(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】データ中継装置、データ中継装置の制御方法及びデータ中継装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 67/12 20220101AFI20220930BHJP
【FI】
H04L67/12
(21)【出願番号】P 2018135995
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159259
【氏名又は名称】竹本 実
(72)【発明者】
【氏名】木野本 純一
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-224743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 67/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療記録を記憶する医療情報端末が接続されるプライベートネットワークである第1ネットワークに直接接続され、且つ、前記医療情報端末との通信が禁止されている第2ネットワークを介して、治療データを供給する治療データサーバに接続されたデータ中継装置であって、
前記医療情報端末との通信が可能であり、且つ、前記治療データサーバとの通信が不可能な第1通信方法と、前記治療データサーバとの通信が可能であり、且つ、前記医療情報端末との通信が不可能な第2通信方法との間で前記データ中継装置の使用する通信方法を切り換える切換部と、
前記第2通信方法を使用して、前記治療データサーバから前記第2ネットワークを介して、前記治療データを取得する治療データ取得部と、
前記第1通信方法を使用して、前記第1ネットワークを介して前記医療情報端末に、前記治療データを供給する治療データ供給部と、
前記治療データ取得部が前記治療データを取得する間、前記データ中継装置の使用する通信方法を前記第1通信方法から前記第2通信方法に切り換えるように前記切換部を制御する切換制御部と、
を有することを特徴とするデータ中継装置。
【請求項2】
前記第1通信方法は、前記医療情報端末と通信可能、且つ、前記治療データサーバと通信不可能な第1通信プロトコルを使用した通信方法であり、
前記第2通信方法は、前記医療情報端末と通信不可能、且つ、前記治療データサーバと通信可能な第2通信プロトコルを使用した通信方法である、請求項1に記載のデータ中継装置。
【請求項3】
前記第1ネットワークに接続され、且つ、前記第2ネットワークに接続されない第1通信部と、
前記第2ネットワークに接続され、且つ、前記第1ネットワークに接続されない第2通信部と、をさらに有し、
前記第1通信方法は、前記治療データを前記第1通信部を介して前記医療情報端末に送信する通信方法であり、前記第2通信方法は、前記治療データを前記第2通信部を介して前記治療データサーバから受信する通信方法である、請求項1に記載のデータ中継装置。
【請求項4】
前記切換制御部は、前記治療データ供給部が前記治療データを供給する間、前記データ中継装置の使用する通信方法を前記第2通信方法から前記第1通信方法に切り換えるように前記切換部を制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載のデータ中継装置。
【請求項5】
診療記録を記憶する医療情報端末が接続されるプライベートネットワークである第1ネットワークに直接接続され、且つ、前記医療情報端末との通信が禁止されている第2ネットワークを介して、治療データを供給する治療データサーバに接続されたデータ中継装置の制御方法であって、
前記医療情報端末との通信が可能であり、且つ、前記治療データサーバとの通信が不可能な第1通信方法と、前記治療データサーバとの通信が可能であり、且つ、前記医療情報端末との通信が不可能な第2通信方法との間で前記データ中継装置の使用する通信方法を切り換え、
前記第2通信方法を使用して、前記治療データサーバから前記第2ネットワークを介して、前記治療データを取得し、
前記第1通信方法を使用して、前記第1ネットワークを介して前記医療情報端末に、前記治療データを供給し、
前記治療データを取得する間、前記データ中継装置の使用する通信方法を前記第1通信方法から前記第2通信方法に切り換えるように制御する、
ことを含むことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
診療記録を記憶する医療情報端末が接続されるプライベートネットワークである第1ネットワークに直接接続され、且つ、前記医療情報端末との通信が禁止されている第2ネットワークを介して、治療データを供給する治療データサーバに接続されたデータ中継装置の制御プログラムであって、
前記医療情報端末との通信が可能であり、且つ、前記治療データサーバとの通信が不可能な第1通信方法と、前記治療データサーバとの通信が可能であり、且つ、前記医療情報端末との通信が不可能な第2通信方法との間で前記データ中継装置の使用する通信方法を切り換え、
前記第2通信方法を使用して、前記治療データサーバから前記第2ネットワークを介して、前記治療データを取得し、
前記第1通信方法を使用して、前記第1ネットワークを介して前記医療情報端末に、前記治療データを供給し、
前記治療データを取得する間、前記データ中継装置の使用する通信方法を前記第1通信方法から前記第2通信方法に切り換えるように制御する、
ことを前記データ中継装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ中継装置、データ中継装置の制御方法及びデータ中継装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時に気道が閉塞して無呼吸状態になる睡眠時無呼吸症候群の治療法として、患者の睡眠時に加圧された呼吸用気体を継続的に鼻孔に供給することで気道を広げ、睡眠時の無呼吸を防止するCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)療法が知られている。加圧された呼吸用気体を継続的に鼻孔に供給する装置をCPAP装置と称する。
【0003】
例えば、特許文献1には、医療機器の遠隔監視システムが記載されている。医療機器の一種であるCPAP装置は、CPAP装置の使用日数及び使用時間等の使用状況、患者の呼吸の状態を検出して算出したAI(Apnea Index)、AHI(Apnea Hypopnea Index)等の指数等を、治療データとして記憶する。AIは睡眠1時間あたりの無呼吸の回数を示し、AHIは睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸との合計回数を示す。CPAP装置は、インターネット等の通信ネットワークを介して、CPAP装置を提供する事業者が管理するサーバへ治療データを送信することができる。
【0004】
サーバは、CPAP装置から治療データを受信し、患者が治療を受けている病院が管理する端末装置からの要求に応じて、そのコンピュータへ治療データを送信することができる。CPAP装置から送信された治療データは、病院において医師が患者を指導する等の用途に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、診療記録を電子化して管理可能な医療情報システムが普及しつつある。医療情報システムを使用する場合、診療記録を作成する医療情報端末が、事業者が管理するサーバに記憶された治療データ等を読み取り、電子カルテに反映できると、診療記録の入力の手間が軽減される。しかし、秘密性の高い診療記録の情報を扱う医療情報端末が、事業者が管理するサーバから治療データを取得する場合、医療情報端末は、プライベートネットワークである病院内ネットワークの外部と通信することとなる。医療情報端末がプライベートネットワークの外部と通信可能な状態であると、診療記録が病院の外部に流出するリスクが高く、診療記録の管理上好ましくない。
【0007】
診療記録が病院の外部に流出するリスクを減らすため、医療情報端末とプライベートネットワークの外部との通信を禁止し、医療情報端末に治療データを供給するためのデータ中継装置をプライベートネットワーク内に配置することが考えられる。データ中継装置の一例は、VPN(Virtual Private Network)接続を使用する通信によってサーバから治療データを取得し、取得した治療データをVPN接続を使用しない通信によって医療情報端末に供給する装置である。
【0008】
しかし、VPN接続を使用する通信と使用しない通信においては、通信の宛先の指定方法等、治療データを送受信する際の処理内容が異なる。データ中継装置は、治療データを事業者が管理するサーバから取得可能な状態に設定すると医療情報端末に供給できず、治療データを医療情報端末に供給可能な状態に設定すると事業者が管理するサーバから取得できない。このため、事業者が管理するサーバから治療データを取得し、取得した治療データを医療情報端末に供給できるデータ中継装置を実現することができなかった。
【0009】
本発明は、医療情報端末との通信が禁止されているサーバから治療データを取得し、取得した治療データを医療情報端末に供給できるデータ中継装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るデータ中継装置は、診療記録を記憶する医療情報端末が接続されるプライベートネットワークである第1ネットワークに直接接続され、且つ、医療情報端末との通信が禁止されている第2ネットワークを介して、治療データを供給する治療データサーバに接続されたデータ中継装置であって、医療情報端末との通信が可能であり、且つ、治療データサーバとの通信が不可能な第1通信方法と、治療データサーバとの通信が可能であり、且つ、医療情報端末との通信が不可能な第2通信方法との間でデータ中継装置の使用する通信方法を切り換える切換部と、第2通信方法を使用して、治療データサーバから第2ネットワークを介して、治療データを取得する治療データ取得部と、第1通信方法を使用して、第1ネットワークを介して医療情報端末に、治療データを供給する治療データ供給部と、治療データ取得部が治療データを取得する間、データ中継装置の使用する通信方法を第1通信方法から第2通信方法に切り換えるように切換部を制御する切換制御部と、を有する。
【0011】
本発明に係るデータ中継装置において、第1通信方法は、医療情報端末と通信可能、且つ、治療データサーバと通信不可能な第1通信プロトコルを使用した通信方法であり、第2通信方法は、医療情報端末と通信不可能、且つ、治療データサーバと通信可能な第2通信プロトコルを使用した通信方法である。
【0012】
本発明に係るデータ中継装置は、第1ネットワークに接続され、且つ、第2ネットワークに接続されない第1通信部と、第2ネットワークに接続され、且つ、第1ネットワークに接続されない第2通信部と、をさらに有し、第1通信方法は、治療データを第1通信部を介して医療情報端末に送信する通信方法であり、第2通信方法は、治療データを第2通信部を介して治療データサーバから受信する通信方法である。
【0013】
本発明に係るデータ中継装置において、切換制御部は、治療データ供給部が治療データを供給する間、データ中継装置の使用する通信方法を第2通信方法から第1通信方法に切り換えるように切換部を制御する。
【0014】
本発明に係るデータ中継装置の制御方法は、診療記録を記憶する医療情報端末が接続されるプライベートネットワークである第1ネットワークに直接接続され、且つ、医療情報端末との通信が禁止されている第2ネットワークを介して、治療データを供給する治療データサーバに接続されたデータ中継装置の制御方法であって、医療情報端末との通信が可能であり、且つ、治療データサーバとの通信が不可能な第1通信方法と、治療データサーバとの通信が可能であり、且つ、医療情報端末との通信が不可能な第2通信方法との間でデータ中継装置の使用する通信方法を切り換え、第2通信方法を使用して、治療データサーバから第2ネットワークを介して、治療データを取得し、第1通信方法を使用して、第1ネットワークを介して医療情報端末に、治療データを供給し、治療データを取得する間、データ中継装置の使用する通信方法を第1通信方法から第2通信方法に切り換えるように切換部を制御する、ことを含む。
【0015】
本発明に係るデータ中継装置の制御プログラムは、診療記録を記憶する医療情報端末が接続されるプライベートネットワークである第1ネットワークに直接接続され、且つ、医療情報端末との通信が禁止されている第2ネットワークを介して、治療データを供給する治療データサーバに接続されたデータ中継装置の制御プログラムであって、医療情報端末との通信が可能であり、且つ、治療データサーバとの通信が不可能な第1通信方法と、治療データサーバとの通信が可能であり、且つ、医療情報端末との通信が不可能な第2通信方法との間でデータ中継装置の使用する通信方法を切り換え、第2通信方法を使用して、治療データサーバから第2ネットワークを介して、治療データを取得し、第1通信方法を使用して、第1ネットワークを介して医療情報端末に、治療データを供給し、治療データを取得する間、データ中継装置の使用する通信方法を第1通信方法から第2通信方法に切り換えるように制御する、ことをデータ中継装置に実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るデータ中継装置によれば、医療情報端末との通信が禁止されているサーバから治療データを取得し、取得した治療データを医療情報端末に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】医療情報システム1の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】データ中継装置7の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】医療情報端末8の概略構成の一例を示す図である。
【
図4】医療情報システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】S11で示されるプログラム取得処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図6】S12で示されるVPN接続確立処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図7】S13で示される治療データ取得処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図8】S14で示されるVPN接続切断処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図9】S15で示される電子カルテ処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図10】第1変形例に係る医療情報システム1´の概略構成の一例を示す図である。
【
図11】第1変形例に係るデータ中継装置7´の概略構成の一例を示す図である。
【
図12】第1変形例に係る医療情報システム1´の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図13】S13´で示される治療データ取得処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図14】S15´で示される電子カルテ処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の様々な実施形態について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
本システムは、治療データサーバ、データ中継装置、医療情報サーバ、医療情報端末等を有する。治療データサーバは、通信装置の一例であり、CPAP装置から取得した、患者の治療データを供給するサーバである。ここで、治療データとは、CPAP装置の使用日数及び使用時間等の使用状況、AI、AHI、送気圧力、送気リーク、装置設定値等の指数が例示される。データ中継装置は、第1通信方法と第2通信方法とを切り換える切換部を有する。第1通信方法は、医療情報端末との通信が可能であり、且つ、治療データサーバとの通信が不可能な通信方法であり、第2通信方法は、治療データサーバとの通信が可能であり、且つ、医療情報端末との通信が不可能な通信方法である。医療情報サーバとは、患者に関する診療記録等を記憶するサーバであり、電子カルテシステム・検査データシステム・PACS・オーダリングシステム・医事システム等が例示される。医療情報端末とは、医療情報を入力・出力する端末である。
【0020】
データ中継装置及び医療情報端末は同一のプライベートネットワークの内部に配置され、治療データサーバはプライベートネットワークの外部に配置される。医療情報端末は、プライベートネットワークの外部との通信が禁止されている。
【0021】
データ中継装置は、例えば1日1回所定の時刻に第2通信方法を使用して治療データサーバから治療データを取得する。治療データサーバから治療データを取得した後、データ中継装置は、切換部によって、使用する通信方法を第2通信方法から医療情報端末との通信が可能な第1通信方法に切り換えて、医療情報端末に治療データを供給する。これにより、データ中継装置は、治療データサーバから治療データを取得する間以外は、医療情報端末に治療データを供給することができる。
【0022】
データ中継装置は、複数の治療データサーバから治療データを取得してもよい。そのとき、データ中継装置と複数の治療データサーバ間の通信は、同じ通信方法を選択しても良いし、異なる通信方法を選択してもよい。
【0023】
<実施形態>
図1は、医療情報システム1の概略構成の一例を示す図である。
【0024】
医療情報システム1は、CPAP装置2、ルータ3、治療データサーバ4、VPN装置5、ファイアウォール6、データ中継装置7、医療情報端末8、電子カルテサーバ9等を有する。
【0025】
ファイアウォール6、データ中継装置7、医療情報端末8及び電子カルテサーバ9は、病院のプライベートネットワークである第1ネットワーク1aに接続されている。ルータ3、治療データサーバ4及びVPN装置5は、治療データ供給事業者のプライベートネットワークである第3ネットワーク1cに接続されている。VPN装置5及びファイアウォール6は、インターネット等の第2ネットワーク1bを介して接続されており、CPAP装置2及びルータ3は、携帯電話網等の第4ネットワーク1dを介して接続されている。このように、データ中継装置7は、医療情報端末8が接続されているプライベートネットワークである第1ネットワーク1aに直接接続され、医療情報端末8との通信が禁止されている第2ネットワーク1bを介して治療データサーバに接続される。
【0026】
CPAP装置2は、患者がCPAP療法を実行するための装置であり、患者宅に設置されている。CPAP装置2は、AI、AHI等の指数を含む治療データを、第4ネットワーク1d及びルータ3を介して治療データサーバ4に1日1回送信する。
【0027】
ルータ3は、治療データサーバ4等が第3ネットワーク1cの外部と通信するときにパケットのルーティングを実行するルータである。
【0028】
VPN装置5は、データ中継装置7とVPN接続する装置の一例であり、治療データサーバ4及びデータ中継装置7に対して仮想的なプライベートネットワーク、即ちVPNを提供する。VPN装置5は、例えばSSL(Secure Socket Layer)-VPNのL2フォワーディング方式によるVPNを提供する。
【0029】
ファイアウォール6は、第1ネットワーク1aに接続された各装置と第2ネットワーク1bに接続された装置との間の通信の可否を判定し、制御する装置である。ファイアウォール6は、データ中継装置7とVPN装置5との間のVPN接続に関連する通信は許可するが、他の通信は許可しないように設定されている。ファイアウォール6は、さらにデータ中継装置7とVPN装置5との通信に対して、第1ネットワーク1aのプライベートアドレスと第2ネットワーク1bのグローバルアドレスとの変換を実行する。ファイアウォール6は、例えばNAT(Network Address Translation)、NAPT(Network Address Port Translation)等の機能を使用してプライベートアドレスとグローバルアドレスとの変換を実行する。
【0030】
図2は、データ中継装置7の概略構成の一例を示す図である。
【0031】
データ中継装置7は、第2通信方式を用いて、治療データサーバ4から治療データを取得し、第1通信方式を用いて、取得した治療データを医療情報端末8に供給する。そのためにデータ中継装置7は、通信部71と、入力部72と、記憶部73と、処理部74とを有する。
【0032】
通信部71は、Ethernet等の有線の通信インターフェース回路を有する。通信部71は、第1ネットワーク1a及び第2ネットワーク1bを介して治療データサーバ4等と、第1ネットワーク1aを介して医療情報端末8等と通信し、治療データサーバ4、医療情報端末8等から受信したデータを処理部74に供給する。通信部71は、処理部74から供給されたデータを治療データサーバ4、医療情報端末8等に送信する。
【0033】
入力部72は、データ中継装置7の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、キーボードである。入力部72は、データ中継装置7の管理者の指示を受け付け、受け付けた指示に対応する信号を発生し、処理部74に出力する。
【0034】
記憶部73は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、及び光ディスク装置のうちの少なくとも一つを有する。記憶部73は、処理部74による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。
【0035】
例えば、記憶部73は、ドライバプログラムとして、通信部71を制御する通信デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、記憶部73は、オペレーティングシステムプログラムとして、TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)等の通信方式による接続制御プログラム等を記憶する。また、記憶部73は、アプリケーションプログラムとして、各種データの送受信を行うデータ処理プログラム等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部73にインストールされてもよい。
【0036】
記憶部73には、患者が診療を受けている病院を一意に識別する病院ID(Identification Data)、各病院内で患者を一意に識別する患者ID及び各患者の治療データが相互に関連付けられて記憶されている。
【0037】
処理部74は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部74は、データ中継装置7の全体的な動作を統括的に制御し、例えば、制御装置及び演算装置を有するCPUである。処理部74は、データ中継装置7の各種処理が記憶部73に記憶されているプログラム等に応じて適切な手順で実行されるように、通信部71等の動作を制御する。処理部74は、記憶部73に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部74は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0038】
処理部74は、受信プログラム動作部741、切換制御部742、治療データ取得部743、治療データ供給部744及び切換部745を有する。切換部745は、送信パケット生成部746、受信パケット出力部747、格納部748、抽出部749、送信パケット出力部750及び受信パケット入力部751を有する。処理部74が有するこれらの各部は、処理部74が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、処理部74が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとしてデータ中継装置7に実装されてもよい。
【0039】
図3は、医療情報端末8の概略構成の一例を示す図である。
【0040】
医療情報端末8は、第1通信方式を用いて取得した治療データを含む診療記録を電子カルテサーバ9に供給する。そのために医療情報端末8は、端末通信部81と、端末入力部82と、端末表示部83と、端末記憶部84と、端末処理部85とを有する。
【0041】
端末通信部81は、Ethernet等の有線の通信インターフェース回路を有する。端末通信部81は、第1ネットワーク1aを介してデータ中継装置7等と通信し、データ中継装置7等から受信したデータを端末処理部85に供給する。端末通信部81は、端末処理部85から供給されたデータをデータ中継装置7等に送信する。
【0042】
端末入力部82は、医療情報端末8の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、キーボードである。端末入力部82は、医療情報端末8の利用者の指示を受け付け、受け付けた指示に対応する信号を発生し、端末処理部85に出力する。
【0043】
端末表示部83は、画像等の出力が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等である。端末表示部83は、端末処理部85から供給されるデータに応じた画像等を表示する。
【0044】
端末記憶部84は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置、及び光ディスク装置のうちの少なくとも一つを有する。端末記憶部84は、端末処理部85による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。
【0045】
例えば、端末記憶部84は、ドライバプログラムとして、端末通信部81を制御する通信デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、端末記憶部84は、オペレーティングシステムプログラムとして、TCP/IP等の通信方式による接続制御プログラム等を記憶する。また、端末記憶部84は、アプリケーションプログラムとして、各種データの送受信を行うデータ処理プログラム等を記憶する。コンピュータプログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて端末記憶部84にインストールされてもよい。
【0046】
端末処理部85は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。端末処理部85は、医療情報端末8の全体的な動作を統括的に制御し、例えば、制御装置及び演算装置を有するCPUである。端末処理部85は、医療情報端末8の各種処理が端末記憶部84に記憶されているプログラム等に応じて適切な手順で実行されるように、端末通信部81等の動作を制御する。端末処理部85は、端末記憶部84に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、端末処理部85は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0047】
端末処理部85は、診療記録取得部851、診療記録記憶部852、診療記録供給部853及び端末治療データ取得部854を有する。端末処理部85が有するこれらの各部は、端末処理部85が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、端末処理部85が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとして医療情報端末8に実装されてもよい。
【0048】
電子カルテサーバ9は、患者に関する医師の診療記録を示す診療記録を記憶するサーバである。電子カルテサーバ9は、患者IDを含む各患者の診療記録を記憶し、医療情報端末8からの要求に応じて、医療情報端末8に診療記録を送信する。電子カルテサーバ9は、医療情報端末8から診療記録を受信し、自ら記憶する診療記録を更新する。
【0049】
図4は、医療情報システム1の動作の一例を示すフローチャートである。
【0050】
以下、
図4に示したフローチャートを参照しつつ、医療情報システム1の動作の例を説明する。以下に説明するフローチャートは、各装置において予め各装置の記憶部に記憶されているプログラムに基づき、主に各装置の処理部により各装置の各要素と協働して実行される。
【0051】
最初に、データ中継装置7は、切換制御部742等として動作するプログラムをVPN装置5から取得するプログラム取得処理を実行する(S11)。
【0052】
次に、データ中継装置7は、取得したプログラムを使用して、VPN装置5との間にVPN接続を確立するVPN接続確立処理を実行する(S12)。次に、データ中継装置7は、治療データサーバ4からVPN装置5を介して治療データを取得する治療データ取得処理を実行する(S13)。次に、データ中継装置7は、VPN装置5との間に確立したVPN接続を切断するVPN接続切断処理を実行する(S14)。データ中継装置7は、S12~S14の処理を、例えば1日1回実行する。
【0053】
次に、医療情報端末8は、必要時に電子カルテサーバ9から診療記録を取得し、データ中継装置7から治療データを取得し、治療データを反映させた診療記録を記憶する電子カルテ処理を実行する(S15)。以上により、一連の動作は終了する。
【0054】
図5は、S11で示されるプログラム取得処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0055】
最初に、データ中継装置7の管理者は、以後の通信に使用する通信プログラムの受信指示を、入力部72を介してデータ中継装置7に入力する(S21)。この通信プログラムは、切換制御部742、治療データ取得部743、格納部748及び抽出部749として動作するプログラムを含む。次に、受信プログラム動作部741は、通信プログラムの送信要求を通信部71を介してVPN装置5に送信する(S22)。
【0056】
次に、VPN装置5は、データ中継装置7から通信プログラムの送信要求を受信する(S23)。次に、VPN装置5は、送信要求に応じて通信プログラムを含むインストーラをデータ中継装置7に送信する(S24)。
【0057】
次に、データ中継装置7の受信プログラム動作部741は、VPN装置5からインストーラを受信する(S25)。次に、受信プログラム動作部741は、受信したインストーラを実行する(S26)。インストーラが実行されると、切換制御部742、治療データ取得部743、格納部748及び抽出部749として動作するプログラムは、記憶部73に記憶される。次に、受信プログラム動作部741は、切換制御部742、治療データ取得部743、格納部748及び抽出部749の動作準備を完了させる(S27)。以上により、一連のシーケンスは終了する。
【0058】
図6は、S12で示されるVPN接続確立処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0059】
最初に、切換制御部742は、処理部74が提供するタイマー機能により、1日1回、所定の時刻に起動する(S31)。次に、切換制御部742は、VPN接続要求を切換部745に出力する。
【0060】
次に、切換部745において、送信パケット生成部746は、宛先がVPN装置5でありデータ部分にVPN接続要求を含むIPパケットを生成する。この時点において、切換部745は、TCP/IPプロトコルを使用しVPN接続を使用しない第1通信方法を使用するように設定されている。切換部745は、第1通信方法を使用するとき、格納部748及び抽出部749を使用しないように設定されているため、送信パケット生成部746は、生成したIPパケットを送信パケット出力部750に出力する。
【0061】
本実施形態において、データ中継装置7は、医療情報端末8等、第1ネットワーク1aに接続された装置とは、TCP/IPプロトコルを使用した通信ができる。また、データ中継装置7は、治療データサーバ4等、プライベートネットワークである第3ネットワーク1cの内部にある装置とは、通常のTCP/IPプロトコルを使用した通信ができない。これは、データ中継装置7が、IPパケットの宛先に治療データサーバ4のプライベートネットワークを設定しても、第2ネットワーク1bに接続されたルータはそのIPパケットを適切にルーティングできないためである。TCP/IPプロトコルを使用する第1通信方法は、医療情報端末8と通信可能、且つ、治療データサーバ4と通信不可能な第1通信プロトコルを使用した通信方法であるといえる。
【0062】
次に、送信パケット出力部750は、通信部71を介してVPN接続要求を含むIPパケットを送信する(S32)。
【0063】
次に、VPN装置5は、VPN接続要求を含むIPパケットを受信する(S33)。次に、VPN装置5は、IPパケットからVPN接続要求を抽出すると、VPNにおいて使用するプライベートIPアドレスVをデータ中継装置7に割り当てる(S34)。次に、VPN装置5は、第3ネットワーク1c内においてアドレスV宛に送信されたIPパケットをVPN装置5が受信するように設定する。次に、VPN装置5は、VPN接続の成功を示すVPN接続応答を含むIPパケットをデータ中継装置7に送信する(S35)。
【0064】
次に、データ中継装置7の受信パケット入力部751は、VPN装置5が送信したIPパケットを通信部71を介して受信する(S36)。次に、受信パケット入力部751は、受信したIPパケットを受信パケット出力部747に出力する。次に、受信パケット出力部747は、IPパケットからVPN接続応答を抽出し、切換制御部742に出力する。次に、切換制御部742は、入力されたVPN接続応答がVPN接続の成功を示すとき、使用する通信方法を、第1通信方法から第2通信方法に切り換えるように切換部745を制御する(S37)。第2通信方法は、IPパケットのカプセル化を実行する第2通信プロトコルを使用する通信方法である。
【0065】
IPパケットのカプセル化とは、IPパケットを他のIPパケットのデータ部分に格納することを指し、IPパケットの非カプセル化とは、IPパケットのデータ部分に格納された他のIPパケットを抽出することを指す。VPN装置5及びデータ中継装置7は、IPパケットをカプセル化し、カプセル化されたIPパケットを非カプセル化する機能を有するが、医療情報端末8などの他の装置はこの機能を有さない。このため、データ中継装置7が第2通信方法を使用し、IPパケットをカプセル化して医療情報端末8に送信しても、医療情報端末8は受信したIPパケットをカプセル化されていないものとして処理してしまう。医療情報端末8は、データ中継装置7が送信したIPパケットの内容を適切に判定することができないことから、データ中継装置7は、第2通信方法によって医療情報端末8と通信することができない。
【0066】
S37において、切換制御部742は、送信パケット生成部746の出力を格納部748に入力し、格納部748の出力を送信パケット出力部750に出力するように切換部745を切り換える。また、切換制御部742は、受信パケット入力部751の出力を抽出部749に入力し、抽出部749の出力を受信パケット出力部747に入力するように切換部745を切り換える。以上により、一連のシーケンスを終了する。
【0067】
なお、切換制御部742は、データ中継装置7とVPN装置5との間で暗号化通信を実行するために、SSL/TLS(Transport Layer Security)で使用する暗号化用の共通鍵の生成等のためのネゴシエーションをVPN装置5と実行してもよい。また、VPN装置5は、VPN接続を要求した装置がVPN接続を許可すべき装置であるか否かを判定するために、認証処理をデータ中継装置7に対して実行してもよい。
【0068】
図7は、S13で示される治療データ取得処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0069】
最初に、切換制御部742は、S37の処理の完了を検出すると、治療データ取得部743に対して治療データを取得するように指示する。次に、治療データ取得部743は、記憶部73から病院ID及び患者IDを取得して、病院ID及び患者IDの1つ以上の組を含む第1送信要求を生成する。次に、治療データ取得部743は、第1送信要求を切換部745に出力する。
【0070】
次に、切換部745において、送信パケット生成部746は、宛先に治療データサーバ4のプライベートアドレスを、データ部分に第1送信要求を格納したIPパケットを生成し、格納部748に出力する(S41)。次に、格納部748は、第1送信要求を格納したIPパケットをカプセル化した他のIPパケットを生成する。具体的には、格納部748は、宛先にVPN装置5のグローバルアドレスを、データ部分に第1送信要求を格納したIPパケットを格納した他のIPパケットを生成する(S42)。以後、他のIPパケットをVPNパケットと称することがある。VPNパケットは、VPN接続に使用する各種パラメータを伝達するための所定のフォーマットを有する。次に、格納部748は、VPNパケットを送信パケット出力部750に出力する。次に、送信パケット出力部750は、入力されたVPNパケットを通信部71を介して送信する(S43)。
【0071】
次に、VPN装置5は、ファイアウォール6及び第2ネットワーク1bを介してVPNパケットを受信し(S44)、VPNパケットからIPパケットを抽出する。次に、VPN装置5は、抽出したIPパケットを送信する(S45)。IPパケットの宛先は、S41で格納された治療データサーバ4のプライベートアドレスである。
【0072】
次に、治療データサーバ4は、IPパケットを受信し(S46)、IPパケットから第1送信要求を抽出する(S47)。次に、治療データサーバ4は、第1送信要求に含まれる病院ID及び患者IDの全ての組に対応する治療データを選択し(S48)、病院ID、患者ID及び治療データの1つ以上の組を含む第1送信応答を生成する(S49)。次に、治療データサーバ4は、宛先にアドレスVを、データ部分に第1送信応答を格納したIPパケットを生成し、送信する(S50)。
【0073】
次に、VPN装置5は、IPパケットを受信する(S51)。次に、VPN装置5は、宛先にデータ中継装置7に対応するグローバルアドレスを、データ部分にIPパケットを格納したVPNパケットを生成する(S52)。次に、VPN装置5は、生成したVPNパケットを送信する(S53)。
【0074】
次に、データ中継装置7の受信パケット入力部751は、第2ネットワーク1b及びファイアウォール6を介して伝達されたVPNパケットを通信部71を介して受信し(S54)、抽出部749に出力する。次に、抽出部749は、所定のフォーマットに従ってVPNパケットからIPパケットを抽出し(S55)、受信パケット出力部747に出力する。次に、受信パケット出力部747は、IPパケットから第1送信応答を抽出し(S56)、治療データ取得部743に出力する。次に、治療データ取得部743は、第1送信応答から病院ID、患者ID及び治療データの1つ以上の組を取得し、記憶部73に記憶する(S57)。以上により、一連のシーケンスは終了する。
【0075】
図8は、S14で示されるVPN接続切断処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0076】
最初に、切換制御部742は、S57の処理の完了を検出すると、使用する通信方法を第2通信方法から第1通信方法に切り換えるように切換部745を制御する(S61)。切換制御部742は、送信パケット生成部746の出力を送信パケット出力部750に入力し、受信パケット入力部751の出力を受信パケット出力部747に入力するように切換部745を切り換える。次に、切換制御部742は、VPN装置5にVPN切断要求を送信する(S62)。次に、切換制御部742は、所定の時刻まで休止する(S63)。
【0077】
次に、VPN装置5は、VPN切断要求を含むIPパケットを受信する(S64)。次に、VPN装置5は、IPパケットからVPN切断要求を抽出し、VPN切断要求に応じてプライベートIPアドレスVのデータ中継装置7への割り当て及びアドレスV宛に送信されたIPパケットをVPN装置5が受信する設定を解除する(S65)。以上により、一連のシーケンスを終了する。
【0078】
図9は、S15で示される電子カルテ処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0079】
最初に、医療情報端末8の使用者は、ある患者の電子カルテを参照するための電子カルテ参照指示を、端末入力部82を介して医療情報端末8に入力する(S71)。次に、診療記録取得部851は、入力に応じて患者IDを含む診療記録送信要求を生成し、端末通信部81を介して電子カルテサーバ9に送信する(S72)。
【0080】
次に、電子カルテサーバ9は、医療情報端末8から診療記録送信要求を受信する(S73)。次に、電子カルテサーバ9は、送信要求で指定された患者IDに対応する診療記録を医療情報端末8に送信する(S74)。
【0081】
次に、医療情報端末8の診療記録取得部851は、電子カルテサーバ9から診療記録を受信する(S75)。次に、医療情報端末8の使用者は、診療記録に治療データを反映させるため、治療データを参照するための治療データ参照指示を、端末入力部82を介して医療情報端末8に入力する。次に、端末治療データ取得部854は、端末記憶部84から病院IDを取得し、診療記録から患者IDを取得して、病院ID及び患者IDの組を含む第2送信要求を生成する。次に、端末治療データ取得部854は、第2送信要求を含むIPパケットを生成し、端末通信部81を介してデータ中継装置7に送信する(S76)。
【0082】
次に、データ中継装置7の受信パケット入力部751は、第2送信要求を含むIPパケットを通信部71を介して受信する(S77)。切換部745は、S61で第1通信方法に切り換えられているため、受信パケット入力部751は、受信したIPパケットを受信パケット出力部747に出力する。次に、受信パケット出力部747は、IPパケットから第2送信要求を抽出し(S78)、治療データ供給部744に出力する。
【0083】
次に、治療データ供給部744は、記憶部73に記憶される治療データの中から、第2送信要求に含まれる病院ID及び患者IDに対応する治療データを選択する(S79)。次に、治療データ供給部744は、選択した治療データを含む第2送信応答を生成する(S80)。次に、治療データ取得部743は、医療情報端末8に治療データを供給するために第2送信応答を切換部745に出力する。
【0084】
次に、切換部745において、送信パケット生成部746は、宛先が医療情報端末8でありデータ部分に第2送信応答を含むIPパケットを生成し、送信パケット出力部750に出力する。次に、送信パケット出力部750は、通信部71を介して第2送信応答を含むIPパケットを送信する(S81)。
【0085】
次に、医療情報端末8の端末治療データ取得部854は、第1ネットワーク1a及び端末通信部81を介して第2送信応答を含むIPパケットを受信し(S82)、IPパケットから第2送信応答を抽出する。次に、診療記録記憶部852は、第2送信応答に含まれる治療データを端末表示部83に表示する。次に、診療記録記憶部852は、端末入力部82を介して入力される医療情報端末8の使用者の指示に従って、治療データを診療記録へ反映させ、診療記録を記憶する(S83)。次に、端末入力部82を介して診療記録の保存指示が入力されると、診療記録供給部853は、診療記録を端末通信部81を介して電子カルテサーバ9に送信する(S84)。
【0086】
次に、電子カルテサーバ9は、診療記録を受信し(S85)、受信した診療記録と同一の患者IDを有する診療記録を、受信した診療記録によって更新する(S86)。以上により、一連のシーケンスは終了する。
【0087】
実施形態に係るデータ中継装置7は、治療データ取得部743が治療データを取得する間、データ中継装置7の使用する通信方法を第1通信方法から第2通信方法に切り換える。データ中継装置7は、治療データを取得していない間に通信方法を第1通信方法に切り換え、治療データを医療情報端末8に提供可能にしていても、第2通信方法に切り換えて治療データを取得することができる。データ中継装置7は、治療データを取得した後に通信方法を第1通信方法に切り換えることによって、取得した治療データを医療情報端末8に供給することができる。
【0088】
なお、実施形態においては、データ中継装置7は、治療データサーバ4から治療データを取得し、取得した治療データを医療情報端末8からの要求に応じて医療情報端末8に供給したが、他の方法で治療データを医療情報端末8に供給してもよい。例えば、医療情報端末8は、第2送信要求をデータ中継装置7に送信し、データ中継装置7は、第2送信要求に応じて第1送信要求を治療データサーバ4に送信してもよい。この場合、治療データサーバ4は、第1送信要求に応じて治療データを含む第1送信応答をデータ中継装置7に送信し、データ中継装置7は、受信した治療データを含む第2送信応答を医療情報端末8に送信することによって、治療データを医療情報端末8に供給する。
【0089】
ここで、第2ネットワークへの接続方法は、インターネットVPNを採用することが好ましい。かかる方法を用いれば、インターネット等の汎用の方法で、安価でセキュアに治療データを通信することができる。
【0090】
さらに付け加えると、第2ネットワークへの接続方法は、ソフトウェアVPNを採用することが、より好ましい。治療データサーバに対して、データ中継装置が多く必要になる場合が多く、データ中継装置ごとにハードウェアが必要としないソフトウェアVPNを採用すると、多くのデータ中継装置とより安価に治療データを通信することができる。
【0091】
さらに付け加えると、第2ネットワークへの接続方法は、クライアント型のソフトウェアVPNを採用することが、より好ましい。クライアント型のソフトウェアVPNを採用すると、偽サーバへの接続を防止でき、かつ接続できる端末を厳格に指定できるため、よりセキュアに治療データを通信することができる。
【0092】
データ中継装置は、仮想NICを有することが好ましい。仮想NICにより、接続先ごとに通信方法を管理できることから、よりセキュアに治療データを通信することができる。
【0093】
<第1変形例>
図10は、第1変形例に係る医療情報システム1´の概略構成の一例を示す図である。
【0094】
第1変形例に係る医療情報システム1´の概略構成は、VPN装置5及びファイアウォール6を有さず、第2ネットワーク1bに代えて第5ネットワーク1eを有することが、
図1に示す概略構成と異なる。第1変形例に係る医療情報システム1´の概略構成は、さらに、データ中継装置7´と治療データサーバ4との間の通信経路が閉域携帯電話網である第5ネットワーク1eであることが、
図1に示す概略構成と異なる。第1変形例における医療情報システム1´のその他の構成は、同一符号が付された実施形態に係る構成と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
なお、CPAP2と治療データサーバ4との間の通信は、一般の携帯電話網である第4ネットワーク1d上でデータを暗号化して実行されている。CPAP2から治療データサーバ4に送信するデータは、個人情報を含まないため、一般の通信利用者と同一の携帯電話網で送信しても比較的問題は少ない。これに対し、治療データサーバ4からデータ中継装置7´に送信するデータは、個人情報を含むため、物理的な通信網を一般の通信利用者と分けた閉域網を使用することによって安全性をより高めている。
【0096】
図11は、第1変形例に係るデータ中継装置7´の概略構成の一例を示す図である。
【0097】
第1変形例に係るデータ中継装置7´の概略構成は、通信部71に代えて通信部71´を有し、通信部71´が第1通信部171及び第2通信部172を有することが、
図4に示すデータ中継装置7の概略構成と異なる。また、第1変形例に係るデータ中継装置7´の概略構成は、さらに受信プログラム動作部741、格納部748及び抽出部749を有さず、切換制御部742に代えて切換制御部742´を有することが、
図4に示すデータ中継装置7の概略構成と異なる。第1変形例におけるデータ中継装置7´のその他の構成は、同一符号が付された実施形態に係る構成と同一であるため、ここでは説明を省略する。
【0098】
第1通信部171は、Ethernet等の有線の通信インターフェース回路を有する。第1通信部171は、第1ネットワーク1aを介して医療情報端末8等と通信し、医療情報端末8等から受信したデータを処理部74´に供給する。第1通信部171は、処理部74´から供給されたデータを医療情報端末8等に送信する。
【0099】
第2通信部172は、LTE(Long Term Evolution)等の無線の通信インターフェース回路を有する。第2通信部172は、第4ネットワーク1dを介して治療データサーバ4等と通信し、治療データサーバ4等から受信したデータを処理部74´に供給する。第2通信部172は、処理部74´から供給されたデータを治療データサーバ4等に送信する。
【0100】
図12は、第1変形例に係る医療情報システム1´の動作の一例を示すフローチャートである。
【0101】
第1変形例に係る医療情報システム1´のフローチャートは、S11、S12及びS14の処理を有さず、S13及びS15の処理に代えてS13´及びS15´の処理を有することが、
図4に示す実施形態に係るフローチャートと相違する。
【0102】
最初に、データ中継装置7は、治療データサーバ4から治療データを取得する治療データ取得処理を実行する(S13´)。次に、医療情報端末8は、必要時に電子カルテサーバ9から診療記録を取得し、データ中継装置7から治療データを取得し、治療データを反映させた診療記録を記憶する電子カルテ処理を実行する(S15´)。以上により、一連の動作は終了する。
【0103】
図13は、S13´で示される治療データ取得処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0104】
第1変形例に係る治療データ取得処理の動作シーケンスは、S41~S45、S50~S55の処理に代えてS141~S148の処理を有することが、
図7に示す実施形態に係る動作シーケンスと相違する。S141~S148の処理以外の第1変形例に係る治療データ取得処理の動作シーケンスにおける処理内容は、同一符号が付された実施形態に係る治療データ取得処理の動作シーケンスにおける処理内容と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0105】
最初に、切換制御部742´は、処理部74´が提供するタイマー機能により、1日1回、所定の時刻に起動する(S141)。次に、切換制御部742´は、使用する通信方法を第1通信方法から第2通信方法に切り換えるように切換部745´を制御する(S142)。切換部745´は、送信パケット出力部750から出力するパケットの出力先及び受信パケット入力部751へ入力するパケットの入力元を、第1通信部171から第2通信部172に切り換える。
【0106】
次に、切換制御部742は、治療データ取得部743に対して治療データを取得するように指示する。次に、治療データ取得部743は、記憶部73から病院ID及び患者IDを取得して、病院ID及び患者IDの1つ以上の組を含む第1送信要求を生成する。次に、治療データ取得部743は、第1送信要求を切換部745に出力する。
【0107】
次に、切換部745において、送信パケット生成部746は、宛先に治療データサーバ4のプライベートアドレスを、データ部分に第1送信要求を格納したIPパケットを生成し、送信パケット出力部750に出力する(S143)。次に、送信パケット出力部750は、入力されたIPパケットを第2通信部172を介して送信する(S144)。
【0108】
次に、治療データサーバ4は、S46~S49の処理を実行する。次に、治療データサーバ4は、宛先にデータ中継装置7のプライベートアドレスを、データ部分に第1送信応答を格納したIPパケットを生成し、送信する(S145)。
【0109】
次に、データ中継装置7´の受信パケット入力部751は、IPパケットを第2通信部172を介して受信し(S146)、受信パケット出力部747に出力する。次に、データ中継装置7´は、S56及びS57の処理を実行する。
【0110】
次に、切換制御部742´は、使用する通信方法を第2通信方法から第1通信方法に切り換えるように切換部745´を制御する(S147)。切換部745´は、送信パケット出力部750から出力するパケットの出力先及び受信パケット入力部751へ入力するパケットの入力元を、第2通信部172から第1通信部171に切り換える。
【0111】
次に、切換制御部742´は、自らを所定の時刻まで休止させる(S148)。以上により、一連のシーケンスを終了する。
【0112】
図14は、S15´で示される電子カルテ処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0113】
第1変形例に係る電子カルテ処理の動作シーケンスは、S77及びS81の処理に代えてS171及びS172の処理を有することが、
図9に示す実施形態に係る動作シーケンスと相違する。S171及びS172の処理以外の第1変形例に係る電子カルテ処理の動作シーケンスにおける処理内容は、同一符号が付された実施形態に係る電子カルテ処理の動作シーケンスにおける処理内容と同一であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0114】
S71~S76の処理の後、データ中継装置7の受信パケット入力部751は、第2送信要求を含むIPパケットを第1通信部171を介して受信する(S171)。次に、データ中継装置7は、S78~S80の処理を実行する。次に、治療データ取得部743は、医療情報端末8に治療データを供給するために第2送信応答を切換部745に出力する。
【0115】
次に、切換部745において、送信パケット生成部746は、宛先が医療情報端末8でありデータ部分に第2送信応答を含むIPパケットを生成し、送信パケット出力部750に出力する。次に、送信パケット出力部750は、第1通信部171を介して第2送信応答を含むIPパケットを送信する(S172)。
【0116】
次に、医療情報端末8は、S82~S84の処理を実行する。次に、電子カルテサーバ9はS85~S86の処理を実行する。以上により、一連のシーケンスを終了する。
【0117】
第1変形例に係るデータ中継装置7´は、第1通信部171を第2通信部172に切り換えることによって、VPNを使用せずに安全に治療データを取得することができる。
【0118】
また、第2ネットワークへの接続方法は、携帯電話網を採用することが好ましい。かかる方法を用いれば、既存の第1ネットワークへの影響を最小限にすることができるため、医療機関の負担を最小限にしながら、治療データサーバとの通信を実現することができる。
【0119】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0120】
1、1´ 医療情報システム
1a 第1ネットワーク
1b 第2ネットワーク
4 治療データサーバ
7、7´ データ中継装置
8 医療情報端末
171 第1通信部
172 第2通信部
742、742´ 切換制御部
743 治療データ取得部
744 治療データ供給部
745、745´ 切換部