(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】船舶舵
(51)【国際特許分類】
B63H 25/38 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
B63H25/38 102
(21)【出願番号】P 2021177640
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2021-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521474753
【氏名又は名称】株式会社 ASC
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満晴
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-131632(JP,A)
【文献】特開2007-137314(JP,A)
【文献】特開2002-178991(JP,A)
【文献】実開平07-013698(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラの後方に位置するように設けられた船舶舵であって、
船の進行方向の前縁を丸く厚くし前記進行方向の後縁を薄くするように流線形に形成され、側面視が略矩形形状である舵本体部と、
前記前縁に沿って上部から下部にわたって設けられる略円柱形状の前縁側舵部と、
前記後縁に沿って上部から下部にわたって設けられる略円柱形状の後縁側舵部と、
を備え、
前記船舶舵を厚み方向に沿って切断した場合の断面形状は、前記
舵本体部は流線形で、前記前縁側舵部及び前記後縁側舵部は略円形であり、
前記流線形の長手方向に沿った長さと前記略円形の前記長手方向に沿った長さの比率は、1800:80であることを特徴とする船舶舵。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶舵において、
前記舵本体部の底面部に設けられ、所定の角度をなすように斜め下方向に延び、前記プロペラから流れてくる水を前記舵本体部に側面に誘導する一対の板状の底面側舵部を備えることを特徴とする船舶舵。
【請求項3】
請求項2に記載の船舶舵において、
前記舵本体部の天井面部に設けられ、横方向に延びて前記底面側舵部により誘導された水を受け止めるための天井面側舵部を備えることを特徴とする船舶舵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶舵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶に装備される舵には様々なタイプのものが存在する。舵は、主に船舶の進行方向を自在に定めるための機構を構成する要素の1つである。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、プロペラの後方の流れ場に位置するように舵に付設された翼形状の複数のフィンを備え、前記フィンに働く前方成分の力によって推力を得るようにした船舶舵フィン装置であって、前記フィンは、前記舵の両側に張り出すように配設される右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンと、船尾から船首に向かう方向に見て、前進時に前記プロペラが右回りに回転する場合に前記右舷側フォアフィンの後方に配設される右舷側アフトフィン、又は前進時に前記プロペラが左回りに回転する場合に前記左舷側フォアフィンの後方に配設される左舷側アフトフィンと、を備える船舶舵フィン装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶を駆動するために重油などの石油製品が燃料源となっているため、コストを抑えるためには燃費を良くする必要がある。舵は、上記のとおり、進行方向を制御する機能については着目されている。しかしながら、燃費の向上といった観点からは船舶の舵は改良されていないという実情がある。
【0005】
本発明の目的は、船舶の燃費を良くすることを可能とする船舶舵を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船舶舵は、プロペラの後方に位置するように設けられた船舶舵であって、 船の進行方向の前縁を丸く厚くし前記進行方向の後縁を薄くするように流線形に形成され、側面視が略矩形形状である舵本体部と、前記前縁に沿って上部から下部にわたって設けられる略円柱形状の前縁側舵部と、前記後縁に沿って上部から下部にわたって設けられる略円柱形状の後縁側舵部と、を備え、前記船舶舵を厚み方向に沿って切断した場合の断面形状は、前記舵本体部は流線形で、前記前縁側舵部及び前記後縁側舵部は略円形であり、
前記流線形の長手方向に沿った長さと前記略円形の前記長手方向に沿った長さの比率は、1800:80であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る船舶舵において、前記舵本体部の底面部に設けられ、所定の角度をなすように斜め下方向に延び、前記プロペラから流れてくる水を前記舵本体部に側面に誘導する一対の板状の底面側舵部を備えることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る船舶舵において、前記舵本体部の天井面部に設けられ、横方向に延びて前記底面側舵部により誘導された水を受け止めるための天井面側舵部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、船舶の燃費を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る実施形態の船舶舵の斜視図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の船舶舵の側面図である。
【
図3】本発明に係る実施形態において、船舶舵の前縁側から船舶舵を見た様子を示す正面図である。
【
図4】本発明に係る実施形態の船舶舵が船尾に装着された側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0012】
また、「前」「後」「左」「右」「上」「下」の語は、船体の前後方向、左右(幅)方向及び上下方向 にそれぞれ対応したものである。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の船舶舵10の斜視図である。
図2は、本発明に係る実施形態の船舶舵10の側面図である。
【0014】
図3は、本発明に係る実施形態において、船舶舵10の前縁側から船舶舵10を見た様子を示す正面図である。
図4は、本発明に係る実施形態の船舶舵10が船尾2に装着された側面図である。
【0015】
船舶舵10は、船舶1の進行方向を自在に定めるための機構を構成する要素の1つである。船舶舵10は、舵本体部12と、前縁側舵部14と、後縁側舵部16と、底面側舵部18と、天井面側舵部20と、舵軸22とを備えている。
【0016】
船舶1は、例えば、一軸船の船尾構造を有する肥大船型船舶であって、船体中央部から船幅が狭くなる船尾2に配設される船舶舵10と、船舶舵10と対向する船尾部4に設けられる推進用プロペラ5とを備えている。
【0017】
なお、本実施形態では、船尾2から船首に向かう方向を見て、前進時に右回りに回転する推進用プロペラ5が用いられる例を示すが、これに限定されるものではなく、船尾2から船首に向かう方向を見て、前進時に左回りに回転する推進用プロペラ5が用いられるものであってもよい。
【0018】
船舶舵10は、推進用プロペラ5の後方に位置するように設けられた舵である。推進用プロペラ5は、船舶を推進させるものであり、例えばプロペラシャフトが用いられている。この推進用プロペラ5は、その回転軸であるシャフトが前後方向に沿うように船尾部4に配設されている。
【0019】
船舶舵10は、上下方向に延びる舵軸22によって船体に取り付けられており、舵軸22に揺動可能(回動可能)とされている。船舶舵10を切ることで、流れに対して迎え角をもたせて進行方向に直角な横方向に揚力を発生させて、その結果として生まれる回転方向のモーメントで船舶1を回頭させる。
【0020】
舵本体部12は、
図1に示されるように、船舶1の進行方向の前縁を丸く厚くし進行方向の後縁を薄くするように流線形に形成される。また、舵本体部12は、進行方向に沿って切断した場合の断面形状(
図4のA-A線断面図の断面形状)は、雫のような形を有している。なお、舵本体部12の流線形の幅のうち、最大の幅は、例えば、約350mmに設定するものとして説明するが、もちろん、適宜変更可能である。
【0021】
また、舵本体部12は、上部から下部までA-A線断面図と同一の形状となるように形成されているが、上部と下部で若干大きさが異なるように形成してもよい。
【0022】
舵本体部12は、
図2及ぶ
図4に示されるように、側面視が略矩形形状を有する部材である。なお、略矩形形状の部材の縦方向の長さは約2900mmに設定し、横方向の長さは約1800mmに設定するものとして説明するが、もちろん、適宜変更可能である。また、舵本体部12の前縁には前縁側舵部14が設けられ、舵本体部12の後縁には後縁側舵部16が設けられている。
【0023】
前縁側舵部14は、舵本体部12の前縁の長手方向に沿って設けられる略円柱形状の部材である。略円柱形状とは、外形が円形の部材であればよく、例えば、中身が空洞の円筒であってもよい。なお、前縁側舵部14の断面形状の直径は、約80mmに設定するものとして説明するが、もちろん、適宜変更可能である。
【0024】
後縁側舵部16は、前縁側舵部14と同様の形状を有し、舵本体部12の後縁の長手方向に沿って設けられる略円柱形状の部材である。ここでは、前縁側舵部14及び後縁側舵部16の形状は同じであるものとして説明したが、もちろん、異なる形状であってもよく、例えば、直径を変えてもよく、一方を円柱とし、他方を円筒としてもよい。なお、前縁側舵部14の断面形状の直径は、約80mmに設定するものとして説明するが、もちろん、適宜変更可能である。
【0025】
底面側舵部18は、舵本体部12の底面部に設けられ、所定の角度をなすように斜め下方向に延び、推進用プロペラ35から流れてくる水を舵本体部12に側面に誘導する一対の板状の部材である。より具体的には、一対の板状の部材は、舵本体部12から横方向に延びた水平部と、所定の角度θ(約30°)で曲げられて延伸する延伸部とを備える。この水平部の長さは、例えば、約120mmに設定され、延伸部の長さも約120mmに設定されるものとして説明するが、もちろん、適宜変更可能である。
【0026】
底面側舵部18は、上記のように、一対の板状の部材で構成されており、長手方向の端辺は、舵本体部12の短辺に沿って設けられている。一対の板状の部材は、船舶舵10の前縁側から見た場合に略ハの字形状を有している。
【0027】
一対の板状の部材がなす角度は、ここでは120°であるものとして説明するが、もちろん、適宜変更可能である。また、一対の板状の部材は、別部材で構成されていてもよいが、一体形成されていてもよい。
【0028】
天井面側舵部20は、舵本体部12の天井面部に設けられ、横方向に延びて底面側舵部18により誘導された水を受け止めるための部材である。
【0029】
天井面側舵部20は、一枚の板状部材が舵本体部12の天井面部に設けられており、天井面部の両側面から突出するように設けられている。なお、突出した部分の長さは、底面側舵部18の水平部の長さと揃っていることが好ましく、ここでは、約120mmであるものとして説明する。また、ここでは、天井面側舵部20は、一枚の板状部材で構成されているものとして説明したが、一対の板状部材で構成されていてもよく、この一対の板状部材のなす角度を略180°にしてもよい。
【0030】
続いて、上記構成から船舶舵10について説明する。従来、船舶を用いて、荷物等の運搬を行うことがある。船舶を動かすための燃料源は、重油などの化石燃料である。船舶を用いた運搬事業を営む上では、経費を抑えることが好ましく、経費削減の1つの手段として、例えば、燃費の向上が求められている。このような課題に対して、本発明に係る実施形態の船舶舵10は顕著な効果を発揮する。
【0031】
船舶舵10は、船舶1の進行方向の前縁を丸く厚くし進行方向の後縁を薄くするように流線形に形成される。そして、船舶舵10を切ることで、流れに対して迎え角をもたせて進行方向に直角な横方向に揚力を発生させて、船舶1の進行方向を変えている。
【0032】
また、船舶舵10は、舵本体部12の前縁に前縁側舵部14が設けられるため、推進用プロペラ5側から流入してくる水を分流し、前縁側舵部14の周囲を流れる流速を加速させる。
【0033】
そして、船舶舵10の底面側舵部18は、一対の板状部材が舵本体部12の底面部に設けられて所定の角度θをなすように斜め下方向に延びているため、推進用プロペラ35から流れてくる水を舵本体部12に側面に誘導する。
【0034】
また、船舶舵10の天井面側舵部20は、舵本体部12の天井面部に設けられ、横方向に延びて底面側舵部18により誘導された水を受け止めて乱流を生じさせる。これにより、水の流速を加速させることが出来る。
【0035】
さらに、船舶舵10は、舵本体部12の後縁に後縁側舵部16が設けられるため、前縁側舵部14及び舵本体部12側から流れてくる水を分流し、前縁側舵部14の周囲を流れる流速を加速させる。
【0036】
以上のように、船舶舵10によれば、推進用プロペラ5側から流れてくる水の流速を加速させる機構が複数設けられているため、一般的な舵に比べて、同一量の燃料で船舶1の速度を早くすることができる。すなわち、船舶舵10によれば、燃費を向上させることができるという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0037】
1 船舶、2 船尾、4 船尾部、5 推進用プロペラ、10 船舶舵、12 舵本体部、14 前縁側舵部、16 後縁側舵部、18 底面側舵部、20 天井面側舵部、22 舵軸。
【要約】 (修正有)
【課題】船舶の燃費を良くすることを可能とする船舶舵を提供することである。
【解決手段】船舶舵10は、推進用プロペラ5の後方に位置するように設けられた船舶舵10であって、船舶1の進行方向の前縁を丸く厚くし進行方向の後縁を薄くするように流線形に形成され、側面視が略矩形形状である舵本体部12と、前縁に沿って設けられる略円柱形状の前縁側舵部14と、後縁に沿って設けられる略円柱形状の後縁側舵部16と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図4