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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/38 20060101AFI20220930BHJP
   H01H 9/36 20060101ALI20220930BHJP
   H01H 9/46 20060101ALI20220930BHJP
   H01H 73/18 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H01H9/38
H01H9/36
H01H9/46
H01H73/18 A
H01H73/18 B
H01H73/18 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018136991
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020013757
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅沼 岳
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-144843(JP,U)
【文献】特開昭60-257033(JP,A)
【文献】実開昭63-129932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/30- 9/52
30/00-33/26
73/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に接近および離間動作が可能で主接点を介して電流が流される一対の主電極と、
相対的に接近および離間動作が可能でアーキング接点を介して電流が流される一対のアーキング電極と、
一対の前記アーキング電極の間に設けられた複数の消弧グリッドと、
複数の前記消弧グリッドの相互間、および、両端の前記消弧グリッドとそれに隣接する前記アーキング電極との間をそれぞれ連接する絶縁性で可撓性の連接材と、
を有し、
前記アーキング電極は、少なくとも前記主電極の開極動作前に前記主電極に対する並列回路を形成し、一対の前記主電極が開極された後に開極され
一対の前記アーキング電極は、前記アーキング接点および複数の前記消弧グリッドを挟持することにより閉極し、
一対の前記アーキング電極が相互に離間して開極する時に、隣接する前記消弧グリッド同士、および、両端の前記消弧グリッドとそれに隣接する前記アーキング電極は前記連接材によって互いに離間することを特徴とする回路遮断器。
【請求項2】
請求項に記載の回路遮断器において、
複数の前記消弧グリッドの動作範囲の両側が絶縁板で挟まれ、前記絶縁板は両側が磁性板で挟まれていることを特徴とする回路遮断器。
【請求項3】
請求項またはに記載の回路遮断器において、
前記消弧グリッドは、動作方向に対して直交する方向に並列する2本の延在部を有するU字形状であることを特徴とする回路遮断器。
【請求項4】
請求項のいずれか1項に記載の回路遮断器において、
前記消弧グリッドは、磁性体であることを特徴とする回路遮断器。
【請求項5】
請求項のいずれか1項に記載の回路遮断器において、
前記消弧グリッドは、動作方向に沿う両側が磁性体であることを特徴とする回路遮断器。
【請求項6】
請求項のいずれか1項に記載の回路遮断器において、
前記アーキング電極は軸回りに回転可能であり、
前記軸を中心とした円弧形状で前記消弧グリッドの移動を案内するグリッドガイドを有することを特徴とする回路遮断器。
【請求項7】
請求項のいずれか1項に記載の回路遮断器において、
一対の前記主電極の少なくとも一方は回転可能に構成され、突出する延長アームを有し、
一対の前記主電極が閉極している時、前記延長アームは前記アーキング電極を押圧することにより、前記アーキング接点を介して複数の前記消弧グリッドを挟持していることを特徴とする回路遮断器。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の回路遮断器において、
一対の前記主電極と一対の前記アーキング電極とが構成する組の少なくとも一方の組において、前記主電極と前記アーキング電極とを機械的に連動させる連動部を有し、
一対の前記主電極が相互に離間して開極された後に、前記主電極は前記連動部を介した機械的作用に基づい一対の前記アーキング電極を相互に離間させることを特徴とする回路遮断器。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の回路遮断器において、
一対の前記アーキング電極は閉極時に動作方向に対して直交する方向に並列しており、一対の前記主電極が相互に離間して開極された後に、前記機械的作用に加え、前記アーキング電極を流れる電流の電磁的作用に基づいて相互に離間することを特徴とする回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を遮断する回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電流を遮断する回路遮断器は固定電極と、固定電極に対して進退する可動電極とを有する。可動電極の可動接点が固定電極の固定接点から離間する際にアークが発生する。アークが発生したままでは電流を遮断することができずしかも接点が消耗してしまうためにアークを消弧する手段がとられる。
【0003】
特許文献1に記載された回路遮断器では、固定電極および可動電極に対応したアークホーンがそれぞれ設けられており、接点間に発生したアークをアークホーンに転流させる。アークホーンは上向きに広がっている。転流したアークは、アークホーンに沿って伸長してアーク電圧が増加する。アークはやがて複数の消弧グリッドに到達し、該消弧グリッドで分断されてさらにアーク電圧が増加されて限流遮断される。
【0004】
該回路遮断器において、アークの転流はアーク自体の電流で発生するローレンツ力を利用し、さらには電極下部からのガス吹付けによる浮力を用いる。例えば短絡事故などの大電流遮断時で数kAの短絡電流が流れる場合にはアークに働くローレンツ力は相当に大きくなりアークを転流させやすい。一方、数百Aの小電流遮断時にはアークに働くローレンツ力だけでアークを転流させにくいためガス吹付けによる浮力が有効となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-4769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アークに対してガスを吹付けても必ずしも十分迅速に転流できない場合もある。また、ガスの吹付け機構を設けることはそれだけ装置が複雑化しコスト高となる。さらに、接点間に発生するアークをアークホーンに迅速に転流可能であったとしても、アークの発生により多少なりとも接点の消耗は避けられず、しかもアークホーンからさらに消弧グリッドに転流させるまでにはある程度の時間がかかる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、簡単な構成で接点の消耗を抑制することができるとともに、アークを迅速に消弧することのできる回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる回路遮断器は、相対的に接近および離間動作が可能で主接点を介して電流が流される一対の主電極と、相対的に接近および離間動作が可能でアーキング接点を介して電流が流される一対のアーキング電極と、を有し、前記アーキング電極は、少なくとも前記主電極の開極動作前に前記主電極に対する並列回路を形成し、一対の前記主電極が開極された後に開極されることを特徴とする。
【0009】
一対の前記アーキング電極の間に設けられた複数の消弧グリッドと、一対の前記アーキング電極および複数の前記消弧グリッドの間をそれぞれ連接する絶縁性で可撓性の連接材と、を有し、一対の前記アーキング電極は、前記アーキング接点および複数の前記消弧グリッドを挟持することにより閉極し、一対の前記アーキング電極が相互に離間して開極する時に、前記アーキング電極および前記消弧グリッドは前記連接材によって互いに離間してもよい。
【0010】
複数の前記消弧グリッドの動作範囲の両側が絶縁板で挟まれ、前記絶縁板は両側が磁性板で挟まれていてもよい。
【0011】
前記消弧グリッドは、動作方向に対して直交する方向に並列する2本の延在部を有するU字形状であってもよい。
【0012】
前記消弧グリッドは、磁性体であってもよい。
【0013】
前記消弧グリッドは、動作方向に沿う両側が磁性体であってもよい。
【0014】
前記アーキング電極は軸回りに回転可能であり、前記軸を中心とした円弧形状で前記消弧グリッドの移動を案内するグリッドガイドを有してもよい。
【0015】
一対の前記主電極の少なくとも一方は回転可能に構成され、突出する延長アームを有し、一対の前記主電極が閉極している時、前記延長アームは前記アーキング電極を押圧することにより、前記アーキング接点を介して複数の前記消弧グリッドを挟持してもよい。
【0016】
一対の前記主電極と一対の前記アーキング電極とが構成する組の少なくとも一方の組において、前記主電極と前記アーキング電極とを機械的に連動させる連動部を有し、一対の前記主電極が相互に離間して開極された後に、前記主電極は前記連動部を介して前記アーキング電極を動作させて開極させてもよい。
【0017】
一対の前記アーキング電極は閉極時に動作方向に対して直交する方向に並列しており、一対の前記主電極が相互に離間して開極された後に、前記アーキング電極を流れる電流の電磁的作用により相互に離間して開極してもよい。
【0018】
一対の前記主電極は連動して開閉し、さらに一対の前記アーキング電極は前記主電極に連動して開閉してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかる回路遮断器では、一対の主電極と一対のアーキング電極とを有し、一対の主接点が開極された後に一対のアーキング電極が開極することから、主接点間にはアークが発生せずアークによる消耗がない。また、アークは当初から一対のアーキング電極間に発生することから、主電極からアーキング電極までアークを転流する必要がなく、簡単な構成でありながらアークを迅速に消弧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1の実施形態にかかる回路遮断器が閉極している状態の一部省略側面図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかる回路遮断器が開極動作開始状態の一部省略側面図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかる回路遮断器が開極動作途中状態の一部省略側面図である。
図4図4は、回路遮断器が開極動作途中状態の一部拡大側面図である。
図5図5は、第1の実施形態にかかる回路遮断器が開極動作終段状態の一部省略側面図である。
図6図6は、消弧グリッドおよびその周辺の側面図である。
図7図7は、回路遮断器の一部拡大平面図である。
図8図8は、変形例にかかる回路遮断器の一部拡大平面図である。
図9図9は、第2の実施形態にかかる回路遮断器が閉極している状態の一部省略側面図である。
図10図10は、第2の実施形態にかかる回路遮断器が開極動作終段状態の一部省略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明にかかる回路遮断器の第1実施形態および第2実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である回路遮断器10aを示す一部省略側面図である。回路遮断器10aは直流電流を遮断する装置であり、概略的に下方の主回路部12と、上方の消弧部14とを有する。主回路部12と上方の消弧部14とは明確に区分される必要はない。
【0023】
回路遮断器10aは基本的に左右対称構造となっており、いずれか一方が正極側で他方が負極側に相当する。以下、主回路部12および消弧部14の構成要素に関する説明では、特に断りのない場合には左右一対設けられているものとする。
【0024】
主回路部12は、導体部16と、主電極体18と、主電流リード20と、サブ電流リード22とを有する。主電極体18は、ベース部24と、ベース部24の下端の軸26と、ベース部24の上半分に設けられた主電極28と、主電極28に設けられた主接点30と、ベース部24から上方に突出する延長アーム32とを有する。ベース部24は軸26で軸支されて回転可能である。一対の主接点30は対向する向きに設けられており、主電極体18の回動により開閉する。主接点30の材質は例えば銅、銀、タングステンまたはこれらの合金や粉末冶金であって、消耗量が少ないことが望ましい。
【0025】
ベース部24は図示しない回動機構によって軸26を中心として左右に回転可能である。この回動機構は、例えば短絡検知ユニットによる短絡検知時に動作して回路遮断器10aを開極させる。一対の主電極体18は連動し左右対称に回転するが、相対的に接近および離間動作が可能であればよい。一対の主電極28および主接点30は、主電極体18の動作にともなって開閉する。主電流リード20は導体部16と主電極28とを導通している。
【0026】
消弧部14は、アーキング電極体34と、多数の消弧グリッド36と、紐材(連動部)38とを有する。アーキング電極体34は、ベース部40と、ベース部40の下端の軸42と、ベース部40から上方に突出する長尺なアーキング電極44と、アーキング電極44に設けられたアーキング接点46とを有する。ベース部40は軸42で軸支されて回転可能である。軸42は軸26の上方に配置されている。一対のアーキング接点46は対向する向きに設けられている。
【0027】
各消弧グリッド36は一対のアーキング電極体34の間に設けられており、アーキング電極体34および各消弧グリッド36との間は、それぞれ絶縁性で可撓性の連接材47a,47b(図4参照)で連接されている。連接材47aは軸42から遠い箇所に設けられていてやや長く、連接材47bはそれよりも軸42に近い箇所に設けられていてやや短い。アーキング電極44は、消弧グリッド36の中間位置とほぼ等しい高さに設けられている。
【0028】
各消弧グリッド36は円弧状に動作し、動作方向に対して直交する方向に並列するやや長い延在部36aおよび36b(図6参照)と、上方開口36cとを有するU字形状に形成されている。ただし、図1図5図9図10では消弧グリッド36を簡略的に棒状に示している。各消弧グリッド36は磁性体である。U字形状とは広義であって、2つの延在部36aおよび36bの一端が接続されて他端が開口する形状をいう。
【0029】
一対の主電極28が閉極している時、延長アーム32はアーキング電極44外側から閉じ方向に押圧することにより、アーキング接点46を介して複数の消弧グリッド36を挟持している。これにより、各消弧グリッド36は隣接する同士が互いに当接し合う。したがって、一対のアーキング接点46は、消弧グリッド36を介して接続されており、閉極する。サブ電流リード22は導体部16とアーキング電極44の下端部とを導通している。これにより、消弧部14のサブ電流リード22,22、アーキング電極44,44、アーキング接点46,46および複数の消弧グリッド36は導通し、主回路部12の主接点30,30に対して並列接続されることになる。
【0030】
なお、主電極28が閉極している時にはアーキング電極44も消弧グリッド36を介して常時閉極しているが、アーキング電極44は少なくとも主電極28の開極動作前に該主電極28に対する並列回路を形成していればよい。
【0031】
紐材38は、アーキング電極44の中程と延長アーム32の先端とをつないでいる可撓性部材であり、例えばワイヤである。主電極28が閉極している時に紐材38は僅かに弛みがあり、または僅かに弾性変形余裕がある。一対の主電極体18は開極動作時に相互に開くように動作し、さらに紐材38を介してアーキング電極体34を牽引して開くように動作させる。つまり、紐材38は開極動作時に主電極体18とアーキング電極体34とを連動させる機械的な連動部である。また、紐材38には弛みまたは弾性変形余裕があることにより、開極動作時には、アーキング電極体34は主電極体18よりもやや遅れて動作を開始することになる。アーキング電極体34の動作開始タイミングを主電極体18よりも確実に遅らせるために、アーキング電極体34には弾性体によって閉じ方向に弱い弾性力を付勢しておいてもよい。
【0032】
このような連動部は、一対の主電極体18と一対のアーキング電極体34とが構成する正極側の組と負極側の組の少なくとも一方の組に設けられていればよい(図9参照)。このような連動部は紐材38に限らず、例えば、遊び代を有するリンク、長孔係合機構、歯車機構であってもよい。
【0033】
消弧部14はさらに、アーキング電極体34の動作範囲および主電極28の動作範囲について図1の紙面垂直方向両側から覆う絶縁板50と、複数の消弧グリッド36の動作範囲についてさらに両側から覆う一対の磁性板52とを有する。なお、図1では、他の構成要素が視認されるように、紙面手前側の絶縁板50および磁性板52は省略している。
【0034】
絶縁板50は、アーキング電極体34および消弧グリッド36に対して紙面垂直方向で近接して設けられており(図7参照)、下方が狭く上方が広い形状である。絶縁板50には、一対の軸42を中心とした円弧形状で消弧グリッド36の移動を案内する2対のグリッドガイド50a,50bが形成されている。グリッドガイド50a,50bは溝形状である。消弧グリッド36はグリッドガイド50a,50bによって円弧状に動作するが、この動作方向は電流Iによって一時的にアークAが発生する方向である。グリッドガイド50aは軸42から遠い位置で、アーキング電極44の先端近傍に沿って設けられている。グリッドガイド50bはアーキング電極44の略中間位置に沿って設けられている。グリッドガイド50a,50bは例えばそれぞれ連接材47a,47bに近い位置に設けられている。
【0035】
各消弧グリッド36には紙面垂直方向への小突起54a,54b,54c,54d(図6参照)が設けられている。小突起54a,54cは延在部36aに設けられ、小突起54b,54dは延在部36bに設けられている。各小突起54a~54dはそれぞれ紙面垂直方向の両側に突出しているので、合計8つである。小突起54a,54bはグリッドガイド50aに嵌り、小突起54c,54dはグリッドガイド50bに嵌る。このようなグリッドガイド50a,50bおよび小突起54a~54dにより、各消弧グリッド36は、アーキング電極体34が開く方向に動作するときに円弧状に安定して広がることになる。
【0036】
次に、このように構成される回路遮断器10aの動作について説明する。
【0037】
図1に示すように、主電極28が閉極している時には、電流Iは左右いずれか一方の導体部16から流れ込み、主電流リード20、主電極28、主接点30へと流れ、さらに他方の主接点30から導体部16へと流れ出る。ただし、以下に上記のように消弧部14にも主接点30に対する並列回路が形成されるので、その部分にも電流がバイパス的に流れる。
【0038】
図2に示すように、回路遮断器10aが開極動作する際には、まず一対の主電極体18が連動して、軸26を中心としながら互いに離間する方向に回転し始める。ただし、主電極体18の延長アーム32が動作し始めても、紐材38には弛みまたは弾性余裕があるため、該紐材38に接続されたアーキング電極体34は直ちには動作を開始しない。したがって、主電極体18の動作によって一対の主電極28は互いに離間し開極するが、破線で示すように電流Iは左右いずれか一方の導体部16から流れ込み、サブ電流リード22、アーキング電極44、アーキング接点46、消弧グリッド36へと流れ、さらに他方のアーキング接点46から導体部16へとバイパスして流れ出る。これにより、一対の主接点30の間にはアークAが発生することはない。一方、一対のアーキング電極44に流れる電流Iは増加する。
【0039】
図3に示すように、主電極28の開極動作が進行すると、一対の主電極体18が連動して、軸26を中心としながらさらに離間する。これに連動するように一対のアーキング電極体34は軸42を中心として互いに離間する方向に回転し始める。このアーキング電極体34の回転動作は2つの作用による。
【0040】
まず、第1の作用は機械的作用であって、一対の主電極体18の回転動作により紐材38には弛みまたは弾性余裕がなくなり、該紐材38に接続されたアーキング電極体34を牽引する作用が働く。第2の作用は電磁的作用であって、一対の主接点30間が開くことにより一対のアーキング電極44に流れる電流Iが増加するとともに、互いに逆向きに流れることにより自己磁界で離間し合う作用が働く。特に、一対のアーキング電極44は開極動作開始時(図2参照)は動作方向に直交する方向に並列しており、適度に長く、しかも略下半分には相互間に介在物がないことから自己磁界が作用しやすく、離間しやすい。
【0041】
これらの2つの作用によってアーキング電極体34は互いに離間し、複数の消弧グリッド36は連接材47a,47bに牽引されて両側から順に離れ始め、グリッドガイド50a,50bに沿って移動する。なお、アーキング電極体34の回動は、小電流遮断時には主に機械的な第1の作用に基づき、大電流遮断時には主に電磁的な第2の作用に基づく。大電流遮断時で第2の作用としての電磁力が強い場合には、アーキング電極体34の離間速度が速くなり、アーキング電極44が延長アーム32に当接・押圧することになり主電極体18の回動をアシストする。このように延長アーム32は大電流遮断時にアーキング電極44によって押圧される被アシストの作用と、上記のように閉極時に一対のアーキング電極44を押さえつける作用とを有する。
【0042】
図4に示すように、アーキング電極体34が動作すると、アーキング電極44は消弧グリッド36から離間することから、この部分にアークAが発生する。消弧グリッド36同士の間も離間した箇所にはアークAが発生し、アーク電圧が増加する。図4から明らかなように、アークAは主電極28から転流されるのではなく、消弧グリッド36が存在する箇所で発生するので直ちに消弧機能が作用し始め、白抜き矢印のように上方に向かって転流する。すなわち、アーキング電極44は位置や形状が従来のアークホーンに類似する部材とも言えるが、主電極28からアークAが転流することがない点において異なっている。
【0043】
図5に示すように、主電極28の開極動作がさらに進行して一対の主電極体18および一対のアーキング電極体34が最大開度に達すると、全ての消弧グリッド36も互いに連接材47a,47bによって牽引されて離間し合い、それぞれグリッドガイド50a,50bに沿って移動する。一対のアーキング電極44の開度は、例えば100°程度となるまで移動し、アーキング電極44および消弧グリッド36はほぼ等角度間隔の放射状に広がる。アークAは一対のアーキング接点46の間を全ての消弧グリッド36を通るように発生し、電流Iはこの経路で流れる。アークAは、多数の消弧グリッド36によって消弧作用を受けながら自身のローレンツ力により消弧部14の上方に移動し、消弧グリッド36の間隔が広くなることによってさらに消弧力が強まり、消弧する。
【0044】
ところで、隣接する消弧グリッド36同士には離間し合う作用があるので、以下に説明する。
【0045】
図6に示すように、電流Iは1つの消弧グリッド36を通る際、一方の延在部36aから下側に流れ、U字の底部を経由し、他方の延在部36bを上昇し、さらにアークAとなって隣の消弧グリッド36に流れ出る。つまり、電流Iは延在部36aと延在部36bとでは逆向きに流れることになる。
【0046】
図7に示すように、隣接する2つの消弧グリッド36の一方を消弧グリッド36αとし、他方を消弧グリッド36βとして区別する。消弧グリッド36αの延在部36aに流れる電流と消弧グリッド36βの延在部36bに流れる電流は逆向きとなっている。ここで、前者に流れる電流によって発生する磁束Φについて着目すると、この磁束Φは磁性体である消弧グリッド36αおよび両側の磁性板52によって磁路が確保されることになり、外部への漏出が少なくなる。こうして、磁束Φは隣接する消弧グリッド36βにおける延在部36bに対して適度に強く作用する。
【0047】
延在部36aと延在部36bとでは電流の向きが逆であり、しかも磁束Φは延在部36bの電流に対して略直交することから、消弧グリッド36βは白抜き矢印で示すように、消弧グリッド36αから離間する方向のローレンツ力を受ける。このような作用は隣接する各消弧グリッド36同士の間で働くことから互いに速く離間することになる。消弧グリッド36同士が速く離間し合うことでアークAは伸長され、アーク電圧がさらに高まり、迅速に消弧されることになる。
【0048】
また、消弧性能、耐弧性能、耐溶着性などの条件によっては消弧グリッド36自体を磁性体にするのではなく、図8に示すように消弧グリッド36自体は非磁性体とし、その両側面を磁性体36dで構成してもよい。磁性体36dは、例えばパーマロイ加工を用いることができる。このような磁性体36dによれば、集磁性能の向上による稼働速度の向上が見込まれる。
【0049】
このように構成される回路遮断器10aによれば、閉極時の通電用の主電極28とは別に開極動作時にアークAを発生させるアーキング電極44を設けていることから、主電極28の主接点30にはアークAが発生することがなく、消耗はほとんどない。そのため、主接点30は耐アーク性能については考慮する必要がなく、その代わりに接点抵抗および接点発熱が小さくなる性能に重点をおいて材質選択をすることができ、通電性能を向上させることができる。
【0050】
一方、アーキング電極44のアーキング接点46については、閉極している通電時の通電性能については特段に考慮する必要がなく、その代わりに耐アーク性能に重点をおいて材質選択をすることができ、例えばタングステンの含有量を増やすなどの対策をとることができる。これにより、アーキング接点46の消耗量を抑制することができる。
【0051】
また、回路遮断器10aでは閉極動作時のアークAは一対のアーキング電極44の間で発生し、この部分には多数の消弧グリッド36が設けられている。したがって、従来技術にかかる回路遮断器のように主電極間で発生したアークAをアークホーンに転流してさらに消弧グリッドにまで転流する必要がなく、消弧グリッド36により迅速にアークAを消弧することができる。特に、従来技術にかかる回路遮断器における小電流遮断時には電磁力が小さいため、アークAを主電極からアークホーンおよび消弧グリッドまで転流させることが困難であり、または時間がかかるが、回路遮断器10aにおいては電流の大小によらずアークAが消弧グリッド36を介したアーキング接点46に発生することから、限流遮断性能が高い。また、アーキング電極44と消弧グリッド36間に発生するアークAのアーク電圧の向上(高限流性能)が図られる。
【0052】
さらに、消弧グリッド36が折り返しのU字形状となっていることから、開極動作時に消弧グリッド36自身が電磁反発力で互いに離間し合って広がり、アークAの消弧を早めることができる。
【0053】
さらにまた、一対の主電極28および一対の主接点30はいずれも固定されずに連動して開閉することから、これらと連動する一対のアーキング電極44および一対のアーキング接点46の動作範囲が広くなり、アークAを消弧しやすくなる。
【0054】
回路遮断器10aは、従来技術にかかる回路遮断器のようにガス吹付け機構がなくても省電力遮断時のアークAを消弧することができ、構造が簡略で廉価であるが、条件によってはガス吹付け機構やその他の機構を併用してもよい。
【0055】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態である回路遮断器10bを示す一部省略側面図である。回路遮断器10bにおいて上記の回路遮断器10aにおける構成要素と同様のものには同符号を付してその詳細な説明を省略する。概略的には、回路遮断器10bは上記の回路遮断器10aにおける左右いずれか半分を筺体60内で横向きに収めた構成である。筺体60には通気口60aが設けられている。
【0056】
図9に示すように、回路遮断器10bにおける下側の回路は導体部16と横に長尺な金属板62で構成されている。金属板62は主電極28およびアーキング電極44を兼ねている。回路遮断器10bにおける上側の回路では、主電極28はベース部24を兼ねており、紐材38はサブ電流リード22を兼ねている。この場合の延長アーム32は導体とする。なお、ここで言う上側または下側とは説明の便宜上のものであり、回路遮断器10bを設置する向きは図9図10の例に限られない。
【0057】
一対の導体部16は、筺体の左右から内側に向かって延在しており、一方は主電流リード20を介して上側の主電極28とつながり、他方は金属板62とつながっている。金属板62と導体部16の一方(図9の左側)とは上下に並列し、その間には絶縁材が介在している。導体部16の他方(図9の右側)も絶縁材で覆われている。
【0058】
金属板62には主接点30が設けられていないが、上側の主接点30と接触する仮想線で示す箇所が主接点30とみなされる。同様に金属板62にはアーキング接点46が設けられていないが、上側のアーキング接点46と消弧グリッド36を介して接触する仮想線で示す箇所がアーキング接点46とみなされる。
【0059】
図10に示すように、主電極体18が回動するとアーキング電極体34も紐材38によって牽引されて回動する。主電極28は開極しアーキング電極44に電流を転流させる。アーキング電極44と各消弧グリッド36との間にはアークAが発生するが、消弧グリッド36の作用によりアーク長が伸長され、アーク電圧が高まって消弧される。
【0060】
このような回路遮断器10bは上記の回路遮断器10aと同様の効果が得られ、しかもコンパクトで廉価な構造であり、例えばブレーカとして利用可能である。
【0061】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10a,10b 回路遮断器
12 主回路部
14 消弧部
16 導体部
18 主電極体
20 主電流リード
22 サブ電流リード
26,42 軸
28 主電極
30 主接点
32 延長アーム
34 アーキング電極体
36,36α,36β 消弧グリッド
36a,36b 延在部
36d 磁性体
38 紐材(連動部)
44 アーキング電極
46 アーキング接点
47a,47b 連接材
50a,50b グリッドガイド
50 絶縁板
52 磁性板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10