(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】駆動装置、作業機械及びフランジ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/029 20120101AFI20220930BHJP
F16J 15/40 20060101ALI20220930BHJP
B62D 55/088 20060101ALI20220930BHJP
F16J 15/447 20060101ALN20220930BHJP
【FI】
F16H57/029
F16J15/40 B
B62D55/088
F16J15/447
(21)【出願番号】P 2018163952
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】矢田部 倫章
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-189042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/029
F16J 15/40
B62D 55/088
F16J 15/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ケースと、
前記固定ケースに対して軸線周りに回転可能に構成された回転ケースと、
前記固定ケースと前記回転ケースとの間のシール部と、
前記回転ケースの外壁部から前記軸線を中心とする径方向に突出しているフランジ部と、を備え、
前記フランジ部が、前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる
異物排出用の通路を有する、駆動装置。
【請求項2】
前記フランジ部に連結されたスプロケットを備え、
前記スプロケットが、前記通路と連通する他の通路を有する、請求項
1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記他の通路は、異物排出用の通路である、請求項
2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記通路は、前記軸線を中心とした周方向に互いに対向する側面及び他の側面を有し、
前記側面は、前記軸線方向に沿って前記シール部から離間するにつれて前記他の側面から離間するように前記周方向及び前記軸線方向の両方に対して傾斜している、請求項1~
3のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項5】
前記他の側面は、前記軸線方向に沿って前記シール部から離間するにつれて前記側面から離間するように前記周方向及び前記軸線方向の両方に対して傾斜している、請求項
4に記載の駆動装置。
【請求項6】
固定ケースと、
前記固定ケースに対して軸線周りに回転可能に構成された回転ケースと、
前記固定ケースと前記回転ケースとの間のシール部と、
前記回転ケースの外壁部から前記軸線を中心とする径方向に突出しているフランジ部と、
前記フランジ部に連結され、前記回転ケースの回転による駆動力を作業機械のクローラへ伝達するスプロケットと、を備え、
前記フランジ部は、前記軸線を中心とした周方向に沿って等角度間隔で配列され、前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる貫通孔又は切欠き部からなる、複数の異物排出用の通路を有し、
前記スプロケットは、前記周方向に沿って等角度間隔で配列され、前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる貫通孔又は切欠き部からなり、前記異物排出用の通路と連通する、複数の異物排出用の他の通路を有する、駆動装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の駆動装置を備える、作業機械。
【請求項8】
固定ケースと、前記固定ケースに対して軸線周りに回転可能に構成された回転ケースと、前記固定ケースと前記回転ケースとの間のシール部と、を備えた駆動装置の前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる
異物排出用の通路、を備える、フランジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定ケースと、この固定ケースに対して回転可能に構成された回転ケースとを備えた駆動装置、該駆動装置を備える作業機械、及び、該駆動装置のフランジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧ショベル等の作業機械として、不整地を走行するための無限軌道(クローラ)を備えた作業機械が使用されている。クローラを駆動するための駆動装置としては、例えば減速機付き油圧駆動装置が使用される。減速機付き油圧駆動装置は、一例として、固定ケースに収容された斜板式油圧モータ等の油圧モータと、この固定ケースに対して回転可能に構成された回転ケースに収容された遊星歯車機構を用いた減速機構とを有する。回転ケースの外側面にはフランジ部が設けられており、このフランジ部を介してクローラに係合するスプロケットが回転ケースに連結されている。
【0003】
このような減速機付き油圧駆動装置では、油圧モータに導入された圧油により、油圧モータに連結されたシャフトが回転される。シャフトの回転は、減速機構により減速されて回転ケースに伝達され、これにより回転ケースが固定ケースに対して回転する。この回転ケースの回転にともなって、回転ケースに連結されたスプロケットが回転し、これによりスプロケットに係合されたクローラが循環駆動される。
【0004】
駆動装置の固定ケースと回転ケースとの間には、回転ケースの回転中に固定ケースと回転ケースとが接触することがないよう、一例として0.5mm~2mm程度の隙間を有したシール部が形成されている。ここで、作業機械の走行等の際にこのシール部における隙間から土砂等の異物が駆動装置内に侵入した場合、固定ケース及び回転ケースの内部に収容された油圧モータや減速機構に不具合を生じる虞がある。したがって、土砂等の異物がシール部における隙間から駆動装置内に侵入することを防止することが望まれる。
【0005】
特許文献1には、ラビリンスシールが開口する回転ケーシングの外壁部と固定ハウジングの外壁部との少なくともに一方に、ラビリンスシールのシール開口部から回転ケーシングの回転軸方向に向かって遠ざかるのに伴って回転ケーシングの回転軸に近づく方向に傾斜する傾斜外壁部が形成された無限軌道駆動装置が開示されている。この無限軌道駆動装置によれば、回転ケーシングが回転して無限軌道帯を駆動する車両の走行時に、固定ハウジングの外壁部や回転ケーシングの外壁部に付着した泥等が傾斜外壁部に沿ってラビリンスシールのシール開口部から前記回転ケーシングの回転軸方向に向かって遠ざかる方向に移動するため、泥等がラビリンスシールに入ることを抑制できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、無限軌道駆動装置の固定フランジ部と回転フランジ部との間に、傾斜外壁部に保持され得る量を超える量の泥等が滞留した場合には、ラビリンスシールから無限軌道駆動装置内に泥等が流入することを十分に防止できないものと考えられる。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであって、土砂等の異物が固定ケースと回転ケースとの間のシール部を介して内部に入り込むことを抑制し得る駆動装置、作業機械及びフランジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による駆動装置は、
固定ケースと、
前記固定ケースに対して軸線周りに回転可能に構成された回転ケースと、
前記固定ケースと前記回転ケースとの間のシール部と、
前記回転ケースの外壁部から前記軸線を中心とする径方向に突出しているフランジ部と、を備え、
前記フランジ部が、前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる通路を有する。
【0010】
本発明による駆動装置において、
前記通路は、異物排出用の通路であってもよい。
【0011】
本発明による駆動装置において、
前記フランジ部に連結されたスプロケットを備え、
前記スプロケットが、前記通路と連通する他の通路を有してもよい。
【0012】
本発明による駆動装置において、
前記他の通路は、異物排出用の通路であってもよい。
【0013】
本発明による駆動装置において、
前記通路は、前記軸線を中心とした周方向に互いに対向する側面及び他の側面を有し、
前記側面は、前記軸線方向に沿って前記シール部から離間するにつれて前記他の側面から離間するように前記周方向及び前記軸線方向の両方に対して傾斜していてもよい。
【0014】
本発明による駆動装置において、
前記他の側面は、前記軸線方向に沿って前記シール部から離間するにつれて前記側面から離間するように前記周方向及び前記軸線方向の両方に対して傾斜していてもよい。
【0015】
本発明による駆動装置は、
固定ケースと、
前記固定ケースに対して軸線周りに回転可能に構成された回転ケースと、
前記固定ケースと前記回転ケースとの間のシール部と、
前記回転ケースの外壁部から前記軸線を中心とする径方向に突出しているフランジ部と、
前記フランジ部に連結され、前記回転ケースの回転による駆動力を作業機械のクローラへ伝達するスプロケットと、を備え、
前記フランジ部は、前記軸線を中心とした周方向に沿って等角度間隔で配列され、前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる貫通孔又は切欠き部からなる、複数の異物排出用の通路を有し、
前記スプロケットは、前記周方向に沿って等角度間隔で配列され、前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる貫通孔又は切欠き部からなり、前記異物排出用の通路と連通する、複数の異物排出用の他の通路を有する。
【0016】
本発明による作業機械は、
上述の駆動装置を備える。
【0017】
本発明によるフランジは、
固定ケースと、前記固定ケースに対して軸線周りに回転可能に構成された回転ケースと、前記固定ケースと前記回転ケースとの間のシール部と、を備えた駆動装置の前記軸線方向に沿って前記シール部に近接する一方側から他方側へ通じる通路、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、土砂等の異物が固定ケースと回転ケースとの間のシール部を介して内部に入り込むことを抑制し得る駆動装置、作業機械及びフランジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、駆動装置の適用例としての作業機械を示す図である。
【
図4】
図4は、フランジ部に連結されるスプロケットを示す図である。
【
図5】
図5は、駆動装置の一変形例を示す図である。
【
図7】
図7は、駆動装置の他の変形例について説明するための図であって、駆動装置のフランジ部を示す図である。
【
図8】
図8は、
図7のフランジ部及びフランジ部に組み付けられたスプロケットを示す図である。
【
図9】
図9は、駆動装置のさらに他の変形例を示す図である。
【
図10】
図10は、駆動装置のさらに他の変形例について説明するための図であって、フランジ部を軸線方向に沿った一方側から見て示す図である。
【
図11】
図11は、径方向と交差する断面においてフランジ部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態の駆動装置について説明する。本実施の形態の駆動装置は、油圧ショベル等の作業機械のクローラを駆動するための駆動装置として利用されるが、これに限られず、駆動装置は他の機械のクローラを駆動するために用いられてもよいし、クローラ以外の装置を駆動するために用いられてもよい。とりわけ本発明の駆動装置は、その周囲に、当該駆動装置内への侵入が望まれない、液体、固体及びこれらの混合物等の異物が存在する環境において利用され得る。
図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、駆動装置が組み込まれた作業機械を示す図である。
【0021】
本実施の形態の作業機械10は、油圧ショベルである。作業機械10は、クローラ18を備える下部フレーム11と、下部フレーム11に対して旋回可能に設けられる上部フレーム13と、上部フレーム13に取り付けられるブーム14と、ブーム14に取り付けられるアーム15と、アーム15に取り付けられるバケット16とを備える。上部フレーム13とブーム14との間、ブーム14とアーム15との間、アーム15とバケット16との間には、それぞれ図示しない油圧シリンダが設けられており、図示しない油圧ポンプからの圧油により各油圧シリンダが作動されることにより、ブーム14、アーム15及びバケット16がそれぞれ駆動される。作業機械10を走行させる場合には、図示しない油圧ポンプからの圧油により駆動装置20の油圧モータが作動され、この油圧モータからの回転駆動力が駆動装置20の減速機構等を介してクローラ18に伝達される。
【0022】
図2は、
図1のII-II線に対応する断面において、作業機械10の下部フレーム11を示す図である。
図2では、駆動装置20は、その一部のみが
図1のII-II線に対応する断面で示され、他の部分は外観で示されている。図示された例では、駆動装置20は、固定ケース22と、固定ケース22に対して軸線(回転軸線)A周りに回転可能に構成された回転ケース30と、を備えている。なお、本明細書において、軸線Aが延びる方向(
図2では左右方向)を「軸線方向(da)」と呼び、軸線Aと直交する方向を「径方向(dr)」と呼び、軸線Aを中心とした軸線A周りの回転方向を「周方向(dc)」と呼ぶ。
【0023】
固定ケース22は、下部フレーム11の固定フレーム12に対してボルト等により固定される。本実施の形態の固定ケース22は、その内部に図示しない油圧モータを収容している。油圧モータとしては、例えば斜板式の油圧モータを用いることができる。回転ケース30は、ベアリング26を介して固定ケース22に支持されている。本実施の形態の回転ケース30は、その内部に図示しない減速機を収容している。減速機としては、例えば遊星歯車機構を有する減速機を用いることができる。油圧モータ及び減速機を備えた駆動装置は公知であるので、ここでは駆動装置20の内部の詳細な説明を省略する。一例として、駆動装置20の油圧モータ及び減速機としては、特開2002-213568号公報に開示されているような油圧モータ及び減速機を用いることが可能である。
【0024】
このような駆動装置20は、順に連結された油圧モータ、シャフト、減速機、回転ケース30及びスプロケット40を有する。図示しない油圧ポンプで生成され油圧モータに導入された圧油により、油圧モータに連結されたシャフトが回転される。シャフトの回転は、シャフトに連結された減速機に伝達され、この減速機により減速されて回転ケース30に伝達される。この回転ケース30の回転にともなって、回転ケース30に連結されたスプロケット40が回転し、これによりスプロケット40に係合されたクローラ18が循環駆動される。すなわち、スプロケット40は、駆動装置20における回転ケース30の回転による駆動力を作業機械10のクローラ18へ伝達する。
【0025】
固定ケース22と回転ケース30との間には、回転ケース30の回転中に固定ケース22と回転ケース30とが接触することがないよう、隙間25が設けられている。隙間25の幅寸法は、一例として0.5mm以上2mm以下とすることができる。
図2に示された例では、隙間25は、軸線Aを通る断面において屈曲した形状に形成されており、いわゆるラビリンスシールを構成している。駆動装置20内には、隙間25と対向するようにして、フローティングシール28が設けられている。フローティングシール28は、駆動装置20内に充填された油が駆動装置20外へ流出することを防止するとともに、駆動装置20外の土砂等の異物が、隙間25を介して、駆動装置20内に侵入することを防止する。本実施の形態では、隙間25と、フローティングシール28と、によりシール部24が構成される。
【0026】
回転ケース30は、その外壁部32から軸線Aを中心とする径方向drに突出するフランジ部(フランジ)35を有している。とりわけ
図2に示された例では、フランジ部35は、回転ケース30の外壁部32から軸線Aと直交する方向に延びるように突出している。
図3は、フランジ部35を示す図であって、フランジ部35を軸線方向daから見て示す図である。なお、
図3においては、フランジ部35のみを図示しており、回転ケース30の内部の図示は省略している。
【0027】
フランジ部35は、クローラ18を循環駆動するためのスプロケット40と連結される部材である。
図3に示されているように、フランジ部35は、軸線方向daから見て環状の形状を有している。フランジ部35には、周方向dcに沿って複数のボルト孔36が等間隔で配列されている。ボルト孔36は、フランジ部35とスプロケット40とを連結するためのボルトが通される孔である。
【0028】
フランジ部35には、軸線方向daに沿って、シール部24に近接する一方側から、当該一方側と反対側である他方側へ通じる異物排出用第1通路(通路)37が形成されている。とりわけ、異物排出用第1通路37は、軸線方向daに沿って、固定ケース22と回転ケース30との間の隙間25に近接する一方側から他方側へ通じる通路として形成されている。
図2及び
図3に示された例では、異物排出用第1通路37は、フランジ部35に穿設された貫通孔で構成されている。異物排出用第1通路37は、駆動装置20のシール部24付近に滞留した異物を、フランジ部35の一方側から他方側へ排出する通路として機能する。本明細書において、異物とは、駆動装置20内への侵入が望まれない、液体、固体及びこれらの混合物等を指す。例えば、異物は、土、砂、泥、水、雪、氷等であり得る。
【0029】
図3に示された例では、フランジ部35には、周方向dcに沿って複数の異物排出用第1通路37が等間隔で、換言すると軸線A周りに等角度間隔で、配列されている。図示された例では、異物排出用第1通路37は、周方向dcに沿って隣り合う二つのボルト孔36の間に位置している。また、フランジ部35は、ボルト孔36と同数の異物排出用第1通路37を有している。したがって、フランジ部35には、周方向dcに沿ってボルト孔36と異物排出用第1通路37とが交互に配列されている。これにより、ボルト孔36と異物排出用第1通路37とを、周方向dcから見て重なるように配置することが可能になる。したがって、異物排出用第1通路37を配置しながらも、フランジ部35の径方向drに沿った寸法を小さくすることができ、駆動装置20の大型化を効果的に抑制することができる。
【0030】
また、
図3に示された例では、軸線方向daから見て、異物排出用第1通路37の周方向dcに沿った寸法は、径方向drに沿った寸法よりも大きい。これにより、異物排出用第1通路37による異物の排出機能を十分に確保しながらも、フランジ部35の径方向drに沿った寸法を小さくすることができる。したがって、これによっても駆動装置20の大型化を効果的に抑制することができる。
【0031】
フランジ部35には、スプロケット40が連結されている。
図4は、スプロケット40を示す図であって、スプロケット40を軸線方向daから見て示す図である。スプロケット40は、その外周部に複数の係合凹部45を有している。係合凹部45は、クローラ18を構成する単位部品にそれぞれ設けられ、クローラ18の幅方向に沿って延びるピン19に係合し、スプロケット40の回転をクローラ18に伝達する。スプロケット40のフランジ部35と対向する側の面には、フランジ部35と対面する領域が窪むように段部43が設けられており、この段部43により形成された窪み内にフランジ部35が位置合わせされる。スプロケット40には、周方向dcに沿って複数のボルト孔46が等間隔で配列されている。ボルト孔46は、フランジ部35とスプロケット40とを連結するためのボルトが通される孔である。
【0032】
スプロケット40には、フランジ部35の異物排出用第1通路37と連通する異物排出用第2通路(他の通路)47が形成されている。より詳細には、スプロケット40におけるフランジ部35と対面する領域に、異物排出用第1通路37と連通する異物排出用第2通路47が形成されている。
図2及び
図4に示された例では、スプロケット40の内縁41と段部43との間の領域内に、異物排出用第2通路47が形成されている。異物排出用第2通路47は、軸線方向daに沿って、一方側から他方側へ通じる通路を形成している。異物排出用第2通路47は、異物排出用第1通路37とともに、駆動装置20のシール部24付近に滞留した異物を、フランジ部35の一方側から他方側へ排出する通路として機能する。図示された例では、異物排出用第2通路47は、スプロケット40に穿設された貫通孔で構成されている。なお、これに限られず、異物排出用第2通路47は、スプロケット40の内縁41から径方向外側に向かって切り欠いた切欠き部で構成されてもよい。すなわち、異物排出用第2通路47は、周方向dcに沿って等間隔で、換言すると軸線A周りに等角度間隔で、配列された切欠き部で構成されてもよい。異物排出用第2通路47が貫通孔又は切欠き部である場合には、貫通孔からなる異物排出用第2通路47を取り囲むスプロケット40の部分、又は、周方向dcに隣り合う、切欠き部からなる2つの異物排出用第2通路47間に位置するスプロケット40の部分、が存在することにより、スプロケット40の強度を適切に確保することができる。
【0033】
図4に示された例では、異物排出用第2通路47は、軸線方向daから見て、異物排出用第1通路37と同様の形状を有し、同様の位置に配置されている。すなわち、図示された例では、スプロケット40には、周方向dcに沿って複数の異物排出用第2通路47が等間隔で、換言すると軸線A周りに等角度間隔で、配列されている。図示された例では、異物排出用第2通路47は、周方向dcに沿って隣り合う二つのボルト孔46の間に位置している。また、スプロケット40は、ボルト孔46と同数の異物排出用第2通路47を有している。したがって、スプロケット40には、周方向dcに沿ってボルト孔46と異物排出用第2通路47とが交互に配列されている。スプロケット40は、フランジ部35のボルト孔36とスプロケット40のボルト孔46とがボルトで締結されることにより、フランジ部35に対して連結される。このとき、異物排出用第1通路37と異物排出用第2通路47とは、軸線方向daから見てその少なくとも一部において重なっている。好ましくは、異物排出用第2通路47は、軸線方向daから見て異物排出用第1通路37の全体と重なる。
【0034】
本実施の形態の駆動装置20は、固定ケース22と、固定ケース22に対して軸線A周りに回転可能に構成された回転ケース30と、固定ケース22と回転ケース30との間のシール部24と、回転ケース30の外壁部32から軸線Aを中心とする径方向drに突出しているフランジ部35と、を備え、フランジ部35が、軸線方向daに沿ってシール部24に近接する一方側から他方側へ通じる通路37を有する。
【0035】
本実施の形態の駆動装置20では、通路37は、異物排出用の通路である。
【0036】
本実施の形態の作業機械10は、上述の駆動装置20を備える。
【0037】
本実施の形態のフランジ35は、固定ケース22と、固定ケース22に対して軸線A周りに回転可能に構成された回転ケース30と、固定ケース22と回転ケース30との間のシール部24と、を備えた駆動装置20の軸線方向daに沿ってシール部24に近接する一方側から他方側へ通じる通路37、を備える。
【0038】
このような駆動装置20、作業機械10及びフランジ35によれば、シール部24付近に滞留した異物を、フランジ部(フランジ)35の軸線方向daに沿ったシール部24と反対側へ、通路37を通して排出することができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物がシール部24を介して駆動装置20内へ入り込むことを効果的に抑制することができる。
【0039】
また、本実施の形態の駆動装置20は、フランジ部35に連結されたスプロケット40を備え、スプロケット40が、通路37と連通する他の通路47を有する。
【0040】
本実施の形態の駆動装置20では、他の通路47は、異物排出用の通路である。
【0041】
このような駆動装置20によれば、通路37を通って軸線方向daの一方側から他方側へ排出された異物が、スプロケット40により塞き止められることなく、他の通路47を通って排出される。したがって、シール部24付近に滞留した異物を通路37及び他の通路47を介して、軸線方向daに沿ったシール部24と反対側へ、より効果的に排出することができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物がシール部24を介して駆動装置20内へ入り込むことを、さらに効果的に抑制することができる。また、他の通路47が貫通孔又は切欠き部である場合には、貫通孔からなる他の通路47を取り囲むスプロケット40の部分、又は、周方向dcに隣り合う、切欠き部からなる2つの他の通路47間に位置するスプロケット40の部分、が存在することにより、異物を適切に排出可能としながらも、スプロケット40の強度を効果的に確保することができる。
【0042】
本実施の形態の駆動装置20は、固定ケース22と、固定ケース22に対して軸線A周りに回転可能に構成された回転ケース30と、固定ケース22と回転ケース30との間のシール部24と、回転ケース30の外壁部32から軸線Aを中心とする径方向drに突出しているフランジ部35と、フランジ部35に連結され、回転ケース30の回転による駆動力を作業機械10のクローラ18へ伝達するスプロケット40と、を備え、フランジ部35は、軸線Aを中心とした周方向dcに沿って等角度間隔で配列され、軸線A方向に沿ってシール部24に近接する一方側から他方側へ通じる貫通孔又は切欠き部からなる、複数の異物排出用の通路37を有し、スプロケット40は、周方向dcに沿って等角度間隔で配列され、軸線A方向に沿ってシール部24に近接する一方側から他方側へ通じる貫通孔又は切欠き部からなり、異物排出用の通路37と連通する、複数の異物排出用の他の通路47を有する。
【0043】
このような駆動装置20によれば、シール部24付近に滞留した異物を、フランジ部35の軸線方向daに沿ったシール部24と反対側へ、異物排出用の通路37及び異物排出用の他の通路47を通して排出することができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物がシール部24を介して駆動装置20内へ入り込むことを効果的に抑制することができる。また、異物排出用の通路37が周方向dcに沿って等角度間隔で配列された貫通孔又は切欠き部であるので、貫通孔からなる異物排出用の通路37を取り囲むフランジ部35の部分、又は、周方向dcに隣り合う、切欠き部からなる2つの異物排出用の通路37間に位置するフランジ部35の部分、が存在することにより、異物を適切に排出可能としながらも、フランジ部35の強度を効果的に確保することができる。また、異物排出用の他の通路47が周方向dcに沿って等角度間隔で配列された貫通孔又は切欠き部であるので、貫通孔からなる異物排出用の他の通路47を取り囲むスプロケット40の部分、又は、周方向dcに隣り合う、切欠き部からなる2つの異物排出用の他の通路47間に位置するスプロケット40の部分、が存在することにより、異物を適切に排出可能としながらも、スプロケット40の強度を効果的に確保することができる。
【0044】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を適宜参照しながら、変形例について説明する。以下の説明及び以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。
【0045】
駆動装置20の一変形例について
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、
図2に対応する図であって、本変形例の駆動装置20を示す図であり、
図6は、
図5のスプロケット40を示す図であって、スプロケット40を軸線方向daから見て示す図である。なお、
図6では、スプロケット40と連結されるフランジ部35の形状が破線で示されている。
【0046】
本変形例の駆動装置20では、スプロケット40の内縁41の径方向drの寸法は、回転ケース30の外壁部32の外縁の径方向drの寸法よりも大きい。したがって、スプロケット40の内縁41と回転ケース30の外壁部32との間には、異物排出用第1通路37と連通する隙間49が形成されている。これにより、異物排出用第1通路37を通って軸線方向daの一方側から他方側へ排出された異物が、スプロケット40により塞き止められることなく、隙間49を通って排出される。したがって、シール部24付近に滞留した異物を異物排出用第1通路37及び隙間49を介して、軸線方向daに沿ったシール部24と反対側へ、効果的に排出することができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物がシール部24を介して駆動装置20内へ入り込むことを、効果的に抑制することができる。また、
図2及び
図4を参照して上述した実施の形態と比較して、スプロケット40に異物排出用第2通路47を穿設する必要がないので、スプロケット40の加工が容易になり、スプロケット40の製造にかかる手間及びコストを削減することが可能になる。
【0047】
好ましくは、スプロケット40の内縁41は、径方向drにおいて、異物排出用第1通路37の径方向drの最外縁部と重なるか、当該最外縁部よりも外側に位置する。この場合、異物排出用第1通路37の全体が、隙間49内に開口する。これにより、異物排出用第1通路37を通って軸線方向daの一方側から他方側へ排出された異物を、効率的に排出することができる。
【0048】
次に、駆動装置20の他の変形例について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は、本変形例の回転ケース30のフランジ部35を軸線方向daから見て示す図であり、
図8は、
図7のフランジ部35と、このフランジ部35に組み付けられたスプロケット40と、を軸線方向daから見て示す図である。
【0049】
本変形例のフランジ部35は、径方向drに突出する複数の突出部39を有している。複数の突出部39は、周方向dcに沿って等間隔で、換言すると軸線A周りに等角度間隔で、配列されている。
図7及び
図8に示された例では、一つの突出部39に一つのボルト孔36が形成されている。なお、これに限られず、一つの突出部39に複数のボルト孔36が形成されていてもよい。周方向dcに隣り合う二つの突出部39の間には、異物排出用第1通路37が形成されている。本変形例の異物排出用第1通路37は、周方向dcに隣り合う二つの突出部39の間に位置する切欠き部で構成される。したがって、フランジ部35は、周方向dcに沿って等間隔で、換言すると軸線A周りに等角度間隔で、配列された切欠き部で構成される複数の異物排出用第1通路37を有している。
【0050】
本変形例の駆動装置20では、スプロケット40の内縁41の径方向drの寸法は、回転ケース30の外壁部32の外縁の径方向drの寸法よりも大きい。したがって、スプロケット40の内縁41と回転ケース30の外壁部32との間には、異物排出用第1通路37と連通する隙間49が形成されている。これにより、異物排出用第1通路37を通って軸線方向daの一方側から他方側へ排出された異物が、スプロケット40により塞き止められることなく、隙間49を通って排出される。したがって、シール部24付近に滞留した異物を異物排出用第1通路37及び隙間49を介して、軸線方向daに沿ったシール部24と反対側へ、効果的に排出することができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物がシール部24を介して駆動装置20内へ入り込むことを、効果的に抑制することができる。また、
図2及び
図4を参照して上述した実施の形態と比較して、スプロケット40に異物排出用第2通路47を穿設する必要がないので、スプロケット40の加工が容易になり、スプロケット40の製造にかかる手間及びコストを削減することが可能になる。
【0051】
次に、駆動装置20のさらに他の変形例について
図9を参照して説明する。
図9は、
図2に対応する図であって、本変形例の駆動装置20を示す図である。
【0052】
本変形例の駆動装置20では、回転ケース30における、隙間25とフランジ部35との間の外壁部32に、軸線方向daに沿って隙間25から離間するにつれて(
図9では右側に向かうにつれて)、軸線Aに近接するように、軸線方向da及び径方向drの両方に対して傾斜した、傾斜面32aが設けられている。とりわけ、図示された例では、傾斜面32aは、隙間25と接続している。回転ケース30の外壁部32が、このような傾斜面32aを有していることにより、回転ケース30の上側の面において、シール部24(隙間25)付近に滞留した異物を、重力の作用により、フランジ部35の異物排出用第1通路37へ向けて流動させることができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物を、効率的に排出することができる。
【0053】
・また、
図9に示された例では、固定ケース22における、隙間25近傍の外壁部23には、軸線方向daに沿って隙間25に近接するにつれて(
図9では右側に向かうにつれて)、軸線Aに近接するように、軸線方向da及び径方向drの両方に対して傾斜した、傾斜面23aが設けられている。とりわけ、図示された例では、傾斜面23aは、隙間25と接続している。固定ケース22の外壁部23が、このような傾斜面23aを有していることによっても、回転ケース30の上側の面において、シール部24(隙間25)付近に滞留した異物を、重力の作用により、フランジ部35の異物排出用第1通路37へ向けて流動させることができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物を、効率的に排出することができる。
【0054】
図9に示された例では、回転ケース30における、隙間25とフランジ部35との間の外壁部32に傾斜面32aが設けられるとともに、固定ケース22における、隙間25近傍の外壁部23に傾斜面23aが設けられている。したがって、傾斜面32a,23aが協働して、シール部24付近に滞留した異物を、さらに効率的にフランジ部35の異物排出用第1通路37へ向けて流動させることができる。
【0055】
次に、駆動装置20のさらに他の変形例について
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は、本変形例のフランジ部35を軸線方向daに沿った一方側(シール部側)から見て示す図であり、
図11は、
図10のXI-XI線に沿ったフランジ部35の断面を示す図であって、径方向drと交差(直交)する断面においてフランジ部35を示す図である。
【0056】
本変形例の駆動装置20では、フランジ部35の異物排出用第1通路37は、周方向dcに沿って互いに対向する第1側面(側面)37a及び第2側面(他の側面)37b、並びに、径方向drに沿って互いに対向する第3側面37c及び第4側面37dを有している。
【0057】
図10及び
図11に示された例では、第1側面37aは、軸線方向daに沿ってシール部24から離間するにつれて、すなわち軸線方向daに沿った一方側から他方側へ向かうにつれて、第2側面37bから離間するように、周方向dc及び軸線方向daの両方に対して傾斜している。
【0058】
このような第1側面37aを有する異物排出用第1通路37によれば、フランジ部35(回転ケース30)の周方向dcに沿った一方側(
図10では時計回り方向、
図11では下側)に向かう回転にともなって、同じく周方向dcに沿った一方側に移動する第1側面37aにより、異物を、軸線方向daに沿ってシール部24から離間する方向へ、すなわち軸線方向daに沿った一方側から他方側へ、押し出すことができる。したがって、シール部24付近に滞留した異物を、さらに効率的に排出することができる。
【0059】
とりわけ図示された例では、第1側面37aだけでなく、第2側面37bも周方向dc及び軸線方向daの両方に対して傾斜している。具体的には、フランジ部35の第2側面37bは、軸線方向daに沿ってシール部24から離間するにつれて第1側面37aから離間するように周方向dc及び軸線方向daの両方に対して傾斜している。
【0060】
このような第2側面37bを有する異物排出用第1通路37によれば、フランジ部35(回転ケース30)の周方向dcに沿った他方側(
図10では反時計回り方向、
図11では上側)に向かう回転にともなって、同じく周方向dcに沿った他方側に移動する第2側面37bにより、異物を、軸線方向daに沿ってシール部24から離間する方向へ、すなわち軸線方向daに沿った一方側から他方側へ、押し出すことができる。したがって、フランジ部35の周方向dcに沿った一方側及び他方側のいずれに向かう回転によっても、第1側面37a又は第2側面37bにより、異物を、軸線方向daに沿ってシール部24から離間する方向へ、すなわち軸線方向daに沿った一方側から他方側へ、押し出すことができる。
【0061】
また、
図10及び
図11に示された例では、フランジ部35の異物排出用第1通路37は、第3側面37cと第4側面37dとを接続する柱部38を有している。図示された例では、柱部38の軸線方向daに沿った一方側に面する表面は、フランジ部35の軸線方向daに沿った一方側に面する表面よりも、軸線方向daに沿った他方側に位置している。また、柱部38の周方向dcに沿った幅は、フランジ部35の軸線方向daに沿った一方側に面する表面における異物排出用第1通路37の周方向dcに沿った開口幅よりも小さい。異物排出用第1通路37がこのような柱部38を有していることにより、異物排出用第1通路37を介して異物を適切に排出可能としながらも、フランジ部35の強度を適切に確保することができる。
【0062】
図示された例では、柱部38の軸線方向daに沿った他方側に面する表面は、フランジ部35の軸線方向daに沿った他方側に面する表面と面一になっている。これにより、柱部38の軸線方向daに沿った幅を、スプロケット40と干渉しない範囲内で最大化することができ、フランジ部35の強度をさらに適切に確保することができる。なお、
図11では、径方向drに交差する断面における柱部38の輪郭形状が矩形であるものを示したが、これに限られず、径方向drに交差する断面における柱部38の輪郭形状は、三角形、台形、円形、楕円形等の他の形状を有していてもよい。
【0063】
なお、以上において前述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。例えば、
図3を参照して説明した異物排出用第1通路37や、
図4を参照して説明した異物排出用第2通路47に、
図10及び
図11を参照して説明した柱部38を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 作業機械
18 クローラ
20 駆動装置
22 固定ケース
23 外壁部
23a 傾斜面
24 シール部
25 隙間
30 回転ケース
32 外壁部
32a 傾斜面
35 フランジ部
36 ボルト孔
37 異物排出用第1通路(通路)
37a 第1側面(側面)
37b 第2側面(他の側面)
37c 第3側面
37d 第4側面
38 柱部
39 突出部
40 スプロケット
41 内縁
45 係合凹部
46 ボルト孔
47 異物排出用第2通路(他の通路)
A 軸線