(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】情報処理システム、顧客動線分析方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20120101AFI20220930BHJP
G06Q 30/06 20120101ALI20220930BHJP
【FI】
G06Q30/02 300
G06Q30/06
(21)【出願番号】P 2018150068
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000233491
【氏名又は名称】株式会社日立システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 春美
(72)【発明者】
【氏名】野口 孝史
【審査官】大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083980(JP,A)
【文献】特開平05-046591(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079456(WO,A1)
【文献】特開2008-077139(JP,A)
【文献】特許第5967553(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の動線を分析する情報処理システムであって、
店舗に備えられた撮像部により撮像された撮像データを取得する撮像データ取得部と、
前記店舗における商品の売り上げを示す売り上げデータを取得する売り上げ情報取得部と、
前記撮像データ取得部が取得した前記撮像データと、前記店舗のレイアウトを示すレイアウトデータと、前記店舗で陳列される商品の陳列データとに基づいて、前記顧客の動線を含むトラッキングデータを生成するトラッキング処理部と、を備え、
前記トラッキング処理部は、前記トラッキングデータに欠落箇所があるか否かを判定し、前記トラッキングデータに欠落箇所があると判定した場合、前記売り上げ情報取得部が取得した前記売り上げデータと前記陳列データとに基づいて、前記欠落箇所を補間する
場合において、
前記トラッキング処理部は、店舗間で類似しているレイアウトデータの有無を判定し、店舗間で類似しているレイアウトデータがあると判定した場合、類似していると判定した店舗の前記陳列データが類似しているか否かを判定し、前記陳列データが類似していると判定した場合、前記トラッキングデータのうちの当該欠落箇所を、他の店舗で欠落が生じていないトラッキングデータのうちの前記欠落箇所に対応する部分で補間する、
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記トラッキング処理部は、前記店舗のレイアウトデータおよび
前記陳列データが類似していると判定する場合において、前記撮像データまたは前記売り上げデータの時刻に基づいて、比較対象とする前記トラッキングデータを絞り込む、
ことを特徴とする請求項
1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
コンピュータが、顧客の動線を分析する顧客動線分析方法であって、
前記コンピュータが、
店舗に備えられた撮像部により撮像された撮像データを取得し、
前記店舗における商品の売り上げを示す売り上げデータを取得し、
取得された前記撮像データと、前記店舗のレイアウトを示すレイアウトデータと、前記店舗で陳列される商品の陳列データとに基づいて、前記顧客の動線を含むトラッキングデータを生成し、
前記トラッキングデータに欠落箇所があるか否かを判定し、
前記トラッキングデータに欠落箇所があると判定した場合、取得された前記売り上げデータと前記陳列データとに基づいて、前記欠落箇所を補間する
場合において、
店舗間で類似しているレイアウトデータの有無を判定し、
店舗間で類似しているレイアウトデータがあると判定した場合、類似していると判定した店舗の前記陳列データが類似しているか否かを判定し、
前記陳列データが類似していると判定した場合、前記トラッキングデータのうちの当該欠落箇所を、他の店舗で欠落が生じていないトラッキングデータのうちの前記欠落箇所に対応する部分で補間する、
ことを特徴とする顧客動線分析方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
前記店舗のレイアウトデータおよび
前記陳列データが類似していると判定する場合において、前記撮像データまたは前記売り上げデータの時刻に基づいて、比較対象とする前記トラッキングデータを絞り込む、
ことを特徴とする請求項
3に記載の
顧客動線分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、顧客動線分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、店舗内での顧客動向を解析するためにレーザセンサや距離センサを用いた人物追跡システムが開発されている。これらのシステムでは、人物を追跡(トラッキング)するのための専用装置(例えば、レーザセンサ)を設置するため、導入時のコストが高くなる。そこで、コストを抑えた人物追跡手法として、既存の監視カメラの映像を解析する技術が開発されている。この方法では、セキュリティ用途で店舗に既設されているカメラを用いるため、追加の装置は不要となる。しかし、監視映像の画像解析だけではトラッキングの精度は十分とは言えず、例えば、カメラの死角となるような場所では画像が欠落してカメラ間の追跡で失敗する場合があった。
【0003】
このような問題点に鑑み、例えば、特許文献1には、計測範囲において顧客行動に応じた検知エリアをひとつ又は複数設定して、認識された検知エリア毎の顧客行動を行動ログとして出力し、時系列情報や行動プロセス情報を用いて出力された行動ログを整理することで、顧客の動線を欠落なく効率的に取得する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、検知エリア毎の顧客の行動ログを整理して動線を取得している。しかしながら、商品の購入履歴に基づいて動線を取得するものではないため、商品ごとおよび顧客ごとに顧客の動線を精度よく分析することができなかった。
【0006】
本発明は、商品の購入履歴に基づいて、商品ごとおよび顧客ごとに顧客の動線を精度よく分析することが可能な情報処理システム、顧客動線分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる情報処理システムは、顧客の動線を分析する情報処理システムであって、店舗に備えられた撮像部により撮像された撮像データを取得する撮像データ取得部と、前記店舗における商品の売り上げを示す売り上げデータを取得する売り上げ情報取得部と、前記撮像データ取得部が取得した前記撮像データと、前記店舗のレイアウトを示すレイアウトデータと、前記店舗で陳列される商品の陳列データとに基づいて、前記顧客の動線を含むトラッキングデータを生成するトラッキング処理部と、を備え、前記トラッキング処理部は、前記トラッキングデータに欠落箇所があるか否かを判定し、前記トラッキングデータに欠落箇所があると判定した場合、前記売り上げ情報取得部が取得した前記売り上げデータと前記陳列データとに基づいて、前記欠落箇所を補間する、ことを特徴とする情報処理システムとして構成される。
【0008】
また、本発明は、上記情報処理システムで行われる顧客動線分析方法としても把握される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、商品の購入履歴に基づいて、商品ごとおよび顧客ごとに顧客の動線を精度よく分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施例における情報処理システムの機能的な構成を示す図である。
【
図2】記憶部が記憶するデータの例を示す図である。
【
図7】本システムを利用して顧客の動線を分析するための処理(動線分析処理)の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】トラッキングデータ、補間トラッキングデータの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる情報処理システム、顧客動線分析方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施例における情報処理システム1000の機能的な構成を示す図である。情報処理システム1000は、顧客の動線を分析するためのシステムである。以下では、顧客が店舗で商品を購入する際の動線を分析しているが、これに限らず、例えば、工場内、駅構内、居室等をはじめとする様々な空間で人物の動線を分析する場合に適用することができる。
【0013】
図1に示すように、情報処理システム1000は、顧客の動線を分析するためのサーバ100と、本システムの管理者が操作する管理者端末200と、上記顧客の動線を分析する対象となる店舗で用いられる売り上げシステム300(300-1~300-N)とを有して構成されている。サーバ100と管理者端末200とは、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等の一般的なネットワークN1を介して接続されている。また、サーバ100と各店舗の売り上げシステム300とは、インターネット等の一般的なネットワークN2を介して接続されている。
図1では、複数の店舗A~Nが、本システムを利用していることを示している。店舗としては、例えば、スーパーマーケット、コンビニエンスストアをはじめとする商品販売店舗がある。
【0014】
サーバ100は、ハードウェアとしては一般的なコンピュータから構成される。
図1に示すように、サーバ100は、記憶部101と、制御部102と、通信部103と、画像取得部104と、POS(Point Of Sales)情報取得部105と、トラッキング処理部106とを有して構成されている。
【0015】
サーバ100を構成する上記各部の機能は、制御部102がプログラムをメモリから読み出して実行することにより実現される。上記プログラムは、通信部103を介してネットワークからダウンロードされ、メモリ上にロードされて、制御部102により実行されるようにしてもよい。また、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)等の可搬性を有するコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に対して情報を読み書きする読書装置を介して、当該記憶媒体からメモリ上に直接ロードされ、制御部102により実行されるようにしてもよい。さらには、上記各種プログラムを、コンピュータにインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで上記記憶媒体に記録して提供したり、配布してもよい。さらには、上記所定のプログラムを、通信ネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供したり、配布してもよい。
【0016】
記憶部101は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置から構成され、本システムに必要な各種データを記憶する。
【0017】
図2は、記憶部101が記憶するデータの例を示す図である。
図2に示すように、記憶部101は、レイアウトデータ1011と、商品陳列データ1012と、撮像データ1013と、POSデータ1014とを記憶する。これらのデータは、本システムを利用するすべての店舗から送信され、記憶されている。
【0018】
図3は、レイアウトデータ1011の例を示す図である。レイアウトデータ1011は、POS端末、商品陳列棚、通路、出入り口といった、店舗内にあるものの配置構成を示す図である。
図3に示すように、レイアウトデータ1011には、店舗内に配置されている売り上げ処理部であるPOS端末、撮像部302であるカメラ、商品陳列棚A(A-1)~E(E3-4)等の配置図面が記憶されている。
図3では、例えば、図面向かって左上に店舗Aの出入り口Eが設けられ、四方にカメラが設けられていることを示している。また、店舗Aでは、壁面に商品棚A~Dが配置され、中央部分に商品棚Eが配置されていることを示している。このように、レイアウトデータ1011には、店舗にあるものの配置を示す図面データが、店舗ごとに記憶されている。
【0019】
図4は、商品陳列データ1012の例を示す図である。商品陳列データ1012は、店舗ごとの商品陳列棚と当該陳列棚に陳列された商品との関係を示すデータである。
図4に示すように、商品陳列データ1012には、商品の識別情報である商品NOと、当該商品NOにより識別される商品の商品名と、当該商品名により識別される商品が陳列される商品棚を識別するための棚番とが対応付けて記憶されている。
図4では、例えば、ある店舗(例えば、店舗A)において、商品NO0001で識別される商品は○○チョコレートであり、E1-1の上段に陳列されていることを示している。このように、商品陳列データ1012には、商品とその商品が陳列されている陳列棚とが対応付けて記憶されている。
【0020】
図5は、撮像データ1013の例を示す図である。撮像データ1013は、店舗に設けられたカメラが撮像した画像データや動画データ等の撮像データである。
図5に示すように、撮像データ1013には、カメラが撮像したデータと、当該データが撮像された日時とが対応付けて記憶されている。
図5では、例えば、
図3に示したレイアウトデータ1011における図面向かって左上のカメラが、2017年10月10日の午前10時10分10秒に撮像したデータには、商品陳列棚E1-3、E1-2が撮像され、顧客Pが当該陳列棚E1-3の中段に陳列されている商品を手に取ろうとしている様子が撮像されていることを示している。このように、撮像データ1013には、店舗内のカメラにより撮像されたデータが、時系列に蓄積されている。
【0021】
図6は、POSデータ1014の例を示す図である。POSデータ1014は、顧客が店舗で購入した商品の売り上げを示すデータである。
図6に示すように、POSデータ1014には、店舗Aにおいて、商品の購入時刻である2017年10月10日の午前11時11分11秒に、30代の男性顧客(顧客番号C0001)が、商品NO「0001」の○○チョコレートを2個、商品NO「0005」の××ボールペンを1個購入したことを示している。また、金額は、それぞれ、XXX円、△△△円であったことを示している。このように、POSデータ1014には、店舗ごと顧客ごとの商品の購入データが蓄積されている。続いて、
図1に戻り、制御部102以降の各部について説明する。
【0022】
制御部102は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置から構成され、サーバ100における各部を制御する。
【0023】
通信部103は、例えば、NIC(Network Interface Card)等の通信機器から構成され、サーバ100と管理者端末200または売り上げシステム300との間で本システムに必要な各種データを送受信する。
【0024】
画像取得部104は、制御部102により実行されるプログラムであり、売り上げシステム300が有する撮像部302により撮像された上記撮像データを取得し、撮像データ1013として記憶部101に記憶する。
【0025】
POS情報取得部105は、制御部102により実行されるプログラムであり、売り上げシステム300が有する売り上げ処理部303が処理した売り上げデータを取得し、POSデータ1014として記憶部101に記憶する。
【0026】
トラッキング処理部106は、制御部102により実行されるプログラムであり、上記撮像データ1013および上記POSデータ1014を用いて顧客の動線を分析する。また、トラッキング処理部106は、分析した動線に欠落箇所があるか否かを判定し、欠落箇所があると判定した場合、当該欠落箇所を補間する。サーバ100の上記各部が行う具体的な処理については後述する。続いて、管理者端末200について説明する。
【0027】
管理者端末200は、本システムの管理者が、顧客の動線を分析する際に用いる端末であり、ハードウェアとしては一般的なコンピュータから構成される。
図1に示すように、管理者端末200は、入力部201と、出力部202と、制御部203と、通信部204とを有して構成されている。
【0028】
入力部201は、例えば、キーボードやマウス等の入力機器から構成され、管理者から、動線の分析対象となる顧客や店舗、日時等、分析に必要な各種情報の入力を受け付ける。
【0029】
出力部202は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置から構成され、サーバ100で行われた上記分析の結果等、本システムで出力される各種情報を表示する。
【0030】
制御部203は、例えば、CPU等の演算装置から構成され、管理者端末200における各部を制御する。
【0031】
通信部204は、例えば、NIC等の通信機器から構成され、サーバ100との間で本システムに必要な各種データを送受信する。管理者端末200の上記各部が行う具体的な処理については後述する。続いて、売り上げシステム300について説明する。
【0032】
売り上げシステム300は、本システムを利用する店舗で購入された商品の売り上げを計上するシステムである、
図1に示すように、売り上げシステム300は、通信部301と、撮像部302と、売り上げ処理部303と、記憶部304と、制御部305とを有して構成されている。
【0033】
通信部301は、例えば、モデム等の通信機器から構成され、サーバ100との間で本システムに必要な各種データを送受信する。
【0034】
撮像部302は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)等の撮像装置や当該撮像装置や通信部301と通信するコンピュータから構成され、撮像装置が撮像した店舗内の画像を出力し、随時、通信部301を介してサーバ100に送信する。
【0035】
売り上げ処理部303は、POS端末や当該POS端末と通信するコンピュータから構成され、店舗において購入された商品の売り上げ処理を実行し、当該商品の商品名、個数、金額等を含む上記POSデータ1014を出力し、都度、通信部301を介してサーバ100に送信する。
【0036】
記憶部304は、HDD等のストレージ装置から構成され、店舗のレイアウトデータ、商品陳列データ、撮像データ、POSデータを記憶する。これらのデータについては、
図3~6と同様の構成であるため、ここではその説明を省略する。
【0037】
制御部305は、例えば、CPU等の演算装置を有したコンピュータから構成され、管売り上げシステム300における各部や各装置を制御する。売り上げシステム300の上記各部が行う具体的な処理については後述する。続いて、本システムで行われる処理について説明する。
【0038】
図7は、本システムを利用して顧客の動線を分析するための処理(動線分析処理)の処理手順を示すフローチャートである。
図7に示すように、各店舗の売り上げシステム300では、制御部305が、店舗のレイアウトデータ、商品陳列データを生成し(ステップS701)、これらのデータを、通信部301を介してサーバ100に送信する(ステップS702)。
【0039】
サーバ100の制御部102は、各店舗の売り上げシステム300から受信した上記店舗のレイアウトデータ、商品陳列データを、レイアウトデータ1011、商品陳列データ1012として登録し、記憶部101に記憶する(ステップS703)。
【0040】
また、各店舗の売り上げシステム300の撮像部302は、店舗内で撮像した画像や映像等の撮像データを生成し(ステップS704)、当該データを、通信部301を介してサーバ100に送信する(ステップS705)。撮像部302は常時起動されているため、以降、リアルタイムに上記撮像データが送信される。
【0041】
サーバ100の制御部102は、各店舗の売り上げシステム300から受信した上記撮像データを、撮像データ1013として登録し、記憶部101に記憶する(ステップS706)。以降、リアルタイムに上記撮像データが記憶部101に店舗ごとに蓄積される。
【0042】
また、売り上げシステム200の売り上げ処理部303は、店舗に来店した顧客が購入した商品についての売り上げ処理を都度実行し(ステップS707)、その売り上げデータを含むPOSデータをサーバ100に都度送信する(ステップS708)。
【0043】
サーバ100の制御部102は、各店舗の売り上げシステム300から受信した上記POSデータを、POSデータ1014として登録し、記憶部101に記憶する(ステップS709)。以降、売り上げ処理が行われる都度、上記POSデータが記憶部101に店舗ごとに蓄積される。
【0044】
このような場合において、管理者端末200の入力部201が、管理者から、顧客の動線を分析するための条件であるトラッキング条件の入力を受け付けると(ステップS710)、制御部203は、通信部204を介して当該トラッキング条件を含むトラッキング要求をサーバ100に送信する(ステップS711)。上記トラッキング条件としては、例えば、店舗名、撮像データの撮像期間、POSデータに含まれる商品名、商品の購入時間、顧客番号や顧客の年代を含めることができる。
【0045】
サーバ100は、売り上げシステム300から上記トラッキング要求を受信すると、トラッキングデータ生成処理を実行する(ステップS712)。
【0046】
具体的には、サーバ100の画像取得部104は、上記トラッキング要求に含まれる店舗名、撮像データの撮像期間を読み取り、当該店舗名、撮像期間をキーにして撮像データ1013にアクセスし、該当店舗の該当期間の撮像データを抽出する。そして、サーバ100のPOS情報取得部105は、上記店舗名、商品名、商品の購入時間、顧客番号や顧客の年代をキーにしてPOSデータ1014にアクセスし、POSデータ1014の中から、上記キーを含むデータを、トラッキング処理すべき該当店舗の該当顧客のPOSデータとして抽出する。さらに、トラッキング処理部106は、レイアウトデータ1011の中から、上記店舗のレイアウトデータを抽出し、抽出したレイアウトデータと、抽出した上記撮像データと、抽出した上記POSデータとを用いて、顧客の動線を分析するためのトラッキングデータを生成する。当該トラッキングデータの生成については後述する。
【0047】
トラッキング処理部106は、生成したトラッキングデータに含まれる顧客の動線に欠落箇所があるか否かを判定する(ステップS713)。トラッキング処理部106は、トラッキングデータに含まれる顧客の動線に欠落箇所がないと判定した場合(ステップS713;No)、生成した上記トラッキングデータを管理者端末200に送信する(ステップS714)。その後、管理者端末200の制御部203は、受信した上記トラッキングデータを出力部202に表示する(ステップS715)。
【0048】
一方、トラッキング処理部106は、トラッキングデータに含まれる顧客の動線に欠落箇所があると判定した場合(ステップS713;Yes)、当該欠落箇所を補間する補間処理を実行し(ステップS716)、補間処理が実行された後の補間トラッキングデータを生成する(ステップS717)。当該補間処理、補間トラッキングデータについては後述する。
【0049】
トラッキング処理部106は、生成した上記補間トラッキングデータを管理者端末200に送信し(ステップS718)、管理者端末200の制御部203は、受信した上記補間トラッキングデータを出力部202に表示する(ステップS719)。
【0050】
さらに、トラッキング処理部106は、上記トラッキングデータまたは上記補間トラッキングデータを該当店舗の売り上げシステム300に送信し(ステップS720)、売り上げシステム300の制御部305は、当該制御部305に接続された表示部に、サーバ100から受信した上記トラッキングデータまたは上記補間トラッキングデータを表示する(ステップS721)。
【0051】
図8は、トラッキングデータ、補間トラッキングデータの例を示す図である。トラッキングデータは、レイアウトデータ1011に、顧客の動線Lを重ね合わせたデータである。当該重ね合わせの方法としては、例えば、トラッキング処理部106が、撮像データに含まれる顧客の顔画像や服装、容姿などの特徴情報を抽出する。さらに、トラッキング処理部106は、抽出した当該特徴情報と同じ特徴情報を含む画像データを特定し、特定した画像データにおける顧客の位置情報を算出してレイアウトデータ1011にプロットする。このような処理を行うことにより、レイアウトデータ1011上にプロットされた点が顧客の動線としてあらわれる。
図8では、顧客が店舗Aの出入り口Eから入って、商品陳列棚A-1、A-2、B-3、B-2、B-1、C-2横の通路をとおり、D-2、D-3横をとおり、POS端末まで移動していることを示している。当該トラッキングデータでは、動線上の範囲BRがカメラの死角となっていて、プロットされた点が欠落した欠落箇所となり、動線が不連続となっていることがわかる。
【0052】
トラッキング処理部106は、ステップS713において欠落箇所の有無を判定し、欠落箇所があると判定した場合(ステップS713;Yes)、レイアウトデータ1011、商品陳列データ1012、POSデータ1014を参照して顧客のルートを推定する補間処理を実行する。例えば、トラッキング処理部106は、レイアウトデータ1011を参照して上記欠落箇所付近の位置を特定する。さらに、トラッキング処理部106は、商品陳列データ1012とPOSデータ1014とを参照し、特定した位置に隣接する商品陳列棚の商品名とPOSデータの商品名とを比較し、当該商品名の商品が陳列されている商品陳列棚を特定する。トラッキング処理部106は、商品陳列棚を特定すると、顧客が当該商品陳列棚付近を移動したと判断し、推定される顧客の動線をレイアウトデータ上にプロットする。
図8では、上記判断にしたがって、上記欠落箇所において推定される動線L’がプロットされ、上記欠落箇所を含む顧客の動線L+L’が上記補間トラッキングデータとして生成され、当該補間トラッキングデータとして示される動線が顧客の動線であると推定できる。すなわち、店舗で顧客がある商品を購入したときの動線を欠落箇所を含めて把握することができる。
【0053】
このように、本実施例では、上記処理を行うことにより、商品ごとおよび顧客ごとに顧客の動線を精度よく分析することができる。特に、スーパーマーケット等の大規模な店舗における商品のマーケティングでは、顧客の来店から清算までの動線を正確に求めることが重要である。顧客の導線を正確に求めることができれば、POSデータを参照し、商品陳列棚に陳列されている商品の近くを通ったにもかかわらず当該商品を購入しなかった顧客の数を収集することが可能となる。このように、POSデータと併用して顧客の動線を推定することにより、動線分析の精度を向上させることができる。また、顧客の動線を正確に把握することで、購入した製品だけでなく、購入しなかった製品も推定できるようになる。
【0054】
なお、本システムは、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化したり、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせて実施することができる。
【0055】
例えば、サーバ100のトラッキング処理部106は、他の店舗のレイアウトと類似しているレイアウトの顧客の動線を取得し、補間して動線を推定してもよい。具体的には、レイアウトデータ1011の中から、店舗間で類似しているレイアウトデータの有無を判定し、店舗間で類似しているレイアウトデータがあると判定した場合、さらに、類似していると判定した店舗の商品陳列データ1012が類似しているか否かを判定する。上記店舗間でレイアウトデータが類似しているとは、例えば、店舗面積、通路の幅、商品陳列棚の位置の差が所定の範囲内(例えば、商品陳列棚の位置の差が1メートル以内)にある場合に、両者が類似していると判定すればよい。また、商品陳列データが類似しているとは、例えば、商品陳列棚に陳列されている商品の配置が類似している場合、両者が類似していると判定すればよい。例えば、比較対象となる店舗において、
図3、4のように、両者のチョコレート類の商品が店舗壁面ではない店舗中央の商品陳列棚に配置されている場合に、これらの店舗の商品陳列データが類似していると判定すればよい。このような判定により、トラッキング処理部106が店舗のレイアウトデータおよび商品陳列データが類似していると判定した場合、欠落箇所を含むトラッキングデータのうちの当該欠落箇所を、他の店舗で欠落が生じていないトラッキングデータのうちの上記欠落箇所に対応する部分のトラッキングデータにより補間する。このような処理を行うことにより、POSデータを用いて上記補間トラッキングデータが生成できない場合であっても、顧客の動線を推定することができる。
【0056】
さらには、上記店舗のレイアウトデータおよび商品陳列データが類似していると判定する場合において、撮像部302の撮像年月日や時刻、POSデータの購入時刻を基準として、比較対象とするトラッキングデータを絞り込んで顧客の動線を推定してもよい。例えば、トラッキング処理部106は、上記類似していると判定した店舗のうち、POSデータの性別、年齢、購入時刻(あるいは当該店舗の撮像部302の撮像年月日や時刻)が所定の範囲内(例えば、購入時刻であれば年月日)にある店舗のトラッキングデータを特定し、特定した店舗のトラッキングデータの欠落箇所を、上記基準で所定の範囲内と判定した他の店舗で欠落が生じていないトラッキングデータのうちの上記欠落箇所に対応する部分のトラッキングデータにより補間してもよい。すなわち、時間や季節によって顧客の動線が異なる(例えば、夏はアイスクリーム売り場に向かう動線が多いなど)ためこれらを基準として推定したり、性別や年齢が同じである場合には動線も類似していることが考えられるため、POSデータから得られる顧客の年齢、性別などの情報を基準として顧客の動線を推定してもよい。このような処理を行うことにより、上記類似していると判定する対象の数を絞り込むことができ、POSデータを用いて上記補間トラッキングデータが生成できない場合であっても、効率よく顧客の動線を推定することができる。
【符号の説明】
【0057】
1000 情報処理システム
100 サーバ
101 記憶部
1011 レイアウトデータ
1012 商品陳列データ
1013 撮像データ
1014 POSデータ
102 制御部
103 通信部
104 画像取得部
105 POS情報取得部
106 トラッキング処理部
200 管理者端末
201 入力部
202 出力部
203 制御部
204 通信部
300 売り上げシステム300(300-1~300-N)
301 通信部
302 撮像部
303 売り上げ処理部
304 記憶部
305 制御部
N1、N2 ネットワーク。