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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】抽出装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/36 20060101AFI20220930BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20220930BHJP
   A47J 31/46 20060101ALI20220930BHJP
   A47J 31/60 20060101ALI20220930BHJP
   G07F 13/06 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A47J31/36 110
A47J31/06 120
A47J31/46 117
A47J31/60
G07F13/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019128600
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021013466
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597044139
【氏名又は名称】株式会社大都技研
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】特許業務法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】阿部 一弘
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-041922(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030806(WO,A1)
【文献】実開昭52-111288(JP,U)
【文献】特開平11-244151(JP,A)
【文献】実開平01-135040(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/36
A47J 31/06
A47J 31/46
A47J 31/60
G07F 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出対象から飲料液を抽出する抽出装置であって、
前記抽出対象と液体が収容される抽出容器と、
前記抽出対象と前記飲料液とを分離する複数のフィルタと、
複数の多孔板と、を備え、
前記複数のフィルタは、
第一のフィルタと、
前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタよりも下流側の第二のフィルタと、を含み、
前記第二のフィルタは、前記第一のフィルタよりも細目のフィルタであ
前記第一のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記第二のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記複数の多孔板は、
前記第一のフィルタと重ねられる第一の多孔板と、
前記第二のフィルタと重ねられる第二の多孔板と、を含み、
前記第一の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタの上流側で前記第一のフィルタに重ねられるハニカム板であり、
前記第二の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第二のフィルタの上流側で前記第二のフィルタに重ねられるハニカム板である、
ことを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
請求項に記載の抽出装置であって、
前記第二のフィルタから前記第一のフィルタの方向に、不要物を除去するための液体を供給する機能を備え、
前記複数の多孔板は、
前記第一のフィルタと重ねられる第三の多孔板と、
前記第二のフィルタと重ねられる第四の多孔板と、を含み、
前記第三の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタの下流側で前記第一のフィルタと重ねられるハニカム板であり、
前記第四の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第二のフィルタの下流側で前記第二のフィルタと重ねられるハニカム板であり、
前記第一の多孔板と前記第三の多孔板とは、前記第一のフィルタを挟んで支持し、
前記第二の多孔板と前記第四の多孔板とは、前記第一のフィルタを挟んで支持し、
前記第一の多孔板の各孔と前記第三の多孔板の各孔とは、前記飲料液の送出方向に重なるように配置され、
前記第二の多孔板の各孔と前記第四の多孔板の各孔とは、前記飲料液の送出方向に重なるように配置されている、
ことを特徴とする抽出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料液の抽出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー液の抽出方法として、挽き豆をお湯に浸漬する浸漬式(例えば特許文献1)や、挽き豆にお湯を透過する透過式(例えば特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-081544号公報
【文献】特開2003-024703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いずれの抽出方法でも抽出対象(挽き豆等)と飲料液(コーヒー飲料等)とを分離することになるが、従来の抽出方法ではこの分離の点で改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、抽出対象と飲料液の分離に特徴のある技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、例えば、
抽出対象から飲料液を抽出する抽出装置であって、
前記抽出対象と液体が収容される抽出容器と、
前記抽出対象と前記飲料液とを分離する複数のフィルタと、
複数の多孔板と、を備え、
前記複数のフィルタは、
第一のフィルタと、
前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタよりも下流側の第二のフィルタと、を含み、
前記第二のフィルタは、前記第一のフィルタよりも細目のフィルタであ
前記第一のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記第二のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記複数の多孔板は、
前記第一のフィルタと重ねられる第一の多孔板と、
前記第二のフィルタと重ねられる第二の多孔板と、を含み、
前記第一の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタの上流側で前記第一のフィルタに重ねられるハニカム板であり、
前記第二の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第二のフィルタの上流側で前記第二のフィルタに重ねられるハニカム板である、
ことを特徴とする抽出装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、抽出対象と飲料液の分離に特徴のある技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】飲料製造装置の外観図。
図2図1の飲料製造装置の部分正面視図。
図3図1飲料製造装置の機能の概要図。
図4】分離装置の一部破断斜視図。
図5】駆動ユニット及び抽出容器の斜視図。
図6図5の抽出容器の閉状態及び開状態を示す図。
図7】上部ユニット及び下部ユニットの一部の構成を示す正面図。
図8図7の縦断面図。
図9】中部ユニットの模式図。
図10図1の飲料製造装置の制御装置のブロック図。
図11】(A)及び(B)は制御装置が実行する制御例を示すフローチャート。
図12】蓋ユニットの破断斜視図。
図13】フィルタ部の分解・破断斜視図。
図14】(A)及び(B)はフィルタ部材の分解斜視図。
図15】フィルタ部材の平面図。
図16】(A)は排出処理の例を示すフローチャート、(B)は不要物の除去態様を示す蓋ユニット91の断面図。
図17】(A)~(C)は抽出容器及び不要物除去機能の別例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<1.飲料製造装置の概要>
図1は飲料製造装置1の外観図である。本実施形態の飲料製造装置1は、焙煎コーヒー豆と液体(ここでは水)からコーヒー飲料を自動製造する装置であり、一回の製造動作につき、コップ一杯分のコーヒー飲料を製造可能である。原料となる焙煎コーヒー豆は、キャニスタ40に収容可能である。飲料製造装置1の下部にはカップの載置部110が設けられており、製造されたコーヒー飲料は注ぎ部10cからカップへ注がれる。注ぎ部10cは飲料をカップへ注ぐ管状の部材であり、注ぎ口を構成する。
【0011】
飲料製造装置1は、その外装を形成して内部機構を囲包するハウジング100を備える。ハウジング100は、本体部101と、飲料製造装置1の正面の一部及び側面の一部を覆うカバー部102とに大別される。カバー部102には情報表示装置12が設けられている。情報表示装置12は本実施形態の場合、タッチパネル式のディスプレイであり、各種の情報の表示の他、装置の管理者や飲料の需要者の入力を受け付けることが可能である。情報表示装置12は、移動機構12aを介してカバー部102に取付けられており、移動機構12aによって上下方向に一定の範囲で移動可能である。
【0012】
カバー部102には、また、豆投入口103と、豆投入口103を開閉する扉103aが設けられている。開閉扉103を開放して豆投入口103へ、キャニスタ40に収容されている焙煎コーヒー豆とは別の焙煎コーヒー豆を、投入することが可能となっている。これにより飲料の需要者に特別な一杯を提供することが可能である。
【0013】
カバー部102は、本実施形態の場合、アクリルやガラスなどの透光性を有する材料で形成されており、その全体が透過部とされた透明カバーを構成している。このため、カバー部102に覆われたその内側の機構が外部から視認可能となっている。本実施形態の場合、コーヒー飲料を製造する製造部の一部がカバー部102を透して視認可能となっている。本体部101は本実施形態の場合その全体が非透過部とされており、その内部を外部から視認困難である。
【0014】
図2は、飲料製造装置1の部分正面図であって、飲料製造装置1の正面視でユーザが視認可能な製造部の一部を示す図である。カバー部102や情報表示装置12は想像線で図示されている。
【0015】
飲料製造装置1の正面部におけるハウジング100は、本体部101と、その外側(前方側)のカバー部102との二重構造となっている。前後方向で本体部101とカバー部12との間に製造部の一部の機構が配置されており、ユーザがカバー部102を介して視認可能である。
【0016】
カバー部102を介してユーザが視認可能な製造部の一部の機構は、本実施形態の場合、後述する集合搬送部42、グラインダ5A、5B、分離装置6、抽出容器9等である。本体部101の正面部には、奥側に窪んだ矩形状の凹部101aが形成されており、抽出容器9等はこの凹部101a内の奥側に位置している。
【0017】
カバー部102を介して外部からこれらの機構が視認可能であることにより、管理者にとっては点検や動作確認が容易になる場合がある。また、飲料の需要者にとってはコーヒー飲料の製造過程を楽しむことができる場合がある。
【0018】
なお、カバー部102は、その右端部においてヒンジ102aを介して本体部101に横開き式に開閉自在に支持されている。カバー部102の左端部には、本体部101とカバー部102とを閉状態に維持する係合部102bが設けられている。係合部102bは例えば磁石と鉄の組合せである。管理者はカバー部102を開放することで、その内側の上述した製造部の一部の点検等を行うことができる。
【0019】
なお、本実施形態の場合、カバー部102を横開き式としたが縦開き式(上下開き式)としてもよいし、スライド式としてもよい。また、カバー部102が開閉不能な構成であってもよい。
【0020】
図3は飲料製造装置1の機能の概要図である。飲料製造装置1は、コーヒー飲料の製造部として、豆処理装置2及び抽出装置3を含む。
【0021】
豆処理装置2は、焙煎コーヒー豆から挽き豆を生成する。抽出装置3は豆処理装置2から供給される挽き豆からコーヒー液を抽出する。抽出装置3は、流体供給ユニット7、後述する駆動ユニット8、抽出容器9及び切替ユニット10を含む。豆処理装置2から供給される挽き豆は、抽出容器9に投入される。流体供給ユニット7は、抽出容器9にお湯を投入する。抽出容器9内で挽き豆からコーヒー液が抽出される。抽出されたコーヒー液を含むお湯が切替ユニット10を介してコーヒー飲料としてコップCに送出される。
【0022】
<2.流体供給ユニット及び切替ユニット>
流体供給ユニット7及び切替ユニット10の構成について図3を参照して説明する。まず、流体供給ユニット7について説明する。流体供給ユニット7は、抽出容器9へのお湯の供給や、抽出容器9内の気圧の制御等を行う。なお、本書において、気圧を数字で例示している場合、特に断わらない限り絶対圧を意味し、ゲージ圧とは大気圧を0気圧とする気圧である。大気圧とは、抽出容器9の周囲の気圧、又は、飲料製造装置の気圧を指し、例えば、飲料製造装置が海抜0mの地点に設置されている場合は、国際民間航空機関(=「International Civil Aviation Organization」〔[略]ICAO〕)が1976年に制定した国際標準大気(=「International Standard Atmosphere」〔[略]ISA〕)の海抜0mでの基準気圧(1013.25hPa)である。
【0023】
流体供給ユニット7は配管L1~L3を含む。配管L1は空気が流通する配管であり、配管L2は水が流通する配管である。配管L3は空気と水の双方が流通可能な配管である。
【0024】
流体供給ユニット7は、加圧源としてコンプレッサ70を含む。コンプレッサ70は大気を圧縮して送出する。コンプレッサ70は例えばモータ(不図示)を駆動源として駆動される。コンプレッサ70から送出される圧縮空気は、逆止弁71aを介してリザーブタンク(アキュームレータ)71に供給される。リザーブタンク71内の気圧は圧力センサ71bにより監視され、所定の気圧(本実施形態では7気圧(ゲージ圧で6気圧))に維持されるよう、コンプレッサ70が駆動される。リザーブタンク71には排水用のドレイン71cが設けられており、空気の圧縮により生じる水を排水可能となっている。
【0025】
水タンク72はコーヒー飲料を構成する液体(ここではお湯(水))を貯留する貯留部である。水タンク72には、水タンク72内の水を加温するヒーター72a及び水の温度を計測する温度センサ72bが設けられている。ヒーター72aは温度センサ72bの検出結果に基づいて、蓄積されるお湯の温度を所定の温度(本実施形態では摂氏120度)に維持する。ヒーター72aは例えばお湯の温度が摂氏118度でONとされ、摂氏120度でOFFとされる。
【0026】
水タンク72には、また、水位センサ72cが設けられている。水位センサ72cは水タンク72内のお湯の水位を検出する。水位センサ72cにより所定の水位よりも水位が下がったことが検出されると、水タンク72に水が供給される。本実施形態の場合、不図示の浄水器を介して水道水(常温)が供給される。浄水器からの配管L2の途中には冷却部10dが設けられている。製造されたコーヒー飲料は注ぎ部10cに到達する前に冷却部10dによって冷却される。本実施形態の場合、冷却部10dは熱交換器であり、浄水器からの水道水を冷却媒体としてコーヒー飲料を適温に冷却する。また、本実施形態の場合、浄水器からの水道水は、まず、冷却部10dに供給される。これにより、比較的水温の低い水道水を冷却部10dに供給でき、冷却性能を向上できる場合がある。
【0027】
浄水器からの配管L2の途中には、また、電磁弁72dが設けられている。水位センサ72cにより水位の低下が検出されると電磁弁72dが開放されて水が供給され、所定の水位に到達すると電磁弁72dが閉鎖されて水の供給が遮断される。こうして水タンク72内のお湯が一定の水位に維持される。なお、水タンク72への給水は一回のコーヒー飲料の製造に使用するお湯を排出する度に行ってもよい。
【0028】
水タンク72には、また、圧力センサ72gが設けられている。圧力センサ72gは水タンク72内の気圧を検出する。水タンク72には調圧弁72e及び電磁弁72fを介してリザーブタンク71内の気圧が供給される。調圧弁72eはリザーブタンク71から供給される気圧を所定の気圧に減圧する。本実施形態の場合、3気圧(ゲージ圧で2気圧)に減圧する。電磁弁72fは調圧弁72eで調圧された気圧の、水タンク72への供給と遮断とを切り替える。電磁弁72fは、水タンク72への水道水の供給時を除き、水タンク72内の気圧が3気圧に維持されるように開閉制御される。水タンク72への水道水の供給時には、水道水の水圧によって水タンク72に円滑に水道水が補給されるように、電磁弁72hにより水タンク72内の気圧を水道水の水圧よりも低い圧力(例えば2.5気圧未満)に減圧する。電磁弁72hは水タンク72内を大気に解放するか否かを切り替え、減圧時には水タンク72内を大気に解放する。また、電磁弁72hは水タンク72への水道水の供給時以外に、水タンク72内の気圧が3気圧を超える場合に水タンク72内を大気に解放し、水タンク72内を3気圧に維持する。
【0029】
水タンク72内のお湯は、逆止弁72j、電磁弁72i及び配管L3を介して抽出容器9へ供給される。電磁弁72iを開放することで抽出容器9へお湯が供給され、閉鎖することでお湯の供給が遮断される。抽出容器9へのお湯の供給量は、電磁弁72iの開放時間で管理することができる。しかし、供給量を計測して電磁弁72iの開閉を制御してもよい。配管L3にはお湯の温度を計測する温度センサ73eが設けられており、抽出容器9へ供給される湯温が監視される。
【0030】
リザーブタンク71の気圧は、また、調圧弁73a、電磁弁73bを介して抽出容器9へ供給される。調圧弁73aはリザーブタンク71から供給される気圧を所定の気圧に減圧する。本実施形態の場合、5気圧(ゲージ圧で4気圧)に減圧する。電磁弁73bは調圧弁73aで調圧された気圧の、抽出容器9への供給と遮断とを切り替える。抽出容器9内の気圧は圧力センサ73dで検出される。抽出容器9内の加圧時、圧力センサ73dの検出結果に基づいて電磁弁73bが開放され、抽出容器9内を所定の気圧(本実施形態の場合、最大で5気圧(ゲージ圧で4気圧))に加圧する。抽出容器9内の気圧は電磁弁73cで減圧可能である。電磁弁73cは抽出容器9内を大気に解放するか否かを切り替え、圧力異常時(例えば抽出容器9内が5気圧を超える場合)には抽出容器9内を大気に解放する。
【0031】
一回のコーヒー飲料の製造が終わると、本実施形態の場合、抽出容器9内を水道水で洗浄する。電磁弁73fは洗浄時に開放され、抽出容器9に水道水を供給する。
【0032】
次に切替ユニット10について説明する。切替ユニット10は抽出容器9から送出される液体の送出先を注ぎ部10cと廃棄タンクTとのいずれかに切り替えるユニットである。切替ユニット10は、切替弁10aと切替弁10aを駆動するモータ10bを含む。切替弁10aは、抽出容器9内のコーヒー飲料を送出する場合は、冷却部10dへ流路を切り替える。コーヒー飲料は冷却部10dにおいて適温に冷却された後、注ぎ部10cからカップCへ注がれる。洗浄時の廃液(水道水)及び残渣(挽き豆)を排出する場合は廃棄タンクTへ流路を切り替える。切替弁10aは本実施形態の場合3ポートのボール弁である。洗浄時には切替弁10aを残渣が通過することから、切替弁10aはボール弁が好適であり、モータ10bはその回転軸を回転することで、流路を切り替える。
【0033】
<3.豆処理装置>
図1図2を参照して豆処理装置2について説明する。豆処理装置2は、貯留装置4及び粉砕装置5を含む。
【0034】
<3-1.貯留装置>
貯留装置4は、焙煎後のコーヒー豆が収容される複数のキャニスタ40を含む。本実施形態の場合、キャニスタ40は三つ設けられている。キャニスタ40は、焙煎コーヒー豆を収容する筒状の本体40aと、本体40aに設けられた取手40bとを含み、飲料製造装置1に対して着脱自在に構成されている。
【0035】
各キャニスタ40は、互いに異なる種類の焙煎コーヒー豆を収容し、情報表示装置12に対する操作入力によって、コーヒー飲料の製造に用いる焙煎コーヒー豆の種類を選択できるようにしてもよい。種類が異なる焙煎コーヒー豆とは例えばコーヒー豆の品種が異なる焙煎コーヒー豆である。また、種類が異なる焙煎コーヒー豆とは、同じ品種のコーヒー豆であるが、焙煎度が異なる焙煎コーヒー豆であってもよい。また、種類が異なる焙煎コーヒー豆とは、品種も焙煎度も異なる焙煎コーヒー豆でもよい。また、三つのキャニスタ40の少なくともいずれか一つには、複数種類の品種の焙煎コーヒー豆が混合された焙煎コーヒー豆が収容されてもよい。この場合、各品種の焙煎コーヒー豆は、焙煎度が同程度であってもよい。
【0036】
なお、本実施形態では複数のキャニスタ40を設けたが、一つのキャニスタ40のみが設けられる構成であってもよい。また、複数のキャニスタ40を設けた場合に、同じ種類の焙煎コーヒー豆が全部又は複数のキャニスタ40に収容されてもよい。
【0037】
各キャニスタ40は計量搬送装置41に着脱自在に装着される。計量搬送装置41は、例えば、電動スクリューコンベアであり、キャニスタ40に収容された所定の量の焙煎コーヒー豆を自動計量して下流側に送出する。
【0038】
各計量搬送装置41は下流側の集合搬送部42に焙煎コーヒー豆を排出する。集合搬送部42は中空の部材で構成されており、各コンベア41から粉砕装置5(特にグラインダ5A)への焙煎コーヒー豆の搬送通路を形成する。各計量搬送装置41から排出された焙煎コーヒー豆は集合搬送部42の内部を自重によって移動し、粉砕装置5へ流れ落ちる。
【0039】
集合搬送部42には、豆投入口103に対応する位置に案内部42aが形成されている。案内部42aは豆投入口103から投入された焙煎コーヒー豆を粉砕装置5(特にグラインダ5A)へ案内する通路を形成する。これにより、キャニスタ40に収容された焙煎コーヒー豆以外に、豆投入口103から投入される焙煎コーヒー豆を原料としたコーヒー飲料も製造できる。
【0040】
<3-2.粉砕装置>
図2及び図4を参照して粉砕装置5を説明する。図4は分離装置6の一部判断斜視図である。粉砕装置5は、グラインダ5A及び5B、及び、分離装置6を含む。グラインダ5A及び5Bは貯留装置4から供給される焙煎コーヒー豆を挽く機構である。貯留装置4から供給される焙煎コーヒー豆は、グラインダ5Aで挽かれた後、グラインダ5Bで更に挽かれて粉状にされ、排出管5Cから抽出容器9へ投入される。
【0041】
グラインダ5A及び5Bは、豆を挽く粒度が異なっている。グラインダ5Aは粗挽き用のグラインダであり、グラインダ5Bは細挽き用のグラインダである。グラインダ5A、5Bはそれぞれ電動グラインダであり、駆動源であるモータと、モータにより駆動される回転刃等を含む。回転刃の回転数を変化させることで粉砕される焙煎コーヒー豆の大きさ(粒度)を変化可能である。
【0042】
分離装置6は挽き豆から不要物を分離する機構である。分離装置6はグラインダ5Aとグラインダ5Bとの間に配置された通路部63aを含む。通路部63aはグラインダ5Aから自由落下してくる挽き豆が通過する分離室を形成する中空体である。通路部63aには、挽き豆の通過方向(本実施形態の場合、上下方向。)と交差する方向(本実施形態の場合、左右方向。)に延びる通路部63bが接続されており、この通路部63bには吸引ユニット60が接続されている。吸引ユニット60が通路部63a内の空気を吸引することで、チャフや微粉といった軽量な物体が吸引される。これにより、挽き豆から不要物を分離できる。
【0043】
吸引ユニット60は遠心分離方式の機構である。吸引ユニット60は、送風ユニット60A及び回収容器60Bを含む。送風ユニット60Aは本実施形態の場合、ファンモータであり、回収容器60B内の空気を上方へ排気する。
【0044】
回収容器60Bは、分離可能に係合する上部61と下部62とを含む。下部62は上方が開放した有底の筒型をなしており、不要物を蓄積する空間を形成する。上部61は下部62の開口に装着される蓋部を構成する。上部61は、円筒形状の外周壁61aと、これと同軸上に形成された排気筒61bとを含む。送風ユニット60Aは排気筒61b内の空気を吸引するように排気筒61bの上方において上部61に固定されている。上部61には通路部63bが接続されている。通路部63bは排気筒61bの側方に開口している。
【0045】
送風ユニット60Aの駆動により、図4において矢印d1~d3で示す気流が発生する。この気流により、通路部63aから不要物を含んだ空気が通路部63bを通って回収容器60B内に吸引される。通路部63bは排気筒61bの側方に開口しているため、不要物を含んだ空気は排気筒61bの周囲を旋回する。空気中の不要物Dは、その重量によって落下し、回収容器60Bの一部に集められる(下部62の底面上に堆積する)。空気は排気筒61bの内部を通って上方に排気される。
【0046】
排気筒61bの周面には複数のフィン61dが一体に形成されている。複数のフィン61dは排気筒61bの周方向に配列されている。個々のフィン61dは、排気筒61bの軸方向に対して斜めに傾斜している。このようなフィン61を設けたことで、不要物Dを含んだ空気の排気筒61bの周囲の旋回を促進する。
【0047】
本実施形態の場合、下部62はアクリル、ガラスなどの透光性を有する材料で形成されており、その全体が透過部とされた透明容器を構成している。また、下部62はカバー部102で覆われた部分である(図2)。管理者や飲料の需要者は、カバー部102、下部62の周壁を透して、下部62内に蓄積された不要物Dを視認可能である。管理者にとっては、下部62の清掃タイミングを確認し易い場合があり、飲料の需要者にとっては不要物Dが除去されていることが視認できることで、製造中のコーヒー飲料の品質に対する期待感が高まる場合がある。
【0048】
このように本実施形態では、貯留装置4から供給される焙煎コーヒー豆は、まず、グラインダ5Aで粗挽きされ、その粗挽き豆が通路部63aを通過する際に、分離装置6によって不要物が分離される。不要物が分離された粗挽き豆は、グラインダ5Bにより細挽きされる。分離装置6で分離する不要物は、代表的にはチャフや微粉である。これらはコーヒー飲料の味を低下させる場合があり、挽き豆からチャフ等を除去することで、コーヒー飲料の品質を向上できる。
【0049】
焙煎コーヒー豆の粉砕は、一つのグラインダ(一段階の粉砕)であってもよい。しかし、本実施形態のように、二つのグラインダ5A、5Bによる二段階の粉砕とすることで、挽き豆の粒度が揃い易くなり、コーヒー液の抽出度合を一定にすることができる。豆の粉砕の際にはカッターと豆との摩擦により、熱が発生する場合がある。二段階の粉砕とすることで、粉砕時の摩擦による発熱を抑制し、挽き豆の劣化(例えば風味が落ちる)を防止することもできる。
【0050】
また、粗挽き→不要物の分離→細挽きという段階を経ることで、チャフなどの不要物を分離する際、不要物と挽き豆(必要部分)との質量差を大きくできる。これは不要物の分離効率を上げることができるとともに、挽き豆(必要部分)が不要物として分離されてしまうことを防止することができる。また、粗挽きと細挽きとの間に、空気の吸引を利用した不要物の分離処理が介在することで、空冷によって挽き豆の発熱を抑えることができる。
【0051】
<4.駆動ユニット及び抽出容器>
<4-1.概要>
抽出装置3の駆動ユニット8及び抽出容器9について図5を参照して説明する。図5は駆動ユニット8及び抽出容器9の斜視図である。駆動ユニット8の大部分は本体部101に囲包されている。
【0052】
駆動ユニット8はフレームFに支持されている。フレームFは、上下の梁部F1、F2及び梁部F1、F2を支持する柱部F3を含む。駆動ユニット8は、上部ユニット8A、中部ユニット8B及び下部ユニット8Cの三つのユニットに大別される。上部ユニット8Aは梁部F1に支持されている。中部ユニット8Bは梁部F1と梁部F2との間において、梁部F1及び柱部F3に支持されている。下部ユニット8Cは梁部F2に支持されている。
【0053】
抽出容器9は、容器本体90及び蓋ユニット91を含むチャンバである。抽出容器9のことをチャンバと呼ぶ場合がある。中部ユニット8Bは、容器本体90を着脱自在に保持するアーム部材820を備える。アーム部材820は、保持部材820aと、左右に離間した一対の軸部材820bとを含む。保持部材820aは、Cの字型のクリップ状に形成された樹脂等の弾性部材であり、その弾性力により容器本体90を保持する。保持部材82aは容器本体90の左右の側部を保持し、容器本体90の前方側は露出させている。これにより容器本体90の内部を、正面視で視認し易くなる。
【0054】
保持部材820aに対する容器本体90の着脱は手動操作で行い、保持部材820aに容器本体90を前後方向後方へ押し付けることで容器本体90が保持部材820aに装着される。また、容器本体90を保持部材820aから前後方向前側へ引き抜くことで、容器本体90を保持部材820aから分離可能である。
【0055】
一対の軸部材820bは、それぞれ、前後方向に延設されたロッドであり、保持部材820aを支持する部材である。なお、本実施形態では軸部材820bの数を二本としたが、一本でもよいし、三本以上であってもよい。保持部材820aは、一対の軸部材820bの前側の端部に固定されている。後述する機構により、一対の軸部材82bは前後方向に進退され、これにより保持部材820aが前後に進退し、は容器本体90を前後方向に平行移動する移動動作を行うことができる。中部ユニット8Bは、また、後述するように、抽出容器9の姿勢を変化させる動作(本実施形態では上下を反転させる回動動作)を行うことも可能である。
【0056】
<4-2.抽出容器>
図6を参照して抽出容器9について説明する。図6は抽出容器9の閉状態及び開状態を示す図である。上記のとおり、抽出容器9は中部ユニット8Bにより上下が反転される。図6の抽出容器9は、蓋ユニット91が上側に位置している基本姿勢を示している。以下の説明において上下の位置関係を述べる場合、特に断らない限りは基本姿勢における上下の位置関係を意味するものとする。
【0057】
容器本体90は有底の容器であり、ネック部90b、肩部90d、胴部90e及び底部90fを有するボトル形状を有している。ネック部90bの端部(容器本体90の上端部)には、容器本体90の内部空間と連通する開口90aを形成するフランジ部90cが形成されている。
【0058】
ネック部90b及び胴部90eは、いずれも円筒形状を有している。肩部90dは、ネック部90bと胴部90eとの間の部分であり、その内部空間の断面積が胴部90e側からネック部90b側へ向かって徐々に小さくなるようにテーパ形状を有している。
【0059】
蓋ユニット91は開口90aを開閉するユニットである。蓋ユニット91の開閉動作(昇降動作)は上部ユニット8Aにより行われる。
【0060】
容器本体90は、本体部材900及び底部材901を含む。本体部材900は、ネック部90b、肩部90d、胴部90eを形成する上下が開放した筒部材である。底部材901は底部90fを形成する部材であり、本体部材900の下部に挿入されて固定される。本体部材900と底部材901との間にはシール部材902が介在し、容器本体90内の気密性を向上する。
【0061】
本実施形態の場合、本体部材900はアクリル、ガラスなどの透光性を有する材料で形成されており、その全体が透過部とされた透明容器を構成している。管理者や飲料の需要者は、カバー部102、容器本体90の本体部材900を透して、容器本体90内でのコーヒー飲料の抽出状況を視認可能である。管理者にとっては、抽出動作を確認し易い場合があり、飲料の需要者にとっては抽出状況を楽しめる場合がある。
【0062】
底部材901の中心部には凸部901cが設けられ、この凸部901cには、容器本体90内を外部に連通させる連通穴(図8の連通穴904)や、この連通穴を開閉する弁(図8の弁903)が設けられている。連通穴904は、容器本体90内を洗浄する際の廃液及び残渣といった不要物の排出に用いられる排出部として機能する。凸部901cにはシール部材908が設けられており、シール部材908は、上部ユニット8Aまたは下部ユニット8Cと底部材901との間を気密に維持するための部材である。
【0063】
蓋ユニット91は、帽子状のベース部材911を備える。ベース部材911は、凸部911d、及び、閉時にフランジ部90cと重なる鍔部911cを有する。凸部911dには、容器本体90における凸部901cと同じ構造とされており、容器本体90内を外部に連通させる連通穴(図8の連通穴914)や、この連通穴を開閉する弁(図8の弁913)が設けられている。連通穴914は、主に、容器本体90内へのお湯の注入とコーヒー飲料の送出に用いられる送出部として機能する。凸部911dにはシール部材918aが設けられている。シール部材918aは、上部ユニット8Aまたは下部ユニット8Cとベース部材911との間を気密に維持するための部材である。蓋ユニット91には濾過用のフィルタ部915が設けられている。フィルタ部915は、容器本体90の内部空間の端部、特に送出部(連通穴914)の直前に配置されており、コーヒー飲料の送出の際、挽き豆の残渣とコーヒー飲料とを分離する。
【0064】
<4-3.上部ユニット及び下部ユニット>
上部ユニット8A及び下部ユニット8Cについて図7図8を参照して説明する。図7は上部ユニット8A及び下部ユニット8Cの一部の構成を示す正面図であり、図8図7の縦断面図である。
【0065】
上部ユニット8Aは、操作ユニット81Aを含む。操作ユニット81Aは容器本体90に対する蓋ユニット91の開閉操作(昇降)及び凸部901c及び911dの弁の開閉操作を行う。操作ユニット81Aは、支持部材800、保持部材801、昇降軸802及びプローブ803を含む。
【0066】
支持部材800はフレームFに対する相対位置が変化しないように固定して設けられており、保持部材801を収容する。支持部材800は、また、配管L3と支持部材800内を連通させる連通部800aを備える。配管L3から供給されるお湯、水道水および気圧が連通部800aを介して支持部材800内に導入される。
【0067】
保持部材801は、蓋ユニット91を着脱自在に保持可能な部材である。保持部材801は蓋ユニット91の凸部911d又は底部材901の凸部901cが挿入される円筒状の空間を有すると共に、これらを着脱自在に保持する機構を備える。この機構は、例えば、スナップリング機構であり、一定の押圧力により係合し、一定の分離力により係合が解除される。配管L3から供給されるお湯、水道水および気圧は、連通部800a及び保持部材801の連通穴801aを介して抽出容器9内へ供給可能である。
【0068】
保持部材801は支持部材800内を上下方向にスライド自在に設けられた可動部材でもある。昇降軸802はその軸方向が上下方向となるように設けられている。昇降軸802は支持部材800の天部を上下方向に気密に貫通し、支持部材800に対して上下に昇降自在に設けられている。
【0069】
昇降軸802の下端部には保持部材801の天部が固定されている。昇降軸802の昇降によって保持部材801が上下方向にスライドし、凸部911dや凸部901cへの保持部材801の装着と分離を行うことができる。また、容器本体90に対する蓋ユニット91の開閉を行うことができる。
【0070】
昇降軸802の外周面にはリードスクリュー機構を構成するねじ802aが形成されている。このねじ802aにはナット804bが螺着されている。上部ユニット8Aは、モータ804aを備えており、ナット804bはモータ804aの駆動力によって、その場で(上下に移動せずに)回転される。ナット804bの回転によって昇降軸802が昇降する。
【0071】
昇降軸802は、中心軸に貫通穴を有する管状の軸であり、この貫通穴にプローブ803が上下にスライド自在に挿入されている。プローブ803は保持部材801の天部を上下方向に気密に貫通し、支持部材800及び保持部材801に対して上下に昇降自在に設けられている。
【0072】
プローブ803は、凸部911d、901cの内部に設けた弁913、903を開閉する操作子であり、プローブ803の降下により弁913、903を閉状態から開状態とし、プローブ803の上昇により弁を開状態から閉状態(不図示のリターンばねの作用による)とすることができる。
【0073】
プローブ803の外周面にはリードスクリュー機構を構成するねじ803aが形成されている。このねじ803aにはナット805bが螺着されている。上部ユニット8Aは、モータ805aを備えており、ナット805bはモータ805aの駆動力によって、その場で(上下に移動せずに)回転するように設けられている。ナット805bの回転によってプローブ803が昇降する。
【0074】
下部ユニット8Cは、操作ユニット81Cを含む。操作ユニット81Cは、操作ユニット81Aを上下に反転した構成であり、凸部911d、901cの内部に設けた弁913、903の開閉操作を行う。操作ユニット81Cも蓋ユニット91の開閉が可能な構成であるが、本実施形態では操作ユニット81Cを蓋ユニット91の開閉には用いない。
【0075】
以下、操作ユニット81Aの説明と略同じであるが、操作ユニット81Cについて説明する。操作ユニット81Cは、支持部材810、保持部材811、昇降軸812及びプローブ813を含む。
【0076】
支持部材810はフレームFに対する相対位置が変化しないように固定して設けられており、保持部材811を収容する。支持部材810は、また、切替ユニット10の切替弁10aと支持部材810内を連通させる連通部810aを備える。容器本体90内のコーヒー飲料、水道水、挽き豆の残渣が連通部810aを介して切替弁10aに導入される。
【0077】
保持部材811は、蓋ユニット91の凸部911d又は底部材901の凸部901cが挿入される円筒状の空間を有すると共に、これらを着脱自在に保持する機構を備える。この機構は、例えば、スナップリング機構であり、一定の押圧力により係合し、一定の分離力により係合が解除される。容器本体90内のコーヒー飲料、水道水、挽き豆の残渣が連通部810a及び保持部材811の連通穴811aを介して切替弁10aに導入される。
【0078】
保持部材811は支持部材810内を上下方向にスライド自在に設けられた可動部材でもある。昇降軸812はその軸方向が上下方向となるように設けられている。昇降軸812は支持部材800の底部を上下方向に気密に貫通し、支持部材810に対して上下に昇降自在に設けられている。
【0079】
昇降軸812の下端部には保持部材811の底部が固定されている。昇降軸812の昇降によって保持部材811が上下方向にスライドし、凸部901cや凸部911dへの保持部材811の装着と分離を行うことができる。
【0080】
昇降軸812の外周面にはリードスクリュー機構を構成するねじ812aが形成されている。このねじ812aにはナット814bが螺着されている。下部ユニット8Cは、モータ814aを備えており、ナット814bはモータ814aの駆動力によって、その場で(上下に移動せずに)回転される。ナット814bの回転によって昇降軸812が昇降する。
【0081】
昇降軸812は、中心軸に貫通穴を有する管状の軸であり、この貫通穴にプローブ813が上下にスライド自在に挿入されている。プローブ813は保持部材811の底部を上下方向に気密に貫通し、支持部材810及び保持部材811に対して上下に昇降自在に設けられている。
【0082】
プローブ813は、凸部911d、901cの内部に設けた弁913、903を開閉する操作子であり、プローブ813の上昇により弁913、903を閉状態から開状態とし、プローブ813の降下により弁を開状態から閉状態(不図示のリターンばねの作用による)とすることができる。
【0083】
プローブ813の外周面にはリードスクリュー機構を構成するねじ813aが形成されている。このねじ813aにはナット815bが螺着されている。下部ユニット8Cは、モータ815aを備えており、ナット815bはモータ815aの駆動力によって、その場で(上下に移動せずに)回転するように設けられている。ナット815bの回転によってプローブ813が昇降する。
【0084】
<4-4.中部ユニット>
中部ユニット8Bについて図5及び図9を参照して説明する。図9は中部ユニット8Bの模式図である。中部ユニット8Bは抽出容器9を支持する支持ユニット81Bを含む。支持ユニット81Bは上述したアーム部材820の他、ロック機構821を支持するユニット本体81B’を含む。
【0085】
ロック機構821は、蓋ユニット91を容器本体90に対して閉状態に維持する機構である。ロック機構821は、蓋ユニット91の鍔部911cと容器本体90のフランジ部90cとを上下に挟持する一対の把持部材821aを含む。一対の把持部材821aは、鍔部911cとフランジ部90cとを挟み込んで嵌合するC字型の断面を有しており、モータ822の駆動力により左右方向に開閉される。一対の把持部材821aが閉状態の場合、図9の囲み図において実線で示すように、各把持部材821aは鍔部911cとフランジ部90cとを上下に挟み込むようにしてこれらに嵌合し、蓋ユニット91が容器本体90に対して気密にロックされる。このロック状態においては、保持部材801を昇降軸802によって上昇させて蓋ユニット91を開放しようとしても、蓋ユニット91は移動しない(ロックは解除されない)。つまり、保持部材801を用いて蓋ユニット91を開放する力よりもロック機構821によるロックの力の方が強く設定されている。これにより異常時に容器本体90に対して蓋ユニット91が開状態になることを防止することができる。
【0086】
また、一対の把持部材821aが開状態の場合、図9の囲み図において破線で示すように、鍔部911cとフランジ部90cから各把持部材821aが離間した状態となり、蓋ユニット91と容器本体90とのロックが解除される。
【0087】
保持部材801が蓋ユニット91を保持した状態にあり、かつ、保持部材801を降下位置から上昇位置に上昇する場合、一対の把持部材821aが開状態の場合には容器本体90から蓋ユニット91が分離される。逆に一対の把持部材821aが閉状態の場合には蓋ユニット91に対する保持部材801が解除され、保持部材801だけが上昇することになる。
【0088】
中部ユニット8Bは、また、モータ823を駆動源としてアーム部材820を前後方向に水平移動する機構を含む。これにより、アーム部材820に支持された容器本体90を後側の抽出位置(状態ST1)と、前側の豆投入位置(状態ST2)との間で移動することができる。豆投入位置は、容器本体90に挽き豆を投入する位置であり、蓋ユニット91が分離された容器本体90の開口90aに、グラインダ5Bで挽かれた挽き豆が排出管5Cから投入される。換言すると、排出管5Cの位置は、豆投入位置に位置している容器本体90の上方である。
【0089】
抽出位置は、容器本体90が操作ユニット81A及び操作ユニット81Cによる操作が可能となる位置であり、プローブ803、813と同軸上の位置であって、コーヒー液の抽出を行う位置である。抽出位置は豆投入位置よりも奥側の位置である。図5図7及び図8はいずれも容器本体90が抽出位置にある場合を示している。このように、挽き豆の投入と、コーヒー液の抽出及び水の供給とで、容器本体90の位置を異ならせることにより、コーヒー液抽出時に発生する湯気が、挽き豆の供給部である排出管5Cに付着することを防止できる。
【0090】
中部ユニット8Bは、また、モータ824を駆動源として支持ユニット81Bを前後方向の軸825回りに回転させる機構を含む。これにより、容器本体90(抽出容器9)の姿勢をネック部90bが上側の正立姿勢(状態ST1)からネック部90bが下側の倒立姿勢(状態ST3)へ変化させることができる。抽出容器9の回動中は、ロック機構821により容器本体90に蓋ユニット91がロックされた状態が維持される。正立姿勢と倒立姿勢とで抽出容器9は上下が反転される。正立姿勢における凸部901cの位置に、倒立姿勢では凸部911dが位置する。また、正立姿勢における凸部911dの位置に、倒立姿勢では凸部901cが位置する。このため、倒立姿勢では弁903に対する開閉操作を操作ユニット81Aが行うことができ、また、弁913に対する開閉操作を操作ユニット81Cが行うことができる。
【0091】
<5.制御装置>
図10を参照して飲料製造装置1の制御装置11について説明する。図10は制御装置11のブロック図である。
【0092】
制御装置11は飲料製造装置1の全体を制御する。制御装置11は、処理部11a、記憶部11b及びI/F(インタフェース)部11cを含む。処理部11aは例えばCPU等のプロセッサである。記憶部11bは例えばRAMやROMである。I/F部11cは外部デバイスと処理部11aとの間の信号の入出力を行う入出力インタフェースを含む。I/F部11cは、また、インターネットなどの通信ネットワーク15を介してサーバ16とデータ通信が可能な通信インタフェースを含む。サーバ16は、通信ネットワーク15を介してスマートフォン等のタッチパネル付の携帯端末17との通信が可能であり、例えば、飲料の需要者の携帯端末17から飲料製造の予約や、感想などの情報を受信可能である。
【0093】
処理部11aは記憶部11bに記憶されたプログラムを実行し、情報表示装置12からの指示或いはセンサ群13の検出結果若しくはサーバ16からの指示に基づいて、アクチュエータ群14を制御する。センサ群13は飲料製造装置1に設けられた各種のセンサ(例えばお湯の温度センサ、機構の動作位置検出センサ、圧力センサ等)である。アクチュエータ群14は飲料製造装置1に設けられた各種のアクチュエータ(例えばモータ、電磁弁、ヒーター等)である。
【0094】
<6.動作制御例>
処理部11aが実行する飲料製造装置1の制御処理例について図11A(A)及び(B)を参照して説明する。図11(A)は一回のコーヒー飲料製造動作に関わる制御例を示している。製造指示前の飲料製造装置1の状態を待機状態と呼ぶ。待機状態における各機構の状態は以下の通りである。
【0095】
抽出装置3は図5の状態にある。抽出容器9は正立姿勢で、かつ、抽出位置に位置している。ロック機構821は閉状態であり、蓋ユニット91は容器本体90の開口90aを閉鎖している。保持部材801は降下位置にあり、凸部911dに装着されている。保持部材811は上昇位置にあり、凸部901cに装着されている。弁903及び913は閉状態にある。切替弁10aは操作ユニット8Cの連通部810aを廃棄タンクTと連通させる。
【0096】
待機状態において、コーヒー飲料の製造指示があると、図11(A)の処理が実行される。S1では予熱処理が実行される。この処理は容器本体90内にお湯を注ぎ、容器本体90を事前に加温する処理である。まず、弁903及び913を開状態とする。これにより、配管L3、抽出容器9、廃棄タンクTが連通状態となる。
【0097】
電磁弁72iを所定時間(例えば1500ms)だけ開放したのちに閉鎖する。これにより、水タンク72から抽出容器9内にお湯が注入される。続いて電磁弁73を所定時間(例えば500ms)だけ開放したのちに閉鎖する。これにより、抽出容器9内の空気が加圧され、廃棄タンクTへのお湯の排出を促進する。以上の処理により、抽出容器9の内部及び配管L2が予熱され、これに続くコーヒー飲料の製造において、お湯が冷めることを低減できる。
【0098】
S2ではグラインド処理を行う。ここでは焙煎コーヒー豆を粉砕し、その挽き豆を容器本体90に投入する。まず、ロック機構821を開状態とし、保持部材801を上昇位置に上昇する。蓋ユニット91は保持部材801に保持され、保持部材801と共に上昇する。この結果、蓋ユニット91は容器本体90から分離する。保持部材811は降下位置に降下する。容器本体90を豆投入位置に移動する。続いて、貯留装置4及び粉砕装置5を作動する。これにより、貯留装置4から一杯分の焙煎コーヒー豆がグラインダ5Aに供給される。グラインダ5A及び5Bで焙煎コーヒー豆が二段階で挽かれ、かつ、分離装置6で不要物が分離される。挽き豆は容器本体90に投入される。
【0099】
容器本体90を抽出位置に戻す。保持部材801を降下位置に降下して容器本体90に蓋ユニット91を装着する。ロック機構821を閉状態とし、蓋ユニット91を容器本体90に気密にロックする。保持部材811は上昇位置に上昇する。弁903、913のうち、弁903は開状態とし、弁913は閉状態とする。
【0100】
S3では抽出処理を行う。ここでは容器本体90内の挽き豆からコーヒー液を抽出する。図11(B)はS3の抽出処理のフローチャートである。
【0101】
S11では抽出容器9内の挽き豆を蒸らすため、一杯分のお湯よりも少ない量のお湯を抽出容器9に注入する。ここでは、電磁弁72iを所定時間(例えば500ms)開放して閉鎖する。これにより、水タンク72から抽出容器9内にお湯が注入される。その後、所定時間(例えば、5000ms)待機してS11の処理を終了する。この処理によって挽き豆を蒸らすことができる。挽き豆を蒸らすことで、挽き豆に含まれる炭酸ガスを放出させ、その後の抽出効果を高めることができる。
【0102】
S12では、一杯分のお湯が抽出容器9に収容されるよう、残りの量のお湯を抽出容器9へ注入する。ここでは、電磁弁72iを所定時間(例えば7000ms)開放して閉鎖する。これにより、水タンク72から抽出容器9内にお湯が注入される。
【0103】
S12の処理によって抽出容器9内を、1気圧で摂氏100度を超える温度(例えば摂氏110度程度)の状態とすることができる。続いてS13により抽出容器9内を加圧する。ここでは電磁弁73bを所定時間(例えば1000ms)開放して閉鎖し、抽出容器9内をお湯が沸騰しない気圧(例えば4気圧程度(ゲージ圧で3気圧程度))に加圧する。その後、弁903を閉状態とする。
【0104】
続いて、この状態を所定時間(例えば7000ms)維持して浸漬式のコーヒー液抽出を行う(S14)。これにより高温高圧下での浸漬式によるコーヒー液の抽出が行われる。高温高圧下での浸漬式の抽出では、以下の効果が見込める。一つ目は、高圧にすることで、挽き豆の内部にお湯を浸透させ易くし、コーヒー液の抽出を促進させることができる。二つ目は、高温にすることで、コーヒー液の抽出が促進される。三つ目は、高温にすることで挽き豆に含まれるオイルの粘性を下がり、オイルの抽出が促進される。これにより香り高いコーヒー飲料を製造できる。
【0105】
お湯(高温水)の温度は、摂氏100度を超えていればよいが、より高温である方がコーヒー液の抽出の点で有利である。一方、お湯の温度を高くするためには一般にコストアップとなる。したがって、お湯の温度は、例えば、摂氏105度以上、または、摂氏110度以上、或いは、摂氏115度以上とし、また、例えば、摂氏130度以下、または、摂氏120度以下としてもよい。気圧はお湯が沸騰しない気圧であればよい。
【0106】
S15では抽出容器9内を減圧する。ここでは、抽出容器9内の気圧をお湯が沸騰する気圧に切り替える。具体的には、弁913を開状態とし、電磁弁73cを所定時間(例えば1000ms)開放して閉鎖する。抽出容器9内が大気に解放される。その後、弁913を再び閉状態とする。
【0107】
抽出容器9内が沸点圧よりも低い気圧に急激に減圧され、抽出容器9内のお湯が一気に沸騰する。抽出容器9内のお湯、挽き豆は、抽出容器9内で爆発的に飛散する。これにより、お湯を均一に沸騰させることができる。また、挽き豆の細胞壁の破壊を促進させることができ、その後のコーヒー液の抽出を更に促進させることができる。また、この沸騰により挽き豆とお湯を撹拌させることもできるため、コーヒー液の抽出を促進させることができる。こうして本実施形態ではコーヒー液の抽出効率を向上することができる。
【0108】
S16では抽出容器9を正立姿勢から倒立姿勢へ反転する。ここでは、保持部材801を上昇位置に、保持部材811を降下位置にそれぞれ移動する。そして、支持ユニット81Bを回転させる。その後、保持部材801を降下位置に、保持部材811を上昇位置にそれぞれ戻す。倒立姿勢の抽出容器9は、ネック部90bや蓋ユニット91が下側に位置することになる。
【0109】
S17では透過式のコーヒー液抽出を行い、冷却部10dを介してカップCにコーヒー飲料を送出する。ここでは、切替弁10aを切り替えて冷却部10dと操作ユニット81Cの通路部810aとを連通させる。また、弁903、913をいずれも開状態とする。更に、電磁弁73bを所定時間(例えば10000ms)開放し、抽出容器9内を所定気圧(例えば1.7気圧(ゲージ圧で0.7気圧))にする。抽出容器9内において、コーヒー液がお湯に溶け込んだコーヒー飲料が蓋ユニット91に設けたフィルタ部915を透過して冷却部10dを介してカップCに送出される。フィルタ部915は、コーヒー飲料と、不要物(挽き豆の残渣等)とを分離し、不要物が下流側へ漏出することを規制する。以上により抽出処理が終了する。
【0110】
本実施形態では、S14での浸漬式の抽出とS17での透過式の抽出とを併用することによりコーヒー液の抽出効率を向上できる。抽出容器9が正立姿勢の状態では、挽き豆が胴部90eから底部90fに渡って堆積する。一方、抽出容器9が倒立姿勢の状態では、挽き豆が肩部90dからネック部90bに渡って堆積する。ネック部90bの断面積よりも胴部90eの断面積の方が大きく、倒立姿勢での挽き豆の堆積厚さは正立姿勢での堆積厚さよりも厚くなる。つまり、挽き豆は抽出容器9が正立姿勢の状態では相対的に薄く、広く堆積し、倒立姿勢の状態では相対的に厚く、狭く堆積する。
【0111】
本実施形態の場合、S14の浸漬式抽出は抽出容器9が正立姿勢の状態で行われるので、お湯と挽き豆とを広範囲にわたって接触させることができ、コーヒー液の抽出効率を向上できる。但し、この場合はお湯と挽き豆とが部分的に接触する傾向にある。一方、S17の透過式抽出は抽出容器9が倒立姿勢の状態で行われるので、お湯がより多くの挽き豆と接触しながら堆積した挽き豆を通過することになる。お湯がより万遍なく挽き豆と接触することになり、コーヒー液の抽出効率を更に向上することができる。
【0112】
図11(A)に戻り、S3の抽出処理の後は、S4の排出処理を行う。ここでは抽出容器9内の不要物を除去し、洗浄する処理を行う。抽出容器9の洗浄は、抽出容器9を倒立姿勢から正立姿勢に戻し、抽出容器9に水道水(浄水)を供給することで行う。そして、抽出容器9内を加圧し、抽出容器9内の水を挽き豆の残渣等と共に廃棄タンクTへ排出する。これにより、抽出容器9内の不要物を除去することができ、特に、フィルタ部915に付着した挽き豆の残渣等の不要物を除去することができる。
【0113】
以上により一回のコーヒー飲料製造処理が終了する。以降、同様の処理が製造指示毎に繰り返される。一回のコーヒー飲料の製造に要する時間は、例えば、60~90秒程度である。
【0114】
<7.フィルタ部>
フィルタ部915の構造について図12図15を参照して説明する。図12は蓋ユニット91の破断斜視図である。図13はフィルタ部915の分解・破断斜視図である。図14(A)はフィルタ部材916の分解斜視図であり、図14(B)はフィルタ部材917の分解斜視図である。図15はフィルタ部材916の平面図である。
【0115】
フィルタ部915は蓋ユニット91のベース部材911に支持されており、鍔部911cの内側に配置されている。フィルタ部915は、弁913は開状態の場合に連通穴914と連通する(図12は弁913が閉状態にある)。矢印d11は、抽出容器9からコーヒー飲料が送出される際の送出方向を示している。フィルタ部915は、フィルタ部材916及び917と、これらを保持する保持部材918とを含む。
【0116】
<7-1.フィルタ部材>
フィルタ部材916及び917は、送出方向d11に並べて配置されており、フィルタ部材916が送出方向d11で上流側に、フィルタ部材917が送出方向d11で下流側に、それぞれ位置している。フィルタ部材916及び917は平面視で円形状を有しているが、楕円形状や多角形状等、他の形状であってもよい。フィルタ部材916は面FS1、面FS2を有し、フィルタ部材917は面FS3、FS4を有する。面FS1は、コーヒー飲料を送出する際の、d11方向で上流側のフィルタ部材916の面であり、面FS2は下流側の面である。同様に、面FS3は、コーヒー飲料を送出する際の、d11方向で上流側のフィルタ部材917の面であり、面FS2は下流側の面である。図12の姿勢における蓋ユニット91を正面視した場合、d11方向(図面上は左から右の方向)に面FS1、面FS2、面FS3及び面FS4の順に並び、面FS2と面FS3は向かい合う面となる。
【0117】
フィルタ部材916は濾材であるシート状のフィルタ916aを含み、フィルタ部材917は濾材であるシート状のフィルタ917aを含む。フィルタ916aは、そのシート面が送出方向d11と交差しており、本実施形態の場合、直交している。同様に、フィルタ916bは、そのシート面が送出方向d11と交差しており、本実施形態の場合、直交している。抽出容器9で抽出されたコーヒー飲料は、その送出の際、フィルタ916a、フィルタ917aの順にこれらを通過し、挽き豆の残渣等の不要物と分離される。本実施形態では、フィルタ916aとフィルタ917aとによる2段階の濾過としたが、3以上のフィルタにより3段階以上の濾過としてもよい。
【0118】
フィルタ916a及び917aは、いずれも金属製のフィルタである。フィルタ916a及び917aとして紙製、樹脂製のフィルタも採用可能であるが、金属製のフィルタの方が耐久性の点で有利である。フィルタ916a及び917aは、いずれも平面視で円形状を有しており、目の粗さ以外は同様の構成である。図14(A)及び図14(B)に示すようにフィルタ916aは、濾過領域916dを、フィルタ917aは濾過領域917dをそれぞれ有している。濾過領域916d及び濾過領域917dには無数の微細孔が形成されており、コーヒー飲料と不要物とを分離する濾過機能を有している。微細孔は例えば金属製の原材料にエッチングを施すことで形成することができる。
【0119】
本実施形態の場合、フィルタ917aは、フィルタ916aよりも細目のフィルタである。送出方向d11で上流側のフィルタ916aよりも下流側のフィルタ917aを細目のフィルタとすることで、粒径の大きい不要物はフィルタ916aで捕捉され、粒径の小さい不要物はフィルタ917aで捕捉される。この結果、フィルタの目詰まりの発生を抑制しつつ、より細かな不要物をコーヒー飲料から分離することができ、舌触りがよく、後味がスッキリしたコーヒー飲料を提供することができる。また、フィルタ917a上に微細な挽き豆が残留することで、フィルタ917aを通過するお湯(コーヒー飲料)との接触面積が増大し、微細な挽き豆からコーヒー液を無駄なく抽出することが可能となる。
【0120】
フィルタ部材が一つの構成の場合(例えばフィルタ部材916のみの場合)、挽き豆が一つのフィルタ部材に堆積し、挽き豆の重さがそのフィルタ部材に加わるので、フィルタ部材の直上の挽き豆からのコーヒー液の抽出効率が低下する場合がある。本実施形態では、コーヒー飲料の送出に複数のフィルタ部材を用いることで、フィルタ部材916の面FS1とフィルタ部材917の面FS3上に挽き豆が分散して堆積する。挽き豆の重さが面FS1及び面FS2に分散されるので、面FS1直上の挽き豆からもコーヒー飲料が抽出され、挽き豆が持つ本来の味わいを引き出し易くなる。
【0121】
本実施形態では、上述の通り、ユーザ(例えば、管理者、飲料の需要者)は、カバー部102、容器本体90の本体部材900を透して、容器本体90内でのコーヒー飲料の抽出状況を視認可能であるが、フィルタ部915の構造上、面FS1に堆積した挽き豆よりも面FS3に堆積した挽き豆の方が視認困難な場合がある。或いは、面FS1に堆積した挽き豆を視認可能であるが、面FS3に堆積した挽き豆を視認できない場合がある。ユーザからの見た目は、面FS1に堆積した挽き豆を通ってコーヒー飲料が送出されるが、実際には、面FS1及び面FS3に堆積した挽き豆を通ってコーヒー飲料が送出されるため、見た目よりも味わいの深いコーヒーが送出される。ユーザは予想以上の味わいを体験することになり満足感を得ることができる。
【0122】
フィルタ916aの濾過領域916dにおける微細孔の大きさ(例えば直径)は、例えば、フィルタ917aの濾過領域917dにおける微細孔の大きさの1.5倍~3倍の範囲内、或いは、2倍~2.5倍の範囲内にしてもよい。微細孔の具体的な大きさで言えば、濾過領域916dでは100μm~200μmの範囲内、濾過領域917dでは30μm~90μmの範囲内である。具体的な組み合せで言えば、濾過領域916dの微細孔の大きさは140μm、濾過領域917dの微細孔の大きさは60μmである。
【0123】
フィルタ916aとフィルタ917aの一方又は双方に、大きさの異なる微細孔が混在している場合、フィルタ917aがフィルタ916aよりも細目のフィルタであることの態様としては、フィルタ917aの微細孔の大きさの平均値が、フィルタ916aの微細孔の大きさの平均値よりも小さい態様を挙げることができる。また、フィルタ917aの微細孔の大きさの最大値が、フィルタ916aの微細孔の大きさの最小値よりも小さい態様も挙げることができる。また、フィルタ917aの微細孔の大きさの最大値が、フィルタ916aの微細孔の大きさの最大値よりも小さい態様も挙げることができる。また、フィルタ917aの微細孔の大きさの最小値が、フィルタ916aの微細孔の大きさの最小値よりも小さい態様も挙げることができる。
【0124】
また、濾過領域916dにおける無数の微細孔の大きさを、製造誤差の範囲を超えて異ならせてもよい。例えば、濾過領域916dの中心部を相対的に粗くし、周辺部を相対的に細かくしてもよい。中心部はコーヒー飲料の通過量が多い傾向にあるため、中心部を相対的に粗くすると目詰まり防止の点で有利な場合がある。逆に、濾過領域916dの中心部を相対的に細かくし、周辺部を相対的に粗くしてもよい。周辺部においてコーヒー飲料の通過量を増加させることができ、濾過領域916dの各部でのコーヒー飲料の通過量の均一化の点で有利な場合がある。濾過領域917dにおける無数の微細孔の大きさも、濾過領域916dについて述べた通り、部位によって異ならせてもよい。
【0125】
次に、フィルタ部材916は、フィルタ916aのみで構成することも可能である。しかし、フィルタ916aのみでは流圧に耐久し得る剛性に欠く場合がある。このため、本実施形態のフィルタ部材916は、補強材としてフィルタ916aを支持する多孔板916bを含む。多孔板916bはフィルタ916aの目よりも十分に大きい多数の孔916cを有する。多孔板916bは金属板である。多孔板916bは樹脂製の板でもよいが耐久性の点で、ステンレス板等の金属板の方が有利である。
【0126】
多孔板916bは1つでもよいが、本実施形態のフィルタ部材916は2つの多孔板916bを含み、フィルタ916aはこれら2つの多孔板916bによって挟まれて支持される。フィルタ916aが2つの多孔板916bによって挟まれることで、フィルタ916aを通過する液体の流れ方向がいずれの場合であっても、フィルタ916aを支持することができる。
【0127】
図15を参照して、本実施形態の場合、大部分の孔916cの形状は、最大幅W3である六角形であり、多孔板916bはハニカム板を構成している。孔916cの形状は、円形、楕円形等でもよいが六角形であることにより、隣接する孔916cを近接して形成することができ、多孔板916bにおける孔916cの開口面積をより大きくすることができる。開口面積を大きくする点では、孔916cは三角形、四角形等、他の多角形でもよい。
【0128】
孔916bは、その開口面積内にフィルタ916aの微細孔が多数含まれる大きさを有する。この点で幅W3(図15)は、微細孔の大きさが140μm程度の場合、例えば、5mm~20mmの範囲内である。孔916bが大きい程、コーヒー飲料の送出の際の抵抗を小さくでき、孔916bが小さい程、フィルタ916aの支持性能が向上し、フィルタ916aの変形を抑制できる。
【0129】
本実施形態の場合、多孔板916bの径方向で中央領域R1では孔916cの形状は全て六角形であるが、周辺領域R2では異なる形状の孔916cが含まれている。このように孔916cの形状は部位によって異なっていてもよく、逆に一様に同じ形状であってもよい。孔916cの形状は同じであるが、部位によって大きさが異なっていてもよい。
【0130】
図14(A)を参照して、本実施形態では、2枚の多孔板916bは同じ形状の部材であり、これら一対の多孔板916bによってフィルタ916aが挟まれる。一対の多孔板916bの各孔916cは送出方向d11で重なっている。図14(A)の例では、一方の多孔板916bの孔916c(#1)と、他方の多孔板916bの、位置的に対応する孔916c(#1)とはぴったりと重なっている。2枚の多孔板916bは、孔916cの形状や大きさが異なっていてもよいが、本実施形態の構成とすることにより、送出されるコーヒー飲料がフィルタ部材916を通過し易くなる。
【0131】
次に、フィルタ部材917も、フィルタ917aのみで構成することも可能である。しかし、フィルタ917aのみでは剛性に欠く場合がある。このため、本実施形態のフィルタ部材917は、補強材としてフィルタ917aを支持する多孔板917bを含む。多孔板917bはフィルタ917aの目よりも十分に大きい多数の孔917cを有する。本実施形態の場合、多孔板917bは、フィルタ部材916の多孔板916bと同じ構成であり、その詳細は多孔板916bについて述べた通りである。図14(B)に示すように、フィルタ部材917における2枚の多孔板917bと、フィルタ917aとの関係もフィルタ部材916と同様であり、一方の多孔板917bの孔917c(#2)と、他方の多孔板917bの、位置的に対応する孔917c(#2)とはぴったりと重なっている。すなわち、フィルタ部材916とフィルタ部材917とは、フィルタ916a、917aの目の粗さだけが異なっている。フィルタ部材917は、フィルタ部材916と異なる構成であってもよいが、本実施形態のように基本的な構造を共通とし、特に、多孔板916b、917bを同じ部品とすることで部品種を削減できる場合がある。
【0132】
フィルタ部材916、917の全部又は一部にはフッ素加工を施してもよい。フッ素加工は、例えば、フィルタ部材917の上側の面、具体的には、フィルタ917aの送出方向d11で上流側の面や、二つの多孔板917bの送出方向d11で上流側の多孔板917bであって、その上流側の面に施してもよい。使用による摩耗を抑制することができる。
【0133】
<7-2.保持部材>
保持部材18は、その内側にフィルタ部材916及び917を保持する筒状の部材であり、フィルタ部材916及び917とベース部材911との間のパッキンとして機能する。本実施形態の保持部材18は、送出方向d11で上流側及び下流側がいずれも開口し、かつ、下流側が縮径した、全体として円筒形状を有する中空部材である。保持部材18の周壁部の内周面には、環状の凹部GR1及びGR2並びに環状の凸部PRが形成されている。凹部GR1は、フィルタ部材916の周縁部が全周に渡って嵌合する環状の溝である。凹部GR2は、フィルタ部材917の周縁部が全周に渡って嵌合する環状の溝である。凸部PRは、凹部GR1及びGR2の間に位置している。凸部PRは、凹部GR1及びGR2が形成された結果として、保持部材18の径方向内側に突出した部分である。
【0134】
フィルタ916aとフィルタ917aとは、送出方向d11で幅W1だけ離間し、フィルタ部材916とフィルタ部材917とは、送出方向d11で幅W2だけ離間している。このため、フィルタ部材916とフィルタ部材917との間(或いはフィルタ916aとフィルタ917aとの間)には幅W2の隙間が形成されている。幅W2は凸部PRの厚さ(送出方向d11の高さ)に相当し、凸部PRは、フィルタ部材916とフィルタ部材917とを離間させるスペーサとして機能する。別部材としてのスペーサを設けてもよいが、保持部材18がスペーサとしての凸部PRを一体に有することで、部品点数の削減や組み立ての工数を削減できる。
【0135】
幅W2(又は幅W1)が狭い場合、フィルタ916aとフィルタ917aとの間の空間が狭くなり、コーヒー飲料が通過するフィルタ917a上の部位が偏ったり、フィルタ917aの目詰まりが発生し易くなる場合がある。幅W2(又は幅W1)が広い場合、コーヒー飲料がフィルタ917a上に広がって一様に通過し易くなるが、フィルタ部915の専有空間が大きくなる。したがって、幅W2(又は幅W1)は例えば数mm~1cmの範囲内の幅である。幅W2(又は幅W1)は、フィルタ917aの微細孔の大きさとの関係で言えば、例えば、微細孔の大きさの二倍を超える幅であり、また、多孔板917bの孔917cとの関係で言えば、例えば、幅W3以下の幅である。
【0136】
フィルタ916aとフィルタ917aとの間の間隔(換言するとフィルタ部材916とフィルタ部材917との間の間隔)は変更可能であってもよい。例えば、凹部GR1、凹部GR2を合計で3以上形成し、フィルタ部材916及び917と、これらを嵌合する凹部との組み合せによって、間隔を変更することができる。
【0137】
次に、本実施形態の保持部材918は複数のパッキン部材(ここではパッキン部材918a及び918bの二部材)により形成されている。パッキン部材918aは、送出方向d11で保持部材918の上流側の部分を形成し、パッキン部材918bは下流側の部分を形成する。凹部GR1と凸部PRはパッキン部材918aで形成され、凹部GR2はパッキン部材918aとパッキン部材918bとにより形成される。保持部材918が複数のパッキン部材で構成されることで、フィルタ部915の組み立ての際、フィルタ部材916及び917を保持部材918に装着し易くなる。
【0138】
パッキン部材918aは係合部918cを有し、パッキン部材918bは係合部918bを有する。係合部918cと係合部918bとを係合することで、パッキン部材918aとパッキン部材918bとが一体化される。パッキン部材918bは、更に、係合部918eを有する。係合部918eがベース部材911と嵌合することで保持部材918がベース部材911に固定される。
【0139】
<8.排出処理の例>
図11(A)のS4の排出処理の具体例について図16(A)を参照して説明する。図16(A)は排出処理の例を示すフローチャートである。本実施形態の場合、上記の通り、フィルタ部915が、フィルタ916aとフィルタ917aとを備えたツインフィルタを構成している。フィルタ916aとフィルタ917aとの間には、挽き豆の残渣等の不要物が残留するが、本実施形態の排出処理により、一回のコーヒー飲料の製造毎に、フィルタ部915を取り外すことなくこうした不要物を除去することができる。これにより、毎回、品質のばらつきの少ないコーヒー飲料を製造することができる。
【0140】
S21では抽出容器9を倒立姿勢から正立姿勢へ反転させる。ここでは、まず、弁903、913を閉状態にする。保持部材801を上昇位置に、保持部材811を降下位置にそれぞれ移動する。そして、支持ユニット81Bを回転させる。ネック部90bやフィルタ部915を含む蓋ユニット91が上側に位置する。図16(B)は上側に位置した蓋ユニット91の姿勢を示している。矢印d12は送出方向d11と逆の方向を示している。コーヒー飲料の送出時と異なり、フィルタ部材917が上側に、フィルタ部材916が下側に、それぞれ位置している。その後、保持部材801を降下位置に、保持部材811を上昇位置にそれぞれ戻す。
【0141】
S22では、弁913を開状態にする。電磁弁73fを所定時間(例えば2500ms)開放して閉鎖する。これにより、水道水(浄水)が抽出容器9内に注入される。洗浄には水タンク72のお湯を用いることもできるが、お湯を消費するとコーヒー飲料の連続製造性能が低下する。このため、本実施形態では、水道水(浄水)を利用している。しかし、洗浄には水タンク72のお湯や図示しない洗剤タンクから送出される洗剤等、他の液体を用いるようにしてもよい。
【0142】
図16(B)の破線矢印d13は、抽出容器9内に注入される水道水の流れ方向を示している。水道水は送出部として機能する連通穴914(図16において不図示)を通って流れる。そして、水道水はフィルタ部材916及びフィルタ部材917を通過するが、フィルタ部材917が流れ方向d13で上流側に、フィルタ部材916が下流側に位置している。つまり、水道水はフィルタ部材917からフィルタ部材916の方向に流れる。フィルタ部材917とフィルタ部材916との間の隙間に残留した挽き豆の残渣などの不要物は、フィルタ部材916のフィルタ916aの微細孔よりも細かいので、フィルタ916aを通過することができる。このため、水道水と共に不要物が、破線矢印d14で示すように抽出容器9内に洗い流され、フィルタ部材917とフィルタ部材916との間の隙間から除去される。コーヒー飲料の送出時にフィルタ部材916上に堆積していた不要物も洗い流され、除去される。
【0143】
フィルタ部材が一つの構成の場合(例えばフィルタ部材916のみの場合)、不要物の付着が一つのフィルタ部材に集中し、除去に必要な力が大きくなる。本実施形態では、不要物の付着がフィルタ部材916とフィルタ部材917に分散されるので、不要物の除去に必要な力を相対的に小さくすることが可能になり、よりきれいに不要物を除去することが可能になる。
【0144】
本実施形態では、上述の通り、ユーザ(例えば、管理者、飲料の需要者)は、カバー部102、容器本体90の本体部材900を透して、容器本体90内でのフィルタ部915における不要物の除去処理状況を視認可能である。除去処理中、ユーザは、面FS1に堆積していた挽き豆やフィルタ部材716を通過してきた挽き豆よりも、面FS2と面FS3の間の挽き豆の方が視認困難な場合がある。或いは、面FS1に堆積していた挽き豆やフィルタ部材716を通過してきた挽き豆は視認可能であるが、面FS2と面FS3の間の挽き豆を視認できない場合がある。ユーザは、除去処理開始当初、面FS1に堆積していた挽き豆により、これから排出される残渣の量を予測するが、実際には、面FS2と面FS3の間の挽き豆も排出されるので、予想以上に不要物が除去された印象がユーザに与えられ、清潔さにおいて、より満足感を得ることができる。
【0145】
また、図16で例示した除去処理によると、除去のための水道水の圧力は下流になるほど弱まるため、面FS1~FS4に関する圧力は、面FS4、面FS3、FS面2及びFS面1の順に弱くなる。一方、通常は面FS1に、大きくて除去し易い不要物が付着する傾向にある。つまり、面FS4、面FS3、面FS2及び面FS1の順に大きさが大きい不要物がついており、除去力は面FS4、面3FS、面FS2及び面FS1の順に弱くてもよいことになる。このように、最も細かい不要物がついている面FS4は最も強い除去力で当該不要物を除去し、最も粗い不要物がついている面FS1は最も弱い除去力で当該不要物を除去するので、除去力を効率よく不要物除去に用いることができ、必要に効率がよい。
【0146】
なお、S22注水の前又はS21の反転の前に抽出容器9内を所定時間(例えば500ms等)だけ大気に解放してもよい。抽出容器9内の残圧を逃がすことができ、S22の注水を円滑に行うことができる。このように抽出容器9内を大気に解放した場合、抽出容器9内がゲージ圧で0気圧となる。よって、注水の際には、水圧で弁913が自動的に開状態となる場合がある。この場合には、弁913を開状態にする処理は不要である。水圧で弁913を開状態とした場合、弁913が閉状態に復帰する力と水圧との均衡によって、水が抽出容器9の内壁面等を伝って流れやすくなり、抽出容器9の内部全体に水が供給され易くなる。
【0147】
S23では、弁903を開状態にする。切替弁10aは操作ユニット8Cの連通部810aを廃棄タンクTと連通させる。これにより、配管L3、抽出容器9、廃棄タンクTが連通状態となる。電磁弁73bを所定時間(例えば1000ms)開放して閉鎖する。これにより抽出容器9内が加圧され、抽出容器9内の水が、挽き豆の残渣等の不要物と共に廃棄タンクTへ排出される。その後、弁903、913を閉状態にして処理が終了する。洗浄に用いた水が、コーヒー飲料の送出用の連通穴914とは別の排出用の連通穴904から送出されるため、連通穴914が汚れることを防止できる。
【0148】
なお、図16の排出処理は、容器本体90、フィルタ部材916、フィルタ部材917を洗浄する洗浄処理であってもよいし、容器本体90、フィルタ部材916、フィルタ部材917の不要物(例えば、抽出に用いた挽き豆、残ったコーヒー液、残渣)を除去する除去処理であってもよい。
【0149】
また、図16の例では、フィルタ部材916、フィルタ部材917の不要物を水流により一度に除去する例を示してきたが、フィルタ部材916の不要物の除去とフィルタ部材917の不要物の除去を個別に行うようにしてもよい。
【0150】
<9.抽出容器の他の構成例>
上記実施形態では、フィルタ部915が抽出容器9の姿勢変化(上下の反転)を利用して洗浄される構成であったが、抽出容器の姿勢変化を要せずにフィルタ部を洗浄する構成も採用可能である。図17(A)はその一例を示す。
【0151】
図示の抽出容器9Aは、中空の容器本体920を有する。容器本体920の上端部に水や挽き豆を投入する投入部921が形成され、下端部にコーヒー飲料を送出する管状の送出部922が形成されている。矢印d21はコーヒー飲料の送出方向を示している。送出部922にはフィルタ部930が構成されており、フィルタ部930はフィルタ931、フィルタ932が設けられている。フィルタ931、932は上記実施形態のフィルタ916a、917aに相当する。つまり、フィルタ932はフィルタ931よりも細目のフィルタである。抽出容器9Aは透過式でコーヒー液を抽出する。
【0152】
除去ユニット940は、フィルタ931、932上に堆積する挽き豆の残渣等の不要物を除去する機構である。除去ユニット940は、送出部922の一部を構成する管状の可動部941、942と、可動部941、942を送出方向d21と交差する方向に往復可能な電動シリンダ等のアクチュエータ943とを備える。可動部941は、送出部922のうち、フィルタ931の直上部分を形成し、可動部942はフィルタ932の直上部分を形成する。
【0153】
除去ユニット940の動作について説明する。図17(B)はコーヒー飲料の抽出が終了した状態を示している。フィルタ931上、フィルタ932上には、それぞれ、挽き豆の残渣等の不要物950が堆積している。アクチュエータ943を駆動して図17(C)に示すように、可動部941、942を移動する。可動部941が移動する際、フィルタ931上の不要物950が可動部941によって拭い取られ、送出部922の外部に除去される。また、可動部942が移動する際、フィルタ932上の不要物950が可動部942によって拭い取られ、送出部922の外部に除去される。不要物950の除去後、アクチュエータ943は可動部941、942を元の位置に戻す。これにより図17(A)の状態に戻る。
【0154】
このような構成であれば、抽出容器9Aの姿勢を変更することなく、フィルタ931、932上の不要物を除去することができる。図17(A)~図17(C)の例は、可動部941、942によりフィルタ931、932上を拭う機構であるが、これ以外の構成も採用可能である。例えば、送出部922の周壁の一部を開口可能に構成し、フィルタ931、932上の不要物950を圧縮空気の吹き付けによって送出部922の外部に吹き飛ばす機構であってもよい。
【0155】
<他の実施形態>
上記実施形態では、専らコーヒー飲料を対象としたが、日本茶、紅茶などの茶、スープなどの各種飲料も対象とすることができる。また、抽出対象として、コーヒー豆、コーヒーの生豆、コーヒー豆の挽き豆、焙煎コーヒー豆、焙煎コーヒー豆の挽き豆、焙煎されていないコーヒー豆、焙煎されていないコーヒー豆の挽き豆等、粉末のコーヒー豆、インスタントのコーヒー、ポッドに入ったコーヒー等を例示し、飲料として、コーヒー飲料等を例示し、飲料液としてコーヒー液を例示してきたが、これらだけに限定されない。また、抽出対象として、日本茶、紅茶、ウーロン茶などの茶葉、挽いた茶葉、野菜、粉砕された野菜、果物、粉砕した果物、穀物、粉砕した穀物、椎茸等のきのこ類、椎茸等のきのこ類を粉砕した物、椎茸等のきのこ類を加熱後に乾燥させた物、椎茸等のきのこ類を加熱後に乾燥させた物を粉砕した物、鰹等の魚類、鰹等の魚類を粉砕した物、鰹等の魚を加熱後に乾燥させた物、鰹等の魚を加熱後に乾燥させた物を粉砕した物、こんぶ等の海藻類、こんぶ等の海藻類を粉砕した物、こんぶ等の海藻類を加熱後に乾燥させた物、こんぶ等の海藻類を加熱後に乾燥させた物を粉砕した物、牛、豚、鳥、等の肉を加熱後に乾燥させた物、当該肉等を加熱後に乾燥させた物を粉砕した物、牛の骨、豚の骨、鳥の骨、等の肉を加熱後に乾燥させた物、当該骨等を加熱後に乾燥させた物を粉砕した物等の抽出材料であればよく、飲料として、日本茶、紅茶、ウーロン茶、野菜ジュース、果物ジュース、汁物、出汁、スープ等、飲料であればよく、飲料液として、日本茶のエキス、紅茶のエキス、ウーロン茶のエキス、野菜のエキス、果物のエキス、きのこのエキス、魚等のエキス、肉のエキス、骨のエキス等のエキス類であればよい。なお、実施例中で水、水道水、浄水、お湯、洗浄水と記載しているところがあるが、例えば水をお湯と置き換えたり、お湯を水と置き換えてもよい等いずれかの記載を別の記載に置き換えてもよく、全て液体、水蒸気、高温水、冷却水、冷水等と置き換えてもよい。例えば抽出対象(例えば、焙煎コーヒー豆の挽き豆)とお湯を抽出容器9に入れるといった記載であれば、抽出対象(例えば、焙煎コーヒー豆の挽き豆)と冷水(単に水でもよい)を抽出容器9に入れるといった記載に置き換えてもよく、この場合であれば水出しコーヒー等の抽出方法や飲料製造装置としてとらえてもよい。
【0156】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は以下の装置及び方法を少なくとも開示する。
【0157】
1.上記実施形態の抽出装置は、抽出対象から飲料液を抽出する抽出装置(例えば3)であって、
前記抽出対象と液体が収容される抽出容器(例えば9,9A)と、
前記抽出対象と前記飲料液とを分離する複数のフィルタ(例えば916a,917a,931,932)と、を備え、
前記複数のフィルタは、
第一のフィルタ(例えば916a,931)と、
前記飲料液の送出方向(例えばd11)で前記第一のフィルタよりも下流側の第二のフィルタ(例えば917a,932)と、を含み、
前記第二のフィルタは、前記第一のフィルタよりも細目のフィルタである。
この実施形態によれば、抽出対象と飲料液の分離に特徴のある技術を提供することができる。フィルタの目詰まりの発生を抑制しつつ、より細かな不要物を飲料液から分離することができ、舌触りがよく、後味がスッキリした飲料液を提供することができる場合がある。
【0158】
2.上記実施形態の抽出装置は、
前記第二のフィルタの不要物を除去する除去機能(例えばS4,940)を備える。
この実施形態によれば、フィルタを取り外すことなく不要物を除去することができる場合があり、品質のばらつきの少ない飲料液を抽出できる場合がある。
【0159】
3.上記実施形態の抽出装置は、
前記第二のフィルタから前記第一のフィルタの方向に、前記不要物を除去するための液体を供給する機能を備える(例えばS21,S22)。
この実施形態によれば、液体の流れによって不要物を除去できる場合がある。
【0160】
4.上記実施形態の抽出装置は、
前記抽出容器の姿勢を変化させる姿勢変化手段(例えば8B)を備え、
前記抽出容器は、送出部(例えば914)と排出部(例えば904)を備え、
前記複数のフィルタによって前記抽出対象から分離された飲料液が前記送出部から送出され、
前記抽出容器内の前記不要物は、前記排出部から排出される。
この実施形態によれば、前記送出部が不要物で汚れることを防止できる場合がある。
【0161】
5.上記実施形態の抽出装置は、
前記第一のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記第二のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記第一のフィルタと重ねられ、該第一のフィルタを支持する第一の多孔板(例えば916b)と、
前記第二のフィルタと重ねられ、該第二のフィルタを支持する第二の多孔板(例えば917b)と、を更に備え、
前記第一の多孔板の各孔に、前記第一のフィルタの複数の孔が位置しており、
前記第二の多孔板の各孔に、前記第二のフィルタの複数の孔が位置している。
この実施形態によれば、飲料液の流れに対する抵抗を小さくしつつ、前記フィルタを前記多孔板で支持できる場合がある。
【0162】
6.上記実施形態の抽出装置では、
前記第一の多孔板と前記第二の多孔板は同じ多孔板であり、
前記第一の多孔板の各孔と、前記第二の多孔板の各孔が、前記送出方向に重なるように配置されている。
この実施形態によれば、部品種を削減できる場合があり、また、飲料液の流れに対する抵抗を小さくしつつ、前記フィルタを前記多孔板で支持できる場合がある。
【0163】
7.上記実施形態の抽出装置では、
前記第一のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記第二のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記第一のフィルタと重ねられ、該第一のフィルタを挟んで支持する一対の第一の多孔板(例えば916b)と、
前記第二のフィルタと重ねられ、該第二のフィルタを挟んで支持する一対の第二の多孔板(例えば917b)と、
前記一対の第一の多孔板及び前記一対の第二の多孔板を保持する筒状の保持部材(例えば918)と、を更に備え、
前記保持部材の内周面には、
前記一対の第一の多孔板の周縁を保持する第一の環状凹部(例えばGR1)と、
前記一対の第二の多孔板の周縁を保持する第二の環状凹部(例えばGR2)と、
前記第一の環状凹部と前記第二の環状凹部との間の環状凸部(例えばPR)と、が形成されている。
この実施形態によれば、前記保持部材によって前記第一のフィルタと前記第二のフィルタとの間に隙間を形成しながらこれらのフィルタを支持することができる場合がある。
【0164】
8.上記実施形態の抽出方法は、抽出対象から飲料液を抽出する抽出方法であって、
抽出容器(例えば9,9A)に前記抽出対象と液体とを収容する工程(例えばS2,S12)と、
前記抽出対象と前記飲料液とを複数のフィルタ(例えば916a,917a,931,932)により分離する工程(例えばS17)と、を備え、
前記複数のフィルタは、
第一のフィルタ(例えば916a,931)と、
前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタよりも下流側の第二のフィルタ(例えば917a,932)と、を含み、
前記第二のフィルタは、前記第一のフィルタよりも細目のフィルタである。
この実施形態によれば、抽出対象と飲料液の分離に特徴のある技術を提供することができる。フィルタの目詰まりの発生を抑制しつつ、より細かな不要物を飲料液から分離することができ、舌触りがよく、後味がスッキリした飲料液を提供することができる場合がある。
【0165】
9.上記実施形態の抽出方法は、
前記第二のフィルタの不要物を除去する工程(例えばS4)を更に備える。
この実施形態によれば、品質のばらつきの少ない飲料液を抽出できる場合がある。
11.上記実施形態の抽出装置は、
抽出対象から飲料液を抽出する抽出装置であって、
前記抽出対象と液体が収容される抽出容器と、
前記抽出対象と前記飲料液とを分離する複数のフィルタと、
複数の多孔板と、を備え、
前記複数のフィルタは、
第一のフィルタと、
前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタよりも下流側の第二のフィルタと、を含み、
前記第二のフィルタは、前記第一のフィルタよりも細目のフィルタであり、
前記第一のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記第二のフィルタは、シート状のフィルタであり、
前記複数の多孔板は、
前記第一のフィルタと重ねられる第一の多孔板と、
前記第二のフィルタと重ねられる第二の多孔板と、を含み、
前記第一の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタの上流側で前記第一のフィルタに重ねられるハニカム板であり、
前記第二の多孔板は、前記飲料液送出方向で前記第二のフィルタの上流側で前記第二のフィルタに重ねられるハニカム板である
12.上記実施形態の抽出装置は、
前記第二のフィルタから前記第一のフィルタの方向に、不要物を除去するための液体を供給する機能を備え、
前記複数の多孔板は、
前記第一のフィルタと重ねられる第三の多孔板と、
前記第二のフィルタと重ねられる第四の多孔板と、を含み、
前記第三の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第一のフィルタの下流側で前記第一のフィルタと重ねられるハニカム板であり、
前記第四の多孔板は、前記飲料液の送出方向で前記第二のフィルタの下流側で前記第二のフィルタと重ねられるハニカム板であり、
前記第一の多孔板と前記第三の多孔板とは、前記第一のフィルタを挟んで支持し、
前記第二の多孔板と前記第四の多孔板とは、前記第一のフィルタを挟んで支持し、
前記第一の多孔板の各孔と前記第三の多孔板の各孔とは、前記飲料液の送出方向に重なるように配置され、
前記第二の多孔板の各孔と前記第四の多孔板の各孔とは、前記飲料液の送出方向に重なるように配置されている
【0166】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0167】
1 飲料製造装置、3 抽出装置、916a フィルタ、917a フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17