(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ及びブラシレスモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20220930BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20220930BHJP
H02K 1/22 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H02K1/276
H02K21/14 M
H02K1/22 A
(21)【出願番号】P 2018137167
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591201952
【氏名又は名称】株式会社一宮電機
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】木梨 好一
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-079596(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100967(WO,A1)
【文献】特開2014-236592(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016074(WO,A1)
【文献】特開2016-149818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 21/14
H02K 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びた軸線周りに回転自在なロータと、
上記ロータの径方向の外方に位置したステータであって、上記軸線を中心とした同一円周上に隙間を空けて配置されており各々にコイルが巻回された複数のティースを有するステータと、を備え、
上記ロータは、2つのユニットを備え、
上記ユニットの各々は、
複数のマグネットと、
上記軸方向に積層された複数の鋼板からなる筒状のロータヨークと、を備え、
上記ロータヨークは、その内周面及び外周面の間に、上記軸方向に沿った複数の第1貫通孔を備え、
上記第1貫通孔の各々は、上記径方向に沿って上記軸線に対して放射状に延びており、上記ロータの周方向に等間隔に設けられており、且つ上記外周面に開口しており、
上記マグネットの各々は、上記第1貫通孔に嵌め込まれており、
上記複数の鋼板のうち上記軸方向の一端に位置する鋼板は、上記第1貫通孔に嵌め込まれた上記マグネットの上記軸方向への移動を規制する規制部を備え、
上記2つのユニットは、上記ロータヨークの上記軸方向の他端同士が当接した状態で上記軸方向に並んで配置されており、
上記内周面によって区画された第2貫通孔に挿入されることで上記ロータヨークと嵌合するシャフトを更に備え、
上記内周面は、上記径方向に突出し且つ上記軸方向に延びた凸部を備え、
上記シャフトは、上記ロータヨークと嵌合した状態において上記凸部と嵌合する溝を備え、
上記凸部は、所定の隣り合う2つの上記マグネットの上記周方向の中間位置から角度θだけオフセットされており、
上記2つのユニットの間で、上記凸部は上記中間位置から逆向きにオフセットされており、
下記の式1、式2、及び式3を満た
し、
上記角度θは、上記軸方向に視て、上記中間位置と上記軸線とを通る仮想線と、上記凸部の上記周方向の中心と上記軸線とを通る仮想線とがなす角度であって、下記の式4を満た
すブラシレスモータ。
(数1)
A<B・・・(式1)
(数2)
B≧0.5×((π×C)/D)・・・(式2)
(数3)
E<A・・・(式3)
但し、
Aは、上記マグネットの上記周方向の寸法であり、
Bは、上記マグネットの上記径方向の寸法であり、
Cは、上記ロータヨークの外径であり、
Dは、上記ロータの磁極数であり、
Eは、上記第1貫通孔における上記外周面に開口した部分の上記周方向の寸法である。
(数4)
θ(単位:度)=360/(D及びFの最小公倍数×4)・・・(式4)
但し、Fは、上記ティースの数である。
【請求項2】
上記シャフトは、上記第2貫通孔に挿入された状態で上記内周面と当接する外面を備え、
上記外面及び上記内周面は、しまりばめの状態で嵌合しており、
上記溝及び上記凸部は、中間ばめの状態で嵌合している請求項
1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
上記シャフトは、
上記ロータヨークと嵌合した状態において、少なくとも上記ロータヨークの上記軸方向の一端から他端に亘って上記内周面と当接する第1部分と、
上記第1部分の上記軸方向の一端または他端の少なくとも一方と連続しており、上記第2貫通孔に挿入された状態において上記内周面と離間する第2部分と、を備え、
上記溝は、
上記第1部分に位置する第1溝と、
上記第1溝と連続しており、上記第2部分に位置する第2溝と、を備える請求項
2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
請求項
3に記載のブラシレスモータの製造方法であって、
上記2つのユニットの一方である第1ユニットの上記凸部と上記第2溝とを嵌合させて、上記第1ユニットを上記シャフトに対して上記周方向に位置決めする第1位置決め工程と、
上記第1ユニットの上記凸部と上記第1溝とを嵌合させ、且つ、上記第1ユニットの上記内周面と上記シャフトの上記外面とを嵌合させる第1嵌合工程と、
上記2つのユニットの他方である第2ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端と上記第1ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端とが上記軸方向に対向した状態で、上記第2ユニットの上記凸部と上記第2溝とを嵌合させて、上記第2ユニットを上記シャフトに対して上記周方向に位置決めする第2位置決め工程と、
上記第2ユニットの上記凸部と上記第1溝とを嵌合させ、上記第2ユニットの上記内周面と上記シャフトの上記外面と嵌合させ、且つ、上記第2ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端と上記第1ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端とを当接させる第2嵌合工程と、を含むブラシレスモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸線周りに回転自在なロータを備えたブラシレスモータ、及び当該ブラシレスモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータのロータには、マグネットが装着されている。ロータ外周にマグネットが貼り付けられたSPM(Surface Permanent Magnet)型のロータでは、ロータの回転時にマグネットに作用する力や、ロータの経年劣化などによって、マグネットがロータ外周から剥がれるおそれがあった。このようなマグネットのロータ外周からの剥がれを防止するために、ロータにマグネットが埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnet)型のロータ(特許文献1)が採用されるようになった。
【0003】
また、ブラシレスモータでは、コギングトルクを低減することが求められている。コギングトルクを低減する構成として、特許文献2には、マグネットの1極の外周の曲率半径が、ロータの外周の曲率半径より小さい構成が開示されている。つまり、特許文献2に開示されたロータでは、磁極片26dの外周の曲率半径が、ロータ26全体の外周の曲率半径より小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-274808号公報
【文献】特開2015-211623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、IPM型のロータであっても、マグネットの軸方向への飛び出しには対応できない。そのため、IPM型のロータの多くは、軸方向の両端に、マグネットの飛び出し防止用の蓋などを備えている。
【0006】
また、IPM型のロータでは、ロータの外周部が透磁率の高い磁性体で閉塞されている。つまり、マグネットとロータの外側に位置するステータのコイルとの間に、磁性体がある。そのため、コイルからの磁束の多くがロータの外周部の磁性体を介して循環する。これにより、インダクタンスが増加する。インダクタンスの増加により、ロータの高速域におけるトルクが低下するという課題が生じる。
【0007】
また、特許文献2に開示された構成(マグネットの1極の外周の曲率半径が、ロータの外周の曲率半径より小さい構成)では、極の周方向の中央部と両端部とで、マグネットとステータとのギャップが相違する。その結果、誘起電圧が低下して、ロータのトルクが低下するという課題が生じる。
【0008】
本発明は上述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マグネットの剥がれを防止し、且つロータのトルクを増加することができるブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係るブラシレスモータは、軸方向に延びた軸線周りに回転自在なロータと、上記ロータの径方向の外方に位置したステータであって、上記軸線を中心とした同一円周上に隙間を空けて配置されており各々にコイルが巻回された複数のティースを有するステータと、を備える。上記ロータは、2つのユニットを備える。上記ユニットの各々は、複数のマグネットと、上記軸方向に積層された複数の鋼板からなる筒状のロータヨークと、を備える。上記ロータヨークは、その内周面及び外周面の間に、上記軸方向に沿った複数の第1貫通孔を備える。上記第1貫通孔の各々は、上記径方向に沿って上記軸線に対して放射状に延びており、上記ロータの周方向に等間隔に設けられており、且つ上記外周面に開口している。上記マグネットの各々は、上記第1貫通孔に嵌め込まれている。上記複数の鋼板のうち上記軸方向の一端に位置する鋼板は、上記第1貫通孔に嵌め込まれた上記マグネットの上記軸方向への移動を規制する規制部を備える。上記2つのユニットは、上記ロータヨークの上記軸方向の他端同士が当接した状態で上記軸方向に並んで配置されている。下記の式1、式2、及び式3を満たす。
(数1)
A<B・・・(式1)
(数2)
B≧0.5×((π×C)/D)・・・(式2)
(数3)
E<A・・・(式3)
但し、Aは、上記マグネットの上記周方向の寸法であり、Bは、上記マグネットの上記径方向の寸法であり、Cは、上記ロータヨークの外径であり、Dは、上記ロータの磁極数であり、Eは、上記第1貫通孔における上記外周面に開口した部分の上記周方向の寸法である。
【0010】
上記構成によれば、第1貫通孔において外周面に開口があるので、コイルからの磁束がロータの外周部を介して循環することが抑制できる。また、E(第1貫通孔における外周面に開口した部分の周方向の寸法)が、A(マグネットの周方向の寸法)より短い。そのため、第1貫通孔に嵌め込まれたマグネットが当該開口した部分を介して径方向に沿って第1貫通孔から飛散することを防止できる。
【0011】
また、上記構成によれば、規制部によって、第1貫通孔に嵌め込まれたマグネットが軸方向に沿って第1貫通孔から飛散することを防止できる。
【0012】
また、上記構成によれば、式1及び式2が満たされていることにより、マグネットがロータの外周に沿って配置された構成よりも、ロータの外周を通過する磁束数を多くすることができる。これにより、ロータのトルクを増加させることができる。
【0013】
(2) 本発明に係るブラシレスモータは、上記内周面によって区画された第2貫通孔に挿入されることで上記ロータヨークと嵌合するシャフトを更に備える。上記内周面は、上記径方向に突出し且つ上記軸方向に延びた凸部を備える。上記シャフトは、上記ロータヨークと嵌合した状態において上記凸部と嵌合する溝を備える。上記凸部は、所定の隣り合う2つの上記マグネットの上記周方向の中間位置から角度θだけオフセットされている。上記角度θは、上記軸方向に視て、上記中間位置と上記軸線とを通る仮想線と、上記凸部の上記周方向の中心と上記軸線とを通る仮想線とがなす角度であって、下記の式4を満たす。
(数4)
θ(単位:度)=360/(D及びFの最小公倍数×4)・・・(式4)
但し、Fは、上記ティースの数である。
【0014】
上記構成によれば、2つのユニットのうちの一方において発生する交流の位相と、2つのユニットのうちの他方において発生する交流の位置とが、2×θ度ずれる。これにより、コギングトルクを低減することができる。
【0015】
(3) 上記シャフトは、上記第2貫通孔に挿入された状態で上記内周面と当接する外面を備える。上記外面及び上記内周面は、しまりばめの状態で嵌合している。上記溝及び上記凸部は、中間ばめの状態で嵌合している。
【0016】
上記構成によれば、外面及び内周面がしまりばめの状態で嵌合しているため、シャフトとロータとを強固に固定することができる。また、上記構成によれば、溝及び凸部が中間ばめの状態で嵌合しているため、溝及び凸部が隙間ばめの状態で嵌合している構成よりも、溝及び凸部の嵌合によってロータを周方向に正確に位置決めできる。また、上記構成によれば、溝及び凸部が中間ばめの状態で嵌合しているため、溝及び凸部がしまりばめの状態で嵌合している構成よりも、溝及び凸部の嵌合が容易である。
【0017】
(4) 上記シャフトは、上記ロータヨークと嵌合した状態において、少なくとも上記ロータヨークの上記軸方向の一端から他端に亘って上記内周面と当接する第1部分と、上記第1部分の上記軸方向の一端または他端の少なくとも一方と連続しており、上記第2貫通孔に挿入された状態において上記内周面と離間する第2部分と、を備える。上記溝は、上記第1部分に位置する第1溝と、上記第1溝と連続しており、上記第2部分に位置する第2溝と、を備える。
【0018】
(5) (4)に記載のブラシレスモータの製造方法は、上記2つのユニットの一方である第1ユニットの上記凸部と上記第2溝とを嵌合させて、上記第1ユニットを上記シャフトに対して上記周方向に位置決めする第1位置決め工程と、上記第1ユニットの上記凸部と上記第1溝とを嵌合させ、且つ、上記第1ユニットの上記内周面と上記シャフトの上記外面とを嵌合させる第1嵌合工程と、上記2つのユニットの他方である第2ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端と上記第1ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端とが上記軸方向に対向した状態で、上記第2ユニットの上記凸部と上記第2溝とを嵌合させて、上記第2ユニットを上記シャフトに対して上記周方向に位置決めする第2位置決め工程と、上記第2ユニットの上記凸部と上記第1溝とを嵌合させ、上記第2ユニットの上記内周面と上記シャフトの上記外面と嵌合させ、且つ、上記第2ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端と上記第1ユニットの上記ロータヨークの上記軸方向の他端とを当接させる第2嵌合工程と、を含む。
【0019】
(4)の構成のブラシレスモータを、(5)の方法によって製造することにより、以下の効果を奏する。
【0020】
第1位置決め工程において、外面及び内周面を当接させない状態で、凸部と第2溝とを中間ばめの状態で嵌合させることによって、しまりばめの状態とすることなく、第1ユニットをシャフトに対して周方向に位置決めすることができる。つまり、第1ユニットのシャフトに対する位置決めが容易である。その後、第1嵌合工程において、第1ユニットとシャフトとをしまりばめの状態で嵌合することができる。
【0021】
同様に、第2位置決め工程において、しまりばめの状態とすることなく、第2ユニットをシャフトに対して周方向に位置決めすることができる。その後、第2嵌合工程において、第2ユニットとシャフトとをしまりばめの状態で嵌合することができる。
【0022】
また、第2位置決め工程において、第1ユニット及び第2ユニットのロータヨークの軸方向の他端同士を当接させることにより、規制部を備えた鋼板が軸方向の両端に位置する状態とすることができる。これにより、第1貫通孔に嵌め込まれたマグネットが軸方向に沿って第1貫通孔から飛散することを防止できる。
【0023】
また、第2位置決め工程において、第1ユニット及び第2ユニットのロータヨークの軸方向の他端同士を当接させることにより、第1ユニット及び第2ユニットは軸方向に逆向きとなっている。そして、この状態において、第1ユニット及び第2ユニットの凸部は、それぞれ溝と嵌合している。第1ユニット及び第2ユニットを前述のように配置することにより、第1ユニットにおいて発生する交流の位相と、第2ユニットにおいて発生する交流の位置とを、2×θ度ずれた状態とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るブラシレスモータよれば、マグネットの剥がれを防止し、且つロータのトルクを増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、ブラシレスモータ30及びコントローラ37の構成を示した模式図である。
【
図2】
図2は、ロータ31とシャフト32とステータ33の
図1におけるII-II断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、ロータ31及びシャフト32の斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例におけるロータ31の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。なお、本実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更され得る。
【0027】
[ブラシレスモータ30の概略構成]
図1に示されるように、ブラシレスモータ30は、ロータ31、シャフト32、ステータ33、及びハウジング36などを備えている。ハウジング36は、ロータ31、シャフト32、及びステータ33を内部に収容している。ブラシレスモータ30は、ハーネス38によって、電力を供給するコントローラ37と電気的に接続されている。コントローラ37は、ステータ33のコイル39と電気的に接続されている。コントローラ37から供給された電圧は、コイル39へ印加される。コントローラ37は、U相、V相、W相の3相の電圧をそれぞれ印加する。これにより、ロータ31が回転する。
【0028】
[ステータ33]
図1及び
図2に示されるように、ステータ33は、ステータコア42と、インシュレータ45と、コイル39とを備えている。ステータ33は、概ね筒状の外形であるステータコア42にコイル39が巻回されたものである。ステータコア42は、平面視の形状が
図2に示される形状である鋼板が軸方向102(
図1参照)に複数枚積層され、カシメによって相互に結合されることにより一体にされている。なお、軸方向102は、
図2において紙面に垂直な方向である。
【0029】
ステータコア42は、外周側にコアヨーク43を有している。コアヨーク43から円筒の中心へ突出されたティース44が、ロータ31の周方向101に均等に隔てられて20個配置されている。つまり、ティース44は、軸方向102に延びた仮想的な軸線104(
図1に一点鎖線で示されている。)を中心とした同一円周上に隙間を空けて配置されている。なお、ティース44の数は、20個に限らない。
【0030】
図1に示されるインシュレータ45は、軸方向102におけるステータコア42の一方側に配置される部材と他方側に配置される部材とで構成されている。これら2つの部材はそれぞれ一体成形されている。そして、これら2つの部材が20個のティース44の各々を挟むように接続される。これにより、インシュレータ45は、各ティース44を外嵌した状態となる。なお、
図2において、インシュレータ45の図示は省略されている。
【0031】
図1に示されるように、各ティース44には、インシュレータ45を介してコイル39が巻回されている。
図2に示されるように、各ティース44の突出先端部は、ティース44の他の部分よりも周方向101の長さが長い幅広部59を形成している。これにより、巻回されるコイル39がティース44の先端部側から外れてしまうことを防止できる。
図1に示されるように、コイル39は、コントローラ37と電気的に接続されており、コントローラ37から与えられた電圧に基づく磁界を生じさせる。
【0032】
[ロータ31]
図1及び
図2に示されるように、ロータ31は、ステータ33の内側に設けられている。換言すると、ステータ33は、ロータ31の径方向103(
図1参照)の外方に位置している。径方向103は、ロータ31を軸方向102に視た状態において、軸線104から放射状に延びる方向である。
【0033】
図3に示されるように、ロータ31は、2つのユニット(第1ユニット71及び第2ユニット72)を備えている。第1ユニット71及び第2ユニット72は、同構成である。そのため、以下では、第1ユニット71の構成が説明される一方、第2ユニット72の構成は、原則省略され、必要に応じて説明される。
【0034】
図2及び
図4に示されるように、第1ユニット71は、ロータヨーク49と20個のマグネット40とで構成されている。なお、マグネット40の数は20個に限らない。
【0035】
図3に示されるように、ロータヨーク49は、概ね筒状の外形である。ロータヨーク49は、略リング形状の鋼板41が軸方向102に複数枚(
図3ではn枚)積層され、カシメによって相互に結合されることにより一体にされている。なお、nは2以上の自然数である。つまり、鋼板41の枚数は任意である。
【0036】
図2に示されるように、ロータヨーク49の外周面53は、ステータコア42のティース44と隙間を空けて径方向103に対向している。
【0037】
ロータヨーク49は、1個の貫通孔54(
図1参照、第2貫通孔の一例)と、20個の貫通孔50(第1貫通孔の一例)と、20個の貫通孔51とを備えている。貫通孔54、50、51は、軸方向102に沿ってロータヨーク49を貫通した孔である。なお、貫通孔50の数は20個に限らず、貫通孔51の数は20個に限らない。
【0038】
図1に示される貫通孔54は、ロータヨーク49の中心に設けられている。貫通孔54は、ロータヨーク49の内周面55によって区画されている。貫通孔54の中心は、軸線104と一致している。
図1及び
図5に示されるように、軸方向102に延びるシャフト32が、貫通孔54に挿入されている。シャフト32が貫通孔54に挿入された状態において、シャフト32とロータヨーク49とは嵌合されて一体回転可能である。
【0039】
図1に示されるように、シャフト32は、ベアリング52を介してハウジング36に回転自在に支持されている。これにより、ロータ31は、軸線104周りに回転可能である。なお、シャフト32のより詳細な構成は、後述される。
【0040】
図2に示されるように、貫通孔50は、ロータヨーク49の外周面53と内周面55との間に位置している。20個の貫通孔50は、ロータヨーク49を軸方向102に視た場合に、軸線104から径方向103へ放射状に延びており、周方向101において等間隔に設けられている。また、貫通孔50は、外周面53に開口している。当該開口は、ロータヨーク49において軸線104に沿って延びており、当該開口の両端は、ロータヨーク49の軸線104の両端面に至っている。つまり、貫通孔50は、外周面53から軸線104へ向けて径方向103へ凹んだ凹みを構成する空間である。
【0041】
図2及び
図4に示されるように、貫通孔50は、中央部501と、外周面53側の端部502と、内周面55側の端部503とで構成されている。
【0042】
図4に示されるように、中央部501の周方向101の寸法は、マグネット40の周方向101の寸法Aと略同一であり、中央部501の径方向103の寸法は、マグネット40の径方向103の寸法Bと略同一である。
【0043】
端部502(貫通孔50における外周面53に開口した部分)の周方向101の寸法Eは、マグネット40の周方向101の寸法Aより短い。つまり、後述する式3が満たされている。
【0044】
端部503の周方向101の寸法は、内周面55に近づくにしたがって短くなっている。
【0045】
図3に示されるように、n枚の鋼板41のうち、軸方向102の一端に位置する鋼板411は、凸部56(規制部の一例)を備えている。凸部56は、貫通孔50の中央部501を区画する面504から、貫通孔50を構成する空間へ向けて突出している。なお、
図3では、1つの貫通孔50について、2つの凸部56が設けられているが、1つの貫通孔50に設けられる凸部56の数は、2つに限らない。また、凸部56の貫通孔50における位置や形状は、
図3に示された位置や形状に限らない。
【0046】
図2及び
図4に示されるように、貫通孔51は、周方向101に隣り合う2つの貫通孔50の端部503の間に設けられている。
【0047】
マグネット40は永久磁石である。本実施形態において、マグネット40は、直方体形状であり、周方向101の寸法がA(
図4参照)、径方向103の寸法がB(
図4参照)、軸方向102の寸法がG(
図3参照)である。寸法Gは、寸法A及び寸法Bより長く、ロータヨーク49の軸方向102の長さと概ね同一である。詳細には、寸法Gは、軸方向102に積層されたnー1枚の鋼板41の厚み(軸方向102と長さ)と同一である。マグネット40の各寸法は、下記の式1、式2、式3を満たしている。
(数1)
A<B・・・(式1)
(数2)
B≧0.5×((π×C)/D)・・・(式2)
(数3)
E<A・・・(式3)
【0048】
式2において、Cは、
図4に示すように、ロータヨーク49の外径である。また、Dは、ロータ31の磁極数である。つまり、式2は、寸法Bが1極当たりのロータヨーク49の外周面53の周方向101の長さの半分以上であることを示している。なお、本実施形態において、ロータ31の磁極数は、ロータ31が備えるマグネット40の数と同一、つまり20である。もちろん、ロータ31の磁極数は、備えるマグネット40の数や配置などによって、20以外の値もとり得る。
【0049】
図2~
図4に示されるように、20個のマグネット40は、それぞれ貫通孔50に嵌め込まれている。各マグネット40は、周方向101に隣り合う2つのマグネット40においてN極同士またはS極同士が周方向101に対向するような向きで、貫通孔50に嵌め込まれる。つまり、所定のマグネット40が、N極が周方向101の一方を向き且つS極が周方向101の他方を向くような配置である場合、所定のマグネット40の周方向101における両隣りのマグネット40は、所定のマグネット40と逆向きの配置(S極が周方向101の一方を向き且つN極が周方向101の他方を向くような配置)とされる。各マグネット40は、接着剤などにより、ロータヨーク49に固定されている。
【0050】
上述したように、鋼板411の貫通孔50には凸部56が設けられている。そのため、マグネット40は、鋼板411の貫通孔50に挿入できない。よって、マグネット40は、n枚の鋼板41のうち、鋼板411を除くnー1枚の鋼板41に設けられた貫通孔50に嵌め込まれる。ここで、上述したように、マグネット40の軸方向102の寸法Gは、軸方向102に積層されたnー1枚の鋼板41の厚み(軸方向102と長さ)と同一である。そのため、マグネット40が貫通孔50に嵌め込まれた状態において、マグネット40の軸方向102の一端は鋼板412の軸方向102の一端と面一となっており、マグネット40の軸方向102の他端は鋼板41nの軸方向102の他端と面一となっている。
【0051】
ロータヨーク49の内周面55に、凸部57が設けられている。凸部57は、内周面55から径方向103に突出している。
図3に示されるように、凸部57は、内周面55の軸方向102の一端から他端に亘って、軸方向102に延びている。
【0052】
図4に示されるように、凸部57は、周方向101に隣り合う2つのマグネット40の周方向101の中間位置58から角度θだけオフセットされている。
【0053】
中間位置58は、周方向101に隣り合う2つのマグネット40の各々からの周方向101の距離が等しい位置である。
【0054】
角度θは、ロータヨーク49を軸方向102に視た場合に、中間位置58と軸線104とを通る仮想線61と、凸部57の周方向101の中心60と軸線104とを通る仮想線62とがなす角度である。ここで、中心60は、周方向101における凸部57の一端及び他端からの周方向101の距離が等しい位置である。そして、角度θは、下記の式4を満たしている。
(数4)
θ(単位:度)=360/(D及びFの最小公倍数×4)・・・(式4)
【0055】
式4において、Fは、ティース44の数である。本実施形態において、D(ロータ31の磁極数)は20であり、F(ティース44の数)は20である。よって、DとFの最小公倍数は20である。したがって、θ=360/(20×4)=4.5(度)である。もちろん、θは、D及びFの値に応じて4.5以外の値もとり得る。
【0056】
[シャフト32]
図6に示されるように、シャフト32は、軸方向102に延びた概ね円柱形状の部材である。
【0057】
シャフト32は、第1部分81と、第2部分82と、第3部分83とで構成されている。第1部分81及び第2部分82は、シャフト32の軸方向102の中央部に位置している。第3部分83は、シャフト32の軸方向102の両端部に位置している。
【0058】
第1部分81の直径は、第2部分82及び第3部分83より長い。第1部分81の軸方向102の一端は、第2部分82と繋がっている。第1部分81の軸方向102の他端は、第3部分83と繋がっている。
【0059】
第2部分82の直径は、第1部分81より短く且つ第3部分83より長い。また、第2部分82の直径は、ロータヨーク49の貫通孔54の内径より短い。第2部分82の軸方向102の一端は、第3部分83と繋がっている。第2部分82の軸方向102の他端は、第1部分81の軸方向102の一端と繋がっている。
【0060】
第3部分83は、第1部分81及び第2部分82より直径が短い。第3部分83は、ベアリング52を介してハウジング36に回転自在に支持されている。
【0061】
なお、シャフト32は、棒形状であればよく、円柱形状以外の形状、例えば四角柱形状であってもよい。また、例えば、シャフト32は、第1部分81及び第3部分83が円柱形状である一方で、第2部分82が四角柱であるような形状であってもよい。第1部分81の形状は、貫通孔54の形状に応じて決定されることは言うまでもない。また、第2部分82は、その形状にかかわらず、貫通孔54に挿入された状態において内周面55から離間している。
【0062】
シャフト32は、軸方向102に延びる溝84を備えている。溝84は、シャフト32の外面34から径方向103に凹んでいる。溝84は、第1部分81に設けられた第1溝841と、第2部分82に設けられた第2溝842とを備えている。
【0063】
第1溝841は、第1部分81の軸方向102の一端から他端に亘って延びている。第2溝842は、第2部分82の軸方向102の一端から他端に亘って延びている。第1溝841の軸方向102の一端は、第2溝842の軸方向102の他端と繋がっている。以上より、溝84は、第1部分81の軸方向102の他端(第1部分81と第3部分83との境界部分)から、第2部分82の軸方向102の一端(第2部分82と第3部分83との境界部分)に亘って連続して延びている。
【0064】
図5に示されるように、シャフト32が貫通孔54に挿入された状態において、シャフト32とロータヨーク49とは嵌合している。詳細には、シャフト32の第1部分81の外面34とロータヨーク49の内周面55とは、当接しており、しまりばめの状態で嵌合している。外面34と内周面55とがしまりばめの状態で嵌合している場合、第1部分81の直径の公差によって決まる当該直径の最小許容寸法は、ロータヨーク49の貫通孔54の内径の公差によって決まる当該内径の最大許容寸法より大きい。すなわち、第1部分81の直径は、ロータヨーク49の貫通孔54の内径より長い。
【0065】
ここで、第1部分81は、ロータヨーク49より軸方向102に長い。そのため、シャフト32が貫通孔54に挿入された状態において、第1部分81の軸方向102の一端部及び他端部は、貫通孔54の外に位置している。一方、第1部分81の軸方向102の一端部及び他端部を除いた部分の外面34が、貫通孔54の内にあって内周面55と当接している。
【0066】
また、シャフト32が貫通孔54に挿入された状態において、シャフト32の第1溝841とロータヨーク49の凸部57とは、中間ばめの状態で嵌合している。第1溝841と凸部57とが中間ばめの状態で嵌合している場合、第1溝841の周方向101の長さの公差によって決まる第1溝841の当該長さの最大許容寸法は、凸部57の周方向101の長さの公差によって決まる凸部57の当該長さの最小許容寸法より大きい。また、当該場合、第1溝841の当該長さの最小許容寸法は、凸部57の当該長さの最大許容寸法より小さい。
【0067】
[第1ユニット71及び第2ユニット72の配置]
図5に示されるように、シャフト32が貫通孔54に挿入された状態において、ロータ31の第1ユニット71及び第2ユニット72は、互いに軸方向102に当接している。詳細には、第1ユニット71及び第2ユニット72は、軸方向102の他端同士が当接した状態で、軸方向102に並んで配置されている。つまり、第1ユニット71及び第2ユニット72の各々の軸方向102の他端に設けられた鋼板41nは、第1ユニット71及び第2ユニット72が互いに当接して形成されたロータ31において、互いに当接している。一方、第1ユニット71及び第2ユニット72の各々の軸方向102の一端に設けられた鋼板411は、第1ユニット71及び第2ユニット72が互いに当接して形成されたロータ31において、軸方向102の両端に位置している。
【0068】
[ブラシレスモータ30の製造方法]
以下、ブラシレスモータ30の製造方法が説明される。
【0069】
最初に、
図3に示される第1ユニット71の貫通孔54に
図6に示されるシャフト32が挿入される。このとき、シャフト32は、軸方向102の一端85(
図6参照)を先頭として、貫通孔54に挿入される。また、このとき、第1ユニット71は、鋼板411(
図3参照)をシャフト32に向けている。
【0070】
図6に示されるシャフト32の
図3に示される第1ユニット71への挿入過程において、第2部分82が貫通孔54に挿入されている一方で、第1部分81が貫通孔54に挿入されていない状態となる。当該状態において、シャフト32の第2溝842が、第1ユニット71の凸部57と嵌合する。この嵌合によって、第1ユニット71がシャフト32に対して周方向101に位置決めされる。なお、この嵌合は、中間ばめの状態でなされる。一方、上述したように、第2部分82の直径は、ロータヨーク49の貫通孔54の内径より短い。これにより、第2部分82の外面34と内周面55とが当接していない状態で、第2溝842と凸部57とを中間ばめの状態で嵌合させることができるため、当該嵌合が容易であり、第2溝842と凸部57とが嵌合した状態においてシャフト32の軸方向102の移動が容易である。
【0071】
以上のようにして、第1ユニット71をシャフト32に対して周方向101に位置決めする工程が、第1位置決め工程である。
【0072】
次に、シャフト32が第1ユニット71の貫通孔54に更に挿入される。これにより、第2部分82に加えて第1部分81が貫通孔54に挿入された状態となる。
【0073】
上記状態において、シャフト32の第1溝841が、凸部57と嵌合する。ここで、第1溝841は第2溝842と連続している。そのため、シャフト32の第1ユニット71への挿入過程において、凸部57が第2溝842のみと嵌合した状態から、凸部57が第1溝841及び第2溝842の双方と嵌合した状態へ連続して状態遷移が行われる。なお、第1溝841と凸部57との嵌合は、第2溝842と凸部57との嵌合と同様に、中間ばめの状態でなされる。
【0074】
また、上記状態において、第1部分81の外面34が、内周面55と当接し嵌合する。これにより、第1ユニット71がシャフト32に固定される。なお、この嵌合は、しまりばめの状態でなされる。シャフト32は、第1ユニット71と第2部分82との間の軸方向102の距離が第2ユニット72の軸方向102の長さ以上となる位置まで、第1ユニット71へ挿入される。外面34と内周面55とがしまりばめの状態で嵌合されるため、第1ユニット71はシャフト32に対して周方向101へ移動しない。
【0075】
以上のようにして、第1ユニット71がシャフト32に固定される工程が、第1嵌合工程である。
【0076】
次に、第1位置決め工程及び第1嵌合工程において第1ユニット71に挿入されたシャフト32が、
図3に示される第2ユニット72の貫通孔54に挿入される。このとき、シャフト32は、一端85(
図6参照)を先頭として、貫通孔54に挿入される。また、このとき、第2ユニット72は、鋼板41nをシャフト32に向けている。一方、このとき、シャフト32が挿入されている第1ユニット71は、鋼板41nを一端85に向けている。つまり、このとき、第1ユニット71の鋼板41n(第1ユニット71のロータヨーク49の軸方向102の他端)と、第2ユニット72の鋼板41n(第2ユニット72のロータヨーク49の軸方向102の他端)とが、軸方向102に対向している。
【0077】
シャフト32の第2ユニット72への挿入過程において、第2部分82が貫通孔54に挿入されている一方で、第1部分81が貫通孔54に挿入されていない状態となる。当該状態において、シャフト32の第2溝842が、第2ユニット72の凸部57と嵌合する。この嵌合によって、第2ユニット72がシャフト32に対して周方向101に位置決めされる。なお、この嵌合は、中間ばめの状態でなされる。一方、上述したように、第2部分82の直径は、ロータヨーク49の貫通孔54の内径より短い。これにより、第2部分82の外面34と内周面55とが当接していない状態で、第2溝842と凸部57とを中間ばめの状態で嵌合させることができるため、当該嵌合が容易であり、第2溝842と凸部57とが嵌合した状態においてシャフト32の軸方向102の移動が容易である。
【0078】
以上のようにして、第2ユニット72をシャフト32に対して周方向101に位置決めする工程が、第2位置決め工程である。
【0079】
次に、シャフト32が第2ユニット72の貫通孔54に更に挿入される。これにより、第2部分82に加えて第1部分81が貫通孔54に挿入された状態となる。
【0080】
上記状態において、シャフト32の第1溝841が、凸部57と嵌合する。ここで、第1溝841は第2溝842と連続している。そのため、シャフト32の第2ユニット72への挿入過程において、凸部57が第2溝842とのみ嵌合した状態から、凸部57が第1溝841及び第2溝842の双方と嵌合した状態へ連続して状態遷移が行われる。なお、第1溝841と凸部57との嵌合は、第2溝842と凸部57との嵌合と同様に、中間ばめの状態でなされる。
【0081】
また、上記状態において、第1部分81の外面34が、内周面55と当接し嵌合する。これにより、第2ユニット72がシャフト32に固定される。なお、この嵌合は、しまりばめの状態でなされる。シャフト32は、第1ユニット71の鋼板41n(第1ユニット71のロータヨーク49の軸方向102の他端)と、第2ユニット72の鋼板41n(第2ユニット72のロータヨーク49の軸方向102の他端)とが、当接する位置まで、第2ユニット72へ挿入される。外面34と内周面55とがしまりばめの状態で嵌合されるため、第2ユニット72はシャフト32に対して周方向101へ移動しない。
【0082】
以上のようにして、第2ユニット72がシャフト32に固定される工程が、第2嵌合工程である。
【0083】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、貫通孔50において外周面53に開口があるので、コイル39からの磁束がロータ31の外周部を介して循環することが抑制できる。また、寸法E(貫通孔50における外周面53に開口した部分の周方向101の寸法)が寸法A(マグネット40の周方向101の寸法)より短い。そのため、貫通孔50に嵌め込まれたマグネット40が当該開口した部分を介して径方向103に沿って貫通孔50から飛散することを防止できる。
【0084】
また、本実施形態によれば、凸部56によって、貫通孔50に嵌め込まれたマグネット40が軸方向102に沿って貫通孔50から飛散することを防止できる。
【0085】
また、本実施形態によれば、式1及び式2が満たされていることにより、マグネット40がロータ31の外周に沿って配置された構成よりも、ロータ31の外周を通過する磁束数を多くすることができる。これにより、ロータ31のトルクを増加させることができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、第1ユニット71において発生する交流の位相と、第2ユニット72において発生する交流の位置とが、2×θ度ずれる。これにより、コギングトルクを低減することができる。
【0087】
また、本実施形態によれば、外面34及び内周面55がしまりばめの状態で嵌合しているため、シャフト32とロータ31とを強固に固定することができる。また、本実施形態によれば、溝84及び凸部57が中間ばめの状態で嵌合しているため、溝84及び凸部57が隙間ばめの状態で嵌合している構成よりも、溝84及び凸部57の嵌合によってロータ31を周方向101に正確に位置決めできる。また、本実施形態によれば、溝84及び凸部57が中間ばめの状態で嵌合しているため、溝84及び凸部57がしまりばめの状態で嵌合している構成よりも、溝84及び凸部57の嵌合が容易である。
【0088】
また、本実施形態によれば、第1位置決め工程において、外面34及び内周面55を当接させない状態で、凸部57と第2溝842とを中間ばめの状態で嵌合させることによって、しまりばめの状態とすることなく、第1ユニット71をシャフト32に対して周方向101に位置決めすることができる。つまり、第1ユニット71のシャフト32に対する位置決めが容易である。その後、第1嵌合工程において、第1ユニット71とシャフト32とをしまりばめの状態で嵌合することができる。
【0089】
同様に、第2位置決め工程において、しまりばめの状態とすることなく、第2ユニット72をシャフト32に対して周方向101に位置決めすることができる。その後、第2嵌合工程において、第2ユニット72とシャフト32とをしまりばめの状態で嵌合することができる。
【0090】
また、第2位置決め工程において、第1ユニット71及び第2ユニット72のロータヨーク49の軸方向102の他端同士を当接させることにより、凸部56を備えた鋼板411が軸方向102の両端に位置する状態とすることができる。これにより、貫通孔50に嵌め込まれたマグネット40が軸方向102に沿って貫通孔50から飛散することを防止できる。
【0091】
また、第2位置決め工程において、第1ユニット71及び第2ユニット72のロータヨーク49の軸方向102の他端同士を当接させることにより、第1ユニット71及び第2ユニット72は軸方向102に逆向きとなっている。そして、この状態において、第1ユニット71及び第2ユニット72の凸部57は、それぞれ溝84と嵌合している。第1ユニット71及び第2ユニット72を前述のように配置することにより、第1ユニット71において発生する交流の位相と、第2ユニット72において発生する交流の位置とを、2×θ度ずれた状態とすることができる。
【0092】
[変形例]
上記実施形態では、
図2~
図4に示されるように、ロータ31は、ロータヨーク49の内周面55に、凸部57を備えていた。また、
図6に示されるように、シャフト32は、溝84を備えていた。しかし、
図7に示されるように、ロータ31は、凸部57を備えていなくてもよい。また、シャフト32は、溝84を備えていなくてもよい。この場合、シャフト32がロータ31の貫通孔54に挿入されるとき、第1ユニット71及び第2ユニット72の各々は治具などによってシャフト32に対して周方向101に位置決めされる。
【0093】
上記実施形態では、シャフト32の溝84とロータヨーク49の凸部57とは、中間ばめの状態で嵌合していた。しかし、溝84と凸部57とは、中間ばめ以外、例えば隙間ばめの状態で嵌合していてもよい。
【0094】
上記実施形態では、シャフト32は、第1部分81及び第2部分82を備えていた。しかし、シャフト32は、第2部分82を備えていなくてもよい。この場合、ブラシレスモータ30の製造過程において、第1位置決め工程及び第2位置決め工程は実行されない。そして、第1ユニット71のシャフト32に対する周方向101の位置決めは、第1嵌合工程において第1溝841と凸部57との嵌合によって実行される。また、第2ユニット72のシャフト32に対する周方向101の位置決めは、第2嵌合工程において第1溝841と凸部57との嵌合によって実行される。
【0095】
上記実施形態では、第2部分82は、軸方向102における第1部分81の片側にのみ設けられていた。しかし、第2部分82は、軸方向102における第1部分81の両側に設けられていてもよい。この場合、ブラシレスモータ30の製造過程において、シャフト32は、軸方向102の一端85または他端86(
図6参照)の何れを先頭として、第1ユニット71及び第2ユニット72の貫通孔54に挿入されてもよい。
【0096】
上記実施形態では、鋼板411が凸部56を備えていることによって、貫通孔50に嵌め込まれたマグネット40の軸方向102への移動が規制されていた。しかし、マグネット40の軸方向102への移動を規制するものは、凸部56に限らない。例えば、鋼板411が、他の鋼板412~41nが備える貫通孔50より小さい貫通孔を備えていてもよい。また、例えば、鋼板411が、貫通孔50を備えていなくてもよい。
【0097】
上記実施形態では、マグネット40は直方体形状であったが、マグネット40の形状は直方体に限らない。
【符号の説明】
【0098】
30・・・ブラシレスモータ
31・・・ロータ
33・・・ステータ
39・・・コイル
40・・・マグネット
41・・・鋼板
44・・・ティース
49・・・ロータヨーク
50・・・貫通孔(第1貫通孔)
53・・・外周面
55・・・内周面
56・・・凸部(規制部)
71・・・第1ユニット(ユニット)
72・・・第2ユニット(ユニット)
101・・・周方向
102・・・軸方向
103・・・径方向
104・・・軸線
411・・・鋼板
504・・・面