(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】エアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集もしくは精製または収集かつ精製する方法
(51)【国際特許分類】
C12P 17/04 20060101AFI20220930BHJP
A01N 43/12 20060101ALI20220930BHJP
A01N 65/12 20090101ALI20220930BHJP
A01P 13/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
C12P17/04
A01N43/12 Z
A01N65/12
A01P13/00
(21)【出願番号】P 2020572828
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(86)【国際出願番号】 CN2020094641
(87)【国際公開番号】W WO2021047216
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】201910863755.7
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 偉軍
(72)【発明者】
【氏名】胡 露▲やん▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 ▲ちゅう▼
(72)【発明者】
【氏名】許 玲
(72)【発明者】
【氏名】章 娜
(72)【発明者】
【氏名】王 建蘇
(72)【発明者】
【氏名】朱 金文
(72)【発明者】
【氏名】白 全江
(72)【発明者】
【氏名】云 暁鵬
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106508460(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102870659(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00-41/00
A01N 1/00-65/48
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法であって、
ヒマワリ種子を採取し、発芽後、ヒマワリ幼苗をエアロポニックス装置に定稙し、エアロポニックスシステムを利用してヒマワリ幼苗を栽培し、
エアロポニックス段階では、まずリン含有エアロポニックス栄養液を使用してヒマワリ幼苗を栽培し、20~25日間栽培した後、飢餓培養処理のために無リンエアロポニックス栄養液に変更し、飢餓培養処理の期間は5~7日間であるステップ(1)と、
エアロポニックス装置内のすべての栄養液に対して、固相抽出カラムを介して固相抽出を実行し、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質を得るステップ(2)と、を含むことを特徴とするエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【請求項2】
前記エアロポニックス装置は、噴霧器、培養バレル、サイクルタイミングコントローラを含み、
前記噴霧器は栽培バレルの底に配置され、栽培バレルの内部は、ヒマワリの幼苗の根系の底よりも液面が低いエアロポニックス栄養液で満たされ、栽培バレルの上部には、定植穴付きのキャリングカバーと定植穴の下に設置された定植ラックがあることを特徴とする請求項1に記載のエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【請求項3】
前記サイクルタイミングコントローラの設定手順は、周期的にスプレーし、スプレー時間間隔が15~20minに設定され、毎回のスプレー持続時間は20~30sであることを特徴とする請求項2に記載のエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【請求項4】
エアロポニックス段階では、ヒマワリの幼苗を栽培するための条件は、温室または屋内インキュベーターで、16hの明培養/8hの暗培養の光周期で、昼と夜の温度をそれぞれ25℃と20℃で栽培することであることを特徴とする請求項2に記載のエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、前記リン含有エアロポニックス栄養液は、改良された1/2ホーグランド栄養液で、その配合は、質量濃度で計算すると、硝酸アンモニウム430~450mg/L、リン酸水素二カリウム90~100mg/L、硫酸マグネシウム180~200mg/L、硫酸カリウム130~140mg/L、硫酸第一鉄50~60mg/L、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物60~70mg/L、塩化カルシウム220~240mg/L、微量元素ホウ酸1.3~1.5mg/L、塩化マンガン四水和物0.80~0.90mg/L、硫酸銅五水和物0.070~0.080mg/L、塩化亜鉛0.10~0.30mg/L、モリブデン酸ナトリウム二水和物0.020~0.030mg/Lであり、
前記無リンエアロポニックス栄養液は、無リンの1/2ホーグランド栄養液であり、その配合は、質量濃度で計算すると、硝酸アンモニウム430~450mg/L、硝酸カリウム75.0~85.0mg/L、硫酸マグネシウム180~200mg/L、硫酸カリウム130~140mg/L、硫酸第一鉄50~60mg/L、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物60~70mg/L、塩化カルシウム220~240mg/L、微量元素ホウ酸1.3~1.5mg/L、塩化マンガン四水和物0.80~0.90mg/L、硫酸銅五水和物0.070~0.080mg/L、塩化亜鉛0.10~0.30mg/L、モリブデン酸ナトリウム二水和物0.020~0.030mg/Lであることを特徴とする請求項2に記載のエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、固相抽出カラムをポンプに接続し、固相抽出のために培養バレル内のエアロポニックス栄養溶液に浸すことを特徴とする請求項1に記載のエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、前記固相抽出カラムはC18逆相抽出カラムであることを特徴とする請求項1に記載のエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【請求項8】
前記固相抽出のステップは、
C18逆相抽出カラムをメタノールと水で順次活性化して活性化C18逆相抽出カラムを得るステップ(a)と、
C18逆相抽出カラムをポンプに接続し、共に培養バレル内のエアロポニックス栄養溶液に浸し、まずポンプを起動し、培養バレル内のエアロポニックス栄養液を固相抽出カラム内に入れ、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質を収集し、次にサンプルのローディング、リンス、溶離を順番に行い、溶離液をアセトンにして、ヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の粗生成物を得るステップ(b)と、
シリカゲルカラムを酢酸エチルとn-ヘキサンで順番に活性化して、活性化シリカゲルカラムを得るステップ(c)と、
ステップ(b)で得られたヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の粗生成物を酢酸エチルとn-ヘキサンの体積比1:80~100の混合液に溶解し、シリカゲルカラムを通過させた後、n-ヘキサンと体積比1:8~9のn-ヘキサンと酢酸エチルの混合液でシリカゲルカラムを溶離し、遠心分離と濃縮後、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質を得るステップ(d)と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集
もしくは精製または収集かつ精製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年9月12日に中国特許庁に提出され、出願番号201910863755.7、発明の名称「エアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集・精製する方法」の中国特許出願の優先権を要求し、その内容全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、植物栽培技術および生化学の技術分野、特にエアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集・精製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒマワリは、世界で最も重要な油料作物の1つであり、中国の主要な油料作物の1つでもある。経済的価値が高く、管理が容易で、低コスト、高効率、耐塩性、耐アルカリ性などの特徴があるため、中国の北東部と北西部の地域で広く栽培され、そのうち、内モンゴル自治区は中国最大のヒマワリ産地であり、新疆ウイグル自治区がそれに続く。近年来、ヒマワリの生産量の増加に伴い、ヒマワリの生産地に寄生雑草ヒマワリハマウツボ(Orobanche cumana)が出現し、ヒマワリの生産に深刻な悪影響を及ぼし、雑草防除が急務となっている。
【0004】
寄生植物とは、根系や葉の劣化や十分な葉緑素の不足により、自身の成長と発達のニーズを満たすように宿主植物から特定の栄養素と水を奪う必要があるタイプの植物を指す。寄生植物は被子植物の約1%を占め、植物の典型的な自家栄養のライフスタイルとは完全に異なり、吸器と呼ばれる特別な器官を使用して、宿主植物の根または茎の維管束組織に直接接続し、異栄養的な方法で有機炭素源を取得する。寄生植物は、宿主への依存度に応じて主に2種類に分類できる。その1つの種類は葉がないか、又は葉が鱗状に退化し、通常の光合成を実行できず、それ自体で必要な栄養素は完全に宿主に由来する。これは全寄生植物と呼ばれ、例えばハマネナシカズラ(Cusuta chinensis)とハマウツボ(Orobanche spp.)等である。もう一方の種類は葉緑素を含み、通常の光合成を行うことができるが、根はほとんど退化しており、導管は宿主植物に直接接続され、宿主植物から水と無機塩を吸収する。これは半寄生植物と呼ばれ、例えばストライガ(Striga asiatica)、オオバヤドリギ(Scurrula parasitica)及びヤドリギ(Viscum coloratum)等である。
【0005】
ヒマワリハマウツボ(Orobanche cumana)は、吸器を通してヒマワリの根に寄生する全寄生植物である。成熟したヒマワリハマウツボは、50,000から500,000の範囲の驚くべき数のほこりっぽい種子を生み出すことができ、これらの種子は、最大10年間土壌中で生存することができ、よって宿主を見つける可能性が高くなる。ヒマワリハマウツボは現在、世界のヒマワリ生産における最大の制限要因の1つであり、その危険性は主にヨーロッパとアジア、特にスペイン、フランス、トルコ、ロシア、ウクライナ、イスラエル、カザフスタン、中国にある。ヨーロッパ、南北アメリカでは、栽培されているヒマワリの品種は主に油性ヒマワリであるが、中国では、栽培されているヒマワリの品種は主に食用性ヒマワリ(食用ヒマワリ)である。
【0006】
現在、ハマウツボの防除は、主に耐性育種の栽培、化学的防除、生物学的防除、トラップ作物の輪作の使用、人工的および機械的除草などによって行われている。抵抗性品種の育種は、経済的かつ効果的な防除措置であるが、耐性育種の進行が遅いことが多く、油性ヒマワリでは抗源が広く見られるが、食用ヒマワリ品種では抗源が少なく、且つハマウツボの進化速度は比較的速く、育種困難性が高まる。化学除草は、主にハマウツボの地上部を対象としており、長期間制御することができず、その後の作物の成長に影響を与え、環境に害を及ぼす可能性があり、防除効果は理想的ではない。生物学的防除とは、真菌ペニシリウム‐グリセオフルバムや放線菌Streptomyces pactumなどの拮抗微生物を使用してハマウツボの発芽を阻害することを指す。人工的および機械的除草は、最初に感染した地域でのみ有効である。
【0007】
トラップ作物とは、根系がハマウツボ種子の発芽を刺激する物質を分泌できるが、ハマウツボに寄生されず、正常に収穫できる農作物を指す。ハマウツボ種子のサイズは小さいため、保存される栄養素は非常に限られ、発芽後数日以内に宿主の根に寄生できない場合、限られた栄養素がなくなると死滅する。この現象は「自殺発芽」と呼ばれる。輪作は、土壌の物理的および化学的特性を改善し、土壌伝染性真菌群落を減らすことができ、これは、植物の病気や害虫を効果的に減らす耕作システムである。研究によると、亜麻、大豆、小麦、水稲、トウモロコシはヒマワリハマウツボの種子の発芽を刺激することができる。多くの実験は、宿主植物とトラップ作物の輪作が寄生雑草の量を減らし、宿主作物の収量を増やすことができることを示した。
【0008】
現在の研究では、寄生植物の種子の発芽には、ストリゴラクトン(strigolcatones)などの特別な化学的刺激が必要であることがわかっている。しかしながら、ヒマワリの根系分泌物には活性なストリゴラクトンは見られない。ヒマワリの根系分泌物から初めて抽出されたヒマワリハマウツボの発芽刺激物質は、セスキテルペンラクトンに属するデヒドロコスタスラクトンとして確定された。その後の研究では、ヒマワリの根系分泌物中のコスツノリド(costunolide)、tomentosin及び8-epixanthatinが、ナノモルおよびマイクロモルの濃度でヒマワリハマウツボの種子の発芽を刺激できることがわかった。これらの発芽刺激物質の活性濃度は非常に低いため、これらの物質の効率的な精製は分析化学において非常に重要である。エアロポニックス技術は、植物を迅速に繁殖させることができ、経済的かつ効率的であり、理想的な実験システムである。しかしながら、この技術を使用して寄生植物の発芽刺激物質を収集および精製する研究は報告されていない。
【0009】
現在、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質の種類とメカニズムについての深い理解が不足しており、対応する効率的な抽出、精製、濃縮方法が不足している。この方法は、エアロポニックスシステム技術を使用してハマウツボの発芽刺激物質を収集し、固相抽出技術を使用してハマウツボの発芽刺激物質サンプルを前処理し、後の超高性能液体クロマトグラフィーにより寄生植物の発芽刺激物質の成分を分析し、寄生植物発芽刺激物質のメカニズムの詳細な研究への道を開くことを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、エアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集・精製する方法を利用することにより、従来技術で抽出および精製されたヒマワリハマウツボの発芽刺激物質は、種類が少なく、低濃度であり、かつ、低純度である問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的な技術的解決手段は、
エアロポニックスと固相抽出技術を用いてヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を効率的に収集・精製する方法であって、
ヒマワリ種子を採取し、発芽後、ヒマワリ幼苗をエアロポニックス装置に定稙し、エアロポニックスシステムを利用してヒマワリ幼苗を栽培し、
エアロポニックス段階では、まずリン含有エアロポニックス栄養液を使用してヒマワリ幼苗を栽培し、20~25日間栽培した後、飢餓培養処理のために無リンエアロポニックス栄養液に変更し、飢餓培養処理の期間は5~7日間であるステップ(1)と、
エアロポニックス装置内のすべての栄養液に対して、固相抽出カラムを介して固相抽出を実行し、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質を得るステップ(2)と、を含む。
【0012】
本発明は、エアロポニックスシステム技術を使用してヒマワリを迅速に栽培し、次に固相抽出技術と組み合わせてヒマワリ根系分泌物中のヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を分離および精製することを初めて提案する。得られたヒマワリハマウツボ発芽刺激物質は多様であるだけでなく、高濃度・高純度でもある。エアロポニックスシステム技術は、環境要因の干渉を減らし、実験環境をより均一にし、時間と労力を節約することができる。従来の液液抽出法と比較して、固相抽出技術は、分析物の回収率を高め、分析物を干渉成分からより効果的に分離し、サンプル前処理プロセスを減らし、操作が簡単で、時間と労力を節約し、分析分泌物の純度と濃度を大幅に改善する。
【0013】
ヒマワリハマウツボは近年のヒマワリ生産の最大の制限要因であるため、ヒマワリの栽培の収量と質を大幅に低下させていた。ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質の詳細な研究により、自殺発芽を誘発し、発芽メカニズムを明らかにすることは、この寄生雑草を防除することに対して重要である。
【0014】
種子処理および発芽後、本発明は、エアロポニックスシステムを使用して幼苗を栽培し、改良された無リンホーグランド栄養液を使用して若株を飢餓状態にし、植物の根系を誘導してより多くの発芽刺激物質を分泌させることができる。
【0015】
ヒマワリ幼苗の発芽および成長過程によれば、本発明は、操作ステップを合理的に設計する。具体的には、ヒマワリの幼苗が多くの成熟した根系を成長させ、より多くの発芽刺激物質を生み出すには、通常3~4週間かかり、ヒマワリが6葉期になると、野外では、ハマウツボが発芽しかつヒマワリの根に寄生する時期とほぼ一致する。このため、本発明では、まずヒマワリの幼苗をリン含有エアロポニックス栄養液で栽培し、20~25日間栽培した後、飢餓培養処理のために無リンエアロポニックス栄養液に変更する。
【0016】
発芽培養は2つの段階に分けられる。第一段階:滅菌水で濾紙を濡らし、滅菌した種子をペトリ皿の濾紙に置き、ペトリ皿をスズ箔で包み、28℃で24時間置く。第二段階:種子の黒い殻を取り除き、種子のフィルム状の内側の種皮をはがし、幼根を下に向けて滅菌ロックウールに入れ、栄養液でロックウールを湿らせる。種子内側の種皮をはがすことは、実験用の幼苗を均一にして、幼苗を一定の条件下で成長させ、実験変数を一定になるように制御するためである。
【0017】
さらに、エアロポニックス装置は、噴霧器、培養バレル、サイクルタイミングコントローラを含む。
【0018】
噴霧器は栽培バレルの底に配置される。栽培バレルの内部は、ヒマワリの幼苗の根系の底よりも液面が低いエアロポニックス栄養液で注入される。栽培バレルの上部には、定植穴付きのキャリングカバーと定植穴の下に設置された定植ラックがある。
【0019】
さらに、サイクルタイミングコントローラの設定手順は、周期的にスプレーし、スプレーは15~20minおきに行われると設定され、毎回のスプレー持続時間は20~30sである。
【0020】
さらに、エアロポニックス段階では、ヒマワリの幼苗を栽培するための条件は、温室または屋内インキュベーターで、16hの明培養/8hの暗培養の光周期で、昼と夜の温度をそれぞれ25℃と20℃で栽培することである。
【0021】
さらに、ステップ(1)において、リン含有エアロポニックス栄養液は、改良された1/2ホーグランド栄養液で、その組成は、質量濃度で計算すると、硝酸アンモニウム430~450mg/L、リン酸水素二カリウム90~100mg/L、硫酸マグネシウム180~200mg/L、硫酸カリウム130~140mg/L、硫酸第一鉄50~60mg/L、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物60~70mg/L、塩化カルシウム220~240mg/L、微量元素ホウ酸1.3~1.5mg/L、塩化マンガン四水和物0.80~0.90mg/L、硫酸銅五水和物0.070~0.080mg/L、塩化亜鉛0.10~0.30mg/L、モリブデン酸ナトリウム二水和物0.020~0.030mg/Lである。
【0022】
無リンエアロポニックス栄養液は、無リンの1/2ホーグランド栄養液であり、その組成は、質量濃度で計算すると、硝酸アンモニウム430~450mg/L、硝酸カリウム75.0~85.0mg/L、硫酸マグネシウム180~200mg/L、硫酸カリウム130~140mg/L、硫酸第一鉄50~60mg/L、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物60~70mg/L、塩化カルシウム220~240mg/L、微量元素ホウ酸1.3~1.5mg/L、塩化マンガン四水和物0.80~0.90mg/L、硫酸銅五水和物0.070~0.080mg/L、塩化亜鉛0.10~0.30mg/L、モリブデン酸ナトリウム二水和物0.020~0.030mg/Lである。
【0023】
さらに、ステップ(2)において、固相抽出カラムをポンプに接続し、固相抽出のために一緒に培養バレル内のエアロポニックス栄養溶液に浸す。
【0024】
さらに、ステップ(2)において、固相抽出カラムはC18逆相抽出カラムである。
【0025】
さらに、固相抽出のステップは、
C18逆相抽出カラムをメタノールと水で順次活性化して活性化C18逆相抽出カラムを得るステップ(a)と、
C18逆相抽出カラムをポンプに接続し、一緒に培養バレル内のエアロポニックス栄養溶液に浸し、まずポンプを起動し、培養バレル内のエアロポニックス栄養液を固相抽出カラム内に入れ、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質を収集し、次にサンプルのローディング、リンス、溶離を順番に行い、溶離液をアセトンにして、ヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の粗生成物を得るステップ(b)と、
シリカゲルカラムを酢酸エチルとn-ヘキサンで順番に活性化して、活性化シリカゲルカラムを得るステップ(c)と、
ステップ(b)で得られたヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の粗生成物を酢酸エチルとn-ヘキサンの体積比1:80~100の混合液に溶解し、シリカゲルカラムを通過させた後、n-ヘキサンと体積比1:8~9のn-ヘキサンと酢酸エチルの混合液でシリカゲルカラムを溶出し、遠心分離と濃縮後、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質を得るステップ(d)と、を含む。
【発明の効果】
【0026】
従来技術と比較して、本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明はまず、エアロポニックスシステム技術を使用してヒマワリを迅速に栽培し、次に固相抽出技術と組み合わせてヒマワリ根系分泌物中のヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を分離および精製する。得られたヒマワリハマウツボ発芽刺激物質は多様であるだけでなく、高濃度・高純度でもある。
(2)本発明は、エアロポニックス技術の迅速かつ高効率の特性を利用して、固相抽出技術と組み合わせた無リン栄養液で植物の飢餓処理を実行するエアロポニックスシステムを確立し、宿主植物の根系分泌物からのヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の抽出および精製を最適化した。この方法は時間と労力を節約し、リサイクルすることができ、得られた発芽刺激物質の濃度はより高く、より純粋であり、フォローアップ質量分析と関連研究に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施例1における異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質の植物あたりのデヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)の濃度の比較を示す図である。
【
図2】実施例1における異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質の植物あたりのコスツノリド(costunolide)の濃度の比較を示す図である。
【
図3】実施例1の異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質8-epixanthatin単位植物のピーク面積の比較を示す図である。
【
図4】実施例1の異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質heliolactone単位植物のピーク面積の比較を示す図である。
【
図5】実施例1における異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質デヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)の根部新鮮重量あたりの含有量の比較を示す図である。
【
図6】実施例1における異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質コスツノリド(costunolide)の根部新鮮重量あたりの含有量の比較を示す図である。
【
図7】実施例1の異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質8-epixanthatin根部新鮮重量あたりのピーク面積の比較を示す図である。
【
図8】実施例1の異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質heliolactone根部新鮮重量あたりのピーク面積の比較を示す図である。
【
図9】実施例1におけるエアロポニックスシステムの物理図である。 Aは、植物栽培システムのプラスチック培養バレルの8穴定植カバーである。Bは底が中空で、中にロックウールが入った定植バスケットで、ヒマワリの根系は定植バスケットの底から伸びている。Cは、無土壌培養システムの模式図である。
【
図10】実施例1における固相抽出装置の物理図である。
【
図11】実施例1における本発明の方法プロセス模式図である。
【
図12】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質の植物あたりのデヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)の濃度の比較を示す図である。
【
図13】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質の植物あたりのコスツノリド(costunolide)の濃度の比較を示す図である。
【
図14】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質8-epixanthatin単位植物のピーク面積の比較を示す図である。
【
図15】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質heliolactone単位植物のピーク面積の比較を示す図である。
【
図16】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質のデヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)の根部新鮮重量あたりの含有量の比較を示す図である。
【
図17】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質のコスツノリド(costunolide)の根部新鮮重量あたりの含有量の比較を示す図である。
【
図18】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質8-epixanthatinの根部新鮮重量あたりのピーク面積の比較を示す図である。
【
図19】比較例1における通常のハイドロポニックシステム下での異なるヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質heliolactoneの根部新鮮重量あたりのピーク面積の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を、特定の実施例を参照しながら以下でさらに説明する。以下は、本発明の特定の実施例のみであるが、本発明の保護の範囲は、これらに限定されない。
【0029】
実施例1:
一、実験方法
(1)種子の準備及び処理
種子の発芽率(事前に発芽率をテストする)に基づいて必要な種子の量を計算する。この実験では、4つのヒマワリの品種(genotye)を選択し、品種ごとに24回繰り返し、96本の植物が必要であり、各品種に対して約100個のヒマワリの種子を準備した。
【0030】
(2)栄養液の構成
ヒマワリ植物培養液として改良された1/2ホーグランドの栄養液half strength Hoagland’s solution)を使用した。改良された1/2ホーグランド溶液の構成を表に示す。最終的なpH値は5.8である。栄養液の量は実験状況により決定した。この実験では、まず栄養液の濃縮液を調製し、後で使用するために瓶詰めし、次に使用するために希釈した。例えば25Lのプラスチック製バケットを使用した。
【0031】
【0032】
【0033】
(3)幼苗の発芽
種子の消毒処理:種子を1%塩素漂白剤で5分間処理してから、滅菌蒸留水で5回すすいだ。さまざまな植物に応じて、一般的に使用される消毒液を自由に選択できる。種子の消毒は非常に重要なステップであり、その後の実験に影響を与えるため、消毒時間を適切に延長することができる。
種子の発芽:直径100mmのペトリ皿に一層のガラス繊維濾紙を置き、濾紙を滅菌水で濡らし、湿った濾紙に種子を均一に分散させ、Parafilm(登録商標)パラフィルム(parafilm、USA)で密封して水分の損失を防止し、外側をアルミニウム箔で包んで完全に暗くした。それを28℃で1日即ち24時間置いた(時間は植物の異なる品種の発芽条件に依存する)。
種子の発芽:まず種子の外側の種皮をはがし、指やピンセットでフィルムのような内側の種皮を注意深くはがした。これは、同じ条件下で幼苗が成長するように実験用幼苗を均一にするために行われた。そうしないと、各幼苗の成長速度が大きく異なり、実験結果に影響を与える可能性がある。幼根を下に向けて、箱型の滅菌ロックウールに種子を注意深く入れ、改良された1/2ホーグランド栄養液でロックウールを濡らして湿らせた。培養条件は、温室または屋内インキュベーター、光周期16/8h、昼と夜の温度25/20℃、ヒマワリの幼根が現れるまで2~3日間の培養であった。
【0034】
(4)エアロポニックスシステムの構築
植物エアロポニックスシステムは、スプレーシステム、栽培システム、サイクルコントローラ、栄養液により構成されたものである。関連商品はタオバオなどのショッピングプラットフォームで購入できる。
【0035】
そのうち、スプレーシステムは、高圧スプレーポンプ、スプレー循環水道管、スプレーサポートフレーム、スプレーヘッドなどで構成されている。栽培システムは、プラスチック栽培バレル、8つの定植穴キャリングカバー、エアロポニックス定植カップ/定植バスケットなどで構成されている。サイクルコントローラは、栄養液の定期的なサイクル噴霧に使用される。栄養液は植物によって異なる。
【0036】
この実験では、体積20L、バレル直径30cm、高さ39cmのプラスチック栽培バレルを使用した。8定植穴キャリングカバーには8つの定植穴があり、中央の大きな穴は電源装置を接続するワイヤーを通すために使用された。
【0037】
エアロポニックス定植カップ/定植バスケットは、ハイドロポニック植物の発根に便利な密なメッシュを持ち、深さは植物を固定するのに十分であった。
【0038】
栽培システム用の黒いプラスチック製のバケツを清浄化するには、バケツを水道水、エタノール、デミ水(demi water)で順番に洗浄し、後で使用するために乾燥させた。
【0039】
プラスチック製の黒い中空定植バスケット/カップの準備には、定植バスケットの底は必ず空いていることに注意して、植物の根系が十分に拡張するために手動ではさみを使用して底を減らすことができる。無菌ロックウールを用意し、事前に高温高圧で滅菌した。ロックウールのサイズは、定植バスケットのサイズに合わせて調整するか、対応するサイズのものを購入することができる。底部中空の定植バスケットにロックウールを入れた。黒い布を用意し、ロックウールのサイズよりもやや小さくて中空の形にカットした。ラベルを準備し、各バケットはそれぞれ番号に対応し、たとえば、今回の実験には12個のバケットがあり、各バケットにラベル1、2、3 …、12を付けた。
【0040】
(5)幼苗の移植
ヒマワリの各品種を、それぞれ3つのバケットに移植し、各バケットには8回の繰り返し即ち8つの幼苗があった。合計4つの品種をランダムに12個のバケツに移植した。
【0041】
温室内の光が不均一になる可能性があり、他の要因が実験結果に影響を与える可能性があるため、各品種をランダムにスペースで分散させ、より科学的で合理的なデータを取得した。特異の結果が現れないようにするために、各バケット即ち品種をこのスペースでより合理的でランダムに分散させた。温室温度を22℃に設定した(温度設定は培養植物によって異なる)。各幼苗をロックウール内蔵の定植バスケットに移植し、最後にロックウールを中空の黒い布で覆った。黒い布は藻の成長を防ぐためのものである。ヒマワリの品種のシリアル番号で各バレルにラベルを付けた。
【0042】
(6)エアロポニックスシステムの設定
ふた付きの黒いソビエト水バケツを12個用意し、各バケツに2Lの植物栄養培養液を注ぎ、スプレーを置き、ブラシレスDCポンプ(BRUSHLESS DC PUMP、12V、4.2W)を接続し、サイクルタイミングコントローラを調整した。この実験では、4つのタイミングコントローラを使用し、最初のコントローラはスプレー時間を30秒に設定し、2番目のタイマーはスプレー時間を20秒に設定し、3番目のタイマーはスプレー時間を20秒に設定し、4番目のタイマーはスプレー時間を20秒に設定し、各タイミングコントローラのスプレー間隔を5秒に設定し、大きなサイクル遅延時間を15分に設定した。
【0043】
毎日の管理:作動した30分後にスプレーが正常に動作しているかどうかを確認した。通常、管理が必要になる場合はめったになく、エアロポニックスシステムを実行するには、数日ごとに培養バレル内の栄養液を確認した。毎日植物の成長を観察および記録し、ヒマワリの成長様態に基づいてハマウツボ発芽刺激物質を収集する時間を決定した。
【0044】
(7)改良されたホーグランド栄養液を定期的に交換した。
【0045】
(8)この実験では、移植してから28日後に根系分泌物を収集した。収集後、電子天びんを使用して、各バレルの植物の根系の新鮮重量を記録した。
【0046】
(9)21日間培養した後、無リンの改良された1/2ホーグランド栄養液と交換し、1週間飢餓処理を行った。栄養液の構成については、表1および表2を参照する。
【0047】
26日間培養した後、ハマウツボの発芽刺激物質を収集し、固相抽出法(Solid-Phase Extraction、SPEと呼ばれる)を使用し、関連する操作をヒュームフード内で実行した。
(i)抽出カラムの活性化:固相抽出カラム(スペルコ/Supelco Discovery(登録商標)DSC-18抽出カラム6ml)を固相真空抽出装置(SUPELCO Visiprep 24(商標) DL)に入れ、真空抽出装置のスイッチをオンにし、6mlのメタノールを各抽出カラムに注ぎ、カラム内のメタノールを全部排出した後、6mlの超純水(MilliQ)を注ぎ、カラムにより超高純度で抽出すると、すべての抽出カラムを滅菌蒸留水で満たされたバットに押し込み、すべての固相抽出カラムが水に浸されていることを確保した。カラムをメタノールで濡らして活性化するのは、分析物を固相の表面と密接に接触させることとし、よって吸着しやすくし、カラム内の不純物を除去し、汚染を低減させるためである。根系分泌物溶液のpH値が水のpH値に近く、サンプル溶液が吸着剤の表面と良好に接触し、抽出効率が向上するため、蒸留水が選択された。
(ii)サンプルの収集:ブラシレスDCポンプと配線設備を準備した。水で満たされた固相抽出カラムを選択し、親指でカラムの口を封止し、カラムに空気が入らないようにした。抽出カラムをブラシレスDCポンプに接続し、バケットに入れた。抽出カラムから水が泡立ち始めると、機器が正常に動作していることが分かる。12個のカラムを順番にバケットに入れた。48時間後、超純水で満たされたボトルを準備した。電源を切り、各バケットの固相抽出カラムを慎重に取り出し、すぐに水で満たされたボトルに入れた。
(iii)サンプルのローディングとリンス:サンプルを充填した固相抽出カラムを固相真空抽出装置に入れ、電源を入れ、カラム内の根系分泌物溶液を排出した後、超純水(MilliQ)でリンスし、3回リンスを繰り返した。
(iv)溶離:溶離液として2mlのアセトン(acetone)を使用し、ガラスバイアルに溶離液を入れた。新しいガラスバイアルと交換し、2mlのアセトンで再度溶離し、溶離液をガラスバイアルに入れた。この実験では、各バケットの根系分泌物溶液を2回収集し、合計12バケット、合計24個のガラスバイアルを収集した。ガラスバイアルを-20℃の冷蔵庫に保管できた。
【0048】
(10)サンプルの精製
(i)上記のステップを経て、-20℃の冷蔵庫に保管されている2mlのサンプルを取り出した。
(ii)各ボトルに200μlの内部標準物質(D6-epi-5DS@0.1n mol/mL)を加え、水が消えてサンプルが完全に乾くまで真空遠心蒸発濃縮器に入れた。
(iii)各乾燥サンプルに37.5ulの酢酸エチルと3mlのn-ヘキサンを加えてサンプルを溶解し、シリカカラム(silica column、200mg/3ml)を活性化し、2mlの酢酸エチルをカラムから完全に流出するまで加え、次に4mlのn-ヘキサンをカラムから完全に流出するまで加えた。
(iv)同じ品種から収集した2つの2mlサンプル、つまり4mlサンプルを、活性化されたシリカゲルカラムに追加し、すべての4mlサンプル溶液がカラムから流出するのを待った。
(v)リンス:すべてが流出するまで2mlの100%n-ヘキサンを追加した。
(vi)収集:LC/MS質量分析用に2mlの10:90(n-ヘキサン:酢酸エチル)を加え、真空遠心蒸発濃縮器に入れて乾燥させ、200μlの25%アセトニトリル(acetonitrile)を追加し、専用のLC/MS分析ボトルにシリンジフィルター(Sartorius Minisart(登録商標) syringe filters)でろ過をした。
(vii)高性能液体クロマトグラフとトリプル四重極質量分析(UHPLC-TQ-MS)を使用して、ハマウツボ発芽刺激物質の成分を分離および検出した。
【0049】
ヒマワリ根系分泌物におけるハマウツボ発芽刺激物質の測定について、超高性能液体クロマトグラフィー-質量分析(UPLC-MS/MS)法を使用し、マイクロ質量タンデム質量分析計(Micromass Quattro Premier XE tandem mass spectrometer) (Waters、 USA) を使用して分析した。該質量分析計は、エレクトロスプレーイオン化源(ESI)を備えており、超高液体クロマトグラフィーシステムと組み合わされている。クロマトグラフィー条件:超高液体クロマトグラフィーC18カラム(100×2.1mm、1.7μm)を使用し、移動相は水-メタノールであった。
【0050】
勾配溶出プロセス:30%メタノールで1分間、80%メタノール勾配で5分間、1分間保持してから、0.2分間勾配で30%メタノールに戻した。該カラムは、次の実行に進む前に、この溶媒組成物で1.8分間平衡化した。各実行は約9分間であった。カラム温度は50℃、流量は0.4ml/min、注入量は30μlであった。
質量分析条件:正イオンスキャン法を使用したエレクトロスプレーイオン源ESI、アトマイザーおよび脱溶媒ガスの流量は、それぞれ50|h-1および800 |h-1であった。キャピラリー電圧は2.7kV、抽出コーン電圧は20V、ソース温度は120℃、脱溶媒ガス温度は450℃であった。3.0×10-3mbarのアルゴン衝突を使用して、解離と断片化を誘発した。各化合物の衝突エネルギーを最適化した。マルチレスポンスモニタリング(MRM)スキャンモードを使用してハマウツボ発芽刺激物質を検索した。質量核比スキャン範囲データについては、(Raupp & Spring 2013; Ueno et al. 2014)を参照した。
【0051】
masslynx 4.1ソフトウェア(Waters)がデータの収集と分析に使用された。genstat一般化線形モデル、一般化線形混合モデル、または分散分析(anova)を使用してデータを分析した。
【0052】
二、実験結果
図1は、さまざまなヒマワリ品種からのハマウツボ発芽刺激物質デヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)の単位植物濃度の比較を示している。ヒマワリ品種RIL306、RIL340、およびRIL348の各植物から分泌されるデヒドロコスタスラクトンの平均濃度は10~30ピコモルであり、ヒマワリ品種RIL265の植物あたりのデヒドロコスタスラクトン平均濃度は5ピコモル未満であった。
図5は、異なるヒマワリ品種の新鮮根部におけるハマウツボ発芽刺激物質であるデヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)の平均的な重量の比較を示している。ヒマワリ品種RIL306、RIL340、RIL348新鮮根部におけるデヒドロコスタスラクトンは、根部新鮮重量(g)あたりの含有量は5~10ピコモルであり、ヒマワリ品種RIL265には、デヒドロコスタスラクトンの根部新鮮重量(g)あたりの含有量は1ピコモル未満であった。結果は、ヒマワリの単位植物あたりに生成されるデヒドロコスタスラクトンであろうと、新鮮な根部重量の単位あたりに生成されるデヒドロコスタスラクトンであろうと、結果は類似しており、比較可能であることを示している。これは、各植物の根系の新鮮な重量がほぼ同じであり、成長が良好であることを示し、これは、エアロポニックスシステムでの実験が制御可能で再現可能であることをさらに証明している。
【0053】
図2は、さまざまなヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質であるコスツノリド(costunolide)の単位植物の濃度の比較を示している。ヒマワリ品種RIL306、RIL340、およびRIL348では、コスツノリド(costunolide)の植物あたりの平均濃度は20~60ピコモルであり、ヒマワリ品種RIL265では、デヒドロコスタスラクトンの植物あたりの平均濃度は20ピコモル未満であった。
図6は、さまざまなヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質コスツノリド(costunolide)の根部新鮮重量あたりの含有量の比較を示している。ヒマワリ品種RIL306、RIL340、およびRIL348では、根部新鮮重量(g)あたりのコスツノリド(costunolide)の平均含有量は10~30ピコモルであり、ヒマワリ品種RIL265では、コスツノリドの根部新鮮重量あたりの平均含有量は5ピコモル未満であった。
【0054】
図3は、さまざまなヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質である8-epixanthatinの高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)ピーク面積の比較を示している。ヒマワリ品種RIL306、RIL340、およびRIL348の植物あたりの8-epixanthatinの平均ピーク面積は2e~3e×10
6であり、ヒマワリ品種RIL265デヒドロコスタスラクトンの植物あたりの平均ピーク面積は約1e×10
6であった。
図7は、さまざまなヒマワリ品種の根部新鮮重量あたりのハマウツボ発芽刺激物質8-epixanthatinの比較を示し、ヒマワリ品種RIL306、RIL340、およびRIL348の根部新鮮重量あたりの8-epixanthatinの平均のピーク面積は7e~10e×10
6であり、ヒマワリ品種RIL265の根部新鮮重量あたりの8-epixanthatinの平均のピーク面積は約2.5e×10
6であった。
【0055】
図4は、さまざまなヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質であるheliolactoneの植物あたりの高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)ピーク面積の比較を示している。ヒマワリ品種RIL306では、植物あたりのハマウツボ発芽刺激物質としてのheliolactoneの平均ピーク面積は約12,000であったが、RIL340とRIL348では検出されなかった。ヒマワリ品種RIL265のheliolactoneの植物あたりの平均ピーク面積は約5000であった。
図8は、さまざまなヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質heliolactoneの根部新鮮重量あたりの濃度の比較を示している。ハマウツボ発芽刺激物質として、ヒマワリ品種RIL306では、heliolactoneの根部新鮮重量あたりのピーク面積は約4000であったが、RIL340とRIL348では検出されなかった。ヒマワリ品種RIL265では、heliolactoneの根部新鮮重量あたりのピーク面積は約1000であった。すべてのヒマワリ品種のハマウツボ発芽刺激物質におけるheliolactoneの含有量は検出できないほど非常に低く、定量化することができず、ピーク面積のサイズは8-epixanthatinよりはるかに小さいことがわかった。
【0056】
結果は、ヒマワリの品種RIL265と比較して、ヒマワリの品種RIL306、RIL340、RIL348のハマウツボ発芽刺激物質は比較的多くのデヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)、コスツノリド(costunolide)、8-epixanthatinを含んでいたことを示した。しかし、heliolactoneはRIL265とRIL306でしか検出されず、含有量は非常に少なかった。
【0057】
三、結果分析
この実験では、ヒマワリの品種RIL306、RIL340、RIL348、RIL265を選択した。初期のヒマワリハマウツボ種子発芽率実験(ここでは詳しく説明しない)では、ヒマワリ品種RIL340とRIL306はハマウツボ発芽率が高く、ヒマワリ品種RIL265とRIL348はハマウツボ発芽率が低かった。
【0058】
エアロポニックスシステムでは、ヒマワリの幼苗が元気に育ち、根系も元気に育ち、2週間後、根系が急速に成長し始めた。ほとんどすべての植物は4週間後に6葉期に入った。ハマウツボ発芽刺激物質のサンプルを収集して前処理した後、高性能液体クロマトグラフィーとトリプル四重極質量分析(UHPLC-TQ-MS)を使用して、ハマウツボ発芽刺激物質の成分を分離および検出した。
【0059】
この実験では、以前の文献データに基づいて、検出の目標として4つのヒマワリハマウツボ発芽刺激物質を選択し、そのうちの3つは、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質から分離された生物学的に活性なセスキテルペン、すなわちデヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)、コスツノリド(costunolide)、8-??epixanthatinであり、最後のものは非セスキテルペンであるheliolactoneであった。
【0060】
結果は、エアロポニックスシステムでは、収集されたハマウツボ発芽刺激物質において4つのヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の生物学的活性を検出したことを示し、そのうち、デヒドロコスタスラクトン(dehydrocostus lactone)、コスツノリド(costunolide)、および8-epixanthatinはより活性があり、非セスキテルペンであるheliolactoneは非常に低い活性を有した。ヒマワリの品種によって、ヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の活性濃度も異なる。
【0061】
ヒマワリの単位植物によって生成される発芽刺激物質であろうと、単位新鮮根部の重量によって生成される発芽刺激物質であろうと、結果は類似しており、比較可能である。これは、各植物の根系の新鮮な重量がほぼ同じであり、成長が良好であることを示し、これは、エアロポニックスシステムでの実験が制御可能で再現可能であることをさらに証明している。
【0062】
本発明は、エアロポニックス技術の迅速かつ高効率の特性を利用して、エアロポニックスシステムを確立し、固相抽出技術と組み合わせて無リン栄養液で植物の飢餓処理を実行し、宿主植物ヒマワリの根系分泌物からのヒマワリハマウツボ発芽刺激物質の抽出および精製の方法を最適化した。この方法は時間と労力を節約し、リサイクルすることができ、得られた発芽刺激物質の濃度はより高く、より純粋であり、フォローアップ質量分析と関連研究に役立つ。
【0063】
比較例1
この比較例では、通常のハイドロポニック法を採用し、室内気候インキュベーターでハイドロポニック実験を行っている。
【0064】
具体的なステップは、
ペトリ皿の底にガラス濾紙を置き、ヒマワリの種子をその上に均一に置き、種子の上にもう一つの濾紙を置き、消毒剤(Metalaxyl)を注ぎ、3~4時間浸し、殺菌液(Metalaxyl)または蒸留水で湿らせた発芽紙に種子を移し、きれいに並べ、丁寧に巻き上げ、巻いた発芽紙を垂直に5Lバケットコンテナに入れ、容器をフィルムで包んで保湿し、28℃のサーモスタットに48時間、または25℃で72時間置いたステップ(1)と、
ハイドロポニックシステムの準備:ハイドロポニック25Lインキュベーター、植物栄養液(低リン1/2Long Ashtonアシュトン栄養液)、人工穴付き防水フォームプラスチックボード、循環水ポンプ、温室培養温度22℃、16/8時間 昼/夜、湿度70%、種子の薄膜のような内側の種皮をはがし、健康な発芽種子を発泡プラスチックボードの小さな穴に注意深く入れて、幼根を栄養液に接触させ、幼苗を14日または21日間培養したステップ(2)と、
植物の根を超純水でリンスし、50mlの試験管に入れ、30mlの超純水を注ぎ、植物の根系の大きさに合わせて水の量を調整し、試験管をアルミニウム箔で包み、根部を暗所に24時間置き、各サンプルの体積を測定し、植物の根系の分泌液を0.22μmのピンホールフィルターでろ過したステップ(3)と、
ヒマワリの根部を切り、乾かし、重さを量り、各サンプルを、1mlの根系の分泌液が1gの植物の根部の乾燥重量に対応するように調整し、根系分泌物中の発芽刺激物質を抽出して精製し、抽出方法はエアロポニックス方法と同じであり、高性能液体クロマトグラフとトリプル四重極質量分析(UHPLC-TQ-MS)を使用して、ハマウツボ発芽刺激物質の成分を分離および検出したステップ(4)と、を含む。
【0065】
この実験では、ヒマワリの品種RIL306、RIL340、RIL348、RIL265を選択した。初期のヒマワリハマウツボ種子発芽率実験(ここでは詳しく説明しない)では、ヒマワリ品種RIL340とRIL306はハマウツボ発芽率が高く、ヒマワリ品種RIL265とRIL348はハマウツボ発芽率が低かった。ハマウツボ発芽刺激物質のサンプルを収集して前処理した後、高性能液体クロマトグラフとトリプル四重極質量分析(UHPLC-TQ-MS)を使用して、ハマウツボ発芽刺激物質の成分を分離および検出した。
【0066】
結果を
図12~
図19に示す。ハイドロポニックシステムでは、ヒマワリハマウツボの発芽刺激物質の濃度はエアロポニックスシステムの場合よりも何倍も低くなり、同じ品種を比較すると、ハイドロポニックシステム下のいくつかの品種は発芽刺激物質さえ検出せず、たとえば、ヒマワリ品種RIL348の根系分泌物は発芽刺激物質costunolideを検出しなかった。結果は、このエアロポニックスシステムが従来のハイドロポニック条件下で得られるハマウツボ発芽刺激物質よりも純粋で高濃度であることを示している。