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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20220930BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220930BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20220930BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220930BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/04 N
H01M8/04746
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020529235
(86)(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2018005243
(87)【国際公開番号】W WO2019107676
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2017-0161869
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517019603
【氏名又は名称】スタンダード エナジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Standard Energy Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ギム ブギ
(72)【発明者】
【氏名】ギム ギヒョン
(72)【発明者】
【氏名】バク サンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョエ ダムダム
(72)【発明者】
【氏名】ジョ ボムヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョエ ガンヨン
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-170782(JP,A)
【文献】特表2014-507748(JP,A)
【文献】特表2019-508865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池において、
前記レドックスフロー電池は、
内部に陽極と陰極に区分される一対の電極、前記電極同士の間に備えられる分離膜、及び前記電極の外側面に積層される分離板を含む電池セル、前記電池セルの陽極または陰極へ陽極電解液または陰極電解液を供給する電解液タンク、前記電池セルと電解液タンクとを連結して電解液を移送する電解液流路、及び電気モジュールの外部の圧力発生器により生成された圧力を前記電解液流路へ伝達して電解液の流れをつくる流体制御部を含む二つ以上の電池モジュールを備え、
前記流体制御部は、
電解液流動空間(Vh_electrolyte)と、前記電解液流動空間と物理的または概念的に分離されて前記流体制御部に圧力を伝達する自由空間(Vh_free)とを含み、
前記圧力発生器により生成される前記圧力を電解液流路へ伝達する流体移送管と、
前記流体移送管から伝達された前記圧力に応じて前記電解液流路に一方向に電解液の流れを誘導する弁とをさらに含み、
前記圧力発生器が陽圧及び陰圧を発生させて前記流体制御部に伝達すると、前記流体制御部内の圧力が変化し、前記弁が動いて電解液の流れを作り、陽圧と陰圧が繰り返されることにより、前記流体制御部が前記電池セルに電解液を供給し、
前記電池モジュールはそれぞれまたは一定の個数の電池モジュールごとに独立して電解液を循環させて充放電し、前記レドックスフロー電池は下記式1及び式2を満足するものである、レドックスフロー電池。
[式1]
≧0.05V
[式2]
0.05秒≦T≦V/Qmin
(式中、Vは流体制御部に流入する電解液の最大体積、Qminは臨界流量であって、1分あたり流れる電解液の体積が反応体積Vの3%に該当する値、Tは流体制御部の作動周期を意味し、
前記流体制御部に流入する電解液の最大体積は、前記流体制御部に前記電解液タンクと前記圧力発生器を連結した後、前記圧力発生器を介して流体制御部に陰圧を加えて電解液を前記流体制御部に移送させたときの最大流量を意味し、
前記反応体積Vは、前記電解液が直接接触する部分である流路のうち前記電池セルの構成要素である分離膜、分離板、電極を基準に面積が最も小さい構成要素の面積と、電解液の流路のうち対面距離が最も短いところの長さとの積を意味し、
前記流体制御部の作動周期は、V/V値が固定されたとき、Vが最も大きい流体制御部を基準に必要な陽圧と陰圧の圧力変換周期を意味する。)
【請求項2】
前記電池モジュールは、
一つまたは二つ以上の電池セルと、
前記電池モジュールの内部に備えられ、前記陽極または陰極へ陽極電解液または陰極電解液を供給する一対の電解液タンクと、
前記電解液流路に備えられ、一つまたは二つ以上の流体制御部とを含む、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項3】
前記流体制御部の前記弁は、前記電解液流路の内部に備えられ、一方向に電解液の流れを誘導する一つまたは複数の逆止弁を含み、
前記流体制御部の前記流体移送管は、前記逆止弁に隣接して電解液流路に連通し、前記圧力発生器から伝達される圧力を電解液流路へ直接伝達する、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
前記流体制御部は、前記電解液流路の一側端に備えられ、
前記電解液タンク内に位置する制御部ハウジングを含み、
前記流体制御部の前記流体移送管は、前記電池モジュールの外部から伝達される圧力を制御部ハウジング内へ直接伝達し、
前記流体制御部の前記弁は、前記制御部ハウジングの側面に備えられ、電解液タンクから制御部ハウジングへ電解液を誘導し且つ制御部ハウジングから電解液流路へ電解液を誘導する一つまたは複数の逆止弁を含む、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記電池モジュールは、二つ以上の流体制御部を備えるものである、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記電池モジュールは、二つの流体制御部を備え、前記流体制御部の圧力供給周期は、いずれか一つの流体制御部の陽圧周期の区間または陰圧周期の区間が互いに重なり合うようにする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項7】
前記流体制御部は、一つまたは二つ以上の圧力制御弁をさらに備え、
前記圧力制御弁は、流体制御部に陽圧と陰圧を交互に供給するため前記圧力発生器と前記流体制御部との間に備えられることを特徴とする、請求項1に記載のレドックスフロー電池。
【請求項8】
前記流体移送管は、内部に弁膜、遮断弁、逆止弁及び浮遊弁から選ばれるいずれか一つまたは二つ以上の電解液流入防止器をさらに備えるものである、請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【請求項9】
前記流体移送管は流体濾過器をさらに備えるものである、請求項3に記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池に係り、より詳細には、電池セルごとに陽極電解液及び陰極電解液を保管する電解液タンクと、前記電解液タンクから電池セルへ電解液を移送するために流体制御部を備えて反応時間を減らし、効率を向上させ、シャント電流の発生を抑制することができる、電池モジュールが多数結合されたことを特徴とするレドックスフロー電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の主な原因である温室効果ガスの排出を抑制するための方法として、太陽光エネルギーや風力エネルギーなどの再生可能エネルギーが脚光を浴びており、これらの実用化・普及のために多くの研究が進められている。しかし、再生可能エネルギーは、立地環境や自然条件によって大きく影響される。さらに、再生可能エネルギーは、出力変動が激しいから、エネルギーを連続的に均一に供給することができないという欠点がある。よって、再生可能エネルギーを家庭用または商業用に使用するために、出力が高いときはエネルギーを保存し、出力が低いときは保存されたエネルギーを使用することが可能なシステムを導入して採用している。
【0003】
このようなエネルギー貯蔵システムとしては大容量の二次電池が使用されるが、一例として、大規模な太陽光発電及び風力発電団地には大容量の二次電池貯蔵システムが導入されている。前記大容量の電力貯蔵のための二次電池としては、鉛蓄電池、硫化ナトリウム(NaS)電池及びレドックスフロー電池などがある。
【0004】
レドックスフロー電池は、常温で作動可能であり、容量と出力をそれぞれ独立して設計することができるという特徴があるため、最近、大容量の二次電池として多くの研究が行われている。
【0005】
レドックスフロー電池は、燃料電池と同様に、分離膜(メンブレン)、電極及び分離板が直列に配置されてスタックを構成することにより、電気エネルギーの充放電が可能な二次電池の機能を有する。レドックスフロー電池は、分離膜の両側に設けられた陽極電解液貯蔵タンクと陰極電解液貯蔵タンクからそれぞれ供給された陽極電解液と陰極電解液が循環しながらイオン交換が行われ、この過程で電子の移動が発生して充放電が行われる。このようなレドックスフロー電池は、従来の二次電池に比べて寿命が長く、kW乃至MW級の中大型システムに製作することができるので、ESS(Energy storage
system)に最も適することが知られている。
【0006】
しかし、レドックスフロー電池は、陽極電解液と陰極電解液を貯蔵するタンクが別個に一定の空間をおいて配置される構造(例えば、スタックの両側または下側に一定の空間をおいて電解液タンクが配置される構造)であって、スタックと電解液タンクとを接続する電解液循環管によって、全般的なシステムの体積において、類似した電力貯蔵容量を基準に、他の電力貯蔵装置である鉛蓄電池、リチウムイオン電池及びリチウム-硫黄電池と比較して相対的に大きいという欠点がある。
【0007】
また、スタック、ポンプ及び電解液タンクに接続される電解液循環管が多数備えられるべきなので、それぞれのスタックに電解液を一定に供給するために、一定基準以上のポンプ容量が要求されるが、電解液循環管の長さが長くなるほどポンプの要求容量が増大してポンプの大きさ及び電池の製造コストが増大するという問題点があり、ポンプ容量の増大による消費電力が増加しながら全般的な電池効率が低下するという問題点が伴っている。
【0008】
また、一般な電池は、充放電動作が行われる作動応答性が速くなければならない。ところが、レドックスフロー電池の場合、停止した状態で充放電のために稼動させる場合、ポンプによって電解液がスタックの内部へ循環するまで時間がかかり、所要の時間分の応答性が低下し、セル、スタック及びポンプを連結する耐化学性配管が多数必要とされるので、コストが上昇するという問題点があった。
【0009】
ここで、通常のレドックスフロー電池は、マニホールドを介して各電池セルへ電解液が供給される。ところが、マニホールドに満たされた電解液は、各セルをつなぐ電気通路の役割を果たすので、電子の移動経路になることができ、このような経路によりシャント電流が発生して、充放電の際にエネルギーの一部がシャント電流によって失われてしまう。これは効率の減少、部品の破損、セル性能の不均一を引き起こす主な原因となる。従来は、このようなシャント電流を減らすために、マニホールドの長さを増加させ且つ断面積を狭める方法を主に採用したが、これは流体の流れ抵抗を増加させてポンプ損失を発生させる。よって、これを克服することが可能な代案が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するためになされたもので、その目的は、電池セル、または電池セルが多数積層されたスタック単位ごとに電解液を保管する電解液タンクをそれぞれ備えるか、或いは多数の電池セルが電解液タンクを共有する形態に、電解液を電池セルまたはスタックへ運搬するためにポンプを代替する手段を適用することにより、多数のポンプ設置による電池効率低下を克服し、シャント電流の発生を抑制することができるレドックスフロー電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、レドックスフロー電池に関する。
【0012】
本発明の一態様は、内部に電池セル、電解液タンク、電解液流路、及び外部で生成された圧力を電解液流路へ伝達する流体制御部を含む一つまたは二つ以上の電池モジュールを備えるが、前記電池モジュールはそれぞれまたは一定の個数の電池モジュールごとに独立して電解液を循環させて充放電し、前記レドックスフロー電池は下記式1及び式2を満足するものである、レドックスフロー電池を提供する。
[式1]
≧0.05V
[式2]
0.05秒≦T≦V/Qmin
(式中、Vは流体制御部に流入する電解液の最大体積、Vは酸化-還元反応に参加する電解液の体積、Tは流体制御部の作動周期、Qminは電解液の分あたり平均流量を意味する。)
【0013】
本発明において、前記電池モジュールは、
陽極電極と陰極電極との間に備えられる分離膜、及び陽極と陰極の外側面に積層される分離板を含む一つまたは二つ以上の電池セルと、
前記電池モジュールの内部に備えられ、前記陽極または陰極へ陽極電解液または陰極電解液を供給する一対の電解液タンクと、
前記電池セルと電解液タンクとを連結して電解液を移送する電解液流路と、
前記電解液流路に備えられ、電池モジュールの外部から伝達される圧力を電解液流路へ伝達して電解液の流れを制御する一つまたは二つ以上の流体制御部とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記流体制御部は、
前記電解液流路の一部に備えられ、一方向に電解液の流れを誘導する一つまたは複数の逆止弁と、
前記逆止弁に隣接して電解液流路に連通し、前記電池モジュールの外部から伝達される圧力を電解液流路へ直接伝達する流体移送管とを含むか、或いは
前記電解液流路の一側端に備えられ、前記電解液タンク内に位置する制御部ハウジングと、
前記電池モジュールの外部から伝達される圧力を制御部ハウジング内へ直接伝達する流体移送管と、
前記制御部ハウジングの側面に備えられ、電解液タンクから制御部ハウジングへ電解液を誘導し且つ制御部ハウジングから電解液流路へ電解液を誘導する一つまたは複数の逆止弁とを含むことができる。
【0015】
本発明において、前記電池モジュールは、二つ以上の流体制御部を備えることができ、この中でも、前記電池モジュールが二つの流体制御部を備える場合には、前記流体制御部の圧力供給周期は、いずれか一つの流体制御部の陽圧周期が他の流体制御部の陽圧周期と一部重なり合うようにすることを特徴とする。また、このために、前記流体制御部は一つまたは二つ以上の圧力制御弁をさらに備えることもできる。
【0016】
また、本発明において、前記流体移送管は、一つまたは二つ以上の流体濾過器をさらに備えるか、或いは内部に弁膜、遮断弁、逆止弁及び浮遊弁から選ばれるいずれか一つまたは二つ以上の電解液流入防止器をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るレドックスフロー電池は、電池モジュールに電池セルまたはスタックと電解液タンクを備え、電解液を運搬するために、モジュールごとにポンプを備える代わりに、圧力を利用した流体制御部を備えて電池モジュールごとに適用することにより、シャント電流の発生を大幅に低減または除去することができる。
【0018】
また、電池モジュールごとに電解液タンクを備える場合、電解液の移送経路を飛躍的に減らすことができ、ポンプの駆動に必要な動力を節約し且つ電池の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る多数の電池モジュールが結合されたレドックスフロー電池を示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る電池モジュールの内部構造を示す図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態に係る電池モジュールの内部構造を示す図である。
図4図4は、本発明の逆止弁の一例を示す図である。
図5a図5aは、本発明の逆止弁の他の例を示す図である。
図5b図5bは、本発明の逆止弁の他の例を示す図である。
図5c図5cは、本発明の逆止弁の他の例を示す図である。
図6図6は、二つの流体制御部が備えられたレドックスフロー電池を示す図である。
図7図7は、二つの流体制御部が備えられたレドックスフロー電池を示す図である。
図8a図8aは、二つの流体制御部が備えられた場合、各流体制御部の圧力周期を示す図である。
図8b図8bは、二つの流体制御部が備えられた場合、各流体制御部の圧力周期を示す図である。
図8c図8cは、二つの流体制御部が備えられた場合、各流体制御部の圧力周期を示す図である。
図9a図9aは、圧力制御弁がさらに備えられた流体制御部を示す図である。
図9b図9bは、圧力制御弁がさらに備えられた流体制御部を示す図である。
図10a図10a圧力制御弁の一例を示す図である。
図10b図10b圧力制御弁の一例を示す図である。
図11図11は、電解液流入防止器及び流体濾過器がさらに備えられた流体制御部を示す図である。
図12図12は、電解液流入防止器及び流体濾過器がさらに備えられた流体制御部を示す図である。
図13図13は、本発明の別の実施形態に係る多数の電池モジュールが結合されたレドックスフロー電池を示す図である。
図14a図14aは、本発明の実施例1、比較例1及び比較例2によるレドックスフロー電池のV/Vによる流量偏差比率を示す図である。
図14b図14bは、本発明の実施例1、比較例1及び比較例2によるレドックスフロー電池のV/Vによる流量偏差比率を示す図である。
図14c図14cは、本発明の実施例1、比較例1及び比較例2によるレドックスフロー電池のV/Vによる流量偏差比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るレドックスフロー電池を好適な実施形態を参照して詳細に説明する。ここで紹介される好適な実施形態は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするための例として提供されるものである。
【0021】
よって、本発明は、以下に提示される実施形態に限定されず、他の形態にも具体化できる。以下に提示される実施形態は、本発明の思想を明確にするために記載されたものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0022】
このとき、使用される技術用語及び科学用語において他の定義がなければ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が通常的に理解している意味を有し、下記の説明において、本発明の要旨を不明確にするおそれのある公知の機能及び構成についての説明は省略する。
【0023】
また、本発明の構成要素を説明するにあたり、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。これらの用語は、ある構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、該当構成要素の本質や順番、順序などを限定するものではない。ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載されている場合、ある構成要素は他の構成要素に直接連結または接続されてもよいが、これらの構成要素同士の間に別の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」されてもよいと理解されるべきである。
【0024】
また、ここで紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするための例として提供されるものである。よって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態に具体化されることも可能であり、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して図示できる。また、明細書全体にわたり、同一の参照番号は同一の構成要素を示す。
【0025】
また、明細書及び添付された特許請求の範囲で使用される単数形は、文脈上で特に指示がない限り複数形も含むものと意図することができる。
【0026】
本発明において、用語「電池セル」は、電解液を介して充放電が起こる最小単位であって、イオン交換が起こる分離膜、分離板などを含んで構成される。
【0027】
本発明において、用語「スタック」は、電池セルが複数個積層或いは構成されたものを意味する。
【0028】
本発明の発明者は、レドックスフロー電池の欠点である、電解液循環管の長さ増加及びそれによる電池自体の体積増加、高性能ポンプを必要としたりポンプ自体の数を増やしたりするなどの物理的な問題、電解液の運搬によるポンプの大きさ及び電池の製造コストの増大、応答性の低下、ポンプ損失などの問題点を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、電池セルまたはスタックと流体制御部とを備える電池モジュールを多数結合することにより電解液の移動距離を大幅に減らすとともに、ポンプを代替するために電池モジュールごとに流体制御器を備え、電解液の供給に影響を与える様々な因子を制御することにより、応答性の低下、ポンプ損失などの問題点を解決し、本発明を完成するに至った。
【0029】
本発明に係るレドックスフロー電池は、図1または図13に示すように、内部に電池セル100、電解液タンク200、電解液流路400、及び外部で生成された圧力を電解液流路へ伝達する流体制御部300を含む一つまたは二つ以上の電池モジュール10が電気的に接続されて備えられるが、前記電池モジュールは、それぞれ独立して電解液を内部循環させて充放電することを特徴とする。
【0030】
図2によってこれをさらに詳細に説明すると、内部に陽極110と陰極120に区分される一対の電極と、前記電極同士の間に備えられる分離膜130と、前記電極の外側面に積層される分離板140とを含む一つまたは二つ以上の電池セル100;前記電池モジュールの内部に備えられ、前記陽極または陰極へ陽極電解液または陰極電解液を供給する一対の電解液タンク200;前記電池セルと電解液タンクとを連結して電解液を移送する電解液流路400;及び前記電解液流路に備えられ、電池モジュールの外部から伝達される圧力を電解液流路へ伝達して電解液の流れを制御する一つまたは二つ以上の流体制御部300;を含んで構成できる。
【0031】
一方、本明細書において、エンドプレート、電解液タンク200及びポンプなどの構成及び機能については、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であればすべてよく知っているはずなので、本明細書において、これについて別に説明しないことにする。
【0032】
但し、本発明において、前記電池セルは、通常のレドックスフロー電池を基準に説明及び図示したもので、場合によっては電極、分離膜または分離板などを省略してもよい。
【0033】
以下、図面に基づいて、各構成要素をさらに詳細に説明する。
【0034】
図1は本発明に係るレドックスフロー電池の形態を簡略に示すものである。図1を参照すると、多数の電池モジュール10が図13に示すようにモジュール連結部600を介して電気的に接続されており、前記電池モジュールは電解液の移送のために流体移送管330を介して圧力発生器500に接続されている。但し、場合によっては、電池モジュール間の電気的接続なしで独立して駆動される形態で構成されてもよい。
【0035】
本発明に係るレドックスフロー電池は、前記電池モジュール間の電解液の干渉や交換なしですべて独立して電解液を循環させるか、或いは幾つかの電池モジュールが電解液タンクを共有し、これによりシャント電流の発生を最小限に抑えたことを特徴とする。ただし、場合によっては、各電池モジュールの内部または電池モジュール間の電解液の混合のために、電池モジュール間に電解液が流れることが可能な通路が構成できる。本発明ではこれを限定しない。
【0036】
図2は前記電池モジュール10の形態を簡略に示すものである。図2を参照すると、前記電池モジュールには電池セル100、陽極電解液タンク210及び陰極電解液タンク220が備えられ、これらは電解液流路400を介して電池セルに連結される。一方、前記電解液流路には、外部から伝達される圧力を用いて電解液を移送することができるように流体制御部300が備えられ得る。
【0037】
本発明において、電池セル100は、図2の下側に示すように、陽極110と陰極120に区分される一対の電極と、前記電極同士の間に位置する分離膜130と、前記陽極及び陰極の外側に離隔して位置する分離板140とを含むことができる。前記陽極、陰極、分離膜及び分離板は、ハウジング150内に位置し、ハウジングの内部で電解液の移動、充電、放電などの電気化学的反応が起こる。
【0038】
前記電池セルに供給される陽極電解液及び陰極電解液は、電解液タンクから移送されて電解液流路を介してハウジングの内部に流入して反応が進行し、反応の終了した電解液は、再び電解液流路を介して電解液タンクへ入って循環する。
【0039】
本発明において、前記流体制御部300は、従来のポンプを代替し且つ電解液を循環させるために、電解液が電池セルへ流入する電解液流路に備えられ得る。前記流体制御部は、圧力の変化を利用して電解液が所定の方向に流れることができるように備えるもので、逆流を防止し且つ圧力の変化を利用して電解液を移送することが可能な形態であれば、その構造及び種類を限定しない。
【0040】
前記流体制御部の他の例として逆止弁を挙げることができる。前記逆止弁について図2の左側上端からさらに詳細に説明すると、電解液流路内には一方の方向へ流体を移送させることが可能な一対の逆止弁311、312が備えられ、これらの逆止弁同士の間には電解液流路へ圧力を直接伝達する流体移送管330が電解液流路に連通して備えられる。
【0041】
つまり、流体移送管を介して外部から圧力が伝達されると、自然に第1逆止弁311と第2逆止弁312との間の空間に圧力の変化が発生し、これにより電解液が一方の方向に流れる。
【0042】
例えば、流体移送管において第1逆止弁と第2逆止弁との間の空間の圧力が低くなるように作動すると(陰圧)、自然に逆止弁同士の間の空間の圧力も低くなる。よって、圧力平衡を保つために、第1逆止弁の向こうの電解液が逆止弁同士の間の空間に流入し、第2逆止弁は閉じることにより、電解液の逆流を防止する。また、外部から供給される圧力が高まる場合(陽圧)、逆止弁同士の間に存在する電解液が自然に第2逆止弁を通過して電池セルに流入し、第1逆止弁は閉じる。この過程の繰り返しにより、電解液は電池セルまたはスタックに流入して循環する。
【0043】
但し、図2などでは前記流体制御部が一対の逆止弁を備えているが、一般に、電池セルの内部は流体流れ抵抗が高いため、必要に応じては第2逆止弁がなくても逆流が一部防止される効果があるので、前記流体制御部は一つの逆止弁のみを持つこともできる。これとは逆に、2つ以上の多数の逆止弁をさらに備えてもよい。このような流体制御部の構成は、本発明の目的を達成することが可能な範囲内で自由に変更可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【0044】
本発明の実施形態では、流体制御部が電池セルに陽圧を加えて電解液を供給することを示したが、これに限定せず、電池セルから電解液が排出される電解液流路に連結して、流体制御部が電池セルに陰圧を加えて電池セルから電解液が循環するように構成することができる。この場合、逆止弁の作動方向が反対に構成できる。
【0045】
本発明は、上述したような構造を持つことにより、電池モジュールごとにモーターを駆動する必要がなく、エネルギー効率を向上させることができ、電解液の循環距離を減らして電池の応答性を高め、耐酸性配管の使用を最小限に抑えることができる。
【0046】
本発明において、前記流体制御部は、電解液の流れを誘導しなければならないので、一定レベル以上の陽圧及び陰圧が形成されなければならない。但し、本発明において、陽圧及び陰圧の範囲を限定せず、電解液の流れを誘導する程度の圧力であれば、大気圧よりも高くても低くても構わない。一例として、圧力の範囲は、大気圧を基準に、陽圧ないし陰圧、陽圧ないし大気圧、大気圧ないし陰圧などのように、圧力の上限及び下限に関係なく、その差を適切に調節することができる。
【0047】
また、電解液の円滑な流れを誘導し、電池セルに供給する電解液の量を増加させるために、図2の上側に示すように、逆止弁同士の間に一定の隔室を形成することが可能な制御部ハウジング320をさらに備えてもよい。
【0048】
本発明において、前記流体制御部に圧力を伝達する装置及び流体の種類は制限しない。一例として、陽圧の形成のためには、圧力を伝達するための流体の圧縮のために圧力発生器500をコンプレッサーまたはポンプとすることができ、陰圧の形成のためには、圧力発生器を、真空装備、吸引装備またはベンチュリ管を備えたエジェクタとすることができる。流体の場合にも気体、液体の両方を使用することができ、作動する圧力発生器の種類に応じて自由に選択することができる。一つの圧力発生器を介して陽圧と陰圧を同時に発生することも可能であり、陽圧または陰圧を形成する装備はどちらか一方のみを使用してもよい。もちろん、流体制御部の作動圧力は、前述したように陽圧-陰圧または陽圧-大気圧、陰圧-大気圧の組み合わせで動作することができ、電解液の流量差異は発生しうるが、これは流体制御部の動作概念が圧力の組み合わせに関係なく同一であることを意味する。
【0049】
また、本発明に係る圧力発生器は、動作中に失われる流体を補償するために別途の供給装置(図示せず)によって補充することができ、流体制御部に加わる圧力の大きさを一定に維持するために圧力測定器(図示せず)をさらに備え、一定レベル以下の陽圧及び陰圧が測定される場合には前記供給装置を介して流体を圧力発生器へ注入して補充したり外部へ排出したりする構成をさらに含むこともできる。
【0050】
図4は逆止弁を備えた流体制御部の一般な形態を示すものである。図4によれば、制御部ハウジング320の両側面には電解液流路400に直接連結される逆止弁311、312が一対備えられ、上面には前記電解液流路へ圧力を供給する流体移送管330が直接連結される。このとき、前記流体移送管を介して制御部ハウジング内へ流体が流入することを防止するために、一つ以上の電解液流入防止器350をさらに備えることができる。
【0051】
前記電解液流入防止器は、圧力の円滑な伝達が可能であり、制御部ハウジング内に流体が流入することを防止すればいずれの材質、形状を持ってもよい。一例として、前記電解液流入防止器は、図4に示すように制御部ハウジング内に位置するが、制御部ハウジングと流体移送管が物理的に遮断でき、柔軟性を有する弁膜の形で備えることが好ましい。電解液が酸成分を含んでいる場合、電解液が直接接触することができる弁膜は、耐酸性を有する弁膜を使用することが好ましい。
【0052】
本発明に係る流体制御部300は、図2に示すように、電解液タンクと電池セルとの間に位置することもできるが、図3に示すように、電解液タンク200の内部に位置することもできる。これをより詳細に説明すると、前記流体制御部は、電解液タンク内に備えられるが、電解液流路400の一端に位置し、制御部ハウジング320を介して流体と電解液との混合を遮断する。制御部ハウジングは側面に一対の逆止弁311、312を備えるが、前記逆止弁は、制御部ハウジングの外部から内部へ作動するものと、制御部ハウジングの内部から外部へ作動するものをそれぞれ備える。このとき、制御部ハウジングの内部から外部へ作動する逆止弁は直ちに電解液流路の一端に連結できる。また、制御部ハウジングの外部から内部へ作動する逆止弁は、直ちに電解液タンクの電解液に接触するか、或いは管路が延長されて電解液中に位置することが好ましい。
【0053】
電解液タンク内に流体制御部が位置する場合、圧力発生器を介して電解液タンク内の流体制御部へ陽圧が伝達されると、流体制御部内の電解液が逆止弁を介して電解液流路へ押し出され、自然に流体制御部内の電解液の水位が減少して流体制御部内の電解液と外部の電解液との水位差が発生する。一定レベル以上の電解液の水位を下げ、陽圧の供給を中断すると、電解液の水位差を介して電解液が流体制御部の内部に流入することができる。よって、圧力発生器からの電解液の流入のために必要な陰圧の供給量を減らすことができるか、或いは陰圧を供給しなくても電解液が流体制御部内へ自然に流入することができるため、全体レドックスフロー電池の効率を高めることができる。
【0054】
本発明において、前記逆止弁310は、チェックバルブとも呼ばれており、電解液の流れを一方の方向に誘導するように作動する。本発明において、逆止弁は、図2などに示すように、ボール(ball)形態や弁膜形態などの流体の流れ方向を制御することができればいずれの構造を持ってもよい。
【0055】
例えば、図5aに示すようなディスク形態または図5bに示すような弁膜形態の逆止弁を備えても構わず、この他にも、リフト逆止弁、スイング逆止弁、ウエハー型スイング逆止弁、スプリットディスク逆止弁などの様々な形態の逆止弁を使用することができる。
【0056】
また、前記逆止弁以外にも、図5cに示すように、圧力で動作する弁を備えてもよい。前記弁も、一般な逆止弁と動作形態が同一であり、電解液の流れにおいて正方向よりも逆方向の流れ抵抗が高いため、全体的に正方向に流体が流れる形態を持つことができ、これも逆止弁のカテゴリーに属するといえる。すなわち、逆止弁の形態とは関係なく、電解液の流れにおいて正方向よりも逆方向の流れ抵抗が高いため、全体的に正方向に流体が流れる形態を持つことができ、これも逆止弁のカテゴリーに属するといえる。
【0057】
また、前記電池モジュールは、図6及び図7に示すように、前記流体制御部300を二つ以上備えることもできる。一般に、流体制御部の流体移送管が一つである場合、陽圧であるときにのみ電池セルへ電解液が供給されて連続的な電解液の流れを作ることは難しい。また、このとき、電解液が連続的に流れずに一定時間以上セル内に留まりながら、セル自体の性能が低下するおそれがある。
【0058】
本発明は、これを解消するために、二つまたはそれ以上の流体制御部を連結して連続的な流れを誘導することができる。図7を参照してこれをさらに詳細に説明すると、第1流体制御部300aに陽圧が供給されると、第2流体制御部300bには陰圧を供給する。すなわち、第1流体制御部に陽圧が供給されるので、逆止弁同士の間に位置する電解液が電池セル側へ流入し、同じ時間に第2流体制御部には陰圧が供給されるので、電解液タンク内の電解液が逆止弁同士の間の空間に流入する。第1流体制御部内の電解液を電池セル側に向かって供給した後には第1流体制御部に陰圧を供給し、同じ時間に第2流体制御部には陽圧を供給することにより、電解液を電池セルへ供給する。このような動作を繰り返すと、電解液の連続的な流れを誘導して安定的なセル駆動を可能にすることができる。
【0059】
前述のように電池モジュールに複数の流体制御部を備える場合、これらに供給される圧力の供給周期を調節することが好ましい。但し、この場合には、これらの供給周期を同じ位相(phase)とするよりは、互いに異なる位相にして圧力変化を与えることが好ましい。
【0060】
図8a乃至図8cを参照してこれをさらに詳細に説明すると、図8aに示すように、第1流体制御部の圧力供給周期と第2流体制御部の圧力供給周期を互いに完全反対にするが、各制御部の陽圧区間の長さと陰圧区間の長さとを同一にする場合、一定の流量の電解液が電池セルへ供給されなければならないが、各流体制御部で圧力周期が変わる地点で、各区間による干渉により、一般に供給されなければならない電解液よりもさらに少ない量の電解液が電池セルへ供給される。すなわち、この区間で瞬間的に流量が減少することがある。
【0061】
したがって、前述したような干渉による電解液の供給妨害を防止するために、各流体制御部の陽圧周期区間または陰圧周期区間が互いに重なり合うようにするのが良い。
【0062】
図面を参照してこれをさらに詳細に説明すると、図8bに示すように、各流体制御部の周期は同一にするが、一つの流体制御部の陽圧区間の長さと陰圧区間の長さとは同一に維持し、もう一つの流体制御部の陽圧区間は陰圧区間よりも長く維持するか、或いは、図8cに示すように、二つの流体制御部の作動位相は異なるが、いずれか一つの流体制御部の陽圧周期と他の流体制御部の陽圧周期とが一定時間互いに重なり合うようにすること、すなわち、一つの流体制御部における陽圧周期の区間Dが他の流体制御部における陰圧周期の区間Dよりもさらに長くなるように調節するのが良い。
【0063】
これは、両流体制御部の陽圧周期と陰圧周期が完全に同一の長さを持つ場合、一般に供給されなければならない電解液の量よりもさらに少ない量の電解液が電池セルへ供給されるので、不足分を補うためにいずれか一つまたは二つの流体制御部の陽圧周期の長さを陰圧周期の長さよりも増やして電池セルに供給する電解液の流量を一定レベル以上に維持させるのである。
【0064】
ただし、図面上では二つの流体制御部の周期を互いに同一に示したが、両流体制御部の周期は互いに同一であっても異なってもよく、前述した流体制御部の作動目的を達成することができればいずれの形態にも変更することができる。または、流体制御部の周期は同一にするが、それぞれの流体制御部の容量を異ならせて同じ目的を達成することができる。
【0065】
上述のように、各流体制御部300に供給される圧力の周期を調節するために、図9a及び図9bに示すように、圧力発生器と流体制御部との間に圧力制御弁340をさらに備えることが好ましい。前記圧力制御弁は、流体制御部に陽圧と陰圧を交互に供給するためのもので、上述したような特定の圧力供給周期に合わせてポートの開閉を自由に調節することができる構造、及びこれに相応するすべての形態の装置を含む。
【0066】
図10a及び図10bを参照して前記圧力制御弁340をさらに詳細に説明すると、図10aに示すように、互いに異なる二つの圧力発生器から出てきた流体移送管にそれぞれ圧力制御弁を備えることができる。前記圧力制御弁は、圧力制御弁ハウジング341と、前記ハウジングの内部に設けられたスイッチング管342とを備えることができる。このとき、前記圧力制御弁ハウジングは、流体の流れ方向がハウジングの内部に向かう管(流入管)と、ハウジングの内部から外部に向かう管(排出管)をそれぞれ備え、これらの数を調節してスイッチング管のスイッチング形態を自由に調節することができる。
【0067】
また、図10bに示すように、それぞれの圧力制御弁340に陽圧と陰圧が同時に連結され、必要な周期に応じて、流体制御部300に供給される圧力を陽圧と陰圧の中から選択的に供給されるようにすることができる。または、陽圧と陰圧との中間圧力を形成することができるように、別のポートまたは外部の弁を備えて2つの圧力供給管が連結されるようにすることができる。
【0068】
一例として、一つの圧力制御弁に一つの流入管と二つの排出管を備える場合、前記圧力制御弁は、一つの圧力発生器及び二つの流体制御部に連結される構造を持つ。よって、いずれか一つの流体制御部に陽圧を供給する途中で圧力の形態を変化させなければならない場合、前記スイッチング管と排出管との連結形態を変えて他の流体制御部に陽圧を供給することにより調節することができる。
【0069】
但し、図面の如く、ハウジング流入管を一つ、ハウジング排出管を二つ備えることもできるが、ハウジング流入管を二つ、ハウジング排出管を一つ備えることもでき、圧力供給器及び流体制御部の数に応じて流入管及び排出管の数を自由に調節することは本発明が制限しない。
【0070】
また、上述の如く、陽圧周期の区間Dが陰圧周期の区間Dよりもさらに長くなるように調節する場合、陽圧周期の区間が陰圧周期の区間よりも長いため、すべての流体制御部に陽圧を供給する瞬間が発生する。このとき、上述の如くスイッチング管が備えられると、すべての流体制御部に陽圧を供給することが難しいので、前記スイッチング管の代わりにハウジングの外側にソレノイドバルブなどの調節弁(図示せず)を備えるのが良い。
【0071】
例えば、前記ソレノイドバルブを各流体制御部に連結された排出管と連結し、いずれか一つの流体制御部に陽圧を供給するときは、当該流体制御部に連結された排出管のソレノイドバルブを開き、第1流体制御部と第2流体制御部の両方に陽圧を供給するときは、すべての排出管のソレノイドバルブを開いて陽圧周期を上述のように調節する。または、図10bに示すように構成して陽圧と陰圧を電池セルごとに独立して制御することができる。
【0072】
本発明に係るレドックスフロー電池は、図9a及び図9bなどに示すように多数の圧力発生器500を備えることもできるが、図9bに示すように一つの圧力発生器で陽圧と陰圧を同時に発生させ、発生する陽圧と陰圧の排出口を互いに異なるように備えることで、エネルギー消費を減らし且つ空間活用を極大化することもできる。
【0073】
また、本発明に係るレドックスフロー電池は、前記流体移送管330の内部に電解液流入防止器350をさらに備えることもできる。
【0074】
一般に、レドックスフロー電池は、バナジウム酸化物、ヒドラジン、ハロゲン化合物、及びその他の酸類などを添加しており、これを運搬するために、耐酸性を有する移送管を使用しなければならない。ただし、上述した特殊な移送管は、一般管に比べて高価であるため、電解液を移送する管以外には一般金属管または空気圧管または空気圧チューブを使用するのが良い。
【0075】
問題は、上述のように流体を用いて電解液流路に圧力を加えるためには前記流体を供給する流体移送管が電解液流路に連通して備えられなければならないが、陽圧供給または陰圧供給過程で電解液が流体移送管側へ逆流するおそれもあることである。
【0076】
したがって、かかる問題点を解決するために、流体移送管内に弁膜、遮断弁、逆止弁、及び浮遊弁から選ばれるいずれか一つまたは二つ以上の電解液流入防止器をさらに備えて電解液の逆流を防ぐことができる。
【0077】
図11を参照して前記電解液流入防止器350の一例をさらに詳細に説明すると、前記電解液流入防止器は、流体移送管と流体制御部ハウジングが隣接するところに備えるが、電解液によって浮遊することができ、網状構造などの内部に気孔を持つが、流体移送管に当接しうる面は流体移送管を閉鎖することができるようにシート形状を有する物体であり得る。
【0078】
図11の上側に示すように、前記電解液流入防止器は、流体移送管内で浮遊するように一定サイズ以上の直径を有することがよく、流体移送管の直径よりは小さいことが好ましい。一方、前記流体移送管は、前記制御部ハウジングに直接接続される部分の直径は前記電解液流入防止器の直径よりも小さく備えられ、電解液流入防止器が離脱しないようにすることができる。
【0079】
図11の下側に示すように、流体移送管に陰圧がかかって制御部ハウジング内の電解液の水位が上昇すると、前記電解液流入防止器が流体移送管を塞いで一種のバルブの役割を果たして電解液の流入を防止することができる。
【0080】
但し、図11のような浮遊弁の場合、陰圧と陽圧を供給するポンプの作動に応じて、流体の制御部ハウジングの流入を完全に防ぐことは難しいおそれがある。よって、図12に示すように、前記流体移送管の断面を完全に覆うように弁膜形態の電解液流入防止器を導入することもできる。
【0081】
図12を参照してこれをさらに詳細に説明すると、前記弁膜は、前記流体移送管と制御部ハウジングとの連結を完全に閉鎖するが、弾性を持つ材質から構成され、流体移送管を介して伝達される圧力を制御部ハウジング内へ効果的に伝達することができる。すなわち、図12の上側に示すように、制御部ハウジングに陽圧を伝達する場合には、前記弁膜も陽圧に合わせて流体移送管から制御部ハウジングの方向へ伸びる。よって、制御部ハウジング内の圧力が高くなるので、自然に内部の逆止弁が作動して電解液が電池セル側へ移動する。
【0082】
図12の下側に示すように、制御部ハウジングに陰圧を伝達する場合には、前記弁膜も陰圧に合わせて制御部ハウジングから流体移送管の方向に伸びる。この場合、制御部ハウジング内の圧力が低くなりながら、内部の逆止弁が作動して電解液が電解液タンクから制御部ハウジングの方向へ移動する。
【0083】
ただし、前記電解液流入防止器は、図11または図12に示すように、浮遊体、または圧力により変形が可能な弁膜で流体移送管を完全に塞ぐ形態で備えることもできるが、この他にも、電解液の流入を防ぐことができながらも、圧力を流体制御部へ伝達することができる構造であれば、本発明で区分なく適用することができる。
【0084】
また、前記電解液流入防止器は、一つまたは二つ以上の異なる構造を混合して使用することができる。すなわち、一つまたは二つ以上の浮遊体または弁膜形態の電解液流入防止器を混合して使用してもよい。
【0085】
前記電解液流入防止器は、電解液が直接触れ合う構造なので耐酸性を維持し、前述のように弁膜形態である場合には、流動性を有する物質からなるのがよい。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどの高分子、アクリルゴム、フッ素ゴムなどのゴム類、またはアルミニウムなどの金属などがあり、この他にも、上述のような物性を有する物質であれば制限なく使用可能である。
【0086】
また、本発明に係るレドックスフロー電池は、電解液に混合できる不純物を除去するために流体移送管330に流体濾過器360をさらに備えることができる。
【0087】
流体制御部に圧力を伝達する流体が空気または酸素を含む気体である場合、電解液が酸化して電池セルの充放電効率が低下するおそれがある。これを解消するために、酸素などの不純物が電解液に混合されないように、図9a及び図9bの如く流体移送管に流体濾過器をさらに備えるのがよい。このとき、流体濾過器は、各流体制御部に設置するか、或いは全体流体制御部を連結して一つの流体移送管に設置することが可能であり、修理のために交換することも可能である。
【0088】
本発明において、前記流体濾過器は、電解液の性能を低下させる成分、例えば、酸素、水分などを予め除去するためのものであり、これらの成分以外にも、電解液の性能に影響を与える物質であればいずれも除去することができる該当成分除去用フィルターなどを含むことが好ましい。一例として、脱酸素剤または脱酸素装置が流体移送管の一部に装着されてもよい。
【0089】
本発明に係るレドックスフロー電池は、上述のような構成に加えて、外部から電気的に接続するための電気端子、前記流体制御部などを制御することが可能な制御部、及びモニター部と、これらを接続する端子または接続口がさらに備えられてもよい。
【0090】
図13は前述した電池モジュールを多数接続して大容量のシステムを構成する実施形態を示す図である。電池モジュール100は、直列または並列に電気的に接続されるか、或いは電気的に独立して構成され得る。各電池モジュールの流体制御部の駆動のために外部から圧力を伝達することができるように圧力発生器に連結するが、電池モジュールの大きさ及び個数に応じて、圧力発生器の個数も一つまたは多数に構成することができる。
【0091】
図13のように電池モジュールが多数備えられる場合、多数の流体制御部を均一に制御しなければならない。特に、レドックスフロー電池は、セルの内部に流れる電解液の流量に応じて性能の偏差が発生するので、各電池セルに一定の範囲の電解液流量を確保することが重要である。しかし、流体制御部が適切に設計されない場合、多数の流体制御部が均一な流量の電解液を電池セルに供給し難く、これにより各電池モジュールの性能が変わるので、全体レドックスフロー電池の性能が大幅に低下するおそれがある。
【0092】
また、レドックスフロー電池の場合、高い粘度を有する液体電解液を使用するので、各電池セルに電解液を均一に供給し且つこれを循環させるために圧力発生器の電力使用が増加する可能性があって消費電力を考慮して設計しなければならない。また、多数の流体制御部ごとに作動偏差が発生するおそれがあり、圧力発生器から加わる流体の流れが各流体制御部に同じ時間で均一に到達し難いので、これを制御することも重要である。
【0093】
本発明に係るレドックスフロー電池は、電解液の流れを制御する流体制御部を備えるが、電解液の供給に影響を及ぼす可能性のある様々な因子を把握し、これを制御して電池の効率を高めることを特徴とする。
【0094】
まず、流体制御部は、圧力発生器を介して伝達された圧力を電解液に伝達して電解液がモジュールの内部を循環するようにするもので、大きくは、制御部ハウジングの内部に位置する電解液流動空間Vh_electrolyteと、前記電解液流動空間と物理的または概念的に分離され、流体制御部に圧力を伝達する自由空間Vh_freeとが備えられ得る。さらに詳しくは、Vh_electrolyteは、制御部ハウジングに連結された一対の逆止弁同士の間の空間と定義するか、或いは逆止弁とセルの電極に至る空間と定義することができ、本発明では、これら2定義のうちの少なくとも一つは、本発明での条件を満足することが好ましい。
【0095】
ただし、自由空間は、流体制御部の内部だけでなく、流体制御部と圧力発生器との間の空間体積まで含むことができ、Vh_freeにおける流体制御部の内部に該当する分だけの空間は別途に構成しなくても、流体制御部の構造は実現が可能である。
【0096】
一例として、流体制御部に圧力が加わる場合、制御部ハウジングのVh_electrolyteの空間が減少して電解液が制御部ハウジングの外に排出され、流体制御部に加わった圧力が減少するか或いは陰圧が加わる場合、Vh_electrolyteの空間は増えるので、電解液は制御部ハウジングの空間に流入する。この動作の繰り返しにより、流体制御部は、圧力発生器から伝達された流体圧力によって電解液をセルに供給する。
【0097】
本発明では、流体制御部が、圧力変化により電解液が流入するときの流体制御部内の電解液の最大体積と、電解液が電池セルに供給されるときに流体制御部内の電解液の最小体積のうち、実際電解液の流量供給性能に重要な流入した電解液の最大体積を、V=Vh_electrolyte_maxと定義して各パラメータを記述する。
【0098】
もし一つの電池セルに多数の流体制御部が接続された場合、Vは、それぞれの流体制御部内の電解液流入最大体積の総和となる。もし一つの圧力発生器が接続された電池セルまたは流体制御部が互いに異なる形状と体積を持つ場合、少なくとも一つの電池セル-流体制御部セットは、本発明で記述するパラメータ値を満足するものであって、本発明の範疇内にあると解釈すべきである。
【0099】
一例として、Vが小さい場合、弁膜が変形しうる体積も小さくなる。この場合、圧力発生器から伝達された流体によって弁膜が変形しうる最大点に至る時間が短くなる。また、一つの流体移送管330に多数の流体制御部が備えられる場合、圧力発生器から伝達された流体の流量が多く至る流体制御部または弁膜の厚さ偏差により相対的に弁膜の変形がよく起こる流体制御部(以下、「第1流体制御部」という)が、他の流体制御部に比べて弁膜の最大変形点に至る時間が短いので、電解液の流量が初期に急速に増加するが、弁膜が最大変形点に至ると、弁膜が変形することができないので、それ以上電解液が流れないため、電池セルの内部に循環する電解液の流れが止まる。しかし、他の流体制御部(以下、「第2流体制御部」という)は、弁膜が最大変形点に至らないため電解液を電池セルに伝達しているので、電池セル間の挙動に偏差が発生する。
【0100】
もしこれを最小限に抑えるために、弁膜が最大変形点に至る前に、圧力発生器から伝達された流体の圧力を陽圧から陰圧に変える場合、第1流体制御部は、電解液の流れをスムーズに誘導することができるが、圧力発生器から伝達された流体の流量が少ない第2流体制御部は、弁膜の変形が相対的に少なく起こるだけでなく、圧力発生器から伝達された流体の陽圧と陰圧の周期が短いときには弁膜の変形が十分に起こらないため電解液が流れない場合が発生することがある。
【0101】
逆にVが大きい場合、弁膜が変形しうる体積も大きくなり、相対的に弁膜の最大変形点に至る時間が長く、余裕体積が大きいため、流体制御部の作動偏差を減らすことができる。しかし、流体制御部の制御部ハウジングの体積が一定レベル以上に大きい場合、一種の貯蔵所が発生して他の流体制御部が動作するまでの時間が長くかかるため、ポンプの消費電力が大きくなるか或いは電解液の流量の偏差が大きくなる。
【0102】
ここに多数の流体制御部が備えられる場合、各流体制御部の作動偏差により電解液の流量にも差異が発生することがある。一例として、10つの流体制御部が一つの流体移送管330に連結されている場合、各流体制御部までの流体移送管の距離または流体制御部内の弁膜の製作偏差または流体制御部の組立偏差、流体制御部と電池セル間の連結部偏差、電池セル内の電解液流れ抵抗の偏差などのさまざまな要因により、電解液の流量にも差異が発生することがある。
【0103】
このような流量偏差は、電池セルの性能偏差を誘発して、多数の電池セルで構成されたシステム全体の効率と安定性を低下させるおそれがある。これを克服するために、大容量の圧力発生器を用いてすべての流体制御部のうち、最少の流量を提供する流体制御部が一定レベル以上の流量を確保して性能を保障することができる流量臨界値以上に動作するようにすることはできるが、この場合、圧力発生器の消費電力が大きくなり、他の流体制御部の流量が速くなって内部圧力が増加するので、電池セルが破損するおそれがある。したがって、システムの効率と電池セルの動作安定性を確保しながら、流体制御部の作動偏差を最小化して均一な流量を確保することが重要である。
【0104】
また、電解液の流量は、電池セル内の電解液の電気化学反応に主要に影響を及ぼす酸化-還元反応に参加する電解液の体積、略して反応体積Vと出力密度などの動作環境に直接的な連関がある。反応体積Vは、一般的に実際電解液のイオン交換が発生する分離膜の有効面積と電極の厚さとの積と定義するが、一部のレドックスフロー電池は、分離膜、電極または分離板の一部なしに動作可能な場合があり、電解液が流れる流路の構成が異なることがある。
【0105】
本発明では、これを考慮して反応体積を定義した。さらに詳細には、電解液が直接接触する部分である流路のうち電池セルの構成要素である分離膜、分離板、電極を基準に面積が最も小さい構成要素の面積と、電解液の流路のうち対面距離が最も短いところの長さとの積を意味する。
【0106】
この時、対面距離は、電解液の流路において電解液と接触する一つの接触面を基準に、前記接触面と対向する他の接触面との直線距離を意味するもので、電解液の流路のうち最も幅が狭いところの長さを意味する。また、電解液の流路は、電解液が電解液タンクから出発して再び電解液タンクへ循環するまでのすべての経路を意味し、前記電解液の流路は、図示された電解液流路400だけでなく、流体制御部内のハウジング、陽極または陰極、分離膜及び分離板間の空間など、電解液が接触して通過するすべてのところであるといえる。
【0107】
前記対面距離の一例として、電解液の流路のうち対面距離が最も短い部分が円筒状の管である場合には、当該管の直径が対面距離であり、電解液の流路のうち幅が最も短いところが分離膜と電極との間である場合には、当該幅の長さが対面距離である。
【0108】
本発明に係るレドックスフロー電池は、上述したような特性を考慮して下記式1を満足することが好ましい。
[式1]
≧0.05V
【0109】
また、本発明に係るレドックスフロー電池は、流体制御部に流入する電解液に関連する変数以外に、圧力発生器から供給される陽圧及び陰圧の周期を調節することもできる。
【0110】
圧力発生器が陽圧と陰圧を発生させて流体制御部に伝達すると、流体制御部内の圧力が変化し、弁膜が動いて電解液の流れを作る。このとき、流体制御部に伝達される作動流体の流量と生成可能な圧力の範囲、そして陽圧と陰圧の生成周期が重要である。陽圧と陰圧が繰り返されることにより、流体制御部は電池セルに電解液を供給するので、これを適切に制御してこそ圧力発生器の消費電力を最小限に抑えながら必要な電解液の流量を確保することができる。
【0111】
レドックスフロー電池は、適用される電解液の種類によって電解液の流量の最適値が互いに異なりうるが、安定した性能のために、流体制御部による電解液が1分あたり流れる平均流量m/minは、反応体積Vの3%以上であることが好ましい(実施例2参照)。このとき、1分あたり流れる平均流量m/minが反応体積Vの3%に該当する流量を臨界流量Qminと定義する。
【0112】
電解液の流量が臨界流量以上である場合、電池セルの性能を均一に保つことができるので、すべての流体制御部は、電池セルの臨界流量以上の電解液を供給することができるようにすることが好ましい。これに満足するために、本発明によるレドックスフロー電池は、流体制御部の作動周期Tが下記式aを満足するのが良い。この時、流体制御部の作動周期は、V/V値が固定されたとき、Vが最も大きい流体制御部を基準に必要な陽圧と陰圧の圧力変換周期を意味する。
【0113】
ところが、前記臨界流量Qminは、1分あたり流れる電解液の体積が反応体積Vの3%以上であると定義したので、これに該当する値を代入すると、最大周期を設定することができる。
[式a]
T≦V/Qmin
【0114】
ただし、周期があまり短い場合、制御弁と逆止弁の反応速度よりも流体制御部内の圧力変化周期がさらに短くなって電解液が流れない現象が発生するので、下記式2を満足することが好ましい。
[式2]
0.05秒≦T≦V/Qmin
【0115】
上述のように、流体制御部が臨界値以上の流量を提供するためには、Tを短くして電解液を速い周期で供給するか、或いは、Tを長くし、1周期内に供給する電解液の量を増やす方法がある。しかし、Tを短くすると、Vの必要な体積を減らすことはできても、逆止弁の反応速度の限界、制御弁の反応速度の限界、現実的に発生可能な部品及び組立偏差などにより流体制御部の安定した動作を保障し難い。逆にTが長い場合、Vの体積が大きくなければならないので、システムの全体積が大きくなり、先立って流体制御部の部品及び組立偏差により一部の流体制御部が動作しないことがある。したがって、圧力発生器と流体制御部を適用して駆動するレドックスフロー電池は、上記の条件を満たしてこそ、多数の電池セルを安定的に駆動することができる。
【0116】
総合的に、本発明に係るレドックスフロー電池は、最適の効率を持つため、流体制御部から電池セルに供給される電解液の流量、電池セル内で反応する電解液の体積、流体制御部に供給される圧力の周期などを考慮して、下記式1及び式2の両方を満足することが好ましい。ただし、流体制御部が互いに異なる複数の周期Tを持つとき、少なくとも一つの周期が式2を満足することが好ましく、複数の流体制御部が備えられる場合には、少なくとも一つの流体制御部が式1を満足することが好ましい。
【0117】
前述したように、本発明に係るレドックスフロー電池は、高価な化学用ポンプを使用することなく、電解液を電解セルまたはスタックへスムーズに循環させることができる。また、それぞれの電池モジュールごとに電解液タンクを備えるか、或いは一定の数の電池モジュールごとに電解液タンクを共有することができるので、従来のレドックスフロー電池に比べて電解液の循環距離が一層短く、これにより高価な耐酸性移送管の使用比重を大幅に減らすことができる。
【0118】
また、電解液の循環距離が短いので、従来のレドックスフロー電池に比べて応答性が大幅に改善でき、電解液タンクが分離できる。このとき、電解液が各電池モジュール内でのみ循環するので、シャント電流が発生しない。
【0119】
本発明に係るレドックスフロー電池は、上述のような特性により、電藏庫と呼ばれる高電圧大容量のエネルギー貯蔵システムを効果的に実現することができる。また、高価な化学用ポンプを多数使用する必要がなくてコストを削減することができ、それぞれの電池モジュールを独立して設置、交換することができるので、運用効率性が向上できる。これだけでなく、電池モジュールの性能バラツキを考慮して、類似の性能を有する電池モジュールごとに区分して大容量のエネルギー貯蔵システムを実現することができるので、システムの効率を向上させることができる。
【0120】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明に係るレドックスフロー電池をさらに詳細に説明する。ただし、下記実施例及び比較例は、本発明の理解を助けるために記載されるものなので、本発明を制限するものではない。
【0121】
下記の実施例及び比較例を介して製造された試験片の諸元と物性測定方法は、次のとおりである。
(モジュール)
流体制御部:8,000mmの体積を有し、ソレノイドイド弁付きPVC(polyvinylchloride)材質のハウジング
圧力発生器:最大0.1kWの消費電力、-0.1MPa~0.1MPaの圧力出力を有する陽圧-陰圧コンバーチブル型ポンプ、自体の逆止弁構造を持っており、2つのポートがそれぞれ陽圧と陰圧を発生させるポンプ
弁膜:エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴムとフッ素ゴム
陽極、陰極:炭素繊維及び黒鉛、炭素複合材料
(電解液)
電解液は、バナジウム(V)電解液であって、バナジウムイオンの濃度は1.6molであり、その他に硫酸を含むものを使用した。
(電解液の最大体積(Vh))
流体制御部に電解液タンクと前記ポンプを接続した後、前記ポンプを介して流体制御部に陰圧を加えて電解液を流体制御部へ移送させたときの最大流量を測定した。
(電解液の反応体積(Vc))
電池セルの反応面積は横70mm、縦70mmであり、電極の圧縮厚さは2mmであり、電解液の流路のうち幅が最も狭いところの幅が2mmであり、最終的に電解液の反応体積は9,800mmであった。
(電流効率)
電圧範囲1.2V乃至1.6V、電流密度40mA/cm乃至200mA/cmで充電及び放電を行うが、これを1サイクル(cycle)にして10サイクル繰り返し行った後、平均値を計算した。
(流量偏差比率)
流体制御部ごとに一定時間の間に測定された電解液の最大体積を下記式3に代入して計算した。
[式3]
流量偏差比率=(L-S)/L
(式3中、Lは各流体制御部の流量の最大値であり、Sは各流体制御部の流量の最小値である。)
(効率偏差比率)
各流体制御部に接続された電池セルのエネルギー効率を測定し、下記式4に代入して計算した。
[式4]
効率偏差比率=(M-N)/M
(式4中、Mは電池セルのエネルギー効率の最大値であり、Nは電池セルのエネルギー効率の最小値である。)
【0122】
[実施例1、比較例1及び比較例2]
流体制御部は、合計10つを備えるが、一つの圧力発生器に接続した。一つの電解液タンクにそれぞれ2つの流体制御部を接続した。そして、それぞれの流体制御部を介して移送される電解液の流量を個別に測定した。このとき、電解液の最大体積Vと電解液の反応体積Vとの割合をそれぞれ0.05(実施例1)、0.02(比較例1)、20(比
較例2)に調節したときに流量偏差比率を測定し、図14a乃至図14c及び表1に記載した。
【0123】
【表1】
【0124】
流量偏差比率が1である場合、多数の流体制御部のうち、少なくとも一つの流体制御部は、電解液を電池セルに供給することができないことを意味する。流量は陽極電解液を基準として記載するが、陰極電解液の場合にも同じ条件で測定した。
【0125】
前記表1及び図14a及び図14bのようにV/Vが0.05(5%)以上である場合、流量偏差比率が急激に減少することを確認することができた。これは、最小流量確保のための周期Tの最小値と関連があることが確認された。先立って述べたようにV/Vの値が小さい場合には、陽圧と陰圧の変換周期Tあたり流体制御部が電池セルに供給することができる電解液の量が減少して電解液の流れが止まった。これにより、効率が急激に低下することを確認することができた。
【0126】
[実施例2]
流量臨界値を測定するために、実施例1の条件と同様にするが、1分あたりの平均流量がVの0.5%であるときから3000%の範囲で実験を行い、電池セルの効率変化を測定した。この範囲で式4に基づいて計算した効率偏差比率を示した。このとき、1分あたりの平均流量がVの10%以上である場合、明確な結果値の差異がないので、0.5%乃至10%の範囲の値を示した。
【0127】
図14cのように、臨界流量は、1分あたり流れる電解液の流量がVの3%以上である場合、電池セル間の効率偏差が大きく減少することを確認することができる。したがって、臨界流量はVの3%以上であることが好ましい。
【0128】
上述したように、本発明の好適な実施例及び比較例を参照して、本発明に係るレドックスフロー電池の大略的な連結構造などを説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、下記特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱することなく、本発明に多様な修正及び変更を加え得ることが理解できるだろう。
【符号の説明】
【0129】
1 スタック
10 電池モジュール
100 電池セル
110 陽極
120 陰極
130 分離膜
140 分離板
150 ハウジング
200 電解液タンク
210 陽極電解液タンク
220 陰極電解液タンク
300 流体制御部
310 逆止弁
311 第1逆止弁
312 第2逆止弁
320 制御部ハウジング
330 流体移送管
340 圧力制御弁
350 電解液流入防止器
360 流体濾過器
400 電解液流路
500 圧力発生器
600 モジュール連結部
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14a
図14b
図14c