(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】トンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ
(51)【国際特許分類】
B02C 1/02 20060101AFI20220930BHJP
E21F 17/00 20060101ALI20220930BHJP
E21D 9/00 20060101ALI20220930BHJP
E21D 19/00 20060101ALI20220930BHJP
B02C 21/02 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B02C1/02 A
E21F17/00
E21D9/00 C
E21D19/00
B02C21/02
(21)【出願番号】P 2018071576
(22)【出願日】2018-04-03
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】594036135
【氏名又は名称】株式会社東宏
(73)【特許権者】
【識別番号】594145297
【氏名又は名称】タグチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 廉樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 一生
(72)【発明者】
【氏名】本田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】上野 博務
(72)【発明者】
【氏名】福田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】谷川 学
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169514(JP,A)
【文献】特開平05-263599(JP,A)
【文献】特開2017-036552(JP,A)
【文献】特開2001-300342(JP,A)
【文献】特開2005-54364(JP,A)
【文献】実開昭57-119896(JP,U)
【文献】特開2012-202092(JP,A)
【文献】特開2014-231723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0272402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00 - 7/18
15/00 - 17/24
9/00 - 11/08
19/00 - 25/00
E21D 1/00 - 9/14
11/00 - 19/06
23/00 - 23/26
E21F 1/00 - 17/18
E21D 10/00 - 19/06
23/00 - 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラッシャコンベアを有し坑口側に配置される前部と、クラッシャホッパを有し切羽側に配置される後部と有する車体と、
前記車体の後部から切羽側に突出するビームと、
前記ビームにトンネルの高さ方向の中間部で水平旋回可能に設けられた旋回アームと、
前記旋回アームを旋回させる旋回駆動部と、
前記旋回アームに取着され、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、空気が圧入されることで膨張展開しトンネル断面を閉塞するトンネル断面開閉用袋体と、
前記車体に設けられ前記トンネル断面開閉用袋体に空気を圧入するコンプレッサ
とを備え、
前記旋回駆動部は切羽側に位置する前記ビームの後部に設けられ、
前記旋回アームは、前記旋回駆動部で支持された支持部材の上部に設けられている、
ことを特徴とするトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ。
【請求項2】
前記旋回アームは、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記旋回アームの両端と前記トンネル壁面との間に所定の距離が確保される長さで形成され、
前記トンネル断面開閉用袋体は、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記旋回アームの下方に位置する空間を閉塞可能な中央下部袋体と、前記旋回アームの上方に位置する空間を閉塞可能な上部袋体と、前記旋回アームの側方で前記中央下部袋体および前記上部袋体で閉塞されていない残りの空間を閉塞する一対の側部袋体とを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ。
【請求項3】
前記上部袋体は、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記アームの上方に位置する空間および前記アームの両端から突出し両側のトンネル壁面に交差する前記アームの仮想延長線よりも上方に位置する空間とを閉塞可能に形成され、
前記一対の側部袋体は、前記アームの側方で前記仮想延長線の下方に位置する空間を閉塞可能に形成されている、
ことを特徴とする請求項2記載のトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ。
【請求項4】
前記上部袋体は、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記アームの上方に位置する空間を閉塞可能に形成され、
前記一対の側部袋体は、膨張展開した前記中央下部袋体の両側方に位置する空間と、膨張展開した前記上部袋体の両側方に位置する空間を閉塞可能に形成されている、
ことを特徴とする請求項2記載のトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ。
【請求項5】
前記中央下部袋体は、前記旋回アームに取着され下方に膨張展開可能で膨張展開した状態でトンネル床面との間に所定の隙間が確保される袋体本体と、膨張展開された袋体本体の下部に取着され前記袋体本体の下縁とトンネル床面との間を閉塞する可撓可能な片体とを備え、
前記中央下部袋体は、前記袋体本体が常時膨張展開されて使用される、
ことを特徴とする請求項2~4の何れか1項記載のトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ。
【請求項6】
前記トンネル断面開閉用袋体によるトンネル断面の開放時、前記旋回アームは前記車体の前後方向に沿って延在している、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ。
【請求項7】
前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、トンネル断面を閉塞する膨張展開した前記トンネル断面開閉用袋体は、クラッシャホッパを含む前記車体の後部よりも切羽側に離れた箇所に位置している、
ことを特徴とする請求項1~
6の何れか1項記載のトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事において切羽を発破掘削する場合、発破で生じた飛び石が周囲に飛散するため、飛び石によるトンネル内の設備の損傷を防止し、また、作業員の安全を確保する対策が必要である。上記トンネル内の設備として、掘削ずりを運搬するホイールローダ、ホイールローダによって運搬された掘削ずりを破砕するクラッシャ、テールピース台車などが挙げられる。
特許文献1には、トンネルの切羽から離間した箇所にトンネル断面と相似形に形成された壁状の防護用袋体を設ける技術が提案されている。
防護用袋体は合成樹脂製の布地で形成され、その内部に連通する通気管を介して送風機から送風することで防護用袋体を膨張させて自立させ、防護用袋体の上部、側部、下部をそれぞれトンネルの天井面、側面、床面に密着させることでトンネル断面の全域を閉塞するように構成されている。
このような防護用袋体は次のように使用される。
すなわち、発破作業に先立って切羽とトンネル内の設備との間に防護用袋体を設置して膨張展開させてトンネル断面を閉塞し、膨張展開した防護用袋体によってトンネル断面の閉塞した状態で切羽の発破作業を実行する。
これにより発破によって発生した飛び石は、膨張展開した防護用袋体によって遮られ抗口側への飛散が防止される。
発破作業の終了後は、防護用袋体の通気管を開放して内部の空気を抜き、防護用袋体を収縮させ折り畳んで収納し、トンネル断面を開放する。そして、ホイールローダによって掘削ずりをクラッシャへ運搬し、クラッシャから排出された掘削ずりをテールピース台車、連続ベルトコンベアによって抗口へ搬送する。
掘削ずりのクラッシャへの運搬が終了し、次回の発破作業の準備ができたならば、防護用袋体や送風機を切羽の近傍へ搬送し、防護用袋体を設置して膨張展開させてトンネル断面を閉塞する。このような一連の作業を切羽の発破作業毎に繰り返して行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、発破作業毎に防護用袋体および送風機の運搬、収納を行なう必要があり、作業が煩雑で手間がかかるものとなっており、トンネル掘進作業の効率化を図る上で改善の余地がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであり、その目的は、発破で生じた飛び石によるトンネル内の設備の損傷を防止すると共に作業員の安全を確保しつつ、トンネル掘進作業の効率を高める上で有利なトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、クラッシャコンベアを有し坑口側に配置される前部と、クラッシャホッパを有し切羽側に配置される後部と有する車体と、前記車体の後部から切羽側に突出するビームと、前記ビームにトンネルの高さ方向の中間部で水平旋回可能に設けられた旋回アームと、前記旋回アームを旋回させる旋回駆動部と、前記旋回アームに取着され、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、空気が圧入されることで膨張展開しトンネル断面を閉塞するトンネル断面開閉用袋体と、前記車体に設けられ前記トンネル断面開閉用袋体に空気を圧入するコンプレッサとを備え、前記旋回駆動部は切羽側に位置する前記ビームの後部に設けられ、前記旋回アームは、前記旋回駆動部で支持された支持部材の上部に設けられていることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記旋回アームは、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記旋回アームの両端と前記トンネル壁面との間に所定の距離が確保される長さで形成され、前記トンネル断面開閉用袋体は、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記旋回アームの下方に位置する空間を閉塞可能な中央下部袋体と、前記旋回アームの上方に位置する空間を閉塞可能な上部袋体と、前記旋回アームの側方で前記中央下部袋体および前記上部袋体で閉塞されていない残りの空間を閉塞する一対の側部袋体とを含んで構成されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記上部袋体は、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記アームの上方に位置する空間および前記アームの両端から突出し両側のトンネル壁面に交差する前記アームの仮想延長線よりも上方に位置する空間とを閉塞可能に形成され、前記一対の側部袋体は、前記アームの側方で前記仮想延長線の下方に位置する空間を閉塞可能に形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、前記上部袋体は、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、前記アームの上方に位置する空間を閉塞可能に形成され、前記一対の側部袋体は、膨張展開した前記中央下部袋体の両側方に位置する空間と、膨張展開した前記上部袋体の両側方に位置する空間を閉塞可能に形成されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、前記中央下部袋体は、前記旋回アームに取着され下方に膨張展開可能で膨張展開した状態でトンネル床面との間に所定の隙間が確保される袋体本体と、膨張展開された袋体本体の下部に取着され前記袋体本体の下縁とトンネル床面との間を閉塞する可撓可能な片体とを備え、前記中央下部袋体は、前記袋体本体が常時膨張展開されて使用されることを特徴とする。
請求項6記載の発明は、前記トンネル断面開閉用袋体によるトンネル断面の開放時、前記旋回アームは前記車体の前後方向に沿って延在していることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、前記旋回アームがトンネルの幅方向に延在した姿勢で、トンネル断面を閉塞する膨張展開した前記トンネル断面開閉用袋体は、クラッシャホッパを含む前記車体の後部よりも切羽側に離れた箇所に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、トンネル断面開閉用袋体装置がクラッシャに設けられているため、発破で生じた飛び石によるトンネル内の設備の損傷を防止すると共に作業員の安全を確保できることは無論のこと、従来のように、切羽の発破作業毎にトンネル断面開閉用袋体、送風機などを運搬する、収納するといった煩雑な作業を省略でき、トンネルの掘進作業の効率化を図る上で有利となる。
また、旋回アームおよびトンネル断面開閉用袋体をクラッシャに干渉させずに車体に簡単に配置する上で有利となる。
請求項2記載の発明によれば、トンネル断面を簡単に確実に閉塞する上で有利となる。また、トンネル断面開閉用袋体から空気を抜き取って収縮させることで、トンネル壁面に干渉することなく旋回アームを簡単に旋回できる。
請求項3、4記載の発明によれば、トンネルの幅方向に延在した旋回アームを、クラッシャの車体の前後方向に簡単に旋回でき、トンネルの掘削効率を高める上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、発破作業により発生する飛び石が袋体本体の下縁とトンネル床面との間の隙間から抗口側に飛散することを防止する上で有利となる。また、袋体本体が膨張展開した状態で旋回アームを旋回させても片体がトンネル床面上を移動するため、大きな抵抗とならず、袋体本体を常時膨張展開した状態で使用する上で有利となる。また、トンネル断面の閉塞状態と開放状態とを迅速に形成でき、トンネルの掘削効率を高める上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、トンネル断面の開放時に、旋回アームおよびトンネル断面開閉用袋体をホイールローダなどの作業車両の邪魔にならない箇所に配置することが可能となり、トンネルの掘削効率を高める上で有利となる。
請求項7記載の発明によれば、発破で生じた飛び石によるトンネル内のクラッシャを含む設備の損傷を防止する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施の形態のトンネル断面開閉用袋体装置を備えたクラッシャの側面図である。
【
図2】トンネル断面開閉用袋体が収縮しトンネル断面を開放した状態を切羽側から見た正面図である。
【
図3】トンネル断面開閉用袋体が収縮しトンネル断面を開放した状態をクラッシャの側方から見た側面図である。
【
図4】トンネル断面開閉用袋体が収縮しトンネル断面を開放した状態をクラッシャの上方から見た平面図である。
【
図5】トンネル断面開閉用袋体が膨張しトンネル断面を閉塞した状態を切羽側から見た正面図である。
【
図6】トンネル断面開閉用袋体が膨張しトンネル断面を閉塞した状態をクラッシャの側方から見た側面図である。
【
図7】トンネル断面開閉用袋体が膨張しトンネル断面を閉塞した状態をクラッシャの上方から見た平面図である。
【
図8】第2の実施の形態においてトンネル断面開閉用袋体が膨張しトンネル断面を閉塞した状態を切羽側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、切羽の発破掘削に伴って生じた飛び石から設備の損傷を防止するトンネル断面開閉用袋体装置10がクラッシャ12に設けられている。
クラッシャ12は、クローラ走行体1202により走行可能な車体1204を有している。
車体1204の後部1204Bに、掘削ずりが投入されるクラッシャホッパ1206が設けられ、車体1204にクラッシャホッパ1206に投入された掘削ずりを破砕する破砕部1208が設けられ、車体1204の前部1204Aに破砕部1208で破砕された掘削ずりを搬送するクラッシャコンベア1210が設けられている。
【0009】
トンネル断面開閉用袋体装置10は、旋回アーム14と、旋回駆動部16と、トンネル断面開閉用袋体18と、コンプレッサ20とを含んで構成されている。
本実施の形態では、車体1204の後部1204Bから車体1204後方に(切羽側に)ビーム22が突設され、このビーム22の後部に旋回駆動部16が設けられている。
旋回駆動部16は、旋回板1602と、旋回板1602を水平旋回させる不図示の歯車機構などを含んで構成されている。なお、旋回駆動部16の構成はこの実施の形態の構造に限定されず従来公知の様々な駆動機構が採用可能であり、また、必要に応じて旋回駆動部16にカウンタウェイトを設けるなど任意である。
【0010】
旋回アーム14は、
図5~
図7に示すように、トンネル断面開閉用袋体18によるトンネル断面の閉塞時、トンネル24の幅方向に延在し、
図1~
図4に示すように、トンネル断面開閉用袋体18によるトンネル断面の開放時、旋回アーム14はクラッシャ12の車体1204の前後方向に沿って延在する。
図1~
図3に示すように、旋回アーム14は、旋回板1602に取着された支持部材26の上部で支持され、したがって、旋回アーム14はビーム22の後部に位置している。
すなわち、旋回アーム14はクラッシャホッパ1206を含む車体1204の後部1204Bよりも切羽側に離れた箇所に位置し、クラッシャホッパ1206に干渉することなく簡単に旋回できるように図られている。
支持部材26は、旋回板1602に連結され水平方向に延在して旋回板1602から突出する基部2602と、基部2602の先端から直角に上方に突出する縦部2604と、基部2602の基端と縦部2604の上端とを連結する補強部2606とを含んで構成されている。
旋回アーム14は、縦部2604の先端から水平方向に延在して設けられ、旋回アーム14の長手方向の中間部と縦部2604の長手方向の中間部とが補強部2608で連結されている。
また、
図5に示すように、旋回アーム14は、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、旋回アーム14の両端とトンネル壁面24Aとの間に所定の距離が確保される長さで形成されている。
【0011】
図5~
図7に示すように、トンネル断面開閉用袋体18は、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、空気が圧入されることで膨張展開し、クラッシャホッパ1206を含む車体1204の後部1204Bよりも切羽側に離れた箇所に位置してトンネル断面を閉塞するものである。
トンネル断面開閉用袋体18には、ケブラー繊維などの従来公知の様々な材料が使用可能である。
図5に示すように、トンネル断面開閉用袋体18は、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、旋回アーム14の下方に位置する空間を閉塞可能な中央下部袋体1802と、旋回アーム14の上方に位置する空間を閉塞可能な上部袋体1804と、旋回アーム14の側方で中央下部袋体1802および上部袋体1804で閉塞されていない残りの空間を閉塞する一対の側部袋体1806とを含んで構成されている。
【0012】
中央下部袋体1802は、旋回アーム14に取着され下方に膨張展開可能で、膨張展開した状態で、旋回アーム14とトンネル床面24Bの近傍との間で膨張し、トンネル床面24Bとの間に所定の隙間が確保される袋体本体1802Aと、膨張展開された袋体本体1802Aの下部に取着され袋体本体1802Aの下縁とトンネル床面24Bとの間を閉塞する可撓可能な片体1802Bとを備えている。
図1に示すように、コンプレッサ20は、クラッシャ12の車体1204の適宜箇所に設けられ、コンプレッサ20と中央下部袋体1802との間には不図示の空気圧送路が設けられ、また、中央下部袋体1802には不図示のファスナーにより開閉可能な空気排出口が設けられている。
なお、中央下部袋体1802の袋体本体1802Aを膨張展開した状態でその下部をトンネル床面24Bに圧接するように形成してもよいが、本実施の形態では、上述のように片体1802Bを設けることで、袋体本体1802Aを常時膨張展開した状態で使用するようにしている。
【0013】
図5に示すように、上部袋体1804は、本実施の形態では、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、旋回アーム14の上方に位置する空間および旋回アーム14の両端から突出し両側のトンネル壁面24Aに交差する旋回アーム14の仮想延長線よりも上方に位置する空間とを閉塞可能に形成されている。
上部袋体1804は、旋回アーム14に取着されて配置され、また、中央下部袋体1802の上部にも縫い合わされている。
コンプレッサ20と上部袋体1804との間には不図示の空気圧送路が設けられ、また、上部袋体1804には不図示のファスナーにより開閉可能な空気排出口が設けられている。
【0014】
一対の側部袋体1806は、本実施の形態では、旋回アーム14の側方で旋回アーム14の仮想延長線の下方に位置する空間を閉塞可能に形成されている。言い換えると、膨張展開した中央下部袋体1802の両側方で上部袋体1804の下方空間を閉塞可能に形成されている。
一対の側部袋体1806は、中央下部袋体1802の側部に縫い合わされ、また、中央下部袋体1802の両側方に突出する上部袋体1804の下部に縫い合わされて取着されている。
コンプレッサ20と一対の側部袋体1806との間には不図示の空気圧送路が設けられ、また、一対の側部袋体1806には不図示のファスナーにより開閉可能な空気排出口が設けられている。
【0015】
次に、トンネル断面開閉用袋体装置10の使用方法について説明する。
切羽の発破作業の準備ができた段階で、ホイールローダなどの作業車両はクラッシャ12よりも抗口側に移動させておく。
図1に示すように、クラッシャ12では、トンネル断面開閉用袋体18のうち、中央下部袋体1802のみが常時膨張展開した状態となっており、上部袋体1804と、一対の側部袋体1806は空気が抜き取られて収縮された状態となっており、旋回アーム14は車体1204の前後方向に延在している。
【0016】
ホイールローダなどの作業車両がクラッシャ12よりも抗口側に移動されたならば、トンネル断面開閉用袋体18によってトンネル断面を閉塞するため、まず、旋回駆動部16により旋回アーム14を旋回させ、旋回アーム14をトンネル24の幅方向に延在させた状態とする。
次いで、コンプレッサ20から空気圧送路を介して上部袋体1804に空気を圧送すると共に、コンプレッサ20から空気圧送路を介して一対の側部袋体1806に空気を圧送し上部袋体1804と一対の側部袋体1806を膨張展開させる。
これにより上部袋体1804の上部がトンネル壁面24Aの上部に圧接され、一対の側部袋体1806の両側部がトンネル壁面24Aの側部に圧接され、中央下部袋体1802の片体1802Bがトンネル床面24Bに載置され、これによりトンネル断面の閉塞状態が形成される。
【0017】
これにより、切羽とトンネル内設備との間がトンネル断面開閉用袋体18によって仕切られ、言い換えると、クラッシャ12やホイールローダなどのトンネル内設備がトンネル断面開閉用袋体18により切羽から仕切られる。
この状態で、切羽の発破作業を実行する。
発破によって発生した飛び石は、膨張展開したトンネル断面開閉用袋体18によって遮られて抗口側への飛散が防止され、クラッシャ12やホイールローダなどのトンネル内設備の損傷が防止される。
【0018】
発破作業の終了後は、上部袋体1804と一対の側部袋体1806のファスナーにより空気排出口を開放し、上部袋体1804と一対の側部袋体1806の内部の空気を抜き、上部袋体1804と一対の側部袋体1806を収縮させた状態とする。
そして、
図1に示すように、旋回駆動部16により旋回アーム14を旋回させ、膨張展開された中央下部袋体1802を旋回アーム14と共にトンネル24の長手方向に延在させた状態とする。
これによりトンネル24内においてクラッシャ12の側方が開放され、ホイールローダをクラッシャ12の側方を通過させて切羽まで走行させることが可能となる。
すなわち、ホイールローダを切羽とクラッシャ12との間で往復させ、切羽の掘削ずりをクラッシャ12のホッパに投入させ、クラッシャ12で破砕された掘削ずりをクラッシャコンベア1210を介してテールピース台車に運搬し、さらにテールピース台車から連続ベルトコンベアを介して掘削ずりを抗口まで運搬させる。
ホイールローダにより運搬すべき切羽の掘削ずりが無くなり、次回の切羽の発破作業の準備ができた段階で、クラッシャ12を切羽に近づく方向に移動させ、ホイールローダなどの作業車両をクラッシャ12よりも抗口側に移動させる。
そして、上記と同様に旋回アーム14を旋回させ旋回アーム14をトンネル24の幅方向に延在させた状態とし、トンネル断面開閉用袋体18を膨張展開させてトンネル断面を閉塞し、発破作業を実行する。
このような一連の作業を切羽の発破作業毎に繰り返して行なう。
【0019】
本実施の形態によれば、クラッシャ12に設けた旋回アーム14にトンネル断面開閉用袋体18を取着し、旋回駆動部16によって旋回アーム14をトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、トンネル断面開閉用袋体18を膨張展開してトンネル断面を閉塞させるようにした。
すなわち、トンネル断面開閉用袋体装置がクラッシャ12に設けられているため、発破で生じた飛び石によるトンネル24内の設備の損傷を防止すると共に作業員の安全を確保できることは無論のこと、トンネル断面開閉用袋体装置10がクラッシャ12に設けられているため、従来のように、切羽の発破作業毎にトンネル断面開閉用袋体18などを運搬する、収納するといった煩雑な作業を省略でき、トンネル24の掘進作業の効率化を図る上で有利となる。
【0020】
また、本実施の形態によれば、旋回アーム14は、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、旋回アーム14の両端とトンネル壁面24Aとの間に所定の距離が確保される長さで形成されているので、トンネル断面開閉用袋体18から空気を抜き取って収縮させることで、旋回アーム14をトンネル24の開放時の旋回位置と閉塞時の旋回位置との間で、トンネル壁面24Aに干渉させずに簡単に旋回させる上で有利となる。
また、トンネル断面開閉用袋体18は、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、旋回アーム14の下方に位置する空間を閉塞可能な中央下部袋体1802と、旋回アーム14の上方に位置する空を閉塞可能な上部袋体1804と、旋回アーム14の側方で中央下部袋体1802および上部袋体1804で閉塞されていない残りの空間を閉塞する一対の側部袋体1806とを含んで構成されている。
すなわち、トンネル断面開閉用袋体18を、旋回アーム14を利用して、中央下部袋体1802と上部袋体1804と一対の側部袋体1806とに区画して形成し、それら中央下部袋体1802と上部袋体1804と一対の側部袋体1806とを個別に膨張展開できるようにしたので、トンネル断面を簡単に確実に閉塞する上で有利となる。
【0021】
また、トンネル断面の開放時に、中央下部袋体1802と上部袋体1804と一対の側部袋体1806から空気を抜き取って収縮させた状態にすることで、トンネル24の幅方向に延在した旋回アーム14を、クラッシャ12の車体1204の前後方向に簡単に旋回でき、トンネル24の掘削効率を高める上で有利となる。
本実施の形態では、中央下部袋体1802は、膨張展開した状態で、トンネル床面24Bとの間に所定の隙間が確保される袋体本体1802Aと、膨張展開された袋体本体1802Aの下部に取着され袋体本体1802Aの下縁とトンネル床面24Bとの間を閉塞する可撓可能な片体1802Bとを備えているので、発破作業により発生する飛び石が袋体本体1802Aの下縁とトンネル床面24Bとの間の隙間から抗口側に飛散することを防止できる。
また、上部袋体1804と一対の側部袋体1806から空気を抜き取って収縮させた状態とし、袋体本体1802Aが膨張展開した状態で旋回アーム14を旋回させても片体1802Bがトンネル床面24B上を移動するため、大きな抵抗とならず、袋体本体1802Aを常時膨張展開した状態で使用することができる。
詳細には、トンネル断面を閉塞する場合には、上部袋体1804と一対の側部袋体1806を膨張展開すればよく、トンネル断面の閉塞状態を迅速に形成できる。
また、トンネル断面を開放する場合には、上部袋体1804と一対の側部袋体1806から空気を抜き取って収縮させ旋回アーム14を旋回させればよく、中央下部袋体1802から空気を抜き取って収縮させる必要がないので、トンネル断面の開放状態を迅速に形成できる。
すなわち、トンネル断面の閉塞状態と開放状態とを迅速に形成でき、トンネル24の掘削効率を高める上で有利となる。
【0022】
また、本実施の形態によれば、トンネル断面開閉用袋体18によるトンネル断面の開放時、旋回アーム14は車体1204の前後方向に沿って延在しているので、旋回アーム14およびトンネル断面開閉用袋体18をホイールローダなどの作業車両の邪魔にならない箇所に簡単に配置することが可能となり、トンネル24の掘進作業の効率化を図る上で有利となる。
【0023】
また、本実施の形態によれば、旋回駆動部16は車体1204の後部1204Bから後方に突出するビーム22の後部に設けられ、旋回アーム14は、旋回駆動部16で支持された支持部材26の上部に設けられているので、旋回アーム14およびトンネル断面開閉用袋体18をクラッシャホッパ1206に干渉させずに車体1204に簡単に配置する上で有利となる。
また、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、トンネル断面を閉塞する膨張展開したトンネル断面開閉用袋体は、クラッシャホッパ1206を含む車体1204の後部1204Bよりも切羽側に離れた箇所に位置しているので、発破で生じた飛び石によるトンネル24内のクラッシャ12を含む設備の損傷を防止する上で有利となる。
【0024】
(第1の実施の形態)
次に、
図8を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では第1の実施の形態と同一の箇所、部材については同一の符号を付し、その説明を省略し第1の実施の形態と異なった箇所を重点的に説明する。
第2の実施の形態では、上部袋体1804と一対の側部袋体1806との形状が第1の実施の形態と異なっている。
上部袋体1804は、旋回アーム14がトンネル24の幅方向に延在した姿勢で、旋回アーム14の上方に位置する空間を閉塞可能に形成されている。
一対の側部袋体1806は、膨張展開した中央下部袋体1802の両側方および膨張展開した上部袋体1804の両側方向の空間を閉塞可能に形成されている。
一対の側部袋体1806は、中央下部袋体1802の側部および上部袋体1802の側部に縫い合わされている。
第2の実施の形態のトンネル断面開閉用袋体18によっても第1の実施の形態と同様の効果が奏される。
【符号の説明】
【0025】
10 トンネル断面開閉用袋体装置
12 クラッシャ
1204 車体
1204A 前部
1204B 後部
14 旋回アーム
16 旋回駆動部
18 トンネル断面開閉用袋体
1802 中央下部袋体
1802A 袋体本体
1802B 片体
1804 上部袋体
1806 一対の側部袋体
20 コンプレッサ
22 ビーム
24 トンネル
24A トンネル壁面
24B トンネル床面
26 支持部材