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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】車両用灯具およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20220930BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
B60Q1/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018176859
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020045047
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】安田 雄治
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-26267(JP,A)
【文献】特開2007-213877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光部を有しカットオフラインよりも下方に対してのみ光を照射するロービームユニットと、
第2発光部を有し前記カットオフラインよりも上方に対しても光を照射するハイビームユニットと、
前記ロービームユニットと前記ハイビームユニットの点灯を制御する点灯制御部とを備え、
前記点灯制御部は、前記ロービームユニットを点灯し前記ハイビームユニットを消灯するローモードと、前記ロービームユニットおよび前記ハイビームユニットを点灯するハイモードを切り替え制御し、
前記点灯制御部は、PWM制御の第1パルス電流によって前記第1発光部を点灯制御し、前記第1パルス電流のデューティ比は、前記ハイモードと前記ローモードとで等しく、
前記ハイモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第1光量は、前記ローモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第2光量よりも大きいことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記ハイモードにおいて前記第1発光部に供給される電流は、前記ローモードにおいて前記第1発光部に供給される電流よりも大きいことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用灯具であって、
前記第1発光部と前記第2発光部が直列に接続され、
前記ハイモードにおいて前記第1発光部と前記第2発光部に流れる電流値が等しいことを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
第1発光部を有しカットオフラインよりも下方に対してのみ光を照射するロービームユニットと、第2発光部を有し前記カットオフラインよりも上方に対しても光を照射するハイビームユニットとを備える車両用灯具の制御方法であって、
ローモードでは、前記ロービームユニットを点灯し前記ハイビームユニットを消灯し、
ハイモードでは、前記ロービームユニットおよび前記ハイビームユニットを点灯し、
PWM制御の第1パルス電流によって前記第1発光部を点灯制御し、前記第1パルス電流のデューティ比は、前記ハイモードと前記ローモードとで等しく、
前記ハイモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第1光量は、前記ローモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第2光量よりも大きいことを特徴とする車両用灯具の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具およびその制御方法に関し、特にロービームユニットとハイビームユニットを備える車両用灯具およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具の光源として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)を用いるものが普及してきている。LEDを前照灯の光源として用いることで、従来のハロゲンランプやHID(High Intensity Discharge)ランプよりも消費電力を低減することができる。また、発光部にLEDを用いた前照灯として、カットオフラインよりも下方に対して光を照射するロービームユニットと、カットオフラインよりも上方に対して光を照射するハイビームユニットを備えるものも提案されている(例えば特許文献1等を参照)。
【0003】
このような前照灯では、対向車両とすれ違う機会が多い状況ではロービームユニットのみを点灯し、カットオフラインより上方には光を照射せず、対向車両の運転者への幻惑を抑制している(ローモード)。また、対向車両とすれ違う機会が少ない状況ではロービームユニットとハイビームユニットを同時に点灯し、より遠方に光を照射して広範囲を良好に視認可能としている(ハイモード)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-143447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に実際の車両走行では、車両の走行環境に応じてローモードとハイモードを切り替えるため、市街地等の人口密集地ではローモードでの走行時間の比率が高くなり、高速道路や山間部の走行ではハイモードでの走行時間の比率が高くなる傾向がある。また、上述したように、LEDを発光部として用いることで前照灯の消費電力を低減できるが、より一層の消費電力低減を図るとともに、走行時におけるハイモードでの遠方視認性をより向上させたいという需要が存在する。
【0006】
しかし、特許文献1に記載された前照灯では、ロービームユニットとハイビームユニットを直列に接続し、共通の光源駆動電流ILで点灯している。したがって、発光部に流れる光源駆動電流ILは、ローモードとハイモードで同じであり、光量を増加させるためには光源駆動電流ILを増大させる必要がある。このような共通の光源駆動電流ILでも、ハイビームユニットに用いられるLEDの個数を増やせば、ハイモードでの光量を増大させることは可能であるが、駆動電圧と順方向電圧Vfとの関係からLEDの個数には制約があり、需要に応じて最適な光量を実現することは困難だった。
【0007】
また、ハイモードの光量を増やすために光源駆動電流ILを増やすと、ロービームユニットの光量も増加するが、市街地等でロービームユニットの照射範囲で光量が不足しているとも限らず、視認性と消費電力のバランスにおいて改善の余地があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、ハイモードでの光量を増加させつつ、トータルでの消費電力を抑制することが可能な車両用灯具およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具、第1発光部を有しカットオフラインよりも下方に対してのみ光を照射するロービームユニットと、第2発光部を有し前記カットオフラインよりも上方に対しても光を照射するハイビームユニットと、前記ロービームユニットと前記ハイビームユニットの点灯を制御する点灯制御部とを備え、前記点灯制御部は、前記ロービームユニットを点灯し前記ハイビームユニットを消灯するローモードと、前記ロービームユニットおよび前記ハイビームユニットを点灯するハイモードを切り替え制御し、前記点灯制御部は、PWM制御の第1パルス電流によって前記第1発光部を点灯制御し、前記第1パルス電流のデューティ比は、前記ハイモードと前記ローモードとで等しく、前記ハイモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第1光量は、前記ローモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第2光量よりも大きいことを特徴とする。
【0010】
これにより、ロービームユニットでの第1光量を増加させてハイモードにおける光量を増大させるとともに、ロービームユニットでの第2光量を減少させてローモードにおける消費電力を抑制することが可能となる。
【0011】
また本発明の一態様では、前記ハイモードにおいて前記第1発光部に供給される電流は、前記ローモードにおいて前記第1発光部に供給される電流よりも大きい。
【0012】
また本発明の一態様では、前記第1発光部と前記第2発光部が直列に接続され、前記ハイモードにおいて前記第1発光部と前記第2発光部に流れる電流値が等しい。
【0014】
また本発明の車両用灯具の制御方法は、第1発光部を有しカットオフラインよりも下方に対してのみ光を照射するロービームユニットと、第2発光部を有し前記カットオフラインよりも上方に対しても光を照射するハイビームユニットとを備える車両用灯具の制御方法であって、ローモードでは、前記ロービームユニットを点灯し前記ハイビームユニットを消灯し、ハイモードでは、前記ロービームユニットおよび前記ハイビームユニットを点灯し、PWM制御の第1パルス電流によって前記第1発光部を点灯制御し、前記第1パルス電流のデューティ比は、前記ハイモードと前記ローモードとで等しく、前記ハイモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第1光量は、前記ローモードにおいて前記ロービームユニットが照射する第2光量よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ハイモードでの光量を増加させつつ、トータルでの消費電力を抑制することが可能な車両用灯具およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における車両用灯具100の一例を示す模式上面図である。
図2】ハイビームユニット30とロービームユニット40の配光パターンを示す模式図である。
図3】第1実施形態における車両用灯具100の駆動回路の一例を示す回路図である。
図4】本発明の実施例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0018】
図1は、本実施形態における車両用灯具100の一例を示す模式上面図である。図中左が車両用灯具100の前方であり、図中右が後方である。図1に示すように車両用灯具100は、車両前方側に開口部を有するランプボディ11と、ランプボディ11の開口部を覆うように取り付けられたアウターレンズ12とを備える。アウターレンズ12は、透光性を有する樹脂やガラス等で形成されている。ランプボディ11とアウターレンズ12とにより形成される灯室内には、エイミングスクリュ13とエイミングピボット14で中間ブラケット21が保持され、中間ブラケット21にはハイビームユニット30と、ロービームユニット40と、標識灯ユニット50がそれぞれユニットエイミングスクリュ22で保持されている。
【0019】
中間ブラケット21は、主表面が車両用灯具100の前方向を向くように配置された板状部材であり、板状部辺縁の所定位置に玉受部と螺孔を有している。エイミングスクリュ13は、ランプボディ11の背面側から貫通して灯室内に挿入され、中間ブラケット21の一端に形成された螺孔に螺合されている。エイミングピボット14は、ランプボディの背面に一端が固定され、他端の玉部が玉受部に回動自在に係合されている。
【0020】
ユニットエイミングスクリュ22は、中間ブラケット21の後方から中間ブラケット21を貫通して挿入され、ハイビームユニット30と、ロービームユニット40と、標識灯ユニット50に螺合されるボルトに類似した部材である。
【0021】
ハイビームユニット30、ロービームユニット40および標識灯ユニット50は、発光部としてのLEDと、リフレクタやレンズ等の光学要素を含んでおり、供給された電流と制御信号に応じてアウターレンズ12から前方に所定の光量と配光パターンで光を照射する。標識灯ユニット50は、車両外に対して何らかの情報または信号を表示するためのランプユニットであり、例えばポジショニングランプやデイタイムランニングランプ、サイドターンランプ等が挙げられる。
【0022】
図2は、ハイビームユニット30とロービームユニット40の配光パターンを示す模式図である。図2では、ロービームユニット40の配光パターンLLを実線で囲み、ハイビームユニット30の配光パターンLHを破線で囲んでいる。図に示したように、ロービームユニット40はカットオフラインLcよりも下方に対してのみ光を照射し、ハイビームユニット30は、カットオフラインLcよりも上方に対しても光を照射する。
【0023】
図3は、本実施形態における車両用灯具100の駆動回路の一例を示す回路図である。図3に示すように車両用灯具100は、第1発光部31と、第2発光部41と、第3発光部51と、点灯制御部60を備えている。第1発光部31、第2発光部41おおよび第3発光部51は、各々ハイビームユニット30、ロービームユニット40および標識灯ユニット50に含まれるものであり、複数のLEDが直列接続されて構成されている。
【0024】
また、第1発光部31のアノードは、点灯制御部60のLED+端子に接続されている。第1発光部31のカソードと第2発光部41のアノードは、点灯制御部60のHi-端子に接続されている。第2発光部41のカソードは点灯制御部60のLo-端子に接続されている。第3発光部51のアノードは点灯制御回路60のDRL+端子に接続され、カソードは点灯制御部60のDRL-端子に接続されている。これにより、第1発光部31と第2発光部41が直列接続されており、第3発光部51が第1発光部31と第2発光部41に並列接続されている。
【0025】
図3では、第1発光部31を3個のLEDで構成し、第2発光部41を3個のLEDで構成し、第3発光部51を5個のLEDで構成した例を示しているが、それぞれの発光部を構成するLEDの個数は限定されない。また、第1発光部31、第2発光部41、第3発光部51に含まれるLEDの種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
図3に示すように、点灯制御部60は、演算部61と、昇圧回路部62と、第1定電流回路部63aと、第2定電流回路部63bと、第1バイパス回路部64と、第2バイパス回路部65と、第1スイッチ回路部66と、第3バイパス回路部67と、第2スイッチ回路部68と、AD監視部69を備えている。
【0027】
演算部61は、予め記録されたプログラムに従って昇圧回路部62、第1定電流回路部63a、第2定電流回路部63b、第1バイパス回路部64、第2バイパス回路部65、第1スイッチ回路部66、第3バイパス回路部67、第2スイッチ回路部68等の各部を制御する情報処理手段である。演算部61は電源から供給された電力で駆動され、配線等を介して接続された各部に対して制御信号を送出して各部の動作を制御する。
【0028】
昇圧回路部62は、外部の電源と、演算部61と、第1定電流回路部63aと、第2定電流回路部63bが接続されており、演算部61から供給された制御信号に従って、電源から供給された電圧を昇圧して第1定電流回路部63aおよび第2定電流回路部63bに出力する。一例としては、車載用の12V電源から供給された電圧を、45Vに昇圧して第1定電流回路部63aおよび第2定電流回路部63bに出力する。
【0029】
第1定電流回路部63aは、演算部61と、昇圧回路部62と、第1バイパス回路部64と、LED+端子が接続されており、昇圧回路部62から供給された電圧から定電流のベース電流を供給する回路である。本実施形態の第1定電流回路部63aでは、演算部61から供給された制御信号により定められた電流値をLED+端子に対して出力し、演算部61からの制御信号に応じて電流値を変更することができる。
【0030】
第2定電流回路部63bは、演算部61と、昇圧回路部62と、DRL+端子が接続されており、昇圧回路部62から供給された電圧から定電流のベース電流を供給する回路である。本実施形態の第2定電流回路部63bでは、演算部61から供給された制御信号により定められた電流値をDRL+端子に対して出力し、演算部61からの制御信号に応じて電流値を変更することができる。
【0031】
第1バイパス回路部64は、一端がLED+端子に接続され、他端がHi-端子に接続された回路であり、演算部61からの制御信号に従って開閉が制御される。第2バイパス回路部65は、一端がHi-端子に接続され、他端がLo-端子に接続された回路であり、演算部61からの制御信号に従って開閉が制御される。第3バイパス回路部67は、一端が端子を介して第3発光部51のアノード側に接続され、他端が端子を介して第3発光部51のカソード側に接続された回路であり、演算部61からの制御信号に従って開閉が制御される。
【0032】
第1スイッチ回路部66は、一端がLo-端子に接続され、他端が接地電位に接続されたスイッチであり、演算部61からの制御信号に従って開閉が制御される。第3スイッチ回路部68は、一端がDRL-端子に接続され、他端が接地電位に接続されたスイッチであり、演算部61からの制御信号に従って開閉が制御される。
【0033】
AD監視部69は、昇圧回路部62の出力電位と、第1定電流回路部63aの出力電位、第1バイパス回路部64と第2バイパス回路部65の間の電位を監視し、演算部61に情報を伝達する回路である。図中では配線を省略しているが、AD監視部69は、第2定電流回路部63bの出力電位も監視する。演算部61は、AD監視部69から各部の電位を受け取り、フィードバック制御を行って昇圧回路部62、第1定電流回路部63a、第2定電流回路部63b、第1バイパス回路部64、第2バイパス回路部65、第1スイッチ回路部66、第3バイパス回路部67、第2スイッチ回路部68等の各部を制御する。
【0034】
次に、図3に示した駆動回路の動作について説明する。前照灯を消灯する場合には、ハイビームユニット30とロービームユニット40のどちらも消灯であり、演算部61は第1スイッチ回路部66を「開」に制御する。前照灯を点灯し、ハイモードまたはローモードの場合には、演算部61は第1スイッチ回路部66を「閉」に制御する。
【0035】
標識灯ユニット50を消灯する場合には、演算部61は第2スイッチ回路部68を「開」に制御する。標識灯ユニット50を点灯する場合には、演算部61は第2スイッチ回路部68を「閉」に制御し、第2定電流回路部63bに対して電流値Idの出力を指示し、第3バイパス回路部67に対してPWM号を送出して、パルス状に開閉を制御する。これにより標識灯ユニット50は、ベース電流IdでPWM制御により光量制御され、ハイビームユニット30およびロービームユニット40とは独立して制御されて発光する。
【0036】
前照灯がローモードの場合には、演算部61は第1定電流回路部63aに対して電流値Ilの出力を指示し、第1バイパス回路部64に対して「閉」信号を送出し、第2バイパス回路部65に対してPWM(Pulse Width Modulation)信号を送出して、パルス状に開閉を制御する。
【0037】
このとき、LED+端子とHi-端子の間は第1バイパス回路部64が閉状態で導通しているため、第1発光部31には電流が流れない。また、Hi-端子とLo-端子の間は、第2バイパス回路部65がPWM制御されているため、第2バイパス回路部65が「開」の期間は第2発光部41に電流値Ilが流れる。第2バイパス回路部65が「閉」の期間は第2バイパス回路部65が導通しているため、第2発光部41には電流が流れない。したがってローモードでは、ハイビームユニット30の第1発光部31は消灯され、ロービームユニット40の第2発光部41はPWM制御により点灯される。
【0038】
前照灯がハイモードの場合には、演算部61は第1定電流回路部63aに対して電流値Ihの出力を指示し、第1バイパス回路部64と第2バイパス回路部65に対して同じPWM信号を送出して、パルス状に開閉を制御する。このとき、第1定電流回路部63aが供給する電流値Ihは、ローモード時に供給する電流値Ilよりも大きく設定しておく。したがって、第2発光部41が発光する光量は、ハイモード時の第1光量のほうがローモード時の第2光量よりも大きくなる。
【0039】
第1バイパス回路部64と第2バイパス回路部65が「開」の期間は、LED+端子とLo-端子の間で電流がバイパスされないため、第1発光部31と第2発光部41に電流値Ihが流れる。第1バイパス回路部64と第2バイパス回路部65が「閉」の期間は、LED+端子とLo-端子の間で電流がバイパスされ、第1発光部31と第2発光部41に電流は流れない。したがってハイモードでは、ハイビームユニット30の第1発光部31とロービームユニット40の第2発光部41はともにPWM制御により点灯される。第1発光部31と第2発光部41は直列に接続されているため、両者に流れる電流は電流値Ihで等しい。
【0040】
また、演算部61による第1バイパス回路部64と第2バイパス回路部65のPWM制御は、ローモードとハイモードにおいてデューティ比が等しいことが好ましい。デューティ比が等しいと、ローモードとハイモードでの実効電流の差は、第1定電流回路部63aからのベース電流の差のみで決まるため、光量の制御方法が容易になる。また、PWM制御のデューティ比は、80%以上とすることが好ましく、より好ましくは90%以上である。デューティ比をこの範囲で制御することで、フリッカを抑制することができる。
【0041】
上述したように本実施形態の車両用灯具では、点灯制御部60は、ローモードではロービームユニット40を点灯しハイビームユニット30を消灯し、ハイモードではロービームユニット40とハイビームユニット30を点灯する。また、ハイモードにおいてロービームユニット40の第2発光部41で発光する第1光量は、ローモードにおいて第2発光部41が発光する第2光量よりも大きくなる。
【0042】
上述したように、市街地等の人口密集地などでは、対向車両や歩行者の数が多いためローモードでの使用比率が高くなるため、ローモードでの消費電力低減によりトータルでの電力消費も抑制することができる。また、高速道路や山間部の走行ではハイモードでの使用比率が高くなるため、ロービームユニット40からのカットオフラインより下方に照射する光量を増加させ、ハイビームユニット30の光量も増加させることで、車両周辺領域の視認性と遠方視認性を向上させることができる。
【0043】
(実施例)
図4は、本発明の実施例を示す表である。実施例1は、第1発光部31としてLEDを6個直列接続し、第2発光部41としてLEDを3個直列接続したものを用いた。実施例2は、第1発光部31と第2発光部41ともに、LEDを6個直列接続したものを用いた。また、実施例1,2とも、第1定電流回路部63aからの出力電流は、ローモードでIl=700mAであり、ハイモードでIh=900mAに設定した。PWM信号のデューティ比は、実施例1,2のローモードとハイモードで、すべて90%に設定した。
【0044】
実施例1では、ロービームユニット40が照射する光はローモードで250ルーメン(lm)であり、ハイモードで300ルーメン(lm)であった。ハイモードでハイビームユニット30が照射する光は300ルーメン(lm)であった。
【0045】
実施例2では、ロービームユニット40が照射する光はローモードで250ルーメン(lm)であり、ハイモードで300ルーメン(lm)であった。ハイモードでハイビームユニット30が照射する光は600ルーメン(lm)であった。
【0046】
図4に示したように、ローモードとハイモードで第1定電流回路部63aが供給するベース電流をIlからIhに上昇させることで、ロービームユニット40が照射する光の光量が増加している。これにより、ハイモード時にはカットオフラインより下方に照射する光量を増加させて視認性を向上させることと、ローモード時に消費電力を低減することを両立できていることがわかる。また、ハイモード時にベース電流をIhに増加させない場合には、ハイビームユニット30から照射される光量は図4に示したものより低下することは明らかであり、ハイモード時におけるハイビームユニット30からの光量も増加させて、遠方領域の視認性を向上させることができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、ハイモードとローモードでのPWM制御のデューティ比は等しくするとしたが、ローモードよりもハイモードでデューティ比を高く設定することで、ロービームユニット40が照射する光量をローモード時よりもハイモード時で大きくするとしてもよい。
【0048】
また図3では、1つの第1定電流回路部63aに第1発光部31と第2発光部41を直列接続した例を示したが、第1定電流回路部63aを2つ備えて各々に第1発光部31と第2発光部41を別個に接続し、個別にPWM制御するとしてもよい。また、第1発光部31と第2発光部41を演算部61はPWM制御する例を示したが、パルス電流ではなく連続電流でDC駆動するとしてもよい。
【0049】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100…車両用灯具
30…ハイビームユニット
40…ロービームユニット
50…標識灯ユニット
60…点灯制御部
11…ランプボディ
12…アウターレンズ
13…エイミングスクリュ
14…エイミングピボット
21…中間ブラケット
22…ユニットエイミングスクリュ
31…第1発光部
41…第2発光部
51…第3発光部
61…演算部
62…昇圧回路部
63…定電流回路部
64…第1バイパス回路部
65…第2バイパス回路部
66…第1スイッチ回路部
67…第3バイパス回路部
68…第2スイッチ回路部
69…AD監視部
図1
図2
図3
図4