(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】配筋調整治具
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
E04G21/12 105D
E04G21/12 105A
(21)【出願番号】P 2022096606
(22)【出願日】2022-06-15
【審査請求日】2022-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503289768
【氏名又は名称】大雅工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】松元 茂樹
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-115351(JP,U)
【文献】中国実用新案第212534174(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
B66F 15/00
B65G 7/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治具本体と、前記治具本体の先端側に回動自在に固定された支持体と、を備えてなり、
前記治具本体は、棒体であり、先端に主筋を保持する第1保持部と、後端に把持部と、先端側に前記支持体を固定するガイド溝と、を有し、
前記支持体は、アーム部と、前記アーム部の先端に形成され
前記主筋と隣接する主筋を支持する第2保持部と、前記アーム部の後端に
設けられ前記ガイド溝に回動自在に軸支
される軸部と、を有
し、
前記ガイド溝は、前記治具本体の先端側に長手方向に沿って形成された横長の長穴と、前記長穴の一の長辺に複数形成され、前記支持体の前記軸部と係合する係合凹部と、を有することを特徴とする配筋調整治具。
【請求項2】
長穴は、支持体の軸部を治具本体の長手方向
に沿って移動自在とするように軸部の直径よりも大きい幅を有することを特徴とする請求項
1記載の配筋調整治具。
【請求項3】
係合凹部は、支持体の軸部が移動して係合するように半円形に形成されることを特徴とする請求項
1記載の配筋調整治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配筋作業における柱筋や梁筋の主筋の間隔を調整するための配筋調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物などの建築物の基礎工事において、柱筋や梁筋の組み立てなどの配筋作業を行う際に、作業者によって鉄筋の移動や配置を調整するためにバールが一般的に用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、長尺で太く重量の重い鉄筋からなる主筋を長手方向へのスライド移動を容易にすることが可能なL形フックを先端に備えた配筋作業用バールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-144319号公報(特許第3551584号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したバールは、配筋作業を行う現場において、作業面などが主筋の周辺になく支点を確保できない場合、テコの原理を利用することが難しいため、単に引っ掛けて引っ張ったり、押したりして主筋の位置や主筋間の間隔を調整するため配筋作業の効率が低かった。
【0006】
したがって、本発明は、作業面に支持体を設置して支点を確保することで主筋の位置を移動することができるとともに、支点が確保できない場合に偏心した一方の主筋の近傍に位置する他方の主筋に支持固定し、一方の主筋を押し広げてそれらの主筋の間隔を調整することが可能な配筋調整治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配筋調整治具は、上記課題に鑑み、治具本体と、前記治具本体の先端側に回動自在に固定された支持体と、を備えてなり、
前記治具本体は、棒体であり、先端に主筋を保持する第1保持部と、後端に把持部と、先端側に前記支持体を固定するガイド溝と、を有し、
前記支持体は、アーム部と、前記アーム部の先端に形成され前記主筋と隣接する主筋を支持する第2保持部と、前記アーム部の後端に設けられ前記ガイド溝に回動自在に軸支される軸部と、を有し、
前記ガイド溝は、前記治具本体の先端側に長手方向に沿って形成された横長の長穴と、前記長穴の一の長辺に複数形成され、前記支持体の前記軸部と係合する係合凹部と、を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、上述した構成に加え、長穴は、支持体の軸部を治具本体の長手方向に沿って移動自在とするように軸部の直径よりも大きい幅を有することが好ましい。
【0009】
また、上述した構成に加え、係合凹部は、支持体の軸部が移動して係合するように半円形に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業面に支持体を設置して支点を確保することで主筋の位置を移動することができるとともに、支点が確保できない場合に偏心した一方の主筋の近傍に位置する他方の主筋に支持固定し、一方の主筋を押し広げてそれらの主筋の間隔を調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の配筋調整治具の実施形態の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1の配筋調整治具を柱筋の主筋の配筋位置の調整に用いた説明図であり、(a)主筋が偏心した状態、及び、(b)主筋が等間隔になるように調整した状態、を示す主筋の平面方向から見た図である。
【
図4】
図1の配筋調整治具を梁筋の主筋の配筋位置の調整に用いた説明図であり、(a)主筋が偏心した状態、及び、(b)主筋が等間隔になるように調整した状態、を示す主筋の側面方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
本発明の配筋調整治具の実施形態の一例について
図1-4に基づいて詳細に説明する。
【0013】
配筋調整治具は、
図1、2に示すように、治具本体10と、治具本体10の先端側に回動自在に固定された支持体20と、を主要部として構成されたものである。
【0014】
治具本体10は、細長い平板状の棒体であり、先端に主筋を保持する第1保持部11と、後端に把持部12と、先端側に支持体20を回動自在に固定するガイド溝13と、を有する。また、治具本体10は、図示しないが、後端の把持部12から長さを延長するために、同じ細長い平板状の棒体からなる延長部を設けてもよい。
【0015】
ガイド溝13は、治具本体10の先端側に長手方向に沿って形成された横長の長穴14と、長穴14の一
の長辺(
図2では右側側辺)に複数形成された後述する支持体20の軸部23と係合する係合凹部15、15と、を有する。
【0016】
長穴14は、支持体20の軸部23を治具本体10の長手方向に沿って移動自在とするように軸部23の直径よりも大きい幅を有する。
【0017】
係合凹部15、15は、支持体20の先端の第2保持部22が主筋に押圧保持された状態において軸部23が長穴の一辺に移動して係合させるために、少なくとも、軸部23の断面形状の半分程度が嵌り込む軸部23と同程度の直径を備えた半円形に形成される。
【0018】
支持体20は、2つの短い平板を略平行に配置して形成したアーム部21と、アーム部21の先端に形成され主筋を支持する第2保持部22と、アーム部21の後端に設けられガイド溝13に回動自在に軸支される軸部23と、を有する。
【0019】
アーム部21は、2つの短い平板を略平行に配置して、アーム部21の上面から治具本体10を挟み込む程度の幅の間隙部24を有する。また、この軸部23は、アーム部21の後端に設けられた貫通孔にボルトを挿入してナットで締め付けたものである。
【0020】
第1保持部11及び第2保持部22は、主筋の間に差し込んでそれぞれの主筋を保持するものであり、例えば、正面方向からみて直角の逆L字型のアングル材を固着して形成してもよい。
【0021】
次に、柱筋の配筋作業において、主筋の配置すること、及び、主筋に対してフープ筋やあばら筋を巻き付けて結束固定を行うことなどの際に、上述した配筋調整治具を用いて主筋間の間隔が狭まって偏心した状態の主筋の位置を調整して主筋間の間隔を一定に調整する調整方法について
図3、4に基づいて説明する。
【0022】
柱筋の配筋作業の場合、
図3(a)に示すように、作業面に対して垂直に配置された複数の主筋に対してフープ筋を結束固定する際に、一方の主筋が他方の主筋に近接するように偏心した状態である。この偏心した状態の主筋と隣接する主筋との間に配筋調整治具の第1保持部11及び第2保持部22の先端付近を差し込む。その後、作業者が把持部12を左方向(図面上では下方)に支持体20の軸部23を中心に回転させると、支持体20の第2保持部22が隣接する主筋に固定され、かつ、支持体20の軸部23が治具本体10の長穴14の係合凹部15、15に係合することで支点が確保される。
【0023】
さらに、把持部12を回転させると、
図3(b)に示すように、治具本体10が支持体20の軸部23を中心として回転し、テコの原理を利用することで、第1保持部11によって偏心位置にあった主筋を押圧して隣接する主筋から離れるように移動させることで、主筋間の幅を等間隔にして配筋位置を調整する。
【0024】
また、梁筋の配筋作業の場合、
図4(a)に示すように、作業面に対して水平方向に配置された主筋の偏心位置の調整を行う際に、支持体20の第2保持体22を治具本体10の第1保持体11から離れるように拡開した状態とし、支持体20の第2保持部22が作業面に設置され、かつ、支持体20の軸部23が治具本体10の長穴14の係合凹部15、15に係合することで支点が確保される。
【0025】
さらに、把持部12を回転させると、
図4(b)に示すように、治具本体10が支持体20の軸部23を中心として作業面方向(図面上では下方)に回転し、テコの原理を利用することで、第1保持部11によって偏心位置にあった主筋を上方に押し上げ、隣接する主筋から離れるように移動させることで、主筋間の幅を等間隔にして配筋位置を調整する。
【0026】
したがって、上述した配筋調整治具によって、作業面に支持体20を設置して支点を確保することで主筋の位置を移動することができるとともに、支点が確保できない場合に偏心した一方の主筋の近傍に位置する他方の主筋に押圧支持し、一方の主筋を押し広げてそれらの主筋の間隔を調整することが可能である。
【0027】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、複数の主筋の間隔が広い場合や、支持固定した主筋と偏心位置の主筋との間に異なる主筋が配置されている場合にも使用できるように、支持体20のアーム部21をより長く設けてもよい(図示しない)。
【符号の説明】
【0028】
10 治具本体、
11 第1保持部、12 把持部、13 ガイド溝、14 長穴、15 係止凹部、
20 支持体、
21 アーム部、22 第2保持部、23 軸部、24 間隙部。
【要約】
【課題】 作業面に支持体を設置して支点を確保することで主筋の位置を移動することができるとともに、支点が確保できない場合に偏心した一方の主筋の近傍に位置する他方の主筋に支持固定し、一方の主筋を押し広げてそれらの主筋の間隔を調整することが可能な配筋調整治具を提供する。
【解決手段】 治具本体10と、治具本体10の先端側に回動自在に固定された支持体20と、を備えてなり、治具本体10は棒体であり、先端に主筋を保持する第1保持部11と、後端に把持部12と、先端側に支持体20を固定するガイド溝13と、を有し、支持体20は、アーム部21と、アーム部21の先端に形成され主筋を支持する第2保持部22と、アーム部21の後端にガイド溝13に回動自在に軸支する軸部23と、を有する。
【選択図】
図1