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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】トンネル支保工
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/22 20060101AFI20220930BHJP
【FI】
E21D11/22
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018017306
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019132100
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 省吾
(72)【発明者】
【氏名】松岡 馨
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実公昭39-037006(JP,Y1)
【文献】米国特許第02713774(US,A)
【文献】特開2000-303797(JP,A)
【文献】実開昭58-194298(JP,U)
【文献】特開2003-148091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/22
E21D 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの壁面に沿って配置されアーチ部を形成する支保工材と、前記支保工材が伸縮自在に滑動する継手部と、を有するトンネル支保工であって、
前記継手部は、
前記アーチ部の一方の端部から延びる2つの前記支保工材と他方の端部から延びる2つの前記支保工材の端部を交互に重ねて構成される、トンネル支保工。
【請求項2】
前記支保工材の断面形状は、
一方の面に凹部、他方の面に前記凹部に収まる突出部を有し、同一形状に形成されている、請求項1に記載のトンネル支保工。
【請求項3】
前記支保工材は
山形鋼から構成される、請求項1又は2に記載のトンネル支保工。
【請求項4】
前記アーチ部の両端は、
前記トンネルの底面に沿って配置されるインバート部に固定されている、請求項1~3の何れか1項に記載のトンネル支保工。
【請求項5】
前記アーチ部は、
前記トンネルの延びる方向に沿って複数配置され、
前記支保工材は、
前記トンネルが延びる方向において隣合う他の前記アーチ部の前記支保工材と、つなぎ部材により接続されている、請求項1~4の何れか1項に記載のトンネル支保工。
【請求項6】
前記つなぎ部材は、
前記トンネルが延びる方向に長さが変更可能に構成されている、請求項5に記載のトンネル支保工。
【請求項7】
トンネルの壁面に沿って配置されアーチ部を形成する支保工材と、前記支保工材が伸縮自在に滑動する継手部と、を有するトンネル支保工であって、
前記支保工材は、
前記アーチ部の一方の端部から延びる第1支保工材と、
前記アーチ部の他方の端部から延びる第2支保工材と、
前記第1支保工材に対し前記トンネルが延びる方向に間隔をおいて平行に配置された第3支保工材と、
前記第2支保工材に対し前記トンネルが延びる方向に間隔をおいて平行に配置された第4支保工材と、を含み、
前記第1支保工材と前記第3支保工材とは、
互いにつなぎ部材により接続され、第1セグメントを構成し、
前記第2支保工材と前記第4支保工材とは、
互いにつなぎ部材により接続され、第2セグメントを構成し、
前記第1セグメントと同じ構造の第3セグメントと、
前記第2セグメントと同じ構造の第4セグメントと、をさらに備え、
前記継手部は、
前記アーチ部の中央部において、前記第1セグメントの前記第1支保工材及び前記第2セグメントの前記第2支保工材の端部を平行に重ね、前記第2セグメントの前記第2支保工材が、前記第1セグメントの前記第1支保工材と前記第3セグメントの前記第3支保工材とに挟まれて重ねられ、前記第3セグメントの前記第3支保工材が、前記第2セグメントの前記第2支保工材と前記第4セグメントの前記第4支保工材とに挟まれて重ねられ、
前記第1セグメントの前記第1支保工材及び前記第3セグメントの前記第3支保工材と前記第2セグメントの前記第2支保工材及び前記第4セグメントの前記第4支保工材とは、前記アーチ部が互いに伸縮する方向に滑動するように構成される、トンネル支保工。
【請求項8】
前記第1支保工材、前記第2支保工材、前記第3支保工材、及び前記第4支保工材の断面形状は、
一方の面に凹部、他方の面に前記凹部に収まる突出部を有し、同一形状に形成されている、請求項に記載のトンネル支保工。
【請求項9】
前記つなぎ部材は、
前記第1支保工材の前記凹部、前記第2支保工材の前記凹部、前記第3支保工材の突出部、及び前記第4支保工材の突出部からそれぞれ突出して設けられ、
前記第1セグメントは、
前記第1支保工材に設けられた前記つなぎ部材と前記第3支保工材に設けられた前記つなぎ部材とを互いに固定して接続されて構成され、
前記第2セグメントは、
前記第2支保工材に設けられた前記つなぎ部材と前記第4支保工材に設けられた前記つなぎ部材とを互いに固定して接続されて構成される、請求項に記載のトンネル支保工。
【請求項10】
前記つなぎ部材は、
前記第1支保工材と前記第3支保工材との間隔及び前記第2支保工材と前記第4支保工材との間隔を変更可能に接続する、請求項に記載のトンネル支保工。
【請求項11】
前記つなぎ部材は、
当該つなぎ部材にそれぞれ形成された孔に通したボルトをナットにより締結して互いに固定される、請求項又は10に記載のトンネル支保工。
【請求項12】
前記孔は、
前記つなぎ部材に複数設けられている、請求項11に記載のトンネル支保工。
【請求項13】
前記アーチ部の両端は、
前記トンネルの底面に沿って配置されるインバート部に固定されている、請求項7~12の何れか1項に記載のトンネル支保工。
【請求項14】
前記第1支保工材、前記第2支保工材、前記第3支保工材、及び前記第4支保工材は、
山形鋼から構成される、請求項7~13の何れか1項に記載のトンネル支保工。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル支保工に関し、特に伸縮自在なトンネル支保工の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築する工法として、NATM工法(New Austrian Tunneling Method)が知られている。NATM工法は、地山が有する支保能力、強度を有効に利用してトンネルの安定を保つという考え方のもとに、吹付けコンクリート、ロックボルト、鋼製支保工等の支保材を適宜に用いて、地山と一体化したトンネル構造物を建設する工法である。
【0003】
NATM工法においてトンネルを構築する際に、トンネル内にアーチ形のトンネル支保工を設置する。その際に、トンネル支保工は、トンネルを開削した地山の変形により膨張土圧を受ける場合がある。トンネル支保工は、膨張土圧によりそのアーチ形の支保工材が圧縮する方向に荷重を受けるため、その荷重を受けても支保工材が座屈変形しないように継手部を設け可縮性を持たせるように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-303797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているトンネル支保工は、アーチ形の部分を、断面U形の両脚部材と断面U形の冠部材とを滑動可能に嵌合させて構成されている。そして、両脚部材と冠部材とは、倒ハット形サドルとUボルトとにより挟み込み締め付けられている。これにより、両脚部材と冠部材とは、所定の土圧荷重までは相対的に滑動せず、所定の土圧荷重を受けると相対的に滑動し始め、変位し、トンネルの膨張土圧を吸収する。しかし、特許文献1に開示されているトンネル支保工の場合、地山の膨張に合わせてトンネル支保工が可縮に構成されているが、地山が膨張した分だけトンネルを拡張した場合には、倒ハット形サドルとUボルトとにより締結された継手部分を再度緩めてトンネルに合わせる必要があり、修正に工数がかかるという課題があった。
【0006】
また、トンネル支保工は、トンネルの延びる方向に複数の支保工材を設置する必要があり、隣合う支保工材の高さ方向の位置を合わせながら設置する必要がある。特許文献1に開示されているトンネル支保工の場合、複数の独立した支保工材を位置を合わせながら設置しなければならず、設置に工数がかかるという課題があった。さらに、トンネル支保工を設置する地盤が軟弱な場合は、支保工材同士を接続するつなぎ材を追加して、支保工材が沈下するのを抑制する必要があり、設置する際に工数が多くかかるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、地山の膨張に対して対応でき、かつトンネルの延びる方向に複数の支保工材を設置する工数を抑えることができるトンネル支保工を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るトンネル支保工は、トンネルの壁面に沿って配置されアーチ部を形成する支保工材と、前記支保工材が伸縮自在に滑動する継手部と、を有するトンネル支保工であって、前記継手部は、前記アーチ部の一方の端部から延びる2つの前記支保工材と他方の端部から延びる2つの前記支保工材の端部を交互に重ねて構成される。
【0009】
本発明に係るトンネル支保工は、トンネルの壁面に沿って配置されアーチ部を形成する支保工材と、前記支保工材が伸縮自在に滑動する継手部と、を有するトンネル支保工であって、前記支保工材は、前記アーチ部の一方の端部から延びる第1支保工材と、前記アーチ部の他方の端部から延びる第2支保工材と、前記第1支保工材に対し前記トンネルが延びる方向に間隔をおいて平行に配置された第3支保工材と、前記第2支保工材に対し前記トンネルが延びる方向に間隔をおいて平行に配置された第4支保工材と、を含み、前記第1支保工材と前記第3支保工材とは、互いにつなぎ部材により接続され、第1セグメントを構成し、前記第2支保工材と前記第4支保工材とは、互いにつなぎ部材により接続され、第2セグメントを構成し、前記第1セグメントと同じ構造の第3セグメントと、前記第2セグメントと同じ構造の第4セグメントと、をさらに備え、前記継手部は、前記アーチ部の中央部において、前記第1セグメントの前記第1支保工材及び前記第2セグメントの前記第2支保工材の端部を平行に重ね、前記第2セグメントの前記第2支保工材が、前記第1セグメントの前記第1支保工材と前記第3セグメントの前記第3支保工材とに挟まれて重ねられ、前記第3セグメントの前記第3支保工材が、前記第2セグメントの前記第2支保工材と前記第4セグメントの前記第4支保工材とに挟まれて重ねられ、前記第1セグメントの前記第1支保工材及び前記第3セグメントの前記第3支保工材と前記第2セグメントの前記第2支保工材及び前記第4セグメントの前記第4支保工材とは、前記アーチ部が互いに伸縮する方向に滑動するように構成される
【発明の効果】
【0010】
上記の構成により、トンネル支保工は、地山が膨張して荷重がかかった場合においても、支保工材が追従して縮むことができるため、支保工材が座屈して破損するのを抑制しつつ、トンネル内に設置できる。また、トンネル支保工は、トンネルが延びる方向の支保工材の間隔を調整することにより、地山の状況に応じた支保工材の設置間隔を設定するとともに、組立易さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るトンネル支保工の全体構造を説明する斜視図である。
図2】実施の形態1に係るトンネル支保工のアーチ部を上から見た模式図である。
図3図2のアーチ部のA-A断面を示す図である。
図4図3の継手部の拡大斜視図である。
図5】実施の形態1に係るトンネル支保工をトンネル内に設置した状態を説明する模式図である。
図6】実施の形態1に係るトンネル支保工の設置手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、トンネル支保工の実施の形態について説明する。なお、図面の形態は一例であり、本発明を限定するものではない。また、各図において同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。さらに、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。各図において符号に添え字が付いているもの(例えば11a等)に関しては、以下の説明にて符号に添え字をつけていない場合(例えば11等)は、符号に添え字が付いているものを総称するものとする。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るトンネル支保工100の全体構造を説明する斜視図である。図1は、トンネル支保工の各部の詳細構造については省略して表示している。実施の形態1に係るトンネル支保工100は、トンネルが延びる方向に、アーチ部50とインバート部40とを結合させた支保工体10を複数並べられて構成されている。図1においては、一例として3つの支保工体10が並べられ、支保工体10間は、つなぎ部30及びインバート接続部材41により接続されている。トンネル支保工100は、さらに多くの支保工体10を並べて構成されてもよい。
【0014】
トンネル支保工100は、新オーストリアトンネル工法(NATM:New Austria Tunneling Method)により掘削された、例えば山岳部のトンネル内に設置され、トンネル内の壁面からの肌落ちから作業者を保護する。これにより、トンネル設置作業時の作業者の安全性が向上する。
【0015】
アーチ部50は、掘削されたトンネルの上部のアーチ形形状の壁面に沿って配置される部分である。インバート部40は、トンネルの底面に沿って配置される部分である。アーチ部50とインバート部40とは、端部にてボルト及びナット、又は溶接などの接合手段により結合され、支保工体10を構成している。インバート部40は、トンネルの底部に配置され、打設されたコンクリート等により覆われトンネルの底部の補強構造となるものである。
【0016】
アーチ部50は、複数の支保工材11から構成されている。また、アーチ部50の中央部には継手部20が形成されている。継手部20は、アーチ部50を構成する複数の支保工材11が互いに滑動し、アーチ部50が伸縮自在になるように構成されている。このように構成されることにより、トンネル支保工100は、地山膨張によりトンネルの壁面からアーチ部50に荷重が掛かった際に、アーチ部50が縮む。従って、地山から荷重がかかってもトンネル支保工100のアーチ部50は、支保工材11の座屈等により破損するのを抑制できる。また、地山膨張によりトンネルをさらに拡大して掘削する場合においても、拡大後のトンネル壁面に合わせてアーチ部50を伸ばすことが可能である。これにより、トンネル支保工100を再度設置する作業が減少する。
【0017】
図2は、実施の形態1に係るトンネル支保工100のアーチ部50を上から見た模式図である。図3は、図2のアーチ部50のA-A断面を示す図である。図2は、一例として4つの支保工体10が並べられている状態を示している。図2に示されているトンネル支保工100は、6つのセグメント60A~60Fを組み合わせて構成されている。
【0018】
(第1セグメント60A)
図2においてトンネル支保工100を構成しているセグメント60A~60Fのうち、第1セグメント60Aの構造について説明する。第1セグメント60Aは、2つの支保工材11に取り付けられているつなぎ部材31同士を接続して形成されている。図3に示されるように、支保工材11は、断面がL字形に形成されている山形鋼である。ただし、支保工材11は、山形鋼にのみ限定されるものではなく、一方の面が突出部で他方の面が凹部で構成され、突出部が凹形状に嵌るような断面形状を有する材料で構成されていてもよい。実施の形態1においては、山形鋼を用いることにより支保工材11を安価に製作できる。また、支保工材11は、図1に示される様に長手方向にアーチ状に曲げられて形成されている。なお、各セグメント60A~60Fを構成する支保工材11の断面は、全て同一形状である。
【0019】
図3に示される様に、第1セグメント60Aは、第1支保工材11aと第3支保工材11cとを平行に並べて形成されており、その間は第1支保工材11a及び第3支保工材11cのそれぞれから突出したつなぎ部材31同士を接続して構成される。つなぎ部材31は、第1支保工材11a及び第3支保工材11cのそれぞれに2箇所取り付けられているが、1箇所又は3箇所以上設けられていてもよい。
【0020】
また、第1支保工材11aと第3支保工材11cとの間隔は、変更することができる。実施の形態1において、つなぎ部材31には、3箇所の孔34が設けられている。第1支保工材11aに設けられたつなぎ部材31と第2支保工材11bに設けられたつなぎ部材31とに設けられた孔34にボルト32を通し、ナット33をボルト32に螺合させて締結して接続される。なお、孔34は、3箇所に限定されるものではない。つなぎ部30の長さを調整出来れば、孔34は、単数でも複数設けてもよい。
【0021】
(第2セグメント60B)
図2においてトンネル支保工100を構成しているセグメント60A~60Fのうち、第2セグメント60Bの構造について説明する。第2セグメント60Bは、第1セグメント60Aと対になっており、第1セグメント60Aがアーチ部50の一方の端部を形成し、第2セグメント60Bがアーチ部50の他方の端部を形成する。
【0022】
第2セグメント60Bも、第1セグメント60Aと同様に2つの支保工材11に取り付けられているつなぎ部材31同士を接続して形成されている。第2セグメント60Bは、第2支保工材11bと第4支保工材11dとを平行に並べて形成されており、その間は第2支保工材11b及び第4支保工材11dのそれぞれから突出したつなぎ部材31同士を接続して構成される。第2セグメント60Bにおいてつなぎ部材31同士の接続は、第1セグメント60Aと同様であり、第2支保工材11bと第4支保工材11dとの間隔は、変更することができる。
【0023】
第2セグメント60Bを構成する第2支保工材11bは、第1セグメント60Aの第1支保工材11aと重ね合わせられる。つまり、第2支保工材11bは、第1支保工材11aと断面形状が同じである。また、第4支保工材11dは、第1セグメント60Aの第3支保工材11cと重ね合わせられる。つまり、第4支保工材11dは、第3支保工材11cと断面形状が同じである。
【0024】
(第3セグメント60C及び第4セグメント60D)
第3セグメント60Cは、第1セグメント60Aと同じ構造である。第4セグメント60Dは、第2セグメント60Bと同じ構造である。従って、第3セグメント60Cの第1支保工材11aと第4セグメント60Dの第3支保工材11cとは、重ね合わせられる。また、第3セグメント60Cの第3支保工材11cと第4セグメント60Dの第4支保工材11dも重ね合わせられる。図2に示される様に、掘削されたトンネル内に第1セグメント60Aと第2セグメント60Bとが対に組み合わせて配置され、さらにトンネルが延びる方向に並ぶように第3セグメント60Cと第4セグメント60Dとが対に組み合わせて配置されている。以降、図2において、セグメント60E及びセグメント60Fがトンネルが延びる方向に並べて配置されているが、セグメント60Eは第1セグメント60Aと同一の構造であり、セグメント60Fは第2セグメント60Bと同一の構造である。
【0025】
(継手部20)
継手部20は、各セグメント60A~60Fを組み合わせた部分に形成される。まず、第1セグメント60A、第2セグメント60B、第3セグメント60C、及び第4セグメント60Dにより形成されている継手部20Aについて説明する。
【0026】
継手部20Aは、第1セグメント60Aの第1支保工材11a、第2セグメント60Bの第2支保工材11b、第3セグメント60Cの第3支保工材11c、及び第4セグメント60Dの第4支保工材11dから形成される。まず、第1セグメント60Aの第1支保工材11aのアーチ部50の中央側端部12aに、第2セグメント60Bの第2支保工材11bのアーチ部50の中央側端部12bが重ねられる。第1支保工材11aと第2支保工材11bとは、第1支保工材11aの突出部が第2支保工材11bの凹部に嵌るように配置されている。図2においては、中央側端部12aと中央側端部12bとは、支保工材11の長手方向が平行になるように重ねられており、アーチ部50が伸縮する場合は互いに滑動するようになっている。
【0027】
また、第2セグメント60Bの第2支保工材11bの中央側端部12bの突出部側には、第3セグメント60Cの第3支保工材11cの中央側端部12cが重ねられる。第2支保工材11bと第3支保工材11cとは、第2支保工材11bの突出部が第3支保工材11cの凹部に嵌るように配置されている。図2においては、中央側端部12bと中央側端部12cとは、支保工材11の長手方向が平行になるように重ねられており、アーチ部50が伸縮する場合は互いに滑動するようになっている。さらに、第3セグメント60Cの第3支保工材11cの中央側端部12cの突出部側には、第4セグメント60Dの第4支保工材11dの中央側端部12dが重ねられる。第3支保工材11cと第4支保工材11dとは、第3支保工材11cの突出部が第4支保工材11dの凹部に嵌るように配置されている。図2においては、中央側端部12cと中央側端部12dとは、支保工材11の長手方向が平行になるように重ねられており、アーチ部50が伸縮する場合は互いに滑動するようになっている。
【0028】
図4は、図3の継手部20Aの拡大斜視図である。図4においては、継手部20Aの周辺を切り取った形で示されている。継手部20Aは、アーチ部50の一方の端部51aから延びる2つの支保工材11a、11cとアーチ部50の他方の端部51bから伸びる2つの支保工材11b、11dの中央側端部12a、12b、12c、12d同士を交互に重ねて構成されている。
【0029】
つまり、継手部20Aは、第1支保工材11aの中央側端部12aと第3支保工材11cの中央側端部12cとの間に第2支保工材11bの中央側端部12bが挟まれている。そして、継手部20Aは、第2支保工材11bの中央側端部12bと第4支保工材11dの中央側端部12dとの間に第3支保工材11cの中央側端部12cが挟まれている。このように構成されることにより、トンネル支保工100のアーチ部50の継手部20Aは、アーチ部50の一方の端部50aから延びる支保工材11a、11cとアーチ部50の他方の端部50bから延びる支保工材11b、11dとが互いに滑動できるように組み合わされる。よって、継手部20Aは、支保工材11の長手方向に伸縮自在に構成され、トンネルが地山の膨張により狭くなり、トンネルの壁面から支保工材11を圧縮する荷重が掛かった際でも支保工材11が座屈等により破損するのを抑制することができる。
【0030】
(インバート固定部42)
図1において、アーチ部50の両端はインバート固定部42であり、インバート部40の端部とアーチ部50を形成する支保工材11とが接続されている。インバート部40と支保工材11とは、ボルト及びナットを用いて接続するか、又は溶接により接続しても良い。また、図1において、1つの支保工体10のアーチ部50は、4つの支保工材11から構成されており、アーチ部50の一方の端部51a及び他方の端部51bはそれぞれ2つの支保工材11により構成されている。従って、インバート部40は、アーチ部50の一方の端部51a及び他方の端部51bにおいてそれぞれ2つの支保工材11に接続される。インバート部40は、2つの部材により構成されていてもよいし、1つの部材の両端において、2つの支保工材11と接続されてもよい。
【0031】
図1において、1箇所のインバート部40が2つの部材から構成される場合、図2における各セグメント60A~60Fを構成する第1支保工材11aと第2支保工材11bとがインバート部40を構成する1つの部材の両端に固定される。また、第3支保工材11cと第4支保工材11dとがインバート部40を構成する1つの部材に固定される。従って、例えば、図2の第1セグメント60Aと第2セグメント60Bとは、アーチ部50の端部においてインバート部40を構成する部材により接続されて、一体になっている。図2の第3セグメント60Cと第4セグメント60Dとも同様に一体になっている。また、例えば第1セグメント60Aに取り付けられているインバート部40は、第1支保工材11aと第2支保工材11bとに固定されているものと、第3支保工材11cと第4支保工材11dとに固定されているものの2つがある。その第1セグメント60aに取り付けられている2つのインバート部40は、図1に示されている様にインバート接続部材41により接続されている。このように構成されることにより、第1セグメント60aに取り付けられたインバート部40が軟弱な地盤に沈下するのを抑制する効果が得られる。
【0032】
(トンネル支保工100の設置方法)
図5は、実施の形態1に係るトンネル支保工100をトンネル90内に設置した状態を説明する模式図である。図6は、実施の形態1に係るトンネル支保工100の設置手順を説明する図である。図5は、トンネル90が延びる方向に平行な断面をとった図であり、継手部20を含む断面を示している。
【0033】
図6(a)に示される様に、まず第1セグメント60Aをトンネル90内に設置する。その後に第1セグメント60Aの第3支保工材11c及び第2セグメント60Bの第4支保工材11dに重ね、第1セグメント60Aの第1支保工材11a及び第2セグメント60Bの第2支保工材11bを重ねるようにして第2セグメント60Bを設置する。図5に示される様に、第1セグメント60Aの第3支保工材11cの突出部が第2セグメント60Bの第4支保工材11dの凹部に嵌り、第1セグメント60Aの第1支保工材11aの突出部が第2セグメント60Bの第2支保工材11bの凹部に嵌るように、第2セグメント60Bが設置される。支保工材11は、断面形状が全て同様に形成されているため、第1セグメント60Aの支保工材11a、11cの突出部を第2セグメント60Bの支保工材11b、11dの凹部に嵌るようにして、第1セグメント60Aと第2セグメント60Bとの位置合わせが容易になるという利点がある。
【0034】
図6(b)に示される様に、次に第3セグメント60Cを設置する。第3セグメント60Cは、第1セグメント60Aと同一構造である。図5に示される様に、第3セグメント60Cは、第3セグメント60Cの第3支保工材11cの凹部が第2セグメント60Bの第2支保工材11bの突出部に嵌るように設置される。また、第3セグメント60Cの第3支保工材11cと第1セグメント60Aの第1支保工材11aとは、支保工材11の板厚一枚分の隙間は空いているが、アーチ部50の中央部から端部51aにわたって嵌まりあっているため、第3セグメント60Cは既に設置されている第1セグメント60A及び第2セグメント60Bに対し精度良く設置することができる。
【0035】
図6(c)に示される様に、次に第4セグメント60Dを設置する。第4セグメント60Dは、第2セグメント60Bと同一構造である。図5に示される様に、第4セグメント60Dは、第4セグメント60Dの第4支保工材11dの凹部が第3セグメント60Cの第3支保工材11cの突出部に嵌るように設置される。また、第4セグメント60Dの第4支保工材11dと第2セグメントの第2支保工材11bとは、支保工材11の板厚一枚分の隙間は空いているが、アーチ部50の中央部から端部51aにわたって嵌りあっているため、第4セグメント60Dも既に設置されている、第1セグメント60A、第2セグメント60B、及び第3セグメント60Cに対し精度良く設置することができる。
【0036】
以上の様に、実施の形態1のトンネル支保工100は、第1セグメント60A~第4セグメント60Dまでを配置することにより形成されるが、実際には更に多くのセグメント60をトンネル90が延びる方向に順次配置して形成される。上記の第1セグメント60A~第4セグメント60Dまでを配置した後は、再度第3セグメント60C及び第4セグメント60Dを配置する工程を繰り返すことにより、トンネル支保工100を更に長く延ばすことができる。
【0037】
実施の形態1に係るトンネル支保工100によれば、上記に説明した構成を備えることにより、トンネルを掘削した地山の膨張があっても継手部20を備えることにより、アーチ部50を形成する支保工材11が座屈する等の破損を抑えることができる。また、トンネル支保工100は、各セグメント60を組み合わせて構成されることにより、継手部20を形成するとともに、既に設置されているセグメント60に新たに設置するセグメント60を位置合わせし易く、設置の際の位置合わせ工数を低減させることができる。また、継手部20にボルト等を使用せずに組み立てることができ、継手部20を形成するにあたり組立て工数が掛からず、トンネル支保工100の設置が容易になる。
【0038】
また、実施の形態1に係るトンネル支保工100は、各セグメント60を構成する支保工材11同士をつなぎ部30で接続している。言い換えると、トンネルが延びる方向において隣合うアーチ部50同士は、支保工材11がつなぎ部30により接続されている。つなぎ部30は、長さを変えることができるため、地山の地盤状況に応じて各セグメント60の支保工材11間の距離を変動させることができる。従って、地山の地盤が軟弱な場合は、支保工材11間の間隔を狭くする等の対応が可能となり、トンネル支保工100を様々な地盤に形成されたトンネル90に適用することができる。
【0039】
実施の形態1に係るトンネル支保工100は、つなぎ部30及びインバート接続部材41を備え、さらに各セグメント60同士が支保工材11を嵌め合わせることにより接続される。この構成により、トンネル支保工100を構成する各セグメント60同士が相対的にずれにくく、各セグメント60が軟弱な地盤に沈下するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 支保工体、11 支保工材、11a (第1)支保工材、11b (第2)支保工材、11c (第3)支保工材、11d (第4)支保工材、12a 中央側端部、12b 中央側端部、12c 中央側端部、12d 中央側端部、20 継手部、20A 継手部、30 つなぎ部、31 つなぎ部材、32 ボルト、33 ナット、34 孔、40 インバート部、41 インバート接続部材、42 インバート固定部、50 アーチ部、50a 端部、50b 端部、51a 端部、51b 端部、60 セグメント、60A (第1)セグメント、60B (第2)セグメント、60C (第3)セグメント、60D (第4)セグメント、60E セグメント、60F セグメント、90 トンネル、100 トンネル支保工。
図1
図2
図3
図4
図5
図6