(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】将来推計システム及び将来の介護状況を推計する方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/22 20180101AFI20220930BHJP
【FI】
G06Q50/22
(21)【出願番号】P 2018137402
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2020-10-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】伴 秀行
(72)【発明者】
【氏名】森池 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西川 勇人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 智
【審査官】安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】福岡市,ビッグデータ分析で医療・介護などの行政施策の立案を支援する地域包括ケアプラットフォームを構築,Hitachi Social Innovation Forum 2017 ,2017年10月号,株式会社日立製作所,2017年11月01日,1-2
【文献】田中 周二,研究論文:介護状態生命表の作成,日本大学文理学部,2017年11月26日,1-17,https://iec.keio.ac.jp/upload/20180522_econo_tanaka_abstract_KAIGO20171031.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -99/00
G16H 10/00 -80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
将来の介護状況を推計する将来推計システムであって、
所定の処理を実行する演算装置と、データが入力される入力部と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、
前記入力部は、第1時点及び第2時点の複数人分の住民データ及び順序尺度データである介護データの入力を受け、
前記将来推計システムは、
前記演算装置が、前記介護データと前記住民データとを個人単位で連結して、前記第1時点及び前記第2時点の整形データを作成するデータ整形部と、
前記演算装置が、前記m段階の要介護度からm-1個の目的変数を作成する二値化処理部と、
前記演算装置が、前記第1時点の前記整形データを説明変数として前記目的変数別の回帰分析によって生成されたm-1個の回帰式からなる介護度推計モデルに前記第2時点の前記整形データを入力して、第3時点の前記要介護度別の確率を推計する介護度推計部とを有し、
前記二値化処理部が作成する目的変数は、前記第2時点の前記介護データに含まれるm段階の要介護度
以上である場合に「1」、当該段階の要介護度より小さい場合に「0」をとるように二値化され、m-1個の目的変数の各々が「1」と「0」の1ビットで表されることを特徴とする将来推計システム。
【請求項2】
請求項1に記載の将来推計システムであって、
前記目的変数別に、前記第1時点の前記整形データを説明変数とした回帰分析を行い、m-1個の回帰式からなる介護度推計モデルを作成する介護度推計モデル構築部を有することを特徴とする将来推計システム。
【請求項3】
請求項1に記載の将来推計システムであって、
前記入力部は、前記第1時点と前記第2時点における、複数人分の疾病別の医療機関受診有無及び疾病別の医療費を少なくとも含む医療データの入力を受け、
前記データ整形部は、前記介護データと前記住民データと前記医療データとを個人単位で連結して、前記第1時点及び前記第2時点の整形データを作成することを特徴とする将来推計システム。
【請求項4】
請求項1に記載の将来推計システムであって、
前記入力部は、前記第1時点と前記第2時点における、複数人分の健診受診有無を少なくとも含む健診データの入力を受け、
前記データ整形部は、前記介護データと前記住民データと前記健診データとを個人単位で連結して、前記第1時点及び前記第2時点の整形データを作成することを特徴とする将来推計システム。
【請求項5】
請求項1に記載の将来推計システムであって、
入力された条件に従って、前記第3時点の前記要介護度別の確率を集計し、前記要介護度別の推計人数を算出する推計結果集計部を有することを特徴とする将来推計システム。
【請求項6】
請求項1に記載の将来推計システムであって、
前記第2時点の要介護度と前記第2時点の介護費との関係を分析し、要介護度から介護費を推計する介護費推計モデルを構築する介護費推計モデル構築部と、
前記第3時点の前記要介護度別の確率を前記介護費推計モデルに入力して前記第3時点の介護費を推計する介護費推計部とを有することを特徴とする将来推計システム。
【請求項7】
請求項6に記載の将来推計システムであって、
入力された条件に従って、前記第3時点の前記介護費を集計し、前記介護費の推計額を算出する推計結果集計部を有することを特徴とする将来推計システム。
【請求項8】
請求項6に記載の将来推計システムであって、
ある目的変数への寄与が大きい説明変数を前記介護度推計モデルから抽出する説明変数抽出部と、
前記整形データに含まれる一部のデータを変更する入力値変更部と、
要介護度別の確率差及び介護費の差を推計する施策効果推計部とを有し、
前記説明変数抽出部は、前記入力部に入力された目的変数について、前記回帰式の係数を標準誤差で除して計算されるZ値が小さい説明変数を前記介護度推計モデルから抽出し、
前記入力値変更部は、前記第2時点の整形データにおいて、前記Z値が小さい説明変数に対応するデータを変更し、
前記介護度推計部は、前記データが変更された整形データを前記介護度推計モデルに入力し、前記データ変更後の前記第3時点の前記要介護度別の確率を推計し、
前記介護費推計部は、前記データ変更後の前記第3時点の前記要介護度別に推計された確率を前記介護費推計モデルに入力し、前記データ変更後の前記第3時点の前記介護費を推計し、
前記施策効果推計部は、前記推計された前記第3時点の前記要介護度別の確率と前記データ変更後の前記第3時点の前記要介護度別の確率との差分である前記第3時点の前記要介護度別の確率差を推計し、前記第3時点の前記介護費と前記データ変更後の前記第3時点の前記介護費との差分である前記第3時点の介護費差を推計することを特徴とする将来推計システム。
【請求項9】
請求項8に記載の将来推計システムであって、
入力された条件に従って、前記第3時点の前記要介護度別の確率差を集計し、前記要介護度別の抑制人数を算出し、さらに、入力された条件に従って、前記第3時点の前記介護費差を集計し、前記介護費の抑制額を算出する推計結果集計部を有することを特徴とする将来推計システム。
【請求項10】
計算機システムが、将来の介護状況を推計する方法であって、
前記計算機システムは、所定の処理を実行する演算装置と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを有し、
前記記憶装置は、整形データを説明変数として目的変数別の回帰分析によって生成されたm-1個の回帰式からなる介護度推計モデルを記憶し、
前記方法は
前記演算装置が、第1時点及び第2時点の複数人分の住民データ及び順序尺度データである介護データの入力を受ける入力手順と、
前記演算装置が、前記介護データと前記住民データとを個人単位で連結して、前記第1時点及び前記第2時点の整形データを作成するデータ整形手順と、
前記演算装置が、前記m段階の要介護度からm-1個の目的変数を作成する二値化処理手順と、
前記演算装置が、前記第2時点の前記整形データを前記介護度推計モデルに入力して、第3時点の前記要介護度別の確率を推計する介護度推計手順を含み、
前記二値化処理手順で作成される目的変数は、前記第2時点の前記介護データに含まれるm段階の要介護度
以上である場合に「1」、当該段階の要介護度より小さい場合に「0」をとるように二値化され、m-1個の目的変数の各々が「1」と「0」の1ビットで表されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記演算装置が、前記目的変数別に、前記第1時点の前記整形データを説明変数とした回帰分析を行い、m-1個の回帰式からなる介護度推計モデルを作成する介護度推計モデル構築手順を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記入力手順では、前記演算装置が、前記第1時点と前記第2時点における、複数人分の疾病別の医療機関受診有無及び疾病別の医療費を少なくとも含む医療データの入力を受け、
前記データ整形手順では、前記演算装置が、前記介護データと前記住民データと前記医療データとを個人単位で連結して、前記第1時点及び前記第2時点の整形データを作成することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、
前記入力手順では、前記演算装置が、前記第1時点と前記第2時点における、複数人分の健診受診有無を少なくとも含む健診データの入力を受け、
前記データ整形手順では、前記演算装置が、前記介護データと前記住民データと前記健診データとを個人単位で連結して、前記第1時点及び前記第2時点の整形データを作成することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、
前記演算装置が、前記演算装置が、入力された条件に従って、前記第3時点の前記要介護度別の確率を集計し、前記要介護度別の推計人数を算出する推計結果集計手順を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、
前記演算装置が、前記第2時点の要介護度と前記第2時点の介護費との関係を分析し、要介護度から介護費を推計する介護費推計モデルを構築する介護費推計モデル構築手順と、
前記演算装置が、前記第3時点の前記要介護度別の確率を前記介護費推計モデルに入力して前記第3時点の介護費を推計する介護費推計手順とを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、将来の介護度を推計する将来推計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住民の健康寿命の延伸や介護費の適正化の社会的要請がある。このため、自治体では、地域包括ケアや科学的介護など自治体に蓄積された介護・医療・健診データの利活用を進めており、現在の介護状況だけでなく、将来の介護度及び介護費も把握して、効果的な介護施策を立案・実行することが重要である。また、効果的な介護施策を立案するためには、地域や個人の特性を考慮した施策立案が重要であり、自治体全体だけでなく、地区単位、校区単位、個人単位など、より細かいミクロな単位で、将来の介護度及び介護費を推計できる必要がある。
【0003】
介護度を推計する従来例としては、特許文献1(特開2006-146763号公報)及び特許文献2(特開2001-34688号公報)がある。特許文献1に開示された介護者数予測システムは、要介護度別需要予測、需給バランス分析に基づき、介護者数予測を行うものであり、その構成は、要介護者の対象範囲および予測期間を設定する設定項目入力部、メッシュ人口を記録するデータベース、所定の人口予測を行うデータ作成部、予測人口を出力する出力処理部、要介護に関連するデータを記録するデータベース、介護需要予測処理部、予測介護認定者数の出力処理部、集計、グラフなどの結果分析を行う分析処理部、周辺福祉施設データを記録するデータベース、需給バランス分析を行う分析処理部、出力処理部からなる。
【0004】
また、特許文献2に開示された処置データ推定方法では、新たな認定対象者に関する入力ベクトル参照データベース中の入力ベクトルとの距離を所定の位相で計算し、距離の近い参照用入力ベクトルを探索する。次に、探索された参照用入力ベクトルに対応する出力ベクトルに対し、その距離に応じた重み付けをする。そして、重み付けされた出力ベクトルの平均値に基づいて当該認定対象者に対する適正な処置データを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-146763号公報
【文献】特開2001-34688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された介護者数予測システムは、現在の介護度別の人数構成比に将来推計人口を乗じて、将来の介護度別の介護認定者数をマクロに推計するものであり、地区単位、校区単位、個人単位など、より細かいミクロな単位で、将来の介護度および介護費を推計することが困難である。また、特許文献2に開示された処置データ推定方法は、過去データを参照して、介護度以外の現状の医療処置状況と生活状況データから、現状の介護度を推定するものであり、将来の介護度及び介護費の推計は考慮されていない。
【0007】
そこで、本発明は、住民データ及び介護データから将来の介護度を個人単位に高精度に推計し、自治体の介護施策立案を支援する将来推計システムを提供し、さらに、介護費を推計したり、医療データや健診データを用いて推計精度を向上できる将来推計システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、将来の介護状況を推計する将来推計システムであって、所定の処理を実行する演算装置と、データが入力される入力部と、前記演算装置がアクセス可能な記憶装置とを備え、前記入力部は、第1時点及び第2時点の複数人分の住民データ及び順序尺度データである介護データの入力を受け、前記将来推計システムは、前記演算装置が、前記介護データと前記住民データとを個人単位で連結して、前記第1時点及び前記第2時点の整形データを作成するデータ整形部と、前記演算装置が、前記m段階の要介護度からm-1個の目的変数を作成する二値化処理部と、前記演算装置が、前記第1時点の前記整形データを説明変数として前記目的変数別の回帰分析によって生成されたm-1個の回帰式からなる介護度推計モデルに前記第2時点の前記整形データを入力して、第3時点の前記要介護度別の確率を推計する介護度推計部とを有し、前記二値化処理部が作成する目的変数は、前記第2時点の前記介護データに含まれるm段階の要介護度以上である場合に「1」、当該段階の要介護度より小さい場合に「0」をとるように二値化され、m-1個の目的変数の各々が「1」と「0」の1ビットで表される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、住民データ及び介護データから、個人単位の将来の介護度を高精度に推計でき、自治体の効果的な介護施策の立案を支援できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の将来推計システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】実施例1の介護度推計モデルの例を示す図である。
【
図8】介護度推計結果表示画面の例を示す図である。
【
図10】実施例2の将来推計システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】実施例2の整形データの例を示す図である。
【
図14】実施例2の介護度推計モデルの例を示す図である。
【
図15】実施例3の将来推計システムの構成を示すブロック図である。
【
図17】介護度・介護費推計結果の例を示す図である。
【
図18】介護度・介護費推計結果表示画面の例を示す図である。
【
図20】実施例4の将来推計システムの構成を示す図である。
【
図21】実施例5の将来推計システムの構成を示す図である。
【
図22】介護サービス実施率が100%の場合の介護度・介護費推計結果の例を示す図である。
【
図23】介護サービス実施率が0%の場合の介護度・介護費推計結果の例を示す図である。
【
図24】介護サービス実施率が30%の場合の介護施策効果シミュレーション画面の例を示す図である。
【
図25】介護サービス実施率が60%の場合の介護施策効果シミュレーション画面の例を示す図である。
【
図26】介護施策効果推計処理のフローチャートである。
【
図27】健診受診率が100%の場合の介護度・介護費推計結果の例を示す図である。
【
図28】健診受診率が0%の場合の介護度・介護費推計結果の例を示す図である。
【
図29】健診受診率が20%の場合の介護施策効果シミュレーション画面の例を示す図である。
【
図30】健診受診率が80%の場合の介護施策効果シミュレーション画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための実施例を、図面を用いて説明する。
【0012】
本発明の実施例1では、住民データ及び介護データから将来の介護度を推計し、自治体の介護施策立案を支援する将来推計システムを説明する。実施例2では、介護データ及び住民データに医療データ及び健診データを加えて、将来の介護度を推計する将来推計システムを説明する。実施例3では、将来の介護度及び介護費を推計する将来推計システムを説明する。実施例4では、介護データ、住民データ、医療データ及び健診データから、将来の介護度及び介護費を推計する将来推計システムを説明する。実施例5では、介護度推計モデルから、将来の介護発生又は介護進行を抑制する施策となる説明変数を抽出し、その施策の効果を推計する将来推計システムを説明する。
【0013】
<実施例1>
実施例1では、蓄積された介護データ及び住民データから、将来の介護度を個人単位に推計する将来推計システムの例を説明する。なお、要介護度の段階mは、介護度無、要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の8段階(m=8)として説明する。
【0014】
図1は、実施例1の将来推計システムの構成を示すブロック図である。
【0015】
実施例1の将来推計システムは、将来推計端末101及びデータベース120を有する。
【0016】
将来推計端末101は、入力部102、出力部103、プロセッサ(CPU)104、メモリ105及び記憶媒体106を有する計算機である。
【0017】
入力部102は、マウス、キーボードなどのヒューマンインターフェースであり、将来推計端末101への入力を受け付ける。出力部103は、将来推計端末101による演算結果を出力するディスプレイやプリンタである。記憶媒体106は、将来推計端末101による介護度推計処理を実現する各種プログラム、及び介護度推計処理の実行結果等を格納する記憶装置であり、例えば、不揮発性記憶媒体(磁気ディスクドライブ、不揮発性メモリ等)で構成される。
【0018】
メモリ105は、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサ104が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。すなわち、メモリ105には、記憶媒体106に格納されているプログラムが展開される。
【0019】
プロセッサ104は、メモリ105にロードされたプログラムを実行する演算装置であり、例えば、CPU、GPUなどである。以下に説明する処理及び演算は、プロセッサ104が実行する。なお、プロセッサ104がプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア)で実行してもよい。
【0020】
本実施例の将来推計システムは、一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。
【0021】
プロセッサ104によって実行されるプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワークを介して各サーバに提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性記憶装置に格納される。このため、計算機システムは、リムーバブルメディアを読み込むインターフェースを備えてもよい。
【0022】
記憶媒体106は、データ整形部111、二値化処理部112、介護度推計モデル構築部113、介護度推計部114、推計結果集計部115を実現するためのプログラムを格納する。
【0023】
データ整形部111は、入力部102に入力された複数人分の、少なくとも2年度分(T年度とT-n年度)の要介護度・介護費等を含む介護データ(
図2)と、性別・年齢・住所等を含む住民データ(
図3)を取得し、各データを個人別かつ年度別に連結した上で、個人を行に、年度を列に展開した整形データ(
図4)を作成する。
【0024】
二値化処理部112は、データ整形部111で作成された整形データから、T年度の要介護度を取得し、順序尺度データである8段階の要介護度(介護度無(0)<要支援1(1)<要支援2(2)<要介護1(3)<要介護2(4)<要介護3(5)<要介護4(6)<要介護5(7))を7箇所で2値化し、T年度の要介護度について7個の目的変数1~7(
図5)を作成する。ここで、目的変数1は要支援1以上(1)と介護度無(0)、目的変数2は要支援2以上(1)と要支援1以下(0)、目的変数3は要介護1以上(1)と要支援2以下(0)、目的変数4は要介護2以上(1)と要介護1以下(0)、目的変数5は要介護3以上(1)と要介護2以下(0)、目的変数6は要介護4以上(1)と要介護3以下(0)、目的変数7は要介護5以上(1)と要介護4以下(0)に二値化される。
【0025】
介護度推計モデル構築部113は、二値化処理部112で作成されたT年度の要介護度における7個の目的変数1~7について、T-n年度の整形データを説明変数としたロジスティック回帰分析を各目的変数別に7回実行し、7個のロジスティック回帰式から構成される介護度推計モデル(
図6)を構築する。なお、将来推計システムの外部から介護度推計モデルが提供される場合、将来推計端末101は介護度推計モデル構築部113を有さなくてもよい。
【0026】
介護度推計部114は、介護度推計モデル構築部113で構築された介護度推計モデルに、T年度の整形データが入力されると、T+n年度の要介護度別の確率を個人別に推計する(
図7)。目的変数1の要支援1以上の確率をP1、目的変数2の要支援2以上の確率をP2、目的変数3の要介護1以上の確率をP3、目的変数4の要介護2以上の確率をP4、目的変数5の要介護3以上の確率をP5、目的変数6の要介護4以上の確率をP6、目的変数7の要介護5以上の確率をP7とすると、要介護度別の確率(NP)は、介護度無(NP0)が1-P1、要支援1(NP1)がP1-P2、要支援2(NP2)がP2-P3、要介護1(NP3)がP3-P4、要介護2(NP4)がP4-P5、要介護3(NP5)がP5-P6、要介護4(NP6)がP6-P7、要介護5(NP7)がP7で推計される。
【0027】
推計結果集計部115は、入力部102に入力されたユーザの集計条件(T年度の性別、年齢、住所など)に基づいて、介護度推計部114で推計された個人別の介護度推計結果を集計して、任意の集団単位で介護度別の将来推計人数を出力部103に表示する(
図8)。
【0028】
データベース120は、介護データ記憶部121、住民データ記憶部122、整形データ記憶部123、介護度推計モデル記憶部124及び推計結果記憶部125から構成される。
【0029】
介護データ記憶部121は、入力部102に入力された複数人かつ複数年度分の要介護度、介護費、受給した介護サービス、訪問調査結果(ADL:日常生活動作、IADL:手段的日常生活動作など)などの介護データを格納する。
【0030】
住民データ記憶部122は、入力部102に入力された複数人かつ複数年度分の性別、年齢、住所などの住民データを格納する。
【0031】
整形データ記憶部123は、データ整形部111で作成した整形データを格納する。
【0032】
介護度推計モデル記憶部124は、介護度推計モデル構築部113で構築した介護度推計モデルを格納する。
【0033】
推計結果記憶部125は、介護度推計部114が推計した介護度推計結果を格納する。
【0034】
図2は、介護データ記憶部121が格納する介護データ200の例を示す図である。
【0035】
介護データ200は、複数の住民の複数年分の介護データを管理する。介護データ200は、個人ID201、年度202、要介護度203、介護費204、日常生活自立度205、介護サービスの受給有無(通所介護211、介護予防支援212、介護保健施設213など)、介護サービスの受給回数(通所介護211、介護予防支援212、介護保健施設213など)、訪問調査結果(両足立位保持221、短期記憶222、移動223、食事摂取224、排便225、薬内服226など)を含む。
【0036】
個人ID201は、一人の住民を示す識別子が登録される。年度202は、介護データが記録された年度を示す情報が登録される。要介護度203は、個人ID201の住民における各年度の要介護度を、0(介護度無)、1(要支援1)、2(要支援2)、3(要介護1)、4(要介護2)、5(要介護3)、6(要介護4)、7(要介護5)の区分で記録する。日常生活自立度205は、個人ID201の住民の各年度の日常生活自立度を、0(自立)、1(ランクI)、2(ランクIIa)、3(ランクIIb)、4(ランクIIIa)、5(ランクIIIb)、6(ランクIV)、7(ランクM)の区分で記録する。介護サービス有無211~213は、個人ID201の住民が各年度に受給した介護サービスを、その種類ごとに1(有)又は0(無)で記録し、介護サービス回数215~217は、その種類ごとに受給した回数を記録する。また、訪問調査結果221~226は、要介護認定の際に調査される74項目の訪問調査結果であり、個人ID201の各年度のADL(日常生活動作である両足立位保持221、移動223、食事摂取224、排便225等)、IADL(手段的日常生活動作である薬内服226等)、認知機能としての短期記憶222などを記録しており、例えば、両足立位保持221では、0(できる)、1(支えが必要)又は2(できない)を記録し、短期記憶222では、0(できる)又は1(できない)を記録する。訪問調査結果は、身体機能・起居動作20項目、生活機能(ADL)12項目、認知機能9項目、精神・行動障害15項目、社会生活への適応(IADL)6項目、特別な医療12項目の計74項目の調査項目からなり、介護データ200は、これらの調査結果を記録する。
【0037】
図3は、住民データ記憶部122が格納する住民データ300の例を示す図である。
【0038】
住民データ300は、複数の住民の複数年分の住民データを管理する。住民データ300は、個人ID201、年度202、性別303、年齢304、住所305などを含む。年度202は、住民データが記録された年度を示す情報が登録される。性別303は、個人ID201の住民における性別が登録され、年齢304は、その住民の年齢が年度202別に登録される。また、住所305は、個人ID201の住民の住所が年度ごとに登録される。この例では、A区、B区など地区単位で登録している例を示す。
【0039】
図4は、データ整形部111が作成し、整形データ記憶部123が格納する整形データ400の例を示す図である。
【0040】
整形データ400は、住民データ300及び介護データ200から、複数人分の複数年度分(例えば、T-n年度、T年度の2年度)のデータを抽出し、個人ID201及び年度202で連結して、個人を行に、年度を列に展開したデータである。図示する例では、整形データ400は、個人ID201の住民におけるT-n年度の住民・介護データ401とT年度の住民・介護データ402を示す。このn年の間隔があいた2時点の整形データ400を作成することによって、現在(T年度)データから将来(T+n年度)の介護度を推計できる。
【0041】
図5は、二値化処理部112が要介護度を二値化して7個の目的変数を作成する処理を示す図である。
【0042】
図5は、整形データ400から、T年度の要介護度を取得し、順序尺度データである8段階の要介護度(介護度無(0)<要支援1(1)<要支援2(2)<要介護1(3)<要介護2(4)<要介護3(5)<要介護4(6)<要介護5(7))を7箇所で2値化し、T年度の要介護度について7個の目的変数1~7(501~507)を作成する処理を示す。この処理によって、目的変数1(501)は要支援1以上(1)と介護度無(0)に二値化され、目的変数2(502)は要支援2以上(1)と要支援1以下(0)に二値化され、目的変数3(503)は要介護1以上(1)と要支援2以下(0)に二値化され、目的変数4(504)は要介護2以上(1)と要介護1以下(0)に二値化され、目的変数5(505)は要介護3以上(1)と要介護2以下(0)に二値化され、目的変数6(506)は要介護4以上(1)と要介護3以下(0)に二値化され、目的変数7(507)は要介護5以上(1)と要介護4以下(0)に二値化される。
【0043】
図6は、介護度推計モデル構築部113が構築し、介護度推計モデル記憶部124が格納する介護度推計モデル600の例を示す図である。
【0044】
介護度推計モデル600は、介護度推計モデル構築部113が構築した7個のロジスティック回帰式であり、二値化したT年度の要介護度である目的変数1~7(501~507)別に、T-n年度の説明変数601の回帰係数(611~617)とZ値(621~627)を記録する。目的変数1~7が示す2値化した要介護度の確率をPi(i=1~7)、説明変数をXj(j=1~J)、回帰係数をaij(i=1~7、j=1~J)とすると、介護度推計モデル600は式1で表される。なお、Jは説明変数の数である。
【0045】
Pi=1/(1+exp(-Yi)), Yi=ai1×X1+・・・+aiJ×XJ (式1)
【0046】
また、Z値bij(621~627)は、回帰係数aijをその標準誤差で割った値である。この値は、説明変数間の単位の違いを補正した値であり、目的変数に与える寄与の大きさを説明変数間で比較できる値である。
図5及び
図6に示すように、二値化したT年度の要介護度である目的変数1~7に与える寄与が高い説明変数を目的変数別に分析でき、介護の発生又は抑制、及び介護度の進行又は抑制に寄与する説明変数を抽出できる。例えば、目的変数1(501)のZ値621が正でその値が大きい説明変数は、要支援1以上の発生(介護の発生)への寄与が高い説明変数であり、逆に、Z値621が負で、その値が小さい説明変数は、要支援1以上の抑制(介護の抑制)への寄与が高い説明変数となる。また、目的変数4(504)のZ値624が正でその値が大きい説明変数は、要介護2以上の発生(介護の進行)への寄与が高い説明変数であり、逆に、Z値621が負で、その値が小さい説明変数は、要介護2以上の抑制(介護の進行抑制)への寄与が高い説明変数である。
【0047】
図7は、介護度推計部114が推計し、推計結果記憶部125が格納する介護度推計結果700の例を示す図である。
【0048】
介護度推計結果700は、T年度の整形データ402と、T年度の整形データ402を介護度推計モデル600に入力して推計したT+n年度の要介護度別の確率NP701を個人別に記録する。T+n年度の要介護度別の確率NP701は、介護度無の確率NP0(711)、要支援1の確率NP1(712)、要支援2の確率NP2(713)、要介護1の確率NP3(714)、要介護2の確率NP4(715)、要介護3の確率NP5(716)、要介護4の確率NP6(717)、要介護5の確率NP7(718)を含み、前述した式1で表される介護度推計モデル600にT年度の整形データ402を入力して算出され、T+n年度の2値化された要介護度の確率Piから推計する。具体的には、T+n年度の要介護度別の確率をNPi(i=0~7)は、式2で推計できる。なお。P0=0、P8=1とする。
【0049】
NPi=Pi-P(i+1) (式2)
【0050】
これにより、現状の介護データ及び住民データから将来の介護度を個人別に推計できる。
【0051】
図8は、推計結果集計部115が、出力部103に出力する介護度推計結果表示画面800の例を示す図である。
【0052】
介護度推計結果表示画面800は、集計条件入力欄810及び介護度別推計人数表示欄820を含む。集計条件入力欄810は、この例では、T年度の性別811及び年齢812を入力する欄を設けているが、整形データに格納されているT年度の任意のデータ項目を条件として入力する欄を設けてもよい。介護度別推計人数表示欄820は、集計条件入力欄810に入力された条件に合致する介護度推計結果700を、T年度の介護度別人数(821~824)及びT+n年度の介護度別推計人数(831~834)を住所別(地区別)に表示する。図示する例では、要介護2以上を表示している。住所別(地区別)のT+n年度の介護度別推計人数は、介護度推計結果700を用いて、住所別(地区別)に、要介護度別の確率NP0~NP7(711~718)を集計して算出する。
図7に示す介護度推計結果700の例では、A区に住んでいる住民は、個人IDがK0001及びK0003であるので、A区の介護度無の推計人数はNP01+NP03、要支援1はNP11+NP13、要支援2はNP21+NP23、要介護1はNP31+NP33、要介護2はNP41+NP43、要介護3はNP51+NP53、要介護4はNP61+NP63、要介護5はNP71+NP73で各々算出される。これにより、地区単位など任意の条件で将来の介護度別の人数を推計でき、自治体の地区診断に活用できる。例えば、
図8に示すように、将来(T+n年度)の要介護2以上の人数について、A区がB区より増加し、C区がD区より増加することが推計できれば、A区とC区に対して重点的に介護予防施策を適用するなどの効果的な施策立案が可能になる。
【0053】
次に、
図9のフローチャートを用いて、介護度推計処理を説明する。
【0054】
図9の処理を開始すると、まず、データ入力ステップ901を実行する。データ入力ステップ901では、将来推計端末101の入力部102が、介護データ200(
図2)及び住民データ300(
図3)の入力を受ける。入力された介護データ200は介護データ記憶部121に格納され、入力された住民データ300は住民データ記憶部122に格納される。
【0055】
次に、データ整形ステップ902では、データ整形部111が、データ入力ステップ901で入力された介護データ200(
図2)及び住民データ300(
図3)から、複数の住民の2年度分(T-n年度、T年度)のデータを抽出し、個人ID201及び年度202で連結した上で、個人を行に、年度を列に展開した整形データ400(
図4)を作成する。作成された整形データ400は、整形データ記憶部123に格納される。
【0056】
次に、二値化処理ステップ903では、二値化処理部112が、データ整形ステップ902で作成された整形データ400から、T年度の要介護度を取得し、順序尺度データである8段階の要介護度(介護度無(0)<要支援1(1)<要支援2(2)<要介護1(3)<要介護2(4)<要介護3(5)<要介護4(6)<要介護5(7))を7箇所で2値化し、
図5で説明したように、T年度の要介護度について7個の目的変数1~7(501~507)を作成する。
【0057】
次に、介護度推計モデル構築ステップ904では、介護度推計モデル構築部113が、二値化処理ステップ903で作成されたT年度の要介護度を二値化した7個の目的変数1~7について、T-n年度の整形データ400を説明変数としたロジスティック回帰分析を各目的変数別に7回実行し、7個のロジスティック回帰式から構成される介護度推計モデル600(
図6)を構築する。構築された介護度推計モデル600は、介護度推計モデル記憶部124に格納される。
【0058】
次に、介護度推計ステップ905では、介護度推計部114が、介護度推計モデル構築ステップ904で構築された介護度推計モデル600に、データ整形ステップ902で作成されたT年度の整形データを入力し、将来(T+n年度)の要介護度別の確率を個人別に推計する。具体的には、
図7で説明したように、まず、式1で表される介護度推計モデル600にT年度の整形データを入力して、T+n年度の2値化された要介護度の確率Pi(P1~P7)を算出し、次に、T+n年度の2値化された要介護度の確率Piを式2に入力して、T+n年度の要介護度別の確率NPi(NP0~NP7)を個人別に推計する。推計された将来の介護度推計結果700は、推計結果記憶部125に格納される。
【0059】
次に、推計結果集計ステップ906では、推計結果集計部115が、まず、介護度推計結果表示画面800(
図8)を出力部103に表示し、集計条件(T年度の性別、年齢、住所など)の入力部102への入力をユーザに促す。次に、入力された集計条件に基づいて、介護度推計ステップ905で推計された個人別の介護度推計結果を集計して、介護度別の将来推計人数を出力部103に表示する。
図8に例示する介護度推計結果表示画面800では、T年度の男性かつ年齢60歳以上の住民を対象に、T年度(現在)の要介護2以上の人数及びT+n年度(将来)の要介護2以上の将来推計人数を住所別(地区別)に表示している。ユーザは、この情報に基づいて地区別に診断を行い、介護予防施策をどの地区に重点的に配分するかなどの意思決定を行う。
【0060】
以上により、介護度推計処理を終了する。
【0061】
以上に説明したように、実施例1の将来推計システムでは、自治体等の機関に蓄積された介護データ及び住民データから、将来の介護度を地区単位や個人単位などミクロな単位で推計できる。このため、将来の介護度推計結果は、自治体の地区診断に活用でき、介護予防施策の重点配分など効果的な施策立案が可能になる。
【0062】
<実施例2>
実施例2では、実施例1で用いた介護データ及び住民データだけでなく、医療データ及び健診データも加えて、将来の介護度を個人単位に推計する将来推計システムの例を説明する。なお、実施例1で前述した構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。また、実施例2では、医療データ及び健診データの両方を用いて将来の介護度を推計する将来推計システムを説明するが、医療データ及び健診データの一方を用いてもよい。
【0063】
図10は、本実施例の将来推計システムの構成を示すブロック図である。実施例2の将来推計システムでは、実施例1の将来推計システム(
図1)に、医療データ記憶部126及び健診データ記憶部127が追加される。
【0064】
医療データ記憶部126は、入力部102に入力された複数人分、複数年度分のアルツハイマー病、パーキンソン病、脊椎障害、関節症などの疾病別の医療機関受診有無及び疾病別の医療費などの医療データを格納する。
【0065】
健診データ記憶部127は、入力部102に入力された複数人分かつ複数年度分の健康診断の対象者及び健康診断の受診有無などの健診データを格納する。
【0066】
図11は、医療データ記憶部126が格納する医療データ1100の例を示す図である。
【0067】
医療データ1100は、複数の住民の複数年分の医療データを管理する。医療データ1100は、個人ID201、年度202、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊椎障害、関節症、骨折、てんかん、脳内出血などの疾病別の医療機関受診有無1111~1117及び疾病別の医療費1121~1127を含む。年度202は、医療機関を受診した年度(年月でもよい)を示す情報を記録する。疾病別の医療機関受診有無1111~1117は、個人ID201の各年度の疾病別の受診有無を、1(有)、0(無)として記録する。疾病別医療費1121~1127は、個人ID201の各年度の疾病別医療費を記録する。
【0068】
図12は、健診データ記憶部127が格納する健診データ1200の例を示す図である。
【0069】
健診データ1200は、複数の住民の複数年分の健康診断のデータを管理する。健診データ1200は、個人ID201、年度202、健診対象者フラグ1203及び健診受診有無1204を含む。年度202は、健康診断を受診した年度(年月でもよい)を示す情報が登録される。健診対象者フラグ1203は、個人ID201の住民が健康診断の対象者か否かを、1(対象)、0(対象外)として年度別に記録する。健診受診有無1204は、個人ID201の住民が健康診断を受診したか否かを、1(健康診断受診有)、0(健康診断受診無)として年度別に記録する。また、健診データ1200は、健康診断の結果(検査値、問診結果)を記録してもよい。
【0070】
図13は、データ整形部111が作成し、整形データ記憶部123が格納する整形データ1300の例を示す図である。
【0071】
整形データ1300は、
図4の整形データ400(介護データ、住民データ)に、医療データ1100及び健診データ1200を連結したデータである。すなわち、整形データ1300は、住民データ300、介護データ200、医療データ1100及び健診データ1200から、複数人分の2年度分(T-n年度、T年度)のデータを抽出し、個人ID201と年度202で連結した上で、個人を行に、年度を列に展開したデータである。個人ID201の住民におけるT-n年度の住民・介護・医療・健診データ1301とT年度の住民・介護・医療・健診データ1302を示している。このn年間隔があいた2時点の整形データ1300を作成することによって、現在(T年度)の住民・介護・医療・健診データから将来(T+n年度)の介護度を推計できる。
【0072】
図14は、介護度推計モデル構築部113が、
図13に示す整形データ1300(住民・介護・医療・健診データ)を用いて構築し、介護度推計モデル記憶部124が格納する介護度推計モデル1400の例を示す図である。実施例2の介護度推計モデル1400は、実施例1の介護度推計モデル600(
図6)の説明変数に、疾病別医療機関受診有無、疾病別医療費などの医療説明変数1401と、健診受診有無の健診説明変数1402が追加されている。
【0073】
介護度推計モデル1400は、実施例1で説明したように、まず、二値化処理部112が、
図13の整形データ1300のT年度の要介護度を二値化して目的変数1~7を作成し、その後、介護度推計モデル構築部113がT-n年度の整形データ1301(住民・介護・医療・健診データ)を説明変数としたロジスティック回帰分析を目的変数別に実行して構築される。実施例2の介護度推計モデル1400は、二値化したT年度の要介護度である目的変数1~7(501~507)別に、T-n年度の説明変数601の回帰係数(611~617)及びZ値(621~627)を記憶しており、医療データ1100及び健診データ1200の追加により、疾病別医療機関受診有無及び疾病別医療費などの医療説明変数1401(X20、X21…)と、健診受診有無の健診説明変数1402(X30)とが介護度推計モデル1400に追加される。これにより、現在の住民データ及び介護データだけでなく、医療データ及び健診データを考慮して、将来(T+n年度)の介護度を個人単位に推計できる。
【0074】
次に、
図9のフローチャートを用いて、本実施例の介護度推計処理を説明する。
【0075】
図9の処理を開始すると、まず、データ入力ステップ901を実行する。データ入力ステップ901では、将来推計端末101の入力部102が、介護データ200(
図2)、住民データ300(
図3)、医療データ1100(
図11)及び健診データ1200(
図12)の入力を受ける。入力された介護データ200は介護データ記憶部121に格納され、入力された住民データ300は住民データ記憶部122に格納され、入力された医療データ1100は、医療データ記憶部126に格納され、入力された健診データ1200は、健診データ記憶部127に格納される。
【0076】
次に、データ整形ステップ902では、データ整形部111が、データ入力ステップ901で入力された介護データ200(
図2)、住民データ300(
図3)、医療データ1100(
図11)及び健診データ1200(
図12)から、複数の住民の2年度分(T-n年度、T年度)のデータを抽出し、個人ID201及び年度202で連結した上で、個人を行に、年度を列に展開した整形データ1300(
図13)を作成する。医療・健診データも含んで作成された整形データ1300は、整形データ記憶部123に格納される。
【0077】
次に、実施例1と同様に、二値化処理ステップ903と介護度推計モデル構築ステップ904を実行する。
【0078】
二値化処理ステップ903では、二値化処理部112が、医療データ及び健診データを含む整形データ1300(
図13)から、T年度の要介護度について7個の目的変数1~7(501~507)を作成する。
【0079】
次に、介護度推計モデル構築ステップ904では、介護度推計モデル構築部113が、二値化処理ステップ903で作成されたT年度の要介護度を二値化した7個の目的変数1~7について、T-n年度の医療データ及び健診データを含む整形データ1300を説明変数としたロジスティック回帰分析を各目的変数別に7回実行し、7個のロジスティック回帰式から構成される介護度推計モデル1400(
図14)を構築する。構築された介護度推計モデル1400は、介護度推計モデル記憶部124に格納される。
【0080】
次に、実施例1と同様に、介護度推計ステップ905及び推計結果集計ステップ906を実行する。
【0081】
介護度推計ステップ905では、介護度推計部114が、介護度推計モデル構築ステップ904で構築された介護度推計モデル1400(
図14)に、T年度の医療データ及び健診データを含む整形データ1300を入力して、将来(T+n年度)の要介護度別の確率を個人別に推計し、介護度推計結果700を作成する。作成された将来の介護度推計結果700は、推計結果記憶部125に格納される。
【0082】
推計結果集計ステップ906では、推計結果集計部115が、ユーザが入力した集計条件に基づいて、介護度推計結果を集計して、介護度別の将来推計人数を、
図8に例示する介護度推計結果表示画面800で出力部103に表示する。ユーザは、この情報に基づいて地区別に診断を行い、介護予防施策をどの地区に重点的に配分するかなどの意思決定を行う。
【0083】
以上により、本実施例の介護度推計処理を終了する。
【0084】
以上に説明したように、実施例2の将来推計システムでは、自治体等の機関に蓄積された介護データ及び住民データに加えて、医療データ及び健診データも考慮して将来の介護度を推計するので、個人単位や地区単位の将来の介護度をより高精度に推計できる。実際のデータで介護度推計精度を検証すると、1年後の個人の介護度を95%以上の正解率で高精度に推計できることが分かった。また、将来の介護度推計結果は、自治体の地区診断に活用でき、介護予防施策の重点配分など効果的な施策立案が可能になる。
【0085】
<実施例3>
実施例3では、実施例1で推計した将来の介護度だけでなく、住民データ及び介護データから将来の介護費を個人単位に推計する将来推計システムの例を説明する。なお、実施例1、2で前述した構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0086】
図15は、本実施例の将来推計システムの構成を示すブロック図である。実施例3の将来推計システムでは、実施例1の将来推計システム(
図1)に、介護費推計モデル構築部116、介護費推計部117及び介護費推計モデル記憶部128が追加される。
【0087】
介護費推計モデル構築部116は、データ整形部111で作成された整形データ400(
図4)から、T年度の要介護度及び介護費を取得し、T年度の介護費を目的変数とし、T年度の要介護度を説明変数とした線形回帰分析を行い、T年度の要介護度からT年度の介護費を推計する線形回帰式である介護費推計モデル1600(
図16)を構築する。なお、将来推計システムの外部から介護費推計モデルが提供される場合、将来推計端末101は介護費推計モデル構築部116を有さなくてもよい。
【0088】
介護費推計部117は、介護費推計モデル構築部116で構築された介護費推計モデル1600に、介護度推計部114で推計された
図7が示すT+n年度の要介護度別の確率NP(701)を入力し、T+n年度の介護費を個人別に推計する(
図17)。推計された介護費推計結果は、介護度推計結果と共に、推計結果記憶部125に格納される。
【0089】
介護費推計モデル記憶部128は、介護費推計モデル構築部116が構築した介護費推計モデルを格納する。
【0090】
図16は、介護費推計モデル構築部116が構築し、介護費推計モデル記憶部128が格納する介護費推計モデル1600の例を示す図である。
【0091】
介護費推計モデル1600は、介護費推計モデル構築部116が構築した線形回帰式であり、T年度の介護費を目的変数1604とし、T年度の要介護度を説明変数1603とした線形回帰分析により算出した回帰係数を記録する。要介護度をXCi(i=1~7、要支援1の有無XC1、要支援2の有無XC2、要介護1の有無XC3、要介護2の有無XC4、要介護3の有無XC5、要介護4の有無XC6、要介護5の有無XC7)、回帰係数をci(i=1~7)、介護費をNCEとすると、介護費推計モデル1600は式3で表される。T+n年度の要介護度別の確率NPi(i=1~7)を、式3のXCi(i=1~7)に、それぞれ入力することによって、将来(T+n年度)の介護費NCE1701を個人別に推計できる。このように、介護度の推計結果を用いて介護費を推計することによって、介護度と介護費が連動した将来推計が可能となり、自治体の介護施策立案に活用しやすい推計結果を作成できる。
【0092】
NCE=c1×XC1+・・・+c7×XC7 (式3)
【0093】
図17は、介護度推計部114及び介護費推計部117が推計した介護度・介護費推計結果1700の例を示す図である。介護度・介護費推計結果1700は、T年度の整形データ402と、T年度の整形データ402を介護度推計モデル600に入力して推計したT+n年度の要介護度別の確率NP701と、T+n年度の要介護度別の確率NP701を介護費推計モデル1600に入力して推計したT+n年度の介護費NCE1701とを含む。
【0094】
図18は、推計結果集計部115が、出力部103に出力する介護度・介護費推計結果表示画面1800の例を示す図である。介護度・介護費推計結果表示画面1800は、実施例1の介護度推計結果表示画面800(
図8)に、介護費推計結果表示欄1820を追加したものであり、集計条件入力欄810、介護度別推計人数表示欄820と介護費推計結果表示欄1820を含む。
【0095】
介護度別推計人数表示欄820は、実施例1の介護度推計結果表示画面800(
図8)と同様に、集計条件入力欄810に入力された条件に合致する介護度・介護費推計結果1700を抽出して、T年度の介護度別人数(821~824)及びT+n年度の介護度別推計人数(831~834)を住所別(地区別)に表示する。図示する例では、要介護2以上を表示している。
【0096】
介護費推計結果表示欄1820は、集計条件入力欄810に入力された条件に合致する介護度・介護費推計結果1700を抽出して、T年度の介護費推計結果(1821~1824)及びT+n年度の介護費推計結果(1831~1834)を住所別(地区別)に表示する。住所別(地区別)のT+n年度の介護費推計結果は、介護度・介護費推計結果1700を用いて、住所別(地区別)に、介護費NCE(1701)を集計して算出する。
図17に示す介護度・介護費推計結果1700の例では、A区に住んでいる住民は、個人IDがK0001とK0003であるので、A区の介護費推計結果はNCE1+NCE3で算出される。これにより、地区単位など任意の条件で将来の介護費を推計でき、人数だけでなく費用面も考慮した地区診断を行うことができる。例えば、
図18に示すように、将来(T+n年度)の介護費が、A区がB区より増加し、C区がD区より増加することが推計されたならば、A区及びC区に対して重点的に介護予防施策を適用するなどの効果的な施策立案が可能になる。
【0097】
次に、
図19のフローチャートを用いて本実施例の介護度・介護費推計処理を説明する。
【0098】
図19の処理を開始すると、データ入力ステップ901、データ整形ステップ902、二値化処理ステップ903、介護度推計モデル構築ステップ904、介護度推計ステップ905を実行する。これらのステップは、
図9で説明した将来の介護度を推計するステップ901~905と同じ処理である。
【0099】
次に、介護費推計モデル構築ステップ907では、介護費推計モデル構築部116が、データ整形ステップ902で作成されたT年度の整形データを用いて、T年度の介護費を目的変数、T年度の要介護度を説明変数とした線形回帰分析を行い、要介護度から介護費を推計するための介護費推計モデル1600を構築する。構築された介護費推計モデル1600は、介護費推計モデル記憶部128に格納される。
【0100】
次に、介護費推計ステップ908では、介護費推計部117が、介護費推計モデル構築ステップ907で構築された介護費推計モデル1600に、介護度推計ステップ905で推計されたT+n年度の要介護度別の確率NPiを入力して、T+n年度の介護費を個人別に推計する。推計された将来の介護費推計結果は、介護度推計結果と共に、推計結果記憶部125に格納される。
【0101】
次に、推計結果集計ステップ906では、推計結果集計部115が、まず、介護度・介護費推計結果表示画面1800(
図18)を出力部103に表示し、集計条件(T年度の性別、年齢、住所など)の入力部102への入力をユーザに促す。次に、入力された集計条件に基づいて、介護度推計ステップ905及び介護費推計ステップ908で推計された個人別の介護度・介護費推計結果を集計して、介護度別の将来推計人数と将来の介護費を出力部103に表示する。
図18に例示する介護度・介護費推計結果表示画面1800では、T年度の男性かつ年齢60歳以上の住民を対象に、T年度(現在)の要介護2以上の人数及び介護費と、T+n年度(将来)の要介護2以上の将来推計人数及び介護費推計結果を住所別(地区別)に表示している。ユーザは、この情報に基づいて地区別に診断を行い、介護予防施策をどの地区に重点的に配分するかなどの意思決定を行う。
【0102】
以上により、介護度・介護費推計処理を終了する。
【0103】
以上に説明したように、実施例3の将来推計システムでは、自治体等の機関に蓄積された介護データ及び住民データから、将来の介護度及び将来の介護費を地区単位や個人単位などミクロな単位で推計できる。このため、将来の介護度・介護費推計結果は、自治体の地区診断に活用でき、介護予防施策の重点配分など効果的な施策を立案が可能になる。また、実施例3の将来推計システムは、介護度の推計結果から介護費を推計するため、介護度と介護費とが連動した将来推計ができ、自治体の介護施策立案に活用しやすい推計結果を出力できる。
【0104】
<実施例4>
実施例4では、実施例3で用いた介護データ及び住民データだけでなく、医療データ及び健診データも加えて、将来の介護度及び介護費を個人単位に推計する将来推計システムの例を説明する。なお、実施例1~3で前述した構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。また、実施例4では、医療データ及び健診データの両方を用いて将来の介護度及び介護費を推計する将来推計システムを説明するが、医療データ及び健診データの一方を用いてもよい。
【0105】
図20は、本実施例の将来推計システムの構成を示すブロック図である。実施例4の将来推計システムでは、実施例3の将来推計システム(
図15)に、実施例2で説明した医療データ記憶部126及び健診データ記憶部127が追加される。
【0106】
実施例2で説明したように、将来推計システムは、データ整形部111、二値化処理部112、介護度推計モデル構築部113及び介護度推計部114によって、
図13に示すT年度の整形データ(住民・介護・医療・健診データを連結したデータ)からT+n年度の要介護度別の確率を個人別に推計し、将来の介護度推計結果を作成する。
【0107】
また、実施例3で説明したように、将来推計システムは、介護費推計モデル構築部116と介護費推計部117により、T+n年度の要介護度別の確率から、T+n年度の介護費を個人別に推計し、将来の介護費推計結果を作成する。
【0108】
推計結果集計部115は、入力部102に入力されたユーザの集計条件(T年度の性別、年齢、住所など)に基づいて、個人別の介護度推計結果及び介護費推計結果を集計して、地区別など任意の集団単位で、将来の介護度別推計人数と将来介護費を出力部103に表示する。
【0109】
以上に説明したように、実施例4の将来推計システムでは、自治体等の機関に蓄積された介護データ及び住民データに加えて、医療データ及び健診データも考慮して、将来の介護度及び介護費を推計するので、個人単位や地区単位の将来の介護度及び将来の介護費をより高精度に推計できる。実際のデータで推計精度を検証すると、1年後の介護度を95%以上の正解率、1年後の介護費を推計誤差1%以下で高精度に推計できることが分かった。また、将来の介護度・介護費推計結果は、自治体の地区診断に活用でき、介護予防施策の重点配分など効果的な施策を立案できる。また、実施例4の将来推計システムでは、介護度の推計結果から介護費を推計するため、介護度と介護費とが連動した将来推計ができ、自治体の介護施策立案に活用しやすい推計結果を出力できる。
【0110】
<実施例5>
実施例5では、介護度推計モデルから、将来の介護発生又は介護進行を抑制する施策となる説明変数を抽出し、その施策の効果を推計する将来推計システムの例を説明する。なお、実施例1~4で前述した構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0111】
図21は、本実施例の将来推計システムの構成を示すブロック図である。実施例5の将来推計システムは、介護度推計部114、介護費推計部117に加え、説明変数抽出部118、入力値変更部119及び施策効果推計部110を有する。また、データベース120は、前述した整形データ記憶部123、介護度推計モデル記憶部124、推計結果記憶部125及び介護費推計モデル記憶部128から構成される。なお、実施例5の将来推計システムは、既に介護度推計モデル600、1400(
図6又は
図14)及び介護費推計モデル1600(
図16)があることを想定しているので、介護度推計モデル構築部113及び介護費推計モデル構築部116を有さないが、前述した実施例のように、介護度推計モデル構築部113及び介護費推計モデル構築部116が、整形データ400、1300(
図4又は
図13)から介護度推計モデルや介護費推計モデルを構築してもよい。また、データ整形部111、二値化処理部112及び推計結果集計部115を有してもよい。
【0112】
説明変数抽出部118は、入力部102でユーザが選択した目的変数(対策が必要な介護度)を対象として、介護度推計モデル600、1400(
図6又は
図14)から、Z値が負の説明変数を値が小さい順に抽出する。
【0113】
入力値変更部119は、整形データ記憶部123が管理するT年度の整形データ400、1300(
図4又は
図13)を取得し、説明変数抽出部118が抽出した説明変数別に、その変数と一致するデータ項目の入力値を変更する。具体的には、その説明変数と一致するデータ項目の入力値を全て有(1)に変更した場合(
図22、
図27)と、全て無(0)に変更した場合(
図23、
図28)の二つの整形データを作成する。
【0114】
介護度推計部114は、入力値変更部119で入力値が変更された二つの整形データを、それぞれ、介護度推計モデルに入力し、T+n年度の要介護度別の確率を推計する。ここで、T+n年度の要介護度別の確率は、入力値を全て有(1)にした場合と、全て無(0)にした場合について推計される。
【0115】
介護費推計部117は、介護度推計部114で推計されたT+n年度の要介護度別の確率を、介護費推計モデルに入力し、T+n年度の介護費を個人別に推計する。ここで、T+n年度の介護費は、入力値を全て有(1)にした場合と、全て無(0)にした場合について推計される。
【0116】
施策効果推計部110は、入力値を全て有(1)にした場合の介護度・介護費推計結果(
図22、
図27)と、全て無(0)にした場合の介護度・介護費推計結果(
図23、
図28)の差分を施策効果として推計する。
【0117】
図22は、介護サービスである通所介護の実施率を100%(入力値を全て有(1)に変更)にした場合の介護度・介護費推計結果2200の例を示す図である。介護度・介護費推計結果2200は、領域2201に示すように、通所介護の入力値を全て有(1)に変更したT年度の整形データ402と、介護度推計モデルに入力して推計したT+n年度の要介護度別の確率fNP2202を介護費推計モデルに入力して推計したT+n年度の介護費fNCE2203を格納する。ここで、介護サービスに関するデータは有無データ及び回数データがあるので、有無データの入力値を全て有(1)に変更し、回数データの入力値を全て平均回数に変更する(2201)。
【0118】
図23は、介護サービスである通所介護の実施率を0%(入力値を全て無(0)に変更)にした場合の介護度・介護費推計結果2300の例を示す図である。介護度・介護費推計結果2300は、領域2301に示すように、通所介護の入力値を全て無(0)に変更したT年度の整形データ402と、介護度推計モデルに入力して推計したT+n年度の要介護度別の確率eNP2302を介護費推計モデルに入力して推計したT+n年度の介護費eNCE2303を格納する。ここで、介護サービスに関するデータは有無データ及び回数データがあるので、有無データを全て無(0)に変更し、回数データも全て0回に変更する(2301)。
【0119】
図24は、施策効果推計部110が、出力部103に出力する介護施策効果シミュレーション画面2400の例を示す図である。
【0120】
介護施策効果シミュレーション画面2400は、対策介護度選択欄2410、介護施策選択タブ表示欄2420、施策効果推計対象者の選定欄2430、施策効果推計結果表示欄2440及び集計条件入力欄810を含む。
【0121】
対策介護度選択欄2410は、入力部102で対策が必要な介護度(目的変数)をユーザに選択させる欄である。図示する例では、対策が必要な介護度(目的変数)として、ユーザが「要介護2以上」が選択されている。
【0122】
介護施策選択タブ表示欄2420は、対策介護度選択欄2410で選択された介護度(目的変数)の抑制に寄与が大きい説明変数を選択タブで表示する。具体的には、説明変数抽出部118が、対策介護度選択欄2410で選択された目的変数を対象に、介護度推計モデル(
図6又は
図14)から、Z値が負の説明変数を値が小さい順に抽出して表示する。図示する例では、目的変数が「要介護2以上」で、「要介護2以上」の抑制に寄与が大きい説明変数が抽出されており、介護度推計モデルから、Z値が負の説明変数を値が小さい順に抽出すると、通所介護2421、介護予防支援2422、介護保健施設2423である例を示す。ユーザは、この選択タブから介護施策を選択する。図示する例では、介護サービスの通所介護2421が選択されている。
【0123】
施策効果推計対象者の選定欄2430は、施策実施率表示欄2431及び個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435を含む。
【0124】
施策実施率表示欄2431は、介護施策選択タブ表示欄2420で選択された介護施策の実施率及び実施人数を示し、デフォルトで表示される初期値は、現在(T年度)の実施率及び実施人数である。図示する例では、通所介護のT年度の実施率が30%で、実施人数が2千人である。
【0125】
個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435は、施策効果推計対象者選択欄2432、個人ID201、T年度の整形データ402、T+n年度の介護度・介護費推計結果2200、2300及びT+n年度の介護費抑制額(fNCE-eNCE)2433を個人別に表示する。介護度・介護費推計結果2200は、
図22で説明した介護施策の実施率が100%である場合のT+n年度の要介護度別の確率fNP2202及び介護費fNCE2203である。介護度・介護費推計結果2300は、
図23で説明した介護施策の実施率が0%である場合のT+n年度の要介護度別の確率eNP2302及び介護費eNCE2303である。T+n年度の介護費抑制額は、介護施策の実施率が100%である場合の介護費fNCEから介護施策の実施率が0%である場合の介護費eNCEを減じた値である。施策効果推計対象者選択欄2432は、介護施策を実施する対象者が選択される欄であり、デフォルトでは、現在(T年度)にその介護施策を実施された人が選択されている。この例では、個人ID201がK0002の人が通所介護を実施する人として選択されている。また、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435では、個人別の介護度・介護費抑制効果をその効果が高い順に表示する。具体的には、T+n年度の介護費抑制額(fNCE-eNCE)2433が大きい順に表示するとよい。図示する例では、個人IDがK0003の人の介護費抑制額(fNCE3-eNCE3)が最大で、次がK0002の人である。
【0126】
ユーザは、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435や後述する施策効果推計結果表示欄2440を参照して、施策効果推計対象者選択欄2432で、介護施策を実施する対象者を個別に選択し、変更する。また、施策実施率表示欄2431の実施率や実施人数を変更しても、介護施策を実施する対象者を選択できる。施策実施率表示欄2431の実施率を変更した場合、介護費抑制額2433が大きい対象者から降順に選択される。
【0127】
施策効果推計結果表示欄2440は、介護度別推計人数表示欄2441及び介護費推計結果表示欄2451を含む。
【0128】
介護度別推計人数表示欄2441は、施策効果推計部110が、施策効果推計対象者の選定欄2430で選択された対象者全体について、T年度の要介護度及びT+n年度の要介護度別の確率fNP2202とeNP2302を集計し、T年度の介護度別人数821、施策実施率表示欄2431に表示された実施率の場合のT+n年度の介護度別推計人数831及び実施率が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2442を表示する。図示する例では要介護2以上の人数を表示している。さらに、実施率が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2442と、施策実施率表示欄2431に表示された実施率の場合のT+n年度の介護度別推計人数831の差分を算出し、介護施策により抑制される介護人数2443を表示する。図示する例では、通所介護を実施率30%で実施すると、介護人数2443が500人抑制される。
【0129】
介護費推計結果表示欄2451は、施策効果推計部110が、施策効果推計対象者の選定欄2430で選択された全ての対象者について、T年度の介護費とT+n年度の介護費fNCE2203及びeNCE2303を集計し、T年度の介護費1821、施策実施率表示欄2431に表示された実施率の場合のT+n年度の介護費1831及び実施率が0%の場合のT+n年度の介護費2452を表示する。さらに、実施率が0%の場合のT+n年度の介護費2452と、施策実施率表示欄2431に表示された実施率の場合のT+n年度の介護費1831の差分を算出し、介護施策により抑制される介護費2453を表示する。図示する例では、通所介護を実施率30%で実施すると、介護費2453が10億円抑制される。
【0130】
集計条件入力欄810は、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435に表示する対象者の条件を入力する欄である。図示する例では、T年度の年齢入力欄812及び住所入力欄813を設けているが、整形データ400、1300に含まれているT年度の任意のデータ項目を条件とする入力する欄を設けてもよい。図示する例では、年齢入力欄812に40歳以上、住所入力欄813にA区及びB区が入力されている。
【0131】
図25は、施策効果推計部110が、出力部103に出力する介護施策効果シミュレーション画面2500の例を示す図である。
図25では、
図24に示す介護施策効果シミュレーション画面2400の介護施策の実施率を変更した例を示す。
【0132】
介護施策効果シミュレーション画面2500は、対策介護度選択欄2410、介護施策選択タブ表示欄2420、施策効果推計対象者の選定欄2430、施策効果推計結果表示欄2440及び集計条件入力欄810を含む。介護施策効果シミュレーション画面2500の画面構成は、
図24に示す介護施策効果シミュレーション画面2400と同じであるため、以下では違いを説明する。
【0133】
施策実施率表示欄2531は、施策実施率表示欄2431と同様に、介護施策選択タブ表示欄2420で選択された介護施策の実施率及び実施人数を示す。図示する例では、通所介護のT年度の実施率を30%から60%に、実施人数が2千人から4千人に変更されている。
【0134】
施策効果推計対象者選択欄2532は、施策効果推計対象者選択欄2432と同様に、介護施策を実施する対象者が選択される欄であり、施策実施率表示欄2531で変更した介護施策の実施人数に基づいて、介護施策を実施する対象者が選択される。対象者の選択は、前述したように、介護費抑制額2433が大きい対象者から降順に選択されるとよい。図示する例では、介護費抑制額2433が大きい4千人の対象者が選択されている。
【0135】
施策効果推計結果表示欄2440は、介護度別推計人数表示欄2441及び介護費推計結果表示欄2451を含み、介護施策の実施率を変更した場合の介護度別推計人数と、介護費推計結果を表示する。
【0136】
介護度別推計人数表示欄2441は、施策実施率表示欄2531で変更された実施率の場合のT+n年度の介護度別推計人数2544を表示する。図示する例では、通所介護の実施率を60%に変更した場合の要介護2以上の推計人数を表示している。さらに、実施率が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2442と、施策実施率表示欄2531に表示された実施率の場合のT+n年度の介護度別推計人数2544の差分を算出し、介護施策の実施率変更により抑制される介護人数2543を表示する。図示する例では、通所介護を実施率60%で実施すると、介護人数2543が1000人抑制され、
図24に示す実施率30%の場合の500人より増加している。
【0137】
介護費推計結果表示欄2451は、施策実施率表示欄2531で変更された実施率の場合のT+n年度の介護費2554を表示する。図示する例では、通所介護の実施率を60%に変更した場合の介護費を表示している。さらに、実施率が0%の場合のT+n年度の介護費2452と、施策実施率表示欄2531に表示された実施率の場合のT+n年度の介護費2554の差分を算出し、介護施策の実施率変更により抑制される介護費2553を表示している。図示する例では、通所介護を実施率60%に変更すると、介護費2553が30億円抑制され、
図24に示す実施率30%の場合の10億円より抑制額が増加している。
【0138】
図24及び
図25で説明したように、対策が必要な介護度(目的変数)をユーザが選択することで、その介護度(目的変数)の抑制に寄与する介護施策(説明変数)を抽出できる。また、抽出した介護施策(説明変数)の効果として、抑制される介護人数及び介護費を推計できる。さらに、介護施策(説明変数)の実施率を変更した場合の施策効果のシミュレーションも可能である。さらに、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435で、介護施策の効果が高い対象者を選定できるので、費用対効果が高い介護施策立案が可能となる。これにより、実施例5の将来推計システムは、自治体の効果的な介護施策立案を支援できる。
【0139】
次に、
図26のフローチャートを用いて本実施例の施策効果推計処理を説明する。
【0140】
図26の処理を開始すると、まず、対策介護度入力ステップ2601を実行する。対策介護度入力ステップ2601では、まず、将来推計端末101が、
図24に示す介護施策効果シミュレーション画面2400を出力部103に表示して、
図24で説明したように、対策介護度選択欄2410への、対策が必要な介護度(目的変数)のユーザからの入力を受ける。
【0141】
次に、説明変数抽出ステップ2602では、説明変数抽出部118が、まず、介護度推計モデル記憶部124に格納される介護度推計モデル(
図6又は
図14)を取得する。次に、説明変数抽出部118が、対策介護度選択欄2410で選択された目的変数を対象に、介護度推計モデルから、Z値が負の説明変数を値が小さい順(目的変数への寄与が高い順)に抽出する。そして、
図24で説明したように、抽出した説明変数を、目的変数への寄与が高い順に、介護施策選択タブ表示欄2420に表示する。
【0142】
次に、説明変数選択ステップ2603では、将来推計端末101が、介護施策選択タブ表示欄2420に表示された介護施策(説明変数)の中から、施策効果を推計する介護施策(説明変数)のユーザによる選択を受ける。
【0143】
次に、入力値変更ステップ2604では、まず、入力値変更部119が、整形データ記憶部123が管理するT年度の整形データ(
図4又は
図13)を取得する。次に、説明変数選択ステップ2603で選択された介護施策(説明変数)と一致する整形データ項目の入力値を変更する。具体的には、
図22及び
図23で説明したように、その説明変数と一致する整形データ項目の入力値を全て有(1)に変更した場合と、全て無(0)に変更した場合の二つの整形データを作成する。
【0144】
次に、介護度推計ステップ905では、介護度推計部114が、入力値変更部119で入力値が変更された二つの整形データを、それぞれ、介護度推計モデル記憶部124が格納する介護度推計モデルに入力し、T+n年度の要介護度別の確率を推計する。
図22及び
図23で説明したように、T+n年度の要介護度別の確率は、入力値を全て有(1)にした場合の確率fNP2202と、全て無(0)にした場合の確率eNP2302とを推計する。推計されたT+n年度の要介護度別の確率は、
図24又は
図25の個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435に表示される。
【0145】
次に、介護費推計ステップ908では、介護費推計部117が、介護度推計部114で推計されたT+n年度の要介護度別の確率を、介護費推計モデル記憶部128が格納する介護費推計モデルに入力し、T+n年度の介護費を個人別に推計する。
図22及び
図23で説明したように、T+n年度の介護費は、入力値を全て有(1)にした場合の介護費fNCE2203と、全て無(0)にした場合の介護費eNCE2303とを推計する。推計されたT+n年度の介護費は、
図24又は
図25の個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435に表示される。
【0146】
次に、施策効果推計ステップ2605では、まず、施策効果推計部110が、介護費推計ステップ908で推計された介護施策(説明変数)の入力値を全て有(1)にした場合の介護費fNCE2203と、全て無(0)にした場合の介護費eNCE2303から、個人別の介護費抑制額2433を推計する。推計された介護費抑制額は、
図24又は
図25の個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435に表示される。
【0147】
次に、
図24及び
図25で説明したように、施策効果推計部110が、施策実施率表示欄(2431又は2531)や施策効果推計対象者選択欄(2432又は2532)で、施策効果を推計する対象者のユーザによる選択を受ける。そして、選択された施策効果推計対象者について、介護度及び介護費における抑制効果を推計する。
【0148】
介護度における抑制効果については、T年度の要介護度及びT+n年度の要介護度別の確率fNP2202及びeNP2302を集計し、T年度の介護度別人数821、施策実施率表示欄(2431又は2531)に表示された実施率の場合のT+n年度の介護度別推計人数(831又は2544)、実施率が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2442を推計する。さらに、実施率が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2442、及び施策実施率表示欄(2431又は2531)に表示された実施率の場合のT+n年度の介護度別推計人数(831又は2544)の差分を算出し、介護施策により抑制される介護人数(2443又は2543)を推計する。推計された介護度における抑制効果は、
図24又は
図25の介護度別推計人数表示欄2441に表示される。
【0149】
介護費における抑制効果については、選択された施策効果推計対象者について、T年度の介護費及びT+n年度の介護費fNCE2203及びeNCE2303を集計し、T年度の介護費1821、施策実施率表示欄(2431又は2531)に表示された実施率の場合のT+n年度の介護費(1831又は2554)、実施率が0%の場合のT+n年度の介護費2452を推計する。さらに、実施率が0%の場合のT+n年度の介護費2452と、施策実施率表示欄(2431又は2531)に表示された実施率の場合のT+n年度の介護費(1831又は2554)の差分を算出し、介護施策により抑制される介護費(2453又は2553)を推計する。推計された介護費における抑制効果は、
図24又は
図25の介護費推計結果表示欄2451に表示される。
【0150】
施策効果推計部110は、介護施策の実施率別の施策効果を推計し、ユーザの費用対効果の高い介護施策の立案を支援する。
【0151】
以上により、施策効果推計処理を終了する。
【0152】
以上に説明したように、本実施例5の将来推計システムでは、対策が必要な介護度(目的変数)をユーザが選択することによって、選択された介護度(目的変数)の抑制に寄与する介護施策(説明変数)を抽出できる。また、抽出した介護施策(説明変数)の効果として、抑制される介護人数と介護費を推計できる。さらに、介護施策(説明変数)の実施率を変更した場合の施策効果をシミュレーションできる。さらに、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435では、介護施策の効果が高い対象者を選定できるので、費用対効果の高い介護施策を立案できる。これにより、本実施例5の将来推計システムは、自治体の効果的な介護施策立案を支援できる。
【0153】
前述した例では、対策介護度を「要介護2以上」とし、介護施策を「介護サービス(通所介護)」とした例を説明したが、
図27、
図28、
図29及び
図30を用いて、対策介護度を「要支援1以上(介護発生)」とし、介護施策を「健診受診」とした例を説明する。健診受診は、介護の発生抑制に大きく寄与する説明変数であることを実データにより確認している。
【0154】
図27は、健診受診の実施率(健診受診率)を100%(入力値を全て有(1)に変更)にした場合の介護度・介護費推計結果2700の例を示す図である。介護度・介護費推計結果2700は、健診受診有無2701の入力値を全て有(1)に変更したT年度の整形データ1302と、介護度推計モデルに入力して推計したT+n年度の要介護度別の確率cfNP2702と、T+n年度の要介護度別の確率cfNP2702を介護費推計モデルに入力して推計したT+n年度の介護費cfNCE2703とを格納する。
【0155】
図28は、健診受診の実施率(健診受診率)を0%(入力値を全て無(0)に変更)にした場合の介護度・介護費推計結果2800の例を示す図である。介護度・介護費推計結果2800は、健診受診有無2801の入力値を全て無(0)に変更したT年度の整形データ1302と、介護度推計モデルに入力して推計したT+n年度の要介護度別の確率ceNP2802と、T+n年度の要介護度別の確率ceNP2802を介護費推計モデルに入力して推計したT+n年度の介護費ceNCE2803を格納する。
【0156】
図29は、施策効果推計部110が、出力部103に出力する、健診受診についての介護施策効果シミュレーション画面2900の例を示す図である。
【0157】
介護施策効果シミュレーション画面2900は、
図24及び
図25と同様に、対策介護度選択欄2410、介護施策選択タブ表示欄2420、施策効果推計対象者の選定欄2430、施策効果推計結果表示欄2440及び集計条件入力欄810を含む。
【0158】
対策介護度選択欄2410は、ユーザに、入力部102で対策が必要な介護度(目的変数)を選択させる欄である。この例では、対策が必要な介護度(目的変数)として、ユーザが「要支援1以上」を選択した例を示している。
【0159】
介護施策選択タブ表示欄2420は、対策介護度選択欄2410で選択された介護度(目的変数)の抑制に寄与が大きい説明変数を選択タブで表示する。具体的には、説明変数抽出部118が、対策介護度選択欄2410で選択された目的変数を対象に、介護度推計モデル(
図6又は
図14)から、Z値が負の説明変数を値が小さい順に抽出して表示する。図示する例では、目的変数が「要支援1以上」で、「要支援1以上」の抑制に寄与が大きい説明変数を抽出した例を示しており、介護度推計モデルから、Z値が負の説明変数を値が小さい順に抽出すると、健診受診2921である例を示す。ユーザは、この選択タブから、介護施策を選択する。図示する例では、健診受診2921が選択されている。
【0160】
施策効果推計対象者の選定欄2430は、施策実施率(健診受診率)表示欄2931及び個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435を含む。
【0161】
施策実施率表示欄2931は、介護施策選択タブ表示欄2420で選択された介護施策の実施率(健診受診率)及び実施人数を示し、デフォルトで表示される初期値は、現在(T年度)の実施率(健診受診率)及び実施人数である。図示する例では、T年度の健康診断の実施率(受診率)が20%で、実施人数(受診者数)が1万人である。
【0162】
個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435は、施策効果推計対象者選択欄2932、個人ID201、T年度の整形データ1302、
図27で説明した健診受診率が100%である場合のT+n年度の介護度・介護費推計結果2700(要介護度別の確率cfNP2702と介護費cfNCE2703)、
図28で説明した健診受診率が0%である場合のT+n年度の介護度・介護費推計結果2800(要介護度別の確率ceNP2802と介護費ceNCE2803)、及び、T+n年度の介護費抑制額(cfNCE-ceNCE)2933を個人別に表示する。施策効果推計対象者選択欄2932は、介護施策を実施する対象者(健診受診者)が選択される欄であり、デフォルトでは、現在(T年度)にその介護施策を実施された人(健診受診者)が選択されている。この例では、個人ID201がK0001の人が健診を受診した人として選択されている。また、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435では、健康診断の受診による個人別の介護度・介護費抑制効果をその効果が高い順に表示する。具体的には、T+n年度の介護費抑制額(cfNCE-ceNCE)2933が大きい順に表示するとよい。図示する例では、個人IDがK0003の人の介護費抑制額(cfNCE3-ceNCE3)が最大で、次がK0002の人である。
【0163】
ユーザは、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435や後述する施策効果推計結果表示欄2440を参照して、施策効果推計対象者選択欄2932で、健康診断の受診を促す対象者を個別に選択し、変更する。また、施策実施率表示欄2931の実施率(健診受診率)や実施人数を変更しても、健康診断の受診を促す対象者を選択できる。施策実施率表示欄2931の実施率(健診受診率)を変更した場合、介護費抑制額2933が大きい対象者から降順に選択される。
【0164】
施策効果推計結果表示欄2440は、介護度別推計人数表示欄2941及び介護度推計結果表示欄2951を含む。
【0165】
介護度別推計人数表示欄2941は、施策効果推計部110が、施策効果推計対象者の選定欄2430で選択された対象者全体について、T年度の要介護度及びT+n年度の要介護度別の確率cfNP2702とceNP2802を集計し、T年度の介護度別人数2944、施策実施率表示欄2931に表示された実施率(健診受診率)の場合のT+n年度の介護度別推計人数2945及び実施率(健診受診率)が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2942を表示する。図示する例では要支援1以上の人数を表示している。さらに、実施率(健診受診率)が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2942と、施策実施率表示欄2931に表示された実施率の場合のT+n年度の介護度別推計人数2945の差分を算出し、健診受診により抑制される介護人数2943を表示する。図示する例では、健診受診率が20%の場合、介護人数2943が100人抑制される。
【0166】
介護度推計結果表示欄2951は、施策効果推計部110が、施策効果推計対象者の選定欄2430で選択された全ての対象者について、T年度の介護費及びT+n年度の介護費cfNCE2703及びceNCE2803を集計し、T年度の介護費2954、施策実施率表示欄2931に表示された健診受診率の場合のT+n年度の介護費2955及び健診受診率が0%の場合のT+n年度の介護費2952を表示する。さらに、健診受診率が0%の場合のT+n年度の介護費2952と、施策実施率表示欄2931に表示された健診受診率の場合のT+n年度の介護費2955の差分を算出し、健診受診により抑制される介護費2953を表示する。図示する例では、健診受診率が30%の場合、抑制される介護費2953が10億円である。
【0167】
集計条件入力欄810は、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435に表示する対象者の条件を入力する欄である。図示する例では、T年度の年齢入力欄812、住所入力欄813及び健診対象入力欄814を設けているが、整形データ400、1300に格納されているT年度の任意のデータ項目を条件として入力する欄を設けてもよい。図示する例では、年齢入力欄812に40歳以上、住所入力欄813にA区とB区、健診対象入力欄814に1(対象者)が入力されている。
【0168】
図30は、施策効果推計部110が、出力部103に出力する、健診受診率を変更した場合の介護施策効果シミュレーション画面3000の例を示す図である。
図30では、
図29に示す介護施策効果シミュレーション画面2900の健診受診率を変更した場合の例を示す。
【0169】
介護施策効果シミュレーション画面3000は、対策介護度選択欄2410、介護施策選択タブ表示欄2420、施策効果推計対象者の選定欄2430、施策効果推計結果表示欄2440及び集計条件入力欄810を含む。介護施策効果シミュレーション画面3000の画面構成は、
図29に示す介護施策効果シミュレーション画面2900と同じであるため、以下では違いを説明する。
【0170】
施策実施率表示欄3031は、施策実施率表示欄2931と同様に、介護施策選択タブ表示欄2420で選択された介護施策の実施率及び実施人数を示す。図示する例では、施策実施率表示欄2931の健診受診率が20%から80%に、実施人数が1万人から8万人に変更されている。
【0171】
施策効果推計対象者選択欄3032は、施策効果推計対象者選択欄2932と同様に、介護施策を実施する対象者が選択される欄であり、施策実施率表示欄2931で変更した健診受診の実施人数に基づいて、健康診断を受診する対象者が選択される。対象者の選択は、前述したように、介護費抑制額2933が大きい対象者から降順に選択されるとよい。図示する例では、介護費抑制額2933が大きい8万人の対象者が選択されている。
【0172】
施策効果推計結果表示欄2440では、介護度別推計人数表示欄2441及び介護費推計結果表示欄2451を含み、健診受診率を変更した場合の介護度別推計人数と、介護費推計結果を表示する。
【0173】
介護度別推計人数表示欄2941では、施策実施率表示欄3031で変更された健診受診率の場合のT+n年度の介護度別推計人数3045を表示する。図示する例では、健診受診率を80%に変更した場合の要支援1以上の推計人数を表示している。さらに、健診受診率が0%の場合のT+n年度の介護度別推計人数2942と、施策実施率表示欄3031に表示された健診受診率の場合のT+n年度の介護度別推計人数3045の差分を算出し、健診受診率変更により抑制される介護人数3043を表示する。図示する例では、健診受診率を80%にすると、介護人数3043が2000人抑制され、
図29の実施率20%の場合の100人より大幅に増加している。
【0174】
介護度推計結果表示欄2951は、施策実施率表示欄3031で変更された健診受診率の場合のT+n年度の介護費3055を表示する。図示する例では、健診受診率を80%に変更した場合の介護費を表示している。さらに、健診受診率が0%の場合のT+n年度の介護費2952と、施策実施率表示欄3031に表示された健診受診率の場合のT+n年度の介護費3055の差分を算出し、健診受診率変更により抑制される介護費3053を表示する。図示する例では、健診受診率を80%に変更すると、介護費3053が100億円抑制され、
図29の健診受診率20%の場合の10億円より抑制額が大幅に増加している。
【0175】
図29及び
図30で説明したように、実施例5の将来推計システムでは、健康診断の受診によって抑制される介護人数及び介護費を推計できる。さらに、健診受診率を変更した場合の施策効果をシミュレーションできる。さらに、個人別の介護度・介護費抑制効果表示欄2435で、健診受診の効果が高い対象者を選定できるので、費用対効果の高い健診受診率向上施策を立案できる。自治体にとって住民の健診受診率の向上は、大きな課題となっており、実施例5の将来推計システムは、健診受診率向上に向けた効果的な施策立案を支援できる。
【0176】
本発明の実施例の将来推計システムであって、データ整形部111は、介護データ200と住民データ300とを個人単位で連結して、第1時点(T-n年度)及び第2時点(T年度)の整形データ400を作成し、二値化処理部112は、第2時点の介護データ200に含まれる要介護度を二値化して、m段階(例えば8段階)の要介護度からm-1個(例えば7個)の目的変数を作成し、介護度推計部114は、第1時点の整形データ401を説明変数として目的変数別の回帰分析によって生成されたm-1個の回帰式からなる介護度推計モデル600(式1)に第2時点の整形データ402を入力して、第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率711~718を推計するので、個人単位や地区単位の将来の介護度を高精度に推計できる。また、要介護度を二値化した介護度推計モデルを使用するので、結果への寄与が高い説明変数を分析できる。よって、自治体の地区診断に活用でき、介護予防施策の重点配分など効果的な施策立案を支援できる。
【0177】
また、介護度推計モデル構築部113は、目的変数別に、第1時点の整形データ401を説明変数とした回帰分析を行い、m-1個の回帰式からなる介護度推計モデル600を作成するので、過去の住民データ及び介護データから将来の介護度を推計するモデルを自動的に作成できる。
【0178】
また、データ整形部111は、介護データ200と住民データ300と医療データ1100とを個人単位で連結して、第1時点(T-n年度)及び第2時点(T年度)の整形データ1300を作成し、介護度推計部114は、介護度推計モデル1400に第2時点の整形データ1302を入力して、第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率711~718を推計するので、医療データも考慮して将来の介護度を推計することから、個人単位や地区単位の将来の介護度をより高精度に推計できる。
【0179】
また、データ整形部111は、介護データ200と住民データ300と健診データ1200とを個人単位で連結して、第1時点(T-n年度)及び第2時点(T年度)の整形データ1300を作成し、介護度推計部114は、介護度推計モデル1400に第2時点の整形データ1302を入力して、第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率711~718を推計するので、健診データも考慮して将来の介護度を推計することから、個人単位や地区単位の将来の介護度をより高精度に推計できる。
【0180】
また、推計結果集計部115が、入力された条件810に従って、第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率を集計し、要介護度別の推計人数820を算出するので、地区単位など任意の条件で将来の介護度別の人数を推計でき、全体の特性と地区別の特性とを正確に把握できる。これにより、自治体の地区診断に活用して、重点的に介護予防施策を適用する地区を把握できる。
【0181】
また、介護費推計モデル構築部116は、第2時点(T年度)の要介護度と第2時点(T年度)の介護費との関係を分析し、要介護度から介護費を推計する介護費推計モデルを構築し、介護費推計部117は、第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率を介護費推計モデル(式3)に入力して第3時点(T+n年度)の介護費1701を推計するので、費用の観点から将来の介護状況を把握でき、無駄な社会保障費を抑制するための介護予防施策の立案を支援できる。
【0182】
また、推計結果集計部115は、入力された条件810に従って、第3時点(T+n年度)の介護費を集計し、介護費の推計額1820を算出するので、地区単位など任意の条件で将来の介護費用を推計でき、全体の特性と地区別の特性とを介護費用の観点で正確に把握できる。これにより、自治体の地区診断に活用して、重点的に介護予防施策を適用する地区を把握できる。
【0183】
また、説明変数抽出部118は、入力部102に入力された目的変数について、回帰式の係数を標準誤差で除して計算されるZ値612~627が小さい説明変数を介護度推計モデル600、1400、から抽出し、入力値変更部119は、第2時点(T年度)の整形データ402において、Z値が小さい説明変数に対応するデータ2201、2301、2701、2801を変更し、介護度推計部114は、前記データが変更された整形データ402を前記介護度推計モデルに入力し、データ変更後の第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率2202、2302、2702、2802を推計し、介護費推計部117は、データ変更後の第3時点(T+n年度)の要介護度別に推計された確率を介護費推計モデルに入力し、データ変更後の第3時点(T+n年度)の介護費2203、2303、2703、2803を推計し、施策効果推計部110は、推計された第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率711~718とデータ変更後の前記第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率2211~2218、2311~2318との差分である第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率差を推計し、第3時点の介護費1701とデータ変更後の第3時点(T+n年度)の介護費2203、2303、2703、2803との差分である第3時点の介護費差を推計するので、目的変数への寄与が高い説明変数(例えば健康診断の受診)によって抑制される介護人数及び介護費を推計できる。さらに、健診受診率を変更した場合の施策効果をシミュレーションできる。さらに、健診受診の効果が高い対象者を選定できるので、費用対効果の高い健診受診率向上施策を立案できる。このため、健診受診率向上に向けた効果的な施策立案を支援できる。
【0184】
また、推計結果集計部115は、入力された条件2410に従って、第3時点(T+n年度)の要介護度別の確率差2441、2541、2941、3041を集計し、要介護度別の抑制人数2443、2543、2943、3043を算出し、さらに、入力された条件に従って、第3時点の前記介護費差2451、2551、2951、3051を集計し、介護費の抑制額2453、2553、2953、3053を算出するので、対策が必要な介護度(目的変数)において、抑制に寄与する介護施策(説明変数)を抽出できる。また、抽出した介護施策(説明変数)の効果として、抑制される介護人数及び介護費を推計できる。さらに、介護施策(説明変数)の実施率を変更した場合の施策効果のシミュレーションも可能である。さらに、介護施策の効果が高い対象者を選定できるので、費用対効果が高い介護施策立案が可能となる。このため、効果的な介護施策立案を支援できる。
【0185】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0186】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0187】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0188】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0189】
101 将来推計端末
102 入力部
103 出力部
104 CPU
105 メモリ
106 記憶媒体
110 施策効果推計部
111 データ整形部
112 二値化処理部
113 介護度推計モデル構築部
114 介護度推計部
115 推計結果集計部
116 介護費推計モデル構築部
117 介護費推計部
118 説明変数抽出部
119 入力値変更部
120 データベース
121 介護データ記録部
122 住民データ記憶部
123 整形データ記憶部
124 介護度推計モデル記憶部
125 推計結果記憶部
126 医療データ記憶部
127 健診データ記憶部
128 介護費推計モデル記憶部