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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】藻類培養装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
C12M1/00 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017196928
(22)【出願日】2017-10-10
(65)【公開番号】P2019068773
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 惇
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-086816(JP,A)
【文献】特表平10-511854(JP,A)
【文献】特開平01-291784(JP,A)
【文献】特表2012-527243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と短手方向とを有し、藻類の培養液を貯留する培養槽と、
前記培養槽の底部の近傍に前記培養槽の前記長手方向に沿って配置された供給主管と、
前記供給主管の壁面に、前記供給主管の軸方向に沿って所定の間隔を有して形成され、前記培養槽に前記培養液を供給して前記培養槽の深さ方向に前記培養液の流れを形成する複数の貫通孔と、
を有し、
前記培養液は、前記複数の貫通孔から噴出される前記培養液の噴流によって撹拌され、
前記培養液は、前記複数の貫通孔の各々から水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に前記培養槽の内壁に向けて噴出されて、太陽光を前記藻類の全体に満遍なく照射できるように前記内壁に沿って上昇する流れを形成
前記供給主管は、前記培養槽の前記長手方向の全長に渡って配置され、
前記培養槽の前記供給主管の一端は他の培養槽の供給主管の一端に接続可能であり、かつ前記培養槽の前記供給主管の一端から前記他の培養槽の前記供給主管の一端に前記培養液を供給可能に構成され、
前記培養槽は、地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭を有する仮設基礎部の上に設置された支持体により支持される、
藻類培養装置。
【請求項2】
長手方向と短手方向とを有し、藻類の培養液を貯留する培養槽と、
前記培養槽の底部の近傍に前記培養槽の前記長手方向に沿って配置された供給主管と、
前記供給主管と連通し、前記供給主管と垂直に配置され、前記培養槽に前記培養液を供給して前記培養槽の深さ方向に前記培養液の流れを形成する複数の供給枝管と、
を有し、
前記培養液は、前記複数の供給枝管から噴出される前記培養液の噴流によって撹拌され、
前記培養液は、前記複数の供給枝管の各々から水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に前記培養槽の内壁に向けて噴出されて、太陽光を前記藻類の全体に満遍なく照射できるように前記内壁に沿って上昇する流れを形成
前記供給主管は、前記培養槽の前記長手方向の全長に渡って配置され、
前記培養槽の前記供給主管の一端は他の培養槽の供給主管の一端に接続可能であり、かつ前記培養槽の前記供給主管の一端から前記他の培養槽の前記供給主管の一端に前記培養液を供給可能に構成され、
前記培養槽は、地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭を有する仮設基礎部の上に設置された支持体により支持される、
藻類培養装置。
【請求項3】
前記複数の供給枝管は、前記供給主管の軸方向に沿って千鳥配列となるように配置されており、
前記培養液が前記複数の供給枝管から噴出される方向が、隣接する供給枝管間で相互に逆向きである、
請求項2に記載の藻類培養装置。
【請求項4】
前記複数の供給枝管の各々は、水平又は水平方向に対して斜め下方向に45°以下の角度で傾斜して前記供給主管に接合されている、
請求項2又は3に記載の藻類培養装置。
【請求項5】
前記複数の貫通孔は、前記供給主管の軸方向に沿って千鳥配列となるように配置されており、
前記培養液が前記複数の貫通孔から噴出される方向が、隣接する貫通孔間で相互に逆向きである、
請求項1に記載の藻類培養装置。
【請求項6】
前記培養槽から前記培養液を排出する排出管と、
前記排出管から排出される前記培養液を、前記供給主管に送出するポンプと、
を更に有し、
前記ポンプは前記培養槽に前記培養液を循環させる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の藻類培養装置。
【請求項7】
長手方向と短手方向とを有し、藻類の培養液を貯留する複数の培養槽と、
前記複数の培養槽の底部の近傍に前記複数の培養槽の前記長手方向に沿って配置された供給主管と、
前記供給主管の壁面に、前記供給主管の軸方向に沿って所定の間隔を有して形成され、前記培養槽に前記培養液を供給して前記培養槽の深さ方向に前記培養液の流れを形成する複数の貫通孔と、
前記複数の培養槽のそれぞれから前記培養液を排出する複数の排出管と、
前記複数の排出管から排出される前記培養液を、前記供給主管に送出するポンプと、
を有し、
前記培養液は、前記複数の貫通孔から噴出される前記培養液の噴流によって撹拌され、
前記培養液は、前記複数の貫通孔の各々から水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に前記培養槽の内壁に向けて噴出されて、太陽光を前記藻類の全体に満遍なく照射できるように前記内壁に沿って上昇する流れを形成
前記供給主管は、前記培養槽の前記長手方向の全長に渡って配置され、
前記複数の培養槽のうちの一の培養槽の前記供給主管の一端は他の培養槽の供給主管の一端に接続され、かつ前記一の培養槽の前記供給主管の一端から前記他の培養槽の前記供給主管の一端に前記培養液が供給されるように構成され、
前記複数の培養槽は、地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭を有する仮設基礎部の上に設置された支持体により支持される、
藻類培養装置。
【請求項8】
長手方向と短手方向とを有し、藻類の培養液を貯留する複数の培養槽と、
前記複数の培養槽の底部の近傍に前記複数の培養槽の前記長手方向に沿って配置された供給主管と、
前記供給主管と連通し、前記供給主管と垂直に配置され、前記培養槽に前記培養液を供給して前記培養槽の深さ方向に前記培養液の流れを形成する複数の供給枝管と、
前記複数の培養槽のそれぞれから前記培養液を排出する複数の排出管と、
前記複数の排出管から排出される前記培養液を、前記供給主管に送出するポンプと、
を有し、
前記培養液は、前記複数の供給枝管から噴出される前記培養液の噴流によって撹拌され、
前記培養液は、前記複数の供給枝管の各々から水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に前記培養槽の内壁に向けて噴出されて、太陽光を前記藻類の全体に満遍なく照射できるように前記内壁に沿って上昇する流れを形成
前記供給主管は、前記培養槽の前記長手方向の全長に渡って配置され、
前記複数の培養槽のうちの一の培養槽の前記供給主管の一端は他の培養槽の供給主管の一端に接続され、かつ前記一の培養槽の前記供給主管の一端から前記他の培養槽の前記供給主管の一端に前記培養液が供給されるように構成され、
前記複数の培養槽は、地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭を有する仮設基礎部の上に設置された支持体により支持される、
藻類培養装置。
【請求項9】
前記ポンプは、リバースリターン方式で前記複数の培養槽に前記培養液を循環させる、
請求項7又は8に記載の藻類培養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類培養装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、微細藻類に由来する脂質を利用したバイオ燃料である藻類オイルが注目されている。藻類オイルは、培養槽で藻類を培養し、遠心分離機で培養した藻類から水分を取り除き濃縮し、油分を抽出することで生産される。
【0003】
藻類を培養する培養槽としては、レースウェイポンド型培養槽が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。レースウェイポンド型培養槽では、藻類の成長を促進するために、パドル等の攪拌手段を用いて、水深が0.1m~0.3m程度の培養槽に貯留される培養液に水平方向の流れを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-23978号公報
【文献】特開2012-23979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の培養槽では、攪拌手段を用いて培養槽に貯留された培養液の全量を長い距離に渡って水平方向に動かすことから多大な動力が必要となる。そのため、エネルギー消費量が大きい。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、エネルギー消費量を低減することが可能な藻類培養装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る藻類培養装置は、長手方向と短手方向とを有し、藻類の培養液を貯留する培養槽と、前記培養槽の底部の近傍に前記培養槽の前記長手方向に沿って配置された供給主管と、前記供給主管の壁面に、前記供給主管の軸方向に沿って所定の間隔を有して形成され、前記培養槽に前記培養液を供給して前記培養槽の深さ方向に前記培養液の流れを形成する複数の貫通孔と、を有し、前記培養液は、前記複数の貫通孔から噴出される前記培養液の噴流によって撹拌され、前記培養液は、前記複数の貫通孔の各々から水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に前記培養槽の内壁に向けて噴出されて、太陽光を前記藻類の全体に満遍なく照射できるように前記内壁に沿って上昇する流れを形成前記供給主管は、前記培養槽の前記長手方向の全長に渡って配置され、前記培養槽の前記供給主管の一端は他の培養槽の供給主管の一端に接続可能であり、かつ前記培養槽の前記供給主管の一端から前記他の培養槽の前記供給主管の一端に前記培養液を供給可能に構成され、前記培養槽は、地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭を有する仮設基礎部の上に設置された支持体により支持される
【発明の効果】
【0008】
開示の藻類培養装置によれば、エネルギー消費量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1構成例に係る藻類培養装置の概略図
図2】第2構成例に係る藻類培養装置の概略図
図3】第3構成例に係る藻類培養装置の概略図
図4】第4構成例に係る藻類培養装置の概略図
図5】第5構成例に係る藻類培養装置の概略図
図6】培養槽の設置構造の一例を示す概略図
図7】培養槽の設置に用いられる鋼管ネジ杭を示す概略図
図8】培養槽の設置構造の別の例を示す概略図
図9】実施例及び比較例の藻類培養装置における軸動力を比較するための図(1)
図10】実施例及び比較例の藻類培養装置における軸動力を比較するための図(2)
図11】実施例及び比較例の藻類培養装置における軸動力を比較するための図(3)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
〔藻類培養装置〕
(第1構成例)
第1構成例の藻類培養装置について説明する。図1は、第1構成例に係る藻類培養装置の概略図である。図1(a)及び図1(b)は、それぞれ藻類培養装置の斜視図及び断面図である。
【0012】
図1に示されるように、第1構成例の藻類培養装置10は、培養槽12と、供給主管14と、排出管16と、送水ポンプ18と、を有する。
【0013】
培養槽12は、断面が略半円形状を有し、内部に藻類の培養液13を貯留する船形容器である。培養槽12は、繊維強化プラスチック(Fiber-Reinforced Plastics;FRP)、鋼板、鋼板製コルゲート管、厚手の塩化ビニルシート、樹脂製コルゲート管、金網、金属メッシュ等により形成される。培養槽12の深さは、特に限定されないが、例えば0.4m~1.2mの水深の培養液13を貯留できる深さとすることができる。培養槽12の幅は、特に限定されないが、汎用温室に設置可能であるという観点から、6m以下であること好ましい。藻類としては、細胞内に脂質を多く含んだ藻であれば特に限定されないが、燃料に適した炭化水素を大量につくる藻であることが好ましい。このような藻類としては、例えばボトリオコッカス、オーランチオキトリウム、イカダモ、ユーグレナ、スピルリナ、クロレラ等が挙げられる。
【0014】
供給主管14は、培養槽12の長手方向(図1のY方向)に沿って、一方の端面12aから他方の端面12bに延伸する配管である。供給主管14は、培養槽12の底部12cとの間に隙間を有して底部12cの近傍に配置されている。これにより、供給主管14を取り外すことなく、容易に培養槽12の清掃を行うことができる。供給主管14の一端は開口端であり、往管19aを介して送水ポンプ18に接続されている。供給主管14の他端は閉口端である。供給主管14の壁面には、供給主管14の軸方向(図1のY方向)に沿って所定の間隔を有して複数の貫通孔14aが形成されている。これにより、供給主管14の開口端から供給される藻類の培養液13は、複数の貫通孔14aから培養槽12の内部に供給される。また、複数の貫通孔14aの各々は、水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に培養液13を供給可能な位置に形成されている。そのため、複数の貫通孔14aから培養槽12の内部に供給される藻類の培養液13は、コアンダ効果によって、図1(a)及び図1(b)の矢印で示されるように、培養槽12の内壁に沿って上昇する流れを形成する。これにより、培養槽12に貯留された藻類の培養液13が効率的に攪拌される。そのため、攪拌手段を用いて培養液の全量を長い距離に渡って水平方向に動かして培養液の横流を形成するレースウェイポンド型培養槽と比較して、エネルギー消費量を低減できる。また、太陽光を藻類全体に満遍なく照射することができるので、培養液13の水深を深くして、培養槽12を設置するために必要な用地の面積を小さくすることができる。
【0015】
また、複数の貫通孔14aは、供給主管14の軸方向に沿って千鳥配列となるように形成されていることが好ましい。これにより、噴流を相互に干渉しないようにして、培養液13の攪拌効率を向上させることができる。
【0016】
なお、図1では、培養槽12の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の貫通孔14aを配置した場合の例を示しているが、複数の貫通孔14aの配置はこれに限定されない。複数の貫通孔14aは、培養槽12の深さ方向、例えば供給主管14から上方向又は斜め上方向に培養液13の流れを形成可能な位置であれば別の位置に形成されていてもよい。但し、培養槽12全体を効率よく攪拌できるという観点から、培養槽12の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の貫通孔14aを配置することが好ましい。
【0017】
排出管16は、培養槽12から培養液13を排出する配管である。排出管16の一端は培養槽12の長手方向に沿った壁面に接続されており、排出管16の内部は培養槽12の内部と連通している。排出管16の他端は、還管19bを介して送水ポンプ18に接続されている。
【0018】
送水ポンプ18は、供給主管14及び排出管16と接続されている。送水ポンプ18は、培養槽12から排出管16を介して排出される藻類の培養液13を供給主管14に送出し、培養槽12に供給することで、藻類の培養液13を循環させる。送水ポンプ18としては、ポンプ効率が高い汎用ポンプを用いることができる。
【0019】
(第2構成例)
第2構成例の藻類培養装置について説明する。図2は、第2構成例に係る藻類培養装置の概略図である。図2(a)及び図2(b)は、それぞれ藻類培養装置の斜視図及び断面図である。
【0020】
図2に示されるように、第2構成例の藻類培養装置20は、培養槽22の断面が三角形状である点で、第1構成例の藻類培養装置10と異なる。なお、その他の構成については、第1構成例と同様の構成とすることができる。
【0021】
第2構成例の藻類培養装置20においても、第1構成例と同様に、供給主管14の開口端から供給される藻類の培養液13は、複数の貫通孔14aから培養槽22の内部に供給される。また、複数の貫通孔14aの各々は、水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に培養液13を供給可能な位置に形成されている。そのため、複数の貫通孔14aから培養槽22の内部に供給される藻類の培養液13は、コアンダ効果によって、図2(a)及び図2(b)の矢印で示されるように、培養槽22の内壁に沿って上昇する流れを形成する。これにより、培養槽22に貯留された藻類の培養液13が効率的に攪拌される。そのため、攪拌手段を用いて培養槽に貯留された培養液の全量を長い距離に渡って動かす横流を形成するレースウェイポンド型培養槽と比較して、エネルギー消費量を低減できる。また、太陽光を藻類全体に満遍なく照射することができるので、培養液13の水深を深くして、培養槽22を設置するために必要な用地の面積を小さくすることができる。
【0022】
また、複数の貫通孔14aは、第1構成例と同様、供給主管14の軸方向に沿って千鳥配列となるように形成されていることが好ましい。これにより、噴流を相互に干渉しないようにして、培養液13の攪拌効率を向上させることができる。
【0023】
なお、図2では、培養槽22の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の貫通孔14aを配置した場合の例を示しているが、複数の貫通孔14aの配置はこれに限定されない。複数の貫通孔14aは、培養槽22の深さ方向、例えば供給主管14から上方向又は斜め上方向に培養液13の流れを形成可能な位置であれば別の位置に形成されていてもよい。但し、培養槽22全体を効率よく攪拌できるという観点から、培養槽22の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の貫通孔14aを配置することが好ましい。
【0024】
(第3構成例)
第3構成例の藻類培養装置について説明する。図3は、第3構成例に係る藻類培養装置の概略図である。図3(a)及び図3(b)は、それぞれ藻類培養装置の斜視図及び断面図である。
【0025】
図3に示されるように、第3構成例の藻類培養装置30は、培養槽32の断面が矩形状である点で、第1構成例の藻類培養装置10と異なる。なお、その他の構成については、第1構成例と同様の構成とすることができる。
【0026】
第3構成例の藻類培養装置30においても、第1構成例と同様に、供給主管14の開口端から供給される藻類の培養液13は、複数の貫通孔14aから培養槽32の内部に供給される。また、複数の貫通孔14aの各々は、水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に培養液13を供給可能な位置に形成されている。また、培養槽32の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように、培養槽32の幅や培養液13が供給される流速を設定してもよく、斜め上方向に培養液13が供給されるように複数の貫通孔14aを配置してもよい。これにより、複数の貫通孔14aから培養槽32の内部に供給される藻類の培養液13は、コアンダ効果によって、図3(a)及び図3(b)の矢印で示されるように、培養槽32の内壁に沿って上昇する流れを形成する。そのため、培養槽32に貯留された藻類の培養液13が効率的に攪拌される。その結果、攪拌手段を用いて培養槽に貯留された培養液の全量を長い距離に渡って動かす横流を形成するレースウェイポンド型培養槽と比較して、エネルギー消費量を低減できる。また、太陽光を藻類全体に満遍なく照射することができるので、培養液13の水深を深くして、培養槽32を設置するために必要な用地の面積を小さくすることができる。
【0027】
また、複数の貫通孔14aは、第1構成例と同様、供給主管14の軸方向に沿って千鳥配列となるように形成されていることが好ましい。これにより、噴流を相互に干渉しないようにして、培養液13の攪拌効率を向上させることができる。
【0028】
なお、図3では、培養槽32の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の貫通孔14aを配置した場合の例を示しているが、複数の貫通孔14aの配置はこれに限定されない。複数の貫通孔14aは、培養槽32の深さ方向、例えば供給主管14から上方向又は斜め上方向に培養液13の流れを形成可能な位置であれば別の位置に形成されていてもよい。但し、培養槽32全体を効率よく攪拌できるという観点から、培養槽32の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の貫通孔14aを配置することが好ましい。
【0029】
(第4構成例)
第4構成例の藻類培養装置について説明する。図4は、第4構成例に係る藻類培養装置の概略図である。図4(a)及び図4(b)は、それぞれ藻類培養装置の斜視図及び断面図である。
【0030】
図4に示されるように、第4構成例の藻類培養装置40は、供給主管14に複数の供給枝管15が合されている点で、第1構成例の藻類培養装置10と異なる。なお、その他の構成については、第1構成例と同様の構成とすることができる。
【0031】
供給枝管15は、供給主管14から培養槽12の内壁面に向かって延びるように接合されている。供給枝管15は、両端が開口端であり、一方の開口端が供給主管14に接合されることで、その内部が供給主管14の内部と連通する。これにより、供給主管14の開口端から供給される藻類の培養液は、複数の供給枝管15の他方の開口端から培養槽12の内部に供給される。このとき、供給枝管15を通ることにより、藻類の培養液13は、培養槽12の短手方向(図4のX方向)に方向付けされた流れとなって培養槽12の内部に供給される。また、供給枝管15は、水平又は水平方向に対して斜め下方向に45°以下の角度で傾斜して供給主管14に接合されており、水平方向又は水平方向から45°以下の斜め下方向に培養液13を供給可能に構成されている。そのため、図4(a)及び図4(b)に示されるように、第1構成例から第3構成例に係る藻類培養装置よりも効率的に培養槽12の内壁に沿って上昇する流れが形成される。その結果、培養槽12に貯留された藻類の培養液13の攪拌効率が特に向上する。
【0032】
また、複数の供給枝管15は、供給主管14の軸方向に沿って千鳥配列となるように接合されていることが好ましい。これにより、噴流を相互に干渉しないようにして、培養液13の攪拌効率を向上させることができる。
【0033】
なお、図4では、培養槽12の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の供給枝管15を配置した場合の例を示しているが、複数の供給枝管15の配置はこれに限定されない。複数の供給枝管15は、培養槽12の深さ方向、例えば供給主管14から上方向又は斜め上方向に培養液13の流れを形成可能な位置であれば別の位置に形成されていてもよい。但し、培養槽12全体を効率よく攪拌できるという観点から、培養槽12の内壁に沿って上昇する流れが形成されるように複数の供給枝管15を配置することが好ましい。
【0034】
なお、第4構成例の藻類培養装置についても、第2構成例及び第3構成例と同様に、培養槽12の断面を三角形状や矩形状とすることもできる。
【0035】
(第5構成例)
第5構成例の藻類培養装置について説明する。図5は、第5構成例に係る藻類培養装置の概略図である。
【0036】
図5に示されるように、第5構成例の藻類培養装置50は、直列に接続された複数(例えば4つ)の培養槽121,122,123,124を有する点で、第1構成例の藻類培養装置10と異なる。
【0037】
第5構成例の藻類培養装置50は、培養槽121,122,123,124と、供給主管141,142,143,144と、排出管161,162,163,164と、送水ポンプ18と、を有する。送水ポンプ18は、リバースリターン方式で4つの培養槽121,122,123,124に培養液13を循環させる。リバースリターン方式を採用することにより、4つの培養槽121,122,123,124に貯留される培養液13を同等に攪拌できる。
【0038】
培養槽121,122,123,124は、それぞれ前述した培養槽12,22,32のいずれかであってよい。
【0039】
供給主管141,142,143,144は、この順番に直列に接続されている。より具体的には、供給主管141の一端は往管19aを介して送水ポンプ18に接続され、他端は供給主管142の一端に接続されている。供給主管142の他端は、供給主管143の一端に接続されている。供給主管143の他端は、供給主管144の一端に接続されている。供給主管144の他端は閉口している。供給主管141,142,143,144の壁面には、それぞれ供給主管141,142,143,144の軸方向に沿って所定の間隔を有して複数の貫通孔141a,142a,143a,144aが形成されている。これにより、供給主管141の一端から供給される藻類の培養液13は、複数の貫通孔141a,142a,143a,144aから培養槽121,122,123,124の内部に供給される。このとき、複数の貫通孔141a,142a,143a,144aから培養槽121,122,123,124の内部に供給される藻類の培養液13は、コアンダ効果によって培養槽12の内壁に沿って上昇する流れを形成する。これにより、培養槽121,122,123,124に貯留された藻類の培養液13が効率的に攪拌される。そのため、攪拌手段を用いて培養液の全量を長い距離に渡って水平方向に動かして培養液の横流を形成するレースウェイポンド型培養槽と比較して、エネルギー消費量を低減できる。
【0040】
排出管161,162,163,164は、それぞれ培養槽121,122,123,124から培養液13を排出する配管である。排出管161,162,163,164の一端はそれぞれ培養槽121,122,123,124の長手方向に沿った壁面に接続されており、排出管161,162,163,164の内部はそれぞれ培養槽121,122,123,124の内部と連通している。排出管161,162,163,164の他端は、送水ポンプ18に接続されている。
【0041】
送水ポンプ18は、往管19aを介して供給主管141と接続され、還管19bを介して排出管161,162,163,164と接続されている。送水ポンプ18は、培養槽121,122,123,124から排出管161,162,163,164を介して排出される藻類の培養液13を供給主管141,142,143,144に送出し、培養槽121,122,123,124に供給する。これにより、藻類の培養液13が循環される。送水ポンプ18としては、ポンプ効率が高い汎用ポンプを用いることができる。
【0042】
このように、第5構成例の藻類培養装置50は、複数の培養槽を直列に接続することで、設置場所の面積等に応じて、培養槽の数を自在に変更し、容易に拡張できる。なお、第5構成例では、複数の培養槽の各々に供給主管が設けられている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されず、例えば複数の培養槽を貫通するように1つの供給主管が設けられていてもよい。1つの供給主管を採用することにより、部材点数を削減できる。
【0043】
〔培養槽の設置構造〕
次に、前述した培養槽の設置構造の一例について説明する。図6は、培養槽の設置構造の一例を示す概略図である。図6(a)及び図6(b)は地面に設置された培養槽の側面を示し、図6(c)は地面に設置された培養槽の上面を示す。なお、図6においては、培養槽に藻類の培養液13が貯留されていない状態を示す。図7は、培養槽の設置に用いられる鋼管ネジ杭を示す概略図である。図7(a)は鋼管ネジ杭の側面を示し、図7(b)は図7(a)の一点鎖線A-Aにおいて切断した断面を示す。
【0044】
図6に示されるように、培養槽の設置構造は、仮設基礎部72と、支持体74と、培養槽76と、を有する。
【0045】
仮設基礎部72は、所定間隔を有して地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭721を有する。鋼管ネジ杭721は、図7(b)に示されるように、ネジ面721aに複数(例えば4つ)の円孔721bを有する。これにより、鋼管ネジ杭721を地面に打ち込む際に土質を円孔721bから逃がすことができるので、鋼管ネジ杭721に回転力を与える治具のトルクを軽減できる。
【0046】
支持体74は、仮設基礎部72の上に設置されており、培養槽76を支持する。支持体74は、所定間隔を有して立設された複数の柱741と、複数の柱741を繋ぐように設けられた複数の梁742とを含むラーメン構造を有する構造体である。
【0047】
培養槽76は、支持体74に支持され、固定されている。培養槽76は、前述した培養槽12,22,32のいずれかであってよい。
【0048】
このように、培養槽の設置構造は、従来のコンクリート製又は鉄筋コンクリート製の培養槽を地中又は地上に設置する設置構造と異なり、仮設基礎部72及び支持体74を含む仮設足場により培養槽76を支持する。そのため、例えば培養槽76を農地に設置する場合、農地を原姿の状態で利活用できるので、農地転用が不要となり得る。
【0049】
次に、前述した培養槽の設置構造の別の例について説明する。図8は、培養槽の設置構造の別の例を示す概略図である。図8(a)及び図8(b)は、それぞれ地面に設置された培養槽の斜視図及び断面図である。なお、図8においては、培養槽に藻類の培養液13が貯留されていない状態を示す。
【0050】
図8に示されるように、培養槽の設置構造は、仮設基礎部82と、支持体84と、培養槽86と、を有する。
【0051】
仮設基礎部82は、第1方向(図8のY方向)に沿って所定間隔を有して地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭821aと、第1方向(図8のY方向)に沿って所定間隔を有して地面に打ち込まれた複数の鋼管ネジ杭821bと、を有する。複数の鋼管ネジ杭821aが配列する方向と、複数の鋼管ネジ杭821bが配列する方向とは、互いに平行となっている。鋼管ネジ杭821a,821bは、図7に示されるように、前述の鋼管ネジ杭721と同様の構成とすることができる。
【0052】
支持体84は、仮設基礎部82の上に設置されており、培養槽86を支持する。支持体84は、水平支持部材841a,841bと、垂直支持部材842a,842bと、補強部材843a,843bと、接続部材844と、を有する。
【0053】
水平支持部材841aと、複数の鋼管ネジ杭821aを跨ぐように第1方向に沿って取り付けられている。水平支持部材841bは、複数の鋼管ネジ杭821bを跨ぐように第1方向に沿って配置されている。水平支持部材841a,841bは、例えば軽量H形鋼である。
【0054】
垂直支持部材842aは、水平支持部材841aを構成する軽量H形鋼の上側フランジに取り付けられている。垂直支持部材842aは、水平支持部材841aを構成する軽量H形鋼の長手方向に沿って所定間隔を有して複数設けられている。垂直支持部材842bは、水平支持部材841bを構成する軽量H形鋼の上側フランジに取り付けられている。垂直支持部材842bは、水平支持部材841bを構成する軽量H形鋼の長手方向に沿って所定間隔を有して複数設けられている。垂直支持部材842a,842bは、例えばCT形鋼である。
【0055】
補強部材843aは、垂直支持部材842aを構成するCT形鋼のウェブに取り付けられており、CT形鋼を補強する。補強部材843bは、垂直支持部材842bを構成するCT形鋼のウェブに取り付けられており、CT形鋼を補強する。補強部材843a,843bは、例えば三角形状の平板である。
【0056】
接続部材844は、培養槽86の上面において、垂直支持部材842aを構成するCT形鋼の上端と垂直支持部材842bを構成するCT形鋼の上端とを接続する。接続部材844は、例えば平鋼である。
【0057】
培養槽86は、支持体84に支持され、固定されている。培養槽86は、前述した培養槽12,22,32のいずれかであってよい。
【0058】
このように、培養槽の設置構造は、従来のコンクリート製又は鉄筋コンクリート製の培養槽を地中又は地上に設置する設置構造と異なり、仮設基礎部82及び支持体84を含む仮設足場により培養槽86を支持する。そのため、例えば培養槽86を農地に設置する場合、農地を原姿の状態で利活用できるので、農地転用が不要となり得る。
【0059】
〔培養槽の設置例〕
本発明の実施形態に係る藻類培養装置の設置例について説明する。前述したように、本発明の実施形態に係る藻類培養装置は、設置場所に応じて複数の培養槽の接続数を自在に変更できる。そのため、風力に対する温室の構造強化と地耐力の関係から幅員寸法が定められている汎用温室への設置が容易である。藻類培養装置を汎用温室に設置することで、培養槽の水温が、気温や気象の変化、季節移行に伴う強制対流伝熱、日射による放射伝熱の影響を受けて変化することを抑制できる。そのため、培養槽に貯留される培養液の水温を藻類収穫量の温度依存性領域以上の温度に維持し、且つ降雨による培養槽の栄養塩希釈や培養液の溢れを防止できる。また、汎用温室を用いることができるので、農地転用が不要となり得る。
【0060】
〔効果〕
次に、本発明の実施形態に係る培養槽を用いたときの効果について、シミュレーションにより軸動力を算出することにより評価した。実施例では、第4構成例の藻類培養装置40を用いて、以下の条件でシミュレーションを行った。
【0061】
培養槽12の面積:599m
培養槽12の幅:6m
培養槽12の長さ:99.8m
供給主管14の内径:155.2mmφ
供給枝管15の内径:12.7mmφ
隣接する供給枝管15の間隔:3.8m
供給枝管15での流速:0.20m/秒、0.25m/秒、0.30m/秒
また、実施例の比較のため、比較例として実施例と同一の面積を有するレースウェイポンド型培養槽を用いて、以下の条件でシミュレーションを行った。
【0062】
培養槽の面積:599m
流速:0.20m/秒、0.25m/秒、0.30m/秒
図9から図11は、実施例及び比較例の藻類培養装置における軸動力を比較するための図である。図9図10、及び図11は、それぞれ流速が0.20m/秒、0.25m/秒,及び0.30m/秒であるときの水深(m)と軸動力(kW)との関係を示す。
【0063】
図9に示されるように、流速が0.20m/秒であるとき、培養槽に貯留される培養液の水深が0.6m以上の場合、実施例の藻類培養装置の軸動力は、比較例の藻類培養装置の軸動力よりも小さいことが分かる。即ち、流速が0.20m/秒であるとき、培養槽に貯留される培養液の水深が0.6m以上の場合、エネルギー消費量を低減できる。
【0064】
また、図10に示されるように、流速が0.25m/秒であるとき、培養槽に貯留される培養液の水深が0.4m以上の場合、実施例の藻類培養装置の軸動力は、比較例の藻類培養装置の軸動力よりも小さいことが分かる。即ち、流速が0.25m/秒であるとき、培養槽に貯留される培養液の水深が0.4m以上の場合、エネルギー消費量を低減できる。例えば、培養槽に貯留される培養液の水深が0.8mの場合、実施例の藻類培養装置の軸動力は4.1kWであり、比較例の藻類培養装置の軸動力7.57kWであった。
【0065】
また、図11に示されるように、流速が0.30m/秒であるとき、培養槽に貯留される培養液の水深が0.2m以上の場合、実施例の藻類培養装置の軸動力は、比較例の藻類培養装置の軸動力よりも小さいことが分かる。即ち、流速が0.30m/秒であるとき、培養槽に貯留される培養液の水深が0.2m以上の場合、エネルギー消費量を低減できる。
【0066】
図9から図11に示すシミュレーション結果により、本発明の実施形態の藻類培養装置を用いることで、レースウェイポンド型培養槽を用いる場合と比較して、エネルギー消費量を低減できることが確認できた。また、培養槽に貯留される培養液の水深が深くなるほど、本発明の実施形態に係る藻類培養装置により得られるエネルギー消費量の低減の効果が大きくなる。
【0067】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。
【0068】
例えば、上記の実施形態では、培養槽の断面が略半円形状、三角形状、矩形状である場合を例に挙げて説明したが、培養槽の形状はこれに限定されず、他の形状であっても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10,20,30,40,50 藻類培養装置
12,22,32 培養槽
13 培養液
14 供給主管
14a 貫通孔
15 供給枝管
16 排出管
18 送水ポンプ
図1
図2
図3
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図5
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