(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】樹脂成型品の成型良否判定方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20220930BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20220930BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20220930BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/14
B29C33/12
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2018197799
(22)【出願日】2018-10-19
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】枝廣 和憲
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 伸光
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】森 昌之
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101393(JP,A)
【文献】特開2009-298033(JP,A)
【文献】特開2009-137073(JP,A)
【文献】特開2001-347536(JP,A)
【文献】特開昭56-155539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め成型された複数の一次成型部品同士を、成型型内で型締めした状態で前記一次成型部品の接合部に設けられた二次樹脂充填路に二次樹脂を充填し一体に接合して形成された樹脂成型品の成型良否を判定する樹脂成型品の成型良否判定方法であって、
前記樹脂成型品には、前記成型型から取り出した後、除去される検査対象部が、除去のための切断部とされる連結部とともに含まれており、
前記成形型内において、前記二次樹脂充填路へ前記二次樹脂を注入する注入ゲートの下流側の端部
には、前記二次樹脂充填路から側方へ外れて突出し、前記二次樹脂充填路に連通した検査対象部用キャビティが連結部用キャビティを介して設けられており、該検査対象部用キャビティの底部には、前記二次樹脂の温度及び前記二次樹脂にかかる圧力のうち、少なくともいずれか一方を測定する測定部が露出するように配されており、
前記測定部によって、前記二次樹脂の温度及び前記二次樹脂にかかる圧力のうち、少なくともいずれか一方を測定し、測定された測定値が、所定の条件でない場合、前記樹脂成型品を不良品と判定することを特徴とする樹脂成型品の成型良否判定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記測定値は前記二次樹脂の温度であって、前記所定の条件は、測定された最も高い前記温度が所定の温度帯内であることを特徴とする樹脂成型品の成型良否判定方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記測定値が圧力であって、所定の圧力条件は、前記二次樹脂を前記
二次樹脂充填路に充填した後、保圧状態における圧力の低下速度が、所定の管理範囲内であることを特徴とする樹脂成型品の成型良否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め成型された複数の一次成型部品同士を、成型型内で型締めした状態で二次成型用の溶融樹脂である二次樹脂を充填し一体に接合して形成された樹脂成型品の成型良否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成型品の製造方法としては、例えば予め成型された2つの半管状部品を成型型内に配し、成型型を型締めした状態で、2つの半管状部品の接合部に形成された二次樹脂充填路に二次樹脂を充填し、半管状部品同士を接合して形成されたものが知られている。
このような製造方法の場合、二次樹脂充填路から樹脂成型品の中空部内へ樹脂漏れが発生することがあるが、この場合、完成した樹脂成型品が不良品であっても、外観からはわかりにくいことが問題となる。
そこで、このような中空成型品の成型良否の判定方法としては下記特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された成型良否判定方法では、圧力センサを二次成型における二次樹脂の注入ゲートの上流側と、金型の凹部近傍とに配置し、注入ゲートの直前の樹脂圧力と、注入ゲートを通過する直後の樹脂圧力とを検知できるようにしている。
しかし、この場合、最も二次樹脂の温度や圧力が低下すると予想される二次樹脂の下流側の状態が検知できず、二次樹脂充填路の全域に良好な状態で二次樹脂が行き渡っているといえるか判定し難い。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、より精度の高い品質管理を可能とした樹脂成型品の成型良否判定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る樹脂成型品の成型良否判定方法は、予め成型された複数の一次成型部品同士を、成型型内で型締めした状態で前記一次成型部品の接合部に設けられた二次樹脂充填路に二次樹脂を充填し一体に接合して形成された樹脂成型品の成型良否を判定する樹脂成型品の成型良否判定方法であって、前記樹脂成型品には、前記成型型から取り出した後、除去される検査対象部が、除去のための切断部とされる連結部とともに含まれており、前記成形型内において、前記二次樹脂充填路へ前記二次樹脂を注入する注入ゲートの下流側の端部には、前記二次樹脂充填路から側方へ外れて突出し、前記二次樹脂充填路に連通した検査対象部用キャビティが連結部用キャビティを介して設けられており、該検査対象部用キャビティの底部には、前記二次樹脂の温度及び前記二次樹脂にかかる圧力のうち、少なくともいずれか一方を測定する測定部が露出するように配されており、前記測定部によって、前記二次樹脂の温度及び前記二次樹脂にかかる圧力のうち、少なくともいずれか一方を測定し、測定された測定値が、所定の条件でない場合、前記樹脂成型品を不良品と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る樹脂成型品の成型良否判定方法は、上述の構成としたことで、より精度の高い品質管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成型品の成型良否判定方法を説明するための説明図であり、樹脂成型品を模式的に示した概略平面図及びブロック図である。
【
図2】(a)は同樹脂成型品の概略側面図であり、(b)は
図1におけるY-Y線矢視に対応させた概略断面図である。
【
図3】(a)は
図1におけるX-X線矢視に対応させた概略分解断面図であり、(b)は同樹脂成型品の二次成型の工程を説明するための模式的概略断面図である。
【
図4】同樹脂成型品の成型良否判定方法における測定値(二次樹脂の温度)の所定の条件を説明するためのグラフである。
【
図5】同樹脂成型品の成型良否判定方法における測定値(二次樹脂にかかる圧力)の所定の条件を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、一部の図では、他図に付している符号の一部を省略している。
本実施形態における樹脂成型品の成型良否判定方法は、予め成型された複数の一次成型部品10,20同士を、成型型内で型締めした状態で一次成型部品10,20の接合部13,23に設けられた二次成型用樹脂通路となる二次樹脂充填路7に二次成型用の溶融樹脂である二次樹脂4を充填し一体に接合して形成された樹脂成型品1の成型良否を判定することができる。
具体的には、二次樹脂4を注入する注入ゲート3の下流側の端部に設けられた検査対象部30において、前記二次樹脂4の温度及び前記二次樹脂4にかかる圧力のうち、少なくともいずれか一方を測定部S1,S2によって測定し、その測定値が、所定の条件でない場合、樹脂成型品1を不良品と判定する。以下、詳述する。
【0010】
<樹脂成型品>
本実施形態では、成型良否の判定対象となる樹脂成型品1として、管状体をなす樹脂成型品を成型する場合を例に説明する。樹脂成型品1は、一次成型部品であり中空部2(
図2(b)参照)を区画する第1半管状部10と第2半管状部20とが二次樹脂4によって接合されて形成されている。
【0011】
樹脂成型品1を構成する第1半管状部10及び第2半管状部20並びに二次樹脂4に用いられる合成樹脂しては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂でもよく、例えば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂でもよい。また、合成樹脂としては、種々の添加剤が添加されたものでもよく、また、例えば、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂でもよい。また、樹脂成型品1は、主として合成樹脂製であればよく、上記のようにインサート成形等によって一部に金属製の部材を含んだ構成とされたものでもよい。本実施形態の良否判定方法は、図例の樹脂成型品1のように、中空部2内で樹脂漏れが発生したり、二次樹脂の溶着不良の発生等、完成した製品の外観からは、不良品であることはわかり難い樹脂成型品の成型良否判定方法として用いられる。中でも、第1半管状部10及び第2半管状部20を一次成型品としてそれぞれ成形した後に、成型型をスライドもしくは回転させ、上記した二次樹脂充填路7に二次樹脂4を充填して成形する、いわゆるDSI(ダイスライドインジェクション)成形やDPI(ダイロータリーインジェクション)成形の二次成型時に好適に用いられる。
【0012】
図例の樹脂成型品1は、気体や液体等の種々の流体を流通させる管路として配設されるものでもよい。例えば、樹脂成型品1としては、エンジン冷却水管やインテークマニホールド等として自動車等の車両に用いられるものでもよい。また、樹脂成型品1は、このような車両用に限られず、例えば、ガス等の設備機器や、水回り設備機器の配管等として用いられるものでもよい。
【0013】
樹脂成型品1の中空部2は、流体の流路方向(軸方向)両端において開口しており、
図1(b)に示すように、軸方向途中部位において屈曲(湾曲)した形状とされている。すなわち、図例では、樹脂成型品1を、直管(ストレート管)状とされた軸方向中央側部位の両端に、屈曲部を設けた構成とした例を示している。また、樹脂成型品1の軸方向両端の開口を、直管(ストレート管)状部位の軸方向に対して直交し、かつ互いに同方向に向けて開口させた構成とした例を示している。
【0014】
一次成型品である第1半管状部10は、直管状とされた第1半管本体部11と、屈曲した屈曲部12と、両端部に取付対象に固定されるフランジ部15,15とを有し、第1半管本体部11及び屈曲部12は略半円筒状とされている。また一次成型品である第2半管状部20は、直管状とされた第2半管本体部21と、屈曲した屈曲部22とを有しており、第2半管本体部21及び屈曲部22は略半円筒状とされている。具体的には、
図3(a)に示すように第1半管状部10の第1半管本体部11及び屈曲部12と、第2半管状部20の第2半管本体部21及び屈曲部22とは、略真円状の円筒を略二等分の半割状に分割されており、これらが接合された状態では、
図3(b)に示すように、略円筒形状とされている。また、上記のように両端側が屈曲された樹脂成型品1の屈曲部の入隅側部位を構成するように第1半管状部10の屈曲部12が設けられ、樹脂成型品1の屈曲部の出隅側部位を構成するように第2半管状部20の屈曲部22が設けられている。
【0015】
また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、これら第1半管状部10及び第2半管状部20の周方向両縁部には、互いに向き合う方向に開口し、溝長手方向に見て略方形状の二次樹脂充填路7を区画する接合部13,13,23,23が軸方向に延びるようにかつ径方向に突出するように設けられている。これら接合部13,13は、第1半管本体部11及び屈曲部12の軸方向の全長に亘って、接合部23,23は、第2半管本体部21及び屈曲部22の軸方向の全長に亘って設けられている。また、
図3(b)に示すようにこれら接合部13,13,23,23が突き合わせられて形成される二次樹脂充填路7,7に、二次樹脂4が充填されて樹脂成型品1の周方向両側が接合される。
また、第1半管状部10及び第2半管状部20の周方向の縁部を構成する内側溝壁には、互いに係合して位置ずれや二次樹脂4の中空部2内への漏れを抑制する係合溝10a及び係合突部20aが設けられている。係合溝10aは、第2半管状部20の周方向の縁部に向けて開口し軸方向に延びるように形成され、係合突部20aは、第1半管状部10の周方向の縁部に向けて突出し軸方向に延びるように形成されている。
【0016】
第1半管状部10の軸方向両端部のフランジ部15,15は、樹脂成型品1の軸方向両端の開口を区画し、これら両端の開口方向に厚さ方向を沿わせた板状とされている。図例では、これらフランジ部15,15の厚さ方向両面となる取付対象側に向く取付対象側面及び反取付対象側に向く反取付対象側面を互いに略同一平面状とした例を示している(
図2(a)参照)。
フランジ部15は、
図1及び
図2(a),(b)に示すように、径方向に突出する鍔状とされている。図例では、このフランジ部15を、厚さ方向に見て楕円形状とした例を示しているが、真円状や多角形状等としてもよい。また、このフランジ部15の厚さ寸法は、互いに同厚さとされた第1半管本体部11,第2半管本体部21及び屈曲部12,22の厚さ寸法よりも大とされている。
【0017】
図2(b)示すように、フランジ部15には、二次樹脂充填路7に二次樹脂4を充填するための第2の二次樹脂充填路19を設けた構成としており、第2の二次樹脂充填路19を、フランジ部15の反取付対象側面において開口する溝状とした例を示している。なお、図例では、第2の二次樹脂充填路19を、溝長手方向に見て方形溝状とした例を示しているが、台形溝状としたり、U字溝状としたりしてもよい。
【0018】
第1半管状部10と第2半管状部20と接合するための二次樹脂4は、
図3(b)に示すように、第1成型型101と第2成型型102で構成された成型型100内に、予め成型された第1半管状部10及び第2半管状部20を配し、成型型100を型締めした状態で、樹脂供給路となる注入ゲート3(
図1、
図2(b)参照)を介して二次樹脂充填路7に充填される。
注入ゲート3,3は、第1半管状部10及び第2半管状部20の長手方向における両端部1a,1a(
図1参照:図例ではフランジ部15の縁部)に設けられているが、注入ゲート3の設置位置は特に図例に限定されない。例えば第1半管状部10及び第2半管状部20の長手方向における両端部1a,1aのいずれか一方でもよいし、第1半管状部10及び第2半管状部20の長手方向における中央位置であってもよい。また図例では注入ゲート3が2ヵ所設けられた例を示しているが、2ヵ所以上でもよく、樹脂成型品1の大きさ、形状等によって適宜設定される。
注入ゲート3,3を
図1に示すように第1半管状部10及び第2半管状部20の長手方向両端部1a,1aに設けた場合、これら注入ゲート3,3から二次樹脂4を注入し充填すれば、注入ゲート3と接続された第2の二次樹脂充填路19を通じ二次樹脂充填路7の全域に二次樹脂4を行き渡らせることができ、効率がよい。
【0019】
注入ゲート3から注入される二次樹脂4の樹脂流れ方向(
図1における白抜矢印方向)の下流側の端部には、検査対象部30が設けられている。本実施形態の検査対象部30は、両端部1a,1aから充填される二次樹脂4が合流する位置、すなわち、第1半管状部10及び第2半管状部20の長手方向における中央位置に設けられる。検査対象部30は、接合部13,23から第1半管状部10及び第2半管状部20の長手方向中央位置の幅方向に突出した連結部31を介して繋がっている。
図3(b)に示すように第1成型型101には、検査対象部30を形成するキャビティ103と、連結部31を形成するキャビティ104とを備えている。よって、両端部1a,1aから注入ゲート3を介して注入された二次樹脂4は、二次樹脂充填路7を通じ、二次樹脂充填路7の近傍にある第1成型型101に設けられた連結部31を形成するキャビティ104に流れ込んだ後、検査対象部30を形成するキャビティ103に辿りつき、二次樹脂4は、キャビティ103,104内に充填される。そしてこのときの検査対象部30を形成するキャビティ103に充填される二次樹脂4の温度、圧力を測定部S1,S2で測定するように構成されている。
【0020】
検査対象部30と連結部31とは、
図1及び
図2(a)で点線で示しているように、樹脂成型品1が完成したときには、不要な部位であるので、成型型100から取り出した後、除去されるものとしてもよい。よって、その場合は、連結部31はカットし易いように
図1に示すように細長の棒状に形成されることが望ましい。また
図3(b)に示すように検査対象部30を形成するキャビティ103の底部103aには、露出した状態で測定部S1(S2)が設けられている。この検査対象部30に設けられる測定部S1,S2としては、温度センサや圧力センサ等が採用され、
図1に示すように測定部S1,S2は、CPU32aや判定部32b等を備えた制御装置32と接続されている。また図例の制御装置32には、測定部S1,S2で測定された測定値をグラフ化するなど、表示する表示部を備えたモニター33が接続されている。CPU32aは、測定部S1,S2での測定情報や判定部32bを制御する共通制御ブロックである。判定部32bは、測定部S1,S2の測定値に基づいて、所定の条件でない場合、樹脂成型品1を不良品(異常)と判定を行う。
【0021】
図例のように成型型100の接合に影響の少ない位置に測定部S1,S2が設けられているので、充填される二次樹脂4の状態を正確に測定することができ、精度の高い樹脂成型品1の成型良否判定を行うことができる。具体的な成型良否の判定方法についても後述する。
なお、
図1及び
図2(a)では説明のため、離型後の検査対象部30に測定部S1,S2が設けられているように示しているが、実際は成型型100内等に測定部S1,S2が設けられるので、離型後の樹脂成型品1の一部として測定部S1,S2が残存するものではない。また測定部S1,S2の測定情報等を表示するモニター33にかえて、判定部32bで不良品発生と判定した場合、ランプを点灯させたり、警報音を鳴動させるような警報部であってもよい。
【0022】
測定部S1,S2は同種センサを複数設けて、測定値の精度向上を図ってもよいし、異種類のセンサを複数設けて、複合的に監視し成型良否の判定を行うようにしてもよい。もちろん、いずれかのセンサを単体で設けても良く、例えば温度センサのみ、圧力センサのみとしてもよい。温度センサとしては、例えば各種金属からなる測温抵抗体やリニア抵抗器、サーミスタ等を採用してもよい。圧力センサとしては、例えばダイヤフラムを介して圧力を感圧素子で計測するものとしてもよい。
【0023】
<樹脂成型品の成型良否判定方法>
次に上述のような樹脂成型品1において、二次成型の製造過程の中に樹脂成型品の成型良否を判定する判定方法について説明する。
予め成型された第1半管状部10及び第2半管状部20同士を、第1成型型101及び第2成型型102のそれぞれに配置し、型締めした状態で第1半管状部10及び第2半管状部20の接合部13,23に設けられた二次樹脂充填路7に二次樹脂4を充填し一体に接合する。この二次樹脂4の充填開始に伴い、モニター33を通じて二次樹脂4の温度及び二次樹脂4にかかる圧力のうち、少なくともいずれか一方を測定部S1,S2によって測定する。そして、測定部S1,S2で測定された測定値が、所定の条件であるか否かを判定部32bで判定し、樹脂成型品1を成型良否判定する。測定部S1,S2では、温度のみを測定してもよいし、圧力のみを測定してもよく、さらには温度と圧力の両方を測定して両方の測定値から成型良否の判定を行うようにしてもよい。
【0024】
以上によれば、最も二次樹脂4の温度や二次樹脂4にかかる圧力が低下すると予想される注入ゲート3の下流側端部の状態を検査対象部で検知できるので、二次樹脂充填路7の全域に良好な状態で二次樹脂4が行き渡っているといえるか否かを判定することができる。二次樹脂4が行き渡りにくい下流側で異常がみつかれば、例えば、樹脂成型品1の中空部2内に樹脂漏れ等の異常が発生している可能性が高いといえる。この異常の可能性を測定部S1,S2での測定値に基づいて定量的に判定できるので、目視検査等に比べてより精度の高い品質管理が可能となる。また検査対象部30での測定値をモニター33等で監視すればよいので、成型良否の判定が容易である。さらに二次成型工程の中で不良品の判定ができるので、樹脂成型品1を離型した後、別途検査工程を設ける必要がない。
【0025】
以下では、測定部S1,S2で測定する対象を温度とした場合、圧力とした場合のそれぞれの所定条件について説明する。
<温度>
検査対象部30の測定部S1,S2において、二次樹脂4の温度を測定する場合、所定の条件としては、測定された最も高い温度が所定の温度帯内と判定部32bが判断した場合、良品と判定し、測定された最も高い温度が所定の温度帯外と判定部32bが判断した場合、不良品と判定する。
図4には、3パターンの二次樹脂4の温度変化をグラフにしたものである。正常時の温度変化を実線、異常時の温度変化を点線及び一点鎖線で示している。
所定の管理温度帯の具体的な数値は、二次樹脂4の材料特性によって異なり、二次樹脂4の温度帯が管理温度帯内であれば、二次樹脂4の溶着性に問題がないと判断できる温度帯が設定される。この温度設定は制御装置32で行う。
【0026】
以上によれば、二次樹脂4の溶着界面での溶着性を定量的に判定でき、注入ゲート3の下流側端部で測定された二次樹脂4の最も高い温度が所定の温度帯内でない場合、溶着性(接合性)に問題が生じている可能性があると判定することができる。例えば
図4に示すように測定部S1,S2での測定値が所定の温度帯より高い場合(点線参照)、樹脂そのものが熱分解され劣化し、所望の性能が得られないと判定できる。また
図4に示すように測定部S1,S2での測定値が所定の温度帯より低い場合(一点鎖線参照)、溶着品質に問題が生じ、所望の性能が得られないと判定できる。
【0027】
<圧力>
検査対象部30の測定部S1,S2において、二次樹脂4の圧力を測定する場合、所定の条件としては、二次樹脂4を二次樹脂充填路7に充填した後、保圧状態における圧力の低下速度が、所定の管理範囲内と判定部32bが判断した場合、良品と判定し、二次樹脂4を二次樹脂充填路7に充填した後、保圧状態における圧力の低下速度が、所定の管理範囲外と判定部32bが判断した場合、不良品と判定する。
図5には、正常時と異常時の2パターンの二次樹脂4の圧力変化をグラフにしたものである。正常時の圧力変化を実線、異常時の圧力変化を点線で示している。
【0028】
所定の管理範囲は、所定時間と所定の管理値(圧力値)とで設定され、
図5に示すように所定時間の間に所定の管理値に圧力の測定値が一旦圧力値が上昇した後に急激に低下しないかを判定する。
所定時間と所定の管理値(圧力)の具体的な数値は、二次樹脂4の材料特性によって異なるため、上述の条件に限定されるものではない。
図5では、注入ゲート3から収入された二次樹脂4が、二次樹脂充填路7、連結部31を通じて検査対象部30に行き渡る射出工程の後、保圧工程に入ってから所定時間の間に一旦上昇した圧力値が急激に低下しないかで判定する例を示している。ここに示すように正常時の場合は、射出工程を経て、保圧工程に入った後、急激に低下することはなく、保圧工程後、緩やかに低下していく。一方、異常時の場合は、射出工程を経て、保圧工程に入った後、急激に低下している。正常に二次樹脂4が二次樹脂充填路7に充填され、保圧されれば、このような圧力の急激な低下は生じ得ない。
【0029】
以上によれば、二次樹脂4にかかる圧力から樹脂漏れを定量的に判定でき、注入ゲート3の下流側端部で測定された二次樹脂にかかる圧力が、所定の管理範囲内でない場合、樹脂漏れ等が生じている可能性があると判定することができる。
【0030】
なお、本実施形態における樹脂成型品1の全体形状、構成は、図例に限定されるものではない。よって、第1半管状部10及び第2半管状部20の形状、構成、二次樹脂充填路7,第2の二次樹脂充填路19の形状、構成等も図例に限定されるものではない。例えば第1半管状部10の両端部にフランジ部15,15を設けた例を示しているが、いずれか一端部にのみフランジ部15を設けたものであってもよいし、フランジ部15に、取付対象に締結されるボルト等の締結具の挿通孔を設けた構成としてもよい。この場合は、フランジ部15に、適宜、インサート成形等によって埋込状に金属製の円筒状部材(カラー)を設けた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 樹脂成型品
2 中空部
4 二次樹脂
7 二次樹脂充填路
10 第1半管状部
20 第2半管状部
13,23 接合部
15 フランジ部
19 第2の二次樹脂充填通路