(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】センサ装置、無線品質分析装置、無線品質監視システム、データ取得方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/309 20150101AFI20220930BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20220930BHJP
H04B 17/391 20150101ALI20220930BHJP
H04W 24/06 20090101ALI20220930BHJP
【FI】
H04B17/309
H04W4/38
H04B17/391
H04W24/06
(21)【出願番号】P 2018041562
(22)【出願日】2018-03-08
【審査請求日】2020-12-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「狭空間における周波数稠密利用のための周波数有効利用技術の研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【氏名又は名称】中西 健
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】玉井 森彦
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 晃朗
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敬三
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-049468(JP,A)
【文献】特開2010-004385(JP,A)
【文献】特開2012-227663(JP,A)
【文献】特開2014-039138(JP,A)
【文献】特開2015-033069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 1/60
H04B 3/46-3/493
H04B 17/00-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線品質分析装置を含む無線品質監視システムに用いられるセンサ装置であって、
無線信号を受信するアンテナと、
前記アンテナにより受信した無線信号に対してRF処理を実行することでベースバンド信号を取得するRF処理部と、
前記無線品質監視システムで共通に使用される時間軸である単一時間軸に基づく時刻同期情報を取得する同期用時刻管理部と、
前記ベースバンド信号からI成分データとQ成分データと取得し、前記I成分データと前記Q成分データとを、前記I成分データと前記Q成分データとが取得された時刻情報であって、前記単一時間軸で規定される前記時刻情報と対応付けたIQサンプルデータを取得するIQデータ取得部と、
前記IQサンプルデータから、前記ベースバンド信号の信号強度の時系列データの特徴を示す包絡線データを、前記単一時間軸で規定される前記時刻情報と対応付けて取得する包絡線データ取得部と、
前記IQサンプルデータ
に対して復調処理を行うことで、前記ベースバンド信号に含まれるフレーム・ヘッダ
を取得し、取得した当該フレーム・ヘッダからヘッダデータを
抽出し、
抽出した当該ヘッダデータを、前記単一時間軸で規定される前記時刻情報と対応付けて取得するヘッダデータ取得部と、
を備えるセンサ装置。
【請求項2】
前記包絡線データ取得部は、
前記IQサンプルデータから、各サンプル時刻における信号強度を取得し、取得した信号強度が所定の閾値よりも大きい前記IQサンプルデータを用いて、前記包絡線データを取得する、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記IQサンプルデータを記憶する記憶部と、
前記無線品質分析装置からの要求に従い、前記記憶部に記憶されている前記IQサンプルデータを用いて前記包絡線データを取得する包絡線データ再生成処理を実行する包絡線データ再生成要求処理部と、
をさらに備える、
請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記包絡線データ再生成要求処理部は、
(1)前記信号強度が所定の閾値よりも大きい前記IQサンプルを取得し、取得した当該IQサンプルと、当該IQサンプルの取得時刻とを組にしたデータを取得することで、包絡線データを取得する第1方法、
(2)タイムスロット幅のタイムスロットを設定し、時間を前記タイムスロット幅で連続的に分割し、前記タイムスロットごとに、当該タイムスロットの期間に取得される前記信号強度の最大値、平均値、および、最小値を計算し、前記タイムスロットの開始時点での時刻と、当該タイムスロットでの信号強度の最大値、平均値、および最小値を組にしたデータを取得することで、包絡線データを取得する第2方法、および、
(3)信号強度の強度差閾値を設定し、前回サンプリングされた前記IQサンプルの信号強度と、今回サンプリングされた前記IQサンプルの信号強度の差が前記強度差閾値を超えた場合、今回サンプリングされた前記IQサンプルの取得時刻tsと、当該IQサンプルの信号値p(ts)とを取得し、さらに、前記IQサンプルのサンプリング処理を継続し、次に、前回サンプリングされた前記IQサンプルの信号強度と、今回サンプリングされた前記IQサンプルの信号強度の差が前記強度差閾値を超えた場合、今回サンプリングされた前記IQサンプルの取得時刻teを取得し、(A)前記IQサンプルの取得時刻tsと、(B)当該IQサンプルの信号値p(ts)と、(C)前記IQサンプルの取得時刻tsと前記IQサンプルの取得時刻teと
の間の時間dとを組にしたデータを取得することで、包絡線データを取得する第3方法、
のいずれかの方法により、前記包絡線データ再生成処理を実行する、
請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記記憶部に前記IQサンプルデータを記憶させるときのアクセス制御を行うデータ中継部をさらに備え、
前記データ中継部は、前記IQサンプルデータの前記記憶部への記憶処理を停止させるための記録停止指令を入力したとき、前記IQサンプルデータの前記記憶部への記憶処理を停止させる、
請求項3または4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のセンサ装置であって、1または複数の前記センサ装置を含む無線品質監視システムに用いられる無線品質分析装置であって、
1または複数の前記センサ装置から、各センサ装置が取得した前記包絡線データを収集する包絡線データ収集部と、
1または複数の前記センサ装置から、各センサ装置が取得した前記ヘッダデータを収集するヘッダデータ収集部と、
前記包絡線データ収集部が収集した前記包絡線データと、前記ヘッダデータ収集部が収集した前記ヘッダデータとを、前記単一時間軸で解析することで、前記無線品質監視システムが属する無線環境の無線品質を分析する分析部と、
を備える無線品質分析装置。
【請求項7】
前記分析部は、
所定のセンサ装置から取得した前記包絡線データを用いたデータ分析処理を行った結果、当該データ分析結果の精度を向上させるために、前記所定のセンサ装置から異なる取得方法により前記包絡線データを取得することを決定した場合、前記所定のセンサ装置に対して、包絡線データを取得する包絡線データ再生成処理を要求する要求信号を生成する、
請求項6に記載の無線品質分析装置。
【請求項8】
前記分析部は、
所定のセンサ装置から取得した前記包絡線データを用いたデータ分析処理を行った結果、当該データ分析結果の精度を向上させるために、前記所定のセンサ装置から異なる取得方法により前記包絡線データを取得することを決定した場合、前記所定のセンサ装置に対して、前記包絡線データを再取得する期間を特定する情報を含めて、前記包絡線データ再生成処理を要求する要求信号を生成する、
請求項7に記載の無線品質分析装置。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載のセンサ装置と、
請求項6から8のいずれかに記載の無線品質分析装置と、
を備える無線品質監視システム。
【請求項10】
無線品質分析装置を含む無線品質監視システムに用いられるセンサ装置であって、無線信号を受信するアンテナを含む前記センサ装置で使用されるデータ取得方法であって、
前記アンテナにより受信した無線信号に対してRF処理を実行することでベースバンド信号を取得するRF処理ステップと、
前記無線品質監視システムで共通に使用される時間軸である単一時間軸に基づく時刻同期情報を取得する同期用時刻管理ステップと、
前記ベースバンド信号からI成分データとQ成分データと取得し、前記I成分データと前記Q成分データとを、前記I成分データと前記Q成分データとが取得された時刻情報であって、前記単一時間軸で規定される前記時刻情報と対応付けたIQサンプルデータを取得するIQデータ取得ステップと、
前記IQサンプルデータから、前記ベースバンド信号の信号強度の時系列データの特徴を示す包絡線データを、前記単一時間軸で規定される前記時刻情報と対応付けて取得する包絡線データ取得ステップと、
前記IQサンプルデータ
に対して復調処理を行うことで、前記ベースバンド信号に含まれるフレーム・ヘッダ
を取得し、取得した当該フレーム・ヘッダから、ヘッダデータを
抽出し、
抽出した当該ヘッダデータを、前記単一時間軸で規定される前記時刻情報と対応付けて取得するヘッダデータ取得ステップと、
を備えるデータ取得方法。
【請求項11】
請求項10に記載のデータ取得方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信技術に関し、特に、無線品質の監視技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機器の稼働状況の把握、制御などを目的として、工場、病院、商業施設などの屋内環境へのIoT(Internet of Things)デバイスの導入が進んでいる。
【0003】
例えば工場のような環境下で製造システムの状態管理や制御のために無線通信が使用されている場合、電波の減衰や干渉などの影響により通信断が生じてしまうと、製造工程の遅延や停止につながる場合もある。このため、無線通信に対し特に高い品質が求められる。
【0004】
無線品質に問題が生じていないかを監視し、問題が生じている場合には、その原因の特定につながる情報を提供するためのシステムの構築が望まれている。
【0005】
例えば、特許文献1には、無線通信品質を計測するために送信されるテスト用フレームを受信して、その受信信号強度から無線通信の品質を評価し、その評価結果をデータベースへ保存するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術のように、受信信号強度のみを用いて無線通信品質を監視する場合、十分精度の高い監視を行うことができない場合がある。
【0008】
無線品質の監視を行う場合、以下の問題が生じる。
(1)無線品質の監視において,包絡線データ(信号の波形情報)とヘッダデータ(プロトコルの動作上必要な制御情報)の取得が有効であるが、どちらか一方のみを観測するだけでは、問題の検知や原因特定に対し不十分な場合がある。
(2)包絡線データはそのままではデータ量が膨大となるため、データの転送や保存の際に通信帯域やストレージ容量の圧迫を引き起こす。
【0009】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを考慮し、扱うデータ量が膨大になることを抑制しつつ精度の高い無線品質の監視を行う無線品質監視システム、無線品質分析装置、センサ装置、データ取得方法、および、プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の発明は、無線品質分析装置を含む無線品質監視システムに用いられるセンサ装置であって、無線信号を受信するアンテナと、RF処理部と、同期用時刻管理部と、IQデータ取得部と、包絡線データ取得部と、ヘッダデータ取得部と、を備える。
【0011】
RF処理部は、アンテナにより受信した無線信号に対してRF処理を実行することでベースバンド信号を取得する。
【0012】
同期用時刻管理部は、無線品質監視システムで共通に使用される時間軸である単一時間軸に基づく時刻同期情報を取得する。
【0013】
IQデータ取得部は、ベースバンド信号からI成分データとQ成分データとを取得し、I成分データとQ成分データとを、I成分データとQ成分データとが取得された時刻情報であって、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けたIQサンプルデータを取得する。
【0014】
包絡線データ取得部は、IQサンプルデータから、ベースバンド信号の信号強度の時系列データの特徴を示す包絡線データを、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けて取得する。
【0015】
ヘッダデータ取得部は、IQサンプルデータから、ベースバンド信号に含まれるフレーム・ヘッダから、ヘッダデータを、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けて取得する。
【0016】
このセンサ装置では、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けた、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを取得するので、このセンサ装置が取得した上記データを無線品質分析装置で解析することで、包絡線データ、あるいは、ヘッダデータの単独の分析では特定できない無線品質の劣化の原因を適切に特定することができる。したがって、このセンサ装置を用いた無線品質監視システムでは、精度の高い無線品質の監視を行うことができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明であって、包絡線データ取得部は、IQサンプルデータから、各サンプル時刻における信号強度を取得し、取得した信号強度が所定の閾値よりも大きいIQサンプルデータを用いて、包絡線データを取得する。
【0018】
これにより、このセンサ装置では、一般にデータ量が膨大になる包絡線データを効率よく削減することができる。
【0019】
第3の発明は、第1または第2の発明であって、IQサンプルデータを記憶する記憶部と、包絡線データ再生成要求処理部と、をさらに備える。
【0020】
包絡線データ再生成要求処理部は、無線品質分析装置からの要求に従い、記憶部に記憶されているIQサンプルデータを用いて包絡線データを取得する包絡線データ再生成処理を実行する。
【0021】
これにより、このセンサ装置では、無線品質分析装置から、包絡線データを取得する要求を受けたとき、再度、記憶部に記憶しているIQサンプルデータを用いて包絡線データを取得することができる。
【0022】
第4の発明は、第3の発明であって、包絡線データ再生成要求処理部は、包絡線データ取得部が取得した包絡線データよりも精度の高い包絡線データを取得する方法により、包絡線データ再生成処理を実行する。
【0023】
これにより、このセンサ装置では、無線品質分析装置から、包絡線データを取得する要求を受けたとき、再度、記憶部に記憶しているIQサンプルデータを用いてより精度の高い包絡線データを取得することができる。そして、このセンサ装置が、無線品質分析装置に、取得したより精度の高い包絡線データを送信し、無線品質分析装置が当該包絡線データを用いて、無線品質の分析を行うことで、より精度の高い分析が可能となる。
【0024】
第5の発明は、第3または第4の発明であって、記憶部にIQサンプルデータを記憶させるときのアクセス制御を行うデータ中継部をさらに備える。
【0025】
データ中継部は、IQサンプルデータの記憶部への記憶処理を停止させるための記録停止指令を入力したとき、IQサンプルデータの記憶部への記憶処理を停止させる。
【0026】
これにより、このセンサ装置では、例えば、無線品質を劣化させる、めったに起こらない状況が発生したときに、IQサンプルデータの記録を停止させ、これ以上、IQサンプルデータが記憶部(例えば、リングバッファ機構を有する記憶装置)に記憶され、IQサンプルデータが書き換えられる(更新される)ことを防止することができる。そして、記録更新を停止した記憶部のデータを解析することで、めったにおきない状況が原因で無線品質が劣化している場合の原因を特定する可能性を高めることができる。
【0027】
第6の発明は、第1から第5のいずれかの発明であるセンサ装置であって、1または複数のセンサ装置を含む無線品質監視システムに用いられる無線品質分析装置である。無線品質分析装置は、包絡線データ収集部と、ヘッダデータ収集部と、分析部と、を備える。
【0028】
包絡線データ収集部は、1または複数のセンサ装置から、各センサ装置が取得した包絡線データを収集する。
【0029】
ヘッダデータ収集部は、1または複数のセンサ装置から、各センサ装置が取得したヘッダデータを収集する。
【0030】
分析部は、包絡線データ収集部が収集した包絡線データと、ヘッダデータ収集部が収集したヘッダデータとを、単一時間軸で解析することで、無線品質監視システムが属する無線環境の無線品質を分析する。
【0031】
この無線品質分析装置では、各センサ装置から、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けた、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを収集するので、この無線品質分析装置が収集したデータを解析することで、包絡線データ、あるいは、ヘッダデータの単独の分析では特定できない無線品質の劣化の原因を適切に特定することができる。したがって、この無線品質分析装置を用いた無線品質監視システムでは、精度の高い無線品質の監視を行うことができる。
【0032】
第7の発明は、第6の発明であって、分析部は、包絡線データの精度が十分でないと判断したセンサ装置に対して、包絡線データを取得する包絡線データ再生成処理を要求する要求信号を生成する。
【0033】
これにより、この無線品質分析装置では、無線品質の分析精度が十分でないと判断した場合のみ、精度の高い包絡線データをセンサ装置に要求することができる。つまり、無線品質の分析精度が十分であると判断できる場合、センサ装置で取得する包絡線データのデータ容量を抑えつつ、必要な場合にのみ、データ容量の大きい包絡線データによる無線品質の分析を行うことができる。つまり、この無線品質分析装置では、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを考慮し、扱うデータ量が膨大になることを抑制しつつ精度の高い無線品質の分析、監視を行うことができる。
【0034】
第8の発明は、第7の発明であって、分析部は、包絡線データの精度が十分でないと判断したセンサ装置に対して、包絡線データを再取得する期間を特定する情報を含めて、包絡線データ再生成処理を要求する要求信号を生成する。
【0035】
これにより、センサ装置に対して、包絡線データを再取得する期間を特定して、包絡線データ再生成処理の実行を要求することができる。
【0036】
第9の発明は、第1から第5のいずれかの発明であるセンサ装置と、第6から第8のいずれかの発明である無線品質分析装置と、を備える無線品質監視システムである。
【0037】
これにより、第1から第5のいずれかの発明であるセンサ装置と、第6から第8のいずれかの発明である無線品質分析装置と、を備える無線品質監視システムを実現することができる。
【0038】
第10の発明は、無線品質分析装置を含む無線品質監視システムに用いられるセンサ装置であって、無線信号を受信するアンテナを含むセンサ装置で使用されるデータ取得方法である。データ取得方法は、RF処理ステップと、同期用時刻管理ステップと、IQデータ取得ステップと、包絡線データ取得ステップと、ヘッダデータ取得ステップと、を備える。
【0039】
RF処理ステップは、アンテナにより受信した無線信号に対してRF処理を実行することでベースバンド信号を取得する。
【0040】
同期用時刻管理ステップは、無線品質監視システムで共通に使用される時間軸である単一時間軸に基づく時刻同期情報を取得する。
【0041】
IQデータ取得ステップは、ベースバンド信号からI成分データとQ成分データとを取得し、I成分データとQ成分データとを、I成分データとQ成分データとが取得された時刻情報であって、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けたIQサンプルデータを取得する。
【0042】
包絡線データ取得ステップは、IQサンプルデータから、ベースバンド信号の信号強度の時系列データの特徴を示す包絡線データを、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けて取得する。
【0043】
ヘッダデータ取得ステップは、IQサンプルデータから、ベースバンド信号に含まれるフレーム・ヘッダから、ヘッダデータを、単一時間軸で規定される時刻情報と対応付けて取得する。
【0044】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏するデータ取得方法を実現することができる。
【0045】
第11の発明は、第10の発明であるデータ取得方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0046】
これにより、第1の発明と同様の効果を奏するデータ取得方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを実現することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを考慮し、扱うデータ量が膨大になることを抑制しつつ精度の高い無線品質の監視を行う無線品質監視システム、無線品質分析装置、センサ装置、データ取得方法、および、プログラムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】第1実施形態に係る無線品質監視システム1000の概略構成図。
【
図2】第1実施形態に係る無線品質分析装置100の概略構成図。
【
図3】第1実施形態に係るセンサ装置S_node1の概略構成図。
【
図4】包絡線データの図式表現について説明するための図。
【
図5】包絡線データ取得部24でのデータ削減方法を説明するための図。
【
図6】ヘッダデータの図式表現について説明するための図。
【
図7】データDa_rstに基づいて、センサ装置S_node1、センサ装置S_node2、センサ装置S_node3の包絡線データおよびヘッダデータを矩形表現で示した図。
【
図8】第2実施形態に係る無線品質監視システム2000の概略構成図。
【
図9】第2実施形態に係る無線品質分析装置100Aの概略構成図。
【
図10】第2実施形態に係るセンサ装置SA_node1の概略構成図。
【
図11】第2モードによる包絡線データ取得方法を説明するための図。
【
図12】第3モードによる包絡線データ取得方法を説明するための図。
【
図13】第4モードによる包絡線データ取得方法を説明するための図。
【
図14】第2実施形態の第1変形例のセンサ装置SB_node1の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照しながら、以下、説明する。
【0050】
<1.1:無線品質監視システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る無線品質監視システム1000の概略構成図である。
【0051】
図2は、第1実施形態に係る無線品質分析装置100の概略構成図である。
【0052】
図3は、第1実施形態に係るセンサ装置S_node1の概略構成図である。
【0053】
無線品質監視システム1000は、
図1に示すように、無線品質分析装置100と、1または複数のセンサ装置(
図1では、センサ装置S_node1、センサ装置S_node2、および、センサ装置S_node3)と、1または複数の通信機器(
図1では、通信機器RbtA、通信機器RbtB、および、通信機器RbtC)とを備える。
【0054】
なお、説明便宜のため、
図1に示すように、無線品質監視システム1000に、センサ装置S_node1、センサ装置S_node2、および、センサ装置S_node3の3つセンサ装置が含まれ、通信機器RbtA、通信機器RbtB、および、通信機器RbtCの3つの通信機器が含まれる場合について、以下説明する。
【0055】
通信機器RbtA、通信機器RbtB、および、通信機器RbtCは、例えば、狭空間内(例えば、工場内)に設置される。そして、通信機器RbtA、通信機器RbtB、および、通信機器RbtCは、例えば、IEEE802.11a、b、g、n、ac等の無線LAN規格に従い、互いに無線通信を行うことができる。通信機器RbtA、通信機器RbtB、および/または、通信機器RbtCは、例えば、無線通信機能付きの工作機械である。
【0056】
無線品質分析装置100と、1または複数のセンサ装置は、無線または有線で接続されており、互いに通信することができる。
【0057】
(1.1.1:無線品質分析装置)
無線品質分析装置100は、
図2に示すように、第1通信処理部11と、時刻同期用データ処理部12と、包絡線データ収集部13と、ヘッダデータ収集部14と、分析部15と、第1通信インターフェース16とを備える。
【0058】
第1通信処理部11は、外部にデータを送信する場合、第1通信インターフェース16にデータDa1を出力する。また、第1通信処理部11は、外部からデータを受信する場合、第1通信インターフェース16からデータDa1を入力する。第1通信処理部11は、時刻同期用データ処理部12から、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置と時刻同期処理を行うための時刻同期用データDa_time_syncを入力し、当該時刻同期用データDa_time_syncを含めたデータDa1を生成し、生成したデータDa1を第1通信インターフェース16に出力する。また、第1通信処理部11は、各センサ装置から包絡線データを含むデータDa1を受信した場合、データDa1から、各センサ装置の包絡線データを抽出し、抽出したデータを包絡線データDa_envとして、包絡線データ収集部13に出力する。また、第1通信処理部11は、各センサ装置からヘッダデータを含むデータDa1を受信した場合、データDa1から、各センサ装置のヘッダデータを抽出し、抽出したデータをヘッダデータDa_headとして、ヘッダデータ収集部14に出力する。
【0059】
時刻同期用データ処理部12は、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置と時刻同期処理を行うための時刻同期用データDa_time_syncを生成し、生成した時刻同期用データDa_time_syncを第1通信処理部11に出力する。時刻同期用データ処理部12は、例えば、NTP(Network Time Protocol)、PTP(Precision Time Protocol)等のプロトコルにより、無線品質分析装置100とセンサ装置間で時刻同期がとれるようにするための時刻同期用データDa_time_syncを生成する。
【0060】
包絡線データ収集部13は、第1通信処理部11から出力される、各センサ装置の包絡線データDa_envを入力する。包絡線データ収集部13は、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置の包絡線データDa_envを収集し、収集したデータを収集包絡線データDa_env_allとして分析部15に出力する。
【0061】
ヘッダデータ収集部14は、第1通信処理部11から出力される、各センサ装置のヘッダデータDa_headを入力する。ヘッダデータ収集部14は、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置のヘッダデータDa_headを収集し、収集したデータを収集ヘッダデータDa_head_allとして分析部15に出力する。
【0062】
分析部15は、包絡線データ収集部13から出力される収集包絡線データDa_env_allと、ヘッダデータ収集部14から出力される収集ヘッダデータDa_head_allとを入力する。そして、分析部15は、収集包絡線データDa_env_allと、収集ヘッダデータDa_head_allとに基づいて、分析処理を実行し、分析結果を含むデータをデータDa_rstとして出力する。
【0063】
第1通信インターフェース16は、例えば、有線または無線のネットワークを介して、外部の装置とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。第1通信インターフェース16は、第1通信処理部11から出力されるデータDa1を、有線または無線のネットワークを介して通信できる形式のデータDa1_outにして、当該データDa1_outを、ネットワークを介して送信する。また、第1通信インターフェース16は、ネットワークを介してデータDa1_inを受信する。第1通信インターフェース16は、受信したデータDa1_inを、第1通信処理部11が処理できるデータDa1にして、当該データDa1を第1通信処理部11に出力する。
【0064】
(1.1.2:センサ装置)
センサ装置S_node1は、
図3に示すように、アンテナAnt1と、RF処理部21と、同期用時刻管理部22と、IQデータ取得部23と、包絡線データ取得部24と、ヘッダデータ取得部25と、データ中継部26と、第2通信インターフェース27とを備える。
【0065】
アンテナAnt1は、外部から放射(送信)された電波(RF信号)を受信するためのアンテナである。なお、アンテナAnt1は、送受信用アンテナであってもよい。
【0066】
RF処理部21は、アンテナAnt1を介して、外部からRF信号を受信し、受信したRF信号に対して受信用のRF処理(RF復調処理、AD変換等)を実行し、RF処理後の信号Sig0(例えば、ベースバンドOFDM信号)を取得する。そして、RF処理部21は、RF処理後の信号Sig0をIQデータ取得部23に出力する。
【0067】
同期用時刻管理部22は、第2通信インターフェース27を介して、無線品質分析装置100(マスターサーバ)から送信される時刻同期用データをデータD_time_syncとして入力する。同期用時刻管理部22は、時刻同期用データD_time_syncに基づいて、他のセンサ装置と同期した時刻情報を取得し、IQデータの取得タイミングを決定するための制御信号Ctl_tを生成する。そして、同期用時刻管理部22は、生成した制御信号Ctl_tをIQデータ取得部23に出力する。
【0068】
IQデータ取得部23は、RF処理部21から出力される信号Sig0と、同期用時刻管理部22から出力される制御信号Ctl_tとを入力する。IQデータ取得部23は、制御信号Ctl_tにより決定されるタイミングで、信号Sig0から、I成分信号(同相成分信号)のデータ(I成分データ)と、Q成分信号(直交成分信号)のデータ(Q成分データ)とを取得し、取得したデータをデータD1_IQとして、包絡線データ取得部24およびヘッダデータ取得部25に出力する。
【0069】
包絡線データ取得部24は、IQデータ取得部23から出力されるデータD1_IQを入力し、データD1_IQから、信号強度の時系列のデータD1_envを取得する。そして、包絡線データ取得部24は、取得したデータD1_envをデータ中継部26に出力する。
【0070】
ヘッダデータ取得部25は、IQデータ取得部23から出力されるデータD1_IQを入力する。ヘッダデータ取得部25は、データD1_IQに対して復調処理を実行し、使用している無線システム(センサ装置S_node1が無線通信を行うときに使用しているプロトコル)の物理層、MAC層の仕様に基づき、上記復調処理により取得したビット列を解釈する。そして、ヘッダデータ取得部25は、上記ビット列の解釈した結果の時系列のデータをデータD1_headとして取得する。そして、ヘッダデータ取得部25は、データD1_headをデータ中継部26に出力する。
【0071】
データ中継部26は、包絡線データ取得部24から出力されるデータD1_envと、ヘッダデータ取得部25から出力されるデータD1_headとを入力する。データ中継部26は、包絡線データD1_envとヘッダデータD1_headとを含むデータD1_env_headとして、第2通信インターフェース27に出力する。
【0072】
第2通信インターフェース27は、例えば、有線または無線のネットワークを介して、外部の装置とデータ送受信を行うための通信インターフェースである。第2通信インターフェース27は、データ中継部26から出力されるデータD1_env_headを入力し、当該データD1_env_headを有線または無線のネットワークを介して通信できる形式のデータにして外部(所定の宛先)に送信する。また、第2通信インターフェース27は、ネットワークを介して、時刻同期用データD_time_syncを含むデータを受信し、受信したデータから時刻同期用データD_time_syncを抽出し、抽出した時刻同期用データD_time_syncを同期用時刻管理部22に出力する。なお、第2通信インターフェース27および同期用時刻管理部22は、NTP、PTP等のプロトコルを用いて通信により、マスタサーバ(例えば、無線品質分析装置100)から同期のための情報を受信する。
【0073】
なお、センサ装置S_node2、および、センサ装置S_node3は、センサ装置S_node1と同様の構成を有している。
【0074】
<1.2:無線品質監視システムの動作>
以上のように構成された無線品質監視システム1000の動作について、以下、図面を参照しながら説明する。
【0075】
無線品質分析装置100の時刻同期用データ処理部12は、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置と時刻同期処理を行うための時刻同期用データDa_time_syncを生成する。具体的には、時刻同期用データ処理部12は、例えば、NTP(Network Time Protocol)、PTP(Precision Time Protocol)等のプロトコルにより、無線品質分析装置100とセンサ装置間で時刻同期がとれるようにするための時刻同期用データDa_time_syncを生成する。
【0076】
第1通信処理部11は、時刻同期用データ処理部12から、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置と時刻同期処理を行うための時刻同期用データDa_time_syncを入力し、当該時刻同期用データDa_time_syncを含めたデータDa1を生成し、生成したデータDa1を第1通信インターフェース16に出力する。
【0077】
第1通信インターフェース16は、有線または無線のネットワークを介して、時刻同期用データDa_time_syncを含めたデータDa1を、無線品質監視システム1000の各センサ装置(センサ装置S_node1、S_node2、S_node3)に送信する。
【0078】
そして、各センサ装置は、有線または無線のネットワーク、第2通信インターフェース27を介して、無線品質分析装置100から送信されたデータDa1を受信し、受信したデータから時刻同期用データDa_time_syncを抽出して同期用時刻管理部22に出力する。
【0079】
各センサ装置の動作は同様であるので、以下では、センサ装置S_node1の動作について、説明する。
【0080】
センサ装置S_node1は、アンテナAnt1により、外部から放射(送信)された電波(RF信号)を受信する。
【0081】
RF処理部21は、アンテナAnt1を介して、外部から受信したRF信号に対して受信用のRF処理(RF復調処理、AD変換等)を実行し、RF処理後の信号Sig0を取得する。そして、RF処理後の信号Sig0は、RF処理部21からIQデータ取得部23に出力される。
【0082】
同期用時刻管理部22は、第2通信インターフェース27を介して、無線品質分析装置100(マスターサーバ)から送信される時刻同期用データをデータD_time_syncとして入力する。同期用時刻管理部22は、時刻同期用データD_time_syncに基づいて、他のセンサ装置と同期した時刻情報を取得し、IQデータの取得タイミングを決定するための制御信号Ctl_tを生成する。同期用時刻管理部22は、時刻同期用データD_time_syncに基づいて、他のセンサ装置と同一の時間軸を設定し、設定した同一の時間軸において、IQデータ取得部23によりデータが取得されるように制御信号Ctl1を生成する。
【0083】
そして、同期用時刻管理部22は、生成した制御信号Ctl_tをIQデータ取得部23に出力する。
【0084】
IQデータ取得部23は、制御信号Ctl_tにより決定されるタイミングで、信号Sig0から、I成分信号(同相成分信号)のデータ(I成分データ)と、Q成分信号(直交成分信号)のデータ(Q成分データ)とを取得する。つまり、IQデータ取得部23では、制御信号Ctl_tに従って、I成分データおよびQ成分データを取得することで、他のセンサ装置と同一の時間軸において、上記データを取得することができる。
【0085】
IQデータ取得部23での具体的な処理について、以下説明する。
【0086】
無線品質監視システム1000では、無線品質分析装置100において、全てのセンサ装置から受信した包絡線データとヘッダデータを単一時間軸上で観測できるようにするため、各センサ装置では、あるまとまった個数(所定の個数)のIQサンプルの集合に対し、タイムスタンプを付与する。ここで、タイムスタンプが付与される単位となる、所定のまとまった個数のIQサンプルの集合を、「IQサンプルグループ」とよぶ。
【0087】
IQデータ取得部23では、以下の(1)~(3)の動作を繰り返し行う。
(1)同期用時刻管理部22から現在時刻を取得する。
(2)所定のまとまった個数のIQサンプル(IQサンプルグループ)をRF処理部21から取得し、そのIQサンプルグループに属するIQサンプルに対し、(1)で取得した時刻をタイムスタンプとして付与する。
(3)タイムスタンプとIQサンプルグループの組を、包絡線データ取得部24およびヘッダデータ取得部25に、データD1_IQとして、出力する。
【0088】
以下では、k番目(k:自然数)に取得されたIQサンプルグループをGkと表記する。また、Gkに属する各サンプルを、取得順に並べたときのi番目のIQサンプルをsi
(k)と表記する。すなわち、IQサンプルグループGkにn個(n:自然数)のIQサンプルが含まれる場合、以下のように表記する。
Gk={t(k),IQ_s1
(k),IQ_s2
(k),・・・,IQ_sn
(k)}
t(k):タイムスタンプ(現在時刻(IQサンプルグループGkの取得開始時刻)の時間情報)
IQ_si
(k)={Ii
(k),Qi
(k)}
Ii
(k):Gkのi番目のIQサンプルのI成分データ
Qi
(k):Gkのi番目のIQサンプルのQ成分データ
IQデータ取得部23は、上記のようにして取得したIQサンプルのデータをデータD1_IQとして包絡線データ取得部24およびヘッダデータ取得部25に出力する。
【0089】
包絡線データ取得部24は、IQデータ取得部23から出力されるデータD1_IQから、信号強度の時系列のデータD1_envを取得する。包絡線データ取得部24の具体的な処理について、以下説明する。
【0090】
まず、包絡線データ取得部24では、IQデータ取得部23から、データD1_IQとして、IQサンプルグループGkごとのデータを受け取ると、当該IQサンプルグループGkに含まれる各IQサンプルsi
(k)の取得時刻ti
(k)を、
ti
(k)=t1
(k)+(i-1)/r
r:サンプリングレート(単位は「サンプル数/秒」)
により算出する。なお、rは、RF処理部21によりIQサンプルを取得するときのサンプリングレートである。
【0091】
包絡線データ取得部24では、IQサンプルグループごとのまとまりを解除し各IQサンプルを上式で計算される取得時刻順に基づき並べたデータ(グループ解除後データ)を用いて処理を行う。なお、当該グループ解除後データにおいて、i番目のIQサンプルをIQ_si
(all)と表記し、IQ_si
(all)のI成分データをIi
(all)と表記し、IQ_si
(all)のQ成分データをQi
(all)と表記する。また、各IQサンプル(IQ_si
(k))の取得時刻ti
(k)のIQサンプルグループごとのまとまりを解除し時刻順に並べたデータのi番目の取得時刻をti
(all)と表記する。
【0092】
そして、包絡線データ取得部24は、各IQサンプルIQ_si
(all)の強度S_si
(all)を、
S_si
(all)=10×log10[{Ii
(all)}2+{Qi
(all)}2]
に相当する処理により取得する。
【0093】
そして、包絡線データ取得部24は、i番目のIQサンプルの信号強度S_si
(all)と、i番目のIQサンプルsi
(all)の取得時刻ti
(all)とを組にしたデータを、データD1_env_allとして取得する。なお、上記のようにして、包絡線データ取得部24で取得されたデータを以下のように表記する。
D1_env_all={[S_s1
(all),t1
(all)],[S_s2
(all),t2
(all)],・・・,[S_sm
(all),tm
(all)]}
m:センサ装置S_node1で処理対象としている各IQサンプルグループに含まれるサンプル数の総和
ここで、包絡線データの図式表現について、説明する。
【0094】
図4は、包絡線データの図式表現について説明するための図である。
【0095】
図4の上図は、信号Sig0(例えば、ベースバンドOFDM信号)の一例をしており、横軸が時間であり、縦軸が振幅(信号値)である。
図4の下図は、
図4の上図と時間軸を一致させて、上記の処理により取得したIQサンプルの信号強度S(データD1_env)を矩形で示した図(矩形近似表現で示した図)である。
図4の下図から分かるように、信号強度Sと当該信号強度Sが維持されている継続時間とにより決定される矩形により、包絡線データD1_env(IQサンプルの信号強度S)を図式的に表現することができる。
【0096】
なお、データD1_envから、各IQサンプルの信号強度S(=S_si
(all))とその取得時刻ti
(all)とが分かるので、信号強度Sが維持されている時間も容易に算出することができる。
【0097】
全てのIQサンプルに対し、それぞれ対応する信号強度S_s
i
(all)を計算した時系列データ(データD1_env_all)は、最も精度の高いデータであるが、データ量が膨大となるため、データ量を削減することが好ましい。そこで、包絡線データ取得部24は、全てのIQサンプルに対するデータD1_env_allを削減したデータD1_envを取得する。これについて、
図5を用いて説明する。
【0098】
図5は、包絡線データ取得部24でのデータ削減方法を説明するための図である。
図5の上図にデータD1_env_allを、
図5の下図に削減したデータD1_envを、時間軸を一致させて示している。
【0099】
包絡線データ取得部24は、信号強度Sが所定の閾値Th1よりも小さいサンプルデータを捨てる(処理対象外にする)。そして、包絡線データ取得部24は、
図5に示すように、信号強度Sが閾値Th1よりも大きいサンプルデータの信号強度pkとその取得時刻tkとを組にしたデータをデータD1_envとして取得する。例えば、
図5の下図において、時刻t0の信号強度がp0であり、時刻t1の信号強度がp1であり、時刻t2の信号強度がp2であり、時刻t3の信号強度がp3であり、かつ、信号強度p0~p3がいずれも閾値Th1よりも大きい場合、データD1_envは、
D1_env={(t0,p0),(t1,p1),(t2,p3),・・・}
として取得される。
【0100】
つまり、包絡線データ取得部24は、信号強度Sが所定の閾値Th1以上のサンプルデータとその取得時刻から、
図5の下図に示す各矩形に対応するデータを取得することで、データD1_envを取得する。なお、
図5の下図に示す各矩形の継続時間は、サンプリングレートの逆数から暗黙的に取得できるため、データD1_envには含めない。これにより、包絡線データのデータサイズをさらに削減することができる。
【0101】
上記のように、包絡線データ取得部24は、データサイズを削減したデータD1_envを取得し、取得したデータD1_envをデータ中継部26に出力する。
【0102】
ヘッダデータ取得部25は、データD1_IQに対して復調処理を実行し、使用している無線システム(センサ装置S_node1が無線通信を行うときに使用しているプロトコル)の物理層、MAC層の仕様に基づき、上記復調処理により取得したビット列を解釈することでヘッダデータを取得する。ヘッダデータは、対象無線システム(IEEE 802.11aなど)の仕様に基づき復調後のビット列をデコードして得られるフレームの列について、各フレームのヘッダ部分の情報を抽出した時系列データである。
【0103】
ヘッダ部分から抽出可能な代表的な情報として、以下のような情報がある。
(1)送信元MACアドレス
(2)受信先MACアドレス
(3)フレーム長(バイト数)
(4)フレームの種類(Beacon、Data、Ackなど)
(5)再送フラグ
(6)シーケンス番号
(7)データレート(6Mbps,54Mbpsなど)
ヘッダデータ取得部25においても、包絡線データ取得部24と同様に、IQサンプルグループごとのまとまりを解除し各IQサンプルを取得時刻順に基づき並べたデータ(グループ解除後データ)を用いて処理を行う。
【0104】
ヘッダデータ取得部25は、上記のグループ解除後のIQサンプルと、取得したヘッダデータを対応づけることで、ヘッダデータを取得する。ヘッダデータの取得方法について、以下説明する。
【0105】
図6は、ヘッダデータの図式表現について説明するための図である。
【0106】
図6の上図は、信号Sig0(例えば、ベースバンドOFDM信号)の一例をしており、横軸が時間であり、縦軸が振幅(信号値)である。
図6の下図は、
図6の上図と時間軸を一致させて、IQサンプルから取得した各フレームを矩形で表現した図である。なお、
図6の下図において、1つの矩形が同一のヘッダデータを有しているフレームを表している。
【0107】
図6の下図のようなヘッダデータの図式表現を得る際の、各矩形(1個のフレーム)の開始時点の時刻と、継続時間については、各フレームのデコードに使用された複数個のIQサンプルの最初のIQサンプルの取得時刻と最後のIQサンプルの取得時刻から得ることができる。
【0108】
したがって、ヘッダデータ取得部25は、上記のようにして、
図6の下図の各矩形に対応するヘッダデータを、以下の形式のデータとして取得する。
(tk,dk,hk)
tk:フレームの開始時刻
tk:フレームの継続時間
hk:フレームのヘッダ部分から抽出した情報(送信元MACアドレス等)
そして、ヘッダデータ取得部25は、処理対象としている期間に含まれる複数のヘッダデータをヘッダデータD1_headとして、以下の形式で取得する。
D1_head={(t1,d1,h1),(t1,d2,h2),(t3,d3,h3),・・・}
なお、ヘッダ情報hkにより、例えば、
図6の「ヘッダ内容」の欄に模式的表現で示すように、
図6の1番目と2番目のフレームがノードAからノードBへのデータ(Data(A->B)と表記)であり、
図6の3番目のフレームがノードBからノードAへのACK(Ack(B->A)と表記)であることが分かる。
【0109】
上記のようにして、ヘッダデータ取得部25により取得されたヘッダデータD1_headは、データ中継部26に出力される。
【0110】
データ中継部26は、包絡線データ取得部24から出力されるデータD1_envと、ヘッダデータ取得部25から出力されるデータD1_headとを含むデータをデータD1_env_headとして、第2通信インターフェース27に出力する。
【0111】
第2通信インターフェース27は、データ中継部26から出力されるデータD1_env_headを、有線または無線のネットワークを介して、無線品質分析装置100に送信する。
【0112】
無線品質分析装置100は、第1通信インターフェース16を介して、センサ装置S_node1から送信されるデータD1_env_headを含むデータを受信する。そして、無線品質分析装置100の第1通信処理部11は、第1通信インターフェース16が受信したデータからデータD1_env_headを抽出し、さらに、データD1_env_headから、包絡線データとヘッダデータを抽出する。そして、第1通信処理部11は、抽出した包絡線データをデータDa_envとして包絡線データ収集部13に出力し、抽出したヘッダデータをデータDa_headとしてヘッダデータ収集部14に出力する。
【0113】
また、無線品質分析装置100では、センサ装置S_node2、センサ装置S_node3から送信されるデータについても上記と同様に処理される。
【0114】
包絡線データ収集部13は、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置の包絡線データDa_envを収集し、収集したデータを収集包絡線データDa_env_allとして分析部15に出力する。
【0115】
ヘッダデータ収集部14は、無線品質監視システム1000に含まれるセンサ装置のヘッダデータDa_headを収集し、収集したデータを収集ヘッダデータDa_head_allとして分析部15に出力する。
【0116】
分析部15は、包絡線データ収集部13から出力される収集包絡線データDa_env_allと、ヘッダデータ収集部14から出力される収集ヘッダデータDa_head_allとに基づいて、分析処理を実行し、分析結果を含むデータをデータDa_rstとして出力する。データDa_rstを例えば、表示装置(不図示)等に表示させることで、無線品質監視システム1000の無線品質を分析することができる。
【0117】
図7は、データDa_rstに基づいて、センサ装置S_node1、センサ装置S_node2、センサ装置S_node3の包絡線データおよびヘッダデータを矩形表現で示した図(一例)である。なお、
図7において、センサ装置Xの包絡線データをD1_env(X)として示し、センサ装置Xの包絡線データをD1_head(X)として示している。
【0118】
図7から分かるように、データDa_rstにより、センサ装置S_node1、センサ装置S_node2、センサ装置S_node3の包絡線データおよびヘッダデータが単一(同一)の時間軸により表示することができる。
【0119】
図7の領域R0では、同じIQデータに対し、当該IQデータに対応する包絡線データとヘッダデータが表示されており、適切に通信されていることが分かる。
【0120】
図7の領域R1では、1つの信号が複数のセンサ装置(センサ装置S_node1、センサ装置S_node3)で受信されていることが分かる。
【0121】
図7の領域R2では、包絡線データは観測できるが、電波の減衰や干渉等の原因で、対応するヘッダデータが観測されていないことが分かる。
【0122】
図7の領域R3では、1つの信号が複数のセンサ装置(センサ装置S_node1、センサ装置S_node2)で受信されているが、一方のセンサ装置S_node2では、正しく復調されていないことが分かる。これは、例えば、センサ装置の位置が異なると、受信強度が異なることが原因であると推測される。
【0123】
図7の領域R4では、センサ装置S_node1が時刻t1~t2で取得したヘッダデータ(Data(A->B))から、時刻t1~t2において、通信機器A(
図1の通信機器RbtAに対応する通信機器)から通信機器B(
図1の通信機器RbtBに対応する通信機器)に対してデータが送信されたことが分かる。そして、時刻t2に後続する期間(例えば、時刻t3~t4の期間)において、通信機器Bから通信機器Aに対してAckが送信されることが予想されるが、当該Ackは送信されていないことが分かる。
【0124】
図7の領域R4において、センサ装置S_node2が取得した包絡線データを見ると、時刻t1~t2の期間の途中から信号強度が大きくなっていることが分かる。これは、通信機器Aからの信号に対し干渉となるノイズが重畳されていると推測できる。つまり、この干渉となるノイズの影響で、時刻t1~t2の期間において、通信機器Aから通信機器Bに対して送信された信号が正しく復調されなかったと推測できる。
【0125】
このようにして、無線品質分析装置100が取得した分析結果データDa_rstにより、通信エラーの原因等を特定することができる。
【0126】
そして、無線品質分析装置100が取得した分析結果データDa_rstを用いて、以下のような対策を行い、無線品質の向上を実現させることができる。
(1)例えば、フレームロスの原因が干渉波によるものであるならば、干渉波の原因となる機器を特定し、その機器の位置の変更や通信に使用する周波数を変更するなどの対策を行う。
(2)例えば、フレームロスの原因が信号強度の不足によるものであるならば、送信側と受信側との距離を近づける、あるいは、送信側の送信電力を強くするなどの対策を行う。
【0127】
以上のように、無線品質監視システム1000では、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを各センサ装置から収集し、単一(同一)の時間軸によるデータ分析を行うことができるので、包絡線データ、あるいは、ヘッダデータの単独の分析では特定できない無線品質の劣化の原因を適切に特定することができる。したがって、無線品質監視システム1000では、精度の高い無線品質の監視を行うことができる。
【0128】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について、説明する。
【0129】
なお、上記実施形態と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0130】
第2実施形態の無線品質監視システムでは、無線品質監視の精度が十分でないと判断した場合、センサ装置に対して、包絡線データの再生成要求を行い、より精度の高い包絡線データを取得し、無線品質の精度を確保する。つまり、第2実施形態の無線品質監視システムでは、無線品質監視の精度と、包絡線データのデータ量とを調整することで、包絡線データのデータ量を抑制しつつ、無線品質監視の精度を確保する。
【0131】
<2.1:無線品質監視システムの構成>
図8は、第2実施形態に係る無線品質監視システム2000の概略構成図である。
【0132】
図9は、第2実施形態に係る無線品質分析装置100Aの概略構成図である。
【0133】
図10は、第2実施形態に係るセンサ装置SA_node1の概略構成図である。
【0134】
第2実施形態の無線品質監視システム2000は、第1実施形態の無線品質監視システム1000において、無線品質分析装置100を無線品質分析装置100Aに置換し、センサ装置S_node1、S_node2、S_node3を、それぞれ、センサ装置SA_node1、SA_node2、SA_node3に置換した構成を有する。
【0135】
無線品質分析装置100Aは、無線品質分析装置100において、第1通信処理部11を第1通信処理部11Aに置換し、分析部15を分析部15Aに置換した構成を有している。
【0136】
第1通信処理部11Aは、第1通信処理部11の同様の機能を有しており、さらに、分析部15Aから出力される、センサ装置xに対して包絡線データの再生成を要求する信号Req(x)を入力する。なお、要求信号Req(x)は、センサ装置xに対して包絡線データを取得する期間を特定する情報を含む。また、要求信号Req(x)は、センサ装置xに対して包絡線データを取得する方法を特定する情報を含むものであってもよい。
【0137】
そして、第1通信処理部11Aは、要求信号Req(x)を第1通信インターフェース16およびネットワークを介して、センサ装置(センサ装置x)に送信する。
【0138】
分析部15Aは、分析部15の機能に加えて、各センサ装置から収集した包絡線データおよびヘッダデータの分析結果から、無線品質分析の精度が確保されていないと判断した場合、包絡線データを再要求するセンサ装置xを特定し、特定したセンサ装置xに対して、包絡線データの再取得を要求する信号Req(x)を生成する。そして、分析部15Aは、生成した要求信号Req(x)を第1通信処理部11Aに出力する。
【0139】
そして、第1通信処理部11Aは、分析部15Aからの要求信号Req(x)をセンサ装置xに、第1通信インターフェース16およびネットワークを介して、送信する。
【0140】
センサ装置SA_node1は、
図10に示すように、センサ装置S_node1において、包絡線データ取得部24を包絡線データ取得部24Aに置換し、データ中継部26をデータ中継部26Aに置換し、第2通信インターフェース27を第2通信インターフェース27Aに置換し、さらに、記憶部Strg1と、包絡線データ再生成要求処理部28とを追加した構成を有している。
【0141】
包絡線データ取得部24Aは、包絡線データ取得部24と同様の機能を有している。包絡線データ取得部24Aは、第1実施形態の包絡線データ取得部24で取得される包絡線データよりもさらにデータ量を削減した包絡線データを取得する。
【0142】
データ中継部26Aは、データ中継部26の機能と同様の機能を有している。データ中継部26Aは、データ中継部26において、さらに、IQデータ取得部23から出力されるデータD1_IQを入力する。そして、データ中継部26Aは、入力したデータD1_IQの各IQサンプルのデータと当該データの取得時刻のデータを組にしたデータD1A_IQを生成し、生成したデータD1A_IQを記憶部Strg1に出力する。
【0143】
記憶部Strg1は、データ中継部26Aから出力されるデータD1A_IQ(IQサンプルデータ)を記憶する。記憶部Strg1は、例えば、リングバッファ機構を有しており、データ中継部26Aから出力されるデータD1A_IQを、その記憶容量が許す限り記憶し、記憶容量が超えた場合、最も古いデータを削除し、新しいデータを記憶する。また、記憶部Strg1は、包絡線データ再生成要求処理部28の読み出し要求に従い、記憶しているデータ(IQサンプルデータ)をデータD2_IQとして、包絡線データ再生成要求処理部28に出力する。
【0144】
第2通信インターフェース27Aは、第2通信インターフェースと同様の機能に加えて、無線品質分析装置100から送信される、センサ装置SA_node1宛ての要求信号Req(SA_node1)を受信し、受信した要求信号を要求信号Req1として、包絡線データ再生成要求処理部28に出力する。また、第2通信インターフェース27Aは、包絡線データ再生成要求処理部28から出力されるデータD2_envを入力し、当該データD2_envを、ネットワークを介して、無線品質分析装置100Aに送信する。
【0145】
包絡線データ再生成要求処理部28は、第2通信インターフェース27Aから、包絡線データの再生成を要求する信号Req1(要求信号Req1)を受信すると、当該要求信号Req1に従い、包絡線データを再生成(再取得)する。具体的には、包絡線データ再生成要求処理部28は、記憶部Strg1から包絡線データを再生成に必要なIQサンプルデータをデータD2_IQとして取得し、取得したデータから包絡線データを再生成する。そして、包絡線データ再生成要求処理部28は、再生成した包絡線データをデータD2_envとして、第2通信インターフェース27Aに出力する。
【0146】
<2.2:無線品質監視システムの動作>
以上のように構成された無線品質監視システム2000の動作を以下説明する。
【0147】
なお、第1実施形態と同様の部分については、説明を省略する。また、センサ装置SA_node1、センサ装置SA_node2、および、センサ装置SA_node3で実行される処理は同様であるため、センサ装置SA_node1で実行される処理について以下説明する。
【0148】
包絡線データ取得部24Aは、包絡線データのデータ量を第1実施形態のときよりもさらに削減するために、第2モードによる包絡線データ取得方法により、包絡線データを取得する。なお、第1実施形態における包絡線データ取得部24での包絡線データの取得方法(
図5を用いて説明した方法)を第1モードによる包絡線データ取得方法とする。
【0149】
図11は、第2モードによる包絡線データ取得方法を説明するための図である。
図11の上図にデータD1_env_allを、
図11の下図に第2モードにより取得した包絡線データD1_envを、時間軸を一致させて示している。
【0150】
第2モードによる包絡線データ取得方法において、包絡線データ取得部24Aは、第1モードの包絡線データ取得方法により取得される信号強度Sの時系列データに対して、強度閾値Th1以上の信号強度を持つ連続したデータの集合について、その開始時点の時刻と継続時間との組で包絡線を表現する。例えば、
図11の上図のデータD1_env_allから、信号強度Sが閾値Th1以上のデータが連続する期間を特定し、特定した当該期間の開始時刻tkと当該期間の継続時間dkとを取得し、包絡線データとする。つまり、第2モードの包絡線データ取得方法では、以下のデータ形式により包絡線データD1_envを取得する。
D1_env={(t1,d1),(t2,d2),・・・}
上記により、第2モードの包絡線データ取得方法により取得されたデータD1_envは、信号強度が所定の期間において、閾値Th1以上であることと、その継続時間の情報のみを有するデータで構成されているため、第1モードの包絡線データ取得方法に比べて、そのデータ容量をかなり削減することができる。
【0151】
そして、センサ装置SA_node1では、第1実施形態と同様の処理により、第2モードの包絡線データ取得方法で取得された包絡線データが、無線品質分析装置100Aに送信される。
【0152】
無線品質分析装置100Aの分析部15Aは、センサ装置SA_node1により、第2モードの包絡線データ取得方法により取得された包絡線データのより無線品質の監視を行う。そいて、監視の結果、センサ装置SA_node1から、より精度の高い包絡線データを取得する必要があると判断した場合、分析部15Aは、センサ装置SA_node1に対して、包絡線データの再生成を要求する要求信号Req(SA_node1)を生成する。第1通信処理部11Aは、上記の要求信号Req(SA_node1)を含む送信データを、第1通信インターフェース16、ネットワークを介して、センサ装置SA_node1に送信する。
【0153】
第2通信インターフェース27Aは、無線品質分析装置100から送信される、センサ装置SA_node1宛ての要求信号Req(SA_node1)を受信し、受信した要求信号を要求信号Req1として、包絡線データ再生成要求処理部28に出力する。
【0154】
包絡線データ再生成要求処理部28は、第2通信インターフェース27Aから、包絡線データの再生成を要求する信号Req1(要求信号Req1)を受信すると、当該要求信号Req1に従い、包絡線データを再生成(再取得)する。
【0155】
具体的には、包絡線データ再生成要求処理部28は、要求信号Req1から再取得すべき期間を特定し、特定した期間において、記憶部Strg1から包絡線データを再生成に必要なIQサンプルデータをデータD2_IQとして取得し、取得したデータから包絡線データを再生成する。このとき包絡線データ再生成要求処理部28は、第2モードの包絡線データ取得方法よりも精度の高い第1モードの包絡線データ取得方法(第1実施形態で説明した方法、
図5を用いて説明した方法)により包絡線データを取得(再生成)する。
【0156】
そして、包絡線データ再生成要求処理部28は、再生成した包絡線データをデータD2_envとして、第2通信インターフェース27Aに出力する。
【0157】
第2通信インターフェース27Aは、包絡線データ再生成要求処理部28から出力されるデータD2_envを、ネットワークを介して、無線品質分析装置100Aに送信する。
【0158】
無線品質分析装置100Aは、センサ装置SA_node1により再生成(再取得)されたより精度の高い包絡線データを受信し、当該包絡線データを用いて、無線品質の監視、分析を行う。
【0159】
以上のように、無線品質監視システム2000では、一般にデータ量が膨大となる包絡線データを効率良く削減することで、データ転送やデータ保存の際の通信帯域やストレージ容量が圧迫されることを効率的に防止することができる。また、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを各センサ装置から収集し、単一(同一)の時間軸によるデータ分析を行うことができるので、包絡線データ、あるいは、ヘッダデータの単独の分析では特定できない無線品質の劣化の原因を適切に特定することができる。
【0160】
さらに、無線品質監視システム2000では、無線品質の分析の結果、より精度の高い包絡線データが必要となった場合、当該包絡線データを取得したセンサ装置に対して、より精度の高い包絡線データを再取得させ、当該より精度の高い包絡線データを用いて、より精度の高い無線品質の分析を行うことができる。
【0161】
このように、無線品質監視システム2000では、包絡線データとヘッダデータとの両方のデータを考慮し、扱うデータ量が膨大になることを抑制しつつ精度の高い無線品質の監視、分析を行うことができる。
【0162】
なお、上記では、包絡線データ取得部24Aで実行される包絡線データのデータ量を削減する方法として、第2モードの包絡線データ取得方法を説明したが、これに限定されることはなく、例えば、他の方法により包絡線データのデータ量を削減してもよい。
【0163】
ここで、包絡線データを削減しながら、包絡線データを取得する方法として、第3モードによる包絡線データ取得方法と、第4モードによる包絡線データ取得方法とについて、説明する。
【0164】
≪第3モードによる包絡線データ取得方法≫
図12は、第3モードによる包絡線データ取得方法を説明するための図である。
図12の上図にデータD1_env_allを、
図12の下図に第3モードにより取得した包絡線データD1_envを、時間軸を一致させて示している。
【0165】
第3モードによる包絡線データ取得方法では、あらかじめ、タイムスロット幅Twを設定しておく。そして、第3モードによる包絡線データ取得方法では、時間をタイムスロット幅Twで連続的に分割し、タイムスロットごとに、第1モードで取得されるデータの集合についての信号強度の最大値、平均値、最小値を計算する。そして、タイムスロットの開始時点での時刻と、そのタイムスロットでの信号強度の最大値、平均値、最小値の組で包絡線データを表現する。
【0166】
図12の場合では、タイムスロット幅Twが3サンプル期間に相当する期間であり、タイムスロットTk(k:自然数)において、タイムスロットTkの開始時点での時刻tkと、そのタイムスロットでの信号強度の最大値pkmax、平均値pkave、最小値pkminの組で包絡線データが表現される。
【0167】
そして、第3モードの包絡線データ取得方法では、以下のデータ形式により包絡線データD1_envを取得する。
D1_env={(t1,p1max,p1ave,p1min),(t2,p2max,p2ave,p2min),・・・}
なお、上記の包絡線データD1_envの各要素に対応する継続時間は、タイムスロット幅Twにより決定される。
【0168】
上記のようにして、第3モードの包絡線データ取得方法により取得されたデータD1_envは、IQサンプルごとにデータを取得する場合に比べて、そのデータ容量をかなり削減することができる。
【0169】
≪第4モードによる包絡線データ取得方法≫
図13は、第4モードによる包絡線データ取得方法を説明するための図である。
図13の上図にデータD1_env_allを、
図13の下図に第4モードにより取得した包絡線データD1_envを、時間軸を一致させて示している。
【0170】
第4モードによる包絡線データ取得方法では、あらかじめ、強度差閾値Th2を設定しておく。そして、第4モードによる包絡線データ取得方法では、第1モードで取得される信号強度の時系列に対し、次の手続きを実行する。
【0171】
ある時点での信号強度を「a」とする。また、それ以前で最も近い過去において強度差閾値Th2を超える強度差を引き起こした信号強度を「b」とする。このとき、第4モードによる包絡線データ取得方法では、値aと値bとの差の絶対値が閾値Th2を超えるならば、値aの信号強度を持つIQサンプルの取得時刻が記録され、さらに、値bの新たな値として値aが記録される。そして、値aより後の信号強度で、はじめて値bとの差が強度差閾値Th2を超えるものが見つかれば、その時点までは、値aと同じ信号強度が継続したものとみなす。第4モードによる包絡線データ取得方法では、この手続きを繰り返すことで、包絡線データが表現される。
【0172】
図13の場合では、時刻t1において、信号強度の値aと値bとの値の差が閾値Th2を超え、その4サンプル区間後に、信号強度の値aと値bとの値の差が閾値Th2を超える。
【0173】
したがって、
図13の下図に示すように、時刻t1から4サンプル区間において、その値が信号強度p1で維持されるデータが取得される。つまり、
図13の下図の一番左端の矩形に相当するデータが取得される。同様にして、
図13の下図に示す矩形に相当するデータが取得される。
【0174】
そして、第4モードの包絡線データ取得方法では、以下のデータ形式により包絡線データD1_envを取得する。
D1_env={(t1,d1,p1),(t2,d2,p2),(t3,d3,p3),・・・}
tk:サンプルの取得時刻
dk:継続時間
pk:信号強度
上記のようにして、第4モードの包絡線データ取得方法により取得されたデータD1_envは、IQサンプルごとにデータを取得する場合に比べて、そのデータ容量をかなり削減することができる。
【0175】
なお、包絡線データ取得部24A、および/または、包絡線データ再生成要求処理部28は、上記で説明した複数のモードの包絡線データ取得方法により、包絡線データを取得するものであってもよい。この場合、例えば、無線品質分析装置100Aからセンサ装置へ、包絡線データ取得部24A、および/または、包絡線データ再生成要求処理部28で実行する包絡線データの取得方法を指定する信号を送信し、当該信号により決定されるモードの包絡線データ取得方法により、センサ装置の包絡線データ取得部24A、および/または、包絡線データ再生成要求処理部28が、包絡線データを取得してもよい。
【0176】
≪第1変形例≫
次に、第2実施形態の第1変形例について、説明する。
【0177】
なお、上記と同様の部分については、同一符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0178】
図14は、第2実施形態の第1変形例のセンサ装置SB_node1の概略構成図である。
【0179】
第2実施形態の第1変形例は、第2実施形態において、センサ装置を
図14に示す構成のセンサ装置に置換した点が相違する。それ以外については、第2実施形態の第1変形例は、第2実施形態と同様である。
【0180】
センサ装置SB_node1は、センサ装置SA_node1において、データ中継部26Aをデータ中継部26Bに置換した構成を有している。それ以外については、データ中継部26Aは、データ中継部26Bと同様である。
【0181】
データ中継部26Bは、外部から、データD1_IQの記憶部Strg1への記録を停止させる指令cmd_stopを入力する。そして、データ中継部26Bは、指令cmd_stopが入力された場合、データD1_IQの記憶部Strg1への記録を停止させる。
【0182】
なお、指令cmd_stopは、例えば、センサ装置SB_node1に設けられたスイッチ等をユーザが押下することで、データ中継部26Bに入力されるものであってもよいし、無線品質分析装置100Aからセンサ装置SB_node1に、指令cmd_stopを含むデータを送信し、第2通信インターフェースから、データ中継部26Bに入力されるものであってもよい。
【0183】
めったに起こらない状況が原因で、無線品質が劣化している場合、その原因の特定が一般に困難である。このような場合、当該状況が起きたときに、無線品質劣化の原因を調べるために、当該状況が起きた直近のIQサンプルデータを解析することで、上記状況での無線品質を劣化させている原因を突き止めることができる可能性が高くなる。
【0184】
本変形例では、上記のような、無線品質を劣化させる、めったに起こらない状況が発生したときに、センサ装置SB_node1に対して、IQサンプルデータの記録を停止させる指令cmd_stopを出力し、これ以上、IQサンプルデータが記憶部Strg1(リングバッファ機構を有する記憶装置)に記憶され、IQサンプルデータが書き換えられる(更新される)ことを防止する。これにより、本変形例の無線品質監視システムでは、上記のような、めったにおきない状況が原因で無線品質が劣化している場合の原因を特定する可能性を高めることができる。
【0185】
[他の実施形態]
上記実施形態(変形例を含む)では、無線品質監視システムが
図1の構成の場合を例に説明したが、無線品質監視システムの構成は、上記(
図1等)に限定されるものではなく、センサ装置の位置、数等は、上記以外のものであってもよい。また、上記では、センサ装置が、通信機器とは別個に存在している場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、通信機器がセンサ装置を含む、あるいは、付加されたものであってもよい。
【0186】
また、上記実施形態(変形例を含む)において、NTP、PTP等のプロトコルにより、無線品質分析装置、センサ装置の時刻同期処理を行うマスターサーバ機能を、無線品質分析装置に持たせる場合について説明したが、これに限定されることはなく、例えば、時刻同期処理を行うマスターサーバを、別途、設けるようにしてもよい。
【0187】
また、上記実施形態(変形例を含む)の無線品質分析装置とセンサ装置とは、無線により通信する場合、センサ装置のアンテナを用いて、無線品質分析装置とセンサ装置とが通信するようにしてもよい。
【0188】
また、上記実施形態(変形例を含む)で説明した無線品質監視システムにおいて、各ブロックは、LSIなどの半導体装置により個別に1チップ化されても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。
【0189】
なお、ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0190】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサーを利用しても良い。
【0191】
また、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、プログラムにより実現されるものであってもよい。そして、上記各実施形態の各機能ブロックの処理の一部または全部は、コンピュータにおいて、中央演算装置(CPU)により行われる。また、それぞれの処理を行うためのプログラムは、ハードディスク、ROMなどの記憶装置に格納されており、ROMにおいて、あるいはRAMに読み出されて実行される。
【0192】
また、上記実施形態の各処理をハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェア(OS(オペレーティングシステム)、ミドルウェア、あるいは、所定のライブラリとともに実現される場合を含む。)により実現してもよい。さらに、ソフトウェアおよびハードウェアの混在処理により実現しても良い。
【0193】
また、例えば、上記実施形態(変形例を含む)の各機能部を、ソフトウェアにより実現する場合、
図15に示したハードウェア構成(例えば、CPU、ROM、RAM、入力部、出力部等をバスBusにより接続したハードウェア構成)を用いて、各機能部をソフトウェア処理により実現するようにしてもよい。
【0194】
また、上記実施形態における処理方法の実行順序は、必ずしも、上記実施形態の記載に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えることができるものである。
【0195】
前述した方法をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム及びそのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明の範囲に含まれる。ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、大容量DVD、次世代DVD、半導体メモリを挙げることができる。
【0196】
上記コンピュータプログラムは、上記記録媒体に記録されたものに限られず、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク等を経由して伝送されるものであってもよい。
【0197】
なお、本発明の具体的な構成は、前述の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更および修正が可能である。
【符号の説明】
【0198】
1000、2000 無線品質監視システム
100、100A 無線品質分析装置
13 包絡線データ収集部
14 ヘッダデータ収集部
15、15A 分析部
S_node1、S_node2、S_node3、SA_node1、SA_node2、SA_node3、SB_node1 センサ装置
Ant1 アンテナ
21 RF処理部
22 同期用時刻管理部
23 IQデータ取得部
24、24A 包絡線データ取得部
25 ヘッダデータ取得部
26、26A,26B データ中継部
28 包絡線データ再生成要求処理部
Strg1 記憶部