(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】風向調整装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220930BHJP
F24F 13/12 20060101ALI20220930BHJP
F24F 13/14 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/12
F24F13/14 G
(21)【出願番号】P 2018188358
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】服部 明夫
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-072310(JP,U)
【文献】特開2017-144898(JP,A)
【文献】特開2012-225509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0195650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/12
F24F 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケース体と、
操作部を備えた可動ルーバと、
前記ケース体の内部に前記可動ルーバを全方向に回動可能に支持する支持部とを具備し、
前記支持部は、
前記ケース体側と前記可動ルーバ側とのいずれか一方に設けられた回動基部と、
この回動基部に設けられ、前記可動ルーバの中立位置での前記操作部と同軸線上に少なくとも一部が位置するボール部と、
前記ケース体側と前記可動ルーバ側とのいずれか他方に設けられ、前記ボール部を受容するボール受容部と、
前記可動ルーバに設けられた一の当接部と、
前記回動基部に設けられ、前記一の当接部との当接により前記可動ルーバの回動端を設定する他の当接部とを備え
、
前記他の当接部は、前記ボール部の一部を含んで形成され、
前記ボール部の少なくとも一部を覆うとともに前記他の当接部を形成する軟質部材を備えた
ことを特徴とする風向調整装置
。
【請求項2】
一の当接部は、ボール受容部に設けられた
ことを特徴とする請求項
1記載の風向調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース体の内部に可動ルーバを回動可能に支持する支持部を備える風向調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に用いられる空調装置において、風を吹き出す吹出口に備えられる風向調整装置は、空調風吹出装置、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれ、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール部などの車両の各部に設置され、冷暖房による快適性能の向上に寄与している。
【0003】
このような風向調整装置として、例えば円筒状に形成されたケース体の内部に円筒状の可動ルーバを備え、この可動ルーバをケース体内部で任意方向に傾動操作することで風向を調整する構成が知られている。この構成では、ケース体の中心軸上に、可動ルーバを回動自在に軸支するボールジョイント部が設けられている。可動ルーバの中央部には、乗員が可動ルーバを回動操作するためのノブが設けられている。また、この風向調整装置には、可動ルーバがケース体に対して一定量以上回動しないようにするためのストッパ機能が設定されている。このストッパ機能は、例えば可動ルーバの外縁部と周辺の他部品との当接により可動ルーバがそれ以上回動しないように構成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-34280号公報 (第9-10頁、
図16、
図18)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の構成の場合、乗員は、ストッパ機能が作用している状態でも、さらにもう一押しして可動ルーバがそれ以上回動しないことを確認することが多い。そのため、乗員が直接摘む可動ルーバ中央部のノブから最も遠い位置にある可動ルーバ外縁部にストッパ機能を持たせていることで、乗員がノブを所定量以上押し込んだ場合にボールジョイント部に脱落が生じないようにすることが望まれる。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、可動ルーバの回動操作性を安定して維持できる風向調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の風向調整装置は、筒状のケース体と、操作部を備えた可動ルーバと、前記ケース体の内部に前記可動ルーバを全方向に回動可能に支持する支持部とを具備し、前記支持部は、前記ケース体側と前記可動ルーバ側とのいずれか一方に設けられた回動基部と、この回動基部に設けられ、前記可動ルーバの中立位置での前記操作部と同軸線上に少なくとも一部が位置するボール部と、前記ケース体側と前記可動ルーバ側とのいずれか他方に設けられ、前記ボール部を受容するボール受容部と、前記可動ルーバに設けられた一の当接部と、前記回動基部に設けられ、前記一の当接部との当接により前記可動ルーバの回動端を設定する他の当接部とを備え、前記他の当接部は、前記ボール部の一部を含んで形成され、前記ボール部の少なくとも一部を覆うとともに前記他の当接部を形成する軟質部材を備えたものである。
【0008】
請求項2記載の風向調整装置は、請求項1記載の風向調整装置において、一の当接部は、ボール受容部に設けられたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の風向調整装置によれば、一の当接部と他の当接部との当接位置を、ボール部とボール受容部との受容位置に接近させることができ、乗員が操作部を操作して可動ルーバを回動させたときに、一の当接部と他の当接部とが当接した位置からさらに押し込んだ場合でも、一の当接部と他の当接部との当接位置に作用する力をより抑制できて、ボール部とボール受容部との受容構造に脱落が生じにくく、可動ルーバの回動操作性を安定して維持できるとともに、ボール部とボール受容部との回動負荷を設定する軟質部材を利用し、一の当接部と他の当接部とが当接したときに生じる打音を抑制できる。
【0010】
請求項2記載の風向調整装置によれば、請求項1記載の風向調整装置の効果に加えて、一の当接部をボール受容部に設けることで、一の当接部と他の当接部との当接位置を、ボール部とボール受容部との受容位置により接近させることができ、一の当接部と他の当接部との当接位置に作用する力をより抑制できて、可動ルーバの回動操作性をより安定して維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態の風向調整装置を示す断面図である。
【
図2】同上風向調整装置の支持部を示す断面図である。
【
図3】同上風向調整装置の支持部の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1及び
図4において、10は風向調整装置を示す。風向調整装置10は、例えば自動車などの車両に備えられた空調装置などからの風の向き、すなわち風向を調整する空調用のものである。風向調整装置10は、図示しないが、自動車の内装部材、例えばインストルメントパネルやセンタコンソール、オーバーヘッドコンソール部、センタピラーあるいはドアトリムなどの被設置部に設置されている。本実施の形態において、風向調整装置10は、丸型に設定されている。
【0014】
そして、風向調整装置10は、エアアウトレット、ベンチレータ、レジスタなどとも呼ばれるもので、
図1及び
図2に示すように、ケース体11と、可動ルーバ12と、この可動ルーバ12をケース体11の内部に全方向に回動可能に支持する支持部13とを備えている。また、風向調整装置10には、ケース体11内を開閉する(一及び他の)開閉体(弁体)としての(一及び他の)バルブ16,17を備えていてもよい。
【0015】
ケース体11は、例えば空調装置などからの風を受け入れる導入口である円形状の受入口24を一端側に有し、この受入口24に連通し可動ルーバ12が臨む円形状の露出開口25を他端側に有しており、これら受入口24と露出開口25とを連通して風が通過する流通路26を内部に区画している。また、ケース体11には、露出開口25側に、可動ルーバ12が内方に位置するルーバ収容部27が球面状に拡径されて設けられている。さらに、ケース体11の内部には、このケース体11の中心軸に沿って、軸受部28が設けられている。また、ケース体11の内部には、整流部29が設けられていてもよい。なお、以下、ケース体11内を受入口24側から露出開口25側へと流通路26を通過する風の下流側を前側(矢印FR側)、上流側を後側(矢印RR側)とし、この前後方向(矢印FR,RR方向)に対して直交する水平方向あるいは幅方向を前側から見て左右方向(矢印L,R方向)とし、かつ、これら前後方向及び左右方向に対して直交する方向を上下方向(矢印U,D方向)として説明する。また、周方向とは、ケース体11の中心軸に対して直交する平面上の、この中心軸を中心とする円弧に沿った方向を言うものとする。
【0016】
軸受部28は、支持部13を保持するとともに、可動ルーバ12を回動可能に支持する部分である。軸受部28は、ケース体11の中心軸の位置に、ケース体11の軸方向である前後方向に沿って長手状の円筒状に設けられている。
【0017】
整流部29は、流通路26を通過する風を整流するものである。整流部29は、例えば軸受部28の周囲に、ケース体11及び軸受部28と同軸の円筒状に設けられている。すなわち、整流部29は、前後方向に沿って長手状の円筒状に設けられている。整流部29は、ケース体11の前後方向において、可動ルーバ12とバルブ16,17との間に位置している。なお、この整流部29は、必須の構成ではない。
【0018】
可動ルーバ12は、羽根体、ハウジング、あるいはフィンなどとも呼ばれ、風向調整装置10から吹き出す風向を制御するものである。可動ルーバ12は、ルーバ本体部31と、ルーバ軸受部32と備えている。
【0019】
ルーバ本体部31は、例えば剛性を有する合成樹脂などにより形成されている。ルーバ本体部31は、円筒状の外郭部34と、外郭部34とルーバ軸受部32との間に亘り形成された複数の羽根35とを有する。また、羽根35は、外郭部34と同心状に配置された円筒状の連結部36により互いに連結されていてもよい。そして、外郭部34と羽根35と連結部36とにより囲まれる扇形状の部分が、風を通過させる通気口37となっている。
【0020】
外郭部34は、外周面が球面状に形成されており、この外周面が、ケース体11のルーバ収容部27に対向する位置で、このルーバ収容部27に対して僅かな間隙を介して離間されている。
【0021】
羽根35は、ルーバ本体部31(可動ルーバ12)の径方向に沿って放射状に設けられ、互いに周方向に略等間隔に離間されている。
【0022】
ルーバ軸受部32は、円筒状に形成され、外郭部34と同心状に配置されている。ルーバ軸受部32は、後部が支持部13に対して接続される。また、ルーバ軸受部32には、ケース体11に対して可動ルーバ12を回動操作するための操作部としての操作ノブ39が前部に取り付けられている。操作ノブ39は、ルーバ軸受部32の内部で支持部13と連結されている。操作ノブ39は、可動ルーバ12の中央部に、外郭部34と同軸状に配置されている。
【0023】
図1に示す支持部13は、ケース体11の内部に可動ルーバ12を回動可能に支持する部分である。また、支持部13は、ケース体11に対する可動ルーバ12の回動負荷(トルク)を設定するものである。支持部13は、ジョイント部41と、一の支持部であるボール受容部としての受け部42と、他の支持部である回動基部としてのリンク43とを備えている。
【0024】
ジョイント部41は、ケース体11に対して可動ルーバ12を回動可能に支持する。ジョイント部41は、本実施の形態において、ユニバーサルジョイントとなっている。すなわち、ジョイント部41は、ケース体11側に支持される一の軸支体45と、可動ルーバ12側に支持される図示しない他の軸支体とを別体で備え、これら一の軸支体45と他の軸支体とが互いに直交する方向に回動可能に連結されている。
【0025】
本実施の形態の一の軸支体45は、ケース体11の軸受部28に回動可能に支持されている。本実施の形態において、一の軸支体45は、円筒状に形成されるとともに、中心軸を挟む互いに反対側、本実施の形態では上下の位置において、一対の第1回動軸48が外部に突設され、これら第1回動軸48が、軸受部28に開口された一対の軸受49に回動可能に支持されて、ケース体11に対して左右方向に回動可能となっている。また、一の軸支体45には、中心軸を挟む互いに反対側であって、一対の第1回動軸48の軸線と直交する位置、本実施の形態では左右の位置において、図示しない一対の第2回動軸が外部に突設され、これら第2回動軸が他の軸支体に回動可能に支持されて、一の軸支体45に対して他の軸支体が、ケース体11に対する一の軸支体45の回動方向に対して直交する方向に回動可能となっている。
【0026】
また、本実施の形態の他の軸支体は、可動ルーバ12のルーバ軸受部32の後部に固定されている。そのため、一の軸支体45がケース体11に対して回動することで、他の軸支体と一体的に可動ルーバ12がケース体11に対して回動し、他の軸支体が一の軸支体45に対して回動することで、他の軸支体と一体的に可動ルーバ12がケース体11に対して回動するようになっている。
【0027】
受け部42は、可動ルーバ12側に保持される。受け部42は、例えば剛性を有する合成樹脂などにより長尺状に形成されている。受け部42は、前側がジョイント部41の他の軸支体に挿通されて可動ルーバ12のルーバ軸受部32において操作ノブ39と一体的に連結される。そのため、受け部42は、操作ノブ39の回動操作により、可動ルーバ12に対して周方向に回動可能となっている。また、受け部42は、ジョイント部41の内部に位置する。さらに、受け部42は、
図1及び
図2に示すように、リンク43に対向する後側に、一の摺接部である球面部51と、一の規制部である一の当接部としての突出部52とを備えている。球面部51は、半球面状に凹設されている。また、突出部52は、球面部51の外方を囲む半球面状に形成され、球面部51に対して径方向外側の位置から先端部が後側に向かって延出されている。
【0028】
図1ないし
図3に示すリンク43は、ケース体11側に保持される。リンク43は、例えば剛性を有する合成樹脂により長尺状に形成されたインナ部材であるリンク本体部54と、リンク本体部54の一部を覆ってリンク本体部54に一体的に成形されたアウタ部材である軟質部材55とを備える。また、リンク43は、軸受部28の内部において軸方向に沿って移動可能に配置されている。さらに、リンク43は、付勢手段としてのコイルばね56により可動ルーバ12側(受け部42側)である前側に向かい付勢されている。また、リンク43には、バルブ16,17を動作させるギヤ部57が連結されている。ギヤ部57は、図示しない連結ギヤを介してバルブ16,17と歯合され、ケース体11の周方向に回動することでバルブ16,17を開閉動作させるようになっている。
【0029】
リンク本体部54には、軸受部28に対する径方向の位置を規制する位置規制部である鍔部59がフランジ状に突設されている。この鍔部59とギヤ部57との間に、コイルばね56が取り付けられている。
【0030】
軟質部材55は、リンク本体部54及び受け部42、特に突出部52よりも軟質の合成樹脂、例えばエラストマ(TPV)などにより一体的に成形されている。軟質部材55は、リンク本体部54の前側の端部を覆い、例えば二色成形などによりリンク本体部54と一体的に成形されている。また、軟質部材55は、受け部42の球面部51と摺接される他の摺接部であるボール部61と、突出部52との当接により可動ルーバ12の回動端を設定する他の規制部である他の当接部としてのストッパ部62とを一体に備えている。したがって、これらボール部61とストッパ部62とは、それぞれリンク43に形成されている。
【0031】
ボール部61は、リンク43の前側の端部を構成するものである。ボール部61は、略全体が軟質部材55により球面部51と同径または略同径の球体状に形成されたボール部である。ボール部61は、前側が受け部42の球面部51と嵌合され、この球面部51により回動可能に受容される。また、ボール部61は、中心位置がジョイント部41の一の軸支体45の第1回動軸48及び第2回動軸の軸線上に位置している。このため、ボール部61の中心が、中立位置の可動ルーバ12の中心軸上、すなわち操作ノブ39と同軸線上に位置し、ケース体11に対する可動ルーバ12の回動中心となる。また、ボール部61は、コイルばね56の付勢により球面部51に対して押圧されている。この結果、ボール部61と球面部51との回動負荷(トルク)が、ボール部61を構成する軟質部材55の材質、球面部51(受け部42)を構成する部材の材質、及びコイルばね56の付勢力に応じて設定されるようになっている。
【0032】
ストッパ部62は、ボール部61に対して後側に位置する。本実施の形態のストッパ部62は、ボール部61の中心位置よりも後側に位置する。ストッパ部62は、ボール部61に対し一体的に連なって形成されている。また、ストッパ部62は、受け部42の突出部52の回動軌道に対して交差する位置まで延出されている。つまり、ストッパ部62は、ボール部61の中心からの距離が、この中心から突出部52までの距離よりも長い位置まで径方向に延びて形成されている。また、ストッパ部62は、前側から後側に向かい拡大する截頭円錐面状に形成され、この位置でのリンク本体部54の全周を覆っている。
【0033】
バルブ16,17は、流通路26の開閉量を制御することで、風向調整装置10から吹き出す風量を制御するものである。バルブ16,17は、軸受部28よりも後側に位置し、それぞれケース体11に対して回動可能に連結されている。また、これらバルブ16,17は、互いに開閉動作が連動するように構成されている。
【0034】
そして、自動車の内装部材の被設置部に設置された風向調整装置10は、
図1の二点鎖線に示すように、バルブ16,17を開状態として、可動ルーバ12を中立(ニュートラル)位置としたとき、換言すれば、ケース体11と可動ルーバ12とを略同軸としたとき、受入口24から受け入れた風が流通路26を通過して、可動ルーバ12の各通気口37から乗員の正面方向へと流れる。
【0035】
また、操作ノブ39を摘んで上下左右に操作することで、可動ルーバ12が回動する。このとき、可動ルーバ12は、ジョイント部41の構造により、互いに直交する2軸を軸線としてボール部61の中心の周囲に任意方向に回動できる。また、この操作の際には、操作ノブ39と連結されている受け部42が、可動ルーバ12とともに回動し、この受け部42の後部の球面部51に、ケース体11の軸受部28に保持されたリンク43の前端に位置する軟質部材55のボール部61がコイルばね56の付勢により圧接されていることにより、ボール部61の表面と球面部51との摺接抵抗がコイルばね56の付勢によって略一定に制御され、適切な操作荷重で可動ルーバ12が回動される。なお、可動ルーバ12の回動端は、
図1の実線に示すように、突出部52と軟質部材55に突設されたストッパ部62との当接により規制される。このように可動ルーバ12を回動させた状態では、可動ルーバ12の中心軸がケース体11の中心軸に対して交差する方向に沿い、この可動ルーバ12の中心軸に沿って各通気口37から乗員の正面方向に対して傾斜した方向へと風が流れる。
【0036】
さらに、操作ノブ39を摘んで可動ルーバ12に対して周方向にひねると、操作ノブ39に連動する受け部42が周方向に回動する。この受け部42には、リンク43の軟質部材55のボール部61がコイルばね56によって圧接されているため、リンク43がギヤ部57とともに周方向に回動して、バルブ16,17が、
図1の実線に示すように回動され、バルブ16,17がケース体11に当接する位置となると、流通路26が閉塞され、可動ルーバ12の通気口37から風が吹き出さなくなる(全閉状態)。
【0037】
このように、一実施の形態によれば、可動ルーバ12の中立位置での操作ノブ39と同軸線上にてリンク43にボール部61を設けるとともに、このリンク43にストッパ部62を設けることで、乗員が操作ノブ39を操作して可動ルーバ12を回動させたときに、突出部52とストッパ部62とが、ボール部61と受け部42(球面部51)との受容位置、すなわち可動ルーバ12の回動中心に接近した位置で互いに当接する。このため、乗員が、例えば可動ルーバ12がそれ以上回動しないことを確認するために突出部52とストッパ部62とが当接した位置からさらに操作ノブ39を押し込んだ場合でも、突出部52とストッパ部62との当接位置に作用する力(トルク)を抑制でき、ボール部61と受け部42(球面部51)との受容構造に脱落が生じにくく、可動ルーバ12の回動操作性を安定して維持できる。
【0038】
なお、突出部52とストッパ部62とが当接した状態で、乗員が操作ノブ39により可動ルーバ12をさらに一押しした場合に、ストッパ部62が撓むことで、可動ルーバ12の外郭部34の後端部がケース体11内の構造、例えば整流部29とが当接するようにしてもよい。突出部52とストッパ部62とが先に当接した状態から、可動ルーバ12の外郭部34と整流部29との距離が僅かなので、可動ルーバ12の外郭部34と整流部29とが当接する際の打音は極めて小さく抑制できるとともに、突出部52とストッパ部62との当接に加えて、可動ルーバ12の外郭部34と整流部29との当接とのそれぞれによるストッパ機能を追加することによって、可動ルーバ12の回動端での接触干渉力を分散させることができる。
【0039】
また、ストッパ部62を、ボール部61の一部を含んで形成することで、突出部52とストッパ部62との当接位置を、ボール部61と受け部42(球面部51)との受容位置により接近させることができ、突出部52とストッパ部62との当接位置に作用する力をより抑制できて、可動ルーバ12の回動操作性をより安定して維持できる。
【0040】
さらに、ボール部61の少なくとも一部を覆う軟質部材55にストッパ部62を形成することで、ボール部61と受け部42(球面部51)との回動負荷を設定する軟質部材55を利用し、可動ルーバ12を回動端まで振って突出部52とストッパ部62とが当接したときに生じる打音を抑制できる。また、この打音を抑制するための軟質部材を備えるストッパ部品及びその二色成形用の成形型を、軟質部材55を備えるリンク43及びその成形型とは別個に用意する必要がないため、可動ルーバ12を回動端まで振ったときに突出部52とストッパ部62との当接によって生じる打音を抑制しつつ、風向調整装置10を安価に製造できる。
【0041】
さらに、突出部52を受け部42に設けることで、突出部52とストッパ部62との当接位置を、ボール部61と受け部42(球面部51)との受容位置、すなわち可動ルーバ12の回動中心により接近させることができ、突出部52とストッパ部62との当接位置に作用する力(トルク)をより抑制できて、可動ルーバ12の回動操作性を安定して維持できる。
【0042】
なお、上記の一実施の形態において、可動ルーバ12側に球面部51及び突出部52を設定し、ケース体11側に軟質部材55のボール部61及びストッパ部62を設定したが、ケース体11側のリンク43に球面部51及び突出部52を設定し、可動ルーバ12側の受け部42に軟質部材55のボール部61及びストッパ部62を設定してもよい。この場合でも、上記の一実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0043】
また、バルブ16,17は必須の構成ではなく、例えば可動ルーバ12の羽根35により流通路26を開閉するなど、流通路26の開閉量を制御する他の任意の構成を適用してもよい。
【0044】
そして、風向調整装置10は、車両用に限らず、任意の空調装置などの風向の調整に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、例えば自動車の空調用の風向調整装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 風向調整装置
11 ケース体
12 可動ルーバ
13 支持部
39 操作部としての操作ノブ
42 ボール受容部としての受け部
43 回動基部としてのリンク
52 一の当接部としての突出部
55 軟質部材
61 ボール部
62 他の当接部としてのストッパ部