(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】in vivo画像化のためのプロテアーゼ活性化コントラスト剤
(51)【国際特許分類】
C09B 23/08 20060101AFI20220930BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C09B23/08 CSP
A61K49/00
(21)【出願番号】P 2019553932
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 US2018025567
(87)【国際公開番号】W WO2018183960
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-26
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ボギョ, マシュー エス.
(72)【発明者】
【氏名】フェルドゥース, マルテイン
(72)【発明者】
【氏名】オフォリ, レスリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィットハナ, ニマリ ピー.
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-519320(JP,A)
【文献】国際公開第2016/118910(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
A61K 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化36】
(式中、Dはベンゾインドール色素を含む検出可能な要素であり;
Qはクエンチャーであり;
L
0およびL
1はリンカーであり;
AA
2はアミノ酸側鎖であり;
UはO、NH、またはSであり;
Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、または保護基であり、1~3個のA基で任
意で置換されており;
各A基は独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、アラルキル、アラルコキシ、アラルカノイル、アラルカミノ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルコキシ、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアラルカミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルカノイル、シクロアルカミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロシクリルアルカノイル、ヘテロシクリルアルカミノ、ヒドロキシル、チオ、アミノ、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、アルキルカルボキシ、カーボネート、カルバメート、グアニジニル、尿素、ハロ、トリハロメチル、シアノ、ニトロ、ホスホリル、スルホニル、スルホンアミド、またはアジドである)
を有する化合物
であって、
ここで、前記ベンゾインドール色素が、構造:
【化37】
(式中、oは1~4の整数であり;
R
1
はC
2
-C
8
アルキル基であり、任意で、スルホネートまたはカーボネートで置換されており;
各R
2
は独立に、C
1
-C
6
アルキル基であり;
L
2
は、任意で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意で置換されている)
を有する、化合物。
【請求項2】
前記ベンゾインドール色素が、構造:
【化38】
を有する、請求項
1に記載の化合物。
【請求項3】
AA
2が、1~3個のA基で任
意で置換されたアラルキルアミノ酸側鎖である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
UがOである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
L
0およびL
1が、それぞれ独立に、任
意で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任
意で置き換えられている、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
L
0およびL
1が、それぞれ独立にC
2~8アルキルリンカーである、請求項
5に記載の化合物。
【請求項7】
L
1がC
4アルキルリンカーである、請求項
6に記載の化合物。
【請求項8】
QがQSYクエンチャーである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記QSYクエンチャーが親水性QSYクエンチャーである、請求項
8に記載の化合物。
【請求項10】
前記親水性QSYクエンチャーがスルホ-QSYクエンチャーである、請求項
9に記載の化合物。
【請求項11】
QがQC-1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
式(II):
【化39】
(式中、
n’およびn”はそれぞれ独立に、2~8の整数であり;
R
1はQSYクエンチャーまたはQC-1であり;
R
2は
前記ベンゾインドール色素である)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
n”が4である、請求項1
2に記載の化合物。
【請求項14】
n’が2、4または6である、請求項1
3に記載の化合物。
【請求項15】
以下の構造式:
【化40】
による、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1~1
5のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む、動物における組織の標識において使用するための組成物。
【請求項17】
動物における腫瘍を可視化する方法における使用のための、請求項1
6に記載の組成物であって、前記方法は、
前記組成物を前記動物に投与するステップ;および
前記動物において、前記組成物のカテプシンシステインプロテアーゼとの反応から発生した検出可能なシグナルを測定するステップ
を含み、前記検出可能なシグナルが前記動物における病変組織と関係している、
組成物。
【請求項18】
前記検出可能なシグナルが蛍光シグナルである、請求項1
7に記載の組成物。
【請求項19】
前記蛍光シグナルが近赤外シグナルである、請求項1
8に記載の組成物。
【請求項20】
前記検出可能なシグナルが腫瘍周辺で発生する、請求項1
7に記載の組成物。
【請求項21】
前記検出可能なシグナルが、画像誘導型外科装置を使用して測定される、請求項1
7に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年3月30日に出願された米国仮出願第62/478,639号の利益を主張し、その開示の全体が、参照によって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
政府支援の陳述
本発明は、国立衛生研究所によって授与された、契約EB005011およびHL116307のもとの政府支援により行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
外科的介入は、現在、実質的にすべての種類の固形腫瘍のための最も一般的な治療法である。Siegelら、(2012年)CA Cancer J. Clin. 62巻:220~41頁;DeSantisら、(2014年)CA Cancer J. Clin. 64巻:252~71頁。したがって、首尾よい結果は、冒されている原発臓器および潜在的な転移部位の両方からのすべてのがん細胞の、外科手術中での完全な除去を条件とする。Vahrmeijerら、(2013年)Nat. Rev. Clin. Oncol. 10巻:507~18頁。治療結果を改善するために、がんにおける特異的なバイオマーカーを標的とするコントラスト剤を、術中コントラスト剤として使用して、固形腫瘍の外科的切除を誘導することができる。Miwaら、(2014年)J. Orthop. Res. 32巻:1596~601頁;Fujita(2012年)J. Am. Coll. Surg. 215巻:591頁。多様な画像化手法の中で、蛍光コントラスト剤を利用する光学をベースとした技術は、大きな潜在能力を有している。RudinおよびWeissleder(2003年)Nat. Rev. Drug Discov. 2巻:123~31頁;Bednarら、(2007年)Expert Opin. Drug Discov. 2巻:65~85頁。インドシアニングリーン(ICG)、フルオレセイン、メチレンブルーおよび5-アミノレブリン酸(5-aminolevuliric acid)(5-ALA)は、すべて、種々の腫瘍の可視化のための注入可能な増進剤として現在承認されている非標的化コントラスト剤である。Schaafsmaら、(2011年)J. Surg. Oncol. 104巻:323~32頁;Tanakaら、(2006年)Ann. Surg. Oncol. 13巻:1671~81頁。さらに、いくつかの標的化コントラスト剤が、臨床開発の様々な段階にある。Kovarら、(2007年)Anal. Biochem. 367巻:1~12頁。とりわけ、葉酸受容体αを標的とするFITCプローブは、卵巣がんの治療のための術中蛍光誘導外科手術(FGS)の価値を実証するための臨床試験において使用された。van Damら、(2011年)Nat. Med. 17巻:1315~9頁。さらに、クロロトキシン-Cy5.5などの他の腫瘍標的化剤は、がんの種々のマウスモデルを使用して悪性がん細胞の光学的画像化について確認されている。しかし、この薬剤についての腫瘍選択性の機序は十分に理解されてはいない。Veisehら、(2007年)Cancer Res. 67巻:6882~8頁。
【0004】
一般的な腫瘍標的化コントラスト剤の代替となり得るアプローチは、腫瘍または周辺部分と関係がある酵素活性によって作用を受けた場合に、腫瘍組織においてシグナルを発生または蓄積するのみな、いわゆる「スマートプローブ」の使用である。スマートプローブ設計での1つの有用な戦略は、プロテアーゼによって切断された場合にシグナルを発生するプローブを作製することである。プロテアーゼは、腫瘍の成長および転移、ならびに線維症、炎症、骨粗しょう症および関節炎などの多様な病理において重要な役割を果たすので、プロテアーゼによって活性化されるコントラスト剤は、多くの疾患の検出および治療に役立つことが証明できている。Turk(2006年)Nat. Rev. Drug Discov. 5巻:785~99頁;DragおよびSalvesen(2010年)Nat. Rev. Drug Discov. 9巻:690~701頁。
【0005】
腫瘍画像化用途のためのいくつかのプローブは、報告されている血管形成および腫瘍成長におけるそれらの役割に帰因して、マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)を標的としている。これは、切断によってシグナルを発生する小分子ベースのプローブと大きなポリマーベースのプローブの両方、ならびにMMPによって切断された場合、細胞内に蓄積するマスクされた細胞透過性ペプチドを含む。MMPの代替として、システインカテプシンは腫瘍形成の様々な側面の重要な制御因子である。Shreeら、(2011年)Genes Dev. 25巻:2465~79頁。これらのプロテアーゼも、内因性炎症反応を制御する多くの細胞において高度に発現し、活性化される。MohamedおよびSloane(2006年)Nat. Rev. Cancer 6巻:764~75頁。一般に、システインカテプシン活性は、免疫細胞の浸潤の増大に起因して、実質的にすべての固形腫瘍において高くなる。Mitchemら、(2013年)Cancer Res. 73巻:1128~41頁;McIntyreおよびMatrisian(2003年)J. Cell. Biochem. 90巻:1087~97頁;FonovicおよびBogyo(2007年)Curr. Pharm. Des. 13巻:253~61頁;Gochevaら、(2010年)Genes Dev. 24巻:241~55頁。したがって、システインカテプシンは、腫瘍特異的コントラスト画像化剤の設計において、標的とされている。このような薬剤には、ターンオーバーの間にカテプシンに共有結合性の修飾をする蛍光活性ベースプローブ(Verdoesら、(2013年)J. Am. Chem. Soc. 135巻:14726~30頁;LeeおよびBogyo(2010年)ACS Chem. Biol. 5巻:233~43頁;Blumら、(2005年)Nat. Chem. Biol. 1巻:203~9頁;Blumら、(2007年)Nat. Chem. Bio. 3巻:668~677頁;Verdoesら、(2012年)Chem. Biol. 19巻:619~28頁)、ある範囲の高分子量および低分子量のクエンチされた基質プローブ(Watzkeら、(2008年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 47巻:406~9頁;Huら、(2014年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 53巻:7669~73頁)、ならびに蛍光発生性のターンオン(turn-on)基質プローブ(Kisin-Finferら、(2014年)Bioorg. Med. Chem. Lett. 24巻:2453~8頁;Chowdhuryら、(2014年)J. Med. Chem. 57巻:6092~104頁;Fujiiら、(2014年)Bioconjug. Chem. 25巻:1838~46頁)が含まれる。報告されているプロテアーゼ-誘発スマートプローブのすべてが、がんのマウスモデルにおいて腫瘍周辺の画像化に有用であることが証明されているが(Verdoesら、(2013年)J. Am. Chem. Soc. 135巻:14726~30頁;Huら、(2014年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 53巻:7669~73頁;Mitoら、(2012年)Cancer 118巻:5320~30頁)、すべてが、腫瘍コントラストに関して限界があり、どれも臨床的に承認されている画像化機器で使用されていない。さらに、大部分は、皮膚表面でまたはその近傍で大きな腫瘍が画像化されるがんの簡単なグラフトモデルを使用して確認されているだけである。したがって、多くの腫瘍タイプについて高いコントラストを有し、既存の外科的ワークフローの範囲内で既存の臨床機器で使用できる標的化コントラスト剤の最適化は、多くの外科的手順に対して変革的なものであろう。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0036725号には、カテプシンなどの活性プロテアーゼを含む細胞の画像化のための方法および材料が開示されている。米国特許出願公開第2009/0252677号には、in vivoでのカテプシンを含む標的酵素の放射性標識において有用な放射性標識された活性ベースプローブが開示されている。それぞれの場合、プローブは、プロテアーゼ活性部位に共有結合性の修飾をするためにエステル結合したアシルオキシメチルケトン(AOMK)反応基を使用する。非ペプチド性の活性ベース蛍光プローブは、PCT国際公開番号WO2012/118715に開示されている。
【0007】
PCT国際公開番号WO2014/145257は、エーテル結合された2,3,5,6-テトラフルオロ置換フェノキシメチルケトン(PMK)脱離要素を含むクエンチされたABPを開示している。開示されたABPの検出可能な成分は、酵素によるターンオーバー後、それらの標的プロテアーゼと共有結合したままである。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0301950号は、ダーククエンチャー、アミノ酸主鎖、フルオロフォア、6-アミノヘキサン酸、アミノエトキシエトキシアセチルスペーサーおよびメトキシポリエチレングリコール(mPEG)鎖を含む画像化剤を開示している。この薬剤は、カテプシンによって切断されて蛍光シグナルを発生し、それによって異常細胞を画像化するとされている。この技術は、組織の表面でまたはその近傍で異常細胞を特定することを指向している。
カスパーゼおよび他のシステインプロテアーゼの、活性ベースの他の阻害剤が、PCT国際公開番号WO2012/021800、米国特許出願公開第2002/0052323号、米国特許出願公開第2002/0028774号、PCT国際公開番号WO96/41638、および欧州特許出願公開第EP0272671号に報告されている。
これらの開示にも関わらず、高い細胞取り込み能を有し、広範囲の動物プロテアーゼを標的とし、様々な波長で、特に、病変組織を透過することができる波長での検出感度の増大を提供する新規な活性ベースコントラスト剤に対する必要性が、当該分野において依然としてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2007/0036725号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0252677号明細書
【文献】国際公開第2012/118715号
【文献】国際公開第2014/145257号
【文献】米国特許出願公開第2014/0301950号明細書
【文献】国際公開第2012/021800号
【文献】米国特許出願公開第2002/0052323号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0028774号明細書
【文献】国際公開第96/41638号
【文献】欧州特許出願公開第0272671号明細書
【非特許文献】
【0010】
【文献】Siegelら、(2012年)CA Cancer J. Clin. 62巻:220~41頁
【文献】DeSantisら、(2014年)CA Cancer J. Clin. 64巻:252~71頁
【文献】Vahrmeijerら、(2013年)Nat. Rev. Clin. Oncol. 10巻:507~18頁
【文献】Miwaら、(2014年)J. Orthop. Res. 32巻:1596~601頁
【文献】Fujita(2012年)J. Am. Coll. Surg. 215巻:591頁
【文献】RudinおよびWeissleder(2003年)Nat. Rev. Drug Discov. 2巻:123~31頁
【文献】Bednarら、(2007年)Expert Opin. Drug Discov. 2巻:65~85頁
【文献】Schaafsmaら、(2011年)J. Surg. Oncol. 104巻:323~32頁
【文献】Tanakaら、(2006年)Ann. Surg. Oncol. 13巻:1671~81頁
【文献】Kovarら、(2007年)Anal. Biochem. 367巻:1~12頁
【文献】van Damら、(2011年)Nat. Med. 17巻:1315~9頁
【文献】Veisehら、(2007年)Cancer Res. 67巻:6882~8頁
【文献】Turk(2006年)Nat. Rev. Drug Discov. 5巻:785~99頁
【文献】DragおよびSalvesen(2010年)Nat. Rev. Drug Discov. 9巻:690~701頁
【文献】Shreeら、(2011年)Genes Dev. 25巻:2465~79頁
【文献】MohamedおよびSloane(2006年)Nat. Rev. Cancer 6巻:764~75頁
【文献】Mitchemら、(2013年)Cancer Res. 73巻:1128~41頁
【文献】McIntyreおよびMatrisian(2003年)J. Cell. Biochem. 90巻:1087~97頁
【文献】FonovicおよびBogyo(2007年)Curr. Pharm. Des. 13巻:253~61頁
【文献】Gochevaら、(2010年)Genes Dev. 24巻:241~55頁
【文献】Verdoesら、(2013年)J. Am. Chem. Soc. 135巻:14726~30頁
【文献】LeeおよびBogyo(2010年)ACS Chem. Biol. 5巻:233~43頁
【文献】Blumら、(2005年)Nat. Chem. Biol. 1巻:203~9頁
【文献】Blumら、(2007年)Nat. Chem. Bio. 3巻:668~677頁
【文献】Verdoesら、(2012年)Chem. Biol. 19巻:619~28頁
【文献】Watzkeら、(2008年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 47巻:406~9頁
【文献】Huら、(2014年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 53巻:7669~73頁
【文献】Kisin-Finferら、(2014年)Bioorg. Med. Chem. Lett. 24巻:2453~8頁
【文献】Chowdhuryら、(2014年)J. Med. Chem. 57巻:6092~104頁
【文献】Fujiiら、(2014年)Bioconjug. Chem. 25巻:1838~46頁
【文献】Mitoら、(2012年)Cancer 118巻:5320~30頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要約
本発明は、動物プロテアーゼを標的とする化合物、組成物、ならびにその化合物および組成物の使用方法を提供することによって上記およびその他の必要性に対処する。特に、本発明の一態様によれば、構造式(I):
【化1】
(式中、
Dは、ベンゾインドール色素を含む検出可能な要素であり;
Qはクエンチャーであり;
L
0およびL
1はリンカーであり;
AA
2はアミノ酸側鎖であり;
UはO、NHまたはSであり;
Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルまたは保護基であり、1~3個のA基で任意選択で置換されており;
各Aは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、アラルキル、アラルコキシ、アラルカノイル、アラルカミノ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルコキシ、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアラルカミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルカノイル、シクロアルカミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロシクリルアルカノイル、ヘテロシクリルアルカミノ、ヒドロキシル、チオ、アミノ、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、アルキルカルボキシ、カルボネート、カルバメート、グアニジニル、尿素、ハロ、トリハロメチル、シアノ、ニトロ、ホスホリル、スルホニル、スルホンアミド、またはアジドである)
によって表される通りの化合物が提供される。
【0012】
式(I)のいくつかの化合物実施形態では、ベンゾインドール色素は、構造:
【化2】
(式中、oは1~4の整数であり;
R
1は、任意選択で、スルホネートまたはカーボネートで置換されたC
2-C
8アルキル基であり;
各R
2は独立に、C
1-C
6アルキル基であり;
L
2は、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置換されている)
を有する。
【0013】
より具体的には、ベンゾインドール色素は、構造:
【化3】
を有してもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、AA2は、1~3個のA基で任意選択で置換されたアラルキルアミノ酸側鎖であり、いくつかの実施形態では、UはOである。いくつかの実施形態では、L0およびL1はそれぞれ独立に、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置き換えられている。特定の実施形態では、L0およびL1はそれぞれ独立に、C2~8アルキルリンカーである。さらにより具体的には、L1はC4アルキルリンカーである。
【0015】
いくつかの実施形態では、QはQSYクエンチャー、より具体的には、親水性QSYクエンチャーであり、さらにより具体的には、親水性QSYクエンチャーはスルホ-QSYクエンチャーである。他の特定の実施形態では、QはQC-1である。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、本発明の化合物は構造式(II):
【化4】
(式中、
n’およびn”はそれぞれ独立に、2~8の整数であり;
R
1はQSYクエンチャーまたはQC-1であり;
R
2はベンゾインドール色素である)
を有する。
【0017】
より具体的には、n’は2、4もしくは6であってよい、またはn”は4であってよい。さらにより具体的には、n’は2、4または6であり、n”は4である。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、以下の構造:
【化5】
を有する。
【0019】
本発明の別の態様では、構造式(III):
【化6】
(式中、
Dはベンゾインドール色素を含む検出可能な要素であり;
L
0はリンカーであり;
Tは、任意選択でクエンチャーを含むプロテアーゼ標的化要素であり;
ただし、L
0はエトキシエトキシスペーサーを含まないものとする)
によって表される通りの化合物が提供される。
【0020】
式(III)の構造を有するいくつかの化合物実施形態によれば、Tはクエンチャーを含む。
【0021】
式(III)のいくつかの実施形態では、L0は、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置き換えられている。特に、L0はC2~8アルキルリンカーであってよい。
【0022】
Tがクエンチャーを含むいくつかの化合物実施形態では、クエンチャーはQSYクエンチャーであってよい。特に、QSYクエンチャーは親水性QSYクエンチャーであってよく、より具体的には、親水性QSYクエンチャーはスルホ-QSYクエンチャーであってよい。Tがクエンチャーを含むいくつかの実施形態では、クエンチャーはQC-1である。
【0023】
式(III)のいくつかの実施形態では、Tはペプチド性標的化要素である。特定の実施形態では、Tは4つ以下のアミノ酸残基を含む。いくつかの実施形態では、Tは、クエンチャーを任意選択で含む、カテプシン標的化要素である。より具体的には、TはカテプシンLまたはカテプシンVに対して選択性があり得る。
【0024】
式(III)のいくつかの実施形態では、Tは
【化7】
であり、
AA
1およびAA
2は、それぞれ独立にアミノ酸側鎖であり;
UはO、NHまたはSであり;
Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルまたは保護基であり、1~3個のA基で任意選択で置換されており;
各Aは独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、アラルキル、アラルコキシ、アラルカノイル、アラルカミノ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルコキシ、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアラルカミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルカノイル、シクロアルカミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロシクリルアルカノイル、ヘテロシクリルアルカミノ、ヒドロキシル、チオ、アミノ、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、アルキルカルボキシ、カルボネート、カルバメート、グアニジニル、尿素、ハロ、トリハロメチル、シアノ、ニトロ、ホスホリル、スルホニル、スルホンアミド、またはアジドである。
【0025】
特定の実施形態では、AA1は塩基性アミノ酸側鎖であり、AA2はアラルキルアミノ酸側鎖であり、それぞれは1~3個のA基で任意選択で置換されている。他の特定の実施形態では、UはOである。さらに他の特定の実施形態では、Tはクエンチャーを含む。
【0026】
Tが
【化8】
である式(III)のいくつかの実施形態では、Dは放射性物質を含む。
【0027】
Tが
【化9】
であり、式(III)のいくつかの実施形態では、AA
1はクエンチャーを含む。より具体的には、AA
1は-L
1-Qであってよく、ここで、L
1はリンカーであり、Qはクエンチャーである。これらの実施形態では、より具体的には、L
1は、任意選択で置換されたアルキルリンカーであってよく、ここで、各炭素原子は、ヘテロ原子で任意選択で置き換えられている。さらにより具体的には、L
1は、C
4アルキルリンカーなどのC
2~8アルキルリンカーであってよい。
【0028】
上記の式(III)の化合物のいくつかでは、AA2は、1~3個のA基で任意選択で置換されたアラルキルアミノ酸側鎖である。これらの化合物のいくつかでは、UはOである。上記化合物のいくつかでは、Qは、QSYクエンチャー、例えば親水性QSYクエンチャー、またはさらにはスルホ-QSYクエンチャーである。
【0029】
別の態様では、本発明は、動物における組織の標識化において使用するための組成物を提供する。これらの組成物は、上記化合物のいずれかまたは薬学的に許容されるその塩、および薬学的に許容される担体を含む。
【0030】
さらに別の態様では、本発明は、動物における組織を標識化する方法を提供する。これらの方法は、上記組成物のいずれかを動物に投与するステップを含む。
【0031】
さらにまた別の態様では、本発明は、動物における腫瘍を可視化する方法を提供する。
この方法は、
上記組成物のいずれかを動物に投与するステップ;および
動物において、組成物のカテプシンシステインプロテアーゼとの反応から発生した検出可能なシグナルを測定するステップ;
を含み、検出可能なシグナルは動物における病変組織と関係している。
【0032】
実施形態では、検出可能なシグナルは蛍光シグナルである。より具体的には、蛍光シグナルは近赤外シグナルである。
【0033】
他の実施形態では、検出可能なシグナルは腫瘍周辺で発生する。
【0034】
さらに他の実施形態では、検出可能なシグナルは、画像誘導型外科装置を使用して測定される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
式(I)
【化36】
(式中、Dはベンゾインドール色素を含む検出可能な要素であり;
Qはクエンチャーであり;
L
0
およびL
1
はリンカーであり;
AA
2
はアミノ酸側鎖であり;
UはO、NH、またはSであり;
Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、または保護基であり、1~3個のA基で任意選択で置換されており;
各A基は独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、アラルキル、アラルコキシ、アラルカノイル、アラルカミノ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルコキシ、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアラルカミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルカノイル、シクロアルカミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロシクリルアルカノイル、ヘテロシクリルアルカミノ、ヒドロキシル、チオ、アミノ、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、アルキルカルボキシ、カーボネート、カルバメート、グアニジニル、尿素、ハロ、トリハロメチル、シアノ、ニトロ、ホスホリル、スルホニル、スルホンアミド、またはアジドである)
を有する化合物。
(項目2)
前記ベンゾインドール色素が、構造:
【化37】
(式中、oは1~4の整数であり;
R
1
はC
2
-C
8
アルキル基であり、任意選択で、スルホネートまたはカーボネートで置換されており;
各R
2
は独立に、C
1
-C
6
アルキル基であり;
L
2
は、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置換されている)
を有する、項目1に記載の化合物。
(項目3)
前記ベンゾインドール色素が、構造:
【化38】
を有する、項目2に記載の化合物。
(項目4)
AA
2
が、1~3個のA基で任意選択で置換されたアラルキルアミノ酸側鎖である、項目1に記載の化合物。
(項目5)
UがOである、項目1に記載の化合物。
(項目6)
L
0
およびL
1
が、それぞれ独立に、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置き換えられている、項目1に記載の化合物。
(項目7)
L
0
およびL
1
が、それぞれ独立にC
2~8
アルキルリンカーである、項目6に記載の化合物。
(項目8)
L
1
がC
4
アルキルリンカーである、項目7に記載の化合物。
(項目9)
QがQSYクエンチャーである、項目1に記載の化合物。
(項目10)
前記QSYクエンチャーが親水性QSYクエンチャーである、項目9に記載の化合物。
(項目11)
前記親水性QSYクエンチャーがスルホ-QSYクエンチャーである、項目10に記載の化合物。
(項目12)
QがQC-1である、項目1に記載の化合物。
(項目13)
式(II):
【化39】
(式中、
n’およびn”はそれぞれ独立に、2~8の整数であり;
R
1
はQSYクエンチャーまたはQC-1であり;
R
2
はベンゾインドール色素である)
を有する、項目1に記載の化合物。
(項目14)
n”が4である、項目13に記載の化合物。
(項目15)
n’が2、4または6である、項目14に記載の化合物。
(項目16)
以下の構造式:
【化40】
による、項目1に記載の化合物。
(項目17)
式(III):
【化41】
(式中、Dは、ベンゾインドール色素を含む検出可能な要素であり;
L
0
はリンカーであり;
Tは、クエンチャーを任意選択で含む、プロテアーゼ標的化要素であり;
ただし、L
0
はエトキシエトキシスペーサーを含まないものとする)
を有する化合物。
(項目18)
Tがクエンチャーを含む、項目17に記載の化合物。
(項目19)
L
0
が、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置き換えられている、項目18に記載の化合物。
(項目20)
L
0
がC
2~8
アルキルリンカーである、項目19に記載の化合物。
(項目21)
前記クエンチャーがQSYクエンチャーである、項目18に記載の化合物。
(項目22)
前記QSYクエンチャーが親水性QSYクエンチャーである、項目21に記載の化合物。
(項目23)
前記親水性QSYクエンチャーがスルホ-QSYクエンチャーである、項目22に記載の化合物。
(項目24)
前記クエンチャーがQC-1である、項目18に記載の化合物。
(項目25)
Tがペプチド性標的化要素である、項目17に記載の化合物。
(項目26)
Tが4つ以下のアミノ酸残基を含む、項目25に記載の化合物。
(項目27)
Tが、クエンチャーを任意選択で含む、カテプシン標的化要素である、項目17に記載の化合物。
(項目28)
Tが、カテプシンLまたはカテプシンVに対して選択的である、項目27に記載の化合物。
(項目29)
Tが、
【化42】
であり、
AA
1
およびAA
2
が、それぞれ独立にアミノ酸側鎖であり;
UがO、NHまたはSであり;
Rが、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルまたは保護基であり、1~3個のA基で任意選択で置換されており;
各Aが、独立にアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、アラルキル、アラルコキシ、アラルカノイル、アラルカミノ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルコキシ、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアラルカミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルカノイル、シクロアルカミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロシクリルアルカノイル、ヘテロシクリルアルカミノ、ヒドロキシル、チオ、アミノ、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、アルキルカルボキシ、カルボネート、カルバメート、グアニジニル、尿素、ハロ、トリハロメチル、シアノ、ニトロ、ホスホリル、スルホニル、スルホンアミド、またはアジド
である、項目17に記載の化合物。
(項目30)
AA
1
が塩基性アミノ酸側鎖であり、AA
2
がアラルキルアミノ酸側鎖であり、それぞれが1~3個のA基で任意選択で置換されている、項目29に記載の化合物。
(項目31)
UがOである、項目29に記載の化合物。
(項目32)
Tがクエンチャーを含む、項目29に記載の化合物。
(項目33)
AA
1
がクエンチャーを含む、項目32に記載の化合物。
(項目34)
AA
1
が-L
1
-Q;
(式中、L
1
はリンカーであり;
Qはクエンチャーである)
である、項目33に記載の化合物。
(項目35)
L
1
が、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置き換えられている、項目34に記載の化合物。
(項目36)
L
1
がC
2~8
アルキルリンカーである、項目35に記載の化合物。
(項目37)
L
1
がC
4
アルキルリンカーである、項目36に記載の化合物。
(項目38)
AA
2
が、1~3個のA基で任意選択で置換された、アラルキルアミノ酸側鎖である、項目34に記載の化合物。
(項目39)
UがOである、項目34に記載の化合物。
(項目40)
QがQSYクエンチャーである、項目34に記載の化合物。
(項目41)
前記QSYクエンチャーが親水性QSYクエンチャーである、項目40に記載の化合物。
(項目42)
前記親水性QSYクエンチャーがスルホ-QSYクエンチャーである、項目41に記載の化合物。
(項目43)
項目1~42のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、および薬学的に許容される担体を含む、動物における組織の標識において使用するための組成物。
(項目44)
動物における組織を標識化する方法であって、
項目43に記載の組成物を前記動物に投与するステップ
を含む方法。
(項目45)
動物における腫瘍を可視化する方法であって、
項目43に記載の組成物を前記動物に投与するステップ;および
前記動物において、前記組成物のカテプシンシステインプロテアーゼとの反応から発生した検出可能なシグナルを測定するステップ
を含み、前記検出可能なシグナルが前記動物における病変組織と関係している、
方法。
(項目46)
前記検出可能なシグナルが蛍光シグナルである、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記蛍光シグナルが近赤外シグナルである、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記検出可能なシグナルが腫瘍周辺で発生する、項目45に記載の方法。
(項目49)
前記検出可能なシグナルが、画像誘導型外科装置を使用して測定される、項目45に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1A~
図1B。カテプシン選択的プロテアーゼ基質プローブの設計。
図1A:プロテアーゼ切断可能なアミド結合を有する6つの基質類似体の化学構造。「nCQ」と指定された構造(化合物2~4)では、「n」値はスペーサーの長さ(n=2、4および6)に対応しており、発色団(C)はリシン側鎖(R
1)と結合しているが、これに対して、「nQC」と指定された構造(化合物5~7)では、「n」の値はやはりスペースの長さに対応しているが、その発色団は、切断可能なアミド結合(R
2)のC末端側のアミン基と結合している。
図1B:プローブ切断の切断された蛍光生成物の保持を改善するためにプローブ設計に導入された潜在的なリソソーム向性(lysosomotropic)効果(LLE)の概略図。
【0036】
【
図2】
図2。複数のカテプシンによる基質切断の動力学的分析。組換えシステインカテプシンを使用した、クエンチされた蛍光nCQおよびnQC基質の酵素ターンオーバー。各パネルでの上部のトレースは、カテプシンL(Cat L)での活性に対応する。各パネルの次に低いトレースは、カテプシンV(Cat V)での活性に対応する。
【0037】
【
図3】
図3A~3B。in vitroでのLLEと非LLE基質の比較。
図3A:組換えカテプシンLによりクエンチされた蛍光nCQおよびnQC基質の切断効率(K
cat/K
M)に対する様々なスペースの長さの効果。
図3B:1μMのクエンチされた蛍光基質(6CQおよび6QC)と共にインキュベートしたRAW264.7細胞の代表的な生細胞蛍光顕微鏡画像。赤色(上部2つのパネルにおける点状の細胞質ゾルでの染色)はプローブのCy5蛍光であり、緑色(中間の2つのパネルにおける点状の細胞質ゾルでの染色)はlysotracker(リソソーム選択的染色)であり、青色(上部2つのパネルおよび中間の2つのパネルにおける核染色)はHoechst33342である。尺度バーは10μmを表す。マージした蛍光(底部2つのパネル)は、Cy5染色とlysotracker染色の重なりを示す。
【0038】
【
図4】
図4A~4C。4T1乳がんモデルでの蛍光基質の検証。
図4A:クエンチされた蛍光nCQおよびnQC基質(n=2、6)を注射されたマウスにおけるシステインカテプシンに関連する腫瘍の非侵襲的時間経過での蛍光画像化、ならびにプローブの静脈注射後0.5 1、4、8および24時間での代表的な時点での画像。底部パネルは、特定の時点での各プローブについての最適な蛍光コントラストを表す。
図4B:24時間にわたる、非リソソーム向性基質であるnCQ、およびリソソーム向性基質であるnQCの腫瘍標識化の動力学および薬物動態特性の比較。エラーバーは、N≧3マウスの平均についての標準偏差を表す。プローブなしの対照マウスを、自家蛍光を補正するために使用した。
図4C:2種類の基質の注射後4時間および24時間でのex vivoでの腫瘍画像化。エラーバーは、N≧3マウスの平均についての標準偏差を表す。
【0039】
【
図5】
図5A~5B。in vivoでの組織中のLLE基質の特異的蓄積の確認。
図5A:24時間エンドポイントでの、基質nCQおよびnQCを注射されたマウスから切除された腫瘍の凍結切片についての組織学的検査。Cy5蛍光は上部パネルに示されており(赤色染色;2QC処理および6QC処理動物においてのみ観察される)、マクロファージについてのCD68免疫染色は中間のパネルに示されており(緑色染色;すべての動物について観察される)、DAPI(核染色)は上部および中間のパネルに示されている(青色染色)。パネルの最終列はマージした蛍光を示す。
図5B:静脈内投与後4時間および24時間での種々の臓器中のプローブの生体内分布。エラーバーは、各時点での、N≧3の平均についての標準偏差を表す。
【0040】
【
図6】
図6A~6E。最適化されたNIRプローブのin vivoでの特性の評価。
図6A:近赤外クエンチされた非リソソーム向性基質6CQNIR(8)およびリソソーム向性類似体6QCNIR(9)の化学構造。
図6B:NIRプローブを使用した乳がんマウスモデルでのシステインカテプシンに関連する腫瘍の非侵襲的な蛍光画像化の時間経過。画像を1、2、3、4、6、12および24時間の時点について示す。底部パネルは、特定の時点での各プローブについての最適蛍光コントラストを表す。
図6C:24時間の時間経過にわたる6CQNIRおよび6QCNIRの腫瘍標識化動力学の定量化。各プローブについてN≧3マウス。エラーバーは平均についての標準偏差を表す。
図6D:2種類の基質を受容したマウスから単離された腫瘍を比較するex vivoでの画像。単離は4時間および24時間の時点であった。
図6E:注射後24時間での、種々の臓器および腫瘍中のプローブの生体内分布。
【0041】
【
図7】
図7A~7D。設計されたカテプシンプローブと併せて臨床用da Vinci手術器具を使用した、結腸直腸、乳房および肺の腺癌の術中蛍光画像誘導検出および切除。
図7A:NIRカメラを備えたda Vinci外科手術ロボットシステムの図形例示。
図7B:LLEプロテアーゼ標的化コントラスト剤、6QCNIR(9)の静脈内投与後6時間での結腸直腸がんAPC
min+マウスモデルの結腸中のポリープの検出。画像は、広げた結腸のリアルタイムでの術中画像化のスクリーンショットから得た。パネルは、切除腫瘍の白色光(左)、蛍光(中央)およびH&E染色(右)によって照射された同じマウスの結腸において検出されたポリープの代表的な画像を示す。
図7C:医療機器およびコントラスト剤6QCNIRを使用したマウス乳房腫瘍(4T1)の検出および蛍光画像誘導による外科的除去。画像は、腫瘍および腫瘍床の白色光照射(左)、蛍光(中央)を比較し、H&E染色(右)により腫瘍の悪性度を確認。
図7D:マウス肺がんの検出および切除におけるプローブの適用、ならびにがんの組織学的検査との相関。
【0042】
【
図8】
図8A~8C。カテプシンを画像化するためのPET基質プローブの設計および検証。
図8A:基質プローブLO263の構造。
図8B:生理食塩水またはブレオマイシンで処理した7日目でのマウスの非侵襲的PET/CTスキャンの2時間および24時間での画像。冠状断(真ん中)、軸横断(右)および矢状断(左)画像を、指定された時点での生理食塩水またはブレオマイシン処理群からの代表的なマウスについて示す。
図8C:異なる処理群における7日目でのすべてのマウスの肺からのPET/CT強度の定量化。エラーバーは、平均±SEM.、7日目(生理食塩水n=4;ブレオマイシンn=4。t-検定により
*p<0.05)を示す。
【0043】
【
図9】
図9A~9B。Dylight780標識プローブ(
図9A)またはインドシアニングリーン(ICG)標識プローブ(
図9B)を用いた、マウスにおける腫瘍の標識化の時間経過の比較。右パネルでは、腫瘍標識化反応のさらに詳細な動力学も示す。
【0044】
【
図10】
図10A~10B。Dylight780標識プローブ(
図10A)またはインドシアニングリーン(ICG)標識プローブ(
図10B)を用いた、マウスにおける腫瘍の標識化の濃度依存性の比較。
【0045】
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
本明細書は、とりわけ、非侵襲的画像化用途で使用するためのクエンチされた蛍光基質プローブの設計および最適化を開示する。特に、クエンチャーとフルオロフォアとの対、または放射性同位体標識を含む、修飾ペプチドが提供される。これらの化合物は、レポーター(クエンチされていないフルオロフォアまたは放射性同位体)およびプロトン化可能なアミンを含むプロテアーゼ切断によって断片を放出し、それによって、放出された断片の増進したリソソームでの保持をもたらす。
【0047】
本発明の化合物は、炎症を含む任意の状態におけるコントラスト画像化に有用である。これらの化合物は、種々の固形腫瘍(乳房、結腸、肺等)の画像誘導型外科手術において特に用途が見出されるが、また、アテローム性動脈硬化症、線維症、感染性疾患(例えば、結核感染症)、およびカテプシンまたは他のプロテアーゼが炎症反応において分泌される任意の状態を診断し監視するのにも有用である。
【0048】
システインプロテアーゼを標的とすることが公知の活性ベースのプローブ(ABP)の従来の例には、パパインファミリーのシステインプロテアーゼを共有結合により標的とする一連のクエンチされた近赤外蛍光活性ベースプローブ(qNIRF-ABP)(Blumら、(2007年)Nat. Chem. Bio.3巻:668~677頁)、およびエーテル結合の脱離基を有する一連の強力なシステインプロテアーゼ選択的ABP化合物(Verdoesら、(2013年)J. Am. Chem. Soc. 135巻:14726~30頁;PCT国際公開番号WO2014/145257)が含まれる。従来のABPは、酵素ターンオーバーの間の反応性プローブによって、プロテアーゼ活性部位の共有結合性の修飾をもたらす。蛍光標識は、プロテアーゼと共有結合により結合して留まり、その潜在的蛍光は、酵素ターンオーバーの間にクエンチャーを含むプローブの一部の放出によってアンマスクされる。
【0049】
最新のプローブは、本発明者らの既存ABPの新規な変形体(Verdoesら、(2013年)J. Am. Chem. Soc. 135巻:14726~30頁;PCT国際公開番号WO2014/145257)であり、ここで、PMKのウォーヘッド(warhead)は、プロテアーゼによって切断可能な天然アミド結合によって置き換えられている(
図1A)。基質と切断基との間のアルキルスペーサーの長さは新規の基質では変化しており、基質上の異なる位置にレポーターフルオロフォアおよびクエンチャーを配置する効果が評価されている。理論に拘泥するわけではないが、リソソーム(pH約4~5)中の切断された基質断片の遊離アミノ基のプロトン化は、リソソーム膜を横断するカチオン性中間体の拡散速度を低下させ(Souletら、(2004年)J. Biol. Chem. 279巻:49355~66頁)、したがって、リソソーム中での切断された断片の保持を増進させ、それによってシグナルの強度を増大させ、切断された断片のフルオロフォアを含む基質についての腫瘍における持続期間を延長すると考えられている。Kazmiら、(2013年)41巻:897~905頁も参照されたい。
【0050】
in vitroでの酵素動力学的分析は、設計された基質が、種々のシステインカテプシン、特にカテプシンLによって効率的に切断される(クエンチされない)ことを示した。基質についてのターンオーバー数および親和性は、システインカテプシンに対する市販の基質に匹敵する。乳がんの同系の同所性マウスモデルを使用する非侵襲的画像化試験では、設計された基質プローブは、速い標識化動力学、腫瘍および腫瘍周りの領域における有意な蓄積、続く臓器からの速いクリアランスなどの理想的な薬理学的特性を有することが分かった。これらの結果は、潜在的なカチオン性トロピズムをプローブ設計に導入することによって、シグナル強度および全体的なコントラストを増大させることができることを確認するものである。このような試薬の例が、PCT国際公開番号WO2016/118910A1、およびOforiら、(2015年)ACS Chemical Biology 10巻:1977-1988頁に記載されており、これらの開示は、それらの全体について参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
化合物
したがって、一態様では、本開示は、プロテアーゼ活性、特に動物組織でのカテプシンの活性の検出および画像化における画像化剤として使用するための新規な化合物を提供する。一部の実施形態では、化合物は式(I):
【化10】
(式中、
Dは蛍光標識を含む検出可能な要素であり;
Qはクエンチャーであり;
L
0およびL
1はリンカーであり;
AA
2はアミノ酸側鎖であり;
UはO、NHまたはSであり;
Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキルまたは保護基であり、1~3個のA基で任意選択で置換されており;
各Aは、独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルアミノ、アリール、アリールオキシ、アリールアミノ、アラルキル、アラルコキシ、アラルカノイル、アラルカミノ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアミノ、ヘテロアラルキル、ヘテロアラルコキシ、ヘテロアラルカノイル、ヘテロアラルカミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキルアルキル、シクロアルコキシ、シクロアルカノイル、シクロアルカミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロシクリルアルカノイル、ヘテロシクリルアルカミノ、ヒドロキシル、チオ、アミノ、アルカノイルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、アルキルカルボキシ、カルボネート、カルバメート、グアニジニル、尿素、ハロ、トリハロメチル、シアノ、ニトロ、ホスホリル、スルホニル、スルホンアミド、またはアジドである)
を有する。
【0052】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、直鎖状アルキル基、分枝鎖状アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基のラジカルを指す。いくつかの実施形態では、直鎖状または分枝鎖状アルキルは、その主鎖(例えば、直鎖についてはC1~C30、分枝鎖についてはC3~C30)中に30個またはそれ未満、より具体的には、20個またはそれ未満の炭素原子を有する。同様に、いくつかのシクロアルキルはそれらの環構造中に3~10個の炭素原子を有し、より具体的には、環構造中に5、6または7個の炭素を有する。
【0053】
さらに、本明細書、実施例および特許請求の範囲を通して使用される「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は、「非置換アルキル」と「置換アルキル」との両方を含むことを意図し、その後者は、炭化水素主鎖の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分を指す。そのような置換基は、例えば、ハロ、ヒドロキシル、カルボニル(ケト、カルボキシ、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、チオ、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。炭化水素鎖上で置換されている部分は、適切な場合、それら自体置換されていてよいことを当業者は理解する。例えば、置換アルキルの置換基は、置換または非置換形態のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)およびシリル基ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルを含む)、-CF3、-CNなどを含むことができる。例示的な置換アルキルを以下で説明する。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、-CF3、-CNなどでさらに置換されていてよい。
【0054】
本明細書で使用する場合、「アルコキシ」という用語は、アルキル基、ある種の特定の実施形態では、それと結合した酸素を有する低級アルキル基を指す。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t-ブトキシなどが含まれる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族基を指し、「非置換アルケニル」と「置換アルケニル」の両方を含むことを意図し、その後者は、アルケニル基の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルケニル部分を指す。そのような置換基は、1つまたは複数の二重結合中に含まれるかまたは含まれない1つまたは複数の炭素上に現れ得る。さらに、そのような置換基は、安定性が妨げられる場合を除いて、上記で論じたアルキル基について考えられるものすべてを含む。例えば、1つまたは複数のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が考えられる。
【0056】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアルコキシなどの化学的部分と一緒に使用される場合、「Cx~y」という用語は、鎖中にx~y個の炭素を含む基を含むことを意味する。例えば、「Cx~y-アルキル」という用語は、ハロアルキル基、例えばトリフルオロメチルおよび2,2,2-トリフルオロエチル等を含む、鎖中にx~y個の炭素を含む直鎖状アルキルおよび分枝鎖状アルキル基を含む置換または非置換の飽和炭化水素基を指す。「C0-アルキル」は、基が末端位置にある場合、水素を示す、または内部にある場合、結合である。「C2~y-アルケニル」および「C2~y-アルキニル」という用語は、長さが類似しており、上記アルキルへの置換が可能であるが、それぞれ少なくとも1つの二重または三重結合を含む置換または非置換の不飽和脂肪族基を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「アルキルアミノ」という用語は、少なくとも1つのアルキル基で置換されたアミノ基を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「アルキルチオ」という用語は、アルキル基で置換されたチオール基を指し、一般式アルキル-S-によって表すことができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含む脂肪族基を指し、「非置換アルキニル」と「置換アルキニル」の両方を含むことを意図し、その後者は、アルキニル基の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有するアルキニル部分を指す。そのような置換基は、1つまたは複数の三重結合中に含まれるかまたは含まれない1つまたは複数の炭素上に現れ得る。さらに、そのような置換基は、安定性が妨げられる場合を除いて、上記で論じたアルキル基について考えられるものすべてを含む。例えば、1つもしくは複数のアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が考えられる。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アミド」という用語は基
【化11】
(式中、R
xおよびR
yはそれぞれ独立に、水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、またはR
xおよびR
yは、それらが結合しているN原子と一緒になって環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成している)
を指す。
【0061】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、非置換アミンおよび置換アミンとその塩との両方、例えば
【化12】
(式中、R
x、R
yおよびR
zはそれぞれ独立に、水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、またはR
xおよびR
yは、それらが結合しているN原子と一緒になって環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成している)
によって表すことができる部分を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「アミノアルキル」という用語は、アミノ基で置換されたアルキル基を指す。
【0063】
本明細書で使用される場合、「アラルキル」という用語は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0064】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、環の各原子が炭素である置換または非置換の単環芳香族基を含む。ある特定の実施形態では、その環は5~7員環であり、より具体的な実施形態では、6員環である。「アリール」という用語は、2つまたはそれ超の環状環を有する多環式環系であって、2つまたはそれ超の炭素が、2つの隣接環で共有されており、その環のうちの少なくとも1つが芳香族であり、例えばその他の環状環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る、多環式環系も含む。アリール基は、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどを含む。
【0065】
「カルバメート」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、基
【化13】
(式中、R
xおよびR
yは独立に、水素もしくはヒドロカルビル基を表すか、またはR
xおよびR
yは、それらが結合している原子と一緒になって環構造中に4~8個の原子を有する複素環を完成している)
を指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、環の各原子が炭素である非芳香族の飽和または不飽和環を指す。ある特定の実施形態では、シクロアルキル環は3~10個の原子、より具体的な実施形態では5~7個の原子を含む。
【0067】
「カーボネート」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、基-OCO2-Rxを指し、式中、Rxはヒドロカルビル基を表す。
【0068】
本明細書で使用される場合、「カルボキシ」という用語は、式-CO2Hによって表される基を指す。
【0069】
本明細書で使用される場合、「エステル」という用語は、基-C(O)ORxを指し、式中、Rxはヒドロカルビル基を表す。
【0070】
本明細書で使用される場合、「エーテル」という用語は、酸素を介して別のヒドロカルビル基と結合しているヒドロカルビル基を指す。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基はヒドロカルビル-O-であってよい。エーテルは、対称性であっても非対称性であってもよい。エーテルの例には、これらに限定されないが、複素環-O-複素環およびアリール-O-複素環が含まれる。エーテルには、一般式アルキル-O-アルキルによって表され得る「アルコキシアルキル」基が含まれる。
【0071】
「グアニジニル」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、一般式
【化14】
(式中、R
xおよびR
yは独立に、水素またはヒドロカルビルを表す)
によって表すことができる。
【0072】
本明細書で使用される、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモおよびヨードを含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ヘタラルキル」および「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘタリル基で置換されたアルキル基を指す。
【0074】
「ヘテロアリール」および「ヘタリル」という用語は、置換または非置換の芳香族単環構造、ある種の特定の実施形態では、5~7員環、より具体的には5~6員環を含み、それらの環構造は、少なくとも1個のヘテロ原子、いくつかの実施形態では、1~4個のヘテロ原子、より具体的な実施形態では、1または2個のヘテロ原子を含む。「ヘテロアリール」および「ヘタリル」という用語は、2つまたはそれ超の環状環を有する多環式環系であって、2つまたはそれ超の炭素が、2つの隣接環で共有されており、その環のうちの少なくとも1つがヘテロ芳香族であり、例えばその他の環状環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る、多環式環系も含む。ヘテロアリール基には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。
【0075】
本明細書で使用される「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。典型的なヘテロ原子は、窒素、酸素および硫黄である。
【0076】
「ヘテロシクリル」、「複素環(heterocycle)」および「複素環式(heterocyclic)
」という用語は、置換または非置換の非芳香族環構造、ある特定の実施形態では3~10員環、より具体的には3~7員環を指し、それらの環構造は、少なくとも1個のヘテロ原
子、いくつかの実施形態では1~4個のヘテロ原子、より具体的な実施形態では1または2個のヘテロ原子を含む。「ヘテロシクリル」および「複素環式」という用語は、2つまたはそれ超の環状環を有する多環式環系であって、2つまたはそれ超の炭素が、2つの隣接環で共有されており、その環のうちの少なくとも1つが複素環式であり、例えばその他の環状環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリルであり得る、多環式環系も含む。ヘテロシクリル基には、例えばピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、複素環基で置換されたアルキル基を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」という用語は、=Oまたは=S置換基を有していない炭素原子を介して結合されており、一般に少なくとも1つの炭素-水素結合および主に炭素の主鎖を有するが、任意選択でヘテロ原子を含んでよい基を指す。したがって、メチル、エトキシエチル、2-ピリジルおよびトリフルオロメチルのような基は、本明細書での目的のためにヒドロカルビルであると見なされるが、アセチル(これは結合炭素上に=O置換基を有する)およびエトキシ(これは炭素ではなく酸素を介して結合している)などの置換基はヒドロカルビルであると見なされない。ヒドロカルビル基には、これらに限定されないが、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびそれらの組合せが含まれる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシアルキル」という用語は、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を指す。
【0080】
「低級(lower)」という用語は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、ア
ルキニルまたはアルコキシなどの化学的部分と一緒に使用される場合、その置換基中に10個またはそれ未満、ある特定の実施形態では、6個またはそれ未満の非水素原子がある基を含むことを意味する。「低級アルキル」は、例えば10個またはそれ未満の炭素原子、特定の実施形態では、6個またはそれ未満の炭素原子を含むアルキル基を指す。ある特定の実施形態では、本明細書で定義されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシ置換基は、それらが単独で現れても、または、ヒドロキシアルキルおよびアラルキルといった記載などの他の置換基との組合せで現れても(その場合、例えば、アルキル置換基中の炭素原子をカウントする場合、アリール基中の原子はカウントされない)、それぞれ、低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニルおよび低級アルコキシである。
【0081】
「ポリシクリル」、「多環(polycycle)」および「多環式(polycyclic)」という用語は、2個またはそれ超の原子が2つの隣接環と共有されている2つまたはそれ超の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび/またはヘテロシクリル)を指し、例えば、その環は「縮合環」である。多環の環のそれぞれは、置換されていても置換されていなくてもよい。ある特定の実施形態では、多環のそれぞれの環は、その環中に3~10個、より具体的には5~7個の原子を含む。
【0082】
「置換(された)(substituted)」という用語は、主鎖の1つまたは複数の炭素上の水素を置き換える置換基を有する部分を指す。「置換」または「~で置換された(substituted with)」とは、このような置換が、置換される原子および置換基の許容される原子価に従っており、その置換が、安定な化合物、例えばその化合物が使用されることになる条件下で転位、環化、脱離等などによって自発的に変換を受けない化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことが理解される。本明細書で使用する場合、「置換された(substituted)」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むものと考えられる。広い態様では、許容される置換基は、有機化合物の非環式および環式、分枝状および非分枝状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。許容される置換基は、適切な有機化合物について、1つであっても複数であっても、また、同じであっても異なっていてもよい。本発明の目的のため、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を充足する本明細書で説明する有機化合物の任意の許容される置換基を有することができる。置換基は、本明細書で説明する任意の置換基、例えばハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(ケト、カルボキシ、アルコキシカルボニル、ホルミルまたはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテートまたはチオホルメートなど)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキルまたは芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。炭化水素鎖上で置換されている部分は、適切な場合、それら自体置換されていてよいことを当業者は理解する。
【0083】
「非置換(unsubstituted)」と特に記載されていない限り、本明細書での化学的部分への参照は、置換された変形体を含むものと理解すべきである。例えば、「アリール」基または部分への参照は、暗黙のうちに、置換変形体と非置換変形体との両方を含む。
【0084】
「サルフェート」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、基-OSO3Hまたは薬学的に許容されるその塩を指す。
【0085】
「スルホンアミド」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、一般式
【化15】
(式中、R
xおよびR
yは独立に、水素またはヒドロカルビルを表す)
によって表される基を指す。
【0086】
「スルホキシド」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、基-S(O)-Rxを指し、式中、Rxはヒドロカルビルを表す。
【0087】
「スルホ」または「スルホネート」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、基-SO3Hまたは薬学的に許容されるその塩を指す。
【0088】
「スルホン」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、基-S(O)2-Rxを指し、式中、Rxはヒドロカルビルを表す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「チオアルキル」という用語は、チオール基で置換されたアルキル基を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、「チオエステル」という用語は、基-C(O)SRxまたは-SC(O)Rxを指し、式中、Rxはヒドロカルビルを表す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「チオエーテル」という用語は、酸素が硫黄で置き換えられているエーテルと同等である。
【0092】
「尿素」という用語は、当技術分野で認識されているものであり、一般式
【化16】
(式中、R
xおよびR
yは独立に、水素またはヒドロカルビルを表す)
によって表され得る。
【0093】
本発明の化合物は、一般に、標準的な合成化学技術を使用して、例えば以下の実施例の部で説明される方法を使用して合成される。他の有用な合成技術は、例えばMarch's Advanced Organic Chemistry:Reactions, Mechanisms, and Structure、第7版、(Wiley、2013年);CareyおよびSundberg、Advanced Organic Chemistry、第4版、AおよびB巻(Plenum 2000、2001年);Fiesers' Reagents for Organic Synthesis、1~27巻(Wiley、2013年);Rodd's Chemistry of Carbon Compounds、1~5巻および補足(Elsevier Science Publishers、1989年);Organic Reactions、1~81巻(Wiley、2013年);ならびにLarock's Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.、1989年)(これらのすべてが、それらの全体について参照により組み込まれる)に記載されている。これらの化合物は、通常、一般に商業的供給業者から入手できるか、または当業者に周知の方法を使用して容易に調製される出発材料を使用して合成される。例えば、Fiesers' Reagents for Organic Synthesis、1~27巻(Wiley、2013年)、または補足を含むBeilsteins Handbuch der organischen Chemie、第4版、Springer-Verlag、Berlinを参照されたい。
【0094】
本発明の化合物の成分を参照する場合、「~から誘導される残基(residue derived from)」という用語は、第1の成分上の第1の反応性官能基と第2の成分上の第2の反応性官能基が反応して共有結合を形成することによって形成される残基を説明するために使用され得る。例示的な実施形態では、第1の成分上のアミン基は、第2の成分上の活性化されたカルボキシル基と反応して、1つまたは複数のアミド部分を含む残基を形成することができる。第1および第2の反応性官能基の他の並べ替えは本発明によって包含される。例えば、アジド置換された第1の成分とアルキン置換された第2の成分の、銅触媒による反応または銅を含まない反応は、当業者によって理解される周知の「クリック」反応を介して、トリアゾール含有残基をもたらす。Kolbら、(2001年)Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 40巻:2004年;Evans(2007年)Aus. J. Chem. 60巻:384頁を参照されたい。「クリック」反応を使用して非ペプチド性蛍光画像化プローブを作りだす例示的な方法が、PCT国際公開番号WO2012/118715に提供されている。本特許請求の範囲の化合物、特に本化合物のプロテアーゼ標的化要素を生成または修飾するためにこれらの方法を適合させることは、当技術分野の技術の範囲内である。
【0095】
当業者は、保護基は、分子の所望位置に可逆的に結合して、その位置での他の薬剤の反応を制御することを理解している。本化合物の合成において有用な保護基は、当技術分野において周知である。例えばP.G.M. WutsおよびT.W. GreeneによるGreene's Protective Groups in Organic Synthesis、第4版(Wiley-Interscience、2006年);およびP. KocienskiによるProtecting Groups(Thieme、2005年)を参照されたい。
【0096】
本化合物のL0およびL1基は、それぞれ、検出可能な要素DおよびクエンチャーQを本化合物と連結するリンカー基である。各リンカー基は、当業者によりが理解されているように、独立に任意の適切な化学リンカーであってよい。L0およびL1基は好ましくはアルキルリンカー基であり、そのアルキルリンカーは任意選択で置換されており、さらに、そのリンカー中の炭素は、得られる構造が化学的に安定である程度まで、ヘテロ原子によって任意選択で置き換えられている。このような置換および置き換えは、リンカー中の介在基に、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、エステル、アミド、カルボネート、カルバメートなどを含むものと理解すべきである。好ましいリンカーは、5~40個の結合の長さに及び、分枝状、直鎖状であるか、または環を含んでよい。リンカーは、いくつかの場合、二重結合を含み得る。これらは、リンカーを含む化合物の具体的な要件に応じて、所望の通りに疎水性であっても親水性であってもよい。
【0097】
特定の実施形態では、L0およびL1はそれぞれ独立に、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、ここで、各炭素原子は、ヘテロ原子で任意選択で置き換えられている。より具体的な特定の実施形態では、L0およびL1はそれぞれ独立に、C2~8アルキルリンカーである。より一層具体的な実施形態では、L1はC4アルキルリンカーである。
【0098】
L0基と検出可能な要素Dとの間、およびL1基とクエンチャーQとの間の連結は、当業者により理解されるような任意の適切な化学的連結であってよいことをさらに理解すべきである。例えば、本化合物は、いくつかの場合、検出可能な要素またはクエンチャー前駆体中に、例えばアミノ基、チオール基などの特定の化学基と反応性の部分を含めることによって好都合に調製することができる。反応性の検出可能な要素またはクエンチャーは、そのような状況で、反応基を有する化合物上のアミノ基、チオール基などの反応を介してその化合物と容易に結合させることができる。したがって、連結の構造的詳細がはっきりと示されていないとしても、これらの種類の化学的連結は、開示された化合物の範囲内であると理解される。
【0099】
いくつかの実施形態によれば、式(I)の化合物中のL1基を修飾して、本化合物のin vivoでの半減期を増大させることができる。したがって、これらの実施形態では、L1基は、修飾された化合物を安定化させるために、ポリエチレングリコール部分、パルミテートまたは他の長鎖脂肪酸部分、アルブミン結合タンパク質などを含むことができる。
【0100】
本化合物のAA1およびAA2基は、当業者により理解されるように、独立に任意の天然もしくは非天然のアミノ酸側鎖であってよく、または基「-L1-Q」であってよい。いくつかの実施形態では、AA1基は塩基性アミノ酸側鎖であり、AA2基はアラルキルアミノ酸側鎖であり、それぞれは、1~3個のA基で任意選択で置換されている。特定の実施形態では、AA1基はリシン側鎖であり、AA2基はフェニルアラニン側鎖である。いくつかの実施形態では、AA1基は-L1-Qであり、AA2基はアラルキルアミノ酸側鎖である。他の実施形態では、AA1基は塩基性アミノ酸側鎖であり、AA2基は-L1-Qである。さらに他の実施形態では、AA1およびAA2基は、独立に、酸性アミノ酸残基からの側鎖、例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸残基からの側鎖、または任意の組合せでのアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリンもしくは他のそのようなアミノ酸残基などのアルキルアミノ酸残基からの側鎖である。リシン、アルギニン、チロシン、グルタミン、アスパラギンなどの他のアミノ酸残基からの側鎖も、本化合物においてAA1またはAA2基のいずれかとして適している。
【0101】
AA1またはAA2基が「-L1-Q」基である化合物実施形態では、L1リンカー成分は、アミノ酸側鎖によって提供され得る。例えば、リシン残基は、好都合なことに、適切に活性化されたクエンチャーとの反応のためのアミノ-アルキル基を提供する。
【0102】
いくつかの化合物実施形態では、U基はOである。
【0103】
いくつかの化合物実施形態では、R基は、1~3個のA基で任意選択で置換されたアル
キル基である。より具体的には、R基は、それ自体任意選択で置換されているアリールで置換されたアルキル基であってよい。より一層具体的には、R基は、例えばベンジル基などの任意選択で置換されたアラルキル基であってよい。
【0104】
本化合物の検出可能な要素Dは、限定されないが、光学的、電気的または化学的検出方法を含む任意の適切な手段によって検出することができる任意の化学基である。特定の実施形態では、検出可能な要素は、蛍光標識、ルミネッセンス性種、リン光性種、陽電子放出物質を含む放射性物質、ナノ粒子、SERSナノ粒子、量子ドットもしくは他の蛍光性結晶ナノ粒子、回折粒子、ラマン粒子、キレート金属を含む金属粒子、磁性粒子、マイクロスフェア、RFIDタグ、マイクロバーコード粒子またはこれらの標識の組合せである。より具体的な実施形態では、検出可能な要素は、蛍光標識、キレート金属を含む放射性標識などである。これらの化合物で使用するのに適した放射性標識およびキレート金属の例は、その全体について参照により本明細書に組み込まれるPCT国際公開番号2009/124265に記載されている。
【0105】
本化合物の好ましい実施形態では、検出可能な要素は蛍光標識である。当業者に公知であるように、入射電磁放射線の吸収により刺激された場合、蛍光標識は、電磁放射線、好ましくは可視光または近赤外光を発する。標識を、例えばアミノ基、チオール基などの反応基に結合させるのに有用な反応性部分を有する標識を含む様々な蛍光標識が市販されている。例えばその全体について参照により本明細書に組み込まれるThe Molecular Probes(R) Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、Life Technologies、Thermo Fisher Scientificを参照されたい。様々な近赤外(NIR)蛍光標識を含む他の有用な蛍光試薬を、Thermo Scientific Pierce Protein Biology Products、Rockford、ILから入手することができる。
【0106】
一般的に700~900nmの領域において吸収する近赤外フルオロフォアは、これらの波長の光が、より短い、例えば可視の波長の光より、組織中により深く透過することができるので、組織画像化に特に適している。本発明の化合物において有用に使用される例示的な近赤外蛍光標識は、LI-COR Biosciences、Lincoln、NEから入手することができるIRDye赤外色素である。これらの色素の非限定的な例はIRDye800CW、IRDye680RD、IRDye680LT、IRDye750、IRDye700DX、IRDye800RSおよびIRDye650である。
【0107】
in vivoでの画像化用途に特に十分に適した赤外色素の他の例は、Thermo
Scientific Pierce Protein Biology Products、Rockford、ILから入手できるベンゾピリリウムおよびベンゾシアニン化合物のDyLightシリーズである。これらの色素の非限定的な例は、DyLight675-B1、DyLight675-B2、DyLight675-B3、DyLight675-B4、DyLight679-C5、DyLight690-B1、DyLight690-B2、DyLight700-B1、DyLight700-B2、DyLight730-B1、DyLight730-B2、DyLight730-B3、DyLight730-B4、DyLight747-B1、DyLight747-B2、DyLight747-B3、DyLight747-B4、DyLight775-B2、DyLight775-B3、DyLight775-B4、DyLight780-B1、DyLight780-B2、DyLight780-B3、DyLight800およびDyLight830-B2である。好ましい近IRフルオロフォアは、以下の構造:
【化17】
を有するDyLight780BおよびDyLight800である。上記色素のいずれかの薬学的に許容される塩も、これらの用途に適していると考えられることを理解すべきである。
【0108】
光の可視波長で有用な蛍光標識の例は、免疫蛍光標識化において広範に使用されているフルオレセインである。フルオレセインは、495ナノメートルで吸収極大を有するキサンテン色素である。関連するフルオロフォアは、オレゴングリーン、フルオレセインのフッ素化誘導体である。
【0109】
本化合物で使用するのに適した他の例示的な蛍光標識は、ボラ-ジアザ-インデセン、ローダミンおよびシアニン色素である。特に、ボラ-ジアザ-インデセン色素は、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンによって表され、BODIPY(登録商標)色素として公知である。これらの色素の種々の誘導体が公知であり、本開示の化合物における検出可能な要素として使用するのに適していると考えられる。例えばChenら、(2000年)J. Org. Chem. 65巻:2900~2906頁を参照さ
れたい。
【0110】
ローダミン色素は、ローダミン環構造をベースとした色素の部類である。ローダミンには、とりわけ、タンパク質コンジュゲート、特に抗体およびアビジンコンジュゲートを調製するための非常に一般的なフルオロフォアであるテトラメチルローダミン(TMR)、ならびにオリゴヌクレオチド標識化および自動核酸配列決定に一般に使用される色素であるカルボキシテトラメチル-ローダミン(TAMRA)が含まれる。ローダミンは、より長い波長の発光極大を提供し、したがって多色標識化または染色のための機会を開く、フルオレセインベースのフルオロフォアへの天然の補助剤として確立されている。
【0111】
Alexa Fluor色素として公知のフルオロフォアのスルホン化されたローダミンシリーズも、ローダミン色素のグループに含められる。最新のフルオロフォア技術における劇的な進歩は、Molecular Probesによって導入されたAlexa Fluor色素によって例示される。これらのスルホン化されたローダミン誘導体は、スペクトル的に類似したプローブより、強い蛍光発光に対してより高い量子収量を示し、高い光安定性、一般的なレーザー線に適合した吸収スペクトル、pH非感受性および高度の水溶性を含むいくつかの追加的な改善された特徴を有している。
【0112】
シアニン色素は、様々な炭素数のポリアルケン架橋を介して連結されている2つ芳香族単位を有する、部分飽和のインドール窒素複素環式核をベースとした、関連する色素のファミリー、Cy2、Cy3、Cy5、Cy7およびそれらの誘導体に相当する。これらのプローブは、フルオレセインおよびテトラメチルローダミンなどの伝統的な色素の多くと類似した蛍光励起および発光プロファイルを示すが、高い水溶性、光安定性およびより高い量子収量を有している。シアニン色素の大部分は、これらの伝統的な同等物より環境的に安定であり、これらの蛍光発光強度を、pHおよび有機封入剤に対し、より低感度にする。Alexa Fluorと同様の仕方で、合成色素のCyシリーズの励起波長は、一般的なレーザーおよびアーク放電源での使用に対して特異的に調整され、その蛍光発光は、従来のフィルターの組合せで検出することができる。シアニン色素は、反応性色素またはフルオロフォアとして容易に入手することができる。シアニン色素は、一般に、Alexa Fluorファミリーのメンバーより広い吸収スペクトルを有しており、このことは、これらの色素を、共焦点顕微鏡検査のためのレーザー励起源の選択において、幾分かより融通の利くものにしている。
【0113】
特定の実施形態では、本化合物の検出可能な要素はシアニン色素、Cy5である。
【0114】
いくつかの実施形態では、検出可能な要素は、インドシアニングリーン(「ICG」)またはインドシアニングリーンの残基:
【化18】
などのベンゾインドール色素を含む。インドシアニングリーンは、様々な医学的診断用途において、例えば、心臓、肝臓、眼、および循環器の特定の状態の監視および画像化において用いられる。有利なことに、インドシアニングリーンおよび関連化合物は、近赤外領域において吸収スペクトルおよび発光スペクトルを示す。例えば、ICGは、主に600nmと900nmとの間で吸収し、主に750nmと950nmとの間で蛍光を発する。このような波長は生物組織を貫通でき、そのため、これらの組織の、ICGおよび関連化合物を用いた画像化を可能にする。さらに、医学的診断研究におけるICGの長期的かつ普及した使用は、これらの化合物の生体適合性の証拠となる。
【0115】
したがって、いくつかの実施形態では、検出可能な要素は、構造:
【化19】
(式中、oは1~4の整数であり;
R
1は、任意選択で、スルホネートまたはカーボネートで置換されたC
2-C
8アルキル基であり;
各R
2は独立に、C
1-C
6アルキル基であり;
L
2は、任意選択で置換されたアルキルリンカーであり、各炭素原子はヘテロ原子で任意選択で置換されている)
を有するベンゾインドール色素を含む。
【0116】
より具体的には、ベンゾインドール色素は、構造:
【化20】
を有し得る。ベンゾインドール含有色素は、例えば、Zhangら、(2005年)Chem.Commun.2005巻:5887頁(DOI:10.1039/b512315a)に記載のように合成され得る。米国特許出願公開第2009/0214436号A1も参照。
【0117】
いくつかの実施形態では、L2は、任意選択で置換されている低級アルキルリンカーであり、各炭素原子は、ヘテロ原子で任意選択で置換されている。
【0118】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の検出可能な要素において使用される蛍光標識は、pH依存性のフルオロフォアであってよい。このような蛍光標識は、当業者により理解されるように、標識の環境のpHに依存する蛍光スペクトルを示し、したがって、反応後の標識の環境についての情報、例えば、反応性化合物によって標識化されたプロテアーゼの位置または種類についての情報を報告するのに有用であり得る。本化合物の検出可能な要素に有用に含められる種々の標識のpH依存性の蛍光は周知である。例えばThe Molecular Probes(R) Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologiesを参照されたい。
【0119】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物の検出可能な要素中に、多重の検出可能な基、例えば蛍光標識、放射性標識、キレート金属などを含むことは、有益である可能性がある。このような多重の標識化は、当業者により理解されるような慣行的カップリング化学を使用して達成することができる。
【0120】
本明細書の化合物は、一般にクエンチャー基、Qも含む。「クエンチャー」という用語は、フルオロフォアの発光を調節する化学エンティティーを指す。いくつかの場合、クエンチャーは、それ自体、蛍光がクエンチングしている標識と異なる特徴的波長で蛍光を発する蛍光分子であり得る。したがって、フルオロフォアは、別の色素と適切に結合された場合、クエンチャーとして作用することができ、その逆も可能である。これらの状況において、ドナー標識の波長と異なる波長のアクセプター分子からの蛍光の増大は、標識化された化合物の、例えばリソソームまたは他の細胞内コンパートメントの内部などの環境との相互作用を別個に報告し得る。いくつかの場合、クエンチャーはそれ自体蛍光を発しない(すなわち、クエンチャーは「ダークアクセプター」である)。このようなクエンチャーには、例えばdabcyl、メチルレッド、QSYジアリールローダミン色素などが含まれる。特に、dabcyl(4-ジメチルアミノ-フェニルアゾ)安息香酸)は、DNA検出のための「分子ビーコン」などの、多くのアッセイにおいて広く使用される一般的なダーククエンチャーである。米国特許第5,989,823号。「ブラックホールクエンチャー」と称されるBHQシリーズのジアゾ色素は、多くのフルオロフォアの発光と十分に重なる広範囲の吸収を提供する。PCT国際公開番号WO01/86001を参照されたい。Molecular ProbesからのQSYシリーズ色素は、多くのバイオアッセイにおいてクエンチング試薬として幅広く使用されているダーククエンチャー色素の別の例である。米国特許第6,399,392号。
【0121】
特にQSY7は、非蛍光性ジアリールローダミン誘導体である。米国特許出願公開第2005/0014160号。QSY21は、可視スペクトルにおいて強い吸収を有する非蛍光ジアリールローダミン発色団であり、効果的な蛍光クエンチャーである。スルホ-QSY21は、QSY21のスルホネートのバージョンである(
図1Aを参照されたい)。フルオロフォア/クエンチャー対が、米国特許出願公開第2004/0241679号にさらに例示されている。
【0122】
IRDye QC-1(Li-Corから入手可能)は、本化合物でのクエンチャーとして使用するのに適した非蛍光性色素の別の例である(
図6Aを参照されたい)。これは、可視領域から近赤外までの波長の範囲のものを含む広範囲のフルオロフォアからの蛍光を効率的にクエンチする。
【0123】
別の態様では、本明細書は、式(II):
【化21】
(式中、n’およびn”はそれぞれ独立に、2~8の整数であり;
R
1はQSYクエンチャーまたはQC-1であり;
R
2はベンゾインドール色素である)
を有する化合物を提供する。
【0124】
これらの化合物のいくつかの実施形態では、n”は4である。
【0125】
これらの化合物のいくつかの実施形態では、n’は2、4または6である。
【0126】
特定の実施形態では、化合物は、以下の構造式:
【化22】
を有する。
【0127】
別の態様によれば、本開示の化合物実施形態は、式(III)の構造:
【化23】
(式中、
Dは検出可能な要素であり;
L
0はリンカーであり;
Tは、任意選択でクエンチャーを含むプロテアーゼ標的化要素であり;
ただし、L
0はエトキシエトキシスペーサーを含まないものとする)
を有する。
【0128】
式(III)の化合物中のプロテアーゼ標的化要素Tは、プロテアーゼによって認識され、プロテアーゼによって触媒性の加水分解をされて、リソソーム向性断片、D-L0-NH3
+を放出できる任意の適切な化学構造である。このような構造の例は、限定されないが、ペプチド性および非ペプチド性のプロテアーゼ標的化要素を含み、プロテアーゼ酵素学の技術分野において周知である。特定の実施形態では、プロテアーゼ標的化要素は、4つ以下のアミノ酸残基または3つ以下のアミノ酸残基を含むペプチド構造である。より具体的な実施形態では、プロテアーゼ標的化要素は、2つ以下のアミノ酸残基を含むペプチド構造である。例えば、上記で示したような式(I)の化合物は、2つのアミノ酸残基を含むプロテアーゼ標的化要素を含む。特定の実施形態では、プロテアーゼ標的化要素は、カテプシン、特にカテプシンLまたはカテプシンVによる切断に対して選択的な構造である。
【0129】
いくつかの実施形態によれば、式(III)の化合物中のT基を修飾して、in vivoでの本化合物の半減期を増大させることができる。したがって、これらの実施形態では、T基は、修飾された化合物を安定化させるために、ポリエチレングリコール部分、パルミテートまたは他の長鎖脂肪酸部分、アルブミン結合タンパク質などを含むことができる。
【0130】
式(III)のいくつかの実施形態では、L0はポリエチレングリコール基を含まない。
【0131】
式(III)のいくつかの実施形態では、プロテアーゼ標的化要素は
【化24】
(式中、AA
1およびAA
2は、それぞれ独立に、アミノ酸側鎖であり、
UはO、NHまたはSであり、
Rは、式(I)の化合物について上記に定義した通りである)
である。
【0132】
特定の実施形態では、AA1は塩基性アミノ酸側鎖であり、AA2はアラルキルアミノ酸側鎖であり、それぞれは1~3個のA基で任意選択で置換されている。他の特定の実施形態では、UはOである。さらに他の特定の実施形態では、R基は、例えばベンジル基などのアラルキル基である。
【0133】
上記プロテアーゼ標的化要素のいくつかの実施形態では、AA1はクエンチャーを含む。これらの実施形態では、AA1は、構造-L1-Qを有してもよく、式中、L1は上記に定義した通りのリンカーであり、Qはクエンチャーである。
【0134】
これらの実施形態のいくつかでは、L1基を修飾して、in vivoでの本化合物の半減期を増大させることができる。したがって、これらの実施形態では、L1基は、修飾された化合物を安定化させるために、ポリエチレングリコール部分、パルミテートまたは他の長鎖脂肪酸部分、アルブミン結合タンパク質などを含むことができる。
【0135】
実施形態では、式(III)の化合物中のカスパーゼ標的化要素Tは、クエンチャーを含む。
【0136】
式(III)の化合物中のL0リンカー基は、上記のリンカーのいずれであってもよい。
【0137】
医薬組成物
別の態様では、本発明は、本発明の化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。このような組成物は、例えば、動物における組織の画像化において有用であり、動物における酵素、例えばプロテアーゼ酵素の活性を評価するのにさらに有用である。特に、プロテアーゼ基質、特にカテプシン基質である本発明の化合物について、医薬組成物は、がん細胞の非侵襲的な光学的画像化用の薬剤としての役目を有用に果たし得る。
【0138】
薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、それらには、例えば、水もしくは生理学的緩衝食塩水などの水溶液、または、グリコール、グリセロール、オリーブ油などの油、もしくは注入可能な有機エステルなどの、他の溶媒もしくはビヒクルが含まれる。特定の実施形態では、このような医薬組成物がヒトへの投与用である場合、水溶液は、パイロジェンフリーであるかまたは実質的にパイロジェンフリーである。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出をもたらすか、または、1つもしくは複数の細胞、組織もしくは臓器を選択的に標的とするように選択することができる。医薬組成物は、投薬単位形態、例えば錠剤、カプセル剤、スプリンクルカプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤、注射剤などであってよい。組成物は、経皮送達系、例えば皮膚用パッチ剤中に存在してもよい。
【0139】
薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の化合物の吸収を安定化させる、または増大させるように作用する生理学的に許容される薬剤を含むことができる。そのような生理学的に許容される薬剤には、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質または他の安定剤もしくは賦形剤が含まれる。生理学的に許容される薬剤を含む薬学的に許容される担体の選択は、例えば組成物の投与経路に依存する。医薬組成物は、その中に、例えば本発明の化合物を取り込んでいてよいリポソームまたは他のポリマーマトリクスを含むこともできる。例えば、リン脂質または他の脂質からなるリポソームは、作製し投与するのが比較的簡単な非毒性の生理学的に許容されかつ代謝可能な担体である。
【0140】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、炎症、アレルギー反応または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適しており、妥当な便益/リスク比に相応する化合物、材料、組成物および/または剤形を指すのに用いられる。
【0141】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という語句は、本化合物を、1つの臓器または体の一部から別の臓器または体の一部へ運ぶまたは輸送するのに関与する液体もしくは固体のフィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化用材料などの薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の構成要素と適合し、患者に有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体としての役目を果たすことができる材料のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;(2)コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤用ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ごま油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;(10)プロピレングリコールなどのグリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)医薬製剤で使用される他の非毒性の適合物質が含まれる。Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版(Alfonso R. Gennaro編)、2000年を参照されたい。
【0142】
本発明の化合物を含む医薬組成物は、例えば、経口(例えば、水性または非水性の液剤または懸濁剤のような水薬、錠剤、巨丸剤、散剤、顆粒剤、舌への施用のためのペースト剤);舌下;経肛門、経直腸もしくは経膣(例えば、ペッサリー剤、クリーム剤またはフォーム剤として);非経口(例えば滅菌液剤または懸濁剤として、筋肉内、静脈内、皮下または髄腔内を含む);経鼻;腹腔内;皮下;経皮(例えば、皮膚に施用されるパッチ剤として);または局所(例えば、皮膚に施用されるクリーム剤、軟膏剤または噴霧剤として)を含むいくつかの投与経路のいずれかによって対象に投与することができる。化合物は、吸入用に製剤化することもできる。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、滅菌水に容易に溶解または懸濁させることができる。適切な投与経路およびそれに適した組成物の詳細は、例えば米国特許第6,110,973号、同第5,763,493号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970号および同第4,172,896号ならびにそれらの中で引用されている特許において見出すことができる。
【0143】
組織を標識化し、腫瘍を可視化する方法
別の態様では、本開示は、本発明の組成物を動物に投与するステップを含む、動物における組織を標識化する方法を提供する。
【0144】
さらに別の態様では、本開示は、動物における腫瘍を可視化する方法であって、本発明の組成物を動物に投与するステップ、および組成物とプロテアーゼ、特にシステインプロテアーゼとの反応により動物において発生した検出可能なシグナルを測定するステップを含み、検出可能なシグナルが動物における腫瘍と関係している、方法を提供する。
【0145】
方法の実施形態のいくつかでは、検出可能なシグナルは蛍光シグナルである。いくつかの実施形態では、蛍光シグナルは腫瘍周辺において発生する。
【0146】
動物へのペプチド画像化剤の投与は、当業者によってよく理解されている。好ましい実施形態では、この薬剤は、注射によって投与されるが、任意の他の適切な投与手段は本発明の範囲内にあると考えられる。
【0147】
本発明の方法は、動物におけるプロテアーゼ、特にシステインプロテアーゼの標識化および可視化を指向する。適切な動物には、特に腫瘍細胞において、システインプロテアーゼを発現する動物が含まれる。好ましい実施形態では、動物は哺乳動物である。非常に好ましい実施形態では、動物はヒトである。他の好ましい実施形態では、動物は家畜動物またはペットである。
【0148】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、動物において発生した検出可能なシグナルを測定するステップを含む。検出可能なシグナルを測定する方法には、これに限定されないが、画像化法、例えば蛍光画像化法が含まれる。いくつかの実施形態では、蛍光画像化システムは、例えばXenogen IVIS 100システム、IVISスペクトルシステム(PerkinElmer、Waltham、MA)、または任意の他の適切な非侵襲的in vivo蛍光画像化システムである。いくつかの実施形態では、検出可能な蛍光シグナルを、da Vinci外科手術システム(Intuitive Surgical,Inc.、Sunnyvale、CA)を使用して測定する。以下でさらに詳細に説明するように、そのようなシステムを使用して、本画像化剤で処置された患者組織において、術中蛍光誘導外科手術技術と組み合わせた本標識化および可視化法を実施することができる。
【0149】
別の態様では、本明細書は、動物における組織の標識化での使用のための化合物を提供する。これらの化合物は上に詳述されている。これらの化合物は、薬学的に許容される担体と一緒に、組織を標識化するために動物に投与される。これらの化合物は、動物における腫瘍の可視化において使用するためにも提供される。上記のように、腫瘍を可視化するために、化合物を、薬学的に許容される担体と一緒に動物に投与し、化合物とプロテアーゼ、特にシステインプロテアーゼとの反応により動物において発生した検出可能なシグナルを測定する。
【0150】
本発明の範囲またはその任意の実施形態から逸脱することなく、本明細書で説明される方法および適用への他の適切な改変および適合を行うことができることは当業者に容易に理解できる。本発明をここに詳細に説明してきたが、以下の実施例を参照することによって、それはより明瞭に理解される。これらの実施例は、例示のためだけにここで含まれるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0151】
クエンチされた蛍光基質の設計および合成
強力で選択的なABP(以下、化合物1として例示される)の最近報告されているシリーズの化学構造を、本明細書で報告されるクエンチされた蛍光基質プローブを設計するための出発点として使用した。Verdoesら、(2013年)J. Am. Chem. Soc. 135巻:14726~30頁およびPCT国際公開番号WO2014/145257を参照されたい。
【化25】
設計過程の一部として、改善された水溶解度と相まって、標的プロテアーゼを阻害することなく、この基質がシグナルを生成する能力は、元の共有結合性のプローブと比較して、in vivoで、より速く活性化し、より明るいシグナルを生成する基質類似体をもたらすことが決定された。切断可能なアミド結合を、不可逆性のチオール反応性テトラフルオロフェノキシメチルケトン(PMK)求電子剤の代わりに使用した(
図1A)。カテプシン活性を画像化するための最適基質を選択するために、2つの構造的改変を導入することによって、6員のライブラリーのクエンチされた蛍光基質プローブを設計した。最初に、基質とクエンチャーとの間のアルキルスペーサーの長さを、カテプシンによるプローブの切断/アンクエンチング効率に対するスペーサーの長さの効果を測定するために変化させた。3つの異なるスペーサーの長さを、[(CH
2)
n](n=2、4および6であり、基質2CQ(化合物2)、4CQ(化合物3)および6CQ(化合物4)を表す)の範囲から選択した。2番目に、Cy5フルオロフォアの位置を、リシン側鎖のアミン基からP1アミド結合に隣接する末端アミンに切り替えて、それぞれ基質2QC(化合物5)、4QC(化合物6)および6QC(化合物7)を作り出した(
図1A)。文字CおよびQは、それぞれフルオロフォア(Cy5)およびクエンチャー(QSY21-スルホ)成分に対応する。理論に拘泥するわけではないが、リソソーム中でのnQCプローブの酵素的切断に続いて、リソソームにおける酸性pH環境のため、切断された生成物のCy5部分における遊離末端アミンがプロトン化されると考えられる。したがって、得られる陽イオン性Cy5は、リソソームの膜を通過する陽イオン性種の拡散が遅いことに起因して、リソソームコンパートメント中に保持される。この潜在的なリソソーム向性効果(LLE)に起因する、リソソームコンパートメント中での陽イオン性フルオロフォアの保持の増進は、次に、非侵襲的画像化の間の、腫瘍部位における蛍光シグナルの持続期間を増幅し持続させる(
図1B)。
【0152】
6つすべての基質プローブの合成を、以下のスキーム1に示すような固相化学と液相化学の組合せによって遂行した。Fmoc固相化学を使用して、n-アルキルジアミン、Boc-N-リシンおよびZ-フェニルアラニンを2-クロロトリチルクロリド樹脂上に構築した。ジクロロメタン中で1%トリフルオロ酢酸(TFA)を使用した樹脂からの基質の選択的切断は、異なる長さのアルキルスペーサーを有する各基質のコア構造をもたらした。逆相分取HPLCにより精製した後、生成物を2つに分けた。スルホ-QSY21-NHSまたはCy5-NHSを、DMSO中の別々の半分の遊離末端アミンと結合させ、続いて、DCM中に50%TFAの中でリシン上のBoc保護基を取り除いた。最終的なクエンチされた基質を、Cy5-NHS(nCQ基質について)またはスルホ-QSY21-NHS(nQC基質について)をリシン側鎖上に結合させることによって得た。HPLCにより精製した後、プローブを、in vitroで、種々の組換えシステインカテプシンに対する活性について試験した。
【0153】
クエンチされた蛍光基質のin vitroでの分析
6つすべての基質の活性および選択性を、種々の組換えシステインプロテアーゼ、特にカテプシンL、S、K、BおよびVの存在下で、それぞれの内部でクエンチされたプローブのターンオーバー曲線を監視することによって決定した。等濃度(5nM)の各酵素を、異なるプローブと共に50mMクエン酸緩衝液(pH=5.5、5mM DTT、0.1%トリトンX、0.5%CHAPS)中、37℃でインキュベートした。使用した種々のカテプシンの正確な濃度は、共有結合性のシステインプロテアーゼ阻害剤ZFK-PMK、ならびにカテプシンS、L、BおよびVに対する市販の基質Z-VVR-AMCまたはカテプシンKに対するZ-KR-AMCを使用して、活性部位滴定によって確認した(Boucherら、(2014年)Methods Mol. Biol. 1133巻:3~39頁)。Cy5蛍光の増加速度(これはカテプシンによるプローブ切断を示す)を、プローブのそれぞれについて測定した。
【0154】
クエンチされた基質(nQCおよびnCQ、n=2、4、6)のすべてをカテプシンL、V、SおよびKで切断したが、使用した条件下で、カテプシンBによる蛍光の増大は観
察されなかった(
図2)。試験したカテプシンの中で、Cat Lは、すべてのプローブで最も高い蛍光の増大をもたらした。これは、このライブラリーのシステインカテプシンLに対する強い選択性を示唆している(
図2、各パネル中の上部のトレース)。興味深いことに、nCQプローブとnQCプローブとの両方が種々のカテプシンによって同じ程度に切断されたので(
図2、左パネルを右パネルと比較して)、基質の切断は、フルオロフォアとクエンチャーとの対の方向性によって影響を受けなかった。対照的に、酵素による触媒/切断効率(K
cat/K
M)と基質のp1位に隣接するアルキルスペーサーの長さの間に強い相関関係があるようである(
図3A)。例えば、Cat Lに関して、2CQと6CQとの間で触媒効率において4倍の増大が観察され、2QC基質と6QC基質との間で6倍の増大が観察された(表1および
図3A)。この観察は、それぞれスペーサーの長さnが2と6との間で、8倍および4倍の効率の増大が観察されたCat Vと一致していた(表2)。すべての基質のK
mがCat Lについて有意に同じままであるので、触媒効率におけるこれらの差は、もっぱらターンオーバー数(k
cat)の差からもたらされた(表1)。より高いターンオーバー数は、非侵襲的画像化の間の細胞中でのこのようなプローブのより速い活性化を示している可能性があるので、in vitroでの基質のより高い酵素ターンオーバーは特に注目に値する。
【表1】
【表2】
【0155】
多くの形態のがんの1つの特徴は、腫瘍を取り囲む領域へのマクロファージなどのカテプシンが豊富な免疫細胞の浸潤の増大である。Shreeら、(2011年)Genes Dev. 25巻:2465~79頁;Bell-McGuinnら、(2007年)Cancer Res. 67巻:7378~85頁。したがって、システインカテプシン活性の非侵襲的画像化のための可能性のある試薬として、クエンチされた基質を利用する前に、マクロファージ由来の細胞株RAW264.7中のプロテアーゼの活性化を最初に測定した。細胞をプローブと共にインキュベートし、次いで、蛍光顕微鏡検査により画像化した。各1μMのクエンチされた基質nCQおよびnQCを、RAW264.7細胞と共に、10%FBSを含むDMEM中で、CO
2雰囲気中、37℃で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、リソソーム選択的マーカーLysotracker RedおよびHoechst33342核染色剤で染色し、PBSで3回洗浄し、次いで、生細胞画像化のためにPBSに懸濁させた。細胞と共にインキュベートされたクエンチされた基質のそれぞれについて強いCy5蛍光プローブが観察され、これらのプローブが、このマクロファージ由来細胞株中でシステインプロテアーゼによって活性化されていることが実証された(
図3B)。生細胞における標識化は、プローブのLysotracker Redとの強い共局在化によって示されるように、酸性小胞について非常に選択的であった。非共有結合性の基質の標識化形態は、共有結合性の標識、化合物1で処理された細胞のものと類似していた。これは、細胞へのエントリーのモードが類似していることを示している。
【0156】
可逆的基質での腫瘍の非侵襲的光学的画像化
in vitroおよび細胞ベースのアッセイでの基質の活性が実証されたので、次にこの基質を、乳がんの同種の同所性マウスモデルで評価した。このモデルでは、4T1細胞を、マウスの左の番号1および10の乳腺脂肪体に接種して腫瘍を発生させる。LLEの影響を決定するために、リソソーム向性プローブ2QC(化合物5)および6QC(化合物7)の画像化シグナルを、非リソソーム向性類似体2CQ(化合物2)および6CQ(化合物4)のものと直接比較した。基質を静脈内で腫瘍担持マウスに投与し、マウスを、投与に続く種々の時点で画像化した。クエンチされた基質プローブのターンオーバーからのCy5蛍光の急速な蓄積が、投与後30分未満で腫瘍中および腫瘍周りで観察され、周囲の正常組織から腫瘍を分界する十分なコントラストが1時間以内に観察された(
図4A)。蛍光シグナルの強度は投与後4時間で最大値に達し、続いてシグナル強度は低下した(
図4B)。腫瘍中での全体的な絶対蛍光強度は、非リソソーム向性基質2CQおよび6CQと比較して、LLE基質2QCおよび6QCを注射されたマウスについて、より高く、より明かった。さらに、シグナルの強度は、LLE基質を投与されたマウスの腫瘍中で24時間にわたって一定に留まったのに対して、非LLE基質からのシグナルは、24時間後にほとんど完全に消失した(
図4Aおよび4B)。同様の傾向は、4時間後および24時間後に安楽死させたマウスから切除された腫瘍のex vivoでの画像化によって観察された(
図4C)。これらのデータは、低分子量の可逆的に結合するコントラスト剤の設計における、潜在的なリソソーム向性効果の価値を実証している。
【0157】
細胞のどの集団が、クエンチされた基質プローブをin vivoで活性化するのに関与しているかを決定するために、各基質を注射されたマウスから単離された腫瘍の凍結スライス切片への免疫蛍光染色を、マクロファージ選択的マーカーCD68を使用して実施した。基質のCy5シグナルは、CD68陽性細胞(マクロファージ)だけに共局在化しており、4T1腫瘍細胞において、シグナルは観察されなかった(
図5A)。さらに、24時間後、Cy5蛍光は、nQC基質を受容したマウスからの組織においてのみ観察され、nCQ基質で処理されたマウスからの組織においては観察されなかった(
図5B)。これらの結果は、腫瘍におけるプローブ保持を増進させる戦略としてのLLEの有用性をさらに確証している。
【0158】
Da Vinci外科手術システムを使用したFGSにおけるプローブの適用
Da Vinci外科手術システムは、現在世界中のクリニックにおいて、腹腔鏡外科手術のために使用されている、Intuitive Surgical Inc.によって製造されたロボット外科手術システムである。このシステムを使用した外科的手順は現在白色光照明のもとで実施されているが、これは、周囲の正常組織から腫瘍の縁を分界するための十分なコントラストを提供していない。したがって、既存のDa Vinciシステムにも適合する腫瘍標的化コントラスト剤の開発に高い価値があり、それは、蛍光誘導外科手術(FGS)における治療結果の大幅な改善をもたらすはずである。
【0159】
したがって、上記の最適化された基質プローブは、FGSの臨床的に関連するモデルシステムで試験されている。したがって、これらの結果を達成するために、可逆的プローブ6CQNIR(化合物8)、およびこの基質のリソソーム向性類似体、6QCNIR(化合物9)を合成した。これらの化合物において、Cy5発色団を、類似の分子量の近赤外(NIR)DyLight780-B1フルオロフォアで戦略的に置き換えた。n=6を有するリンカーを有する化合物を、in vitroでのカテプシンによる最適ターンオーバー数をベースにして選択した。QSY21-スルホクエンチャーも、ダークNIRクエンチャーであるIRDye QC-1で置き換えた(
図6A)。da Vinciロボットのカメラシステムで検出可能であることに加えて、NIR色素の発光波長(783/799nmの吸収/発光極大)は、低い全体バックグラウンドを有するウィンドウ内に入るものであり、したがって、組織透過性を増大させ、画像化の間のシグナル対バックグラウンド比を改善することになる。Richards-KortumおよびSevick-Muraca(1996年)Annu. Rev. Phys. Chem. 47巻:555~606頁。NIRプローブを、IVIS-スペクトル画像化システムを使用して、上記の4T1乳がんモデルにおけるコントラスト剤として最初に分析した。コントラスト剤の全身投与に続いて、マウスを、基質の注射後、4時間の間1時間ごと、次いで6、8、12および24時間で非侵襲的に画像化した。プローブシグナルの急速な蓄積が、移植された乳房腫瘍において観察された。特に、健康な周囲組織から腫瘍周辺を分界する実質的なコントラストが、両方のプローブの注射後早くも1時間で観察された(
図6B)。腫瘍における蛍光シグナルの強度は、両方の種類のプローブを注射されたマウスにおいて急速に増大し、これは最終的に4~6時間の間にピークに達した。この時点は、この部類の非共有結合性のクエンチされた蛍光プローブの全身投与に続く、腫瘍を画像化するための最適ウィンドウを意味している可能性がある。初期プローブと同様に、近赤外類似体は、LLE基質6QCNIRを注入されたマウスの腫瘍における、非LLE基質と比較してより遅いクリアランス速度およびより明るいシグナルにより(
図6Bおよび6C)、そして腫瘍のex vivo分析後に(
図6D)立証されるように、リソソーム捕捉効果を示した。1~4時間の間で両方の基質は類似した初期強度を示しており、これは、カテプシンによる両方の基質の活性化速度が等しいことを示している。Cy5プローブと同様に、NIR類似体は、腎臓中および腫瘍中で最も高いシグナルの蓄積が観察されたことから(
図6E)、腎クリアランスにより排出された。
【0160】
小動物画像化システムを使用した肯定的な結果により、da Vinci外科手術システムを使用した画像誘導型切除試験を次に実施した。このロボット外科手術システム(
図7A)は、低侵襲性腹腔鏡外科手術手順を実施するために使用することができる。このシステムは、白色光画像化システムに加えて、NIRシグナルを担持するコントラスト剤を可視化するために使用できるNIRカメラも備えている。したがって、複数のがんのモデルで腫瘍切除試験を実施することができた。結腸がんのモデルでの外科的切除(APCマウス;
図7B)を選択し、また、乳がん(4T1移植モデル;
図7C)および転移性肺がんのモデル(
図7D)を選択した。各外科手術について、da Vinciロボットを、陽性プローブシグナルの切除を実施するのに使用した。組織学的分析を実施し、それによって基質-陽性組織中でのがん細胞の存在を確認するために、動物から組織も取り出した。
【0161】
全体的なこれらのデータにより、NIR蛍光基質プローブは、3つすべてのがんモデルにおいて腫瘍を強調することができることが確認された。さらに、既存のda Vinciロボットシステムを、がん病巣を特定し、さらなる分析用にそれらを取り出すために使用することができた。
【0162】
図8A~8Cは、脱離基中にキレーターを含むカテプシンプローブの構造、および動物におけるカテプシン活性を画像化するためのPET基質プローブの使用を示す。ブレオマイシンに誘導される肺線維症のマウスモデルにおける線維性疾患の進行に対するマクロファージの寄与を監視するための、アテローム性動脈硬化症のマウスモデルにおける活性化マクロファージ集団を画像化するための、そしてヒト頸動脈プラークを局所的に標識するための、同様のプローブの使用が近年報告されている。Withanaら、(2016年)Sci.Rep.6巻:19755頁、およびWithanaら、(2016年)J.Nucl.Med.57巻:1583-1590頁を参照(各々は、それらの全体について参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0163】
方法
一般
すべての樹脂および試薬は、商業的供給業者から購入し、さらに精製することなく使用した。反応および水系での後処理のために使用した水は、脱イオン水フィードからガラス蒸留したものであった。試薬グレードの溶媒を、すべての非水系抽出のために使用した。すべての水分感受性反応は、アルゴン陽圧下、無水溶媒中で実施した。反応物は、API 150EXシングル四重極質量分析計(Applied Biosystems)を使用したLC-MSにより分析した。合成した化合物は、C18カラムを使用して、ÅKTA explorer 100(Amersham Pharmacia Biotech)を用いた逆相HPLCにより精製した。化合物を、溶媒として、二段蒸留水および1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルの勾配液で溶出させた。NMRスペクトルは、パルス磁場勾配アクセサリーを備えたVarian 400MHz(400/100)、Varian 500MHz(500/125)で記録した。1H NMRスペクトルは、Bruker Avance 400(400MHz)またはBruker Avance 500(500MHz)装置で、25℃で記録し、MestReNova NMRプロセッシングソフトウェアを使用して処理した。化学シフト(δ)は、テトラメチルシランからのパーツパーミリオン(ppm)でのダウンフィールドで報告され、NMR溶媒(CDCl3、δ=7.25)中の残留プロチウムシグナルが参照された。データを以下の通り報告する:化学シフト、多重度(s=一重項、d=二重項、t=三重項、m=多重項およびq=四重項)、ヘルツ(Hz)および積分での結合定数(J)。細胞は、10%FBSおよび1% pen-strepを補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM(GIBCOカタログ番号11995))中で培養した。
【0164】
化合物合成
スキーム1に、これらの試験において使用した蛍光基質の初期シリーズの合成をまとめる。
【化26】
スキーム1。非共有結合性のクエンチされた蛍光活性ベース基質の6員のライブラリーの
合成。
【0165】
中間体1a、1bおよび1c。
0.5gの2-クロロトリチルクロリド(2-chlorortrityl chloride)樹脂(0.84mmol/gローディング)を3つの別個の固相反応容器に量り込んだ。反応容器に、aからcまでラベルを付けた。ジクロロメタン(DCM)を加えて樹脂を懸濁させ、次いで反応物を、実験室用振とう器を使用して15分間撹拌した。DCMで2回洗浄した後、3mLのDCM中のモノ-Fmoc-1,3-エタンジアミン(0.35g、1.26mmol)、モノ-Fmoc-1,4-ブタンジアミン(0.39g、1.26mmol)およびモノ-Fmoc1,6-ヘキサンジアミン(0.43g、1.26mmol)を、それぞれ容器a、bおよびcの中の樹脂に加えた。次いで、ジイソプロピルエチルアミン(Diisopropylthylamine)(DIPEA、3eq)をそれぞれに加え、反応物を室温で30分間撹拌した。次いで、樹脂をDCMで洗浄し、次に、未反応トリチルクロリドを不活性化させるために、メタノール中に10分間懸濁させた。Fmoc脱保護を、樹脂をDMF中20%のピペリジン溶液中に1時間懸濁させ、続いてそれぞれDCMおよびDMFで3回洗浄することによって遂行した。次に、第1のアミノ酸Fmoc-Lys(Boc)-OH(0.58g、1.26mmol)を、3mLのDMF中のHBTU(0.48g、1.26mmol)およびDIPEA(0.17g、1.26mmol)を使用して樹脂に結合させ、その混合物を2時間回転させた。洗浄サイクルに続いて、Fmoc脱保護を、5mLのDMF中の20%ピペリジンを使用して1時間かけて遂行し、続いて洗浄サイクルを再度行った。残留するアミノ酸Cbz-Phe-OHを、同様に、樹脂上のペプチドと結合させた。次いで、樹脂を、DCM中の1%トリフルオロ酢酸(trifluoroactic acid)溶液で処理して、樹脂からペプチドを選択的に切断した(Boc保護リシンが得られる)。トルエンとの共蒸発により、溶媒を各切断生成物から除去し、それぞれ中間体基質1a、1bおよび1cを得た(スキーム1)。次いで、各生成物を逆相分取HPLCによりさらに精製して最終ペプチドを95%超の純度で得た。
【0166】
基質2CQ、4CQおよび6CQ(化合物2、3および4)
別々の1mLエッペンドルフ管中で、中間体1a(2.0mg、μmol)、1b(2.0mg、μmol)および1c(2.0mg、μmol)を100μLのDMSOに溶解した。DIPEA(3μL、μmol)を加え、続いてQSY21-スルホ-NHS(1.2mmol)を加えた。反応物を室温で1時間撹拌し、続いてHPLCにより生成物を精製した。溶媒をロータリーエバポレーションで除去し、その後、DCM中の30%TFAでの30分間の処理により、リシン上のBoc保護を除去した。溶媒の除去に続いて、生成物を凍結乾燥し、次いで、DMSO中のCy5-NHSおよび3当量のDIPEAと反応させた(スキーム1)。最終生成物をそれぞれ逆相HPLCにより精製して非リソソーム向性のクエンチされた蛍光基質nCQ(それぞれn=2、4および6)を得た。
【0167】
基質2QC、4QCおよび6QC(化合物5、6および7)
別々の1mLエッペンドルフ管中で、中間体1a(2.0mg、μmol)、1b(2.0mg、μmol)および1c(2.0mg、μmol)を100μLのDMSOに溶解した。DIPEA(3μL、μmol)を加え、続いてCy5-NHS(1.2mmol)を加えた。反応物を室温で1時間撹拌し、続いて、HPLCにより生成物を精製した。溶媒をロータリーエバポレーションで除去し、その後DCM中の30%TFAでの30分間の処理により、リシン上のBoc保護を除去した。溶媒の除去に続いて、生成物を凍結乾燥し、次いで、DMSO中のQSY21-スルホ-NHSおよび3当量のDIPEAと反応させた(スキーム1)。最終生成物をそれぞれ逆相HPLCにより精製して、潜在的なリソソーム向性効果のクエンチされた蛍光基質nQC(それぞれn=2、4および6)を得た。
【化27】
スキーム2。da Vinci外科手術ロボットに適合する近赤外非共有結合性のクエンチされた蛍光活性ベースプローブの合成
【0168】
放射性標識
簡単に述べると、
64Cu-LO263を、90μL酢酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH5.5)中の10μLのLO263(10mM)(
図8A)を、100μL酢酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH5.5)中の4mCiの
64CuCl
2と共に、37℃で1時間インキュベーションすることによって調製した。室温に冷却した後、反応混合物をRP-HPLCにより分析した。次いで、
64Cu-LO263を、3分で95%溶媒A(0.1%TFAを含む蒸留水(di-water))および5%溶媒B(0.1%TFAを含むアセトニトリル)から出発して、23分で5%溶媒Aおよび95%溶媒Bへの移動相を用いたRP-HPLCにより精製した。次いで、
64Cu-LO263を含む溶出画分(保持時間18.9分)を収集し、ロータリーエバポレーターを使用して乾燥した。放射性標識収率は(HPLCから計算して)90%であった。他のピークに対する主生成物ピークの比で定義される放射化学純度は、放射性(radio)HPLCにより>95%と決定され、プローブの比放射能(specific activity)は3~4Ci/mmolと決定された。次いで、
64Cu-LO263を0.9%生理食塩水中で再構成し、0.22μm Milliporeフィルターを通過させ、動物PET/CT画像化用の滅菌バイアルに入れた。
【0169】
PET in vivo画像化
マウスに、100μCiの
64Cu-LO263を静脈内注射し、Inveon小動物PET/CT(Siemens)を使用して2時間および24時間後に画像化させた(
図8B)。簡単に述べると、CT解剖学的画像スキャンを、約0.1mmの画素サイズで獲得した(80kV、500μA)。CT画像化後、全身PET画像化を5分の静止スキャンで実施した。PET画像を、CT減衰をもとにしたサブセット化による期待値最大化法(ordered-subsets expectation maximization)3次元アルゴリズムを使用して再構成し、Inveon Research Workplace(IRW)ソフトウェア(Siemens)を使用して解析した。PETボクセルサイズは、0.796×0.861×0.861mmであり、合計で128×128×159ボクセルであった。次いで、PET/CT定量化アッセイを実施し、組織の放射能を計算し、組織のグラム当たりの減衰補正注射用量パーセンテージ(%ID/g)で表した。どのグループが画像化されているかについて、試験を行う研究者にはブラインドにした。
【0170】
合成化合物のNMRスペクトル
2CQ(2)
LCMS:C
99H
108N
10O
21S
5
2+についての計算値:966.81;実験値(found);966.8、HRMS:C
99H
108N
10O
21S
5
2+について
の計算値:966.8159;実験値:966.8121。
【化28】
【0171】
4CQ(3)
LCMS:C
101H
112N
10O
21S
5
2+についての計算値:980.8;実験値;980.6、HRMS:C
101H
112N
10O
21S
5
2+についての計算値:980.8315;実験値:980.8264。
【化29】
【0172】
6CQ(4)
LCMS:C
103H
116N
10O
21S
5
2+についての計算値:994.8;実験値;994.8、HRMS:C
103H
116N
10O
21S
5
2+についての計算値:994.8472;実験値:994.8444。
【化30】
【0173】
2QC(5)
LCMS:C
99H
108N
10O
21S
5
2+についての計算値:966.81;実験値;966.8、HRMS:C
99H
108N
10O
21S
5
2+についての計算値:966.8159;実験値:966.8122。
【化31】
【0174】
4QC(6)
LCMS:C
101H
112N
10O
21S
5
2+についての計算値:980.8;実験値;980.8、HRMS:C
101H
112N
10O
21S
5
2+についての計算値:980.8315;実験値:980.8267。
【化32】
【0175】
6QC(7)
LCMS:C
103H
116N
10O
21S
5
2+についての計算値:994.8;実験値;994.8、HRMS:C
103H
116N
10O
21S
5
2+についての計算値:994.8472;実験値:994.8429。
【化33】
【0176】
クエンチされたインドシアニングリーン標識蛍光基質の設計および合成
インドシアニングリーンの検出可能な要素と、QC-1クエンチャーとを含む画像化プローブを、以下のスキームで例示されるように合成した:
【化34】
【表3】
【0177】
上記の合成スキームで示すように、3mgの出発化合物を、過剰量のインドシアニングリーン(ICG)-NHSエステルで処理した。オーバーナイトでの反応後、生成物をLCMSを用いて分析した:m/z=446[M/3+1],668.5[M/2+1],892[2M/3+1]。
【0178】
反応の生成物を、分取HPLCにより単離した。収量=5.7mg,4.25μmol,89%(わずかに湿った)。
【0179】
BOC保護基を、DCM中の50%TFAを用いて除去した。
【0180】
ICG標識中間体を、さらに、下記のように活性化QC-1クエンチャーで反応させた:
【化35】
【表4】
【0181】
上記の合成スキームで示すように、2.77mgの出発化合物を、過剰量のQC-1 NHSエステルで処理した。1日の反応後、生成物をLCMSを用いて分析した:m/z=1150[M/2+1]。
【0182】
反応の生成物を、2巡の分取HPLCで精製し、凍結乾燥した。収率=2.2mg,0.96μmol,44%。2.2mg,0.96umol,44%収率。
【0183】
Dylight780-B1標識およびICG標識のクエンチされた基質プローブを比較する、in vivoマウス研究。
上記に示すICG標識プローブ(ex/em:805/835nm)を、マウス腫瘍モデルシステムにおいて、Dylight780-B1標識プローブ(ex/em:783/799nm)と比較した。簡単に述べると、4T1乳がん細胞を対象マウスの脂肪体に注射した。腫瘍を10~12日間成長させ、その後、プローブを尾静脈から注射した(3用量:マウス当たり10、50、100nmol)。その後、対象マウスをLicor PEARL(785/820nm)で画像化した。
【0184】
図9Aおよび9BにおけるDylight780-B1標識プローブとICG標識プローブとの間の比較により示されるように、最も明るいシグナルは、50nmolの6QC-ICGを用いて得られた。比較として、このプローブからのシグナルは、類似の条件下で6QC-Dylight780-B1により観察されたシグナル強度のおおよそ3倍であった。
【0185】
蛍光へのプローブ濃度の効果を
図10Aおよび10Bに例示し、ここで、10nmol,50nmol,および100nmolのDylight780標識プローブで処置された動物の画像(
図10A)を、10nmol、50nmol、および100nmolのICG標識プローブで処置された動物の画像(
図10B)と比較する。50nmolの画像において最も明確であるように、ICG標識プローブによる処置に起因する蛍光のアウトプットは、Dylight780標識プローブによる処置に起因する蛍光のアウトプットよりも、顕著に高い。
【0186】
2種のプローブ間でのシグナルの違いを、
図11A~11Dに例示するように、さらにex vivo研究により定量化し、ここで、10nmol、50nmol、および100nmolのDylight780-B1標識プローブおよびICG標識プローブのそれぞれで処置した動物を、8時間時点で屠殺して、様々な動物組織に付随する蛍光を定量化した。
図11Aおよび11Bは、3つの濃度のDylight780標識プローブ(
図11A)またはICG標識プローブ(
図11B)で処置され、8時間の標識後の動物の全身画像を比較している。
図11Cおよび11Dは、各濃度のプローブによってDylight780標識(
図11C)またはICG標識(
図11D)された動物の特定の組織のそれぞれにおいて観察された蛍光を比較している。
図10A,10B,11A,および11Bにおいて例示される動物全身の画像化研究から予想されるように、Dylight780標識プローブで処置された動物からの腫瘍試料(
図11C)と比較して、ICG標識プローブで処置された動物からの腫瘍試料(
図11D)では、顕著に高い蛍光シグナルが観察された。
【0187】
本明細書で挙げたすべての特許、特許公開および他の公開文献を、それぞれが個別にかつ具体的に参照により本明細書に組み込まれているかのように、それらの全体について参照により本明細書に組み込む。
【0188】
具体的な例を提供してきたが、上記説明は例示であり限定ではない。上記に説明した実施形態の特徴のいずれか1つまたは複数を、本発明中の任意の他の実施形態の1つまたは複数の特徴と任意の仕方で組み合わせることができる。さらに、本明細書を概観すれば、本発明の多くの変更形態が当業者に明らかになる。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を、それらの全範囲の均等物と併せて参照することによって決定されるべきである。