積層体を作製する、上記[7]に記載の擬似接着ラベルの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の擬似接着ラベルは、第一樹脂層と第二樹脂層を形成するための樹脂としてオレフィン系樹脂を用いることができ、生産性及び加工性に優れるとともに、安定した擬似接着性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の擬似接着ラベルの一態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、実施形態を用いて詳細に説明する。
【0012】
なお、本発明において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
【0013】
本発明において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0014】
<擬似接着ラベルの構成>
本発明の擬似接着ラベルは、基材、第一樹脂層、第二樹脂層、粘着剤層、及び剥離シートがこの順に積層され、第一樹脂層と第二樹脂層との間が擬似接着されている構成を有するものであれば、特に限定されない。
図1は、本発明の擬似接着ラベルの構成を示す、擬似接着ラベルの断面模式図である。
【0015】
本発明の擬似接着ラベルは、
図1に示す擬似接着ラベル1のように、基材11、第一樹脂層12、第二樹脂層13、粘着剤層14、及び剥離シート15がこの順に積層され、第一樹脂層12と第二樹脂層13が層間Aで擬似接着されている。
本発明の擬似接着ラベルは、第一樹脂層12及び第二樹脂層13のうちの一方の層(α)は、シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む樹脂組成物(A)から形成された層であり、第一樹脂層12及び第二樹脂層13のうちの他方の層(β)は、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)から形成された層である。これにより、第一樹脂層12と第二樹脂層13を層間Aで擬似接着することができる。
なお、
図1で層間Aとして図示された線は、第一樹脂層12と第二樹脂層13とが直接積層されていることを示す強調線である。つまり、第一樹脂層12と第二樹脂層13との間に別の層が設けられているわけではない。
また、「擬似接着」とは、特定の条件(温度範囲など)で貼合させた層間において、層間剥離による剥離が可能であるが、剥離後には再接着性・粘着性を示さない態様の接着をいう。
本発明の擬似接着ラベルの場合、第一樹脂層12と第二樹脂層13との層間Aにおいて、層間剥離による剥離が可能であるが、剥離後の第一樹脂層12の層間A側表面、及び、第二樹脂層13の層間A側表面は、再接着性・粘着性を示さない。
【0016】
本発明の擬似接着ラベルは、剥離シート15を剥離して粘着剤層14により被着体に貼付した後、基材11が第一樹脂層12とともに第二樹脂層13から剥離され、分離基材21と被着体側残留部22とに分離される。
ここで、本発明の擬似接着ラベルでは、第一樹脂層12及び第二樹脂層13のうちの一方の層(α)が、シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む樹脂組成物(A)から形成された層であり、第一樹脂層12及び第二樹脂層13のうちの他方の層(β)が、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)から形成された層であり、オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)が互いに異なる。これらにより、第一樹脂層12及び第二樹脂層13を形成するための樹脂としてオレフィン系樹脂を用いることができる。しかも、第一樹脂層12及び第二樹脂層13の双方がオレフィン系樹脂を主剤として含んでいるにもかかわらず、第一樹脂層と第二樹脂層を形成する際に樹脂組成物の押出温度を高めて生産性及び加工性を向上させることができる。また、剥離操作の容易性と自然剥離に対する耐性を両立する、安定した擬似接着性を示す擬似接着ラベルを提供することが可能になる。
【0017】
なお、基材の厚さについては、擬似接着ラベルの用途に応じて適宜選択されるが、取扱性の観点から、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μm、更に好ましくは30~100μmである。
第一樹脂層の厚さは、特に限定されないが、好ましくは5~50μm、より好ましくは5~40μm、更に好ましくは10~40μm、より更に好ましくは10~30μmである。
(基材の厚さ)/(第一樹脂層の厚さ)は、取扱性の観点から、好ましくは1~10、より好ましくは2~9、更に好ましくは3~8、より更に好ましくは4~6である。
第二樹脂層の厚さは、特に限定されないが、第二樹脂層が粘着剤層とともに被着体に残ることを考慮し、被着体に残った後の存在感を小さくするために、薄くすることが好ましい。具体的には、5~50μmが好ましく、5~40μmがより好ましく、10~40μmが更に好ましく、5~30μmがより更に好ましく、5~20μmが更になお好ましい。
粘着剤層の厚さは、擬似接着ラベルの用途に応じて適宜選択されるが、好ましくは1~50μm、より好ましくは5~50μm、更に好ましくは10~40μm、より更に好ましくは10~30μm、更になお好ましくは10~20μmである。
剥離シートの厚さは、特に制限されないが、好ましくは10~200μm、より好ましくは25~170μm、更に好ましくは30~150μm、より更に好ましくは35~100μm、更になお好ましくは35~80μmである。
なお、基材の厚さ、第一樹脂層の厚さ、第二樹脂層の厚さ、粘着剤層の厚さ、及び剥離シートの厚さは、例えば、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0018】
以下、本発明の擬似接着ラベルの各構成部材について、詳細に説明する。
【0019】
<基材>
本発明の擬似接着ラベルが有する基材については、特に制限がなく、従来の擬似接着ラベルにおいて使用されている基材の中から、当該擬似接着ラベルの使用目的に応じて適宜選択される。
このような基材としては、クラフト紙、上質紙、グラシン紙、パーチメント紙、レーヨン紙、コート紙、合成繊維紙等の紙類、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の樹脂フィルム、合成紙、及びこれらを2層以上積層した積層シート等が挙げられる。
【0020】
ここで、本発明の擬似接着ラベルが有する基材は、感熱発色性を有することが好ましい。基材が感熱発色性を有することで、感熱式プリンター等による印刷・印字が可能になる。
感熱発色性を有する基材は、基材の第一樹脂層積層面とは反対側の面に、感熱発色層が設けられたものであることが好ましい。感熱発色層としては、例えば、ロイコ染料と、ロイコ染料に反応する顕色剤とを含有するものが挙げられる。
感熱発色層は、例えば、上記のロイコ染料及び顕色剤に加えて、適宜バインダー、ワックス、溶剤等を含有する塗布液を、基材の第一樹脂層積層面とは反対側の面に塗布することで形成される。
【0021】
また、本発明の擬似接着ラベルが被着体の記載事項の隠蔽用に用いられる場合、隠蔽性を有する基材を用いることが好ましい。隠蔽性を有する基材としては、例えば、不透明な紙類及び合成紙等の基材や、透明性のある樹脂フィルム等の基材に隠蔽性を付与する黒色塗料と印刷の下地となる白色塗料を重ね塗りした不透明基材等が挙げられるが、隠蔽性に加えて印刷・印字性も良好なものとする観点からは、紙類及び合成紙等の基材を用いることが好ましい。なお、不透明さが不十分な紙類及び合成紙等の基材を用いる場合、さらなる隠蔽性向上のために、基材の感熱発色層側とは反対面に黒色コート処理等を施してもよい。
【0022】
<一方の層(α)>
本発明の擬似接着ラベルにおいて、一方の層(α)は、第一樹脂層及び第二樹脂層のうちの一方から選択される。
一方の層(α)は、シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む樹脂組成物(A)から形成された層である。
ここで、「オレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む」とは、樹脂組成物(A)に含まれる成分のうち、最も多く含まれる成分がオレフィン系樹脂(X1)であることを意味する。
一方の層(α)を形成する樹脂組成物(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、オレフィン系樹脂(X1)及びシリル化ポリオレフィン(D)以外の樹脂を含んでいてもよい。さらに、必要に応じて樹脂フィルム用の添加剤等を含んでいてもよい。
樹脂組成物(A)中のオレフィン系樹脂(X1)の含有量は、樹脂組成物(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~97質量%、更に好ましくは65~95質量%である。
また、樹脂組成物(A)中のオレフィン系樹脂(X1)及びシリル化ポリオレフィン(D)の合計含有量は、樹脂組成物(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは55~100質量%、より好ましくは65~100質量%、更に好ましくは75~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%であり、更になお好ましくは95~100質量%である。
なお、シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)は、好ましくは1/99以上、より好ましくは3/97以上、更に好ましくは5/95以上、より更に好ましくは8/92以上、更になお好ましくは10/90以上、一層好ましくは20/80以上、より一層好ましくは30/70以上である。また、混合質量比(D/X1)は、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、より更に好ましくは35/65以下である。
シリル化ポリオレフィン(D)の混合割合が少なすぎると、第一樹脂層と第二樹脂層を形成する際に樹脂組成物の押出温度を高めながらも、第一樹脂層と第二樹脂層を擬似接着する効果が得られ難くなる。逆に、シリル化ポリオレフィン(D)の混合割合が多すぎると、原料コストの増大に繋がる。
【0023】
以下、樹脂組成物(A)に含まれる各成分について説明する。
なお、本発明において、「樹脂組成物(A)の有効成分の全量に対する各成分の含有量」は、「当該樹脂組成物(A)から形成された一方の層(α)中の各成分の含有量」とみなすこともできる。
【0024】
[シリル化ポリオレフィン(D)]
シリル化ポリオレフィン(D)は、下記一般式(1)を構成単位として1つ以上含むヒドロシラン化合物(d1’)(以下、「モノマー(d1’)」ともいう)に由来する構成単位(d1)と、末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)(以下、「モノマー(d2’)」ともいう)に由来する構成単位(d2)とを有する共重合体である。
シリル化ポリオレフィン(D)は、ヒドロシラン化合物(d1’)中の-Si-Hと、末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)中の-C=C(ビニル基)とが反応した、-Si-C-C-構造を含む。
ヒドロシラン化合物(d1’)と末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)との共重合体の重合形態は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよいが、ブロック共重合体であることが好ましい。
【0025】
【0026】
上記一般式(1)中、R1は、炭化水素基またはケイ素含有基を表す。R1は、好ましくは炭化水素基であり、より好ましくは脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくはアルキル基であり、より更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
Y1は、酸素原子、硫黄原子またはNR(Nは窒素原子であり、Rは水素原子または炭化水素基を表す)を表す。Y1は、好ましくは酸素原子である。
R1及びY1が複数ある場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
ここで、ヒドロシラン化合物(d1’)は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0027】
【0028】
上記一般式(2)中、式中R1及びY1は上記一般式(1)と同様のものを表す。
R1bは、炭化水素基を表し、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、更に好ましくはアルキル基であり、より更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
Y2は、酸素原子、硫黄原子またはNR(Nは窒素原子であり、Rは水素原子または炭化水素基を表す)を表す。Y2は、好ましくは酸素原子である。
mは、1~20の整数であり、好ましくは1~6の整数である。
nは、0~20の整数であり、好ましくは0又は1である。
nが1以上の場合、Zは下記一般式(4)で表される2価の連結基を表す。
nが0の場合、Zは下記一般式(4)で表される2価の連結基、又はY1とR1cの直接結合を表す。
R1a及びR1cは、炭化水素基又は下記一般式(3)で表される基を表す。炭化水素基は、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。但し、nが0の場合、R1cは、水素原子であってもよい。R1、R1a、R1b、及びR1cが複数存在する場合、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Y1及びY2が複数存在する場合、これらはそれぞれ同一であっても異なっていてもよいが、全て酸素原子であることが好ましい。
【0029】
【0030】
上記一般式(3)中、R21は、炭化水素基を表し、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。複数存在するR21はそれぞれ同一でも異なっていても良いが、これらは同一であることが好ましい。
yは1~100の整数であり、好ましくは1である。
【0031】
【0032】
上記一般式(4)中、R11は、炭化水素基を表し、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
複数存在するR11はそれぞれ同一でも異なっていても良いが、これらは同一であることが好ましい。
lは、0~500の整数である。
【0033】
また、ヒドロシラン化合物(d1’)は、以下の一般式(5)で表される構造のものであってもよい。
なお、下記一般式(5)中、lは上記一般式(4)と同様である。
【0034】
【0035】
末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)は、ビニル基を1つ以上含む末端二重結合含有ポリオレフィンである。
末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)は、末端二重結合含有ポリオレフィンのビニル基以外の部分が、エチレン単独重合鎖、プロピレン単独重合鎖、または炭素数2~50のオレフィンからなる群から選択される2種以上のオレフィンの共重合鎖であることが好ましい。
これらの中でも、エチレン単独重合鎖、プロピレン単独重合鎖、またはエチレン、プロピレン、ブテン、ビニルノルボルネン、二個以上の二重結合を有する環状ポリエンおよび二個以上の二重結合を有する鎖状ポリエンからなる群から選択される2種以上のオレフィンの共重合鎖であることが好ましく、特にエチレン単独重合鎖、プロピレン単独重合鎖、オレフィンとジエンとの共重合鎖、エチレンとプロピレンとの共重合鎖、エチレンとノルボルネンとの共重合鎖が好ましい。
また、末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)の数平均分子量は100~500,000であることが好ましい。
なお、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0036】
シリル化ポリオレフィン(D)は、例えば、ヒドロシラン化合物(d1’)と末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)を、例えば特開2010-37555公報や特開2011-26448号公報に記載されているように、ヒドロシラン化合物(d1’)及びハロゲン化遷移金属から調製される遷移金属触媒組成物の存在下で反応させることにより得られる。
【0037】
ヒドロシラン化合物(d1’)と末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)の量比については、生成しようとするシリル化ポリオレフィン(D)の構造によって異なるが、通常、末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)中のビニル基とヒドロシラン化合物(d1’)中のSi-H結合との当量比として0.01~10当量倍の範囲であり、好ましくは0.1~2当量倍の範囲である。
【0038】
シリル化ポリオレフィン(D)の具体例としては、以下の一般式(6)~(8)で表されるポリオルガノシロキサンブロック(シリコーンブロック)をもつ構造のオレフィン-シリコーン共重合体が挙げられる。但し、シリル化ポリオレフィン(D)は、これらに限定されるものではない。
なお、下記一般式(6)~(8)中、l及びmは上記一般式(2)及び(4)で説明したl及びmと同様の数値である。なお、擬似接着ラベルの剥離性を良好なものとする観点から、lの値は好ましくは5~200、より好ましくは10~100である。
また、pは、1以上の整数であり、好ましくは100~100000、より好ましくは200~10000である。
また、下記一般式(6)~(8)中、末端二重結合含有ポリオレフィン(d2’)中の2つのR31は、互いに独立して、水素原子又は炭化水素基を表す。R31はポリオレフィンを構成するオレフィン単位の残基である。オレフィンがエチレンである場合、2つのR31はともに水素原子である。オレフィンがプロピレンである場合、2つのR31は水素原子とメチル基の組み合わせである。pが複数存在する場合、それぞれのpの値は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
[オレフィン系樹脂(X1)]
オレフィン系樹脂(X1)は、オレフィンモノマー(x1’)に由来の構成単位(x1)を主体とする重合体である。但し、上記一般式(1)を構成単位として1つ以上含むヒドロシラン化合物(d1’)(以下、「モノマー(d1’)」ともいう)に由来する構成単位(d1)は含まない。
ここで、「オレフィンモノマー(x1’)に由来の構成単位(x1)を主体とする重合体」とは、オレフィン系樹脂(X1)に含まれる構成単位のうち、最も多く含まれる構成単位がオレフィンモノマー(x1’)に由来の構成単位(x1)であることを意味する。
オレフィンモノマー(x1’)としては、炭素数2~8のオレフィンが好ましい。炭素数2~8のオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、1-ヘキセン等が挙げられる。
本発明の一態様において、オレフィンモノマー(x1’)は、炭素数2~4のオレフィンであるエチレン、プロピレン、ブチレンであることがより好ましく、炭素数2~3のオレフィンであるエチレン、プロピレンであることが更に好ましい。
オレフィンモノマー(x1’)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して共重合体としてもよい。
【0043】
オレフィン系樹脂(X1)を具体的に例示すると、超低密度ポリエチレン(VLDPE、密度:880kg/m3以上910kg/m3未満)、低密度ポリエチレン(LDPE、密度:910kg/m3以上915kg/m3未満)、中密度ポリエチレン(MDPE、密度:915kg/m3以上942kg/m3未満)、高密度ポリエチレン(HDPE、密度:942kg/m3以上)、直鎖状ポリエチレン等のポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂(PP);ポリブテン樹脂(PB);エチレン-プロピレン共重合体;オレフィン系エラストマー(TPO);エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA);エチレン-プロピレン-(5-エチリデン-2-ノルボルネン)等のオレフィン系三元共重合体;等が挙げられ、好ましくはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリブテン樹脂(PB)であり、より好ましくはポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)である。
オレフィン系樹脂(X1)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
なお、オレフィン系樹脂(X1)中における、構成単位(x1)の含有量は、オレフィン系樹脂(X1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、更になお好ましくは90~100質量%である。
【0045】
また、オレフィン系樹脂(X1)中における、炭素数2~4のオレフィンに由来する構成単位の含有量は、オレフィン系樹脂の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、更になお好ましくは90~100質量%である。
【0046】
[その他の添加剤]
本発明の一態様において、樹脂組成物(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂フィルムにおいて一般的に使用される添加剤を含有してもよい。
このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びアンチブロッキング剤等が挙げられる。
例えば、樹脂組成物(A)が、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック等の着色剤を含有することで、第一樹脂層に被着体の記載事項に対してより高い隠蔽性を持たせることができる。
なお、これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物(A)がこれらの添加剤を含有する場合、添加剤の各含有量は、オレフィン系樹脂(X1)及びシリル化ポリオレフィン(D)の合計含有量(100質量部)に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.0005~15質量部、更に好ましくは0.001~10質量部である。
【0047】
<他方の層(β)>
本発明の擬似接着ラベルにおいて、他方の層(β)は、第一樹脂層及び第二樹脂層のうち、一方の層(α)として選択されなかった層である。
他方の層(β)は、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)から形成された層である。
ここで、「オレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む」とは、樹脂組成物(B)に含まれ得る成分のうち、最も多く含まれる成分がオレフィン系樹脂(X2)であることを意味する。
他方の層(β)を形成する樹脂組成物(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、オレフィン系樹脂(X2)以外の樹脂を含んでいてもよい。さらに、必要に応じて樹脂フィルム用の添加剤等を含んでいてもよい。但し、シリル化ポリオレフィン(D)は含まないことが好ましい。
また、樹脂組成物(B)中のオレフィン系樹脂(X2)の含有量は、樹脂組成物(B)の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%であり、更になお好ましくは90~100質量%である。
以下、樹脂組成物(B)に含まれる各成分について説明する。
なお、以下の記載において、「樹脂組成物(B)の有効成分の全量に対する各成分の含有量」は、「樹脂組成物(B)から形成された他方の層(β)中の各成分の含有量」とみなすこともできる。
【0048】
[オレフィン系樹脂(X2)]
オレフィン系樹脂(X2)は、オレフィンモノマー(x2’)に由来の構成単位(x2)を主体とする重合体である。但し、上記一般式(1)を構成単位として1つ以上含むヒドロシラン化合物(d1’)(以下、「モノマー(d1’)」ともいう)に由来する構成単位(d1)は含まない。
ここで、「オレフィンモノマー(x2’)に由来の構成単位(x2)を主体とする重合体」とは、オレフィン系樹脂(X2)に含まれ得る構成単位のうち、最も多く含まれる構成単位がオレフィンモノマー(x2’)に由来の構成単位(x2)であることを意味する。
【0049】
本発明の擬似接着ラベルにおいて、オレフィン系樹脂(X2)としては、オレフィン系樹脂(X1)として挙げたものと同様のものが挙げられる。但し、オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なることが必要である。
本発明において、「オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なる」とは、オレフィン系樹脂(X1)の主体となる構成単位(x1)と、オレフィン系樹脂(X2)の主体となる構成単位(x2)とが異なることを意味している。
つまり、オレフィン系樹脂(X1)に含まれ得る構成単位のうち最も多く含まれる構成単位(x1)と、オレフィン系樹脂(X2)に含まれ得る構成単位のうち最も多く含まれる構成単位(x2)とが互いに異なることを意味している。
したがって、オレフィン系樹脂(X1)の主体となる構成単位(x1)と、オレフィン系樹脂(X2)の主体となる構成単位(x2)とが同じであるけれども、分子量や密度等が異なるような場合は、「オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なる」という定義には該当しない。
例えば、オレフィン系樹脂(X1)及びオレフィン系樹脂(X2)の一方の樹脂がエチレン由来の構成単位を主体とし、他方の樹脂がプロピレン由来の構成単位を主体とする場合には、「オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なる」という定義に該当する。
しかし、オレフィン系樹脂(X1)及びオレフィン系樹脂(X2)の一方の樹脂が低密度ポリエチレンであり、他方の樹脂が高密度ポリエチレンである場合には、「オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なる」には該当しない。
【0050】
なお、オレフィン系樹脂(X2)中における、構成単位(x2)の含有量は、オレフィン系樹脂(X2)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、更になお好ましくは90~100質量%である。
【0051】
[添加剤]
本発明の一態様において、樹脂組成物(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、オレフィン系樹脂(X2)の他にも、樹脂フィルムにおいて一般的に使用される添加剤を含有してもよい。
このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤、及びアンチブロッキング剤等が挙げられる。
なお、これらの添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物(B)がこれらの添加剤を含有する場合、添加剤の各含有量は、オレフィン系樹脂(X2)100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.0005~15質量部、更に好ましくは0.001~10質量部である。
【0052】
<粘着剤層>
本発明の擬似接着ラベルが有する粘着剤層は、擬似接着ラベルを被着物に貼着するための層であり、擬似接着ラベルの用途に応じて適宜選択される。具体的には、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤から形成されるが、耐候性、価格の点からアクリル系粘着剤が好適に用いられる。アクリル系粘着剤としては、例えば、溶剤型アクリル系粘着剤、水系エマルション型アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0053】
<剥離シート>
本発明の擬似接着ラベルが有する剥離シートは、特に限定されず、片面剥離処理された剥離シートや両面剥離処理をされた剥離シート等が用いられ、剥離シート用の基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離シート用の基材としては、例えば、上質紙、グラシン紙、クラフト紙等の紙類;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0054】
<擬似接着ラベルの製造方法>
本発明の擬似接着ラベルは、例えば、以下の工程(1)~(4)により製造される。
工程(1):シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む樹脂組成物(A)を調製する。
工程(2):シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)を調製する。但し、オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)は互いに異なるものとする。
工程(3):樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの一方を第一樹脂層とし、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの他方を第二樹脂層として、第一樹脂層と第二樹脂層とが擬似接着された状態で、且つ、基材と第一樹脂層と第二樹脂層とがこの順で積層された積層体を作製する。
工程(4):第二樹脂層の擬似接着面とは反対側の面に粘着層と剥離シートとをこの順で積層する。
【0055】
工程(1)では、シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含む樹脂組成物(A)を調製する。
本発明の一態様において、オレフィン系樹脂(X1)は、樹脂組成物(A)の全量基準(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~97質量%、更に好ましくは65~95質量%配合される。
また、シリル化ポリオレフィン(D)は、シリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)は、好ましくは1/99以上、より好ましくは3/97以上、更に好ましくは5/97以上、より更に好ましくは8/92以上、更になお好ましくは10/90以上、一層好ましくは20/80以上、より一層好ましくは30/70以上である。また、混合質量比(D/X1)は、好ましくは50/50以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは35/65以下である。
【0056】
工程(2)では、オレフィン系樹脂(X2)を主剤として含む樹脂組成物(B)を調製する。
本発明の一態様において、オレフィン系樹脂(X2)は、樹脂組成物(B)の全量基準(100質量%)に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、更に好ましくは70~100質量%、より更に好ましくは80~100質量%、更になお好ましくは90~100質量%配合される。
【0057】
工程(3)では、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの一方を第一樹脂層とし、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの他方を第二樹脂層として、第一樹脂層と第二樹脂層とが擬似接着された状態で、且つ、基材と第一樹脂層と第二樹脂層とがこの順で積層された積層体を作製する。
第一樹脂層と第二樹脂層とが擬似接着された状態で、且つ、基材と第一樹脂層と第二樹脂層とがこの順で積層された積層体を作製する方法としては、基材上に第一樹脂層と第二樹脂層とをこの順で一層ずつ積層する方法(以下、「二層順次積層」ともいう)と、第一樹脂層と第二樹脂層とを共押出により形成する方法(以下、「二層共押出」ともいう)等が挙げられる。
【0058】
[二層順次積層]
まず、基材上に第一樹脂層を積層する。
基材上に第一樹脂層を積層する方法は、特に限定されないが、例えば、Tダイを用いて、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの一方を基材上に溶融押出する方法等が挙げられる。
ここで、第一樹脂層と第二樹脂層の擬似接着状態をより良好なものとする観点から、第一樹脂層形成時の押出温度は、好ましくは350℃以下、より好ましくは325℃以下、更に好ましくは300℃以下、より更に好ましくは290℃以下である。また、第一樹脂層形成時の押出温度の下限値は、通常200℃以上である。
なお、基材と第一樹脂層の密着性を向上させる観点から、基材をコロナ処理等した後に、第一樹脂層を積層することが好ましい。
【0059】
次に、第一樹脂層の基材側の面とは反対面に、第一樹脂層と第二樹脂層とが擬似接着された状態となるように、第二樹脂層を積層する。
第一樹脂層の基材側の面とは反対面に、第二樹脂層を擬似接着する方法としては、例えば、Tダイを用いて、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)のうちの他方(つまり、第一樹脂層を形成する際に使用されたのが樹脂組成物(A)であれば、樹脂組成物(B)を用いる。第一樹脂層を形成する際に使用されたのが樹脂組成物(B)であれば、樹脂組成物(A)を用いる。)を第一樹脂層の基材側の面とは反対面に溶融押出する方法等が挙げられる。
第二樹脂層形成時の押出温度は、第一樹脂層形成の場合と同様、好ましくは350℃以下、より好ましくは325℃以下、更に好ましくは300℃以下、より更に好ましくは290℃以下である。また、第二樹脂層形成時の押出温度の下限値は、通常200℃以上である。
【0060】
ここで、従来、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)が共にオレフィン系樹脂である場合、これらが互いに異なるオレフィン系樹脂であっても、第二樹脂層形成時に樹脂組成物を溶融押出しする際の押出温度を高温にすると、第一樹脂層と第二樹脂層とが溶融固着して擬似接着の状態にならないという問題があった。
この従来の問題に対して、本発明の擬似接着ラベルは、樹脂組成物(A)が、シリル化ポリオレフィン(D)を含み、且つ、シリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X1)を主剤として含み、樹脂組成物(B)がシリル化ポリオレフィン(D)以外のオレフィン系樹脂(X2)を主剤として含み、オレフィン系樹脂(X1)とオレフィン系樹脂(X2)が互いに異なることによって、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の双方がオレフィン系樹脂を主剤としているにもかかわらず、第一樹脂層上に第二樹脂層を形成する際に樹脂組成物の押出温度を高めて生産性及び加工性を向上させることができる。
【0061】
なお、押出温度を向上させる観点から、樹脂組成物(A)中のシリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)は、好ましくは1/99以上に調整される。
D/X1が1/99以上であると、第一樹脂層上に第二樹脂層を形成する際に樹脂組成物の押出温度を高温にしても、第一樹脂層と第二樹脂層とが溶融固着することがなくなる。これにより、第二樹脂層を形成する際の押出温度を高めて生産性及び加工性を向上させることができる。
【0062】
[共押出法]
本発明の一態様において、擬似接着ラベルの生産性をより一層向上させる観点から、基材上に第一樹脂層と第二樹脂層を同時に積層することが好ましい。具体的には、多層Tダイを用いて、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)を基材上に溶融共押出する方法等が挙げられる。
なお、第一樹脂層と第二樹脂層の擬似接着状態をより良好なものとする観点から、押出温度は、第一樹脂層形成時の押出温度及び第二樹脂層形成時の押出温度ともに、好ましくは350℃以下、より好ましくは325℃以下、更に好ましくは300℃以下、より更に好ましくは290℃以下であり、また、通常200℃以上である。
【0063】
なお、押出温度を向上させる観点から、樹脂組成物(A)中のシリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)は、好ましくは1/99以上に調整される。
D/X1が1/99以上であると、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)に互いに異なる主剤を用いるだけで、双方をともにポリオレフィン樹脂としながら、押出温度を高温としても溶融固着せず、疑似接着することが可能となる。
ここで、押出温度をより向上させる観点から、樹脂組成物(A)中のシリル化ポリオレフィン(D)とオレフィン系樹脂(X1)の混合質量比(D/X1)は、より好ましくは3/97以上、更に好ましくは5/97以上、より更に好ましくは8/92以上、更になお好ましくは10/90以上、一層好ましくは20/80以上、より一層好ましくは30/70以上に調整される。
特に、D/X1が30/70以上であると、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の押出温度をそれぞれ280℃以上に設定しても、第一樹脂層と第二樹脂層を擬似接着することが可能となる。
【0064】
工程(4)では、第二樹脂層の擬似接着面とは反対側の面に粘着層と剥離シートとをこの順で積層する。
具体的には、剥離シートの剥離処理面に粘着剤を塗布して剥離シートの上に粘着剤層を形成し、その剥離シート上に形成した粘着剤層を擬似接着性積層体の第二樹脂層側の面(第二樹脂層の第一樹脂層との擬似接着面とは反対側の面)に貼り付けることで擬似接着ラベルを製造することができる。あるいは、擬似接着性積層体の第二樹脂層側の面に、定法により粘着剤を塗布して粘着剤層を形成し、さらに粘着剤層に剥離シートを貼り付けてもよい。
なお、擬似接着性積層体の第二樹脂層側の面と粘着剤層の密着性を向上させる観点から、擬似接着性積層体の第二樹脂層側の面をコロナ処理等した後に、粘着剤層を形成することが好ましい。
【0065】
なお、擬似接着ラベルは、適宜抜き加工が行われてもよい。抜き加工は、例えば、所定のラベルの外郭に沿った抜き刃を使用して剥離シートごと打ち抜いてもよいし、剥離シートを打抜かないように基材から粘着剤層までをカットし、剥離シートの上に複数の擬似接着ラベルが配列するように形成してもよい。また、必要に応じて、個々の擬似接着ラベルの外郭周りの不要部をカスとして剥離シート上から取り除いてもよい。
【0066】
<擬似接着ラベルの用途>
本発明の擬似接着ラベルは、例えば、配送伝票として使用される。具体的には、擬似接着ラベルの基材にハーフカット線を入れておき、基材を複数片に分離して剥離可能としておく。そして、ハーフカット線で分離された一片の基材が配達票として使用されると共に、他の一片の基材が受領票として使用される。受領票は、通常、受取人により捺印又はサインされた後で剥がされ、配達業者によって持ち帰られ、伝票整理等に使用される。
【実施例】
【0067】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0068】
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0069】
<樹脂組成物>
以下の製造例において実施した樹脂組成物の詳細を以下に示す。
(オレフィン系樹脂)
・ポリエチレン:低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製、商品名「LC8001」
・ポリプロピレン:日本ポリケム株式会社製、商品名「OX-1067」
(シリル化ポリオレフィン)
・オレフィン-シリコーン共重合体であるポリエチレン-シリコーン-ポリエチレントリブロック共重合体を、ポリエチレンで希釈したシリル化ポリオレフィン希釈品(三井化学株式会社製、商品名「イクスフォーラ PEマスターバッチ」、シリル化ポリオレフィン含有比率:30質量%)。以降の説明では、「イクスフォーラ PEマスターバッチ」ともいう。
・オレフィン-シリコーン共重合体であるポリプロピレン-シリコーン-ポリプロピレントリブロック共重合体をポリプロピレンで希釈したシリル化ポリオレフィン希釈品(三井化学株式会社製、商品名「イクスフォーラ PPマスターバッチ」、シリル化ポリオレフィン含有比率:30質量%)。以降の説明では、「イクスフォーラ PPマスターバッチ」ともいう。
【0070】
(第一樹脂層及び第二樹脂層のうちの一方の層(α)の樹脂組成物の配合)
シリル化ポリオレフィン希釈品(イクスフォーラ PEマスターバッチ)と、オレフィン系樹脂としてのポリエチレンを配合し、樹脂組成物の全量(100質量%)に対するシリル化ポリオレフィンの含有量を1質量%から30質量%まで調整した。
また、同様に、シリル化ポリオレフィン希釈品(イクスフォーラ PPマスターバッチ)と、オレフィン系樹脂としてのポリプロピレンを配合し、樹脂組成物の全量(100質量%)に対するシリル化ポリオレフィンの含有量を1質量%から30質量%まで調整した。
【0071】
[実施例1~6、実施例21~26、比較例1~2]
擬似接着ラベルサンプル(二層共押出)の作製
基材と第一樹脂層と第二樹脂層とをこの順に積層し、且つ、第一樹脂層と第二樹脂層とが共押出により形成された擬似接着ラベルサンプルを、以下の手順で作製した。
繰り出しロールから基材として感熱発色紙(日本製紙株式会社製、商品名「TP60KS-HS」、厚さ:75μm)を繰り出し、感熱発色紙の感熱発色層とは反対面にコロナ処理を施した後、以下の表1に示す組合せの樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)を溶融してTダイから2層共押出し、感熱発色紙のコロナ処理面に、樹脂組成物(A)から形成された第一樹脂層と、樹脂組成物(B)から形成された第二樹脂層とをこの順で積層した3層積層体を得た。続いて、第二樹脂層の第一樹脂層側とは反対側の面にはコロナ処理を施した。
なお、第一樹脂層及び第二樹脂層の押出温度は、以下の表1に示す通りとした。また、Tダイにおける2層共押出時のクーリングロール温度は25℃とし、プレッシャーロール圧は0.03MPaとした。加工速度は60m/分とした。
第一樹脂層と第二樹脂層の厚さはそれぞれ15μmとした。
続いて、グラシン紙系の剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「8Kアオ」)の剥離剤層側に、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「SG」)を乾燥後の塗布厚が20μmとなるように100℃2分で塗布乾燥して剥離シート上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層の面と前記の3層積層体の第二樹脂層側とを貼り合わせて粘着シートを作製し、これを擬似接着ラベルサンプル(二層共押出)とした。
【0072】
[実施例7~20、実施例27~40、比較例3~4]
擬似接着ラベルサンプル(二層順次積層)の作製
基材上に、第一樹脂層と第二樹脂層とをこの順で一層ずつ順次積層した擬似接着ラベルサンプルを、以下の手順で作製した。
繰り出しロールから基材として感熱発色紙(日本製紙株式会社製、商品名「TP60KS-HS」、厚さ:75μm)を繰り出し、感熱発色紙の感熱発色層とは反対面にコロナ処理を施した後、以下の表1に示す樹脂組成物(A)を溶融してTダイから押出し、感熱発色紙のコロナ処理面に、樹脂組成物(A)から形成された第一樹脂層を積層し、2層積層体を作製した。
次いで、この2層積層体をいったんロール状に巻き取って繰り出しロールから繰り出し、2層積層体の第一樹脂層側の面に、以下の表1に示す樹脂組成物(B)を溶融してTダイから押出し、感熱発色紙のコロナ処理面に、樹脂組成物(A)から形成された第一樹脂層と、樹脂組成物(B)から形成された第二樹脂層とをこの順で積層した3層積層体を得た。続いて、第二樹脂層の第一樹脂層側とは反対側の面にはコロナ処理を施した。
なお、第一樹脂層の押出温度及び第二樹脂層の押出温度は、それぞれ以下の表1に示す通りとした。また、Tダイにおける押出時のクーリングロール温度は25℃とし、プレッシャーロール圧は0.03MPaとした。加工速度は60m/分とした。
第一樹脂層と第二樹脂層の厚さはそれぞれ15μmとした。
続いて、擬似接着ラベルサンプル(共押出)と同様に、剥離シート上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層の面と前記の3層積層体の第二樹脂層側とを貼り合わせて粘着シートを作製し、これを擬似接着ラベルサンプル(二層順次積層)とした。
【0073】
<擬似接着性の評価>
(剥離容易性)
幅5cm、長さ15cmにカットした擬似接着ラベルサンプルを、室温(23℃)下、引張試験機を用いて、分離基材側を剥離角度180°、剥離速度0.3m/分の条件で剥離し、第一樹脂層と第二樹脂層の層間Aからの剥離が可能か否かを評価した。
評価基準は、以下のとおりとした。
第一樹脂層と第二樹脂層の層間で剥離し、いずれの樹脂層の剥離面にも剥離ダメージが確認されなかったものを、評価Aとした。
第一樹脂層と第二樹脂層の層間で剥離したが、少なくとも一方の樹脂層の剥離面にわずかな剥離ダメージが確認されたものを、評価Bとした。
第一樹脂層と第二樹脂層の層間で剥離できたが、樹脂層の剥離面な剥離ダメージが確認されたか、基材に折れ筋ダメージが現れたものを、評価Cとした。
第一樹脂層と第二樹脂層の層間が固着し剥離できなかったものを、評価Dとした。
(加工時剥離耐性)
正方形にカットした擬似接着ラベルのサンプルを、室温(23℃)下で、シート状サンプルの一隅で頂点から両辺5mmの位置を結ぶ線で180°に折り込んだ。
折り戻した後、第一樹脂層と第二樹脂層の層間で剥離が生じていない場合を、評価○とした。
折り戻した後、第一樹脂層と第二樹脂層の層間で剥離が生じていた場合を、評価×とした。
(再付着耐性)
縦横14cmの正方形にカットした擬似接着ラベルをサンプルとして、室温(23℃)下、第一樹脂層と第二樹脂層の界面で剥離した。続いて、剥離した第一樹脂面と第二樹脂層面を重ねあわせ、50℃に設定した加熱プレス機によって10分間5MPaで圧着した。
第一樹脂層と第二樹脂層の界面が接着しないものを〇と評価し、接着した状態が瞬時でも確認されたものは、×と評価した。
【0074】
【0075】
表1より、以下のことがわかる。
表1の比較例1~4より、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の双方がオレフィン系樹脂である場合、これらのオレフィン系樹脂同士が互いに異なるものであっても、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の押出温度が比較的低温である200℃であっても第一樹脂層と第二樹脂層が固着してしまい擬似接着にならないことがわかる。
【0076】
これらに対し、表1の実施例7~13、実施例27~33より、樹脂組成物(A)がオレフィン系樹脂であり、樹脂組成物(B)がオレフィン系樹脂とシリル化ポリオレフィン(オレフィン-シリコーン共重合体)の混合物である場合、樹脂組成物(A)中のオレフィン系樹脂と樹脂組成物(B)中のオレフィン系樹脂が互いに異なると、樹脂組成物(B)中のシリル化ポリオレフィンの含有量によらず、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の押出温度を200℃以上にして、第一樹脂層と第二樹脂層を順次積層することにより、第一樹脂層と第二樹脂層を擬似接着できることがわかる。
特に、シリル化ポリオレフィンが樹脂組成物(B)の全量基準で1質量%以上含まれると、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の押出温度をそれぞれ290℃及び280℃と高温にした場合にも、第一樹脂層と第二樹脂層を順次積層することにより、第一樹脂層と第二樹脂層を擬似接着できることがわかる。
樹脂組成物(A)がオレフィン系樹脂とシリル化ポリオレフィン(オレフィン-シリコーン共重合体)の混合物であり、樹脂組成物(B)がオレフィン系樹脂であり、樹脂組成物(A)中のオレフィン系樹脂と樹脂組成物(B)中のオレフィン系樹脂が互いに異なる場合にも、表1の実施例14~20、実施例34~40から、上記と同様のことがわかる。
【0077】
さらに、表1の実施例1~3、実施例21~23より、樹脂組成物(A)がオレフィン系樹脂であり、樹脂組成物(B)がオレフィン系樹脂とシリル化ポリオレフィン(オレフィン-シリコーン共重合体)の混合物である場合、樹脂組成物(A)中のオレフィン系樹脂と樹脂組成物(B)中のオレフィン系樹脂が互いに異なると、樹脂組成物(B)中のシリル化ポリオレフィンの含有量によらず、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の押出温度を200℃にして、共押出により、第一樹脂層と第二樹脂層を擬似接着できることがわかる。
また、シリル化ポリオレフィンが樹脂組成物(B)の全量基準で30質量%以上含まれると、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の押出温度をそれぞれ290℃及び280℃と高温にした場合にも、共押出により、第一樹脂層と第二樹脂層を擬似接着できることがわかる。
樹脂組成物(A)がオレフィン系樹脂とシリル化ポリオレフィン(オレフィン-シリコーン共重合体)であり、樹脂組成物(B)がオレフィン系樹脂であり、樹脂組成物(A)中のオレフィン系樹脂と樹脂組成物(B)中のオレフィン系樹脂が互いに異なる場合にも、表1の実施例4~6、実施例24~26から、上記と同様のことがわかる。
【0078】
また、実施例1~40の擬似接着ラベルサンプルは、いずれも加工時剥離耐性が良好であったことから、第一樹脂層と第二樹脂層の積層体から擬似接着ラベルを製造する工程、あるいは擬似接着ラベルに対して印刷や抜き加工等の後加工を実施する工程等で、第一樹脂層と第二樹脂層の層間Aで剥離することがなく、擬似接着ラベルの製造、印刷や抜き加工等の後加工を行いやすいことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の擬似接着ラベルは、例えば配送伝票として利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…擬似接着ラベル
11…基材
12…第一樹脂層
13…第二樹脂層
14…粘着剤層
15…剥離シート
A…第一樹脂層と第二樹脂層との層間
21…分離基材
22…被着体側残留部