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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】除菌剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/06 20060101AFI20220930BHJP
   A01N 53/08 20060101ALI20220930BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20220930BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20220930BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20220930BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A01N53/06 110
A01N53/08 110
A01N59/16 A
A01N25/02
A01N25/18 103B
A01P3/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018210544
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020075890
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山岸 弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 智子
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-171619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 53/06
A01N 53/08
A01N 59/16
A01N 25/02
A01N 25/18
A01P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ピレスロイド系化合物と、
(B)成分:銀を含む薬剤と、
(C)成分:有機発泡剤と、を含有し、
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.2~2.0である除菌剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、メトフルトリン、トランスフルトリン、フェノトリン及びd・d-Tシフェノトリンから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の除菌剤組成物。
【請求項3】
界面活性剤をさらに含有し、前記界面活性剤の含有量が、除菌剤組成物の総質量に対して、2~15質量%であり、前記界面活性剤がノニオン界面活性剤である、請求項1又は2に記載の除菌剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般家庭では、住宅の気密性向上に伴い、細菌、カビ等の微生物が生活空間に繁殖しやすくなっている。微生物の繁殖は、美観を損ねるだけでなく、感染症リスクとなる等の衛生上の大きな問題となる。特に、湿気の多い浴室は、細菌、カビ等の微生物が繁殖しやすい環境である。浴室の天井や壁の上部等の高い部分は手入れがしにくく、微生物が繁殖しやすい場所である。加えて、換気口等、奥深くまで手が届かないような複雑な構造物の内部等は、さらに手入れが困難である。
【0003】
こうした問題に対し、特許文献1では、抗菌剤、有機発泡剤を含む防カビ燻煙剤組成物が提案されている。特許文献2では、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメートと、イソプロピルメチルフェノールと、アゾジカルボンアミドとを含む燻煙剤組成物が提案されている。特許文献3では、銀を含む薬剤と、有機発泡剤とを含む燻煙剤が提案されている。
特許文献1~3の燻煙剤組成物によれば、抗菌、除菌、殺菌、防カビ、抗カビ等の微生物抑制効果の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-119643号公報
【文献】特開2008-127299号公報
【文献】特開2014-47150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、除菌等の微生物抑制効果については、さらなる向上が求められている。
そこで、本発明は、微生物抑制効果により優れる除菌剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1](A)成分:ピレスロイド系化合物と、(B)成分:銀を含む薬剤と、を含有し、前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が0.2~2.0である除菌剤組成物。
[2](C)成分:有機発泡剤をさらに含有する、[1]に記載の除菌剤組成物。
[3]前記(A)成分が、メトフルトリン、トランスフルトリン、フェノトリン及びd・d-Tシフェノトリンから選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載の除菌剤組成物。
[4]前記(A)成分の含有量が、総質量に対して、1~30質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の除菌剤組成物。
[5]銀濃度が総質量に対して、0.001~0.5質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の除菌剤組成物。
[6]前記(B)成分の体積平均粒子径が、0.01~1000μmである、[1]~[5]のいずれかに記載の除菌剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の除菌剤組成物によれば、微生物抑制効果により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る燻煙装置の断面図である。
図2】実施例において使用した評価室の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[除菌剤組成物]
本発明の除菌剤組成物は、(A)成分と(B)成分とを含有する組成物である。
本発明の除菌剤組成物は、抗菌、除菌、殺菌、防カビ、抗カビ等の微生物抑制効果を発揮できる。本明細書において、「微生物」には、細菌、真菌、カビ等が含まれる。
本発明の除菌剤組成物の剤型としては、例えば、燻煙剤(燻煙型除菌剤)、スプレー剤(スプレー型除菌剤)、エアゾール剤(エアゾール型除菌剤)が挙げられる。
燻煙剤は、固体であっても、液体であっても、半固体(ゲル状)であってもよい。
スプレー剤及びエアゾール剤は、液体又は半固体が好ましい。
【0010】
<(A)成分>
(A)成分は、ピレスロイド系化合物である。(A)成分は、いわゆる殺虫剤の有効成分として機能する。本発明の除菌剤組成物は、(A)成分を含有することで、微生物抑制効果を高められる。
(A)成分としては、例えば、メトフルトリン、トランスフルトリン、3-フェノキシベンジルクリサンテマート(フェノトリンともいう。)、d・d-Tシフェノトリン、シフェノトリン、アレスリン、ピナミンフォルテ、バイオアレスリン、d-T80-フタルスリン、レスメトリン、3-フェノキシベンジル(1RS,3RS;1RS,3SR)-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート、フェンバレレート、フェンプロパトリン、エンペントリン、ベンフルスリン、テフルスリン、テラレスリン、エトフェンプロックス等が挙げられる。
【0011】
(A)成分としては、上記の中でも、後述する(B)成分との相乗効果に優れることから、メトフルトリン、トランスフルトリン、3-フェノキシベンジルクリサンテマート、d・d-Tシフェノトリンが好ましく、メトフルトリン、トランスフルトリンがより好ましい。
(A)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
(A)成分の含有量は、除菌剤組成物の総質量に対して、1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、2~10質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、(A)成分による効果が充分に得られやすい。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、コストを抑制でき、(A)成分以外の成分の含有量を確保でき、有効成分の飛散率を維持しやすい。
【0013】
<(B)成分>
(B)成分は、銀を含む薬剤である。(B)成分は、いわゆる除菌剤や抗菌剤の有効成分として機能する。本発明の除菌剤組成物は、(B)成分を含有することで、微生物抑制効果や消臭効果を発揮できる。
(B)成分としては、例えば、抗菌、殺菌、除菌、防カビ、抗カビ、消臭作用を持つ銀単体;酸化銀;塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、スルホン酸銀等の無機銀塩;蟻酸銀、酢酸銀等の有機銀塩等の銀化合物を含むものが挙げられる。
また、(B)成分としては、上記の銀化合物をゼオライト、シリカゲル、低分子ガラス、リン酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化チタン等の物質(以下、担体ということがある)に担持させたもの(以下、担持体ということがある)であってもよい。
担持体としては、例えば、銀単体、酸化銀、無機銀塩、有機銀塩等の銀化合物を担持したゼオライト系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、ケイ酸塩系抗菌剤等が挙げられる。
【0014】
(B)成分としては、上記の中でも、(B)成分由来の臭気をより低減しやすい観点から、銀単体、酸化銀、硝酸銀等の無機銀塩又はこれらを担体に担持させた担持体が好ましく、銀化合物をゼオライトに担持させたゼオライト系抗菌剤がより好ましい。ゼオライト系抗菌剤を用いることで、除菌剤組成物を燻煙剤として用いる場合の燻煙処理時及び燻煙処理後における(B)成分由来の臭気をより低減できる。
(B)成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(B)成分の形態は、特に限定されず、対象空間の広さ等を勘案して決定できる。(B)成分の形態としては、(B)成分の粒子が微細であるほど、除菌剤組成物を燻煙剤として用いる場合の煙化率を高めやすい。加えて、(B)成分の粒子が微細であるほど、(B)成分が、対象空間内の広域に拡散され、微生物抑制効果をより向上しやすい。一方、(B)成分の粒子が小さすぎると、(B)成分が拡散した後に落下しにくくなり、対象空間の下方における(B)成分の効果の発現までに時間を要する。なお、煙化率とは、除菌剤組成物中の(B)成分の総質量に対する煙化した(B)成分の質量の割合をいう。
【0016】
(B)成分の体積平均粒子径は、0.01~1000μmが好ましく、0.5~100μmがより好ましく、1~5μmがさらに好ましい。(B)成分の体積平均粒子径が上記数値範囲内であると、(B)成分を煙化して対象空間に拡散しやすい。
ここで、「煙化」とは、(B)成分を対象空間に拡散できる状態にすることを意味する。なお、体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA910、株式会社堀場製作所製)により求められる値をいい、次のようにして測定できる。
(B)成分を固形分が1質量%となるように蒸留水に分散して試料とする。この試料をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置に投入し、装置内で超音波によって分散後、レーザーを照射して粒度分布を測定する。体積頻度の累積が50体積%となる粒子径を体積平均粒子径とする。
【0017】
(B)成分の含有量は、(B)成分の種類や有効成分濃度、除菌剤組成物に求める機能に応じて決定できる。
(B)成分の含有量は、除菌剤組成物中の銀濃度が0.001~0.5質量%となる量が好ましく、0.05~0.1質量%となる量がより好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であると、微生物に対する除菌効果が充分に得られやすい。(B)成分の含有量が上記上限値以下であると、コストを抑制でき、(B)成分以外の成分の含有量を確保でき、有効成分の飛散率を維持しやすい。
【0018】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(以下、「A/B比」ともいう。)は、0.2~2.0であり、0.4~1.6がより好ましく、0.7~1.2がさらに好ましい。A/B比が上記数値範囲内であると、微生物に対する除菌効果が充分に得られやすい。これは、A/B比を上記数値範囲内とすることで、(A)成分に対する(B)成分の浸透性が向上し、その結果、微生物に対する除菌効果が向上するためであると考えられる。
【0019】
<任意成分>
本発明の除菌剤組成物は、(A)成分、(B)成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、例えば、(C)成分(有機発泡剤)、ポリオール、結合剤、賦形剤、発熱助剤、界面活性剤、安定剤、効力増強剤、酸化防止剤、賦香剤、溶媒等が挙げられる。
任意成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
((C)成分)
(C)成分は、有機発泡剤である。本発明の除菌剤組成物は、(A)成分、(B)成分に加えて、(C)成分を含有することが好ましい。(C)成分を含有することで、除菌剤組成物を燻煙型除菌剤とすることができる。
本明細書において、「燻煙型除菌剤」とは、加熱されることで煙状物が噴出され、噴出された煙状物によって除菌有効成分が短時間に揮散される薬剤をいう。
【0021】
(C)成分としては、加熱により熱分解して多量の熱を発生するとともに、炭酸ガス(二酸化炭素)や窒素ガス等(以下、総じて発泡ガスともいう。)を発生するものが挙げられる。(C)成分としては、例えば、アゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
(C)成分としては、上記の中でも、分解温度が低く、発泡ガスの発生量が多い点で、アゾジカルボンアミドが好ましい。
【0022】
(C)成分の含有量は、(C)成分の種類や、(A)成分、(B)成分の粒子径等を勘案して決定できる。
除菌剤組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、除菌剤組成物の総質量に対して、50~90質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましく、60~85質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であると、(A)成分、(B)成分を効率よく煙化しやすい。(C)成分の含有量が上記上限値以下であると、(C)成分の分解物の飛散量が少なくなり、対象空間を汚染しにくくなる。
【0023】
(ポリオール)
除菌剤組成物が液体又は半固体の燻煙剤の場合、除菌剤組成物は、上記(A)成分、上記(B)成分のほか、ポリオールを含有することが好ましい。
「ポリオール」は、分子内に2個以上の水酸基を有する化合物であり、水酸基を2つ有するものを2価アルコール(グリコール)、3つ有するものを3価アルコールといい、2つ以上有するものは総称して多価アルコールとも称される。ポリオールは、150~450℃程度で加熱すると、現行の燻煙剤と同様に白色の煙状物が発生するという特徴がある。その結果、除菌剤組成物の使用者が、視覚的な実効感を得ることができる。
ポリオールは、特に限定されず、医薬品、医薬部外品、化粧品、雑貨品、工業品等に使用されているものの中から、(A)成分の揮散性、溶解・分散性、使用時の加熱温度等を考慮して適宜選択される。
ポリオールの沸点は、(A)成分が揮散し得る温度の観点から、150~300℃が好ましく、170~300℃がより好ましい。
ポリオールとしては、2価アルコール(グリコール)、3価以上の多価アルコール、糖、糖アルコール等が挙げられる。
【0024】
2価アルコール(グリコール)のなかで好適なものとしては、炭素数が2以上であり、炭素原子間にエーテル性酸素原子(-O-)が挿入されていてもよい脂肪族炭化水素の2つの炭素原子に1つずつ水酸基が結合している構造を持つ化合物が挙げられる。
該化合物において、脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。また、該脂肪族炭化水素は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状であることが好ましい。
鎖状である場合、該脂肪族炭化水素は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。環状である場合、該脂肪族炭化水素は単環式でも多環式でもよい。
このような化合物としてより具体的には、下記一般式(d1)又は(d2)で表される化合物が挙げられる。
HO-R-OH ・・・(d1)
HO-(RO)-H ・・・(d2)
[式中、R及びRはそれぞれ独立に、炭素数2以上の2価の脂肪族炭化水素基であり、nは2以上の整数である。]
【0025】
式(d1)中、Rにおける2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は2~18が好ましく、2~4がより好ましく、3又は4がさらに好ましい。Rとしてはプロピレン基が特に好ましい。
式(d2)で表される化合物は、いわゆるポリエーテルである。
式(d2)中、Rとしては、Rと同様のものが挙げられ、エチレン基又はプロピレン基が好ましく、エチレン基が特に好ましい。
nは2~14であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0026】
上記一般式(d1)で表される化合物の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、trans-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、イソプレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,17-ヘプタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオール、1,20-イコサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、1,2-オクタデカンジオール等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(d2)で表される化合物の例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、平均分子量200~20000のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、平均分子量300~2000のポリプロピレングリコール等が挙げられる。
平均分子量200~20000のポリエチレングリコールは、マクロゴールとも称され、ポリエチレングリコール200(平均分子量190~210)、ポリエチレングリコール300(平均分子量280~320)、ポリエチレングリコール400(平均分子量380~420)、ポリエチレングリコール600(平均分子量570~630)、ポリエチレングリコール1000(平均分子量950~1050)、ポリエチレングリコール1540(平均分子量1290~1650)、ポリエチレングリコール2000(平均分子量1850~2150)、ポリエチレングリコール4000(平均分子量2600~3800)、ポリエチレングリコール6000(平均分子量7300~9300)、ポリエチレングリコール10000(平均分子量9300~12500)、ポリエチレングリコール20000(平均分子量15500~20000)等が挙げられる。
これらのポリエチレングリコールは、例えば、三洋化成工業(株)から入手できる。ポリエチレングリコールの市販品には、例えば、「ポリエチレングリコール#1000」のように、商品によってはポリエチレングリコールと数値の間に「#」がつく場合がある。
なお、上記のポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格2006記載の平均分子量を示し、医薬部外品原料規格2006記載の測定法による値である。
平均分子量300~2000のポリプロピレングリコールとしては、重合度が4~34のものが挙げられ、このようなポリプロピレングリコールとしては、ニューポールPP-400、PP-1000、PP-2000(三洋化成工業株式会社製)等の市販品を用いることができる。
なお、ポリプロピレングリコールの平均分子量は数平均分子量であり、水酸基価から求めた値である。
【0028】
糖のなかで好適なものとしては、グルコース、フルクトース等の単糖;スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース等の二糖;三糖以上の多糖等が挙げられる。
糖アルコールのなかで好適なものとしては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、キシリトール、D-ソルビトール、マンニトール、マルチトール等が挙げられる。グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンは、例えば、阪本薬品工業(株)等の市販品を用いることができる。
【0029】
上記のなかでも、ポリオールとしては、加熱により特に気化しやすく、(A)成分が揮散しやすいことから、グリコールが好ましい。
グリコールのなかでも、上記の一般式(d1)で表される化合物(以下、「(d1)成分」ともいう。)及び一般式(d2)で表される化合物(以下、「(d2)成分」ともいう。)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、(A)成分の揮散率が高まることから、(d1)成分と(d2)成分とを併用することがより好ましい。
(d1)成分と(d2)成分とを併用する場合、(d1)成分と(d2)成分との混合比率は、(d1):(d2)で表される質量比で、1:3~3:1が好ましく、1:2~2:1がより好ましい。
(d1)成分の中では、プロピレングリコールが特に好ましい。
(d2)成分の中では、ジプロピレングリコールが特に好ましい。
【0030】
また、ポリオールとしては、(A)成分の揮散率がより高まることから、沸点の異なる2種類のポリオールを用いることも好ましい。かかる2種類のポリオールの組合せとしては、例えば、(A)成分の揮散開始温度より高い温度の沸点を有するポリオールと(A)成分の揮散開始温度より低い温度の沸点を有するポリオールとの組合せが挙げられる。
【0031】
除菌剤組成物がポリオールを含有する場合、ポリオールの含有量は、除菌剤組成物の総質量に対し、40質量%以下が好ましく、1~40質量%がより好ましく、5~30質量%がさらに好ましい。
ポリオールの含有量が上記下限値以上であると、(A)成分が揮散しやすくなる。ポリオールの含有量が上記上限値以下であると、発生する煙状物の量を適度に抑えやすくなる。
【0032】
(結合剤)
除菌剤組成物が固体の場合、除菌剤組成物は、結合剤を含有することが好ましい。除菌剤組成物が結合剤を含有すると、顆粒成形性が向上する。除菌剤組成物が固体の場合、除菌剤組成物は、粉状(粉末状)、粒状(顆粒状)、錠剤状のいずれの形状であってもよい。除菌剤組成物が顆粒状であると、粉末状の場合に比べ、除菌剤組成物が密になり、より熱が伝わりやすく効率的に昇温するため、煙化率を高めやすい。煙化率を高めると、処理対象空間により多くの有効成分を揮散できるため、微生物抑制効果をより向上しやすい。このため、除菌剤組成物は、顆粒状であることが好ましい。
結合剤としては、例えば、セルロース系化合物(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとそのカルシウム塩及びナトリウム塩、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、デンプン系化合物(デンプン、α化デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム塩等)、天然物系化合物(アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント、ゼラチン等)、合成高分子系化合物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等)等が挙げられる。
【0033】
除菌剤組成物が結合剤を含有する場合、結合剤の含有量は、除菌剤組成物の総質量に対して、3~8質量%が好ましい。結合剤の含有量が上記下限値以上であると、除菌剤組成物の燻煙開始から煙化までの時間を長くすることができ、燻煙時に使用者が被煙することを抑制しやすい。結合剤の含有量が上記上限値以下であると、良好な燻煙性能(噴出力)が得られやすい。
【0034】
(賦形剤)
賦形剤としては、例えば、無機鉱物(クレー、カオリン、タルク、石英、水晶等)等が挙げられる。
【0035】
除菌剤組成物が賦形剤を含有する場合、賦形剤の含有量は、除菌剤組成物の総質量に対して、2~45質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。賦形剤の含有量が上記下限値以上であると、顆粒成形性が向上し、燻煙性能がより安定になる。賦形剤の含有量が上記上限値以下であると、充分な燻煙性能(噴出力)が得られやすい。
【0036】
(発熱助剤)
発熱助剤としては、例えば、酸化亜鉛、リン酸カルシウム、メラミン等が挙げられる。
【0037】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、通常、医薬品、医薬部外品、化粧品、雑貨品等に使用されるものであれば特に限定されない。界面活性剤としては、(A)成分及び(B)成分への溶解性、分散性の観点から、ノニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0038】
除菌剤組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、除菌剤組成物の総質量に対して、2~15質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。界面活性剤の含有量が上記下限値以上であると、(A)成分及び(B)成分の分散性を向上しやすい。界面活性剤の含有量が上記上限値以下であると、有効成分の飛散率を維持しやすい。
【0039】
(安定剤)
安定剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル(プロピル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート)、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等)等が挙げられる。
【0040】
(効力増強剤)
効力増強剤としては、例えば、ピペロニルブトキシド(5-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシメチル]-6-プロピル-1,3-ベンゾジオキソール)、S-421(ジ(2,3,3,3-テトラクロロプロピル)エーテル)等が挙げられる。
【0041】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロール等が挙げられる。
【0042】
(賦香剤)
賦香剤としては、各種香料が挙げられる。
【0043】
(溶媒)
溶媒としては、1価アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノール)、水等が挙げられる。
【0044】
これら任意成分の含有量は、除菌剤組成物の総質量に対して、0~99質量%が好ましく、0~98質量%がより好ましく、0~95質量%がさらに好ましい。
(A)成分及び(B)成分と、これら任意成分との合計量は、除菌剤組成物の総質量を100質量%として、100質量%を超えない。
【0045】
<除菌剤組成物の製造方法>
本発明の除菌剤組成物は、(A)成分、(B)成分を水やエタノール等の溶媒等に分散し、溶解した液体製剤として用いることや、(C)成分を含有する燻煙型除菌剤として用いることができる。
除菌剤組成物は、液体製剤として、又は、粉状、粒状、錠剤等の固形製剤として調製できる。除菌剤組成物の製造方法としては、目的とする剤型に応じて、公知の製造方法が用いられる。例えば、液体の製剤とする場合は、各成分を混合して溶解又は分散する製造方法により製造できる。また、粒状の製剤とする場合は、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等の、公知の造粒物の製造方法により製造できる。
押出し造粒法による製造方法の具体例として、除菌剤組成物の各成分を、ニーダー等により混合し、必要に応じて適量の水を加えて混合し、得られた混合物を任意の開孔径を有するダイスを用い、前押出しあるいは横押出し造粒機で造粒する方法が挙げられる。該造粒物をさらにカッター等で任意の大きさに切断し、水分除去のための乾燥を行ってもよい。
乾燥方法は、例えば、従来公知の乾燥機を用いた加熱乾燥法が挙げられる。
乾燥温度は、特に限定されないが、香料等の揮発を抑制する観点から、50~80℃が好ましい。
乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜決定される。
乾燥後の除菌剤組成物の水分の含有量は、特に限定されないが、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。水分の含有量が上記上限値以下であると、(A)成分の揮散率を良好にしやすい。
水分の含有量は、例えば、乾燥後の除菌剤組成物をすりつぶし、105℃、20分の条件にて、水分計で測定することができる。水分計としては、(株)島津製作所製の水分計「MOC-120H」が挙げられる。
【0046】
<除菌剤組成物の使用方法>
本発明の除菌剤組成物は、剤型に応じて、公知の方法にて使用できる。
例えば、燻煙剤であれば、後述する燻煙装置を使用できる。
例えば、液体のスプレー剤であれば、トリガー式のスプレイヤー等の噴霧器に除菌剤組成物を充填して使用できる。
例えば、液体のエアゾール剤であれば、公知のエアゾール容器に除菌剤組成物を充填して使用できる。公知のエアゾール容器としては、例えば、特開2014-227369号公報に記載のエアゾール容器が挙げられる。
除菌剤組成物がスプレー剤やエアゾール剤の場合、除菌剤組成物の使用量は、(A)成分や(B)成分の種類や濃度に応じて適宜設定すればよく、1mあたり1~5gが好ましく、2~4gがより好ましい。除菌剤組成物の使用量が上記下限値以上であると、微生物に対する除菌効果が充分に得られやすい。除菌剤組成物の使用量が上記上限値以下であると、コストを抑制でき、微生物に対する除菌効果を効率よく得られやすい。
【0047】
(燻煙装置)
本発明の除菌剤組成物は、燻煙装置に充填し、公知の燻煙方法にて使用できる。
燻煙装置は、除菌剤組成物を収容した全量噴射型容器を備える除菌装置の一実施形態である。
以下に、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る燻煙装置について説明する。
【0048】
図1に示すように、燻煙装置10は、筐体12と、筐体12の内部に設けられた加熱部20と、筐体12の内部に設けられた燻煙剤部32とを備える。筐体12は略円筒状の本体14と、底部16と、本体14の上部に設けられた蓋部18とで構成されている。筐体12内には、燻煙剤容器30が設けられ、燻煙剤容器30に除菌剤組成物が充填されて燻煙剤部32が形成されている。燻煙装置10は、間接加熱型の燻煙装置の一例である。
【0049】
蓋部18は、貫通孔を有するものであり、メッシュ、パンチングメタル、格子状の枠体等が挙げられる。蓋部18の材質は、例えば、金属、セラミック等が挙げられる。
本体14の材質は蓋部18と同じである。
【0050】
燻煙剤容器30は、燻煙剤部32を充填する容器として機能するとともに、加熱部20で生じた熱エネルギーを燻煙剤部32に伝える伝熱部として機能するものである。燻煙剤容器30は、例えば、金属製の容器等が挙げられる。
【0051】
加熱部20は、特に限定されず、燻煙剤部32の煙化に必要な熱量を考慮して適宜決定できる。加熱部20としては、水と接触して発熱する物質を充填して形成したものが好ましく、酸化カルシウムを充填して形成したものが特に好ましい。また、加熱部20は、鉄粉と酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよく、金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物又は酸化剤とを仕切り材で仕切って充填して形成してもよい。
【0052】
底部16は、加熱部20の機構に応じて適宜決定すればよい。例えば、加熱部20が水と接触して発熱する物質(酸化カルシウム等)により構成されている場合、底部16には不織布や金属製のメッシュ等を用いることができる。底部16を不織布や金属製のメッシュとすることで、底部16から水を加熱部20内に浸入させて反応熱を発生させ、除菌剤組成物を加熱することができる。
【0053】
燻煙装置10を用いた燻煙方法について説明する。
まず、燻煙装置10を対象空間内に設置する。次いで、加熱部20の機構に応じて加熱部20を発熱させる。例えば、酸化カルシウムを充填した加熱部20が設けられている場合、底部16を水中に浸漬する。これにより、底部16から浸入した水が加熱部20で酸化カルシウムと反応し、200~450℃程度の熱が発生する。
そして、底部16から浸入した水が加熱部20で酸化カルシウムと反応して発生した熱が、燻煙剤容器30の側壁や底壁を介して燻煙剤部32に伝わり、燻煙剤部32の温度が上昇して(A)成分が気化し、(C)成分が熱分解して二酸化炭素が発生し、気化した(A)成分と、(C)成分が熱分解して発生した二酸化炭素と、の蒸気が発生する。この、生じた蒸気とともに(A)成分及び(B)成分が蓋部18の貫通孔を勢いよく通過して対象空間内に(A)成分及び(B)成分が拡散することで、微生物抑制効果を得ることができる。このように、燻煙装置10を用いることで簡便に除菌処理を施すことができる。
【0054】
燻煙方法としては、例えば、金属製容器、セラミック製容器等の容器に本発明の除菌剤組成物を収容し、密閉した対象空間内で、直接的又は間接的に除菌剤組成物を加熱することによって燻煙する方法が挙げられる。
除菌剤組成物を間接的に加熱することで、直接的に加熱するよりも、燻煙時の(A)成分や(B)成分に由来する臭気の低減や、除菌剤組成物の燃えカス等による屋内汚染を低減しやすい。
対象空間としては、特に限定されず、例えば、浴室、居室、押入れ、トイレ等が挙げられる。
【0055】
除菌剤組成物を間接的に加熱する方法としては、除菌剤組成物を燃焼させることなく、(C)成分が熱分解し得る温度まで除菌剤組成物に熱エネルギーを供給できるものであればよく、間接加熱方式の燻煙方法に通常用いられる公知の加熱方法を採用できる。
具体的には、例えば、水と接触して発熱する物質と水とを接触させ、その反応熱を利用して除菌剤組成物を加熱する方法(i)、鉄粉と酸化剤(塩素酸アンモニウム等)との混合による酸化反応、又は金属と該金属よりイオン化傾向の小さい金属酸化物もしくは酸化剤との混合による酸化反応により発生する熱を利用して除菌剤組成物を加熱する方法(ii)等が挙げられる。なかでも、実用性の点から、方法(i)が好ましい。
【0056】
水と接触して発熱する物質としては、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化鉄等が挙げられる。なかでも、水と接触して発熱する物質としては、実用性の点から、酸化カルシウムが好ましい。
【0057】
本実施形態の除菌剤組成物の使用量は、燻煙処理を行う空間の容積に応じて適宜設定すればよく、1mあたり0.1~2.4gが好ましく、0.4~2.0gがより好ましい。除菌剤組成物の使用量が上記下限値以上であると、微生物に対する除菌効果が充分に得られやすい。除菌剤組成物の使用量が上記上限値以下であると、コストを抑制でき、有効成分の飛散率を維持しやすい。
燻煙処理時間(燻煙開始後、対象空間の密閉を解除するまでの時間)は、特に限定されないが、30~120分が好ましく、60~90分がより好ましい。燻煙処理時間が上記下限値以上であると、微生物に対する除菌効果が充分に得られやすい。燻煙処理時間が上記上限値以下であると、燻煙処理の効率を向上しやすい。
【実施例
【0058】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各実施例及び比較例で使用した原料、測定・評価方法は、以下の通りである。
【0059】
[使用原料]
<(A)成分>
A-1:メトフルトリン(商品名:エミネンス(登録商標)、住友化学(株)製)。
A-2:トランスフルトリン(商品名:バイオスリン、住友化学(株)製)。
A-3:フェノトリン(商品名:スミスリン(登録商標)、住友化学(株)製)。
A-4:d・d-Tシフェノトリン(商品名:ゴキラート(登録商標)S、住友化学(株)製)。
【0060】
<(B)成分>
B-1:銀担持ゼオライト系無菌抗菌剤(商品名:ゼオミック(登録商標)AJ10N、銀含量2.5質量%、体積平均粒子径2.5μm、結晶性ゼオライト、(株)シナネンゼオミック製)。
B-2:銀ナノコロイド(商品名:ATOMY BALL-UA、体積平均粒子径15nm、日揮触媒化成(株)製)。
<(B’)成分((B)成分の比較成分)>
B’-1:3-メチル-4-イソプロピルフェノール(IPMP)(商品名:ビオゾール(登録商標)、大阪化成(株)製)。
【0061】
<任意成分>
((C)成分)
C-1:アゾジカルボンアミド(商品名:ビニホール(登録商標)AC#3-K7、永和化成工業(株)製)。
(発熱助剤)
ZnO:酸化亜鉛(日本薬局方 酸化亜鉛、平均粒子径0.6μm、真比重5.6g/cm(20℃)、堺化学工業株式会社製)。
(結合剤)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:メトローズ(登録商標)60SH-50、信越化学工業株式会社製)。
(界面活性剤)
AE-EO-PO:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(PO-EO-POブロックポリマー、商品名:Pluronic RPE1740、ポリオキシプロピレン基の付加モル数13-ポリオキシエチレン基の付加モル数26-ポリオキシプロピレン基の付加モル数13、BASFジャパン(株)製)。
(溶媒)
エタノール:発酵エタノール95度、第一アルコール(株)製。
精製水:日本薬局方品。
(賦香剤)
香料:表1に記載の香料組成物。
【0062】
[実施例1~13、比較例1~2]
<除菌剤組成物(燻煙型除菌剤)の製造>
室温(20℃)条件下において、表2~3に示す組成に従い、各成分をニーダー(S5-2G型、株式会社モリヤマ製)で攪拌混合した後、組成全量を100質量部として10質量部の水を加えて混合し、混合物を得た。得られた混合物を直径2mmの開孔を有するダイスの前押し出し造粒機(EXK-1、株式会社不二パウダル製)を用い造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物をフラッシュミル(FL300、株式会社不二パウダル製)により長さ2~5mmに切断し、70℃に設定した乾燥機(RT-120HL、アルプ株式会社製)により2時間乾燥させ、顆粒状の除菌剤組成物(燻煙型除菌剤)を得た。
底面に不織布を用い略円筒状の本体からなる燻煙剤容器(商品名:水ではじめるバルサン(登録商標)プロEX6~8畳用、ライオン(株)製)に酸化カルシウム56gを充填し加熱部とした。上記燻煙剤容器に各例の除菌剤組成物4.3gを充填し燻煙装置(燻煙剤)を作製した。
【0063】
[実施例14、比較例3~4]
<除菌剤組成物(液体除菌剤)の製造>
室温(20℃)条件下において、表3に示す組成に従い、1Lガラスビーカーにエタノールを入れた後、(A)成分と(B)成分、及び香料を加えて、液体混合物を得た。マグネチックスターラーを用いて、得られた液体混合物を撹拌混合して溶解又は分散させた後、精製水で100質量%に調製し、除菌剤組成物(液体除菌剤)を得た。
得られた各例の除菌剤組成物500gをそれぞれスプレー容器(商品名:ルック(登録商標)キッチン用生ゴミ消臭&防臭スプレー、ライオン(株)製)に充填し、スプレー剤を作製した。なお、実施例14は、参考例である。
【0064】
得られた燻煙剤又はスプレー剤を用いて、以下の除菌効果の評価を行った。結果を表2~3に示す。表中、「剤型」の「I」は、燻煙剤を示し、「II」は、スプレー剤を示す。また、表中、「組成」の単位は、「質量%」であり、純分換算量を示す。表中「-」は、その成分が含まれていないことを示す。
【0065】
[除菌効果の評価]
<燻煙剤での評価>
(真菌に対する除菌効果の評価)
ポテトデキストロース寒天(Difco社製)の斜面培地にて25℃、7日間培養したPhoma(浴室からの分離株)を、滅菌した0.05質量%Tween80(関東化学(株)製)水溶液にて初発菌数が約1×10/mLとなるように調整し菌液とした。この菌液をプラスチック板(FRP板、50mm×50mm)に0.5mL接種し、25℃にて一晩静置して乾燥し、供試用プラスチック板とした。
【0066】
図2に示す評価室100を用い、曝露試験を行った。図2に示すように、1616タイプ(メーターモジュール用)の浴室と同体積で、密閉可能な評価室100(L1=L2=1600mm、H1=2000mm)を対象空間として用意した。評価室100の床102の略中央部に、23mLの水を入れた給水用プラスチック容器110を設置した。評価室100の床102の床隅に、供試用プラスチック板120を設置した。
各例の除菌剤組成物5gを燻煙装置に入れ、この燻煙装置を給水用プラスチック容器110に入れて燻煙を開始し、評価室100を密閉した。発煙開始60分後に、評価室100内の空気を排気して曝露試験を終了した。
【0067】
曝露試験後の供試用プラスチック板120を回収し、回収したプラスチック板とGPLP培地(日本製薬株式会社製)10mLを滅菌プラスチックシャーレ(アズワン株式会社製)に入れた。GPLP培地を滅菌したピペットの先端で撹拌し、プラスチック板から抽出された真菌がGPLP培地に分散された試験液を得た。
得られた試験液を滅菌した生理食塩水で適宜希釈し、その0.1mLをポテトデキストロース寒天培地に塗抹接種し、25℃にて5日間培養した後のコロニー数(α)を計測した。別途、曝露試験に供さない供試用プラスチック板から同様に、GPLP培地に真菌を抽出して対照試験液を調製し、対照試験液を滅菌した生理食塩水で適宜希釈し、その0.1mLをポテトデキストロース寒天培地に塗抹接種して、25℃にて5日間培養した後のコロニー数(β)を計測した。
計測したコロニー数を用い、下記(1)式によりΔlogを求め、その結果を除菌活性値とし、下記の評価基準に従って真菌に対する除菌効果を評価した。
除菌活性値:Δlog=log10β-log10α ・・・(1)
《評価基準》
◎:除菌活性値が4以上。
○:除菌活性値が2以上4未満。
△:除菌活性値が1以上2未満。
×:除菌活性値が1未満。
【0068】
(細菌に対する除菌効果の評価)
トリプトソイ寒天(Difco社製)の平板培地にて30℃、3日間培養したMethylobacterium(浴室からの分離株)を、滅菌した0.05質量%Tween80(関東化学(株)製)水溶液にて初発菌数が約1×10/mLとなるように調整し菌液とした。この菌液をプラスチック板(FRP板、50mm×50mm)に0.5mL接種し、25℃にて一晩静置して乾燥し、供試用プラスチック板とした。
【0069】
上記(真菌に対する除菌効果の評価)と同様の曝露試験を行い、曝露試験後の供試用プラスチック板120を回収した。回収したプラスチック板をGPLP培地に代えて、SCDLP培地(日本製薬株式会社製)10mLと滅菌プラスチックシャーレに入れ、試験液をトリプトソイ寒天培地に塗抹接種して30℃にて3日間培養した以外は、上記(真菌に対する除菌効果の評価)と同様に、除菌活性値を求めた。
求めた除菌活性値を上記(真菌に対する除菌効果の評価)と同様の評価基準で評価し、細菌に対する除菌効果を評価した。
【0070】
<スプレー剤での評価>
(真菌に対する除菌効果の評価)
上記<燻煙剤での評価>と同様に供試用プラスチック板を作製した。内径90mmの滅菌プラスチックシャーレ(アズワン株式会社製)に得られた供試用プラスチック板を、菌液を接種した面を上側に向けて設置した。この供試用プラスチック板に、各例のスプレー剤1mLを噴霧した。噴霧してから5分後にプラスチック板を回収し、上記<燻煙剤での評価>と同様にコロニー数を計測し、上記<燻煙剤での評価>と同様の評価基準で評価し、真菌に対する除菌効果を評価した。
【0071】
(細菌に対する除菌効果の評価)
上記<燻煙剤での評価>と同様に供試用プラスチック板を作製し、上記(真菌に対する除菌効果の評価)と同様にスプレー剤を噴霧し、上記(真菌に対する除菌効果の評価)と同様にプラスチック板を回収した。回収したプラスチック板のコロニー数を上記(真菌に対する除菌効果の評価)と同様に計測し、上記(真菌に対する除菌効果の評価)と同様の評価基準で評価し、細菌に対する除菌効果を評価した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表2~3に示すように、本発明を適用した実施例1~14は、真菌に対する除菌効果の評価及び細菌に対する除菌効果の評価が「◎」又は「○」であった。
これに対し、A/B比が本発明よりも小さい比較例1は、真菌に対する除菌効果の評価及び細菌に対する除菌効果の評価が「△」だった。
A/B比が本発明よりも大きい比較例2は、真菌に対する除菌効果の評価及び細菌に対する除菌効果の評価が「×」だった。
A/B比が本発明よりも大きい比較例3は、真菌に対する除菌効果の評価が「×」で、細菌に対する除菌効果の評価が「△」だった。
A/B比が本発明よりも大きく、(B)成分を含有しない比較例4は、真菌に対する除菌効果の評価が「×」で、細菌に対する除菌効果の評価が「△」だった。
【0076】
これらの結果から、本発明によれば、微生物抑制効果により優れることが分かった。
【符号の説明】
【0077】
10 燻煙装置
12 筐体
14 本体
16 底部
18 蓋部
20 加熱部
30 燻煙剤容器
32 燻煙剤部
100 評価室
102 床
110 給水用プラスチック容器
120 供試用プラスチック板
図1
図2