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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/28 20060101AFI20220930BHJP
   F23R 3/42 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
F02C7/28 C
F23R3/42 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018206419
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2020070773
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 祥太
(72)【発明者】
【氏名】小金沢 知己
(72)【発明者】
【氏名】三浦 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】平田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正平
(72)【発明者】
【氏名】寺田 義隆
(72)【発明者】
【氏名】西川 毅彦
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-193866(JP,A)
【文献】特開2017-223220(JP,A)
【文献】特開2012-082818(JP,A)
【文献】特開2012-102869(JP,A)
【文献】特開2018-059502(JP,A)
【文献】特開2016-133118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/28
F23R 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の燃焼ガスが内部に流れるガスタービン燃焼器の複数のトランジションピースと、該各トランジションピースのそれぞれの下流側(出口側)の周方向に沿って設置されると共に、ガスタービンの上流側(入口側)に接続された複数の額縁とを備え、
複数の前記額縁のそれぞれは、その内外周における前記額縁と前記ガスタービン間の間隙をシールするフローティングシール及び互いに周方向に隣接する前記額縁間の間隙をシールするサイドシールを有するガスタービン燃焼器であって、
互いに周方向に隣接する前記額縁のコーナー部間に形成される間隙部に設置され、少なくとも前記間隙部から前記ガスタービン側へ流入する空気をシールし、かつ、前記フローティングシールと前記サイドシールとは独立して別体に構成されたコーナーシール部を備え
前記コーナーシール部は、前記額縁に溶接固定されて前記額縁と一体化されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記額縁のコーナー部間に形成される前記間隙部から前記ガスタービン側へ流入する空気は、前記額縁の周方向及び軸方向からのリーク空気であることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記コーナーシール部は、前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されていると共に、前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されている前記コーナーシール部間には、両者間を跨ぐように前記額縁間から径方向に伸延する前記サイドシールが位置していることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項3に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されている前記各コーナーシール部は、前記額縁の径方向先端部を断面U字状の前記フローティングシールで覆うことで形成される空間の周方向出口を塞ぎ、前記空間に流入したリ-ク空気をシールしていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されている前記各コーナーシール部の一方の前記コーナーシール部は、径方向に延びる直線部及びその直線部の両端から周方向に延びる水平部で略T字状に形成されたブロックと、該ブロックを前記額縁のコーナー部に固定する固定部とから成り、
前記ブロックのT字状の前記直線部及び水平部の前記ガスタービン側の面が平面状に形成され、前記ブロックは、平面に形成された前記ブロックのT字状の前記水平部の前記ガスタービン側とは反対側が、前記平面部分から連続して肉厚を持ち最外周側が曲面状に形成された第1ブロックと、平面に形成された前記ブロックのT字状の前記直線部の前記ガスタービン側とは反対側が、前記平面部分から連続して肉厚を持った四角柱で形成された第2ブロックとから構成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されている前記各コーナーシール部の一方の前記コーナーシール部と他方の前記コーナーシール部は、一方の前記コーナーシール部を基準に他方の前記コーナーシール部が逆T字状となるように配置され、
一方及び他方の前記コーナーシール部は、前記T字状の水平部の一方端が、前記ブロックと一体に形成された前記固定部を介して前記額縁のコーナー部に固定されていると共に、前記ブロックのT字状の前記直線部が、前記額縁のコーナー部に直接固定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項7】
請求項6に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記額縁の各コーナー部には切り欠き(溝)が設けられ、この切り欠き(溝)に前記コーナーシール部が固定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項8】
請求項7に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記切り欠き(溝)はL字状に形成され、このL字状の切り欠き(溝)に前記コーナーシール部が溶接固定されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記額縁のコーナー部では、前記コーナーシール部の前記ブロックの平面部に沿って前記サイドシールが配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項10】
請求項5乃至9のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されている前記コーナーシール部のそれぞれには、隣接する前記額縁側に向かって突出する前記ブロックのT字状の前記水平部の一部である凸部が形成されており、隣接する前記各コーナーシール部に形成されている前記凸部同士を前記額縁の半径方向にオフセットすることで段違い部が形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項11】
請求項10に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記段違い部を形成している前記各コーナーシール部に形成されている前記凸部の先端は、前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されている前記コーナーシール部と所定のギャップをもって配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項12】
請求項11に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記各額縁のコーナー部の周方向に相対向して設置されている前記各コーナーシール部に形成されている前記凸部同士は、前記額縁の周方向にオ-バーラップしていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項13】
請求項12に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記ガスタービン燃焼器の外側トランジションピースフレーム部の前記各コーナーシール部に形成されている前記段違い部の半径方向位置は、前記フローティングシールの最内周よりも外周側に位置し、前記ガスタービン燃焼器の内側トランジションピースフレーム部の前記各コーナーシール部に形成されている前記段違い部の半径方向位置は、前記フローティングシールの最外周よりも内側に位置していることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項14】
請求項13に記載のガスタービン燃焼器であって、
前記コーナーシール部は、前記サイドシールを挟んで、前記ブロックの平面部が前記燃焼ガスの流通方向に相対向して2個配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービン燃焼器に係り、特に、ガスタービンと燃焼器のトランジションピースの出口部に設置された額縁の連結部外周に、額縁とガスタービン間の間隙をシールするフローティングシール及び互いに周方向に隣接する額縁間の間隙をシールするサイドシールが設置されているものに好適なガスタービン燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの形式の1つに、燃焼ガスが生成される燃焼室をそれぞれ個別に有する複数のガスタービン燃焼器(以下、燃焼器という)を備えた、いわゆる、多缶式のガスタービンがある。この多缶式のガスタービンでは、通常、複数の燃焼器がガスタービンの回転軸の外側に円環状に配置されている。
【0003】
各燃焼器は、内部に燃焼室を有する円筒型の燃焼器ライナと、燃焼室で生成された高温高圧の燃焼ガスをガスタービン入口に導くトランジションピースとを備えている。トランジションピースは、燃焼器ライナ内の円形状の断面を有する燃焼室と、円環状の流路断面を有するガスタービン入口流路とを接続するものである。
【0004】
そのため、トランジションピースは、円筒型の燃焼器ライナに応じて円形状の上流側断面を有すると共に、円環状の流路断面を有するガスタービン入口流路の形状に応じて当該円環形状を周方向に複数に分割した形状、換言すると、内側及び外側の円弧と両円弧の両端部をそれぞれ結ぶ直線とで構成された略矩形(扇形)状の下流側断面を有し、その間をなだらかな曲線で接続した流路を形成している。
【0005】
一方、ガスタービンでは、回転軸の長さを短くするために、圧縮機の外周側に燃焼器を配置して、圧縮機とガスタービンとの間隔を縮めることが一般的である。
【0006】
このような構造の場合、圧縮機からの燃焼用空気(圧縮空気)は、燃焼器のトランジションピースの外側を通り燃焼器の頭部側(燃焼室側)へ流れの向きを変え、燃焼器ライナの外側を流れる。
【0007】
この燃焼用空気は、燃焼器の頭部において流れ方向を再度変えて、燃焼器ライナの内部(燃焼室)に流入する。即ち、燃焼器のトランジションピースとガスタービン入口流路との接続部における内周側には燃焼ガスが流れる一方、その接続部の外周側には燃焼用空気が流れている。この燃焼用空気は、接続部の内周側を流れる燃焼ガスよりも圧力が高いので、当該接続部において、その外周側から内周側へ流入してしまう(漏れ出てしまう)。
【0008】
この場合、燃焼ガスの温度の低下や燃焼器での燃焼条件の変化によって燃料消費量が増加し、ガスタービンのエネルギー効率の低下を招く。また、燃焼用空気が漏れ出る分、燃焼に寄与する空気量が減るので燃焼室内の燃焼温度が高くなり、燃焼時に生成する窒素酸化物が増加する懸念がある。このため、燃焼用空気の漏れを抑制することが要求されている。
【0009】
このような燃焼用空気の漏れを抑制することの要求に応えるべく、燃焼器のトランジションピースとガスタービン入口との接続部おける燃焼用空気の漏れを抑制するためのシール構造として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0010】
特許文献1に記載のシール構造は、各燃焼器のトランジションピースの出口側端部(最後部)に取り付けられた略矩形状の額縁と呼ばれる部分の4辺の部分(4つの境界)、詳細には、周方向に延在する円弧状の内周部分(下側部分)と、内周部分よりも径方向外側に位置して周方向に延在する円弧状の外周部分(上側部分)と、内周部分と外周部分の両端部を繋いで径方向に延在する直線状の一対の側方部分とに、それぞれシール部材を設置するものである。
【0011】
具体的には、各額縁の外周面にシール溝を設け、隣接する額縁の側方部分のシール溝間にサイドシールと称する平板状のシール部材を挟み込んで額縁間の隙間をシールしている。
【0012】
また、額縁の内周部分及び外周部分のシール溝とガスタービン入口(初段静翼)に設けたシール溝とに、フローティングシールと称するシール部材を嵌合させてトランジションピースとガスタービン入口との間の隙間をシールしている。
【0013】
上記フローティングシールは、断面U字状の部分と、断面U字状の部分からガスタービン側に張り出した断面直線状の部分とで構成されており、断面U字状の部分が額縁に取り付けられると共に、断面直線状の部分がガスタービン入口のシール溝に嵌合している。
【0014】
また、複数の燃焼器のトランジションピースの出口側端部とガスタービン入口との接続部におけるトランジションピース間からの燃焼用空気の漏れを抑制するシール構造として、例えば、特許文献2に記載されたものがある。
【0015】
特許文献2に記載のシール構造は、トランジションピース出口端の隣接したフランジの対向面に沿って該フランジ対向面に跨る凹溝を設け、この凹溝にシール部材と板ばねとからなるシール組立体を挿入し、シール部材が一対の連続した突起部を有し、この突起部が、上記した凹溝内でフランジ対向面に跨って凹溝内の燃焼ガス通路側面に向けて配置され、板ばねが、凹溝内でシール部材に接するように配置され、板ばねのバネ力により突起部を燃焼ガス通路側面に押し付けるようにしてシール面を形成するものである。
【0016】
これにより、燃焼器の高温下での構造物の温度差に起因した熱変形や作動流体の流通等に伴う振動によってトランジションピース間に相対変位が生じた場合でも、良好なシール性能を維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】特開2003-193866号公報
【文献】国際公開第2007/023734号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
一般に、燃焼器及びガスタービンでは、高温の燃焼ガスが流通するので、ガスタービンの停止時と運転時とで温度差が大きい。そのため、燃焼器及びガスタービンを構成する部品間の相対位置がそれらの熱変形により変化する。
【0019】
また、ガスタービンでは、ガスタービンの回転や作動流体の流通に伴う振動が発生しやすいし、振動によっても、燃焼器及びガスタービンを構成する部品間の相対位置が変化する。
【0020】
従って、燃焼器のトランジションピースとガスタービン入口との接続部におけるシール構造に用いられるシール部材は、特許文献2に記載のように、高温環境下での使用を考慮して高い耐熱性や剛性、耐久性を備えている必要がある上に、トランジションピースやガスタービン入口の位置変化に追従してシール性を確保できる柔軟性も兼ね備えている必要がある。つまり、このシール構造のシール部材には、剛性と柔軟性という互いに相反する特性が求められている。
【0021】
一方、特許文献1に記載のシール構造では、略矩形状の額縁の4辺の部分にそれぞれシール部材を設置し、各シール部材と各シール部材の嵌合する部分(シール溝)との間に熱変形を考慮した隙間を設けながら、その隙間の大きさを調整することやシール部材とシール溝との組み合わせにより流路を複雑にすることで、シール性能を持たせている。
【0022】
また、特許文献1に記載のシール構造のように、額縁の4辺の部分にそれぞれシール部材を設置する場合、燃焼器等に熱変形が生じても、各シール部材がそれぞれのシール性能を維持できるように、シール部材同士の干渉を避ける必要がある。そのため、シール部材同士が交差する(組み合わされる)額縁の4つの角部では、シール位置を互いにずらす必要がある。
【0023】
例えば、額縁の内周部分側及び外周部分側に設置するシール部材(フローティングシール)と額縁の側方部分に設置するシール部材(サイドシール)との間に、ガスタービンの回転軸の軸方向に距離(オフセット)を設けておく。この場合、隣接するトランジションピースが熱変形等により回転軸の軸方向に相対的に変位しても、サイドシールとフローティングシールは、オフセットにより互いに干渉することがない。
【0024】
従って、熱変形が生じた場合でも、各シール部材は、それぞれ額縁の各辺の部分のみを担当することになるので、額縁の各辺の部分のシール性能を維持できる。
【0025】
このように、額縁の角部におけるサイドシールとフローティングシールの交差する部分には、シール部材同士の干渉を回避するための間隙(間隔)を設ける必要がある。
【0026】
しかし、シール部材同士の干渉を回避するための間隙(間隔)を設けると、この間隙から隣接する額縁の角部間に形成される隙間を介して、トランジションピースの外側に流れる燃焼用空気がガスタービン入口流路内へ流入してしまう。
【0027】
従来は、トランジションピースの額縁の4つの角部から漏れる空気量が額縁の4つの辺部から漏れる空気量に比べて相対的に少ないことから、額縁の4つの角部におけるシール性能を重視していなかった。
【0028】
しかしながら、ガスタービンのエネルギー効率の向上や燃焼性能の向上にあたり、燃焼器のトランジションピースの出口側端部とガスタービン入口部との接続部における漏れ空気の更なる低減の必要性が生じている。
【0029】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、額縁の角部におけるサイドシールとフローティングシールの交差する部分に、シール部材同士の干渉を回避するための間隙(間隔)を設けた場合でも、ガスタービン燃焼器のトランジションピースの出口側端部とタービン入口部との接続部におけるシール性能を高めることができるガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明のガスタービン燃焼器は、上記目的を達成するために、高温の燃焼ガスが内部に流れるガスタービン燃焼器の複数のトランジションピースと、該各トランジションピースのそれぞれの下流側(出口側)の周方向に沿って設置されると共に、ガスタービンの上流側(入口側)に接続された複数の額縁とを備え、複数の前記額縁のそれぞれは、その内外周における前記額縁と前記ガスタービン間の間隙をシールするフローティングシール及び互いに周方向に隣接する前記額縁間の間隙をシールするサイドシールを有するガスタービン燃焼器であって、互いに周方向に隣接する前記額縁のコーナー部間に形成される間隙部に設置され、少なくとも前記間隙部から前記ガスタービン側へ流入する空気をシールし、かつ、前記フローティングシールと前記サイドシールとは独立して別体に構成されたコーナーシール部を備え、前記コーナーシール部は、前記額縁に溶接固定されて前記額縁と一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、額縁の角部におけるサイドシールとフローティングシールの交差する部分に、シール部材同士の干渉を回避するための間隙(間隔)を設けた場合にも、ガスタービン燃焼器のトランジションピースの出口側端部とガスタービン入口部との接続部におけるシール性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明のガスタービン燃焼器の実施例1の全体構成を示す図である。
図2図1におけるガスタービン燃焼器のトランジションピースの配列を、燃焼ガスの流れ方向上流側から見た図を示す部分断面図である。
図3】本発明のガスタービン燃焼器の実施例1に採用されるトランジションピースの出口側を、シール部材を分解して示す斜視図である。
図4図3のX-X線に沿った断面図である。
図5図3のY-Y線に沿った断面図である。
図6】従来のガスタービン燃焼器における周方向に隣接するトランジションピースフレーム(額縁)のコーナー部を示す部分斜視図である。
図7】本発明のガスタービン燃焼器の実施例1におけるトランジションピースフレーム(額縁)間を示す図である。
図8図7のA部を拡大して示す斜視図である。
図9図7のB部を拡大して示す斜視図である。
図10】本発明のガスタービン燃焼器の実施例1に採用されるコーナーシール部を示すトランジションピースフレーム(額縁)のコーナー部の部分斜視図である。
図11(a)】本発明のガスタービン燃焼器の実施例1におけるコーナーシール部を設置する前のトランジションピースフレーム(額縁)の上部コーナー部を示す部分斜視図である。
図11(b)】図11(a)のトランジションピースフレーム(額縁)のコーナー部にコーナーシール部を設置固定した状態を示す部分斜視図である。
図12(a)】本発明のガスタービン燃焼器の実施例1におけるコーナーシール部を設置する前のトランジションピースフレーム(額縁)の下部コーナー部を示す部分斜視図である。
図12(b)】図12(a)のトランジションピースフレーム(額縁)のコーナー部にコーナーシール部を設置固定した状態を示す部分斜視図である。
図13】本発明のガスタービン燃焼器の実施例2における周方向に隣接する額縁のコーナー部を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のガスタービン燃焼器を説明する。なお、以下で説明する各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0034】
図1及び図2に、本発明のガスタービン燃焼器の一例として発電プラント向けガスタービン燃焼器を示す。
【0035】
図1は、本発明のガスタービン燃焼器の実施例1の全体構成を示し、図2は、図1におけるガスタービン燃焼器のトランジションピースの配列を、燃焼ガスの流れ方向上流側から見た図を示す。なお、図1において、ガスタービン燃焼器は、その左側が燃焼ガスの上流側、その右側が下流側になるように図示されている。
【0036】
図1において、ガスタービンは、外気(大気)100を取り込んで圧縮し高圧の燃焼用空気(高圧空気)110を生成する圧縮機1と、この圧縮機1から導入される燃焼用空気(圧縮空気)110と燃料系統(図示せず)から供給される燃料120とを混合して燃焼させることで、高温の燃焼ガス130を生成する複数(図1では1つのみ図示)のガスタービン燃焼器2と、このガスタービン燃焼器2で生成された燃焼ガス130のエネルギーにより軸駆動力を得るガスタービン3とを備えている。
【0037】
そして、圧縮機1とガスタービン3は駆動軸4を介して接続され、ガスタービン3には発電機6が機械的に連結されており、発電機6がガスタービン3の軸駆動力を電力に変換するものである。
【0038】
複数のガスタービン燃焼器2は、圧縮機1の外周側に円環状に配置されている。即ち、本実施例のガスタービン3は多缶式のガスタービンであり、各ガスタービン燃焼器2は、その頭部が圧縮機1側(図1の左側)に、その尾部がガスタービン3側(図1の右側)に位置するように配置されている。
【0039】
ガスタービン燃焼器2は、内部に燃焼室31を有する略円筒状の燃焼器ライナ21と、この燃焼器ライナ21内に燃料を噴射する燃料ノズル22と、燃焼器ライナ21を内包する圧力容器としての燃焼器外筒23と、燃焼器外筒23の燃料ノズル22側の開口部を閉塞するエンドカバー24と、燃焼器ライナ21とガスタービン入口部3aとを接続し、燃焼室31で生成された燃焼ガス130をガスタービン3に導くトランジションピース25とを備えている。
【0040】
燃焼器外筒23はケーシング28に取り付けられており、ケーシング28はトランジションピース25を格納し、ケーシング28の内部には、圧縮機1から燃焼用空気110が流入する空間32が形成されている。燃焼器外筒23と燃焼器ライナ21の間には、ケーシング28の空間32内の燃焼用空気110が流通する環状の空気流路33が形成されている。ケーシング28には、例えば、燃焼器ライナ21が固定部材27により固定されている。
【0041】
圧縮機1からの燃焼用空気110は、ケーシング28内で流れ方向が反転し、空気流路33を通りエンドカバー24側に向かって流れる。その後、燃焼用空気110は、エンドカバー24で流れ方向を再び反転させ、燃焼器ライナ21内の燃焼室31に流入し、燃焼室31に流入した燃焼用空気110は、燃料系統(図示せず)から供給される燃料120と混合して燃焼し、その結果、燃焼ガス130が生成される。この燃焼ガス130は、トランジションピース25の流路34を通りガスタービン入口部3a内に流入する。
【0042】
上記したガスタービン入口部3aは、円環状の流路断面を有するガスタービン入口流路35を形成している。多缶式のガスタービン3では、図2に示すように、複数のガスタービン燃焼器2のトランジションピース25を円環状に配置することにより、円環状のガスタービン入口流路35に接続している。
【0043】
各トランジションピース25は、ガスタービン3の運転時に燃焼ガス130の流通に伴って高温になると、周方向、軸方向及び半径方向に熱膨張する。
【0044】
そこで、隣接する各トランジションピース25の出口側端部25aの間に間隙G1(後述の図4参照)を設けることで、周方向の熱伸びによるトランジションピース25の出口側端部25a同士の干渉を防止している。
【0045】
同様に、トランジションピース25の出口側端部25aと、その下流側のガスタービン入口部3aとの間に間隙G2(後述の図5参照)を設けることで、トランジションピース25が軸方向に熱伸びすることによるトランジションピース25とガスタービン入口部3aとの干渉を防止している。
【0046】
このように、周方向の熱伸びによるトランジションピース25の出口側端部25a同士の干渉を防止するために、隣接する各トランジションピース25の出口側端部25aの間に間隙G1が設けられ、また、トランジションピース25が軸方向に熱伸びすることによるトランジションピース25とガスタービン入口部3aとの干渉を防止するために、トランジションピース25の出口側端部25aと下流側のガスタービン入口部3aとの間に間隙G2が設けられている。
【0047】
通常、複数のトランジションピース25を内包するケーシング28内の空間32には、燃焼用空気110が流通する一方、トランジションピース25及びガスタービン入口部3aの内部側には燃焼ガス130が流通している。
【0048】
ところが、ケーシング28の空間32内の燃焼用空気110は、燃焼ガス130よりも圧力が高いので、その一部が燃焼器ライナ21側に向かわずに、トランジションピース25の出口側端部25aとガスタービン入口部3aとの間隙G2、及び隣接する各トランジションピース25の出口側端部25a間の間隙G1を介してガスタービン入口流路35側に流入(漏出)してしまう。
【0049】
そこで、トランジションピース25の出口側端部25aとガスタービン入口部3aとの接続部には、燃焼用空気110のガスタービン入口流路35側に流入(漏出)を防止するシール構造30が設けられている。
【0050】
このシール構造30について図3乃至図5を用いて説明する。図3は、本発明のガスタービン燃焼器2の実施例1に採用されるトランジションピース25の出口側端部25aをシール部材30を分解して示し、図4は、図3のX-X線に沿った断面図、図5は、図3のY-Y線に沿った断面図である。
【0051】
図3において、各トランジションピース25は、内部にガスタービン入口流路35に燃焼ガス130を導くトランジションピース25内の流路34を形成する筒状本体部41と、この筒状本体部41の出口側(下流側)端部41aの外周を取り囲むように(外周面に沿うように)設置され、ガスタービン3の上流側(入口側)であるガスタービン入口流路35に接続される額縁を構成するトランジションピースフレーム42とで構成されている。このトランジションピースフレーム(額縁)42は、筒状本体部41と一体に形成された一体部品でもよいし、筒状本体部41の出口側端部41aに溶接等により接合される別個の部品であってもよい。
【0052】
上記した筒状本体部41の入口側端部41bは、燃焼器ライナ21の下流側端部に係合されるものであり、円筒型の燃焼器ライナ21に応じて略円形状の流路断面を有する。また、筒状本体部41の出口側端部41a(トランジションピースフレーム(額縁)42でもある)は、ガスタービン入口流路35を形成するガスタービン入口部3aに接続されるものであり、円環状の流路断面を有するガスタービン入口流路35の形状に応じて、当該円環形状を周方向に複数に分割したような形状の流路断面を有している。
【0053】
換言すると、筒状本体部41の出口側端部41a(トランジションピースフレーム(額縁)42でもある)の流路断面は、径方向内側及び径方向外側の円弧と両円弧の両端部をそれぞれ結ぶ直線とで構成された略矩形(扇形)状となっている。
【0054】
一方、トランジションピース25内の流路34は、筒状本体部41の入口側端部41bの流路断面と筒状本体部41の出口側端部41aの流路断面とをなだらかな曲線で接続することで形成されている。
【0055】
また、トランジションピースフレーム42は、内側トランジションピースフレーム部43と、外側トランジションピースフレーム部44と、一対の側方トランジションピースフレーム部45とで構成されている。
【0056】
上記した内側トランジションピースフレーム部43は、ガスタービン入口流路35の径方向内縁側に対応した径方向位置に配置され、周方向に延在する円弧状の部分である。また、外側トランジションピースフレーム部44は、内側トランジションピースフレーム部43よりも径方向外側に位置し、周方向に延在する円弧状の部分である。更に、一対の側方トランジションピースフレーム部45は、内側トランジションピースフレーム部43の周方向の両側端部と外側トランジションピースフレーム部44の周方向の両側端部との間にそれぞれ設けられ、径方向に延在する直線状の部分である。
【0057】
図3及び図4に示すように、隣接するトランジションピースフレーム42の側方トランジションピースフレーム部45の対向面には、それぞれ径方向(側方トランジションピースフレーム部45の延在方向)に沿って延在するサイドシール溝45aが設けられている。
【0058】
また、隣接するトランジションピースフレーム42の側方トランジションピースフレーム部45間の隙間G1を封止するために、サイドシール51が設置されている。このサイドシール51は、隣接する側方トランジションピースフレーム部45の両サイドシール溝45aに跨るように配置されており、両サイドシール溝45aに沿って延在している。
【0059】
なお、サイドシール51は、例えば、コバルト基合金等から成る長尺の平板状の部材であり、ガスタービン入口部3a側に下流面51aを有している。
【0060】
また、上記したサイドシール51は、図4に示すように、隣接するトランジションピース25間の空間を流通する燃焼用空気110とトランジションピース25内の流路34からガスタービン入口流路35へ向かって流通する燃焼ガス130(燃焼用空気110よりも圧力が低い)との圧力差によって、サイドシール溝45aを形成する一対の壁面のうちガスタービン入口流路35側の壁面に押し付けられる。
【0061】
このように、サイドシール51を側方トランジションピースフレーム部45のサイドシール溝45aと組合せることで、トランジションピース25の外側を流通する燃焼用空気110がガスービン入口流路35内に流入することを抑制することができる。
【0062】
また、サイドシール51と側方トランジションピースフレーム部45のサイドシール溝45aとの間に、空間、いわゆる“遊び”が設けられているので、隣接するサイドシール溝45aの相対位置がトランジションピース25の熱変形や振動により変化した場合でも、サイドシール51の変形や摩耗を抑制しながら、トランジションピース25を内包するケーシング28の空間32内の燃焼用空気110がガスタービン入口流路35へ流入することを抑制できる。
【0063】
また、図3及び図5に示すように、内側トランジションピースフレーム部43とガスタービン入口部3aとの隙間G2を封止するために、内周側フローティングシール52が内側トランジションピースフレーム部43とガスタービン入口部3aとに跨るように配置されている。
【0064】
この内周側フローティングシール52は、内側トランジションピースフレーム部43に沿って延在しており、一方側が内側トランジションピースフレーム部43に係合すると共に、他方側がガスタービン入口部3aの径方向内側の部分に係合している。
【0065】
また、外側トランジションピースフレーム部44とガスタービン入口部3aとの隙間G2を封止するために、外周側フローティングシール53が外側トランジションピースフレーム部44とガスタービン入口部3aとに跨るように配置されている。
【0066】
この外周側フローティングシール53は、外側トランジションピースフレーム部44に沿って延在しており、一方側が外側トランジションピースフレーム部44に係合すると共に、他方側がガスタービン入口部3aの径方向外側の部分に係合している。
【0067】
具体的には、図5に示すように、ガスタービン入口部3aにおけるトランジションピースフレーム42の内側トランジションピースフレーム部43及び外側トランジションピースフレーム部44の下流側端面に対向する入口側端面には、それぞれフローティングシール溝3bが設けられている。
【0068】
内周側フローティングシール52及び外周側フローティングシール53は、横断面U字状に形成され上流側脚部56aと下流側脚部56bとを有する第1係合部56と、第1係合部56の下流側脚部56bから外側に略直角に折れ曲がって延在する横断面直線状の第2係合部57とで構成されている。
【0069】
なお、内周側フローティングシール52及び外周側フローティングシール53は、例えば、高温での耐摩耗性が高く、かつ、柔軟性があるコバルト基合金等により形成されている。
【0070】
また、外周側フローティングシール53では、第1係合部56の上流側脚部56a及び下流側脚部56bが、外側トランジションピースフレーム部44の上流側端面及び下流側端面を挟み込むことで、第1係合部56が外側トランジションピースフレーム部44に密着すると共に、第2係合部57がガスタービン入口部3aのフローティングシール溝3b内に挿入されている。
【0071】
外周側フローティングシール53の第2係合部57を、ガスタービン入口部3aのフローティングシール溝3b内に隙間をあけて配置することで、トランジションピース25とガスタービン入口部3aとの相対位置が熱変形により変化した場合でも、両者の干渉を防止しつつ、ケーシング28の空間内の燃焼用空気110がガスタービン入口流路35へ流入することを抑制できる。
【0072】
また、外周側フローティングシール53は、内周側フローティングシール52と同様に、断面U字状の第1係合部56により内側トランジションピースフレーム部43を挟み込むように構成されているので、外周側フローティングシール53自体や外側トランジションピースフレーム部44が熱変形しても、両者の密着性を維持することができる。
【0073】
なお、外周側フローティングシール53が接触するトランジションピースフレーム42の外側トランジションピースフレーム部44も、耐摩耗性が高い材質で形成することで、熱変形や振動に伴う摩耗を抑制することができる。
【0074】
特に詳述しないが、内周側フローティングシール52についても、外周側フローティングシール53と同様である。
【0075】
また、内周側フローティングシール52、外周側フローティングシール53及びサイドシール51では、隣接する各トランジションピース25間の相対位置や、トランジションピース25とガスタービン入口部3aとの相対位置が熱変形や振動により変化した場合でも相互の干渉を避けるために、互いを結合させずにシール位置を相互にずらしている。
【0076】
具体的には、内周側フローティングシール52及び外周側フローティングシール53は、図5に示すように、それぞれトランジションピース25のトランジションピースフレーム42の内側トランジションピースフレーム部43及び外側トランジションピースフレーム部44の下流側端面と接している。
【0077】
一方、サイドシール51は、図4に示すように、トランジションピースフレーム42の側方トランジションピースフレーム部45に設けたサイドシール溝45aに接している。つまり、内周側フローティングシール52及び外周側フローティングシール53のシール位置は、サイドシール51のシール位置よりも相対的にガスタービン入口部3a側にずれている。
【0078】
ところで、上記のように構成されたシール構造30において、外側トランジションピースフレーム部44の径方向先端部を断面U字状の外周側フローティングシール53で覆う(囲う)ことで形成された空間60に、リーク空気が流入してしまう。
【0079】
以下、これについて説明する。
【0080】
上記した外周側フローティングシール53には、燃焼ガス130と燃焼用空気110との圧力差に伴う内外圧力差が作用する。しかも、外周側フローティングシール53は、第1係合部56の下流側脚部56bが長く(面積大)、第1係合部56の上流側脚部56aが短く(面積小)形成されている。
【0081】
従って、燃焼ガス130と燃焼用空気110との圧力差によって、トランジションピース25とガスタービン入口流路35との接続部は、上流向き(図5の右から左向き)に荷重を受ける。
【0082】
これにより、外側トランジションピースフレーム部44と外周側フローティングシール53との下流側タッチ面42bは、上流向き(図5の右から左向き)に強固に押圧されていることからリークが発生しにくい。
【0083】
一方、外側トランジションピースフレーム部44と外周側フローティングシール53との上流側タッチ面42aは、上流向き(図5の右から左向き)に荷重を受けないので、上流向きに押圧されないためリークが発生しやすい。
【0084】
このようなことから、燃焼空気の一部は、外側トランジションピースフレーム部44の径方向先端部を断面U字状の外周側フローティングシール53で覆う(囲う)ことで形成された空間60に、上流側タッチ面42aに発生した隙間からリークした空気が流入してしまう。
【0085】
また、通常、トランジションピース25をケーシング28に固定するための支持部材(ヒンジ)が、外側トランジションピースフレーム部44に取り付けられている。そして、外周側フローティングシール53が支持部材と干渉することを回避するために、外周側フローティングシール53の中央部には切欠きを設けてあり、この切欠きと支持部材とのギャップからリークした空気が空間60へ流入してしまう。
【0086】
上記した空間60へ流入したリーク空気は、燃焼ガス130と燃焼用空気110との圧力差によって、外周側フローティングシール53が上流向きに外側トランジションピースフレーム部44に押し付けられているため、下流側タッチ面42bからは流出しにくい。
【0087】
従って、リーク空気は、トランジションピースフレーム(額縁)42の周方向にフレームコーナー部48へ向かって流れることになる。また、サイドシール51は、外周側フローティングシール53の下流端よりも上流側に位置している。よって、フレームコーナー部48へ流れたリーク空気は、サイドシール51の下流に流入する。
【0088】
また、フレームコーナー部48の下流側には、外周側フローティングシール53の第1係合部56の下流側脚部56bが存在するため、リーク空気は外周から内周に向かって流れの向きを変え、外周側フローティングシール53の第1係合部56よりも内周で下流方向に再び向きを変えて流出する。
【0089】
即ち、トランジションピースフレーム(額縁)42と外周側フローティングシール53の間の空間60に流入したリーク空気は、図6に示すように、サイドシール51の下流側の空間においては、ガスタービン3の外周から内周に向かい、更に下流に向きを変えて流れることになる。
【0090】
そこで、本実施例では、図7図8及び図9に示すように、互いに周方向に隣接する額縁のフレームコーナー部48間に形成される間隙部Gに、この間隙部Gからガスタービン3側へリークするリーク空気をシールするコーナーシール部である肩シール部64a及び64bを設置している。この肩シール部64a及び64bは、外周側フローティングシール53とサイドシール51とは独立して別体に構成されている。
【0091】
上記した肩シール部64a及び64bがシールする額縁のフレームコーナー部48間に形成される間隙部からガスタービン3側へリークする空気は、額縁の周方向及び軸方向110a1及び110a2(図6参照)から流れるリーク空気である。
【0092】
また、コーナーシール部である肩シール部64a及び64bは、各額縁のフレームコーナー部48の周方向に相対向して設置されていると共に、各トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48の周方向に相対向して設置されている肩シール部64a及び64b間には、両者間を跨ぐようにトランジションピースフレーム(額縁)42間から径方向に伸延するサイドシール51が位置している。
【0093】
また、各トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48の周方向に相対向して設置されている各肩シール部64a及び64bは、トランジションピースフレーム(額縁)42の径方向先端部を、断面U字状の外周側フローティングシール53で覆うことで形成される空間60の周方向出口を塞ぎ、空間60に流入したリ-ク空気をシールして(塞いで)いる
これによって、空間60に流入したリーク空気が、サイドシール51の下流側の空間に流入することを防止している。
【0094】
次に、本実施例で採用されている肩シール部64aの詳細について、図10を用いて説明する。
【0095】
図10に示すように、本実施例で採用されている肩シール部64aは、径方向(図7の上下方向)に延びる直線部64a1及びその直線部64a1の両端から周方向(図7の左右方向)に延びる水平部64a2で略T字状に形成されたブロック64a3と、このブロック64a3をトランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48に固定する固定部64a4とから構成されている。
【0096】
そして、ブロック64a3のT字状の直線部64a1及び水平部64a2のガスタービン側(図10左下斜め方向)の面64a5が平面状に形成され、ブロック64a3は、平面に形成されたブロック64a3のT字状の水平部64a2のガスタービン側とは反対側(図10右上斜め方向)が、面64a5の平面部分から連続して肉厚を持ち最外周側が曲面状に形成された第1ブロックCと、平面に形成された前記ブロックのT字状の直線部面64a1のガスタービン側とは反対側が、面64a5の平面部分から連続して肉厚を持った四角柱で形成された第2ブロックDとから構成されている。
【0097】
また、本実施例では、各トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48の周方向に相対向して設置されている一方の肩シール部64aと他方の肩シール部64bは、一方の肩シール部64aを基準に他方の肩シール部64bが逆T字状となるように配置され、一方及び他方の肩シール部64a及び64bは、T字状の水平部64a2の一方端が、ブロック64a3と一体に形成された固定部64a4を介してトランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48に固定されていると共に、ブロック64a3のT字状の直線部64a1が、トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48に直接固定されている。
【0098】
具体的には、トランジションピースフレーム(額縁)42の各フレームコーナー部48には、図11(a)及び図12(a)に示すように、肩シール部64a及び64bの位置決め用であるL字状の切り欠き(溝)48aが設けられ、このL字状の切り欠き(溝)48aに、図11(b)及び図12(b)に示すように、肩シール部64b(64a)が溶接10で固定されている。
【0099】
肩シール部64a及び64bの位置決め用のL字状の切り欠き(溝)48aにより、周方向に隣接ずるトランジションピースフレーム42のそれぞれの溶接位置を同じ高さとすることが可能となる。なお、肩シール部64a及び64bは、トランジションピースフレーム42の出口側から溶接される。
【0100】
これにより、フロースリーブを分解することなく、肩シール部64a及び64bをトランジションピースフレーム42に固定することができる。
【0101】
また、トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48では、コーナーシール部64b(64a)のブロック64a3の平面部(64a5)に沿ってサイドシール51が配置されている。
【0102】
また、本実施例での各トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48の周方向に相対向して設置されている肩シール部64a及び64bのそれぞれには、隣接するトランジションピースフレーム(額縁)42側に向かって突出するブロック64a3のT字状の水平部64a2の一部である凸部65a及び65bが形成されており(図8及び図9参照)、隣接ずる各肩シール部64a及び64bに形成されている凸部65a及び65b同士をトランジションピースフレーム(額縁)42の半径方向にオフセットすることで、段違い部66が形成されている(図8及び図9参照)。
【0103】
これによって、肩シール部64a及び64bをすり抜けたリーク空気(額縁の周方向に流れるリーク空気110a1、額縁の軸方向に流れるリーク空気110a2、並びにサイドシール51の裏側の内周側フローティングシール52、外周側フローティングシール53の各々が形成する隙間からのリーク空気)は、ガスタービン3の外周から内周(図10の上から下)に向かう途中で段違い部66を通過することになるため、この段違い部66により、リーク空気の下流への流入を防止することができる。
【0104】
また、肩シール固定部64a4の周方向端部には、内周側フローティングシール52及び外周側フローティングシール53の形状に沿った半円柱状の閉止面が形成されている。この半円柱状の閉止面によって、内周側フローティングシール52及び外周側フローティングシール53の内側を両方向の周方向に流れるリーク空気、及び額縁の軸方向から流れるリーク空気がサイドシール51の裏側に回り込むことを防止している。
【0105】
また、肩シール部64a及び64bが周方向に熱伸びした際にも、凸部65a及び65b同士が接触することはない。更に、段違い部66が、サイドシール51の下流側に形成されているため、リーク空気の下流側への流入を低減することができる。
【0106】
また、段違い部66を形成している各肩シール部64a及び64bに形成されている凸部65a及び65bの先端は、各トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48の周方向に相対向して設置されている肩シール部64a及び64bと所定のギャップGをもって配置されている。
【0107】
このギャップGがあることにより、肩シール部64a及び64bを各トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48に組立てする際には、組立てし易くなる。
【0108】
また、各トランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部48の周方向に相対向して設置されている肩シール部64a及び64bに形成されている凸部65a及び65b同士は、トランジションピースフレーム(額縁)42の周方向にオ-バーラップしている。
【0109】
これは、運転時に熱伸びによって凸部65a及び65b同士がオ-バーラップするもので、凸部65a及び65b同士がオ-バーラップすることにより、リーク空気の下流への流入をさらに低減することができる。
【0110】
また、外側トランジションピースフレーム部44の左右のフレームコーナー部48に設けた段違い部66の半径方向位置は、外周側フローティングシール53の最内周よりも外周側に位置している。つまり、外周側フローティングシール53のU字部の内側に入り込んでいる。
【0111】
逆に、ガスタービン燃焼器2の内側トランジションピースフレーム部43の各肩シール部64a及び64bに形成されている段違い部66の半径方向位置は、内周側フローティングシール52の最外周よりも内側に位置している。即ち、内側トランジションピースフレーム部43の左右のフレームコーナー部48に設けた段違い部66の半径方向位置は、内周側フローティングシール52の最外周よりも内周側に位置している。これは、リーク低減のために必須である。
【0112】
このような本実施例の構成とすることにより、トランジションピースフレーム(額縁)42の角部におけるサイドシール51と内周側及び外周側フローティングシール52及び53の交差する部分に、シール部材同士の干渉を回避するための間隙(間隔)を設けた場合にも、ガスタービン燃焼器のトランジションピース25の出口側端部25aとガスタービン入口部3aとの接続部におけるシール性能を高めることができる。
【0113】
また、ブロック64a3のT字状の直線部64a1及び水平部64a2のガスタービン側(図10左下斜め方向)の面64a5が平面状に形成されているため、肩シール部64a及び64b等を溶接固定する際の作業性が良好となる。
【実施例2】
【0114】
図13に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例2における周方向に隣接するトランジションピースフレーム(額縁)42のフレームコーナー部を示す。
【0115】
図13に示す本実施例では、実施例1で説明した肩シール部64a及び64bが、サイドシール51を挟んで、ブロック64a3の平面部が、燃焼ガス130の流通方向に相対向して2個配置されている。
【0116】
このような本実施例であっても、ガスタービン燃焼器のトランジションピース25の出口側端部25aとガスタービン入口部3aとの接続部におけるシール性能を高めることができる。
【0117】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0118】
1…圧縮機、2…ガスタービン燃焼器、3…ガスタービン、3a…ガスタービン入口部、3b…フローティングシール溝、4…駆動軸、6…発電機、10…溶接、21…燃焼器ライナ、22…燃料ノズル、23…燃焼器外筒、24…エンドカバー、25…トランジションピース、25a…トランジションピースの出口側端部、27…固定部材、28…ケーシング、30…シール構造、31…燃焼室、32…ケーシング内の空間、33…空気流路、34…トランジションピース内の流路、35…ガスタービン入口流路、41…筒状本体部、41a…筒状本体部の出口側端部、41b…筒状本体部の入口側端部、42…トランジションピースフレーム(額縁)、42a…外側トランジションピースフレーム部と外周側フローティングシールとの上流側タッチ面、42b…外側トランジションピースフレーム部と外周側フローティングシールとの下流側タッチ面、43…内側トランジションピースフレーム部、44…外側トランジションピースフレーム部、45…側方トランジションピースフレーム部、45a…サイドシール溝、48…フレームコーナー部、48a…L字状の切り欠き(溝)、51…サイドシール、51a…サイドシールの下流面、52…内周側フローティングシール、53…外周側フローティングシール、56…第1係合部、56a…第1係合部の上流側脚部、56b…第1係合部の下流側脚部、57…第2係合部、60…トランジションピースフレームとフローティングシールに囲まれた空間、64a、64b…肩シール部、64a1…肩シール部の直線部、64a2…肩シール部の水平部、64a3…肩シール部のブロック、64a4…肩シール部の固定部、65a、65b…肩シール部の凸部、66…段違い部、100…外気、110…燃焼用空気、110a1、110a2…リーク空気、120…燃料、130…燃焼ガス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図12(a)】
図12(b)】
図13