(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】複合店舗建築物
(51)【国際特許分類】
E04H 3/02 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
E04H3/02 C
(21)【出願番号】P 2022049846
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-03-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2021年8月1日より施工中に公開。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522083178
【氏名又は名称】矢澤 潤也
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 潤也
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-141992(JP,A)
【文献】特開2013-183924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁、後壁、左壁、右壁、頂壁を備えた略箱形の複合店舗建築物であって、
前記前壁、前記後壁、前記左壁、前記右壁、前記頂壁により囲まれる内部空間を、左側から右側に向かって、第1店舗区画、第2店舗区画、第3店舗区画、第4店舗区画に区分することにより、4店舗の入居を可能とし、
前記前壁のうち、前記第1店舗区画、前記第2店舗区画、前記第3店舗区画、前記第4店舗区画それぞれに対応する部位に、当該第1店舗区画、当該第2店舗区画、当該第3店舗区画、当該第4店舗区画にそれぞれ進入可能な第1入口ドア、第2入口ドア、第3入口ドア、第4入口ドアを、左・右方向に沿って並べて配設し、
前記内部空間における前記第1~第4店舗区画より奥側において、それら第1~第4店舗区画に共有されるように設けた1つのバックヤード通路を左・右方向に延設し、
前記第1店舗区画、前記第2店舗区画、前記第3店舗区画、前記第4店舗区画それぞれの最奥部に、それら第1店舗区画、第2店舗区画、第3店舗区画、第4店舗区画から前記バックヤード通路にそれぞれ通じる第1裏口ドア、第2裏口ドア、第3裏口ドア、第4裏口ドアを配設し、
前記1つのバックヤード通路の左・右方向における端部に、前記第1~第4店舗区画に共有されるトイレスペースと、当該第1~第4店舗区画に共有される家電品設置スペースと、を設け、
前記第1店舗区画のうち前記第1入口ドアよりも左側に当該第1店舗区画用のバックヤードルームを設けるとともに、前記第4店舗区画のうち前記第4入口ドアよりも右側に当該第4店舗区画用のバックヤードルームを設け
、
前記第2店舗区画のうち店舗区画内の奥側の端部に当該第2店舗区画用のバックヤードルームを設け、前記第3店舗区画のうち店舗区画内の奥側の端部に当該第3店舗区画用のバックヤードルームを設けた
ことを特徴とする複合店舗建築物。
【請求項2】
請求項1記載の複合店舗建築物において、
前記1つのバックヤード通路の左端部及び右端部のうち、一方に前記トイレスペースを設けるとともに、他方に前記家電品設置スペースを設ける、振り分け配置とした、
ことを特徴とする複合店舗建築物。
【請求項3】
請求項2記載の複合店舗建築物において、
前記第1店舗区画と前記第2店舗区画との境界、
前記第2店舗区画と前記第3店舗区画との境界、
前記第3店舗区画と前記第4店舗区画との境界、
のうち、少なくとも1つを取り外し可能な立設壁面とすることにより、対応する2つ以上4つ以下の店舗区画を相互に連通させ、当該連通により実現される大店舗区画に1店舗が入居可能な構成とし
たことを特徴とする複合店舗建築物。
【請求項4】
請求項3記載の複合店舗建築物において、
前記第1店舗区画と前記第2店舗区画との境界、
前記第2店舗区画と前記第3店舗区画との境界、
前記第3店舗区画と前記第4店舗区画との境界、
をすべて取り外し可能な前記立設壁面とすることにより、前記第1店舗区画、前記第2店舗区画、前記第3店舗区画、前記第4店舗区画の4つの店舗区画を相互に連通させ、当該連通により実現される前記大店舗区画に前記1店舗が入居可能な構成としたことを特徴とする複合店舗建築物。
【請求項5】
請求項3
又は請求項4記載の複合店舗建築物において、
ガス管、非加熱水給水管、加熱水給水管、下水管をそれぞれ鉛直方向に貫通させるためのガス管貫通孔、非加熱水給水管貫通孔、加熱水吸水管貫通孔、下水管貫通孔をユニット化した、共通形状の配管貫通ユニットを、前記第1~第4店舗区画それぞれの設置面に設けた
ことを特徴とする複合店舗建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合店舗建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの店舗の中で頭髪エステとエステを行う店舗構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の
図1、段落[0014]~[0015]等には、複数の頭髪エステ室2a、2bと、複数のエステ室3a、3bとを有し、各部屋が共通の通路4によって連結されている総合エステ室の店舗構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の店舗構造は、1つの店舗内において施術を効率よく行うための配置構造について配慮したものであって、1つの共同構造物の建物の中に複数の異なる店舗を配置することについては記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、必要最小限のスペースで複数店舗を無駄なく配置できる効率的な構造を実現する複合店舗建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、前壁、後壁、左壁、右壁、頂壁を備えた略箱形の複合店舗建築物であって、前記前壁、前記後壁、前記左壁、前記右壁、前記頂壁により囲まれる内部空間を、左側から右側に向かって、第1店舗区画、第2店舗区画、第3店舗区画、第4店舗区画に区分することにより、4店舗の入居を可能とし、前記前壁のうち、前記第1店舗区画、前記第2店舗区画、前記第3店舗区画、前記第4店舗区画それぞれに対応する部位に、当該第1店舗区画、当該第2店舗区画、当該第3店舗区画、当該第4店舗区画にそれぞれ進入可能な第1入口ドア、第2入口ドア、第3入口ドア、第4入口ドアを、左・右方向に沿って並べて配設し、前記内部空間における前記第1~第4店舗区画より奥側において、それら第1~第4店舗区画に共有されるように設けた1つのバックヤード通路を左・右方向に延設し、前記第1店舗区画、前記第2店舗区画、前記第3店舗区画、前記第4店舗区画それぞれの最奥部に、それら第1店舗区画、第2店舗区画、第3店舗区画、第4店舗区画から前記バックヤード通路にそれぞれ通じる第1裏口ドア、第2裏口ドア、第3裏口ドア、第4裏口ドアを配設し、
前記1つのバックヤード通路の左・右方向における端部に、前記第1~第4店舗区画に共有されるトイレスペースと、当該第1~第4店舗区画に共有される家電品設置スペースと、を設け、前記第1店舗区画のうち前記第1入口ドアよりも左側に当該第1店舗区画用のバックヤードルームを設けるとともに、前記第4店舗区画のうち前記第4入口ドアよりも右側に当該第4店舗区画用のバックヤードルームを設けたことを特徴としている。
【0007】
本願発明においては、1つの複合店舗建築物の内部が複数の店舗区画に区画され、バックヤード通路、家電品設置スペース、トイレスペースについては全店舗で共有するとともに、各店舗区画にバックヤードルームを設けることで、適宜の接客のための準備作業(美容室であればカラー剤の生成)等を行うことができる。
【0008】
複合店舗建築物の内部の区画は、5店舗以上に区画すると、バックヤード通路が長くなりすぎてトイレなどが使いづらい。また店舗数がそれだけ多くなると、共通のトイレ1つ、共通の1つの家電品設置スペースだけでは賄いきれない。また4店舗までなら、屋根荷重を両側外壁面のみで支えられるが、5店舗以上になるとそれでは無理で、左右方向中央部にもう1つか2つ、柱などの強度部材を設けなければならず、その分スペースもコストもかかる。
【0009】
複合店舗建築物の内部の区画は、3店舗だと、正面から見た時の外観上のドア配置のバランスが悪く美観が低下する。
【0010】
以上の結果、必要最小限のスペースで、無駄のない小規模店舗の連合体を、各店舗最小コストの負担で実現することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、必要最小限のスペースで複数店舗を無駄なく配置できる効率的な構造を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】複合店舗建築物を前方から見た正面図及び背面図である。
【
図3】複合店舗建築物を上方から見た断面図(間取り図)である。
【
図5】シャンプー用被施術者座席及びシャンプー用の流し台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1(a)に本実施形態に係る複合店舗建築物1の正面図、
図1(b)に複合店舗建築物1の背面図を示す。
図2(a)に本実施形態に係る複合店舗建築物1の右方から見た側面図、
図2(b)に左方から見た側面図を示す。
図3に複合店舗建築物1を上方から見た断面図(間取り図)を示す。
【0015】
図1~
図3に示す方角は、人間が複合店舗建築物1を前壁2側から見た際に人間から見た前後左右方向及び、複合店舗建築物1が設置された設置面7に垂直な上下方向とからなり、これらの方向は互いに直交する。この例では、複合店舗建築物1の前壁2側(ドアが配置された側)を正面、後壁3側を背面としている。
【0016】
すなわち、
図3のA方向から見た図が
図1(a)、B方向から見た図が
図1(b)、C方向から見た図が
図2(a)、D方向から見た図が
図2(b)に相当する。
【0017】
図1~
図2に示すように、複合店舗建築物1は前壁2、後壁3、左壁4、右壁5、頂壁6を備えた略箱形の形状を有する。前壁2には第1店舗区画14に通ずる第1入口ドア8、第2店舗区画15に通ずる第2入口ドア9、第3店舗区画16に通ずる第3入口ドア10、第4店舗区画17に通ずる第4入口ドア11が左右方向に沿って並べて配設されている。
【0018】
第1入口ドア8~第4入口ドア11は、それぞれ左右方向における中央から前方に向けて観音開きとなるように構成されており、各入口ドアの前方側にはドア用鏡34が貼り付けられ、周囲の景色や人等(この図では、雲、木、山)が映り込むように設計されている。各入口ドアには、それぞれの店舗区画のための郵便受け12及び照明13が、複合店舗建築物1の左右方向の中心から見た時、左右対称となるように配置されている。
【0019】
第1入口ドア8、第2入口ドア9、第3入口ドア10、第4入口ドア11は、互いに同一の上下方向高さ寸法、同一の左右方向幅寸法、同一の形状を備え、各ドアの左右方向中心線同士の左右方向に沿ったピッチpは略等しくなるように配置されている。
【0020】
図1(b)に示すように、後壁3には窓(自然通気口)18が設けられている。3つの窓18は複合店舗建築物1の左右方向の中心から見た時、左右対称となるように配置されている。
【0021】
この図では、
図2(a)に示す右壁5は、サインや看板等を掲示できるスペースが設けられている。このような掲示は左壁4側に設けてもかまわない。
【0022】
図3に示すように、複合店舗建築物1は、前壁2、後壁3、左壁4、右壁5、頂壁6により囲まれる内部空間を、左側から右側に向かって、第1店舗区画14、第2店舗区画15、第3店舗区画16、第4店舗区画17に区分することにより、4店舗の入居を可能としている。
【0023】
前壁2のうち、第1店舗区画14、第2店舗区画15、第3店舗区画16、第4店舗区画17それぞれに対応する部位に、第1店舗区画14、第2店舗区画15、第3店舗区画16、第4店舗区画17にそれぞれ進入可能な第1入口ドア8、第2入口ドア9、第3入口ドア10、第4入口ドア11が左右方向に沿って並べて配設されている。
【0024】
前記内部空間における第1~第4店舗区画14~17より奥側(後方側)において、第1~第4店舗区画14~17に共有されるように、各店舗区画から出入り可能な1つのバックヤード通路19が左右方向に延設されている。バックヤード通路19の後方側には窓18が配置されている。
【0025】
第1店舗区画14、第2店舗区画15、第3店舗区画16、第4店舗区画17それぞれの最奥部(最後方側)に、第1店舗区画14、第2店舗区画15、第3店舗区画16、第4店舗区画17からバックヤード通路19にそれぞれ通じる第1裏口ドア20、第2裏口ドア21、第3裏口ドア22、第4裏口ドア23が配設される。
【0026】
バックヤード通路19の左右方向における端部に、第1~第4店舗区画14~17に共有されるトイレスペース24と、第1~第4店舗区画14~17に共有される家電品設置スペース25とが設けられている。家電品設置スペース25には例えば、洗濯機や冷蔵庫等が配置される。
【0027】
複合店舗建築物1において、1つのバックヤード通路19の左方側端部及び右方側端部のうち、一方(この図では右方側端部)にトイレスペース24を設けるとともに、他方(この図では左方側端部)に家電品設置スペース25を設ける、振り分け配置となっている。なお、この図では、4つの店舗区画がそれぞれ1つのトイレスペース24と1つの家電品スペース25とを共有するようになっている。
【0028】
複合店舗建築物1において、第1店舗区画14のうち第1入口ドア8よりも左方側に第1店舗区画14用のバックヤードルーム26aを設けるとともに、第4店舗区画17のうち第4入口ドア11よりも右方側に第4店舗区画17用のバックヤードルーム26dが設けられている。
【0029】
この図では、第2店舗区画15及び第3店舗区画16についてもそれぞれバックヤードルーム26b、26cが備えられている。バックヤードルーム26a~d(以下、単にバックヤードルーム26と総称する)には例えば作業台、収納家具等が配置され、各店舗の備品の収納や各店舗の店員の作業スペースとして使用される。
【0030】
複合店舗建築物1の壁面は、柱を内蔵する堅固な建築構造の本壁面29と、柱を内蔵しない、簡単に撤去可能な立設壁面28とから構成されている。
図3において、本壁面29は黒く幅広な壁面で表示され、立設壁面28は灰色の幅狭な壁面で表示されている。本壁面29は例えばモルタルやコンクリート等で構成される。立設壁面28は例えば薄いベニヤ板等のボードで構成されている。
【0031】
複合店舗建築物1は、第1店舗区画14と第2店舗区画15との境界、第2店舗区画15と第3店舗区画16との境界、第3店舗区画16と第4店舗区画17との境界、のうち、少なくとも1つが取り外し可能な立設壁面28となっている。
【0032】
これにより、必要に応じて、第1店舗区画14~第4店舗区画17のうち、互いに隣接する2つ以上4つ以下の店舗区画を、境界の立設壁面28を撤去することで相互に連通させ、当該連通により実現される大店舗区画に1店舗が入居可能な構成とすることができる。
【0033】
前記挿通の例としては、例えば第1店舗区画14と第2店舗区画15とを挿通させて1つの店舗区画とし、第3店舗区画16と第4店舗区画17はそのまま使用する例(この場合、複合店舗建築物1に含まれる店舗は3つ)や、第1店舗区画14と第2店舗区画15とを挿通し、さらに第3店舗区画16と第4店舗区画17とを挿通する例(この場合、複合店舗建築物1に含まれる店舗は2つ)等が挙げられ、このほかにも所望の組み合わせで挿通を行うことができる。
【0034】
本壁面29は前壁2、後壁3、左壁4、右壁5のうち、ドアや窓以外の部分を構成するとともに、配置を変更する必要のない、トイレスペース24と家電品設置スペース25の周囲についても、本壁面29により構成される。また、バックヤードルーム26a、26dの周囲の一部も、本壁面29により構成される。
【0035】
例えば上述のように立設壁面28の一部を撤去して第1店舗区画14と第2店舗区画15とを挿通したり、第3店舗区画16と第4店舗区画17を挿通して店舗区画を合体させる場合、バックヤードルーム26b、26cも必要に応じて撤去されるため、バックヤードルーム26b、26cは、バックヤードルーム26a、26dとは異なり、各店舗区画内の奥側(後方側)の端部に配置され、立設壁面28で仕切られることにより、容易に撤去可能なように設計されている。
【0036】
なお、前壁2の一部に含まれる本壁面29のうち、3か所の本壁面29′については、堅固な構造ではあるものの、他の部分の連続した本壁面29とは離間して配置された構造であり、複数の店舗区画を挿通する場合に、必要に応じて撤去することが可能なようになっている。3か所の本壁面29′を撤去したとしても、残りの前壁2、後壁3、左壁4、右壁5を構成する本壁面29は連続的に構成されており、屋根(頂壁6)加重を支えうる構成に設計されている。
【0037】
第1入口ドア8と第2入口ドア9の間の部分の裏側(第2店舗区画15側)には、当該第2店舗区画15側からアクセス可能な、棚が配置される空間27となっている。同様に、第4入口ドア11と第3入口ドア10の間の部分の裏側(第3店舗区画側)には、当該第3店舗区画側からアクセス可能な、棚が配置される空間27となっている。
【0038】
なお、
図3に示すように、複合店舗建築物1において、内部空間のレイアウト(本壁面29、本壁面29′、立設壁面28等の配置)は、平面視において、複合店舗建築物1の内部空間を左右方向に2分割する仮想線Pに対して略左右対称となるように設計されている。すなわち、第1店舗区画14及び第4店舗区画15は、仮想線Pに関して互いに鏡像配置となり、第2店舗区画16及び第3店舗区画17は仮想線Pに関して互いに鏡像配置となる。また、
図1(a)に示すように、外観正面図も、該仮想線Pに対して、略左右対称となるように(鏡像配置となるように)設計されている。
【0039】
複合店舗建築物1において、第1~第4店舗区画14~17のうち少なくとも1つの店舗区画は、シャンプー用被施術者座席30の長手方向を前後方向に沿わせて配置した、美容室区画である。
図3では、第1店舗区画14が美容室区画となっている。また、第4店舗区画17は、飲食店用の流し台42とガスコンロ43を備えたカウンダー44が配置された飲食店区画となっている。カウンター44は厨房スペースであり、高床式(店舗区画の床面の上に、一段高く設けられた別の床面)の作業床45の上に配置されるようになっている。
【0040】
図3では、第2区画15及び第3区画16は、空き区画となっている。このような店舗区画には美容室や飲食店に限らず、エステ、マッサージ、エクステサロン、ネイルサロン、カウンセリング、その他、小売店やオフィスを含むあらゆる店舗が入居できる。
【0041】
なお、各店舗区画のサイズについて特に限定されるものではないが、店舗建築物1の第1店舗区画14~第4店舗区画17のそれぞれは、
図3に示すように、例えばシャンプー用被施術者座席30の他、カット等の施術を行うための座席31が2つと、店舗用鏡32が1つ、テーブル33が1つ、それぞれ配置される程度のサイズであり、例えば個室において、店員と顧客が一対一で顧客に各種の施術を行う際、快適なサービスを行う上で最低限必要なスペースでの配置となることを想定している。
【0042】
図3及び
図3の拡大図に示すように、複合店舗建築物1はガス管、非加熱水給水管、加熱水給水管、下水管をそれぞれ鉛直方向(上下方向)に貫通させるためのガス管貫通孔36、非加熱水給水管貫通孔37、加熱水吸水管貫通孔38、下水管貫通孔39をユニット化した、共通形状の配管貫通ユニット40を、第1店舗区画14~第4店舗区画17それぞれの設置面41に備える。なお、この例では、下水管貫通孔39の穴径が、ガス管貫通孔36、非加熱水給水管貫通孔37、加熱水吸水管貫通孔38の穴径よりも大きくなっている。
【0043】
ガス管貫通孔36、非加熱水給水管貫通孔37、加熱水吸水管貫通孔38、下水管貫通孔39はそれぞれ図示しないガス用配管(例えば金属製のパイプでもよいし、ゴム製のホース等でも可。以下の各配管について同様)、非加熱水用配管、加熱水用配管、下水用配管が略鉛直方向に貫通可能に構成されている。なお、下水用配管は他のガス用配管、非加熱水用配管、加熱水用配管よりも大径となることが多いため、前述したように、配管貫通ユニット40において、下水管貫通孔39の穴径が他の貫通孔36,37,38の穴径よりも大きくなっている。また設置面41から下方へと貫通させたそれらガス用配管、非加熱水用配管、加熱水用配管、下水用配管は、予め設置面41の下方の適宜の箇所に埋設するように配置されたガス管、非加熱水給水管、加熱水給水管、下水管と接続可能となるように構成されている。 前記ガスは例えばプロパンガスや都市ガスであり、前記非加熱水は、例えば水道水であり、前記加熱水は、例えば複合店舗建築物1の外部もしくは内部の任意の場所に設けられた給湯設備によって水道水が加熱された温水である。
【0044】
言い換えれば、ガス管貫通孔36、非加熱水給水管貫通孔37、加熱水吸水管貫通孔38はそれぞれ各店舗にガス、非加熱水、加熱水を供給可能とし、下水管貫通孔39は各店舗から下水を下水管に排出可能とするためのものである。
【0045】
設置面41は各店舗区画の床面である。この図では、第4店舗区画17においては、高床式の作業床45の下方向に重畳する、隠れた床面が設置面41となっている。この例では、第1区画14においてシャンプー用被施術者座席30に隣接して設けられるシャンプー用の流し台35は、配管貫通ユニット40と重畳する場所(すなわち配管貫通ユニット40の真上)に配置されている。またこの例では、第4区画の飲食店用の流し台42は配管貫通ユニット40と近接した位置に配置され、設置面41の下方から配管貫通ユニット40を上方へと貫通した前述のガス用配管、非加熱水用配管、加熱水用配管、下水用配管(図示省略)が、作業床45の下方において流し台42へと接続されている。なお、第1区画14と同様、流し台35の真下に配管貫通ユニット40が設けられる配置としてもよい。
【0046】
図4は、
図3のF方向から見た第3店舗区画16の内観の斜視図である。第3入口ドア10の左方の本壁面29′の左の空間27には造り付けの棚が配置されている。左右方向は立設壁面28で他の店舗区画と仕切られ、この図ではテーブル33が左側の立設壁面28に造り付けで設けられている。第3店舗区画の床面である設置面41には配管貫通ユニット40が備えられている。
【0047】
図5は、
図3の第1店舗区画14に配置される、シャンプー用被施術者座席30及び、シャンプー用の流し台35の斜視図である。前述したように、シャンプー用の流し台35は、シャンプー用被施術者座席30に隣接して配置され、第1店舗区画14の床面に設置された配管貫通ユニット40と重畳するように、配置されている。シャンプー用の流し台35は、例えば配管貫通ユニット40の加熱水吸水管貫通孔38を貫通する加熱水用配管(この例ではホース46の例を図示)を介してシャンプー時に加熱水(温水)を適宜供給し、下水管貫通孔39を貫通する下水用配管(図示省略)介してシャンプー時に発生した汚水を下水管に排出する。
【0048】
<実施形態の効果>
複数の店舗が入居可能な複合店舗建築物1において、共通のバックヤード通路19を設け、トイレスペース24等の設備を全店舗で共有するとともに、複合店舗建築物1の各店舗区画にそれぞれバックヤードルーム26を設けることで、各店舗ごとの設備の配置や、適宜の接客のための準備作業(美容室であればカラー剤の生成)等を行うことができる。
【0049】
各店舗区画の数が5店舗以上だと、バックヤード通路19が長くなりすぎてトイレなどが使いづらい。また店舗数がそれだけ多くなると、共有のトイレスペース24、共有の家電品設置スペース25が1つでは足りなくなる恐れがある。また4店舗までなら、屋根(頂壁6)荷重を両側外壁面(本壁面29で構成される前壁2、後壁3、左壁4、右壁5)のみで支えられるが、5店舗以上になるとそれでは無理で、左右方向中央部にもう1つか2つ、柱などの強度部材を設けなければならず、その分スペースもコストもかかる。
【0050】
各店舗区画の数が3店舗だと、正面から見た時の外観上のドア配置のバランスが悪くなり美観が低下する。
【0051】
以上の結果、必要最小限のスペースで、無駄のない小規模店舗の連合体を、各店舗最小コストの負担で実現することができる。
【0052】
また、本実施形態では特に、トイレスペース24と家電品設置スペース25とを集約せずに一端と他端に振り分け配置することで、建物全体としてさらに無駄のない効率的な配置とすることができ小型化が可能である。
【0053】
また、本実施形態では特に、複合店舗建築物1の内部空間の仕切りに立設壁面28を用いるので、広めのスペースで営業したい借主にも内部空間を「ぶち抜き」することで対応できる。
【0054】
複合店舗建築物1を建築物全体として転売するとき、例えば第1店舗区画14、第2店舗区画15、第3店舗区画16、第4店舗区画17同士の境界を仕切る3つの立設壁面28を取り外すことで「大きなスケルトン構造の器」として好条件で売却することができる。
【0055】
なお、複合店舗建築物1は、1つの建築物として生産、販売することを想定しているが、この構造の場合、屋根の自重を外壁面(前壁2、後壁3、左壁4、右壁5)だけで支えることになるため、店舗区画の仕切りは4店舗までであることが好ましい。
【0056】
例えば第1店舗区画14と第2店舗区画15との境界の立設壁面28を取り外すことで、それら2つの店舗区画分の大型店舗として営業することもできる。その場合は第2店舗区画15内のバックヤードルーム26bを撤去すればなお広く使える。さらに、第1入口ドア8又は第2入口ドア9のどちらかはドアではなく窓18にしてしまえば、店舗内スペースをさらに広くとることができる。第3店舗区画16と第4店舗区画17との境界の立設壁面28を取り外す場合も同様である。
【0057】
また、本実施形態では特に、店舗区画の1つが美容室区画である場合、顧客が椅子を倒して寝そべった姿勢で長い寸法が必要となるシャンプー用被施術者座席30を前後方向に沿って配置することにより、設置のために必要なスペースを小さくできる。また、これにより、寝そべらず正立着座するため必要スペースが小さくて済む座席31については、例えば、シャンプー用被施術者座席30の左右どちらかの側方に、(シャンプー用被施術者座席30の長手方向と直交する)左右いずれかの方向に向けて配置し、その対面側の壁面をミラー(店舗用鏡32)とすることで、限られた省スペースの中で無駄のない効率的な配置とすることができる。
【0058】
また、本実施形態では特に、どの店舗区画にも共通形状の配管貫通ユニット40が設けられることで、どの店舗区画においても、非加熱水(水道水等の常温の水)及び温水を使用した洗い作業を伴う業務、及び、ガス器具を使用した業務、を確実に行うことができる。
【0059】
例としては、飲食店舗として使用する際には食器等の洗い物作業やガスコンロを使用した調理作業等を確実に行うことができ、美容院として使用する際には、被施術者の洗髪作業を確実に行うことができる。
【0060】
各店舗区画に入居する店舗のサービス内容によって、配管貫通ユニット40のうち使用する貫通孔と使用しない貫通孔とがあるが、使用したいものだけ使用すればよく、全ての店舗区画に共通形状の配管貫通ユニット40を設置することで、どのような店舗が入居しても対応可能となり、汎用性を高めることができる。
【0061】
以上のような構成により、本実施形態の複合店舗建築物1は、複数の店舗区画がそれぞれ占有するスペースと、共有するスペースとを、省スペースかつ効率的に1つの建築物の内部構造に配置することで、1店舗当たりの賃料をコストダウンすることが可能であり、独立したい美容師や調理師等に安価に提供できるとともに、個室で一対一での施術を受けたい顧客の需要等も満たすことができ、かつ、複合店舗建築物1のデザインが、外部も内部(柱や壁等の構造)も建物の中央から見て略左右対称となっており、美観に優れ、顧客の充足感及び消費意欲を高めうるものとなっている。
【0062】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0063】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0064】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0065】
1 複合店舗建築物
2 前壁
3 後壁
4 左壁
5 右壁
6 頂壁
7 設置面
8 第1入口ドア
9 第2入口ドア
10 第3入口ドア
11 第4入口ドア
12 郵便受け
13 照明
14 第1店舗区画
15 第2店舗区画
16 第3店舗区画
17 第4店舗区画
18 窓
19 バックヤード通路
20 第1裏口ドア
21 第2裏口ドア
22 第3裏口ドア
23 第4裏口ドア
24 トイレスペース
25 家電品設置スペース
26 バックヤードルーム
27 空間
28 立設壁面
29 本壁面
30 シャンプー用被施術者座席
31 座席
32 店舗用鏡
33 テーブル
34 ドア用鏡
35 シャンプー用の流し台
36 ガス管貫通孔
37 非加熱水給水管貫通孔
38 加熱水吸水管貫通孔
39 下水管貫通孔
40 配管貫通ユニット40
41 設置面
42 飲食店用の流し台
43 ガスコンロ
44 カウンダー
45 作業床
46 ホース
【要約】
【課題】必要最小限のスペースで複数店舗を無駄なく配置できる効率的な構造を実現する複合店舗建築物を提供する。
【解決手段】
前壁2、後壁3、左壁4、右壁5、頂壁6により囲まれる内部空間を第1店舗区画14、第2店舗区画15、第3店舗区画16、第4店舗区画17に区分することにより、4店舗の入居を可能とし、前壁2に第1入口ドア8、第2入口ドア9、第3入口ドア10、第4入口ドア11を配設し、第1~第4店舗区画14~17に共通の1つのバックヤード通路19と、共有のトイレスペース24と、共有の家電品設置スペース25とを設け、第1店舗区画用14のバックヤードルーム26aを設けるとともに第4店舗区画17用のバックヤードルーム26dを設けた複合店舗建築物1。
【選択図】
図3