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特許7149479光硬化性樹脂組成物、それを用いた燃料電池およびシール方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】光硬化性樹脂組成物、それを用いた燃料電池およびシール方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20220930BHJP
   C08F 2/50 20060101ALI20220930BHJP
   C08G 59/18 20060101ALI20220930BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20220930BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20220930BHJP
   H01M 8/0286 20160101ALI20220930BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20220930BHJP
【FI】
C08F290/04
C08F2/50
C08G59/18
H01M8/0273
H01M8/0284
H01M8/0286
H01M8/10 101
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019512575
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2018015507
(87)【国際公開番号】W WO2018190415
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017080209
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】曽我 哲徳
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216782(JP,A)
【文献】国際公開第2017/029978(WO,A1)
【文献】特開2002-060484(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038340(WO,A1)
【文献】特開平11-162442(JP,A)
【文献】特開2001-105548(JP,A)
【文献】特開2001-348328(JP,A)
【文献】国際公開第2005/028537(WO,A1)
【文献】特表2014-517857(JP,A)
【文献】特表2015-526547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/04
C08F 2/50
C08G 59/18
H01M 8/0286
H01M 8/0284
H01M 8/0273
H01M 8/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(D)成分を含有し、前記(A)成分100質量部に対して、(C)成分を1~30質量部含み、(D)成分を3~300質量部含むことを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を1以上有する、-[CH2C(CH32]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するポリマー
(B)成分:光ラジカル重合開始剤
(C)成分:アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテル、部分アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、部分アクリル化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、部分アクリル化ノボラックエポキシ樹脂、及び1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサンからなる群から選択される少なくとも1以上である、1分子中にラジカル重合性官能基とカチオン重合性官能基を有する化合物
(D)成分:炭素数5~30のアルキル基または炭素数5~30の脂環式基を有する(メタ)アクリレートモノマーであって、前記(A)成分及び前記(C)成分とは異なる(メタ)アクリレートモノマー
【請求項2】
前記(C)成分アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテル、及び部分アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1以上である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、一般式(1)で表されるポリイソブチレン骨格を有するポリマーである、請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R1は、一価もしくは多価芳香族炭化水素基、または一価もしくは多価脂肪族炭化水素基を示し、PIBは前記-[CH2C(CH32]-単位を含むポリイソブチレン骨格を示し、R4は酸素原子を含んでもよい炭素数2~6の2価の炭化水素基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、nは1~6のいずれかの整数である。)
【請求項4】
前記(D)成分が、イソボルニルメタクリレート又はジシクロペンタニルメタクリレートである、請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)成分100質量部に対して、(C)成分を3~10量部含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を含む、燃料電池用光硬化性シール剤。
【請求項7】
前記燃料電池用光硬化性シール剤が、燃料電池における部材である電解質及び電解質膜電極接合体からなる群のいずれかの部材周辺用燃料電池用光硬化性シール剤である、請求項6に記載の燃料電池用光硬化性シール剤。
【請求項8】
前記燃料電池用光硬化性シール剤が、燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシール剤である、請求項6に記載の燃料電池用光硬化性シール剤。
【請求項9】
前記燃料電池が、固体高分子形燃料電池である、請求項6~8のいずれか1項に記載の燃料電池用光硬化性シール剤。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物または請求項6~9のいずれか1項に記載のシール剤を光硬化してなる硬化物。
【請求項11】
燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール、及び燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシールからなる群のいずれかを含む燃料電池であって、前記いずれかのシールが、請求項10に記載の硬化物を含む、燃料電池。
【請求項12】
前記燃料電池が、固体高分子形燃料電池である、請求項11に記載の燃料電池。
【請求項13】
少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方が活性エネルギー線の光を透過可能であり、前記フランジの少なくとも一方の表面に、請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記光硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと他方のフランジとを前記光硬化性樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、及び、活性エネルギー線を前記光透過可能なフランジを通して照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
【請求項14】
少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジに、請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記塗布した光硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、光硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
【請求項15】
少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジ上にガスケット形成用金型を配置する工程、前記ガスケット形成用金型と該金型を配置したフランジとの間の空隙の少なくとも一部に請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を注入する工程、前記光硬化性樹脂組成物に前記活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、前記金型を前記一方のフランジから取り外す工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、前記一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や家庭用の新しいエネルギーシステムとして燃料電池が注目されている。燃料電池とは、水素と酸素を化学的に反応させることにより電気を取り出す発電装置である。また、燃料電池は、発電時のエネルギー効率が高く、水素と酸素の反応により水が生成されることからクリーンな次世代の発電装置である。燃料電池は、固体高分子形燃料電池、りん酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池の4つの方式があるが、中でも固体高分子形燃料電池は、運転温度が比較的低温(80℃前後)でありながら高発電効率であるので、自動車用動力源、家庭用発電装置、携帯電話などの電子機器用小型電源、非常電源等の用途で期待されている。
【0003】
図1に示すように、固体高分子形燃料電池のセル1とは、高分子電解質膜4が空気極3a、燃料極3bとの間に挟持された構造である電解質膜電極接合体5(MEA)と、前記MEAを支持するフレーム6と、ガスの流路が形成されているセパレーター2とを備えた構造である。
【0004】
固体高分子形燃料電池を起動するには、アノード電極に水素を含む燃料ガスを、カソード電極には酸素を含む酸化ガス(酸素ガス)を別々に隔離して供給する必要がある。隔離が不十分で一方のガスが他方のガスへと混合してしまうと、発電効率の低下を起こしてしまう恐れがあるためである。このような背景から、燃料ガスや酸素ガスなどの漏れを防止する目的で、シール剤が多用されている。具体的には、隣り合うセパレーター同士との間、セパレーターとフレームとの間、フレームと電解質膜またはMEAとの間等にシール剤が使用されている。
【0005】
固体高分子形燃料電池に用いられるシール剤としては、耐気体透過性、低透湿性、耐熱性、耐酸性、可とう性に優れるゴム弾性体であることから、ポリイソブチレン系重合体を用いたヒドロシリル化反応する加熱硬化性樹脂組成物(特許文献1参照)、フルオロポリエーテル化合物を用いたヒドロシリル化反応する加熱硬化性樹脂組成物(特許文献2参照)、フッ素ポリマーを用いたヒドロシリル化反応する加熱硬化性樹脂組成物(特許文献3参照)、エチレン-プロピレン-ジエンゴムを用いた加熱硬化性樹脂組成物(特許文献4参照)が検討されてきた。しかしながら、特許文献1~4の加熱硬化性樹脂組成物は、硬化させるために加熱工程が必要であるので、工程時間がかかることと、加熱による電解質膜の劣化が懸念されるという問題があった。
【0006】
そこで、工程短縮を実現し、熱による電解質膜の劣化を防ぐことができる光硬化性樹脂組成物が注目されている。特許文献5、6には、ポリイソブチレンジアクリレート、(メタ)アクリルモノマー、光開始剤を含有する光硬化性シーラントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-111146号公報
【文献】特開2004-075824号公報
【文献】特開2007-100099号公報
【文献】特開2011-124258号公報
【文献】特表2009-531516号公報
【文献】特開平2-88614号公報
【発明の概要】
【0008】
しかしながら、特許文献5、6に開示された光硬化性樹脂組成物は、シール性を得るためにポリイソブチレンジアクリレートを主成分としているが、光硬化性が不十分であった。また、特許文献5、6に開示された光硬化性樹脂組成物は、シール性を得るために極性の低いポリイソブチレンジアクリレートを主成分としているが、その分子構造の極性に起因し、各種部材への接着性が劣るというという問題があった。さらに、燃料電池の高分子電解質膜は、フッ素系ポリマーであるからことから、従来のシール剤では接着させることが極めて困難な材質であり、なおのこと特許文献5、6の光硬化性樹脂組成物では接着が困難であった。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑みてされたものであり、紫外線等の光(活性エネルギー線)の照射により速やかに硬化し、難接着な材質である電解質膜に対する密着力に優れた光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨を次に説明する。
〔1〕下記の(A)~(C)成分を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を1以上有する、-[CH2C(CH32]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するポリマー
(B)成分:光ラジカル重合開始剤
(C)成分:1分子中にラジカル重合性官能基とカチオン重合性官能基を有する化合物
〔2〕前記(C)成分のラジカル重合性官能基が、(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする〔1〕に記載の光硬化性樹脂組成物。
〔3〕前記(C)成分のカチオン重合性官能基が、グリシジル基またはビニルエーテル基を有する化合物であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
〔4〕前記(A)成分が、一般式(1)で表されるポリイソブチレン骨格を有するポリマーである、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
(式(1)中、R1は、一価もしくは多価芳香族炭化水素基、または一価もしくは多価脂肪族炭化水素基を示し、PIBは前記-[CH2C(CH32]-単位を含むポリイソブチレン骨格を示し、R4は酸素原子を含んでもよい炭素数2~6の2価の炭化水素基を表し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、nは1~6のいずれかの整数である。)
〔5〕更に(D)成分として、(メタ)アクリレートモノマーを含有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
〔6〕前記(D)成分が、炭素数5~30のアルキル基または炭素数5~30の脂環式基を有する(メタ)アクリレートモノマーである、〔5〕に記載の光硬化性樹脂組成物。
〔7〕前記(A)成分100質量部に対して、(C)成分0.1~100質量部含むことを特徴とする〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
〔8〕〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を含む、燃料電池用光硬化性シール剤。
〔9〕前記燃料電池用光硬化性シール剤が、燃料電池における部材であるセパレーター、フレーム、電解質、燃料極、空気極、及び電解質膜電極接合体からなる群のいずれかの部材周辺用燃料電池用光硬化性シール剤である、〔8〕に記載の燃料電池用光硬化性シール剤。
〔10〕前記燃料電池用光硬化性シール剤が、燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール剤、若しくは燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間の燃料電池用光硬化性シール剤である、〔8〕に記載のシール剤。
〔11〕前記燃料電池が、固体高分子形燃料電池である、〔8〕~〔10〕のいずれか1項に記載の燃料電池用光硬化性シール剤。
〔12〕〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物または〔8〕~〔11〕のいずれか1項に記載のシール剤を光硬化してなる硬化物。
〔13〕燃料電池における隣り合うセパレーター同士との間のシール、及び燃料電池のフレームと電解質膜または電解質膜電極接合体との間のシールからなる群のいずれかを含む燃料電池であって、前記いずれかのシールが、〔12〕に記載の硬化物を含む、燃料電池。
〔14〕前記燃料電池が、固体高分子形燃料電池である、〔13〕に記載の燃料電池。
〔15〕少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方が活性エネルギー線の光を透過可能であり、前記フランジの少なくとも一方の表面に、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記光硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと他方のフランジとを前記光硬化性樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、及び、活性エネルギー線を前記光透過可能なフランジを通して照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
〔16〕少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジに、〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記塗布した光硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、光硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とする前記シール方法。
〔17〕少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジ上にガスケット形成用金型を配置する工程、前記ガスケット形成用金型と該金型を配置したフランジとの間の空隙の少なくとも一部に〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を注入する工程、前記光硬化性樹脂組成物に前記活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、前記金型を前記一方のフランジから取り外す工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、前記一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法。
【0011】
本発明は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、難接着な材質である電解質膜に対する密着力、水素ガスバリア性、水蒸気バリア性に優れた光硬化性樹脂組成物を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】燃料電池の単セルの概略断面図である。
図2】燃料電池全体を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に発明の詳細を説明する。
<光硬化性樹脂組成物>
本発明は、下記の(A)~(C)成分及び任意の(D)成分を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物に関する。
(A)成分:(メタ)アクリロイル基を1以上有する、-[CH2C(CH32]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するポリマー
(B)成分:光ラジカル重合開始剤
(C)成分:1分子中にラジカル重合性官能基とカチオン重合性官能基を有する化合物
(D)成分:(メタ)アクリレートモノマー。
本発明の硬化性樹脂組成物の各(A)~(D)成分、並びにその他の任意成分は、下記のいずれかの条件を満たすものを任意に組み合わせて使用することができる。なお、各(A)~(D)成分は相互に異なる成分である。
<(A)成分>
本発明に用いられる(A)成分とは、(メタ)アクリロイル基を1以上有する、-[CH2C(CH32]-単位を含むポリイソブチレン骨格を有するポリマーであれば特に限定されるものではない。(A)成分としては、例えば、-[CH2C(CH32]-単位(ポリイソブチレン骨格)を有すればよく、「-[CH2C(CH32]-単位以外の他の構成単位」を含むポリマーであってもよい。(A)成分は、-[CH2C(CH32]-単位を、構成単位全量に対して、例えば70質量%以上含み、好ましくは75質量%以上含み、より好ましくは80質量%以上含むことが適当である。また、(A)成分は、-[CH2C(CH32]-単位を、例えば100質量%以下含み、別の態様では95質量%以下含み、また別の態様では90質量%以下含むことが適当である。(A)成分は、(メタ)アクリロイル基を、好ましくは1~12個、より好ましくは2~8個、さらに好ましくは2~4個、特に好ましくは2個有することが適当である。なお、本発明において、ポリマーとは、理論にとらわれないが、例えば、ポリマーの主鎖にモノマーの繰り返し単位を伴う構造で、100以上の繰り返し単位からなる化合物を指すと定義できる。また、(メタ)アクリロイル基は分子の側鎖、および/または、末端のいずれに存在していてもかまわないが、ゴム弾性の点から、分子の末端に存在することが好ましい。
【0014】
前記(A)成分としては、光硬化性および電解質膜に対する接着力に優れるという観点から以下に示す一般式(1)で表されるポリイソブチレン骨格を有するポリマーが好ましい。(A)成分の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシアルコキシフェニル基を有するポリイソブチレンが挙げられる。なお、本発明における(A)成分の主骨格がポリイソブチレン骨格であるが、このポリイソブチレン骨格を構成するモノマーとしてはイソブチレンを主として用いる他には、本発明の効果を損なわない範囲であれば他のモノマーを共重合してもよい。なお、(A)成分は、光硬化性樹脂組成物の塗布作業性が優れることから、常温(25℃)で液状であることが好ましい。
【0015】
【0016】
式(1)中、R1は、一価もしくは多価芳香族炭化水素基、または一価もしくは多価脂肪族炭化水素基を示し、好ましくは多価芳香族炭化水素基であり、特に好ましくは2価のフェニレン基である。PIBは前記-[CH2C(CH32]-単位を含む(または-[CH2C(CH32]-単位からなる)ポリイソブチレン骨格を示す。R4は酸素原子を含んでもよい炭素数2~6の2価の炭化水素基を表し、好ましくは炭素数2または3の2価の炭化水素基である。R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子である。R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。nは1~6のいずれかの整数であり、特に好ましくは2~4の整数である。
【0017】
本発明における(A)成分の分子量は特に制限は無いが、流動性、硬化後の物性などの面からクロマトグラフィー測定による数平均分子量が、例えば、200~500,000であることが好ましく、さらに好ましくは1,000~100,000であり、特に好ましくは3,000~50,000である。なお、前記数平均分子量は、特に断りがない限り、サイズ浸透クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
【0018】
本発明における(A)成分の25℃での粘度は、特に制限は無いが、作業性などの面から、例えば5Pa・s以上、好ましくは50Pa・s以上、より好ましくは100Pa・s以上であり、例えば、3000Pa・s以下、好ましくは2500Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下である。特に好ましい粘度は1550Pa・sである。なお、特に断りがない限り、粘度の測定は、コーンプレート型粘度計を用い、25℃での粘度を測定した。
【0019】
前記(A)成分の製造方法としては、特に限定されないが、公知の手法を用いることができる。例えば、Polymer Bulletin、第6巻、135~141頁(1981)、T.P.Liao及びJ.P.KennedyおよびPolyer Bulletin、第20巻、253~260頁(1988)、Puskas et al.で開示された末端水酸基ポリイソブチレンと塩化アクリロイルまたは塩化メタクリロイルとを反応させて得る方法などが挙げられる。また、他の(A)成分の製造方法としては、末端水酸基ポリイソブチレンと(メタ)アクリロイル基とイソシアネート基を有する化合物とを反応させて得る方法や末端水酸基ポリイソブチレンとイソシアネート基を有する化合物と(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する化合物とを反応させて得る方法や末端水酸基ポリイソブチレンと(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸低級エステルとを脱水エステル化法またはエステル交換法を用いて反応させて得る方法などが挙げられる。
【0020】
また、前記の一般式(1)で表されるポリイソブチレンの製造方法としては、特に限定されないが、好ましくは、特開2013-216782号公報で開示されたハロゲン末端ポリイソブチレンと以下に示す一般式(2)で表されるような(メタ)アクリロイル基およびフェノキシ基を有する化合物とを反応させる手法が挙げられる。また、前記ハロゲン末端ポリイソブチレンは、公知の手法により得られるが、例えばカチオン重合により得られ、より好ましくはリビングカチオン重合により得られる。
【0021】
【0022】
式(2)中、R2、R3、R4、及びR5は、上記式(1)で定義したとおりであってもよい。具体的には、R4は炭素数2~6の酸素原子を含んでもよい2価の炭化水素基を表す。R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~20の1価の炭化水素基を表す。R5は水素原子、メチル基、又はエチル基を表す。上記式(2)で示される化合物としては、例えばフェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、好ましくはフェノキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0023】
<(B)成分>
本発明に用いられる(B)成分である光ラジカル重合開始剤は、光(活性エネルギー線)を照射することにより、本発明の(A)成分を硬化せしめるラジカル等を発生させる化合物であれば限定されるものではない。ここで活性エネルギー線とは、α線やβ線等の放射線、γ線やX線等の電磁波、電子線(EB)、波長が100~400nm程度の紫外線、波長が400~800nm程度の可視光線等の広義の光全てを含むものであり、好ましくは紫外線である。(B)成分としては、例えば、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、チタノセン系光ラジカル重合開始剤等が挙げられ、この中でも、活性エネルギー線を照射することにより表面硬化性および深部硬化性に優れる硬化物が得られるという観点からアセトフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤が好ましい。またこれらは単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
前記アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられるが、この限りではない。前記アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、IRGACURE184、IRGACURE1173、IRGACURE2959、IRGACURE127(BASF社製)、ESACUREKIP-150(Lamberti s.p.a.社製)が挙げられる。
【0025】
前記アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられるが、この限りではない。前記アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤の市販品としては、IRGACURE TPO、IRGACURE819、IRGACURE819DW(BASF社製)が挙げられる。
【0026】
本発明の(B)成分の配合量は、特に限定されないが、前記(A)成分100質量部に対して、表面硬化性と深部硬化性を両立できるという観点から好ましくは0.1~30質量部であり、更に好ましくは0.5~20質量部であり、特に好ましくは、1~15質量部である。
【0027】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は1分子中にラジカル重合性官能基とカチオン重合性官能基を有する化合物である。但し、本発明の(C)成分は、本発明の(A)成分及び(D)成分とは異なる。本発明の(C)成分は、本発明のその他成分との組み合わせにより、紫外線等の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、難接着な材質である電解質膜に対する密着力に優れた光硬化性樹脂組成物を提供するものである。前記ラジカル重合性官能基としては、炭素-炭素の不飽和二重結合を有する基が好ましく、接着剤及び塗料等に通常使用されている(メタ)アクリロイル基、ビニル基などを有する化合物を使用することができ、中でも光硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましい。前記(メタ)アクリロイル基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基が挙げられる。前記カチオン重合性官能基としては、グリシジル基、ビニルエーテル基、オキセタン基などが挙げられ、中でも、グリシジル基、ビニルエーテル基が好ましい。
【0028】
(C)成分の具体的な化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテル、部分(メタ)アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、部分(メタ)アクリル化ノボラックエポキシ樹脂、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサンなどが挙げられ、中でも好ましくは、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテル、部分(メタ)アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0029】
前記(メタ)アクリル酸グリシジルの市販品としては、ブレンマーG(日本油脂株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルの市販品としては、例えば、VEEA、VEEM(株式会社日本触媒製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの市販品としては、4HBAGE(日本化成株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記部分(メタ)アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、EA-1010N、EA-1010LC、EA-1010NT(新中村化学工業株式会社製)、UVACURE1561(ダイセル・オルネクス株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、前記部分(メタ)アクリル化ノボラックエポキシ樹脂の市販品としては、ENA、ENC(カガワケミカル株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
この(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~100質量部が好ましく、より好ましくは、0.5~50質量部であり、特に好ましくは1~30質量部である。(C)成分が0.1質量部以上であれば、表面硬化性が低下するおそれもなく、100質量部以下であれば、光硬化性樹脂組成物の透湿度が低下することもないので好ましい。
【0031】
<(D)成分>
本発明に更に(D)成分を含んでもよい。本発明の(D)成分である(メタ)アクリレートモノマーとは、本発明の(B)成分が発生するラジカル種により重合する化合物であり、反応性希釈剤として用いられる。但し、本発明の(D)成分は、本発明の(A)成分、(C)成分を除くものとする。(D)成分としては、アクリレートモノマーやメタクリレートモノマーが挙げられ、より電解質膜との密着性が優れることから、メタクリレートモノマーが好ましい。さらに(D)成分としては、例えば単官能性、二官能性、三官能性及び多官能性のモノマー等を使用することができ、これらの中でも、本発明の(A)成分と相溶し、光硬化性が優れることから、炭素数5~30のアルキル基または炭素数5~30の脂環式基を有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。ここで、上記炭素数としては、例えば2以上、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上であり、また、例えば30以下、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下である。
【0032】
前記の炭素数5~30のアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデカン(メタ)アクリレート、3-へプチルデシル-1-(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、前記の炭素数5~30の脂環式基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしてはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、(D)成分は単独で若しくは二種以上の混合物として用いることができる。
【0033】
この(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して3~300質量部が好ましく、より好ましくは、5~200質量部であり、特に好ましくは10~100質量部である。(D)成分が3質量部以上であれば、表面硬化性が低下するおそれもなく、300質量部以下であれば、光硬化性樹脂組成物の透湿度が低下することもないので好ましい。
【0034】
<任意成分>
本発明の組成物に対し、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー(本発明の(A)成分、(C)成分、(D)成分を含まない)、熱ラジカル開始剤、ポリチオール化合物、3級アミン化合物、スチレン系共重合体等の各種エラストマー、充填材、保存安定剤、酸化防止剤、光安定剤、密着付与剤(本発明の(C)成分を含まない)、可塑剤、顔料、難燃剤、及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。
【0035】
前記(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー(本発明の(A)成分、(C)成分、(D)成分を含まない)としては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ひまし油骨格のウレタン(メタ)アクリレート、イソプレン系(メタ)アクリレート、水添イソプレン系(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基含有アクリルポリマーなどがあげられ、中でも、本発明の(A)成分や(D)成分と相溶性に優れることから、ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、水添ポリブタジエン骨格のウレタン(メタ)アクリレート、ひまし油骨格のウレタン(メタ)アクリレート、イソプレン系(メタ)アクリレート、水添イソプレン系(メタ)アクリレートが好ましい。なお、本発明において、オリゴマーとは、主鎖にモノマーの繰り返し単位を伴う構造で、2~100の繰り返し単位からなる化合物を指す。またこれらは単独で用いてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0036】
前記熱ラジカル開始剤は特に限定されないが、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
【0037】
前記ポリチオール化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトグリコレート)、ブタンジオール ビス(3-メルカプトグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトグリコレート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカブトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられ、これらの化合物は、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
【0038】
前記ポリチオール化合物の市販品としては、例えばTMTP、PETP(淀化学株式会社製)、TEMPIC、TMMP、PEMP、PEMP-II-20P、DPMP(SC有機化学株式会社製)、MTNR1、MTBD1、MTPE1(昭和電工株式会社製)等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの化合物は、それぞれ単独で用いることも、また二種以上を混合して用いても良い。
【0039】
本発明に対して光硬化性を向上させる目的で、3級アミン化合物を配合してもよい。3級アミン化合物としては特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N’-ジエタノールアミン、N,N’-ジメチル-P-トルイジン、N,N’-ジメチル-アニリン、N-メチル-ジエタノールアミン、N-メチル-ジメタノールアミン、N,N’-ジメチルアミノ-アセトフェノン、N,N’-ジメチルアミノベンゾフェノン、N,N’-ジエチルアミノ-ベンゾフェノン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0040】
本発明に対して、硬化物のゴム物性を調整する目的で、スチレン系共重合体を配合してもよい。スチレン系共重合体としては特に限定されないが、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体(SIP)、スチレン-ブタジエン共重合体(SB)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、スチレン-ブタジエン-アクリロニトリル共重合体(ABS)などが挙げられる。
【0041】
本発明に対し、硬化物の弾性率、流動性などの改良を目的として、保存安定性を阻害しない程度の充填材を添加してもよい。具体的には有機質粉体、無機質粉体、金属質粉体等が挙げられる。無機質粉体の充填材としては、ガラス、フュームドシリカ、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、乾燥粘土鉱物、乾燥珪藻土等が挙げられる。無機質粉体の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。0.1質量部以上であれば十分な効果が期待でき、100質量部以下であれば光硬化性樹脂組成物の流動性に影響を与えることもなく、作業性が低下することもないので好ましい。
【0042】
フュームドシリカは、光硬化性樹脂組成物の粘度調整又は硬化物の機械的強度を向上させる目的で配合できる。好ましくは、オルガノクロロシラン類、ポリオルガノシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理したものなどが用いることができる。フュームドシリカの具体例としては、例えば、日本アエロジル製の商品名アエロジルR974、R972、R972V、R972CF、R805、R812、R812S、R816、R8200、RY200、RX200、RY200S、R202等の市販品が挙げられる。
【0043】
有機質粉体の充填材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネートが挙げられる。有機質粉体の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1~100質量部程度が好ましい。0.1質量部以上であれば十分な効果が期待でき、100質量部以下であれば光硬化性樹脂組成物の流動性に影響を与えることもなく、作業性が低下することもないので好ましい。
【0044】
本発明に対し保存安定剤を添加してもよい。保存安定剤としては、ベンゾキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のラジカル吸収剤、エチレンジアミン4酢酸又はその2-ナトリウム塩、シュウ酸、アセチルアセトン、o-アミノフエノール等の金属キレート化剤等を添加することもできる。
【0045】
本発明に対し酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、例えば、β-ナフトキノン、2-メトキシ-1,4-ナフトキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、モノ-tert-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-p-ベンゾキノン等のキノン系化合物;フェノチアジン、2,2-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、カテコール、tert-ブチルカテコール、2-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル〕-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,4′-ブチリデンビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4′-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、3,9-ビス〔2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニロキシ〕-1,1-ジメチルエチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チオジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′-ヘキサン-1,6-ジイルビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド〕、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-9側鎖アルキルエステル、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、3,3′,3″,5,5′,5″-ヘキサ-tert-ブチル-a,a′,a″-(メシチレン-2,4,6-トリル)トリ-p-クレゾール、カルシウムジエチルビス〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕フォスフォネート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート〕、ヘキサメチレンビス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス〔(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル〕-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、N-フェニルベンゼンアミンと2,4,6-トリメチルペンテンとの反応生成物、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、ピクリン酸、クエン酸等のフェノール類;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、トリス〔2-〔〔2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン-6-イル〕オキシ〕エチル〕アミン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリートールジフォスファイト、ビス〔2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル〕エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)〔1,1-ビスフェニル〕-4,4‘-ジイルビスホスフォナイト、6-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ〕-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ〔d、f〕〔1,3,2〕ジオキサフォスフェフィン等のリン系化合物;ジラウリル3,3′-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、2-メルカプトベンズイミダゾール等のイオウ系化合物;フェノチアジン等のアミン系化合物;ラクトン系化合物;ビタミンE系化合物等が挙げられる。中でもフェノール系化合物が好適である。
【0046】
本発明に対し光安定剤を添加してもよい。光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-〔2-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕-4-〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル-メタアクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル,1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、N,N′,N″,N″′-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ〔〔6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル〕〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕〕、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、2,2,4,4-テトラメチル-20-(β-ラウリルオキシカルボニル)エチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン-21-オン、β-アラニン,N,-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ドデシルエステル/テトラデシルエステル、N-アセチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、2,2,4,4-テトラメチル-7-オキサ-3,20-ジアザジスピロ〔5,1,11,2〕ヘネイコサン-21-オン、2,2,4,4-テトラメチル-21-オキサ-3,20-ジアザジシクロ-〔5,1,11,2〕-ヘネイコサン-20-プロパン酸ドデシルエステル/テトラデシルエステル、プロパンジオイックアシッド,〔(4-メトキシフェニル)-メチレン〕-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)エステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノールの高級脂肪酸エステル、1,3-ベンゼンジカルボキシアミド,N,N′-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)等のヒンダートアミン系;オクタベンゾン等のベンゾフェノン系化合物;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミド-メチル)-5-メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル3-(3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系化合物;2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系化合物;2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール等のトリアジン系化合物等が挙げられる。特に好ましくは、ヒンダートアミン系化合物である。
【0047】
本発明に対し密着付与剤を添加してもよい。密着付与剤としては3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-トリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-ユレイドプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステル、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェートモノエチルアミンハーフソルト、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸フォスフェート等があげられる。これらの中では、ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステル、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェートモノエチルアミンハーフソルト、2-ヒドロキシエチルメタクリル酸フォスフェート等が好ましい。密着性付与剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.05~30質量部が好ましく、更に好ましくは0.2~10質量部である。
【0048】
本発明に対し、可塑剤、顔料、難燃剤及び界面活性剤を添加してもよい。可塑剤としては、例えば、ラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの石油系プロセスオイル、アクリル系可塑剤、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジブチルなどの二塩基酸ジアルキル、液状ポリブテン、液状ポリイソプレンなどの低分子量液状ポリマー等が挙げられる。顔料としては、例えば、カーボン等が挙げられる。難燃剤としては、例えば、水和金属化合物系、リン系、シリコーン系、窒素化合物系等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもよい。
【0049】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、(A)成分~(C)成分並びにその他の任意成分の所定量を配合して、ミキサー等の混合手段を使用して、好ましくは10~70℃の温度で好ましくは0.1~5時間混合することにより製造することができる。また、遮光環境下で製造することが好ましい。
【0050】
<塗布方法>
本発明の光硬化性樹脂組成物を被着体への塗布する方法としては、公知のシール剤や接着剤の方法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。なお、本発明の光硬化性樹脂組成物は、塗布性の観点から25℃で液状であることが好ましい。
【0051】
<硬化方法>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、紫外線、可視光、活性エネルギー線等の光を照射することにより硬化させることができる。ここでいう光は、α線やβ線等の放射線、γ線やX線等の電磁波、電子線(EB)、100~400nm程度の紫外線、400~800nm程度の可視光線等の各種活性エネルギー線を含む広義の光を意味する。硬化させる際の光源は特に限定されず、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が挙げられる。光照射の照射量は硬化物の特性の観点から10kJ/m2以上であることが好ましく、より好ましくは15kJ/m2以上である。
【0052】
<硬化物>
本発明の硬化物は、本発明の光硬化性樹脂組成物に対し、上記硬化方法によって紫外線等の光(活性エネルギー線等)を照射することにより硬化させてなる。本発明の硬化物は、本発明の光硬化性樹脂組成物が硬化したものであれば、その硬化方法の如何は問わない。
【0053】
<用途及びシール剤>
本発明の光硬化性樹脂組成物またはその硬化物が好適に用いられる用途としては、光硬化性シール剤である。本発明においてシール剤とは、接着剤、コーティング剤、注型剤、ポッティング剤等の用途も含まれるものである。なお、このような用途で使用するにあたり、本発明の光硬化性樹脂組成物は25℃で液状であることが好ましい。
【0054】
シール剤の具体的な用途としては、本発明の光硬化性樹脂組成物またはその硬化物は、低気体透過性、低透湿性、耐熱性、耐酸性、可とう性に優れるゴム弾性体であることから、燃料電池、太陽電池、色素増感型太陽電池、リチウムイオン電池、電解コンデンサ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー、LED、ハードディスク装置、フォトダイオード、光通信・回路、電線・ケーブル・光ファイバー、光アイソレータ、ICカード等の積層体、センサー、基板、医薬・医療用器具・機器等が挙げられる。これらの用途の中でも、本発明の光硬化性樹脂組成物は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、難接着な材質である電解質膜に対する密着力、水素ガスバリア性、水蒸気バリア性に優れることから、燃料電池用途が特に好ましい。
【0055】
<燃料電池>
燃料電池とは、水素と酸素を化学的に反応させることにより電気を取り出す発電装置である。また、燃料電池には、固体高分子形燃料電池、りん酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体酸化物形燃料電池の4つの方式があるが、中でも固体高分子形燃料電池は、運転温度が比較的低温(80℃前後)でありながら高発電効率であるので、自動車用動力源、家庭用発電装置、携帯電話などの電子機器用小型電源、非常電源等の用途に用いられる。
【0056】
図1に示すように、代表的な固体高分子形燃料電池のセル1とは、高分子電解質膜4が空気極3a、燃料極3bとの間に挟持された構造である電解質膜電極接合体5(MEA)と、前記MEAを支持するフレーム6と、ガスの流路が形成されているセパレーター2とを備えた構造である。また、固体高分子形燃料電池の起動時には、燃料ガス(水素ガス)および酸化ガス(酸素ガス)が、酸化ガス流路8aおよび燃料ガス流路8bを通じて供給される。また、発電の際の発熱を緩和する目的で冷却水の流路9を流れる。なお、このセルを数百枚重ねてパッケージにしたものを、図2に示すようにセルスタック10と呼んでいる。
【0057】
燃料極に燃料ガス(水素ガス)、酸素極(空気極)に酸化ガス(酸素ガス)を供給すると、各電極では次のような反応が起こり、全体としては水が生成される反応(H2+1/2O2→H2O)が起こる。詳細に説明すると、下記のように燃料極で生成されるプロトン(H+)は固体高分子膜中を拡散して酸素極側に移動し、酸素と反応して生成された水(H2O)は酸素極側から排出される。
燃料極(アノード電極):H2→2H++2e-
酸素極(カソード電極):1/2O2+2H++2e-→H2
【0058】
固体高分子形燃料電池を起動するには、アノード電極に水素を含む燃料ガスを、カソード電極には酸素を含む酸化ガスを別々に隔離して供給する必要がある。隔離が不十分で一方のガスが他方のガスへと混合してしまうと、発電効率の低下を起こしてしまう恐れがあるためである。このような背景から、燃料ガスや酸素ガスなどの漏れを防止する目的で、シール剤が多用される。具体的には、隣り合うセパレーター同士との間、セパレーターとフレームとの間、フレームと電解質膜またはMEAとの間等にシール剤が使用されている。
【0059】
前記高分子電解質膜とは、イオン伝導性を有する陽イオン交換膜があげられ、好ましくは化学的に安定であり、高温での動作に強いことから、スルホン酸基を持つフッ素系ポリマーなどが挙げられる。市販品としては、デュポン社のナフィオン(登録商標)、旭化成株式会社製のフレミオン(登録商標)、旭硝子株式会社製のアシプレックス(登録商標)などが挙げられる。通常、高分子電解質膜は難接着な材質であるが、本発明の光硬化性樹脂組成物を用いることで、接着することができる。
ナフィオン(登録商標)
【0060】
前記燃料極は、水素極、アノードと呼ばれるものであり、公知のものが使用される。例えば、カーボンに白金、ニッケル、ルテニウムなどの触媒を担体させたものが用いられている。また、前記空気極は、酸素極、カソードと呼ばれるものであり、公知のものが使用される。例えば、カーボンに白金、合金などの触媒を担体させたものが用いられている。各電極の表面には、ガスの拡散や電解質の保湿させる働きをするガス拡散層が備えられていてもよい。ガス拡散層は、公知のものが使用されるが、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、炭素繊維などが挙げられる。
【0061】
上記セパレーター2は、図1に示すように凸凹の細かい流路があり、そこを燃料ガスや酸化ガスが通り、電極に供給される。また、セパレーターは、アルミニウム、ステンレス、チタン、グラファイト、カーボン等により構成されている。
【0062】
前記フレームとは、薄膜な電解質膜またはMEAが破けないように支持、補強するものである。前記フレームの材質は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。また、本発明の光硬化性樹脂組成物またはその硬化物を用いて部材を貼り合わせるためには、部材が光透過することものが好ましい。
【0063】
本発明の燃料電池とは、本発明の光硬化性樹脂組成物またはその硬化物によりシールされたことを特徴とする燃料電池である。燃料電池におけるシールが必要な部材としては、セパレーター、フレーム、電解質、燃料極、空気極、MEA等が挙げられる。より具体的なシール箇所としては、隣り合うセパレーター同士との間、セパレーターとフレームとの間、フレームと電解質膜またはMEAとの間等が挙げられる。なお、「セパレーターとフレームとの間」または「高分子電解質膜またはMEAとフレームとの間」の主なシールの目的は、ガスの混合や漏れを防ぐことであり、隣り合うセパレーター同士との間のシールの目的はガスの漏れを防ぐことと冷却水流路から外部に冷却水が漏洩することを防ぐことである。なお、電解質膜から発生する酸により強酸雰囲気になるので、シール剤には耐酸性が求められる。
【0064】
<シール方法>
本発明の光硬化性樹脂組成物を用いたシール手法としては、特に限定されないが、代表的には、FIPG(フォームインプレイスガスケット)、CIPG(キュアーインプレイスガスケット)、MIPG(モールドインプレイスガスケット)、液体射出成形などが挙げられる。
【0065】
FIPGとは、被シール部品のフランジに本発明の光硬化性樹脂組成物を自動塗布装置などにより塗布し、もう一方のフランジと貼り合わせた状態で、紫外線等の活性エネルギー線を光透過可能なフランジ側から照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させて、接着シールする手法である。より具体的には、少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方が活性エネルギー線の光を透過可能であり、前記フランジの少なくとも一方の表面に、上述した光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記光硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと他方のフランジとを前記光硬化性樹脂組成物を介して貼り合わせる工程、及び、活性エネルギー線を前記光透過可能なフランジを通して照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法である。
【0066】
CIPGとは、被シール部品のフランジに本発明の光硬化性樹脂組成物を自動塗布装置などによりビード塗布し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させてガスケットを形成する。そして、もう一方のフランジと貼り合わせて、圧縮シールする手法である。より具体的には、少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジに、上述した光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、前記塗布した光硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、光硬化性樹脂組成物を塗布した一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法である。
【0067】
MIPGとは、予め被シール部品のフランジに金型を圧接し、光透過可能な材質の金型とフランジ間に生じたキャビティーに光硬化性樹脂組成物を注入し、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、光硬化させガスケットを形成する。そして、もう一方のフランジと貼り合わせて、圧縮シールする手法である。なお、金型は、光透過可能な材質であることが好ましく、具体的には、ガラス、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、オレフィン等が挙げられる。また、ガスケット形成後、金型から取り出しやすくするために金型には、予めフッ素系、シリコーン系などの離型剤を塗布しておくことが好ましい。より具体的には、少なくとも2つのフランジを有する被シール部品の当該少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする方法であって、前記フランジの少なくとも一方のフランジ上にガスケット形成用金型を配置する工程、前記ガスケット形成用金型と該金型を配置したフランジとの間の空隙の少なくとも一部に上述した光硬化性樹脂組成物を注入する工程、前記光硬化性樹脂組成物に前記活性エネルギー線を照射して前記光硬化性樹脂組成物を硬化させ、前記光硬化性樹脂組成物の硬化物からなるガスケットを形成する工程、前記金型を前記一方のフランジから取り外す工程、他方のフランジを前記ガスケット上に配置して、前記一方のフランジと前記他方のフランジとを前記ガスケットを介して圧着し、前記少なくとも2つのフランジの間の少なくとも一部をシールする工程、を含むことを特徴とするシール方法である。
【0068】
液体射出成形とは、本発明の光硬化性樹脂組成物を特定圧力により光透過可能な材質の金型に流し込み、紫外線等の活性エネルギー線を照射して、光硬化させガスケットを形成する。そして、もう一方のフランジと貼り合わせて、圧縮シールする手法である。なお、金型は、光透過可能な材質であることが好ましく、具体的には、ガラス、PMMA、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、オレフィン等が挙げられる。また、ガスケット形成後、金型から取り出しやすくするために金型には、予めフッ素系、シリコーン系などの離型剤を塗布しておくことが好ましい。
【実施例
【0069】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細の説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0070】
<a1の製造>
アクリロイルオキシエトキシフェニル基を有するポリイソブチレン(a1)の製造
5Lのセパラブルフラスコの容器内を窒素置換した後、n-ヘキサン200mL及び塩化ブチル2000mLを加え、窒素雰囲気下で攪拌しながら-70℃まで冷却した。次いで、イソブチレン840mL(9mol))、p-ジクミルクロライド12g(0.05mol)及び2-メチルピリジン1.1g(0.012mol)を加えた。反応混合物が-70℃まで冷却された後で、四塩化チタン5.0mL(0.05mol)を加えて重合を開始した。重合開始3時間後に、フェノキシエチルアクリレート(ライトアクリレートPO-A、共栄社化学株式会社製)40gと四塩化チタン110mlを添加した。その後、-70℃で4時間攪拌を続けた後、メタノール1000mlを添加して反応を停止させた。
反応溶液から上澄み液を分取し、溶剤等を留去した後、生成物をn-ヘキサン3000mlに溶解させ、3000mlの純水で3回水洗を行い、メタノールから再沈殿した後、溶媒を減圧下に留去して、得られた重合体を80℃で24時間真空乾燥することにより、アクリロイルオキシエトキシフェニル基を有するポリイソブチレン(a1)を得た。
【0071】
前記a1は、-[CH2C(CH32]-単位を含み、アクリロイル基を2個含有する。より具体的には、a1は、一般式(3)において、R1はフェニレン基を示し、PIBはポリイソブチレン骨格を示し、R4は炭素数2の炭化水素基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立して水素原子を示し、R5は水素原子を表し、nは2であるポリイソブチレンである。
なお、a1成分の数平均分子量(クロマトグラフィー法、ポリスチレン換算)は11,100であり、a1成分の粘度(25℃)は1550Pa・sであった。
【0072】
【0073】
<光硬化性樹脂組成物の調製>
・実施例1
本発明の(A)成分としてアクリロイルオキシエトキシフェニル基を有するポリイソブチレン(a1)100質量部と、(B)成分として2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(IRGACURE1173、BASF社製)3質量部と、(C)成分としてアクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテル(4HBAGE、日本化成株式会社製)3質量部と、(D)成分としてイソボルニルメタクリレート(SR423、サートマー社製)50質量部を添加し、遮光下で常温(25℃)にてプラネタリーミキサーで60分混合し、光硬化性樹脂組成物である実施例1を得た。
【0074】
・実施例2
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、(C)成分としてメタクリル酸グリシジル(ブレンマーG、日本油脂株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、実施例2を得た。なお、実施例2は本発明に対する参考例である。
【0075】
・実施例3
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、(C)成分としてアクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA、株式会社日本触媒製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、実施例3を得た。
【0076】
・実施例4
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、(C)成分として部分アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(UVACURE1561、ダイセル・オルネクス株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、実施例4を得た。
【0077】
・実施例5
実施例1において、イソボルニルメタクリレートの代わりに、(D)成分としてジシクロペンタニルメタクリレート(FA-513M、日立化成株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、実施例5を得た。
【0078】
・実施例6
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルを6質量部にした以外は、実施例1と同様にして調製し、実施例6を得た。
【0079】
・実施例7
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルを10質量部にした以外は、実施例1と同様にして調製し、実施例7を得た。
【0080】
・比較例1
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルを除いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例1を得た。
【0081】
・比較例2
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA、日本化成株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例2を得た。
【0082】
・比較例3
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、2-フェノキシエチルアクリレート(SR-339A、サートマー社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例3を得た。
【0083】
・比較例4
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、アクリル酸(試薬)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例4を得た。
【0084】
・比較例5
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(KBM-403、信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例5を得た。
【0085】
・比較例6
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、ラジカル重合性官能基を有さないビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(EXA-850CRP、DIC株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例6を得た。
【0086】
・比較例7
実施例1において、アクリル酸4-ヒドロキシブチル-グリシジルエーテルの代わりに、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド 2021P、株式会社ダイセル製)を用いた以外は、実施例1と同様にして調製し、比較例7を得た。
【0087】
表1の実施例、比較例において使用した試験方法は下記の通りである。
【0088】
<電解質膜に対する密着性試験>
ポリプロピレン(PP)フィルムに光硬化性樹脂組成物を50μm厚となるように塗布し、それを、スルホン酸基を持つフッ素系ポリマーの電解質膜(デュポン社製ナフィオン)に貼り合わせ、PPフィルムの方から積算光量45kJ/m2になるように紫外線を20秒間照射して硬化させ試験片とした。次に、電解質膜からPPフィルムと共に光硬化性樹脂組成物の硬化物を180度方向に、引っ張り試験機を用いて10mm/分の速度で引き剥がす。接着界面を観察し、下記基準に基づき評価を行った。
[評価基準]
Good(良好):電解質膜破断
Poor(芳しくない):CF(凝集破壊)発生、AF(PPフィルムあるいは電解質膜から界面破壊)なし
Bad(不良):AF(PPフィルムあるいは電解質膜から界面破壊)発生
【0089】
表1
【0090】
表1の実施例1~7によれば、本発明は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し(20秒程度)、難接着な材質である電解質膜に対する密着力に優れることがわかる。
【0091】
また、表1の比較例1は、本発明の(C)成分が非含有の組成物であるが、電解質膜に対する密着力が劣ることがわかる。比較例2は、本発明の(C)成分の代わりに、4-ヒドロキシブチルアクリレートを用いた組成物であるが、電解質膜に対する密着力が劣ることがわかる。比較例3は、本発明の(C)成分の代わりに、2-フェノキシエチルアクリレートを用いた組成物であるが、電解質膜に対する密着力が劣ることがわかる。比較例4は、本発明の(C)成分の代わりに、アクリル酸を用いた組成物であるが、電解質膜に対する密着力が劣ることがわかる。比較例5は、本発明の(C)成分の代わりに、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いた組成物であるが、電解質膜に対する密着力が劣ることがわかる。比較例6は、本発明の(C)成分の代わりに、ラジカル重合性官能基を有さないビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた組成物であるが、電解質膜に対する密着力が劣ることがわかる。比較例7は、本発明の(C)成分の代わりに、ラジカル重合性官能基を有さない3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを用いた組成物であるが、電解質膜に対する密着力が劣ることがわかる。
【0092】
さらに、透湿度(水蒸気バリア性)、水素ガスバリア性の試験を行った。比較例8、9は以下のように調製した組成物を用いた。
【0093】
・比較例8
実施例1において、(A)成分の代わりにポリブタジエン骨格のウレタンジメタクリレート(TE-2000、日本曹達株式会社製)にした以外は、実施例1と同様にして、調製し、比較例8を得た。
【0094】
・比較例9
実施例1において、(A)成分の代わりにポリエーテル骨格のウレタンジアクリレート(UXF-4002、日本化薬株式会社製)にした以外は、実施例1と同様にして、調製し、比較例9を得た。
【0095】
<透湿度(水蒸気バリア性)>
200mm×200mm×1.0mmの枠に実施例1、2と比較例6,8、9の光硬化性樹脂組成物を流し込んだ。その後、紫外線照射機により積算光量45kJ/m2になるように紫外線を20秒間照射し、厚さ1.0mmのシート状の硬化物を作成した。塩化カルシウム(無水)5gを直径30mmの開口部を有するアルミニウム製カップに入れて、前記硬化物をカップにセットした。「初期の全質量」(g)を測定した後、雰囲気温度40℃で相対湿度95%に保たれた恒温恒湿槽に24時間放置し、「放置後の全質量」(g)を測定して、透湿度(g/m2・24h)を計算し、下記評価基準に基づき評価した。結果を表2に示す。詳細な試験方法はJIS Z 0208に準拠する。なお、透湿度は、燃料電池用光硬化性シール剤として使用する場合、50g/m2・24h未満であることが好ましい。
[評価基準]
良:透湿度が、10g/m2・24h未満
可:透湿度が、10g/m2・24h以上、50g/m2・24h未満
不良:透湿度が、50g/m2・24h以上
【0096】
<水素ガスバリア性試験>
実施例1、2と比較例6,8、9の光硬化性樹脂組成物を用いて紫外線照射機により積算光量45kJ/m2になるように紫外線を20秒間照射し、厚さ1.0mmのシート状の硬化物を作成した。次にシート状の硬化物を用いて、JIS K7126-1:2006(プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法-第1部:差圧法)に準拠し測定した。尚、試験の種類は圧力センサ法であり、条件は23℃、高圧側の試験ガス(水素ガス)は100kPaにて測定し、下記評価基準に基づき評価した。結果を表2に示す。なお、水素ガスバリア性は、燃料電池用光硬化性シール剤として使用する場合、1×10-15mol・m/m2・s・Pa未満であることが好ましい。
[評価基準]
良:1×10-15mol・m/m2・s・Pa未満
不良:1×10-15mol・m/m2・s・Pa以上
【0097】
表2
【0098】
表2の実施例1、2によれば、本発明は、透湿度が低く、水素ガスバリア性に優れ、良好なシール性を有することがわかる。一方で比較例6は、本発明の(C)成分の代わりに、ラジカル重合性官能基を有さないビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた組成物であるが、水素ガスバリア性が劣るという結果であった。比較例8は、(A)成分の代わりにポリブタジエン骨格のウレタンジアクリレートを用いたものであるが、水素ガスバリア性が劣るという結果であった。また、比較例9は、(A)成分の代わりにポリエーテル骨格のウレタンジアクリレートを用いたものであるが、透湿度、水素ガスバリア性が劣るという結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、紫外線等の活性エネルギー線の照射により速やかに硬化し、難接着な材質である電解質膜に対する密着力、水素ガスバリア性、水蒸気バリア性に優れることから、各種シール用途に使用することが可能である。特に、燃料電池用光硬化性シール剤として有効であることから産業上有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 固体高分子形燃料電池のセル
2 セパレーター
3a 空気極(カソード)
3b 燃料極(アノード)
4 高分子電解質膜
5 電解質膜電極接合体(MEA)
6 フレーム
7 接着剤またはシール剤
8a 酸化ガス流路
8b 燃料ガス流路
9 冷却水流路
10 セルスタック
11 固体高分子形燃料電池
図1
図2