(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】太陽電池パネルの検査装置、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/15 20140101AFI20220930BHJP
G01M 11/00 20060101ALI20220930BHJP
G01N 21/66 20060101ALI20220930BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H02S50/15
G01M11/00 T
G01N21/66
G01N21/88 Z
(21)【出願番号】P 2019181506
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593207765
【氏名又は名称】株式会社アイテス
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】高野 和美
(72)【発明者】
【氏名】有松 健司
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0262159(US,A1)
【文献】特開2014-228517(JP,A)
【文献】特開2018-098880(JP,A)
【文献】特開2016-039766(JP,A)
【文献】特開2015-219330(JP,A)
【文献】特開2019-140886(JP,A)
【文献】特開2013-036747(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0153228(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102253046(CN,A)
【文献】特開2006-125936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
H02S 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロルミネッセンスを利用した太陽電池パネルの検査装置であって、
前記太陽電池パネルの起電力以上の電圧で直流電流を供給する直流電源と、
前記太陽電池パネルと前記直流電源との接続を開閉する開閉手段と、
前記太陽電池パネルを撮影する撮影手段と、
前記開閉手段が閉の状態で前記撮影手段により撮影された画像と、前記開閉手段が開の状態で且つ前記太陽電池パネルを短絡させた状態で前記撮影手段により撮影された画像とから診断画像を生成する生成手段と
を備え
、
前記撮影手段は、前記開閉手段が閉の状態で前記太陽電池パネルを複数回撮影し、
前記生成手段は、前記開閉手段が閉の状態で前記撮影手段により撮影された各画像を、前記開閉手段が開の状態で且つ前記太陽電池パネルを短絡させた状態で前記撮影手段により撮影された1つの画像で除することによって複数の除算画像を生成し、得られた複数の除算画像の積算処理により積算画像を生成し、当該積算画像を前記診断画像とする太陽電池パネルの検査装置。
【請求項2】
前記除算画像及び前記積算画像は、移動平均フィルタ又はガウシアンフィルタによるスムージング処理が施されている請求項1に記載の太陽電池パネルの検査装置。
【請求項3】
前記太陽電池パネルの端子間の電位差を測定する測定手段をさらに備え、
前記直流電源は、前記測定手段により測定された電位差以上の電圧で直流電力を供給する
請求項1又は2に記載の太陽電池パネルの検査装置。
【請求項4】
前記撮影手段は、波長が960nm以上の光を透過する赤外透過フィルタを有する
請求項1~3の何れか一項に記載の太陽電池パネルの検査装置。
【請求項5】
前記撮影手段は、ワイヤーグリッドを備えた偏光フィルタを有する
請求項1~4の何れか一項に記載の太陽電池パネルの検査装置。
【請求項6】
エレクトロルミネッセンスを利用した太陽電池パネルの検査方法であって、
直流電源と接続されておらず且つ前記太陽電池パネルを短絡させた状態で、前記太陽電池パネルを撮影する第1撮影工程と、
前記直流電源の電圧を、前記太陽電池パネルの起電力以上の電圧に設定する電圧設定工程と、
前記太陽電池パネルと前記直流電源とを接続し、前記太陽電池パネルに順バイアス電流を印加する接続工程と、
前記直流電源と接続されている状態で、前記太陽電池パネルを撮影する第2撮影工程と、
前記第1撮影工程において撮影された画像と、前記第2撮影工程において撮影された画像とから診断画像を生成する生成工程と
を包含
し、
前記第2撮影工程において、前記太陽電池パネルを複数回撮影し、
前記生成工程において、前記第2撮影工程で撮影された各画像を、前記第1撮影工程で撮影された1つの画像で除することによって複数の除算画像を生成し、得られた複数の除算画像の積算処理により積算画像を生成し、当該積算画像を前記診断画像とする太陽電池パネルの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンスを利用した太陽電池パネルの検査装置、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池パネルは、製造時や出荷前に「クラック(マイクロクラックを含む)」や「断線」等の欠陥の有無が検査される。しかしながら、クラック等の機械的欠陥は、屋外に設置された太陽電池パネルにおいても、施工時の衝撃や風雨による損傷によっても生じることがある。そのため、太陽光発電によって長期的に安定したエネルギーを供給するためには、屋外に設置した後も、太陽電池パネルに欠陥が生じていないかを定期的に検査する必要がある。
【0003】
太陽電池パネルにおける欠陥の有無を検査する方法の一つに、エレクトロルミネッセンス(EL)を利用したEL検査法が知られている。EL検査法とは、太陽電池に電流(順バイアス電流)を印加したときに太陽電池が発光する現象(これを、エレクトロルミネッセンス現象と言う。)を利用した検査法である。太陽電池パネルに欠陥等が存在すると、欠陥箇所ではELの発光強度が低下する。そのため、EL発光によって得られた情報から太陽電池パネルの欠陥を検知することができる。通常、製造時や出荷前の検査では、暗室内でEL検査法を実施することで、欠陥を高精度に検出できる。一方、屋外に設置後の太陽電池パネルをEL検査法により検査するには、太陽電池パネルの表面における太陽光の反射光や、環境からの散乱光等のノイズを除去する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、交流電流を印加した太陽電池パネルを撮影し、得られたカメラ信号を、変調周波数を使用したロックイン法により評価することで、ノイズを除去した画像を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
EL検査法において、稼動している太陽電池パネルを設置済みの状況で検査するために、簡便で経済的な検査装置が望まれる。しかしながら、特許文献1の検査方法は、太陽電池パネルに交流電流を印加するものであり、EL発光が生じる印加電流のサイクルに合わせて、精密なタイミングでカメラをロックイン制御しなければならないため、検査装置が大掛かりで高額なものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、屋外でのEL検査において、欠陥を高精度に判定できる鮮明な画像を簡便な構成で得ることが可能な太陽電池パネルの検査装置、及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る太陽電池パネルの検査装置の特徴構成は、
エレクトロルミネッセンスを利用した太陽電池パネルの検査装置であって、
前記太陽電池パネルの起電力以上の電圧で直流電流を供給する直流電源と、
前記太陽電池パネルと前記直流電源との接続を開閉する開閉手段と、
前記太陽電池パネルを撮影する撮影手段と、
前記開閉手段が閉の状態で前記撮影手段により撮影された画像と、前記開閉手段が開の状態で前記撮影手段により撮影された画像とから診断画像を生成する生成手段と
を備えることにある。
【0009】
本構成の太陽電池パネルの検査装置によれば、太陽電池パネルと直流電源との接続を開閉する開閉手段を備えることにより、開閉手段が閉の状態でEL発光が生じている太陽電池パネルの画像と、開閉手段が開の状態でEL発光が生じていない太陽電池パネルの画像とを簡便な構成で容易に撮影することができ、これらの画像から診断画像を生成することにより、太陽光や環境からの散乱光によるノイズを除去して、クラック等の欠陥を高精度に検出することができる。
また、屋外でのEL検査においては、太陽電池パネルが起電力を有するため、太陽光パネルと直流電源との接続時に、突入電流が逆流することで直流電源が故障したり、電力供給が停止したりする虞がある。本構成の太陽電池パネルの検査装置では、直流電源が、太陽電池パネルの起電力以上の電圧で直流電力を供給するため、開閉手段が太陽電池パネルと直流電源との接続を開閉する際に、直流電源へ突入電流が逆流することが防止される。そのため、屋外でのEL検査において、ロックイン制御等の精密なタイミング制御の必要のない直流電源を用いて、欠陥を高精度に判定できる鮮明な画像を得ることができる。
【0010】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記太陽電池パネルの端子間の電位差を測定する測定手段をさらに備え、
前記直流電源は、前記測定手段により測定された電位差以上の電圧で直流電力を供給することが好ましい。
【0011】
本構成の太陽電池パネルの検査装置によれば、太陽電池パネルの端子間の電位差を測定する測定手段をさらに備え、直流電源が、測定手段により測定された電位差以上の電圧で直流電力を供給することにより、天候や日射量の変動に伴って太陽電池パネルの起電力が変動した場合にも、常に太陽電池パネルの起電力以上の電圧で直流電流を印加することができる。そのため、開閉手段が太陽電池パネルと直流電源との接続を開閉する際に、直流電源へ突入電流が逆流することを確実に防ぐことができる。
【0012】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記撮影手段は、波長が960nm以上の光を透過する赤外透過フィルタを有することが好ましい。
【0013】
本構成の太陽電池パネルの検査装置によれば、撮影手段が、波長が960nm以上の光を透過する赤外透過フィルタを有することにより、太陽光の可視光成分によるノイズを低減して、太陽電池パネルがEL光として発する近赤外光を鮮明に撮影することができる。
【0014】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記撮影手段は、ワイヤーグリッドを備えた偏光フィルタを有することが好ましい。
【0015】
通常、太陽電池パネルは、光を効率よく吸収する目的で、カバーガラス上に酸化チタン、窒化ケイ素等からなる反射防止層が設けられ、その表面に凹凸の加工が施されている。このため、太陽光の一部が反射防止層の表面で乱反射し、乱反射光がノイズとしてEL光に重なることにより、欠陥検査の精度が低下する虞がある。本構成の太陽電池パネルの検査装置によれば、撮影手段がワイヤーグリッドを備えた偏光フィルタを有することにより、太陽電池パネルの表面での乱反射により偏光方向に乱れが生じている乱反射光を分離して、ノイズを低減することができる。特に、ワイヤーグリッドは近赤外領域において偏光を分離することができるため、乱反射光の近赤外成分によるノイズを低減して、太陽電池パネルがEL光として発する近赤外光をより鮮明に撮影することができる。
【0016】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記診断画像は、前記開閉手段が閉の状態で撮影された画像と前記開閉手段が開の状態で撮影された画像との差分を取った差分画像、又は前記開閉手段が閉の状態で撮影された画像を前記開閉手段が開の状態で撮影された画像で除した除算画像であることが好ましい。
【0017】
本構成の太陽電池パネルの検査装置によれば、診断画像が、開閉手段が閉の状態で撮影された画像と開閉手段が開の状態で撮影された画像との差分を取った差分画像、又は開閉手段が閉の状態で撮影された画像を開閉手段が開の状態で撮影された画像で除した除算画像であることにより、診断画像は、ノイズが低減され、太陽電池パネルの欠陥を高精度に判定できる鮮明な画像となる。
【0018】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記撮影手段は、前記開閉手段が閉の状態で前記太陽電池パネルを複数回撮影し、
前記生成手段は、前記開閉手段が閉の状態で撮影された画像毎に、前記差分画像又は前記除算画像を生成し、得られた複数の差分画像又は複数の除算画像の積算処理により前記診断画像を生成することが好ましい。
【0019】
本構成の太陽電池パネルの検査装置によれば、撮影手段が、開閉手段が閉の状態で太陽電池パネルを複数回撮影し、生成手段が、開閉手段が閉の状態で撮影された画像毎に、差分画像又は除算画像を生成し、得られた複数の差分画像又は複数の除算画像の積算処理により診断画像を生成することにより、診断画像は、ノイズが低減され、太陽電池パネルの欠陥をより高精度に判定できる鮮明な画像となる。
【0020】
上記課題を解決するための本発明に係る太陽電池パネルの検査方法の特徴構成は、
エレクトロルミネッセンスを利用した太陽電池パネルの検査方法であって、
直流電源と接続されていない状態で、前記太陽電池パネルを撮影する第1撮影工程と、
前記直流電源の電圧を、前記太陽電池パネルの起電力以上の電圧に設定する電圧設定工程と、
前記太陽電池パネルと前記直流電源とを接続し、前記太陽電池パネルに順バイアス電流を印加する接続工程と、
前記直流電源と接続されている状態で、前記太陽電池パネルを撮影する第2撮影工程と、
前記第1撮影工程において撮影された画像と、前記第2撮影工程において撮影された画像とから診断画像を生成する生成工程と
を包含することにある。
【0021】
本構成の太陽電池パネルの検査方法によれば、第1撮影工程と、第2撮影工程とにより、EL発光が生じている太陽電池パネルの画像と、EL発光が生じていない太陽電池パネルの画像とを容易に撮影することができ、これらの画像から診断画像を生成することにより、太陽光や環境からの散乱光によるノイズを除去して、クラック等の欠陥を高精度に検出することができる。
また、屋外でのEL検査においては、太陽電池パネルが起電力を有するため、太陽光パネルと直流電源との接続時に、突入電流が逆流することで直流電源が故障したり、電力供給が停止したりする虞がある。本構成の太陽電池パネルの検査方法では、電圧設定工程において直流電源の電圧を、太陽電池パネルの起電力以上の電圧に設定するため、接続工程において太陽電池パネルと直流電源とを接続する際に、直流電源へ突入電流が逆流することが防止される。そのため、屋外でのEL検査において、直流電源を用いて、欠陥を高精度に判定できる鮮明な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の太陽電池パネルの検査装置の概略構成図である。
【
図2】
図2(a)は、シリコン結晶型太陽電池におけるEL光の分光特性を示す図であり、
図2(b)は、太陽光の分光特性を示す図であり、
図2(c)は、シリコン半導体受光素子の分光感度特性を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、単独の差分画像の一例であり、
図3(b)、及び
図3(c)は、複数の差分画像を積算した積算画像の一例である。
【
図4】
図4(a)は、単独の除算画像の一例であり、
図4(b)、及び
図4(c)は、複数の除算画像を積算した積算画像の一例である。
【
図5】
図5は、暗室内で太陽電池パネルのEL発光を撮影した画像である。
【
図6】
図6は、本発明の太陽電池パネルの検査方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の太陽電池パネルの検査装置、及び検査方法に関する実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する構成に限定されることを意図しない。
【0024】
〔太陽電池パネルの検査装置〕
図1は、本発明の太陽電池パネルの検査装置1の概略構成図である。
図1に示すように、検査装置1は、屋外において太陽光Lが照射され、起電力が生じている状態の太陽電池パネルPを検査対象とし、太陽電池パネルPに電流を印加したときに生じるEL発光を利用して太陽電池パネルPを検査する装置である。太陽電池パネルPは、一般に、太陽電池セルが複数接続された太陽電池モジュールとして構成される。太陽電池セルは、負の電荷を有する電子を多く含むn型半導体と、正の電荷を有するホールを多く含むp型半導体とが接合されたものであり、接合面には電子もホールもない空乏層と呼ばれる領域が形成され、この空乏層には電界が生じる。空乏層に太陽光Lが入射すると光が半導体に吸収されて電子とホールが生じ、これらが電界で押し出されることにより、pn接合の逆バイアス方向に電流を流す起電力、即ち、太陽電池パネルPのp端子が高電位、n端子が低電位となる起電力が生じる。本発明の検査装置1は、例えば、48~72枚の太陽電池セルが直列に接続され、36~50Vの起電力を有する太陽電池モジュールとしての太陽電池パネルPの検査に使用可能である。太陽電池パネルPは、家屋の屋根等に設置される場合、通常、複数枚の太陽電池パネルPが直列に接続され、起電力を300V程度に高めた太陽電池ストリングを構成した状態で設置される。
図1では説明の簡略化のために太陽電池パネルPを1枚のみ図示しているが、本発明の検査装置1の検査対象は、1枚の太陽電池パネルPに限らず、複数枚の太陽電池パネルPを接続した太陽電池ストリングとすることも可能である。検査対象の太陽電池パネルPとしては、例えば、単結晶シリコン型太陽電池、多結晶シリコン型太陽電池、CIGS{銅(Copper)-インジウム(Indium)-ガリウム(Gallium)-セレン(Selenium)}系化合物太陽電池等が挙げられる。
【0025】
図1に示すように、検査装置1は、太陽電池パネルPの起電力以上の電圧で直流電流を印加する直流電源10と、太陽電池パネルPと直流電源10との接続を開閉する開閉手段20と、太陽電池パネルPを撮影する撮影手段30と、撮影手段30で撮影された太陽電池パネルPの画像を処理することにより診断画像を生成する生成手段40とを備えている。また、任意の構成要素として、太陽電池パネルPの端子間の電位差を測定する測定手段50と、生成手段40によって生成された診断画像を表示する表示手段60と、各構成要素の動作を制御する制御手段70とを備えている。以下、検査装置1の各構成について詳細に説明する。
【0026】
<直流電源>
直流電源10は、太陽電池パネルPの起電力以上の電圧で直流電流を印加する電源であり、開閉手段20を介して太陽電池パネルPに接続される。直流電源10と開閉手段20との間には、ブロッキングダイオードが挿入されていることが好ましい。直流電源10と太陽電池パネルPとの接続は、直流電源10の正極が太陽電池パネルPのp端子側、直流電源10の負極が太陽電池パネルPのn端子側となっている。太陽光Lが照射されている状態では、太陽電池パネルPにはp端子が高電位、n端子が低電位となる起電力、即ち、直流電源10に電流を逆流させる向きの起電力が生じているが、直流電源10は、太陽電池パネルPの起電力以上の電圧で直流電流を印加するため、開閉手段20が太陽電池パネルPと直流電源10との接続を開閉する際に、太陽電池パネルPの起電力に起因する突入電流が直流電源10へ逆流することや、ブロッキングダイオードの故障もしくは短絡や断線を防止することができる。ここで、「太陽電池パネルPの起電力以上の電圧」とは、必ずしも、検査対象の太陽電池パネルPの最大動作電圧(例えば、36V)以上の電圧である必要はなく、検査時の日射量に応じて太陽電池パネルPに生じた起電力以上の電圧であればよい。そのため、直流電源10の印加電圧は、太陽電池パネルPの開放電圧(例えば、36V)以上の電圧や、太陽電池パネルPの設置環境や稼働実績から予測される起電力以上の電圧に予め設定(プリセット設定)してもよいし、検査時の日射量に応じて太陽電池パネルPに生じている起電力をリアルタイムで測定し、測定値以上の電圧に設定(リアルタイム設定)してもよい。
図1の例では、測定手段50により太陽電池パネルPのp端子-n端子間の電位差を測定し、直流電源10は、測定値以上の電圧で直流電流を印加するように、制御手段70により制御される。直流電源10の印加電圧が、測定手段50により測定された太陽電池パネルPのp端子-n端子間の電位差以上の電圧であれば、天候や日射量の変動に伴って太陽電池パネルPの起電力が変動した場合にも、常に太陽電池パネルPの起電力以上の電圧で直流電流を印加することが可能となる。
【0027】
直流電源10には、定電圧モードと定電流モードとを切り替え可能な電源装置を用いることが好ましい。開閉手段20の開閉時には、定電圧モードにより一定の電圧を出力することで、太陽電池パネルPの起電力以上の電圧を確実に維持することができる。通常、シリコン結晶型太陽電池パネルPにおいては、8~20Aの電流を印加することでEL発光が生じるため、開閉手段20が閉じられた状態では、定電流モードにより一定の電流を印加することで、EL発光を安定させることができる。例えば、家庭用の太陽電池発電設備において、8枚以下の太陽電池パネルが直列に接続され、太陽電池パネル1枚当たりの起電力が36Vであるものを検査対象とすることを想定すると、直流電源10には、定電圧モードにおいて、30~300Vの範囲の電圧値が設定可能であり、定電流モードにおいて、1~30Aの電流値が設定可能である電源装置を用いることが好ましい。また、電気事業法における低圧の太陽電池発電設備を検査対象とすることを想定すると、直流電源10には、定電圧モードにおいて、30~750Vの範囲の電圧値が設定可能である電源装置を用いることが好ましい。定電圧モードと定電流モードとの切り替え、及び各モードでの電圧値、電流値の設定は、
図1に示す例では、制御手段70により制御されるが、本発明の検査装置1は、これらの切り替え、及び設定を検査員が操作するように構成することも可能である。
【0028】
<開閉手段>
開閉手段20は、直流電源10と太陽電池パネルPとの間に挿入されたスイッチである。太陽電池パネルPの起電力に起因する突入電流から直流電源10をより確実に保護するためには、直流電源10の正極と太陽電池パネルPのp端子との間、及び直流電源10の負極と太陽電池パネルPのn端子との間を夫々開閉可能であることが好ましく、特に、双極単投スイッチであることが好ましい。開閉手段20には、半導体スイッチ、及び機械式スイッチの何れを用いることも可能である。開閉手段20の開閉は、
図1に示す例では、制御手段70により制御されるが、本発明の検査装置1は、検査員の操作により開閉手段20を開閉するように構成することも可能である。
【0029】
開閉手段20を閉じた状態では、太陽電池パネルPの起電力とは逆向きの電流、即ち、順バイアス電流が流れ、太陽電池パネルPでは、EL発光が生じて、EL光L1が出射される。このとき、太陽光Lの一部は、太陽電池パネルPの表面で乱反射した乱反射光L2となる。従って、開閉手段20を閉じた状態では、太陽電池パネルPからの光は、EL光L1と乱反射光L2とが重なったものとなる。一方、開閉手段20を開いた状態では、太陽電池パネルPには順バイアス電流が流れないため、EL発光が生じない。従って、開閉手段20を開いた状態では、太陽電池パネルPからの光は、太陽電池パネルPの表面で乱反射した乱反射光L2のみとなる。このように、開閉手段20が閉じた状態、又は開いた状態にしてEL検査を行うと、夫々異なった現象が観測される。
【0030】
<撮影手段>
撮影手段30は、太陽電池パネルPを撮影するものであり、カメラ31と、カメラ31に装着された筒状のフード32と、フード32の内側に配された赤外透過フィルタ33と、偏光フィルタ34とを有する。撮影手段30は、カメラ31が太陽電池パネルPの全体を確実に撮影できるように、最適な位置にセットされる。複数の太陽電池パネルPが接続された太陽電池ストリングを検査対象とする場合には、撮影手段30は、カメラ31が太陽電池ストリングの全体を撮影できる位置にセットされることが好ましい。例えば、家屋の屋根等に設置された太陽電池パネルPを検査対象とすることを想定すると、太陽電池パネルPの全体を撮影できる位置に撮影手段30をセットするために、高所作業車のバスケット等に撮影手段30を設けることが好ましい。また、検査対象の太陽電池パネルPがより高所にあり、撮影環境が厳しい場合は、撮影手段30を小型無人航空機(ドローン等)に搭載することも可能である。
【0031】
撮影手段30は、開閉手段20が開いた状態、及び開閉手段20が閉じた状態の夫々で、太陽電池パネルPを撮影するように、制御手段70によって制御される。後に説明する生成手段40での処理において、より鮮明な診断画像を生成するために、開閉手段20が閉じた状態では、太陽電池パネルPの様子を複数回撮影することが好ましい。開閉手段20が閉じ、順バイアス電流が印加された状態での太陽電池パネルPからの光は、EL光L1と乱反射光L2とが重なった光である。この状態で撮影した画像をEL発光画像とする。一方、開閉手段20が開き、直流電源10と接続されていない状態では、太陽電池パネルPからEL光L1が出射されないが、太陽光Lに含まれる赤外光によって半導体中の電子が励起されることでフォトルミネッセンス(PL)発光が生じて、太陽電池パネルPから若干のPL光が出射される。そのため、開閉手段20が開き、直流電源10と接続されていない状態では、乱反射光L2と若干のPL光とが重なったバックグラウンドノイズの画像がカメラ31で撮影される。この撮影画像を非発光画像とする。EL発光画像及び非発光画像は、後に説明する生成手段40で処理されるため、例えば、不揮発性メモリ等のストレージにデータとして記憶される。撮影手段30による太陽電池パネルPの撮影は、制御手段70による制御に限らず、検査員がカメラ31のシャッターを直接操作したり、カメラ31を無線LANやIEEE802.15.1(いわゆる、Bluetooth(登録商標))を介して携帯情報通信機器(スマートホン、タブレット端末等)と同期させ、当該携帯情報通信機器において検査員がシャッター操作を行うように構成することも可能である。
【0032】
なお、
図1の例では、太陽電池パネルPがオープンの状態で非発光画像を撮影しているが、非発光画像の撮影は、太陽電池パネルPを短絡させた状態で行ってもよい。短絡させた状態の太陽電池パネルPは、検査装置1において、開閉手段20が開いたときに、太陽電池パネルPのp端子-n端子間を短絡させる短絡手段を設けることで撮影することができる。短絡させた状態では、太陽電池パネルPが通電可能となるため、キャリア濃度が低くなり、微弱なPL光しか発生しない。そのため、短絡させた状態で太陽電池パネルPを撮影した非発光画像は、実質的にPL光を無視することができ、ほぼ乱反射光L2のみの画像となる。
【0033】
カメラ31は、EL発光の波長に感度を有するものであれば特に限定されないが、CCDセンサやCMOSセンサ等の受光素子31aを搭載したデジタルカメラを好適に利用することができ、特に、高感度・低ノイズの画像を得ることができる冷却CCDカメラを用いることが好ましい。
【0034】
フード32は、遮光性材料で形成されており、カメラ31に入射する環境からの散乱光を低減するものである。フード32は、全体の形状が筒状であるが、軸方向で断面積が変わらないストレート状のものだけではなく、徐々に断面積が大きくなる末広がり状に形成されていてもよい。
【0035】
赤外透過フィルタ33は、可視光を透過せず、近赤外光ないし赤外光を透過するフィルタである。赤外透過フィルタ33を透過する光の波長は、960nm以上であることが好ましく、990nm以上であることがより好ましく、1020nm以上であることがさらにより好ましい。EL光L1の波長は、半導体の種類によって固有のものであり、例えば、シリコン結晶型太陽電池であれば、
図2(a)に示すように、1150mmにピークを有する近赤外光であるEL光L1が生じる。一方、太陽光Lは、
図2(b)に示すように、可視光の強度が強く、近赤外光、特に、波長が960nm以上の光は極めて微弱なものとなっている。そのため、赤外透過フィルタ33を透過する光の波長が960nm以上であれば、カメラ31に入射するEL光L1を低減させることなく、カメラ31に入射する乱反射光L2を大幅に低減することができる。また、受光素子31aの感度特性は、半導体の種類によって固有のものであり、例えば、シリコン半導体受光素子では、
図2(c)に示すように、200~1100nmの感度波長範囲を有する。そのため、赤外透過フィルタ33を透過する光の波長が960nm以上であれば、受光素子31aとして安価なシリコン半導体受光素子を用いて、鮮明なEL発光画像を撮影することが可能となる。さらに、受光素子31aとして、感度波長範囲が800~2000nmであるInGaAs(イリジウム・ガリウム・ヒ素)半導体受光素子を用いる場合、より鮮明なEL発光画像を撮影することが可能となる。
【0036】
偏光フィルタ34は、ワイヤーグリッドを備えた偏光フィルタである。平行に並べられた多数の金属線からなるワイヤーグリッドは、近赤外領域において偏光を分離することができる。乱反射光L2の近赤外光成分は、赤外透過フィルタ33を透過するが、太陽電池パネルPの表面での乱反射により偏光方向に乱れが生じている。そのため、撮影手段30は、偏光フィルタ34を有することによって、カメラ31に入射する乱反射光L2の近赤外光成分を低減することができる。
【0037】
<生成手段>
生成手段40は、撮影手段30にて撮影され、データとして記憶されているEL発光画像及び非発光画像から、太陽電池パネルPの欠陥判定に用いる診断画像を生成する。生成手段40は、CUP、メモリ、ストレージ等を有するコンピュータにおいてプログラムを実行することにより、その機能を実現することができる。
【0038】
診断画像としては、例えば、画素毎にEL発光画像と非発光画像との差分を求めることによって得られる差分画像や、画素毎にEL発光画像と非発光画像との比率を求める(開閉手段20が閉の状態で撮影された画像であるEL発光画像を開閉手段20が開の状態で撮影された画像である非発光画像で除する)ことによって得られる除算画像を用いることができる。EL発光画像は、EL光L1の画像と乱反射光L2の画像(ノイズ)とが重なった画像であり、非発光画像は、乱反射光L2の画像(ノイズ)である。そのため、このEL発光画像と非発光画像との差分画像、及び除算画像は、ノイズが低減され、太陽電池パネルPの欠陥を高精度に判定できる鮮明な画像となる。ただし、差分画像、及び除算画像は、天候や日射量の条件によっては、やや不鮮明な画像となることがある。
図3(a)は、撮影距離3.5m、露光時間1秒で撮影したEL発光画像及び非発光画像から生成した差分画像である。
図4(a)は、撮影距離3.5m、露光時間1秒で撮影したEL発光画像及び非発光画像から生成した除算画像である。撮影時の天候は曇りであり、日射量は100W/m
2であった。
図5は、暗室内で太陽電池パネルPのEL発光を撮影した画像である。
図3(a)の差分画像、及び
図4(a)の除算画像は、
図5の画像と比較して、発光強度の低い欠陥部分のコントラストが小さく、やや不鮮明な画像となっている。そのため、差分画像、及び除算画像が不鮮明な画像となる条件下では、診断画像としては、複数の差分画像を画素毎に積算することによって得られる積算画像、又は複数の除算画像を画素毎に積算することによって得られる積算画像を用いることが好ましい。
図3(b)は、
図3(a)と同じ撮影条件で撮影した5枚の差分画像から生成した積算画像であり、
図3(c)は、
図3(a)と同じ撮影条件で撮影した10枚の差分画像から生成した積算画像である。
図4(b)は、
図4(a)と同じ撮影条件で撮影した5枚の除算画像から生成した積算画像であり、
図4(c)は、
図4(a)と同じ撮影条件で撮影した10枚の除算画像から生成した積算画像である。
図3(b)、
図3(c)、
図4(b)、及び
図4(c)の積算画像は、何れも
図3(a)の差分画像、及び
図4(a)の除算画像よりも欠陥部分のコントラストが大きく、太陽電池パネルPの欠陥を高精度に判定できる鮮明な画像となる。特に、
図3(c)、及び
図4(c)の積算画像は、
図5の画像と同程度に欠陥部分のコントラストが大きく、極めて鮮明な画像となっている。このように、5枚以上の差分画像、又は5枚以上の除算画像を積算して得られる積算画像は、単独の差分画像、又は単独の除算画像よりも鮮明な画像となるため、太陽電池パネルPの状態をより正確に把握することができる。積算画像の生成に差分画像を用いる場合、複数の差分画像は、撮影手段30において複数枚のEL発光画像を撮影し、EL発光画像毎に非発光画像との差分を求めることにより得ることができる。積算画像の生成に除算画像を用いる場合、複数の除算画像は、撮影手段30において複数枚のEL発光画像を撮影し、EL発光画像毎に非発光画像との比率を求めることにより得ることができる。
【0039】
診断画像として用いる差分画像、除算画像、及び積算画像は、移動平均フィルタ、又はガウシアンフィルタによるスムージング処理を施して画像の粗さを調整することがより好ましい。また、所定の閾値を設定し、この閾値より大きい強度のノイズを差分画像、除算画像、又は積算画像から排除することも有効である。このように、差分画像、除算画像、及び積算画像に対して適切な処理を施すことによって、太陽電池パネルPの欠陥をさらに高精度に判定できる鮮明な診断画像、つまり正味のEL発光に近い画像を取得することができる。
【0040】
<測定手段>
測定手段50は、太陽電池パネルPのp端子-n端子間の電位差を測定する電圧計である。
図1の例では、測定手段50による測定値は、制御手段70へ出力され、制御手段70では、この測定値に基づいて、直流電源10の電圧を設定する。
【0041】
<表示手段>
表示手段60は、生成手段40で生成された診断画像を表示するディスプレイである。診断画像を表示手段60に表示させることにより、検査員は、欠陥の有無の診断、及び欠陥箇所の特定を目視によって行うことができる。なお、目視による確認は検査員によってばらつきが生じる虞がある。そこで、検査装置1には、太陽電池パネルPの欠陥をより確実に検出できるように、判定手段を設けてもよい。判定手段は、生成手段40によって生成された診断画像の解析により、太陽電池パネルPの状態を判定する。例えば、サンプルとして欠陥の無い良品の太陽電池パネルPの診断画像(以下、「サンプル画像」とする。)を予め生成し、不揮発性メモリ等のストレージに記憶させておく。判定手段は、このサンプル画像と検査対象の太陽電池パネルPの診断画像とを比較し、発光強度の差が閾値より大きい箇所に欠陥があると診断する。このとき、表示手段60に判定手段の判定結果を表示することが好ましい。この場合、表示手段60には、検査対象の太陽電池パネルPの診断画像とともに、判定手段による欠陥判定結果が同時に表示されるため、太陽電池パネルPの欠陥の有無や欠陥の程度を容易に判断することが可能となる。その結果、太陽電池パネルPの欠陥検出の精度、及び検査の信頼性が向上する。
【0042】
<制御手段>
制御手段70は、CPU、メモリ、ストレージ等を有するコンピュータにおいてプログラムを実行することにより、上記説明した検査装置1の各構成要素の動作を制御する機能を実現する。制御手段70が、検査装置1の各構成要素の動作を制御することで、太陽電池パネルPの欠陥検査を、迅速且つ簡便に実施することが可能となる。
【0043】
〔太陽電池パネルの検査方法〕
検査装置1を用いた太陽電池パネルPの検査方法を説明する。
図6は、本発明の太陽電池パネルの検査方法のフローチャートである。本発明の検査方法では、第1モード設定工程(S1)、第1撮影工程(S2)、電圧設定工程(S3)、接続工程(S4)、第2モード設定工程(S5)、第2撮影工程(S6)、及び生成工程(S8)の各工程を順に実行する。なお、開始時の第1モード設定工程(S1)、及び接続工程(S4)の後の第2モード設定工程(S5)は、必要に応じて実行すればよい。
【0044】
本発明の検査方法は、開閉手段20を開いた状態で開始される。第1モード設定工程(S1)は、直流電源10として、定電圧モードと定電流モードとを切り替え可能な電源装置を用いる場合に実行する。第1モード設定工程(S1)では、直流電源10を定電圧モードに設定する。直流電源10の印加電圧は、後の電圧設定工程(S3)において適切なものに設定されるため、第1モード設定工程(S1)の実行時点では、直流電源10の印加電圧を特に設定する必要はない。
【0045】
第1撮影工程(S2)では、先ず、カメラ31によって太陽電池パネルPの全体を確実に撮影できる位置に撮影手段30をセットする。次に、撮影手段30によって、開閉手段20が開いた状態の太陽電池パネルPを撮影する。開閉手段20が開いた状態では、太陽電池パネルPに順バイアス電流が流れないため、太陽電池パネルPにおいてEL発光は生じず、撮影された画像は乱反射光L2のみの非発光画像となる。撮影された非発光画像は、不揮発性メモリ等のストレージにデータとして記憶される。
【0046】
電圧設定工程(S3)では、測定手段50により太陽電池パネルPのp端子-n端子間の電位差を測定し、次に、直流電源10の印加電圧を測定手段50による測定値以上の電圧に設定する。
【0047】
接続工程(S4)では、開閉手段20を閉じることで太陽電池パネルPと直流電源10とを接続し、太陽電池パネルPに順バイアス電流を印加する。このとき、太陽電池パネルPには、太陽光Lが照射されていることによりp端子が高電位、n端子が低電位となる起電力が生じているが、直流電源10の印加電圧は、電圧設定工程(S3)において、測定手段50による測定値、即ち、太陽電池パネルPに生じている起電力以上の電圧に設定されている。そのため、太陽電池パネルPの起電力に起因する突入電流が直流電源10へ逆流することが防止される。
【0048】
第2モード設定工程(S5)は、直流電源10として、定電圧モードと定電流モードとを切り替え可能な電源装置を用いる場合に実行する。第2モード設定工程(S5)では、直流電源10を定電流モードに設定し、直流電源10の印加電流を、例えば、家庭用の太陽電池パネルPにおいてEL発光が生じる8~20Aに設定する。
【0049】
第2撮影工程(S6)では、開閉手段20が閉じた状態の太陽電池パネルPを、撮影手段30によって撮影する。開閉手段20が閉じた状態では、太陽電池パネルPに順バイアス電流が流れることでEL発光が生じてEL光L1が出射される。そのため、第2撮影工程において撮影された画像は、EL光L1と乱反射光L2とが重なったEL発光画像となる。撮影されたEL発光画像は、不揮発性メモリ等のストレージにデータとして記憶される。第2撮影工程(S6)の実行後、第2撮影工程によるEL発光画像の撮影回数を判定する(S6)。撮影回数は、太陽電池パネルPの種類、設置環境、天候、使用期間等の条件によって適宜に設定できるが、本実施形態では、一例として5回の撮影を基準撮影回数としている。EL発光画像の撮影回数が5回未満である場合(S7:No)、第2撮影工程(S6)を再度実行する。EL発光画像の撮影回数が5回である場合(S7:Yes)、生成工程(S8)に処理を進める。
【0050】
生成工程(S8)では、ストレージにデータとして記憶されているEL発光画像及び非発光画像から、太陽電池パネルPの欠陥判定に用いる診断画像を生成する。診断画像の生成方法としては、例えば、ストレージから5枚のEL発光画像と1枚の非発光画像とをストレージから読み出し、各EL発光画像について画素毎に非発光画像との差分を求めることにより5枚の差分画像を生成する。この5枚の差分画像を画素毎に積算することによって生成した積算画像を診断画像とする。また、診断画像には、5枚のEL発光画像と1枚の非発光画像とをストレージから読み出し、各EL発光画像について画素毎にEL発光画像と非発光画像との比率を求める(第2撮影工程において撮影された画像であるEL発光画像を第1撮影工程において撮影された画像である非発光画像で除する)ことによって5枚の除算画像を生成し、この5枚の除算画像を画素毎に積算することによって生成した積算画像を用いてもよい。あるいは、診断画像には、例えば、1枚のEL発光画像と1枚の非発光画像とをストレージから読み出し、画素毎にEL発光画像と非発光画像との差分を求めることによって得られる差分画像や、画素毎にEL発光画像と非発光画像との比率を求める(EL発光画像を非発光画像で除する)ことによって得られる除算画像を用いてもよい。生成工程(S8)において生成される診断画像は、ノイズが低減され、太陽電池パネルPの欠陥を高精度に判定できる鮮明な画像となる。そのため、太陽電池パネルPの欠陥の有無や欠陥の程度を容易に判断することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の太陽電池パネルの検査装置、及び検査方法は、家屋の屋根等に設置された太陽電池パネルにおいてクラック等の欠陥を検出する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 検査装置
10 直流電源
20 開閉手段
30 撮影手段
33 赤外透過フィルタ
34 偏光フィルタ
40 生成手段
50 測定手段
P 太陽電池パネル