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特許7149757スイッチング電源回路およびそれを備えた電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】スイッチング電源回路およびそれを備えた電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/335 20060101AFI20220930BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
H02M3/335 B
H02M3/28 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018146117
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020022313
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史宏
(72)【発明者】
【氏名】内野 禎敬
(72)【発明者】
【氏名】平賀 正宏
(72)【発明者】
【氏名】田邉 啓輔
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0261594(US,A1)
【文献】特開2008-092791(JP,A)
【文献】特開2013-215086(JP,A)
【文献】特表2005-520474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/22~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧源と、
前記直流電圧源の高電圧側に1次巻き線の一方の端子が接続されたトランスと、
前記直流電圧源の低電圧側にソース端子が接続された第1スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子のゲート端子にゲート信号を出力するコントローラと、
前記第1スイッチング素子のドレイン端子にソース端子が第1接続点で接続され、前記トランスの1次巻き線の他方の端子にドレイン端子が接続された第2スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子のゲート端子にカソード端子が、前記第2スイッチング素子のソース端子にアノード端子が接続されたツェナダイオードと、
前記第2スイッチング素子のゲート端子に接続されたゲートドライブ回路と、
前記直流電圧源の高電圧側に一方の端子が接続された第1コンデンサを備え、
前記第1コンデンサの他方の端子と前記ゲートドライブ回路が第2接続点で接続されており、前記第1コンデンサの他方の端子と前記直流電圧源の低電圧側の間に電流が流れる電流経路を有し、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子がいずれもオンしている期間に前記電流経路は、前記直流電圧源の高電圧側から前記第1コンデンサを経由し前記直流電圧源の低電圧側に向かって電流を流し、
前記第1スイッチング素子がオフ状態からターンオンした場合、前記直流電圧源の高電圧側から前記第1コンデンサと前記第2接続点と前記ゲートドライブ回路と前記ツェナダイオードと前記第1接続点の経路で電流が流れ、
前記第1スイッチング素子がオン状態からターンオフした場合、前記第1接続点から前記ツェナダイオードと前記ゲートドライブ回路と前記第2接続点と前記第1コンデンサと前記直流電圧源の高電圧側の経路で電流が流れることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源回路であって、
前記第1コンデンサの他方の端子と前記直流電圧源の低電圧側の間に接続される電流経路は、スイッチング電源回路内部で消費される負荷であることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項3】
請求項1に記載のスイッチング電源回路であって、
前記第1コンデンサの他方の端子と前記直流電圧源の低電圧側との間に接続される電流経路は、第1スイッチング素子のゲート端子に信号を送信するコントローラの電源であることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載のスイッチング電源回路であって、
前記ゲートドライブ回路は、少なくとも抵抗、ダイオード、インダクタ、コンデンサの何れかひとつを含むことを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項5】
請求項1に記載のスイッチング電源回路であって、
前記第1コンデンサの他方の端子と前記直流電圧源の低電圧側の間に第2コンデンサが接続され、前記第1コンデンサと前記第2コンデンサのそれぞれに並列に概ね等しい抵抗値の抵抗が接続されることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項6】
請求項5に記載のスイッチング電源回路であって、
前記第1コンデンサの他方の端子と前記直流電圧源の低電圧側の間に接続される電流経路は、スイッチング電源回路内部で消費される負荷であることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項7】
請求項5に記載のスイッチング電源回路であって、
前記第1コンデンサの他方の端子と前記直流電圧源の低電圧側の間に接続される電流経路は、第1スイッチング素子のゲート端子に信号を送信するコントローラの電源であることを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項8】
請求項5からの何れか1項に記載のスイッチング電源回路であって、
前記ゲートドライブ回路は、少なくとも抵抗、ダイオード、インダクタ、コンデンサの何れかひとつを含むことを特徴とするスイッチング電源回路。
【請求項9】
交流電圧源と、前記交流電圧源からの交流電圧を整流する整流回路と、前記整流回路で整流された直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路を備え、前記直流電圧の高電圧側と低電圧側の端子間に、請求項1からの何れか1項に記載のスイッチング電源回路が接続されることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧部から電圧仕様の異なる直流電圧を得るスイッチング電源回路を備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電圧を受電して直流電圧を得、更にこの直流電圧から電圧仕様の異なる直流電圧を得る絶縁電源回路としてフライバックコンバータ等の種々のスイッチング電源回路がある。これらのスイッチング電源回路は、直流電圧部から直流電力の供給を受けてトランスの一次側をPWM制御回路によりスイッチングし、電圧仕様の異なる直流電圧を出力するものである。この直流電圧部の電圧は、入力される交流電圧が高圧になるほど高くなり、その交流電圧に応じて350Vから1000Vを超える電圧まで対応する必要がある。公知のスイッチング電源回路に用いられるスイッチング素子は、交流200V受電の場合は数百V耐圧のMOSFETであるのに対し、交流400V受電の場合は1000Vを超える耐圧を有するMOSFETを備える必要があった。特に1000Vを超える耐圧のスイッチング素子はコストが高く課題であった。
【0003】
これらの課題を解決する手段として、複数の数百V耐圧のMOSFETを直列に組み合わせる回路構成が特許文献1、特許文献2に記されている。これらの回路構成では1000Vを超過する直流電圧を、複数の数百V耐圧のMOSFETで分担することで各MOSFETの耐圧を超過しない範囲でスイッチングすることが可能であり、従来1000Vを超える耐圧のスイッチング素子を用いていた場合に比べてスイッチング素子部のコストを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国公開公報US2011/0261594A1
【文献】特開2008-92791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の図1には、直流電圧源と、直流電圧源の端子間に接続され直列に接続される2つのコンデンサと、トランスの2次側電圧をフィードバックしトランスの2次側電圧を所望の電圧に制御する第1スイッチング素子と、第1スイッチング素子に直列に接続され、第1スイッチング素子のスイッチングに同期するように回路を構成した第2スイッチング素子と、第2スイッチング素子と直流電圧源の高電圧側との間にトランスを備え、2つのコンデンサの中間点と、第2スイッチング素子のゲート端子が、抵抗とダイオードの並列体からなるゲートドライブ回路を介して接続されるスイッチング電源回路が開示されている。したがって、第1スイッチング素子に印加される電圧は、直流電圧源の低電圧側の電圧と2つのコンデンサの接続点の電圧の電位差となり、第2スイッチング素子に印加される電圧は、2つのコンデンサの接続点と直流電圧源の高電圧側の電圧の電位差となる。このため、2つのコンデンサの電圧が概ね等しい場合、各スイッチング素子には直流電圧源の電圧の概ね半分程度の電圧が印加され、耐圧を超過しない範囲でのスイッチング動作が可能となる。しかしながら、第1スイッチング素子がターンオンする際に2つのコンデンサから供給されるエネルギーより、第1スイッチング素子がターンオフする際に2つのコンデンサに供給されるエネルギーの方が大きいため、2つのコンデンサの電圧が均等にならず接続点の電圧が直流電圧源の半分の電圧よりも高くなる懸念がある。このため、直流電圧源の低電圧側の電圧と2つのコンデンサの接続点の電圧の電位差が第1スイッチング素子の耐圧を超過する懸念があり課題であった。
【0006】
また、特許文献2の図2には、特許文献1で懸念される2つのコンデンサの電圧アンバランスを解決するために、2つのコンデンサの接続点と前記トランスの1次巻き線の中間点の間に抵抗とダイオードの直列体を追加する回路構成が開示されている。このため、第1スイッチング素子、第2スイッチング素子が共にオンしている期間に、トランスの1次巻き線に直流電圧源の電圧が生じるため、2つのコンデンサの接続点とトランスの1次巻き線の中間点を接続することにより、2つのコンデンサの接続点の電圧が直流電圧源の半分の電圧よりも高い場合に、2つのコンデンサの接続点からトランスの1次巻き線の中間点に向けて電流が流れるため、2つのコンデンサの電圧アンバランスが抑制される。しかしながら、トランスの構造が複雑になるため、トランスのコストアップやトランスの設計難といった課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、直流電圧源と、直流電圧源の高電圧側に1次巻き線の一方が接続されたトランスと、コントローラにゲート端子が接続され、直流電圧源の低電圧側にソース端子が接続された第1スイッチング素子と、トランスの1次巻き線の他方にドレイン端子が接続され、第1スイッチング素子のドレイン端子にソース端子が接続された第2スイッチング素子と、第2スイッチング素子のゲート-ソース間に接続されたツェナダイオードと、第2スイッチング素子のゲート端子に一方が接続されたゲートドライブ回路と、ゲートドライブ回路の他方の端子と直流電圧源の高電圧側端子との間に接続されたコンデンサを備え、コンデンサとゲートドライブ回路の接続点から直流電圧源の低電圧側に向かって電流を流す電流経路を設ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な回路構成で複数のコンデンサの電圧アンバランスを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】特許文献1に記載のスイッチング電源回路の回路図である。
図2】特許文献1に記載のスイッチング電源回路の動作波形である。
図3】実施例1におけるスイッチング電源回路の回路図である。
図4】実施例1におけるスイッチング電源回路の動作波形である。
図5】実施例2におけるスイッチング電源回路の回路図である。
図6】実施例1、2におけるスイッチング電源回路の一例を示した回路図である。
図7】実施例2におけるスイッチング電源回路の一例を示した回路図である。
図8】実施例2におけるスイッチング電源回路の一例を示した回路図である。
図9】実施例3におけるスイッチング電源回路の基本構成を示した回路図である。
図10】実施例3におけるスイッチング電源回路の詳細構成を示した回路図である。
図11】実施例4におけるスイッチング電源回路の回路図である。
図12】実施例5におけるスイッチング電源回路の基本構成を示した回路図である。
図13】実施例5におけるスイッチング電源回路の具体例を示した回路図である。
図14】実施例6における電力変換装置の一例を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、特許文献1の図1に記載されているスイッチング電源回路1の回路図である。このスイッチング電源回路1は、直流電圧源Vinと、直流電圧源Vinの端子間に接続された2つのコンデンサCb1、Cb2の直列体と、直流電圧源Vinの高電圧側に1次巻き線の一方が接続されたトランスTrと、コントローラCTRLにゲート端子が接続され、ソース端子が直流電圧源Vinの低電圧側に、ドレイン端子がノードVn1に接続されたスイッチング素子S1と、ソース端子がノードVn1に、ドレイン端子がトランスTrの1次巻き線の他方に接続されたスイッチング素子S2と、スイッチング素子S2のゲート端子とソース端子の間にツェナダイオードZD1を備え、2つのコンデンサCb1、Cb2の直列体の接続点ノードVn2と、スイッチング素子S2のゲート端子との間に、ダイオードD1と抵抗R1の並列体を備えている。
【0012】
スイッチング素子S1はコントローラCTRLの信号を受けてスイッチングし、コントローラCTRLは例えばトランスTrの2次巻き線の電圧を所望の電圧とするように動作する。
【0013】
スイッチング素子S2は、スイッチング素子S1のスイッチングに同期するように回路を構成されており、スイッチング素子S1がオフ状態からターンオンした場合、スイッチング素子S1のドレイン-ソース間電圧は減少し概ねゼロとなる。その結果、ノードVn1の電圧は、直流電圧源Vinの低電圧側の電圧と概ね等しくなり、ノードVn2とノードVn1の電位差が抵抗R1、ツェナダイオードZD1に印加され、Vn2→R1→ZD1→Vn1の経路で電流I1が流れ、スイッチング素子S2がターンオンする。
【0014】
一方、スイッチング素子S1がオン状態からターンオフした場合、スイッチング素子S1のドレイン-ソース間電圧は上昇しやがてノードVn2の電圧を超過する。その結果、ノードVn1の電圧がノードVn2の電圧より高くなり、Vn1→ZD1→D1→Vn2の経路で電流I2が流れ、スイッチング素子S2がターンオフする。
【0015】
そして、スイッチング素子S1、S2がいずれもオンしている期間にトランスTrの1次側にVinの電圧を印加し、スイッチング素子S1、S2がいずれもオフしている期間にトランスTrに蓄えたエネルギーをトランスの2次側に伝達する。
【0016】
図1に示す従来回路では、スイッチング素子S2がターンオンする際にS2のゲートに流れる電流I1はコンデンサCb1を充電、Cb2を放電するのに対し、スイッチング素子S2がターンオフする際にS2のゲートに流れる電流I2はコンデンサCb1を放電、Cb2を充電する。従って、スイッチング素子S2がターンオンする際にゲートに流れる電流とターンオフする際にゲートに流れる電流が一致しない場合、特許文献1に示す回路では、コンデンサCb1、Cb2の電圧が等しくならない。
【0017】
図2に、図1に示す従来回路の動作波形を示す。図2において、S1Vgs、S2Vgsはスイッチング素子S1、S2のゲート-ソース間電圧、S1Vds、S2Vdsはスイッチング素子S1、S2のドレイン-ソース間電圧である。S1Vgsが素子の閾値電圧を超過すると、スイッチング素子S1がオンしS1Vdsが概ね0Vになる。S1Vds、S2Vds共に概ね0Vの時にコンデンサCb1、Cb2の電流が放電し負方向に増大する。
【0018】
図2に示すように、スイッチング素子S1をターンオンした後に、コンデンサCb1を充電、Cb2を放電する電流I1に対し、スイッチング素子S1をターンオフした後にコンデンサCb1を放電、Cb2を充電する電流I2の方が支配的であることが分かる。従って、特許文献1では抵抗Rb1、Rb2の値が概ね等しい場合、コンデンサCb2の電圧がCb1の電圧より高くなることが分かる。このため、直流電圧源の低電圧側の電圧と2つのコンデンサの接続点の電圧の電位差が第1スイッチング素子の耐圧を超過する懸念があり課題であった。
【0019】
そこで、これを解決するための本実施例について以下説明する。
【0020】
図3は、本実施例におけるスイッチング電源回路1の基本構成である。図3に示すように本実施例では、直流電圧源Vinと、直流電圧源Vinの高電圧側に1次巻き線の一方が接続されたトランスTrと、コントローラCTRLにゲート端子が接続され、直流電圧源Vinの低電圧側にソース端子が接続されたスイッチング素子S1と、トランスTrの1次巻き線の他方にドレイン端子が接続され、スイッチング素子S1のドレイン端子にソース端子が接続されたスイッチング素子S2と、スイッチング素子S2のゲート-ソース間に接続されたツェナダイオードZD1と、スイッチング素子S2のゲート端子に一方が接続されたゲートドライブ回路GDと、ゲートドライブ回路GDの他方の端子と直流電圧源Vinの高電圧側端子との間に接続されたコンデンサC1を備え、コンデンサC1とゲートドライブ回路GDの接続点から直流電圧源の低電圧側に向かって電流を流す電流経路I3を設ける。
【0021】
以下、本実施例の回路動作について簡単に述べる。図3に示す回路において、スイッチング素子S2は、図1に示す特許文献1に記載の回路と同様に、スイッチング素子S1のスイッチングに同期するように回路を構成されている。尚、本実施例の動作を説明するにあたり、ゲートドライブ回路GDは図6に示すように抵抗R1とダイオードD1の並列体で構成されるものとする。
【0022】
スイッチング素子S1がオフ状態からターンオンした場合、スイッチング素子S1のドレイン-ソース間電圧は減少し概ねゼロとなる。その結果、ノードVn1の電圧は、直流電圧源Vinの低電圧側の電圧と概ね等しくなり、ノードVn4とノードVn1の電位差がコンデンサC1、抵抗R1、ツェナダイオードZD1に印加され、Vn3→R1→ZD1→Vn1の経路で電流I1’が流れ、スイッチング素子S2がターンオンする。
【0023】
一方、スイッチング素子S1がオン状態からターンオフした場合、スイッチング素子S1のドレイン-ソース間電圧は上昇しやがてノードVn3の電圧を超過する。その結果、ノードVn1の電圧がノードVn3の電圧より高くなり、Vn1→ZD1→D1→Vn3の経路で電流I2’が流れ、スイッチング素子S2がターンオフする。
【0024】
ここで、コンデンサC1のみを接続した場合、電流I1’とI2’のアンバランスによりI2’が支配的であるので、コンデンサC1はノードVn3からノードVn4に電流が流れ放電されるので、ノードVn3の電圧が徐々に低下する。そこで、ノードVn3から直流電圧源Vinの低電圧側に向かう方向に電流経路I3を設ける。電流経路I3を設けることによって、コンデンサC1の電圧は、電流I1’、I2’、I3により決定される電圧値となるため、I3の値を調整することにより、ノードVn3の電圧を所望の値とするようにコンデンサC1の電圧を調整することが可能となる。
【0025】
以上述べたように本実施例では、直流電圧源Vinの高電圧側とノードVn3の間にコンデンサC1を追加し、ノードVn3と直流電圧源Vinの低電圧側の間に電流経路I3を設けている。これにより、コンデンサをひとつしか設けない回路構成でスイッチング素子S1、S2、トランスTrに流れる電流や印加される電圧を従来回路と同様にすることが可能となるため、従来生じていた複数のコンデンサの電圧アンバランスが原理的に生じない回路構成となる。
【0026】
なお、特許文献1と本実施例の差異点として、スイッチング素子S1、S2がいずれもオンしている期間のCb1の電流の向きが挙げられる。図1に示す特許文献1では、図2に示すように、スイッチング素子S1、S2がいずれもオン状態では、コンデンサCb1、Cb2が共に放電動作し、その電流が負方向に増加し(図2中のI1)、トランスへ電力を供給するため、仮にCb2を電流経路とした場合、直流電圧源の低電圧側→Cb2→Cb1→直流電圧源の高電圧側と電流を流すように電流経路が構成される。これに対し、図3に示す本実施例では、図4の動作波形に示すように、スイッチング素子S1、S2がいずれもオン状態の場合、コンデンサC1は電流経路の電流に従い充電動作となるため、直流電圧源の高電圧側→C1→電流経路I3→直流電圧源の低電圧側と電流が流れる。
【実施例2】
【0027】
次に、図5図8を用いて実施例2のスイッチング電源回路1について説明する。なお、実施例1との共通点は重複説明を省略する。
【0028】
図5には、ゲートドライブ回路GDの一例として、図3に示す回路に対し、スイッチング素子S2のゲート端子に抵抗R1を接続した場合を示す。ここで、抵抗R1の値を増大させることで、スイッチング素子S2がターンオン、ターンオフする際のゲート電圧の立ち上がり、立ち下がり時間が延伸するため、スイッチング素子S2から生じるスイッチングノイズを低減することが可能となる。一方、抵抗R1の値を減少させることで、スイッチング素子S2がターンオン、ターンオフする際のゲート電圧の立ち上がり、立ち下がり時間が短縮するため、スイッチング素子S2で生じる損失が減少する。
【0029】
図6には、ゲートドライブ回路GDの一例として、図5に示す回路に対し、抵抗R1に並列にダイオードD1を接続している。図6に示すように、ダイオードD1を接続することにより、スイッチング素子S2がターンオフした際のゲート電圧の立ち下がり時間が図5に示す回路よりも短縮し、スイッチング素子S2のターンオフ時の損失が低下する。このため、図5に示す回路よりも効率が向上する。以上のように、ゲートドライブ回路GDに抵抗R1、ダイオードD1を接続することで、スイッチング電源回路1の変換効率やスイッチングノイズレベルを調整することが可能となる。
【0030】
図7には、ゲートドライブ回路GDの一例として、スイッチング素子S2のゲート端子にインダクタL1を接続した場合を示す。図7に示すように、インダクタL1を追加することで、スイッチング素子S2のゲート端子とノードVn3の間のインピーダンス、及びツェナダイオードZD1とノードVn3の間のインピーダンスが増加するため、スイッチング素子の寄生インダクタンス、寄生容量により生じるスイッチング素子S2のゲート端子やツェナダイオードZD1に流れる電流を減少させ、スイッチング素子S2が誤点弧することを抑制することが可能となる。
【0031】
図8には、ゲートドライブ回路GDの一例として、スイッチング素子S2のゲート-ソース間にコンデンサCgsを接続した場合を示す。図8に示すように、コンデンサCgsを接続することにより、スイッチング素子の寄生インダクタンス、寄生容量により生じる電流がスイッチング素子S2のゲート端子やツェナダイオードZD1に流れた場合に、スイッチング素子S2のゲート電圧が増加する速度を図5図7に示す回路よりも長くすることが可能となり、スイッチング素子S2の誤点弧を抑制することが可能となる。
【0032】
以上述べたように本実施例によれば、スイッチング素子S2のゲート端子に接続されるゲートドライブ回路GDに、抵抗、ダイオード、インダクタ、コンデンサ等の受動部品を接続することで、効率、ノイズ、誤動作といったスイッチング電源回路1の種々の設計要素に対する動作特性を所望の値とするように調整することが可能となる。
【実施例3】
【0033】
次に、図9図10を用いて実施例3のスイッチング電源1について説明する。なお、実施例1、2との共通点は重複説明を省略する。本実施例では、実施例1で述べた電流経路I3を負荷Loadに置き換えている。
【0034】
実施例1に示す回路では、電流経路I3によりコンデンサC1の電圧を調整していたが、図9に示すように本実施例では、従来電流経路I3が接続されていた部分に、スイッチング電源回路内部で使用する制御電源や、LED等の負荷を接続することを特徴としている。これにより、従来電流経路I3で消費していたエネルギーを有効活用できるため、スイッチング電源回路全体の効率が向上する。
【0035】
図10に本実施例の一例として、負荷LoadにコントローラCTRLの制御電源を適用した場合の回路図を示す。図10に示すように、ノードVn3と直流電圧源Vinの低電圧側との間に、抵抗R2、R3を追加し、ノードVn3の電圧と直流電圧源Vinの低電圧側の電圧の電位差を分圧し、コントローラCTRLの電源電圧として適当な値となる様に、抵抗R2、R3の値を設定する。
【0036】
以上述べたように本実施例では、実施例1で述べた回路の具体的な構成として、電流経路I3に負荷Loadを設けている。これにより、従来電流経路I3で消費していたエネルギーをスイッチング電源回路内部で使用することができ、スイッチング電源回路の効率が向上する。
【実施例4】
【0037】
図11は、本発明の実施例4におけるスイッチング電源回路1の基本構成である。尚、実施例1~3との共通点は重複説明を省略する。
【0038】
図11に示すように本実施例では、図1に示す回路に対し、コンデンサCb1とCb2の接続点から、直流電圧源Vinの低電圧側に向かって電流経路I3を接続している。これにより、従来回路で、抵抗Rb1、Rb2の値が概ね等しい場合コンデンサCb2の電圧がCb1の電圧よりも高くなってしまう課題に対し、コンデンサCb2の電圧を放電、Cb1の電圧を充電する電流を流すことが可能となり、コンデンサCb1、Cb2の電圧アンバランスを抑制することが可能となる。即ち、コンデンサCb1、Cb2の電圧は、S1がターンオンした際に流れる電流I1、S1がターンオフした際に流れる電流I2、ノードVn2から直流電圧源Vinの低電圧側に流れる電流I3の合計値によって定まる。
【0039】
以上述べたように本実施例では、図1に示す回路に対しノードVn3から直流電圧源Vinの低電圧側に向けて電流を流すように電流経路I3を設けている。これにより、従来課題であった電圧アンバランスの影響を抑制することが可能となる。
【0040】
尚、図11に示すゲートドライブ回路GDは、実施例3で述べたように変換効率やスイッチングノイズといった種々の設計要素に対し所望の特性を得るように抵抗、ダイオード、インダクタ、コンデンサ等の受動部品で構成される。
【実施例5】
【0041】
次に、図12図13を用いて実施例5のスイッチング電源回路1について説明する。尚、実施例1~4との共通点は重複説明を省略する。本実施例では、実施例4で述べた電流経路I3を負荷Loadに置き換えている。
【0042】
実施例4に示す回路では、電流経路I3によりコンデンサCb1、Cb2の電圧を調整していたが、本実施例では、従来電流経路I3が接続されていた部分に、スイッチング電源回路内部で使用する制御電源や、LED等の負荷を接続することを特徴としている。これにより、従来電流経路I3で消費していたエネルギーを有効活用できるため、システム全体の効率が向上する。
【0043】
図13に本実施例の一例として、負荷LoadにコントローラCTRLの電源を適用した場合の回路図を示す。図13に示すように、ノードVn3と直流電圧源Vinの低電圧側との間に、抵抗R2、R3を追加し、ノードVn3と直流電圧源Vinの低電圧側の電位差を分圧することによりコントローラCTRLの電源電圧として適当な値となる様に、抵抗R2、R3の値を設定する。
【0044】
以上述べたように本実施例では、実施例4で述べた回路の具体的な構成として、電流経路I3に負荷Loadを設けている。これにより、従来電流経路I3で消費していたエネルギーをスイッチング電源回路内部で使用することができ、スイッチング電源回路の効率が向上する。
【実施例6】
【0045】
次に、図14を用いて本実施例について説明する。尚、実施例1~5との共通点は重複説明を省略する。
【0046】
図14に示すように本実施例では、図11図13に述べたスイッチング電源回路1の適用先の一例として、交流電源から電力を入力し、モータ等の交流負荷に電力を出力するインバータ回路に適用した場合の回路構成について述べる。
【0047】
図14に示すように本実施例のスイッチング電源回路1は、交流電源から電力を入力しダイオードDB1~DB6から成る整流回路と、スイッチング素子Q1~Q6から成るインバータ回路とで構成される電力変換装置に組み込まれている。整流回路の出力部の電圧は、交流系統の電圧に応じた直流電圧Vdcとなり、図3図5図10に示す回路ではコンデンサC1と電流経路I3の直列体に、図11図13に示すスイッチング電源回路1では、コンデンサCb1、Cb2の直列体に、直流電圧Vdcが印加されている。そして、スイッチング電源回路1は、図3図5図13に示すように、トランスTrの2次側電圧を出力する。
【0048】
以上述べたように本実施例では、交流電源からの交流電力を入力し、交流電力を出力するインバータ回路からなる電力変換装置に、スイッチング電源回路1を適用した場合の回路構成について述べた。またスイッチング電源回路1の適用先はこれに限らず、直流入力或いは直流出力の電力変換装置に関しても同様に適用可能である。
【0049】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:スイッチング電源回路、Tr:トランス、S1,S2:スイッチング素子、ZD1:ツェナダイオード、D1:ダイオード、R1,R2,R3,Rb1,Rb2:抵抗、CTRL:制御回路、Cb1,Cb2,C1:コンデンサ、GD:ゲートドライブ回路
図1
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