(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】シール部材の押さえ構造及び血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20220930BHJP
A61M 1/16 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61M1/36 105
A61M1/16 111
(21)【出願番号】P 2018228863
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昂
(72)【発明者】
【氏名】逸見 文俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
(72)【発明者】
【氏名】豊田 将弘
【審査官】土谷 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-027444(JP,A)
【文献】特開2000-257781(JP,A)
【文献】米国特許第04781686(US,A)
【文献】特開昭61-096281(JP,A)
【文献】実開昭54-149038(JP,U)
【文献】特表2017-504389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 1/16
A61M 39/14
F16L 21/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入開口を有し、前記挿入開口の側面に第1の嵌合部が設けられた嵌合部材と、
前記嵌合部材の前記挿入開口に配置されたシール部材と、
前記挿入開口に取り付けられ、前記挿入開口から外に出る方向の第1の力が前記シール部材に作用した場合、前記第1の力が作用する前記シール部材から受けた第2の力によって前記第1の嵌合部と嵌り合う第2の嵌合部を有するキャップと、
を備え、
前記キャップは、前記シール部材と接触する部分に、前記第1の力の方向を前記第2の力の方向に変換する斜面を有する、
シール部材の押さえ構造。
【請求項2】
前記第1の嵌合部は、前記挿入開口の前記側面から凸状に突出する第1の凸部、及び前記側面が凹状に凹む第1の凹部が前記挿入開口の挿入方向上流側から順に並ぶ形状を有し、
前記第2の嵌合部は、前記第1の凸部と嵌り合う第2の凹部、及び前記第1の凹部との嵌め合いにおいて前記挿入開口の挿入方向下流側に向かうにつれて隙間が増加する第2の凸部を有する、
請求項1に記載のシール部材の押さえ構造。
【請求項3】
前記第1の嵌合部は、前記第1の凸部及び前記第1の凹部によってS字形状が形成され、
前記第2の嵌合部は、前記第2の凹部及び前記第2の凸部によってS字形状が形成される、
請求項2に記載のシール部材の押さえ構造。
【請求項4】
前記挿入開口の縁に直交するように切断した断面において、
前記嵌合部材の上面を基準とした基準線と、前記第1の力の方向を前記第2の力の方向に変換する前記キャップの斜面の外形線を延長した直線と、のなす第1の角度θ
1、及び
前記基準線と、S字形状を形成する前記第1の凸部と前記第1の凹部の変曲点に接する直線と、のなす第2の角度θ
2は、
30°≦θ
1≦60°を満たすと共に、θ
1≦θ
2≦90°を満たす、
請求項2又は3に記載のシール部材の押さえ構造。
【請求項5】
前記挿入開口の縁に直交するように切断した断面において、
前記嵌合部材の上面を基準とした基準線と、S字形状を形成する前記第1の凸部と前記第1の凹部の変曲点に接する直線と、のなす第2の角度θ
2、及び前記基準線と、S字形状を形成する前記第2の凹部と前記第2の凸部の変曲点に接する直線と、のなす第3の角度θ
3は、
θ
2≦θ
3≦90°を満たす、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のシール部材の押さえ構造。
【請求項6】
前記嵌合部材は、中空形状のハウジング、前記ハウジング内を第1の空間と第2の空間に分けるダイヤフラム、及び前記第1の空間に流入する流体の圧力による前記ダイヤフラムの変形に伴って前記第2の空間の気体を出力する出力ポートを有するチャンバの前記出力ポートと接続される継手であり、
前記シール部材は、前記出力ポートの側面と前記継手の側面に挟まれ、前記チャンバと前記継手を接続したり、抜いたりする際に回転しながら移動する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシール部材の押さえ構造。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシール部材の押さえ構造を有し、
人間の血液を浄化する血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材の押さえ構造、血液浄化装置及びキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、透析治療(血液浄化治療)において採取した患者の血液を体外循環させて再び体内に戻す血液回路における血液の圧力を検出するために用いられる圧力ポッドが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この圧力ポッドは、ダイヤフラムによって内部が通過流体側と気体側とに分かれており、気体側に圧力センサが接続されている。圧力センサは、通過流体である血液の圧力によるダイヤフラムの動きによって生じる圧力を検出する。血液回路における血液の圧力は、圧力センサが検出した圧力に基づいて検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の圧力ポッドは、血液が内部を循環することから一度使用すると破棄される。そこで例えば、従来の圧力ポッドがシール部材を介在させて圧力センサと接続される場合、圧力ポッドを接続したり、抜いたりするので、所定のサイクルでシール部材を交換する必要がある。シール部材の交換作業性が悪いと、シール部材を工具で傷つけたり、当該作業にかかる時間が増えたりする可能性がある。
【0006】
従って本発明の目的は、メンテナンス性のよいシール部材の押さえ構造、血液浄化装置及びキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のシール部材の押さえ構造は、挿入開口を有し、前記挿入開口の側面に第1の嵌合部が設けられた嵌合部材と、
前記嵌合部材の前記挿入開口に配置されたシール部材と、
前記挿入開口に取り付けられ、前記挿入開口から外に出る方向の第1の力が前記シール部材に作用した場合、前記第1の力が作用する前記シール部材から受けた第2の力によって前記第1の嵌合部と嵌り合う第2の嵌合部を有するキャップと、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記キャップは、前記シール部材と接触する部分に、前記第1の力の方向を前記第2の力の方向に変換する斜面を有する、
請求項1に記載のシール部材の押さえ構造である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記第1の嵌合部は、前記挿入開口の前記側面から凸状に突出する第1の凸部、及び前記側面が凹状に凹む第1の凹部が前記挿入開口の挿入方向上流側から順に並ぶ形状を有し、
前記第2の嵌合部は、前記第1の凸部と嵌り合う第2の凹部、及び前記第1の凹部との嵌め合いにおいて前記挿入開口の挿入方向下流側に向かうにつれて隙間が増加する第2の凸部を有する、
請求項1又は2に記載のシール部材の押さえ構造である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記第1の嵌合部は、前記第1の凸部及び前記第1の凹部によってS字形状が形成され、
前記第2の嵌合部は、前記第2の凹部及び前記第2の凸部によってS字形状が形成される、
請求項3に記載のシール部材の押さえ構造である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記挿入開口の縁に直交するように切断した断面において、
前記嵌合部材の上面を基準とした基準線と、前記第1の力の方向を前記第2の力の方向に変換する前記キャップの斜面の外形線を延長した直線と、のなす第1の角度θ1、及び
前記基準線と、S字形状を形成する前記第1の凸部と前記第1の凹部の変曲点に接する直線と、のなす第2の角度θ2は、
30°≦θ1≦60°を満たすと共に、θ1≦θ2≦90°を満たす、
請求項3又は4に記載のシール部材の押さえ構造である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記挿入開口の縁に直交するように切断した断面において、
前記嵌合部材の上面を基準とした基準線と、S字形状を形成する前記第1の凸部と前記第1の凹部の変曲点に接する直線と、のなす第2の角度θ2、
前記基準線と、S字形状を形成する前記第2の凹部と前記第2の凸部の変曲点に接する直線と、のなす第3の角度θ3は、
θ2≦θ3≦90°を満たす、
請求項3乃至5のいずれか1項に記載のシール部材の押さえ構造である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記嵌合部材は、中空形状のハウジング、前記ハウジング内を第1の空間と第2の空間に分けるダイヤフラム、及び前記第1の空間に流入する流体の圧力による前記ダイヤフラムの変形に伴って前記第2の空間の気体を出力する出力ポートを有するチャンバの前記出力ポートと接続される継手であり、
前記シール部材は、前記出力ポートの側面と前記継手の側面に挟まれ、前記チャンバと前記継手を接続したり、抜いたりする際に回転しながら移動する、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシール部材の押さえ構造である。
【0014】
請求項8に記載の血液浄化装置は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の押さえ構造を有し、
人間の血液を浄化する。
【0015】
請求項9に記載の発明のキャップは、嵌合対象である嵌合部材の挿入開口に配置されたシール部材が前記挿入開口から外に出る方向の第1の力を受けた場合、前記第1の力が作用する前記シール部材から受けた第2の力によって前記嵌合部材に設けられた第1の嵌合部と嵌り合う第2の嵌合部を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1、8及び9の発明によれば、メンテナンス時におけるシール部材の交換作業性が向上し、当該作業時におけるシール面の傷を抑制することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、挿入開口からのシール部材の抜けを防止することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、挿入開口からのシール部材の抜けを防止すると共にキャップの取り外しが容易となる。
【0019】
請求項4の発明によれば、キャップの取り外しがさらに容易となる。
【0020】
請求項5の発明によれば、キャップが意図せず外れることが抑制される。
【0021】
請求項6の発明によれば、キャップの取り外しが容易となる。
【0022】
請求項7の発明によれば、シール部材の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(a)は、第1の実施の形態に係るシール部材の押さえ構造が採用された血液浄化装置の一例を示す概略図であり、
図1(b)は、血液浄化装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は、第1の実施の形態に係る接続部が接続されたチャンバの一例を示す斜視図であり、
図2(b)は、シール部材の押さえ構造の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3(a)は、第1の実施の形態に係るチャンバの断面の一例を示す断面図であり、
図3(b)は、接続部及びOリングの一例を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)は、第1の実施の形態に係る接続構造のチャンバを挿入する際のOリングの位置の一例を説明するための断面図であり、
図4(b)は、チャンバを抜く際のOリングの位置の一例を説明するための断面図である。
【
図5】
図5(a)は、第1の実施の形態に係るキャップの一例を説明するための断面図であり、
図5(b)は、キャップの一例を説明するための断面を拡大した断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第1の実施の形態に係るキャップの上面図の一例であり、
図6(b)は、変形例に係るキャップの上面図の一例である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態に係るOリングの交換の一例を説明するための概略図である。
【
図8】
図8(a)は、第1の実施の形態に係るOリングのつぶし率の一例について説明するための概略図であり、
図8(b)は、Oリングが回転しない場合のダメージを受ける領域の一例について説明するための模式図であり、
図8(c)は、Oリングが回転する場合のダメージを受ける領域の一例について説明するための模式図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(d)は、第1の実施の形態に係る接続構造におけるチャンバと接続部の接続の一例を示す概略図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(c)は、第1の実施の形態に係る接続構造におけるチャンバと接続部の接続の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11(a)は、第2の実施の形態に係るキャップの一例を示す概略図であり、
図11(b)は、キャップの断面の一例の拡大図であり、
図11(c)は、第3の実施の形態に係る第1の嵌合部と第2の嵌合部の一例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、第4の実施の形態に係る血液浄化装置の構成の一例を示す模式図である。
【
図13】
図13(a)は、第5の実施の形態に係る接続構造の一例を示す斜視図であり、
図13(b)は、キャップの一例を示す断面図であり、
図13(c)は、継手の一例を示す側面図である。
【
図14】
図14(a)は、第5の実施の形態に係るキャップが取り付けられた継手の一例を示す断面図であり、
図14(b)は、チャンバを接続部に接続した一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1の実施の形態]
(血液浄化装置9の概要)
図1(a)は、第1の実施の形態に係るシール部材の押さえ構造が採用された血液浄化装置の一例を示す概略図であり、
図1(b)は、血液浄化装置の構成の一例を示す模式図である。
図2(a)は、第1の実施の形態に係る接続部が接続されたチャンバの一例を示す斜視図であり、
図2(b)は、シール部材の押さえ構造の一例を示す概略図である。
図3(a)は、第1の実施の形態に係るチャンバの断面の一例を示す断面図であり、
図3(b)は、接続部及びOリングの一例を示す断面図である。
図4(a)は、第1の実施の形態に係る接続構造のチャンバを挿入する際のOリングの位置の一例を説明するための断面図であり、
図4(b)は、チャンバを抜く際のOリングの位置の一例を説明するための断面図である。なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率は、実際の比率とは異なる場合がある。数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下の意味で用いるものとする。
【0025】
図1(a)に示す血液浄化装置9は、透析治療を行うためのものである。この血液浄化装置9は、例えば、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、圧力検出部10、動脈側血液回路11と、静脈側血液回路12と、ダイアライザ13と、透析液導入ライン14と、透析液排出ライン15と、複式ポンプ16とを備えている。このうち、圧力検出部10、透析液導入ライン14、透析液排出ライン15、及び複式ポンプ16は、本体90として構成される。本体90には、動脈側血液回路11、静脈側血液回路12、及びダイアライザ13が着脱可能に装着される。
【0026】
動脈側血液回路11は、患者の動脈に穿刺される動脈側穿刺針110と、動脈側穿刺針110が接続されるコネクタ111と、バルブの開閉により血液の流れを制御するクランプ112と、しごき型ポンプである血液ポンプ113と、動脈側血液回路11に接続された圧力検出部10と、を備えて概略構成されている。この動脈側血液回路11は、ダイアライザ13の血液導入口13aに接続されている。
【0027】
静脈側血液回路12は、患者の静脈に穿刺される静脈側穿刺針120と、静脈側穿刺針120が接続されるコネクタ121と、この血液回路を流れる流体が血液であるか判別する血液判別部122と、バルブの開閉により血液の流れを制御するクランプ123と、この血液回路に流れる流体に混入した気泡を検出する気泡検出部124と、流体に混入した気泡を分離する静脈チャンバ125と、静脈側血液回路12に接続された圧力検出部10と、を備えて概略構成されている。この静脈側血液回路12は、ダイアライザ13の血液導出口13bに接続されている。
【0028】
患者の血液は、動脈側穿刺針110及び静脈側穿刺針120を穿刺した状態で血液ポンプ113を可動させると、動脈側血液回路11を通ってダイアライザ13に至った後、ダイアライザ13によって血液浄化処理が行われ、静脈側血液回路12を通って患者の体内に戻るようになっている。
【0029】
ダイアライザ13は、血液導入口13a、血液導出口13b、透析液導入口13c及び透析液導出口13dを備えている。透析液導入口13c及び透析液導出口13dは、血液浄化装置9の本体90から伸びる透析液導入ライン14及び透析液排出ライン15にそれぞれ接続されている。
【0030】
ダイアライザ13は、複数の中空糸を有し、この中空糸によって血液を浄化するように構成されている。またダイアライザ13は、血液浄化膜を介して血液導入口13aと血液導出口13bを繋ぐ血液流路と、透析液導入口13cと透析液導出口13dを繋ぐ透析液流路と、が形成されている。血液浄化膜を構成する中空糸は、外周面と内周面とを貫通した微小な孔が形成されて中空糸膜を形成しており、この中空糸膜を介して血液中の不純物などが透析液内に透過する。
【0031】
複式ポンプ16は、透析液導入ライン14及び透析液排出ライン15に跨って血液浄化装置9の本体90に配置されている。また透析液排出ライン15においては、複式ポンプ16をバイパスするように除水ポンプ17が接続されている。この除水ポンプ17は、ダイアライザ13を流れる患者の血液から水分を除去するために設けられている。
【0032】
透析液導入ライン14の一端は、ダイアライザ13に接続され、他端は、所定濃度の透析液を調整する濃度調整手段に接続されている。なお、濃度調整手段は、血液浄化装置9、又は血液浄化装置に透析液を供給する透析液供給装置に配置される。また透析液排出ライン15の一端は、ダイアライザ13に接続され、他端は、排液手段に接続されている。透析液は、透析液供給装置から透析液導入ライン14を通ってダイアライザ13に至った後、透析液排出ライン15を通って排液手段に送られる。
【0033】
動脈側血液回路11及び静脈側血液回路12には、圧力検出部10が接続されている。この圧力検出部10は、動脈側血液回路11及び静脈側血液回路12に流れる血液の圧力PRを検出するように構成されている。この圧力検出部10は、血液浄化装置9の本体90のパネル101内に配置された圧力センサ10aと、接続部3と、がチューブ10bによって接続されて構成されている。
【0034】
この接続部3は、シール部材の押さえ構造1を有している。具体的には、シール部材の押さえ構造1は、
図2(a)~
図3(b)に示すように、挿入開口301を有し、挿入開口301の側面302に第1の嵌合部307が設けられた部材と、部材の挿入開口301に配置されたシール部材と、挿入開口301に取り付けられ、挿入開口301から外に出る方向の第1の力がシール部材に作用した場合、第1の力が作用するシール部材から受けた第2の力によって第1の嵌合部307との嵌め合いにより形成された接触面積が増加する第2の嵌合部48を有するキャップ4と、を備えて構成されている。
【0035】
本実施の形態の部材は、継手30である。この継手30は、チャンバ2の出力ポート27と接続される。チャンバ2は、
図3(a)に示すように、中空形状のハウジング20、ハウジング20内を第1の空間23と第2の空間24に分けるダイヤフラム25、及び第1の空間23に流入する流体(血液R)の圧力によるダイヤフラム25の変形に伴って第2の空間24の気体Kを出力する出力ポート27を備えている。なお本実施の形態の流体は、血液であるがこれに限定されず、透析液などの他の流体であっても良い。また圧力検出部10は、血液Rの圧力P
Rによるダイヤフラム25の変形に基づく気体Kの圧力P
Kを検出することで、間接的に血液Rの圧力P
Rを検出するように構成されている。
【0036】
本実施の形態のシール部材は、リング形状を有するOリング5であるがこれに限定されず、断面が円形状であり、接続したり、抜いたりする際、つまり挿抜する際に回転可能であれば良い。なおOリング5は、チャンバ2の挿抜方向に沿って回転しながら移動する。具体的には、Oリング5は、チャンバ2が挿入される際、
図4(a)の紙面において内側が挿入方向に移動するように、つまり反時計回りに回転する。そしてOリング5は、チャンバ2が抜かれる際、
図4(b)の紙面において内側が抜去方向に移動するように、つまり時計回りに回転する。この挿抜方向とは、挿入方向が
図4(a)の紙面において上から下方向(左の矢印の方向)であり、抜去方向が
図4(b)の紙面において下から上方向(左の矢印)である。なお
図4(a)及び
図4(b)の中央の矢印は、Oリング5が回転しながら移動する方向を示している。
【0037】
(チャンバ2の構成)
チャンバ2は、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、第1のハウジング21及び第2のハウジング22によってハウジング20が形成されている。第1のハウジング21には、出力ポート27が一体に形成されている。第2のハウジング22には、ドーム形状を有する上面220に接続ポート221及び接続ポート222が一体に形成されている。
【0038】
このハウジング20は、射出成型性に優れ、また機械加工性が良く、さらに表面粗さを調整し易い材料を用いて形成される。またハウジング20は、例えば、超音波溶着が可能な材料を用いて形成される。そしてハウジング20は、ヒト体液が触れる可能性があるので、生体毒性がなく、絶縁性の高い材料を用いて形成される。従ってハウジング20は、例えば、ポリカーボネートを用いて形成される。なおチャンバ2は、血液が第1の空間23に流入することから再利用せず、使い捨てとなる。
【0039】
第1のハウジング21は、その内部の底面210に流路211が形成されている。またこの底面210は、流路211上にフィルタ26が配置されている。このフィルタ26は、第2の空間24内に流入した血液などが流路211に流れ込まないように設けられている。流路211は、第2の空間24内の気体Kが流れる通路である。
【0040】
また第1のハウジング21は、底面280を有する筒形状の挿入部28を有し、底面280から突出するように出力ポート27が設けられている。出力ポート27は、筒形状の一例として円筒形状を有し、その内部が流路211となっている。また出力ポート27は、先端にテーパー処理が施されてテーパー面271が形成されている。なお、出力ポート27の先端は、テーパー面に限らず、例えばR形状であっても良い。また出力ポート27は、円筒形状に限定されず、角筒形状であっても良い。
【0041】
挿入部28は、出力ポート27を囲む円筒形状を有し、出力ポート27と共に一体に形成されている。挿入部28の開口281には、継手30が挿入される。
【0042】
さらに第1のハウジング21は、例えば、
図2(a)に示すように、挿入部28の側面282から突出する突起29が設けられている。この突起29は、例えば、
図2(b)に示す接続部3のクランク溝32に挿入される。突起29は、接続部3のクランク溝32の数に応じて2つ形成されている。なお変形例として、突起29が接続部3側に設けられ、クランク溝32が第1のハウジング21側に設けられても良い。
【0043】
第2のハウジング22の接続ポート221及び接続ポート222は、動脈側血液回路11又は静脈側血液回路12に接続される。動脈側血液回路11及び静脈側血液回路12を流れる血液Rは、例えば、接続ポート221から第1の空間23に流入してダイヤフラム25に圧力PRを付加し、接続ポート222から流出する。
【0044】
ダイヤフラム25は、例えば、
図3(a)に示すように、ドーム形状を有し、その端部が第1のハウジング21及び第2のハウジング22に挟まれることで、ハウジング20に取り付けられている。ダイヤフラム25は、第1の空間23及び第2の空間24の圧力変化に追従して変位又は変形可能な柔軟な材料を用いて形成されている。ダイヤフラム25は、例えば、血液Rと気体Kとを遮断することが可能なシリコンゴムなどの合成ゴムシートや塩化ビニルシートなどの可撓性シートを用いて形成される。
【0045】
(接続部3の構成)
接続部3は、例えば、
図2(b)及び
図3(b)に示すように、底面310を有する筒形状のガイド部31を有し、底面310から突出するように継手30が設けられ、ガイド部31の開口311にチャンバ2の挿入部28が挿入されてチャンバ2と接続するように構成されている。なお本実施の形態の継手30とガイド部31は、別の部材として形成されているがこれに限定されず、一体で形成されても良い。
【0046】
接続部3は、血液浄化装置9に取り付けられているので、チャンバ2と異なり、使い捨てされない。そこで接続部3は、防錆性、剛性、耐薬品性、対候性が高い材料を用いて形成される。そのため接続部3の継手30は、例えば、SUS316やSUS304などの硬質材料であるステンレス鋼を用いて細長い円筒形状に形成されているがこれに限定されず、非金属であっても良い。またガイド部31は、継手30と同様に、SUS316やSUS304などのステンレス鋼を用いて形成されている。なお本実施の形態の継手30は、ガイド部31の挿入孔315に圧入されている。また継手30は、円筒形状に限定されず、角筒形状であっても良い。
【0047】
継手30は、例えば、
図3(b)に示すように、接続相手(出力ポート27)と対向する端部300に設けられ、Oリング5の抜け止めとなると共に、接続相手を抜いた後のOリング5の位置を規定するキャップ4が取り付けられている。また継手30は、キャップ4に対向し、キャップ4とOリング5の直径Wより離れた底面303を有している。
【0048】
具体的には、継手30は、チャンバ2と対向する端部300にOリング5が挿入されると共に気体Kの流路305と繋がる挿入開口301を有している。この挿入開口301の先端側には、キャップ4が取り付けられる。この挿入開口301は、出力ポート27の挿入方向に直角な断面の形状が円形であり、流路305の付近で半径が小さくなる先端領域304を有し、この先端領域304と流路305とが繋がっている。この先端領域304には、出力ポート27の端部272が挿入される。また継手30の終端部314は、圧力検出部10の圧力センサ10aに繋がれたチューブ10bが接続されている。
【0049】
継手30の端部300の上部は、外側にテーパー面306が形成され、内側に第1の嵌合部307が形成されている。テーパー面306は、キャップ4との間にスペースを作るために形成されている。このスペースに工具を差し込んでガイド部31を支点にてこの原理を用いることにより、キャップ4を継手30から容易に取り外すことができる。
【0050】
第1の嵌合部307は、挿入開口301の側面302から凹んだ第1の凹部307aと、上部が側面302よりも直径が大きく、第1の凹部307aより突出する第1の凸部307bと、により構成され、第1の凹部307aと第1の凸部307bとがS字形状となるように滑らかな曲線で繋がっている。この第1の嵌合部307は、挿入開口301の周方向に渡って形成されている。
【0051】
言い換えるなら第1の嵌合部307は、挿入開口301の側面302から凸状に突出する第1の凸部307b、及び側面302が凹状に凹む第1の凹部307aが挿入開口301の上側から順に並ぶ形状を有している。
【0052】
ガイド部31は、上面312の開口311側にテーパー面313が設けられている。ガイド部31の上面312は、
図3(b)に示すように、キャップ4よりも高く位置している。従って掃除などの際に布などが誤ってキャップ4に触れて継手30から外れるトラブルが少ない。
【0053】
またガイド部31は、チャンバ2の挿入部28の挿入を案内すると共にチャンバ2が挿入され、継手30と出力ポート27がOリング5を介して接続された状態を保持するためのクランク溝32を有している。
【0054】
このクランク溝32は、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、チャンバ2を挿入する方向に沿って形成された縦溝320と、縦溝320に対して直角方向に形成された横溝321と、を備えている。このクランク溝32は、継手30を挟んで対向するように設けられている。
【0055】
チャンバ2の突起29が縦溝320に挿入され、出力ポート27と継手30とが接続された後、
図2(b)の紙面左方向にチャンバ2を回転させて突起29を横溝321に嵌め込めば、チャンバ2と接続部3との接続がロックされる。なおガイド部31の開口311の側面311aには、突出する爪部311bが形成され、チャンバ2の第1のハウジング21に設けられた凸部を乗り越えることで、接続部3に対するチャンバ2の回転をロックする。
【0056】
(キャップ4の構成)
図5(a)は、第1の実施の形態に係るキャップの一例を説明するための断面図であり、
図5(b)は、キャップの一例を説明するための断面を拡大した断面図である。
図6(a)は、第1の実施の形態に係るキャップの上面図の一例であり、
図6(b)は、変形例に係るキャップの上面図の一例である。
図7は、第1の実施の形態に係るOリングの交換の一例を説明するための概略図である。
【0057】
キャップ4は、例えば、弾性、靱性、耐薬品性、耐候性が高い材料を用いて形成される。本実施の形態のキャップ4は、例えば、ポリプロピレンを用いて形成されている。
【0058】
キャップ4は、例えば、
図4(a)~
図5(b)に示すように、上部40と下部41とを備えている。上部40は、円板形状を有している。上部40は、挿入開口45の上側の角が丸く形成されている。
【0059】
下部41の挿入開口45側には、上部40と段差46が形成されている。そして下部41は、Oリング5が接触する端部が斜面47となっている。この斜面47は、
図4(b)に示すように、Oリング5に作用する第1の力F
1の方向を第2の力F
2の方向に変換する。またキャップ4は、継手30の第1の嵌合部307と嵌め合う第2の嵌合部48が形成されている。
【0060】
この第2の嵌合部48は、第1の凸部307bと嵌り合う第2の凹部48b、及び第1の凹部307aとの嵌め合いにおいて挿入開口301の下側に向かうにつれて隙間が増加する第2の凸部48aを有する。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1の嵌合部307の第1の凹部307aと第2の嵌合部48の第2の凸部48aは、嵌り合わず、隙間が生じるようになっている。この隙間は、上述のてこの原理を用いてキャップ4を外す際、キャップ4が撓むのを許容するように設けられている。
【0061】
キャップ4は、例えば、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、上部40の端面40cが継手30の側面30a以上であることが好ましい。この上部40の端面40cが側面30aの内側である場合、工具を差し込む隙間7が小さくなり、またキャップ4のたわみ量が小さくなるので、キャップ4を外し難くなる。
【0062】
Oリング5は、後述するように、継手30の挿入開口301の幅よりも大きい外周の直径を有する。従ってOリング5は、挿入開口301に挿入されると、自重で下がり難い。挿入されたチャンバ2を接続部3から抜く場合、
図4(b)に矢印で示すように、上向きに出力ポート27が移動するのにつれてOリング5も上方向に回転しながら移動する。この移動によってOリング5には、第1の力F
1が作用する。そしてOリング5は、キャップ4の斜面47に接触する。斜面47は、主に、この斜面47に垂直な方向、つまり斜面47の法線方向と逆向きの方向に第1の力F
1を変換して第2の力F
2を生成する。この第2の力F
2は、キャップ4を第1の嵌合部307に押し付ける力であってキャップ4の第2の嵌合部48と第1の嵌合部307との嵌め合いが強固となる方向の力である。また第2の力F
2は、キャップ4及びOリング5が円形であるので、キャップ4に放射状に作用する。従ってシール部材の押さえ構造1は、継手30からOリング5が抜け難い構造を有している。
【0063】
またチャンバ2を接続部3から抜いた後、
図4(a)に示すように、Oリング5は、挿入開口301の上部に位置する。そしてチャンバ2を接続部3に挿入する場合、
図4(a)に矢印で示すように、下向きに出力ポート27が移動するのにつれてOリング5も下方向に回転しながら移動し、底面303で移動が停止する。
【0064】
図4(a)に示すように、挿入開口301の縁に直交するように切断した断面において、第1の角度θ
1は、継手30の上面309を基準とした基準線Sと、第1の力F
1の方向を第2の力F
2の方向に変換するキャップ4の斜面47の外形線を延長した直線Lと、のなす角度であるとする。また第2の角度θ
2は、基準線Sと、S字形状を形成する第1の凸部307bと第1の凹部307aの変曲点に接する直線Mと、のなす角度であるとする。この第1の角度θ
1と第3の角度θ
3は、
30°≦θ
1≦60°を満たすと共に、θ
1≦θ
2≦90°を満たす。この関係が満たされる場合、チャンバ2を抜去する際、Oリング5がキャップ4の斜面47を押してキャップ4の抜けを防止する。
【0065】
また
図4(a)に示すように、挿入開口301の縁に直交するように切断した断面において、第3の角度θ
3は、
図4(a)に示すように、基準線Sと、S字形状を形成する第2の凹部48bと第2の凸部48aの変曲点に接する直線Nと、のなす角度であるとする。この第2の角度θ
2と第3の角度θ
3は、
θ
2≦θ
3≦90°を満たす。この関係が満たされる場合、キャップ4の取り外しが容易となる。
【0066】
さらに第1の角度θ1及び第2の角度θ2は、第2の力F2が第1の嵌合部307と第2の嵌合部48を嵌め合わせる方向の力となるため、θ1≦θ2を満たす。
従って第1の角度θ1~第3の角度θ3は、
30°≦θ1≦60°を満たすと共にθ1≦θ2≦θ3≦90°を満たす。
なお45°<θ2≦θ3<90°である方がより好ましい。
【0067】
図5(b)に示すキャップ4は、上部40の下面40bと第2の凸部48aの間の角度θ
aが上述のθ
3に相当し、45°<θ
a≦90°を満たしている。また、斜面47の角度θ
bは、上述のθ
1に相当し、30°≦θ
b≦60°を満たしている。
【0068】
継手30の第1の嵌合部307とキャップ4の第2の嵌合部48との接触している長さをδ(嵌合長)とした場合、
図4(a)に示すように、嵌合長δの値が0.1~0.2mmを超える、つまりキャップ4のたわみ量がこの嵌合長δの値を超えると、継手30からキャップ4が外れる。なおこの嵌合長δは、この断面図において接触面積の短手方向の幅を示している。接触面積は、およそこの幅(δ)を有する円環の面積となる。
【0069】
図7に示すように、キャップ4と継手30の間に形成された隙間7に工具8の先端80を差し込み、ガイド部31を支点として、てこの原理によって力を加えると、キャップ4がたわんでたわみ量が嵌合長δを超えてキャップ4が外れる。
【0070】
Oリング5が上向きの第1の力F
1を受けた際、例えば、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第1の嵌合部307と第2の嵌合部48の接触面積が大きくなり、嵌合長δも大きくなる。従ってキャップ4のたわみ量が、通常よりも大きくないと嵌合長δを超えないので、キャップ4が外れ難くなる。
【0071】
本実施の形態のキャップ4は、
図6(a)に示すように、リング形状を有するがこれに限定されない。例えば、
図6(b)に示すように、変形例としてのキャップ4は、一部に切欠49が形成されている。変形例のキャップ4は、この切欠49の距離を縮めることによって継手30から外れる。
【0072】
(Oリング5の構成)
図8(a)は、第1の実施の形態に係るOリングのつぶし率の一例について説明するための概略図であり、
図8(b)は、Oリングが回転しない場合のダメージを受ける領域の一例について説明するための模式図であり、
図8(c)は、Oリングが回転する場合のダメージを受ける領域の一例について説明するための模式図である。
【0073】
Oリング5は、耐摩耗性、耐薬品性、弾性(低い圧縮永久歪み)、耐候性が高い材料を用いてリング形状に形成される。さらにOリング5は、低摩擦、つまり摩擦係数μが小さい、つまり摩擦抵抗が小さい材料が良い。本実施の形態のOリング5は、ゴム硬度が50°~80°であり、ねじれ方向に均等に回転しうるフッ素ゴムを用いてリング形状に形成されている。なおOリング5は、シール部材としての役割を果たすのであれば材質を問わず、表面をコーティングすることによって摩擦抵抗を低くされても良い。
【0074】
ここでチャンバ2の出力ポート27の幅D1、継手30の挿入開口301の直径D2、Oリング5の直径Wを用いると、以下の式(1)に示す関係がある。
0<1-(D2-D1)/2W<α・・・(1)
この式(1)を満足する場合、Oリング5がシール性を保ちながら挿抜に対して回転して移動する。一般的なつぶし量は、およそ8~25%である。閾値αは、出力ポート27、継手30及びOリング5の材料や寸法、表面状態によって異なる値となる。なお、一般的なつぶし量は、およそ8~25%であるが(“1-(D2-D1)/2W”では0.08~0.25である)、本実施の形態のつぶし量は、例えば、十数%である。
【0075】
図8(b)に示すように、Oリング5が取り付けられる取付溝30bが固定壁30aに形成され、この取付溝30bの第1のストッパ30c(上面)と第2のストッパ30d(下面)に接触することによって、Oリング5が回転不能に拘束される場合、摺動部材27aがOリング5と接触しながら下方向に移動すると、Oリング5が回転できないので、摺動部材27aと擦れ合う領域55が大きなダメージを受ける。
【0076】
一方
図8(c)に示すように、取付溝30bの第1のストッパ30c(上面)と第2のストッパ30d(下面)に接触しても、Oリング5が回転不能に拘束されない場合、摺動部材27aがOリング5と接触しながら下方向に移動すると、Oリング5が回転しながら下に移動するので、ダメージを受ける領域55が取付溝30b側と摺動部材27a側とに分散する。つまり、
図8(c)に示す領域55は、
図8(b)に示す領域55と比べて、広範囲となる。従ってOリング5は、挿抜による表面あれが発生し難くなり、ダメージが小さく、挿抜耐久性が高く長寿化する。
【0077】
図8(a)に示すように、Oリング5が移動可能な距離Lは、出力ポート27がOリング5に接触してから接続が終了するまでのストロークに応じて定められ、Oリング5の直径Wよりも大きい。なお距離Lは、キャップ4の斜面47の上部から底面303までの距離である。
【0078】
上述のように、チャンバ2は、使い捨てである。しかし接続部3は、血液浄化装置9の本体90に取り付けられているため、使い捨てとはならない。Oリング5は、コスト面から使い捨てするよりも繰り返し使える方が良いので、接続部3に配置されるが何度も挿抜を繰り返すと劣化し、圧力もれが生じて検出精度が低下する。本実施の形態のシール部材の押さえ構造1は、Oリング5が転がりながら移動するように構成されているので、検出精度が低下するまでの寿命が長くなる。
【0079】
(チャンバ2と接続部3の取り付けについて)
図9(a)~
図9(d)は、第1の実施の形態に係る接続構造におけるチャンバと接続部の接続の一例を示す概略図である。
図10(a)~
図10(c)は、第1の実施の形態に係る接続構造におけるチャンバと接続部の接続の一例を示す断面図である。接続部3は、血液浄化装置9の本体90に固定されているとして説明する。
【0080】
図9(a)及び
図10(a)に示すように、チャンバ2の挿入部28の先端を接続部3の開口311に挿入し、接続部3の縦溝320とチャンバ2の突起29の位置を合わせる。この際、チャンバ2の挿入部28は、ガイド部31にガイドされて開口311内に挿入される。
【0081】
次に
図9(b)及び
図10(b)に示すように、チャンバ2を接続部3にさらに押し込むと、出力ポート27のテーパー面271にOリング5が接触する。シール部材の押さえ構造1は、ガイド部31によるガイドが始まって出力ポート27がOリング5に接触するまでの距離が長い、つまり挿入部28が開口311にガイドされながら移動する距離を十分長くすることにより、チャンバ2の傾きを抑制し、出力ポート27を垂直にOリング5の挿入開口50に挿入することができる。この距離が短い場合、出力ポート27が傾いてOリング5に挿入される可能性がある。
図10(a)に示すように、ガイド部31による挿入部28のガイド開始時において、このガイド開始点からOリング5の頂点までの距離L
2は、出力ポート27の先端から挿入部28の下面283までの距離L
1より長い。
【0082】
次に
図9(c)及び
図10(c)に示すように、チャンバ2を接続部3にさらに押し込むと、チャンバ2の下面183が接続部3の底面310に接触し、挿入が終了する。この際、出力ポート27がOリング5を下に押し下げながら移動するので、Oリング5が回転しながら下に移動する。そしてOリング5は、継手30の底面303に接触する。この際、チャンバ2の突起29が横溝321に移動可能となる。
【0083】
次に
図9(d)に示すように、チャンバ2を回転させて突起29を横溝321に移動させ、チャンバ2と接続部3とをロックする。チャンバ2を抜く際は、上記の手順を逆に行う。Oリング5は、出力ポート27の移動に応じて上方向に回転しながら移動し、キャップ4と接触する位置に留まる。
【0084】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係るシール部材の押さえ構造1は、メンテナンス費用を抑制することができる。具体的には、シール部材の押さえ構造1は、Oリング5の抜けをキャップ4で押さえている。このキャップ4は、工具を用いて容易に外すことができるので、Oリング5の交換時にかかる時間を短縮することができる。従ってシール部材の押さえ構造1は、メンテナンス時におけるOリング5の交換作業性が向上し、当該作業時におけるOリング5のシール面51(Oリング5の表面)の傷を抑制することができる。
【0085】
シール部材の押さえ構造1は、第1の嵌合部307と第2の嵌合部48とがS字形状を有しているので、この構成を採用しない場合と比べて、外しやすくなっている。従ってシール部材の押さえ構造1は、キャップ4が容易に外れてOリング5を交換することができるので、外し難いものと比べて、Oリング5を無理に引き抜こうとして継手30の側面302を工具等で傷つけるようなことが抑制される。
【0086】
シール部材の押さえ構造1は、チャンバ2を継手30から取り外す際、Oリング5に対して抜ける方向に力が付加されてもキャップ4の第2の嵌合部48を継手30の第1の嵌合部307に押し付ける力に変換されるので、この構成を採用しない場合と比べて、挿抜の繰り返しによってOリング5が意図せず外れることが抑制される。
【0087】
シール部材の押さえ構造1は、チャンバ2を接続部3に挿抜する際、出力ポート27とOリング5が接触してOリング5が回転しながら移動するので、シール部材が回転しない場合と比べて、チャンバ2の挿抜によるOリング5のダメージが少ない、つまりOリング5のシール面51が傷つくようなことが抑制され、挿抜耐久性が高い。そしてシール部材の押さえ構造1は、Oリング5の挿抜耐久性が高いので、交換サイクルが長くなり、メンテナンス費用及び運用コストを抑制ことができる。さらにシール部材の押さえ構造1は、Oリング5の挿抜耐久性が高いので、シール性が良く、圧力センサ10aによる圧力の検出精度が安定する。
【0088】
血液浄化装置9は、シール部材の押さえ構造1を採用することにより、Oリング5の交換サイクルが長くなると共に血液Rの圧力の検出精度を長く維持することができるので、メンテナンス費用及び運用コストが抑制されると共に性能を長く維持することができる。
【0089】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、キャップ4の形状が他の実施の形態と異なっている。
【0090】
図11(a)は、第2の実施の形態に係るキャップの一例を示す概略図であり、
図11(b)は、キャップの断面の一例の拡大図である。なお以下に記載する実施の形態において、第1の実施の形態と同じ機能及び構成を有する部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0091】
図11(a)及び
図11(b)に示すキャップ4は、上部40の下面40bと第2の凸部48aの間の角度θ
aが上述のθ
3に相当し、45°<θ
a≦90°を満たしている。また、斜面47の角度θ
bは、上述のθ
1に相当し、30°≦θ
b≦60°を満たしている。
【0092】
本実施の形態のキャップ4は、第1の実施の形態のキャップ4と異なる形状であるが上述の関係を満足しているので、Oリング5の抜けを防止すると共にキャップ4の取り外しが容易となる。
【0093】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、第1の嵌合部307及び第2の嵌合部48の形状が異なっている。
【0094】
図11(c)は、第3の実施の形態に係る第1の嵌合部と第2の嵌合部の一例を示す概略図である。この第1の嵌合部307及び第2の嵌合部48は、
図11(c)に示すように、S字形状ではなく直線形状となっている。この第1の嵌合部307と第2の嵌合部48の嵌合は、S字形状の嵌合よりも外れ難くなっている。
【0095】
しかし本実施の形態のシール部材の押さえ構造1は、キャップ4と継手30の間に形成された隙間7に工具8の先端80を差し込むことができるので、ガイド部31を支点として、てこの原理を用いて容易に外すことができる。
【0096】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態は、圧力検出部10が血液ポンプ113の前後に配置されている点で他の実施の形態と異なっている。
【0097】
図12は、第4の実施の形態に係る血液浄化装置の構成の一例を示す模式図である。本実施の形態の圧力検出部10は、
図12に示すように、動脈側血液回路11のクランプ112と血液ポンプ113との間に追加で配置、つまり血液ポンプ113の前後に配置されている。
【0098】
従って血液浄化装置9は、血液ポンプ113の前後で血液の圧力を検出することができるので、いずれか一方の場合と比べて、血液ポンプ113の制御をより適切に行うことができ、血液の圧力管理の精度が向上する。また血液浄化装置9は、圧力検出部10が増えてもシール部材の押さえ構造1を採用することでOリング5が長寿命となるので、シール部材の押さえ構造1を採用しない場合と比べて、運用コストを低減することができる。
【0099】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態は、キャップ4と継手30とがネジ結合される点で他の実施の形態と異なっている。
【0100】
図13(a)は、第5の実施の形態に係る接続構造の一例を示す斜視図であり、
図13(b)は、キャップの一例を示す断面図であり、
図13(c)は、継手の一例を示す側面図である。
図14(a)は、第5の実施の形態に係るキャップが取り付けられた継手の一例を示す断面図であり、
図14(b)は、チャンバを接続部に接続した一例を示す断面図である。なお
図14(b)に示すチャンバ2は、第1のハウジング21のみを図示している。
【0101】
本実施の形態のシール部材の押さえ構造1は、例えば、
図13(a)~
図14(b)に示すように、キャップ4と継手30とがネジ結合されている。
【0102】
キャップ4は、樹脂材料や金属材料を用いて円筒形状に形成されている。またキャップ4は、
図13(b)に示すように、出力ポート27が挿入される挿入開口45と繋がる内部空間45aを有している。この内部空間45aの内壁45bには、第2の嵌合部48が設けられている。本実施の形態の第2の嵌合部48は、メネジ部48cとして構成されている。
【0103】
本実施の形態の挿入開口45は、
図13(a)に示すように、六角形状を有している。従ってキャップ4は、この挿入開口45に応じた六角レンチが挿入され、継手30に対して回転させることにより、継手30とネジ結合される。
【0104】
なお挿入開口45の形状は、六角形状に限定されず、チャンバ2の出力ポート27が挿入可能な形状で、かつ使用されるヘックスローブなどの工具の形状に応じた形状としても良い。またキャップ4は、外形がソケットレンチなどの工具を嵌めることが可能な六角形状などであっても良い。
【0105】
継手30は、
図13(c)に示すように、上側の端部300に第1の嵌合部307が設けられている。本実施の形態の第1の嵌合部307は、オネジ部307cとして構成されている。Oリング5が継手30の挿入開口301に配置された後、キャップ4のメネジ部48cがオネジ部307cに挿入される。そして継手30に対してキャップ4が回転させられることにより、メネジ部48cとオネジ部307cとがネジ結合してキャップ4と継手30とが接続される。
【0106】
本実施の形態のシール部材の押さえ構造1は、キャップ4の第2の嵌合部48と接続部3の第1の嵌合部307とがネジ結合によって接続されるので、この構成を採用しない場合と比べて、キャップ4の取り外しが容易となる。またシール部材の押さえ構造1は、キャップ4の挿入開口45に工具を挿入してキャップ4を取り外すことができるので、この構成を採用しない場合と比べて、キャップ4の取り外しがより容易になると共にガイド部31などを工具で傷つけることが抑制される。
【0107】
以上述べた少なくとも1つの実施の形態のシール部材の押さえ構造1によれば、シール部材交換時の作業性を向上させることができる。
【0108】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した複数の実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号などを援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号などは、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0109】
[1]挿入開口(301)を有し、前記挿入開口(301)の側面302に第1の嵌合部307が設けられた嵌合部材(継手30)と、
前記嵌合部材(継手30)の前記挿入開口(301)に配置されたシール部材(Oリング5)と、
前記挿入開口(301)に取り付けられ、前記挿入開口(301)から外に出る方向の第1の力(F1)が前記シール部材(Oリング5)に作用した場合、前記第1の力(F1)が作用する前記シール部材(Oリング5)から受けた第2の力(F2)によって前記第1の嵌合部(307)と嵌り合う第2の嵌合部(48)を有するキャップ(4)と、
を備えたシール部材の押さえ構造(1)。
【0110】
[2]前記キャップ(4)は、前記シール部材(Oリング5)と接触する部分に、前記第1の力(F1)の方向を前記第2の力(F2)の方向に変換する斜面(47)を有する、
[1]に記載のシール部材の押さえ構造(1)。
【0111】
[3]前記第1の嵌合部(307)は、前記挿入開口(301)の前記側面(302)から凸状に突出する第1の凸部(307b)、及び前記側面(302)が凹状に凹む第1の凹部(307a)が前記挿入開口(301)の挿入方向上流側から順に並ぶ形状を有し、
前記第2の嵌合部(48)は、前記第1の凸部(307b)と嵌り合う第2の凹部(48b)、及び前記第1の凹部(307a)との嵌め合いにおいて前記挿入開口(301)の挿入方向下流側に向かうにつれて隙間が増加する第2の凸部(48a)を有する、
[1]又は[2]に記載のシール部材の押さえ構造(1)。
【0112】
[4]前記第1の嵌合部(307)は、前記第1の凸部(307b)及び前記第1の凹部(307a)によってS字形状が形成され、
前記第2の嵌合部(48)は、前記第2の凹部(48b)及び前記第2の凸部(48a)によってS字形状が形成される、
[3]に記載のシール部材の押さえ構造(1)。
【0113】
[5]前記挿入開口(301)の縁に直交するように切断した断面において、
前記嵌合部材(継手30)の上面(309)を基準とした基準線(S)と、前記第1の力(F1)の方向を前記第2の力(F2)の方向に変換する前記キャップ(4)の斜面(47)の外形線を延長した直線(L)と、のなす第1の角度θ1、及び前記基準線(S)と、S字形状を形成する前記第1の凸部(307b)と前記第1の凹部(307a)の変曲点に接する直線(M)と、のなす第2の角度θ2、
30°≦θ1≦60°を満たすと共に、θ1≦θ2≦90°を満たす、
[3]又は[4]に記載のシール部材の押さえ構造(1)。
【0114】
[6]前記挿入開口(301)の縁に直交するように切断した断面において、
前記嵌合部材(継手30)の上面(309)を基準とした基準線(S)と、S字形状を形成する前記第1の凸部(307b)と前記第1の凹部(307a)の変曲点に接する直線(M)と、のなす第2の角度θ2、及び前記基準線(S)と、S字形状を形成する前記第2の凹部(48b)と前記第2の凸部(48a)の変曲点に接する直線(N)と、のなす第3の角度θ3は、
θ2≦θ3≦90°を満たす、
[3]乃至[5]のいずれか1項に記載のシール部材の押さえ構造(1)。
【0115】
[7]前記嵌合部材は、中空形状のハウジング(20)、前記ハウジング(20)内を第1の空間(23)と第2の空間(24)に分けるダイヤフラム(25)、及び前記第1の空間(23)に流入する流体(血液R)の圧力による前記ダイヤフラム(25)の変形に伴って前記第2の空間(24)の気体(K)を出力する出力ポート(27)を有するチャンバ(2)の前記出力ポート(27)と接続される継手(30)であり、
前記シール部材(Oリング5)は、前記出力ポート(27)の側面(270)と前記継手(30)の側面(302)に挟まれ、前記チャンバ(2)と前記接続部(3)を接続したり、抜いたりする際に回転しながら移動する、
[1]乃至[6]のいずれか1項に記載のシール部材の押さえ構造(1)。
【0116】
[8][1]乃至[7]のいずれか1項に記載の押さえ構造を有し、
人間の血液を浄化する血液浄化装置。
【0117】
[9]嵌合対象である嵌合部材(継手30)の挿入開口(301)に配置されたシール部材(Oリング5)が前記挿入開口(301)から外に出る方向の第1の力(F1)を受けた場合、前記第1の力(F1)が作用する前記シール部材(Oリング5)から受けた第2の力(F2)によって前記部材(継手30)に設けられた第1の嵌合部(307)と嵌め合う第2の嵌合部(48)を備えたキャップ(4)。
【0118】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
1…シール部材の押さえ構造、2…チャンバ、3…接続部、4…キャップ、5…Oリング、7…隙間、8…工具、9…血液浄化装置、10…圧力検出部、10a…圧力センサ、10b…チューブ、11…動脈側血液回路、12…静脈側血液回路、13…ダイアライザ、13a…血液導入口、13b…血液導出口、13c…透析液導入口、13d…透析液導出口、14…透析液導入ライン、15…透析液排出ライン、16…複式ポンプ、17…除水ポンプ、20…ハウジング、21…第1のハウジング、22…第2のハウジング、23…第1の空間、24…第2の空間、25…ダイヤフラム、26…フィルタ、27…出力ポート、27a…摺動部材、28…挿入部、29…突起、30…継手、30a…側面、30a…固定壁、30b…取付溝、30c…第1のストッパ、30d…第2のストッパ、31…ガイド部、32…クランク溝、40…上部、40b…下面、40c…端面、41…下部、45…挿入開口、45a…内部空間、46…段差、47…斜面、48…第2の嵌合部、48a…第2の凸部、48b…第2の凹部、48c…メネジ部、49…切欠、50…挿入開口、51…シール面、55…領域、80…先端、90…本体、101…パネル、110…動脈側穿刺針、111…コネクタ、112…クランプ、113…血液ポンプ、120…静脈側穿刺針、121…コネクタ、122…血液判別部、123…クランプ、124…気泡検出部、125…静脈チャンバ、183…下面、210…底面、211…流路、220…上面、221…接続ポート、222…接続ポート、271…テーパー面、272…端部、280…底面、281…開口、282…側面、283…下面、300…端部、301…挿入開口、302…側面、303…底面、304…先端領域、305…流路、306…テーパー面、307…第1の嵌合部、307a…第1の凹部、307b…第1の凸部、307c…オネジ部、309…上面、310…底面、311…開口、311a…側面、311b…爪部、312…上面、313…テーパー面、314…終端部、315…挿入孔、320…縦溝、321…横溝