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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】冷却塔システム
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20220930BHJP
   F28C 1/04 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
F28F27/00 501A
F28C1/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018194250
(22)【出願日】2018-10-15
(65)【公開番号】P2020063852
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 昌裕
(72)【発明者】
【氏名】末吉 克也
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072269(JP,A)
【文献】特開2013-002802(JP,A)
【文献】特開2012-159236(JP,A)
【文献】特開2013-210178(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0292514(US,A1)
【文献】特開2010-236728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
F28C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却前の冷却水に外気を接触させる複数のファンと、
複数の前記ファンのそれぞれに対して設けられ、前記ファンを駆動するモータと、
複数の前記モータのそれぞれに対して設けられ、前記モータに所望の周波数の電力を供給するインバータと、
前記インバータから前記モータに供給する電力の周波数を、冷却負荷に基づいて、2以上の前記モータで同期させて変化させる負荷分散制御部と、
を備え、
前記負荷分散制御部は、前記モータに供給する電力の周波数を、前記ファンの駆動下限値に対応する所定周波数以上とし、
複数の前記モータに供給する電力の周波数を合計した周波数が、合計周波数であり、
前記所定周波数を複数の前記モータ分だけ合計した周波数が、所定合計周波数であり、
前記所定周波数の電力を複数の前記モータ分だけ合計した電力が、所定合計電力であり、
複数の前記モータのうち一部の前記モータを停止させた場合の停止していない前記モータの合計電力が、複数の前記モータのうち一部の前記モータを停止させる前の複数の前記モータの前記所定合計電力と等しくなるときの前記合計周波数が、特定合計周波数であり、
前記負荷分散制御部は、
前記合計周波数が、前記所定合計周波数未満であっても、前記特定合計周波数以上であれば、複数の前記モータのうちの一部の前記モータの停止を行わず、前記所定周波数の電力を複数の前記モータにそれぞれ供給するように制御し、
前記合計周波数が、前記所定合計周波数未満であり、さらに、前記特定合計周波数未満であれば、複数の前記モータのうち一部の前記モータを停止させる冷却塔システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却塔における1台のファンの回転数を、冷却水温度にしたがって制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-340690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大規模な工場などでは、多くの設備に冷却水を供給する必要がある。このような場所には、1台のファンを有する冷却塔が複数台設けられたり、複数台のファンを有する冷却塔が1または複数台設けられることがある。このような場合、冷却すべき負荷(冷却負荷)の変化にしたがって、ファンの稼働台数を変化させる制御が行われることがある。
【0005】
例えば、比較例の冷却塔システムでは、1台のファンを有する冷却塔が3台設けられているとする。この比較例の冷却塔システムの制御装置は、冷却負荷が少ないときには、1台目のファンを回転数制御し、2台目および3台目のファンを停止させる。冷却負荷の増加にしたがって1台目のファンの回転数が上限に達し、さらに冷却負荷が増加すると、制御装置は、1台目のファンに加え、2台目のファンを起動させる。冷却負荷の増加にしたがって2台目のファンの回転数も上限に達し、さらに冷却負荷が増加すると、制御装置は、1台目および2台目に加え、3台目のファンを起動させる。
【0006】
しかし、ファンを駆動するモータに供給する電力は、モータに供給する電力の周波数の累乗(具体的には、3乗)で増加するため、ファンの回転数が上昇するに連れて大幅に大きくなる。このため、ファンの稼働台数を制御する冷却塔システムでは、ファンを駆動するモータに供給する電力を十分に抑制することができなかった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、ファンを駆動するモータに供給する電力を抑制することが可能な冷却塔システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の冷却塔システムは、冷却前の冷却水に外気を接触させる複数のファンと、複数のファンのそれぞれに対して設けられ、ファンを駆動するモータと、複数のモータのそれぞれに対して設けられ、モータに所望の周波数の電力を供給するインバータと、インバータからモータに供給する電力の周波数を、冷却負荷に基づいて、2以上のモータで同期させて変化させる負荷分散制御部と、を備え、負荷分散制御部は、モータに供給する電力の周波数を、ファンの駆動下限値に対応する所定周波数以上とし、複数のモータに供給する電力の周波数を合計した周波数が、合計周波数であり、所定周波数を複数のモータ分だけ合計した周波数が、所定合計周波数であり、所定周波数の電力を複数のモータ分だけ合計した電力が、所定合計電力であり、複数のモータのうち一部のモータを停止させた場合の停止していないモータの合計電力が、複数のモータのうち一部のモータを停止させる前の複数のモータの所定合計電力と等しくなるときの合計周波数が、特定合計周波数であり、負荷分散制御部は、合計周波数が、所定合計周波数未満であっても、特定合計周波数以上であれば、複数のモータのうちの一部のモータの停止を行わず、所定周波数の電力を複数のモータにそれぞれ供給するように制御し、合計周波数が、所定合計周波数未満であり、さらに、特定合計周波数未満であれば、複数のモータのうち一部のモータを停止させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ファンを駆動するモータに供給する電力を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態による冷却塔システムの構成を示す概略図である。
図2】ファンによる風量とモータに供給する電力との関係を示す図である。
図3】周波数と風量との関係を実測によってプロットした図である。
図4】負荷分散制御部による制御の概略を説明する説明図である。
図5】第1実施形態の冷却塔システムの効果を説明する説明図である。
図6】負荷分散制御部による制御の詳細を説明する説明図である。
図7】合計周波数と合計電力との関係の一例を示す図である。
図8】合計周波数と合計電力との関係の一例を示す図である。
図9】第2実施形態による冷却塔システムの構成を示す概略図である。
図10】比較例の冷却塔システムの動作を説明する説明図である。
図11】第2実施形態の冷却塔システムの動作を説明する説明図である。
図12】第2実施形態の変形例の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態の態様について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による冷却塔システム1の構成を示す概略図である。冷却塔システム1は、例えば、工場などに適用される。なお、冷却塔システム1の適用場所は、工場に限らない。図1では、冷却水の流れの方向を実線の矢印で示し、空気の流れの方向を一点鎖線の矢印で示し、信号の流れの方向を破線の矢印で示している。
【0015】
冷却塔システム1は、複数の冷却塔10(図1では、3台の冷却塔10a、10b、10c)、熱交換器30、温度計32、ポンプ34、複数のインバータ36(図1では、3台のインバータ36a、36b、36c)、制御装置40を含んで構成される。
【0016】
冷却塔10は、空調機器などの熱交換器30から送られた冷却水を冷却する。冷却塔10で冷却された冷却水は、熱交換器30に供給される。熱交換器30では、供給された冷却水を用いて熱交換が行われ、冷却水の温度が上昇する。温度が上昇した冷却水は、冷却塔10に送られる。冷却塔システム1では、このように冷却水が循環する。
【0017】
冷却塔10は、ケーシング12、充填材14、散水部16、ファン18、モータ20、水槽22を含んで構成される。
【0018】
ケーシング12は、例えば、筒状に形成されている。ケーシング12の側壁には、ケーシング12の内外を連通させる複数の開口部24が形成されている。ケーシング12の天井部(鉛直上部)には、ケーシング12の内外を連通させる複数の開口部26が形成されている。
【0019】
充填材14は、例えば、ケーシング12内における側壁付近に設けられている。充填材14は、複数の開口部24に臨むように設けられている。充填材14は、例えば、鉛直方向に延在する複数の板状部材を含んで構成される。複数の板状部材は、水平方向に互いに離隔して並べられている。
【0020】
散水部16は、例えば、ケーシング12内において充填材14の上方に配置されている。散水部16は、熱交換器30から送られた冷却水(冷却前の冷却水)をケーシング12内に散水する。散水された冷却水は、充填材14における複数の板状部材の隙間を通じて落下する。
【0021】
ファン18は、ケーシング12内の天井付近に設けられている。ファン18は、複数の開口部26に臨むように設けられている。ファン18は、モータ20の回転軸に接続されている。モータ20は、ファン18を駆動する駆動源である。
【0022】
ファン18およびモータ20は、冷却塔10毎に1台ずつ設けられている。具体的には、冷却塔10aには、ファン18aが設けられており、冷却塔10bには、ファン18bが設けられており、冷却塔10cには、ファン18cが設けられている。ファン18aは、モータ20aに接続されており、ファン18bは、モータ20bに接続されており、ファン18cは、モータ20cに接続されている。
【0023】
ファン18は、ケーシング12内の空気を、開口部26を通じてケーシング12外に(下方から上方に向かって)送出する。空気は、ファン18の回転にしたがって、ケーシング12の側壁の開口部24からケーシング12内に送入され、充填材14を通過し、ケーシング12の天井部の開口部26からケーシング12外に送出される。
【0024】
散水部16によって散水された冷却水は、充填材14を通じて落下する過程において、ケーシング12内に送入された空気(外気)と接触することにより、一部が蒸発する。散水された冷却水は、この蒸発による気化熱(潜熱)によって冷却される。つまり、ファン18は、冷却前の冷却水に外気を接触させて、その冷却水を冷却させる。
【0025】
水槽22は、ケーシング12の鉛直下方に設けられる。水槽22は、充填材14を通じて落下した冷却水、すなわち、冷却後の冷却水を貯留する。複数の冷却塔10の水槽22は、連通部28によって連通している。これにより、水槽22内の冷却水の温度は、複数の冷却塔10で等しくなっている。
【0026】
温度計32は、複数の冷却塔10の水槽22のうち、いずれかの水槽22(図1では、冷却塔10aの水槽22)内に設置されている。なお、温度計32の設置される位置は、冷却塔10aの水槽22内に限らず、冷却塔10bの水槽22内であってもよいし、冷却塔10cの水槽22内であってもよい。また、複数の冷却塔10の水槽22に複数の温度計32が設けられてもよい。
【0027】
温度計32は、水槽22内の冷却水の温度を検出する。つまり、温度計32は、冷却後の冷却水の温度を検出する冷却水温度検出部として機能する。ポンプ34は、水槽22に貯留された冷却水を熱交換器30に送出する。
【0028】
インバータ36は、商用電源の電力を所望の周波数の電力に変換してモータ20に供給する。インバータ36は、モータ20毎に設けられている。具体的には、インバータ36aは、モータ20aに電力を供給し、インバータ36bは、モータ20bに電力を供給し、インバータ36cは、モータ20cに電力を供給する。
【0029】
制御装置40は、中央処理装置、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路から構成される。制御装置40は、負荷分散制御部42として機能する。
【0030】
負荷分散制御部42は、温度計32の検出結果に基づいて、インバータ36からモータ20に供給する電力の周波数を導出する。例えば、負荷分散制御部42は、温度計32の温度が目標温度になるように周波数を導出する。なお、複数の温度計32が設けられる場合、負荷分散制御部42は、複数の温度計32の検出結果の平均値に基づいて周波数を導出してもよい。そして、負荷分散制御部42は、導出された周波数を示す周波数指令をインバータ36に送信する。
【0031】
インバータ36は、商用電源の電力を、周波数指令にしたがった周波数の電力に変換して、モータ20に供給する。モータ20は、インバータ36から供給された電力の周波数にしたがった回転数でファン18を回転させる。
【0032】
図2は、ファン18による風量とモータ20に供給する電力との関係を示す図であり、図3は、周波数と風量との関係を実測によってプロットした図である。図2において、電力100%は、モータ20の定格電力を示す。風量100%は、定格周波数(周波数100%)で定格電力をモータ20に供給したときのファン18による定格風量を示す。
【0033】
ここで、ファン18による風量は、図3に示すように、モータ20に供給する電力の周波数に比例する。このため、ファン18による風量は、図2の横軸においてかっこ書きで併記するように、モータ20に供給する電力の周波数に置き換えることができる。つまり、周波数が増減した場合、同様の割合で、風量が増減することとなり、周波数と風量とを同じように扱うことができる。
【0034】
図2に示すように、モータ20に供給する電力は、一般的に、モータ20に供給する電力の周波数の3乗に等しい。このため、例えば、モータ20に供給する電力の周波数を80%とすれば、電力51.2%で風量80%の空気を通風させることができる。また、モータ20に供給する電力の周波数を40%とすれば、電力6.4%で風量40%の空気を通風させることができる。
【0035】
ところで、比較例として、冷却すべき負荷(以下、冷却負荷という)の変化にしたがって、ファン18(冷却塔10)の稼働台数を変化させる冷却塔システムがある。
【0036】
例えば、比較例の冷却塔システムでは、1台のファンを有する冷却塔が3台設けられているとする。この比較例の冷却塔システムの制御装置は、冷却負荷が少ないときには、1台目のファン18を回転数制御し、2台目および3台目のファン18を停止させる。冷却負荷の増加にしたがって1台目のファン18の回転数が上限に達し、さらに冷却負荷が増加すると、制御装置は、1台目のファン18に加え、2台目のファン18を起動させる。冷却負荷の増加にしたがって2台目のファン18の回転数も上限に達し、さらに冷却負荷が増加すると、制御装置は、1台目および2台目に加え、3台目のファン18を起動させる。
【0037】
しかし、ファン18を駆動するモータ20に供給する電力は、図2で説明したように、モータ20に供給する電力の周波数の3乗で増加するため、ファン18の回転数が上昇するに連れて大幅に大きくなる。このため、ファン18の稼働台数を制御する冷却塔システムでは、ファン18を駆動するモータ20に供給する電力を十分に抑制することができなかった。
【0038】
そこで、第1実施形態の冷却塔システム1では、以下のように制御する。図4は、負荷分散制御部42による制御の概略を説明する説明図である。図4の横軸の冷却負荷は、冷却水流量を一定とすると、冷却塔10に送入される冷却水の温度と、冷却塔10から送出される冷却水の目標温度との差分に比例する。図4の縦軸は、各モータ20に供給する電力の周波数の合計である合計周波数を示している。合計周波数は、各ファン18による風量の合計である合計風量に対応する。ハッチング領域A1は、モータ20aに供給する電力の周波数を示し、ハッチング領域A2は、モータ20bに供給する電力の周波数を示し、ハッチング領域A3は、モータ20cに供給する電力の周波数を示している。
【0039】
図4に示すように、負荷分散制御部42は、冷却塔システム1全体で必要となる合計風量に対応する合計周波数を、モータ20a、20b、20cで等しく按分している。そして、負荷分散制御部42は、冷却負荷に基づいて合計周波数が変化しても、按分の比率(3等分)を維持させる。具体的には、負荷分散制御部42は、インバータ36aに送信する周波数指令の周波数と、インバータ36bに送信する周波数指令の周波数と、インバータ36cに送信する周波数指令の周波数とを共通にし、冷却負荷に基づいて並行して変化させる。
【0040】
このように、負荷分散制御部42は、モータ20に供給する電力の周波数を、冷却負荷に基づいて、2以上のモータ20で同期させて変化させる。これにより、第1実施形態の冷却塔システム1では、複数のファン18が並行して稼働することとなる。
【0041】
図5は、第1実施形態の冷却塔システム1の効果を説明する説明図である。なお、説明の便宜のため、図5では、冷却塔10が2台(冷却塔10a、10b)、すなわち、ファン18が2台(ファン18a、18b)の場合について説明する。
【0042】
図5(a)は、稼働台数の制御を行う比較例の冷却塔システムを示している。図5(a)では、2台の冷却塔10のうち1台を単独で稼働させた場合を示している。具体的に説明すると、冷却塔10aのモータ20aには、周波数80%の電力が供給されており、ファン18aの風量は、80%となっている。一方、冷却塔10bのモータ20bには、電力が供給されておらず、ファン18bの風量は、0%となっている。この場合、ファン18aの風量とファン18bの風量を合計した合計風量は、80%となる。
【0043】
また、図5(a)の場合、冷却塔10aのモータ20aに供給する電力は、51.2%であり、冷却塔10bのモータ20bに供給する電力は、0%である。この場合、冷却塔10aのモータ20aに供給する電力と、冷却塔10bのモータ20bに供給する電力とを合計した合計電力は、51.2%である。
【0044】
これに対し、図5(b)は、第1実施形態の冷却塔システム1を示している。図5(b)では、2台の冷却塔10a、10bが並行して稼働している。具体的に説明すると、冷却塔10aのモータ20aには、周波数40%の電力が供給されており、ファン18aの風量は、40%となっている。また、冷却塔10bのモータ20bには、冷却塔10aと同様に、周波数40%の電力が供給されており、ファン18bの風量は、40%となっている。この場合の合計風量は、80%となっている。つまり、合計風量は、図5(a)と図5(b)とで等しくなっている。
【0045】
一方、図5(b)の場合、冷却塔10aのモータ20aに供給する電力、および、冷却塔10bのモータ20bに供給する電力は、ともに6.4%である。この場合、合計電力は、12.8%である。
【0046】
このように、第1実施形態の冷却塔システム1では、稼働台数を制御する比較例に比べ、ファン18(冷却塔10)が2台の場合、冷却塔システム1全体で、モータ20に供給する電力を51.2%から12.8%に低減することができる。その結果、第1実施形態の冷却塔システム1では、稼働台数を制御する比較例に比べ、冷却塔システム1全体で、モータ20に供給する電力を75%削減(1/4に抑制)することができる。
【0047】
なお、ファン18(冷却塔10)が2台の場合について説明したが、ファン18(冷却塔10)が3台の場合(図1の場合)についても同様に、モータ20に供給する電力を削減することができる。ファン18が3台の場合、第1実施形態の冷却塔システム1では、稼働台数を制御する比較例に比べ、冷却塔システム1全体で、モータ20に供給する電力を1/9に抑制することができる。
【0048】
また、ファン18の台数は、2台あるいは3台に限らず、4台以上であってもよい。例えば、ファン18の台数が4台の場合、第1実施形態の冷却塔システム1では、稼働台数を制御する比較例に比べ、冷却塔システム1全体で、モータ20に供給する電力を1/16に抑制することができる。つまり、第1実施形態の冷却塔システム1では、ファン18の台数が多いほど、冷却塔システム1全体でのモータ20に供給する電力の抑制効果を高くすることができる。
【0049】
ところで、モータ20に供給する電力の周波数が所定周波数(下限周波数)を下回ると、ファン18にかかるトルクが過大となり、ファン18が適切に回転しないか、または、回転はするが駆動効率が悪くなるため意図的にファン18の回転を停止させる。例えば、合計周波数が小さい場合、合計周波数をモータ20a、20b、20cで按分したときの個々の周波数が、所定周波数を下回ることがある。この場合、ファン18a、18b、18cが適切に回転しないこととなる。
【0050】
そこで、第1実施形態の冷却塔システム1の負荷分散制御部42は、モータ20に供給する電力の周波数を、ファン18の駆動下限値に対応する所定周波数(例えば、15Hz)以上とする。つまり、負荷分散制御部42は、所定周波数を下回る周波数の周波数指令をインバータ36に送信しないようにし、ファン18の稼働台数を減少させる。
【0051】
図6は、負荷分散制御部42による制御の詳細を説明する説明図である。以下、所定周波数を複数のモータ20分だけ合計した周波数を所定合計周波数と呼ぶこととする。例えば、所定周波数を15Hzとした場合、45Hzは、所定周波数を3台のモータ20で合計した所定合計周波数に相当し、30Hzは、所定周波数を2台のモータで合計した所定周波数に相当する。
【0052】
負荷分散制御部42は、冷却負荷が、45Hzに対応する冷却負荷L3以上の場合、合計周波数を3台のモータ20a、20b、20cで等しく按分する。
【0053】
また、負荷分散制御部42は、冷却負荷が、30Hzに対応する冷却負荷L2以上であり45Hzに対応する冷却負荷L3未満の場合、合計周波数を2台のモータ20a、20bで等しく按分する。そして、負荷分散制御部42は、按分した周波数の周波数指令をインバータ36a、36bに送信し、インバータ36cに停止信号を送信する。そうすると、モータ20cは停止するが、モータ20a、20bに供給する電力の周波数は15Hz以上となる。その結果、冷却塔システム1では、ファン18cを停止させることで、ファン18a、18bを適切に回転させることができる。
【0054】
また、負荷分散制御部42は、冷却負荷が、15Hzに対応する冷却負荷L1以上であり30Hzに対応する冷却負荷L2未満の場合、合計周波数を1台のモータ20aで按分する。そして、負荷分散制御部42は、按分した周波数(この場合、合計周波数)の周波数指令をインバータ36aに送信し、インバータ36b、36cに停止信号を送信する。そうすると、モータ20b、20cは停止するが、モータ20aに供給する電力の周波数は15Hz以上となる。その結果、冷却塔システム1では、ファン18b、18cを停止させることで、ファン18aを適切に回転させることができる。
【0055】
また、負荷分散制御部42は、冷却負荷が、0Hzに対応する冷却負荷L0以上であり15Hzに対応する冷却負荷L1未満の場合、すべてのインバータ36a、36b、36cに停止信号を送信する。つまり、この場合、負荷分散制御部42は、すべてのモータ20(ファン18)を停止させる。これは、冷却負荷L1未満では、必要となる合計周波数が1台のモータ20の所定周波数よりも小さく、1台のファン18も適切に回転させることができないからである。
【0056】
以上のように、第1実施形態の冷却塔システム1では、複数のファン18が設けられており、複数のファン18のそれぞれに対して、ファン18を駆動するモータ20が設けられている。そして、第1実施形態の冷却塔システム1では、モータ20に供給する電力の周波数を、冷却負荷に基づいて、複数のモータ20で同期させて変化させている。
【0057】
したがって、第1実施形態の冷却塔システム1によれば、ファン18の稼働台数を制御する比較例に比べ、ファン18を駆動するモータ20に供給する電力を抑制することが可能となる。
【0058】
また、第1実施形態の冷却塔システム1の負荷分散制御部42は、モータ20に供給する電力の周波数を、ファン18の駆動下限値に対応する所定周波数以上としている。このため、第1実施形態の冷却塔システム1では、ファン18にかかるトルクが過大となってファン18が適切に回転しない事態を防止できる。
【0059】
また、第1実施形態の冷却塔システム1の負荷分散制御部42は、合計周波数が所定合計周波数未満の場合、複数のモータ20のうち一部のモータ20を停止させる。このため、第1実施形態の冷却塔システム1では、冷却負荷が小さい場合においても、ファン18を適切に回転させることと、モータ20に供給する電力を抑制することを両立できる。
【0060】
なお、第1実施形態の冷却塔システム1では、1台のファン18を有する冷却塔10が複数設けられていた。しかし、1台の冷却塔10に複数のファン18が設けられてもよい。この場合、1台の冷却塔10における複数のファン18の各モータ20について、供給する電力の周波数を同期させて変化させてもよい。また、複数のファン18を有する冷却塔10が複数設けられてもよいし、1台のファン18を有する冷却塔10と複数のファン18を有する冷却塔10とが混在してもよい。
【0061】
また、第1実施形態において、所定周波数が適切に設定されていない場合、電力を抑制する効果が小さくなることがあるため、所定周波数を適切に設定することが好ましい。また、例えば、所定周波数を適切に設定したとして、ファン18の稼働台数が切り替わる所定合計周波数付近において、合計周波数が所定合計周波数未満であっても稼働台数を切り替えた方が電力を抑制する効果をより大きくすることができる場合がある。
【0062】
図7は、合計周波数と合計電力との関係の一例を示す図である。なお、図7における合計周波数は、必要となる合計風量に基づいて決定される合計周波数の指令値を示しており、1台のモータ20に供給する電力の定格周波数に対する割合で示している。ハッチング領域B1は、モータ20aに供給する電力を示し、ハッチング領域B2は、モータ20bに供給する電力を示している。
【0063】
図7において、合計周波数約60%は、所定合計周波数(2台のモータ20の合計周波数30Hz)に対応する。図7では、合計周波数約30%から約60%の間で、1台のモータ20aを稼働させている。そうすると、両矢印C1で示すように、合計周波数約38%から約60%の間(約19Hzから約30Hzの間)で、合計電力が、合計周波数60%のときの合計電力よりも大きくなることがある。
【0064】
そこで、図8に示すように、両矢印C1の区間において、合計周波数の指令値に依らず、2台のモータ20(ファン18)を共に所定周波数(15Hz)で稼働させてもよい。具体的には、負荷分散制御部42は、必要となる合計風量に基づいて決定された合計周波数の指令値が、所定範囲(例えば、19Hzから30Hzまでの範囲)内となった場合、2台のインバータ36のそれぞれに所定周波数(15Hz)の周波数指令を送信する。つまり、この態様では、合計周波数の指令値が約38%から約60%の間において、合計周波数を実際に必要な量よりも意図的に多くして、複数のファン18を最低回転数で回転させる。
【0065】
モータ20に供給する電力が周波数の3乗で変化するため、複数のファン18を最低回転数で回転させることで、所定合計周波数に到達するまで単独のファン18を回転させる態様に比べ、合計電力の増加を抑えることができる。
【0066】
したがって、この態様では、図8に示すように、合計周波数約38%から約60%の区間(両矢印C1の区間)の合計電力を、合計周波数60%のときの合計電力と同等にすることができる。また、この態様では、合計周波数約38%から約60%の区間の合計風量が、実際に必要な合計風量よりも大きくなるため、冷却水の冷却効果を増加させることができる。なお、合計周波数が30%から38%の間では、その合計周波数に応じて、1台のモータ20(ファン18)を15Hzから19Hzの間の周波数で稼働させる。
【0067】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態による冷却塔システム100の構成を示す概略図である。冷却塔システム100は、温湿度計50が追加され、制御装置40が湿球温度制御部52として機能する点において、第1実施形態の冷却塔システム1と異なる。したがって、第1実施形態と機能が等しい複数の冷却塔10、熱交換器30、温度計32、ポンプ34、複数のインバータ36、制御装置40については、その詳細な説明を省略し、機能が異なる湿球温度制御部52について詳述する。
【0068】
温湿度計50は、冷却塔10付近の外気の湿球温度を検出する。温湿度計50は、例えば、冷却水がかからず、直射日光が当たらない場所において、地表高約1.5mの位置に設置される。温湿度計50は、外気の湿球温度を検出する湿球温度検出部として機能する。
【0069】
湿球温度制御部52は、温度計32の検出結果および温湿度計50の検出結果に基づいて、インバータ36からモータ20に供給する電力の周波数を導出する。湿球温度制御部52は、導出された周波数を示す周波数指令をインバータ36に送信する。
【0070】
ところで、冷却塔10では、外気の湿球温度が冷却水の目標温度よりも適度に低い場合、冷却水の温度が目標温度に下がり易い。しかし、冷却塔10では、外気の湿球温度が冷却水の目標温度に近づくに連れて、冷却水が目標温度まで下がり難くなる。
【0071】
このことから、比較例として、外気の湿球温度が冷却水の目標温度に近づくに連れて、ファン18を駆動するモータ20に供給する電力を増加させる冷却塔システムがある。これは、モータ20に供給する電力を増加させることで、外気の風量を増加させ、冷却水を目標温度に下げようとするものである。
【0072】
図10は、比較例の冷却塔システムの動作を説明する説明図である。図10(a)は、湿球温度と設定冷却水温度との関係、および、湿球温度と冷却水温度との関係を示している。湿球温度は、温湿度計50により検出された温度である。設定冷却水温度は、冷却水の目標温度である。冷却水温度は、温度計32により検出された温度である。図10(b)は、湿球温度とアプローチ温度との関係を示している。アプローチ温度は、温度計32で検出された冷却後の冷却水温度と温湿度計50で検出された湿球温度との差分である。図10(c)は、湿球温度とモータ20に供給する電力を示している。電力は、定格電力に対する割合で示している。また、図10(a)~図10(c)では、冷却負荷が一定であるとする。
【0073】
比較例の冷却塔システムでは、アプローチ温度が2.5℃となるまで冷却水を冷却できる能力があるとする。図10(a)の実線D11で示すように、比較例の冷却塔システムでは、湿球温度に依らず、設定冷却水温度が28℃で一定に設定されている。この場合、図10(b)で示すように、アプローチ温度は、湿球温度が上昇するに連れて漸減する。
【0074】
このような比較例の冷却塔システムでは、図10(c)で示すように、湿球温度が設定冷却水温度(28℃)に向かって上昇するに連れて、モータ20に供給する電力が大幅に増加している。そして、湿球温度が25.5℃以上となると、モータ20に供給する電力は、供給可能な電力の上限(電力P2)に達して維持される。なお、湿球温度25.5℃は、アプローチ温度2.5度に対応する温度(28℃-2.5℃=25.5℃)である。
【0075】
そうすると、冷却水温度は、図10(a)に示すように、湿球温度が25.5℃(モータ20に供給する電力が上限(電力P2)に達した温度)を超えて上昇するに連れて漸増する。例えば、湿球温度が25.5℃から2.5℃上昇して28℃となると、冷却水温度は、28℃から2.5℃上昇して30.5℃となる。この際、アプローチ温度は、図10(a)に示すように、湿球温度が25.5℃以上において2.5℃で一定となる。
【0076】
また、モータ20に供給する電力が周波数(風量)の3乗で増加するため、図10(c)に示すように、湿球温度25.5℃のときの電力P2は、湿球温度25℃のときの電力P1に比べ、大幅に大きい。
【0077】
このため、例えば、比較例の冷却塔システムでは、湿球温度が25℃から25.5℃までの僅か0.5℃の範囲において、冷却水温度を設定冷却水温度(28℃)に維持するために、電力P2と電力P1との差分の大電力が必要である。したがって、比較例の冷却塔システムでは、湿球温度が上昇するに連れて、モータ20に供給する電力に対して得られる冷却水の冷却効果が小さくなり、効率が低下していた。
【0078】
そこで、第2実施形態の冷却塔システム100の湿球温度制御部52は、モータ20に供給する電力が所定電力を超えないように、設定冷却水温度を変化させる。所定電力は、湿球温度が所定湿球温度(例えば、25℃)となるときの電力である。所定湿球温度は、設定冷却水温度の基準値(例えば、28℃)に基づいて設定される。また、所定湿球温度は、モータ20に供給する電力が供給可能な電力の上限に達するときの湿球温度(例えば、25.5℃)よりも低い温度に設定される。
【0079】
図11は、第2実施形態の冷却塔システム100の動作を説明する説明図である。図11(a)は、湿球温度と設定冷却水温度との関係、および、湿球温度と冷却水温度との関係を示している。図11(b)は、湿球温度とアプローチ温度との関係を示している。図11(c)は、湿球温度と、モータ20に供給する電力との関係を示している。図11(a)~図11(c)では、冷却負荷が一定であるとする。
【0080】
湿球温度制御部52は、湿球温度が25℃未満において、図11(a)の実線D21に示すように、設定冷却水温度を28℃に設定している。つまり、第2実施形態の冷却塔システム100では、湿球温度が25℃未満の場合、図10に示す比較例と同様に動作する。第2実施形態の冷却塔システム100は、湿球温度が25℃以上の場合の動作が、比較例と異なる。
【0081】
湿球温度が25℃以上の場合、湿球温度制御部52は、図11(a)および図11(b)に示すように、アプローチ温度が所定アプローチ温度(例えば、3℃)を維持するように、設定冷却水温度を変化させる。所定アプローチ温度は、設定冷却水温度の基準値(28℃)と、所定湿球温度(25℃)とに基づいて設定される。また、所定アプローチ温度は、モータ20に供給する電力が供給可能な電力の上限に達するときのアプローチ温度(例えば、2.5℃)よりも高い温度に設定される。
【0082】
具体的には、湿球温度制御部52は、設定冷却水温度を、現在の湿球温度に所定アプローチ温度を加算した温度に更新する。例えば、湿球温度が26℃の場合、湿球温度制御部52は、設定冷却水温度を、29℃(26℃+3℃)に更新する。
【0083】
これにより、湿球温度が25℃以上において、現在のアプローチ温度は、図11(b)に示すように、所定アプローチ温度(例えば、3℃)に維持される。また、湿球温度25℃以上において、現在の設定冷却水温度は、図11(a)の実線D21に示すように、湿球温度25℃のときの設定冷却水温度(28℃)よりも上昇する。その結果、冷却後の冷却水温度は、図11(a)の一点鎖線D22に示すように、設定冷却水温度に合わせて上昇することとなる。
【0084】
しかし、モータ20に供給する電力は、図11(c)に示すように、湿球温度が25℃以上となっても、湿球温度25℃のときの電力P1を超えないこととなる。これは、湿球温度25℃以上では、アプローチ温度が一定となるため、湿球温度25℃のときの風量を超える風量を通風させなくとも、冷却水温度を設定冷却水温度にすることができるからである。
【0085】
より詳細には、湿球温度25℃以上においてアプローチ温度を所定アプローチ温度に維持させると、湿球温度の上昇に連れて冷却水の蒸発が促進されて、冷却水温度が下がり易くなる。このため、湿球温度25℃以上において、湿球温度の上昇に連れて、冷却水温度を設定冷却水温度にさせるための風量を減少させることができる。その結果、第2実施形態の冷却塔システム100では、図11(c)に示すように、湿球温度25℃以上において、湿球温度の上昇に連れて、モータ20に供給する電力を、逆に徐々に減少させることができる。
【0086】
以上のように、第2実施形態の冷却塔システム100の湿球温度制御部52は、湿球温度が変化しても、モータ20に供給する電力が所定電力を超えないように設定冷却水温度を変化させている。
【0087】
これにより、第2実施形態の冷却塔システム100では、設定冷却水温度を湿球温度に依らず一定に設定する比較例に比べ、湿球温度が所定湿球温度(例えば、25℃)を超えると、冷却水温度が少し(例えば、数℃)上昇する。しかし、第2実施形態の冷却塔システム100では、設定冷却水温度を湿球温度に依らず一定に設定する比較例に比べ、モータ20に供給する電力を大幅に(例えば、電力P2から電力P1に大幅に)抑制することができ、冷却効率の低下を抑制することが可能となる。
【0088】
したがって、第2実施形態の冷却塔システム100によれば、非効率な運転を抑制することが可能となる。
【0089】
また、第2実施形態の冷却塔システム100の湿球温度制御部52は、湿球温度が所定湿球温度(例えば、25℃)以上の場合に、アプローチ温度が所定アプローチ温度(例えば、3℃)に維持されるように、設定冷却水温度を変化させている。このため、第2実施形態の冷却塔システム100では、モータ20に供給する電力を確実に抑制することができる。
【0090】
なお、第2実施形態において、所定湿球温度は、25℃に限らず、25℃を超える値に設定されてもよいし、25℃を下回る値に設定されてもよい。また、第2実施形態において、所定湿球温度以下における設定冷却水温度(設定冷却水温度の基準値)は、28℃に限らず、28℃を超える値に設定されてもよいし、28℃を下回る値に設定されてもよい。また、第2実施形態において、所定アプローチ温度は、3℃に限らず、3℃を超える値に設定されてもよいし、3℃を下回る値に設定されてもよい。
【0091】
また、第2実施形態の冷却塔システム100では、複数の冷却塔10が設けられていた。しかし、第2実施形態の冷却塔システム100は、1台の冷却塔10を備えるものであってもよい。
【0092】
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態では、湿球温度が所定湿球温度(25℃)を上回る場合、モータ20に供給する電力が、所定電力(電力P1)よりも低下していた。しかし、モータ20に供給する電力は、所定電力(電力P1)まで許容することができる。むしろ、モータ20に供給する電力を所定電力(電力P1)まで許容することで、設定冷却水温度が高くなることを抑えたい場合がある。このような場合に鑑みて、第2実施形態の変形例を構成する。
【0093】
図12は、第2実施形態の変形例の動作を説明する説明図である。図12(a)は、湿球温度と設定冷却水温度との関係、および、湿球温度と冷却水温度との関係を示す図である。図12(b)は、湿球温度とアプローチ温度との関係を示す図である。図12(c)は、湿球温度とモータ20に供給する電力との関係を示す図である。
【0094】
第2実施形態の変形例の湿球温度制御部52は、湿球温度25℃以上において、図12(c)に示すように、モータ20に供給する電力を、所定電力(電力P1)に維持させる。このようにするために、湿球温度制御部52は、図12(a)の実線D31に示すように、湿球温度25℃以上において、設定冷却水温度を、湿球温度に所定アプローチ温度を加算した温度以下に変化させる。なお、図12(a)では、湿球温度に所定アプローチ温度を加算した温度を破線D33で示している。つまり、湿球温度制御部52は、湿球温度が25℃から上昇するに連れて、設定冷却水温度の上昇割合を徐々に減少させる。
【0095】
これにより、冷却水温度は、図12(a)の一点鎖線D32に示すように、湿球温度が25℃から上昇するに連れて、設定冷却水温度に合わせて、上昇割合が徐々に減少することとなる。
【0096】
このとき、アプローチ温度は、図12(b)に示すように、湿球温度が25℃から上昇するに連れて、所定アプローチ温度(3℃)から徐々に減少することとなる。
【0097】
以上のように、第2実施形態の変形例では、第2実施形態と同様に、湿球温度が変化しても、モータ20に供給する電力が所定電力(所定湿球温度のときの電力)を超えないように設定冷却水温度を変化させている。したがって、第2実施形態の変形例によれば、第2実施形態と同様に、非効率な運転を抑制することが可能となる。
【0098】
さらに、第2実施形態の変形例の湿球温度制御部52は、湿球温度が所定湿球温度(例えば、25℃)以上の場合に、モータ20に供給する電力が所定湿球温度のときの電力を維持するように設定冷却水温度を変化させている。このため、第2実施形態の変形例では、モータ20に供給する電力の増加を抑えつつ、冷却後の冷却水温度の上昇を緩和させることができる。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、冷却塔システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 冷却塔システム
10 冷却塔
18 ファン
20 モータ
36 インバータ
42 負荷分散制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12