(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】窓開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 11/04 20060101AFI20220930BHJP
E05F 15/611 20150101ALI20220930BHJP
【FI】
E05F11/04
E05F15/611
(21)【出願番号】P 2018235447
(22)【出願日】2018-12-17
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503428703
【氏名又は名称】オイレスECO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入内島 建一
(72)【発明者】
【氏名】大石 守
(72)【発明者】
【氏名】平塚 鉄也
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-131611(JP,A)
【文献】実開昭59-092182(JP,U)
【文献】特開2000-160929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/00-11/54
E05F 15/00-15/79
E05F 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓を開閉するように当該窓に配されていると共に常時は窓開放力が付与されている障子に張設されたワイヤと、このワイヤの一端が固着されていると共に障子に付与されている窓開放力に抗して障子を窓全閉位置に配するべく正転により外周面でワイヤを巻き取る一方、障子に付与されている窓開放力により障子を窓開放位置に配するべく逆転によりワイヤを外周面から繰り出すようになっている回転ドラムと、この回転ドラムを正転させてワイヤを回転ドラムの外周面に巻き取らせる巻き取り力を発生する一方、回転ドラムを逆転させてワイヤを回転ドラムの外周面から繰り出す繰り出し力を発生する電動モータを具備した巻き取り及び繰り出し機構と、この巻き取り及び繰り出し機構での巻き取り力及び繰り出し力の発生を選択的に電気的に切替えることができる電気的切替装置と、第一の状態では、巻き取り及び繰り出し機構で発生された巻き取り力及び繰り出し力を回転ドラムへ伝達させる一方、第二の状態では、巻き取り及び繰り出し機構での巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づくワイヤの自由繰り出しを許容するラッチ機構と、このラッチ機構を第一及び第二の状態に選択的に機械的に切替えることができる機械的切替機構とを具備し
、
このラッチ機構が、ワイヤの他端が固着されていると共に当該ワイヤが巻き付けられた他の回転ドラムを具備しており、第一の状態では、他の回転ドラムによるワイヤの巻き取り及び繰り出しを禁止するようになっている一方、第二の状態では、電動モータでの巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づく他の回転ドラムからのワイヤの自由繰り出しを許容するようになっている窓開閉装置。
【請求項2】
窓を開閉するように当該窓に配されていると共に常時は窓開放力が付与されている障子に張設されたワイヤと、このワイヤの一端が固着されていると共に障子に付与されている窓開放力に抗して障子を窓全閉位置に配するべく正転により外周面でワイヤを巻き取る一方、障子に付与されている窓開放力により障子を窓開放位置に配するべく逆転によりワイヤを外周面から繰り出すようになっている回転ドラムと、この回転ドラムを正転させてワイヤを回転ドラムの外周面に巻き取らせる巻き取り力を発生する一方、回転ドラムを逆転させてワイヤを回転ドラムの外周面から繰り出す繰り出し力を発生する電動モータを具備した巻き取り及び繰り出し機構と、この巻き取り及び繰り出し機構での巻き取り力及び繰り出し力の発生を選択的に電気的に切替えることができる電気的切替装置と、第一の状態では、巻き取り及び繰り出し機構で発生された巻き取り力及び繰り出し力を回転ドラムへ伝達させる一方、第二の状態では、巻き取り及び繰り出し機構での巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づくワイヤの自由繰り出しを許容するラッチ機構と、このラッチ機構を第一及び第二の状態に選択的に機械的に切替えることができる機械的切替機構とを具備し
、
このラッチ機構が、遊星歯車機構と、この遊星歯車機構のキャリヤの回転軸に取付けられたラッチ歯車と、第一の状態では、ラッチ歯車に噛合ってラッチ歯車の回転を阻止するように回転変位する一方、第二の状態では、ラッチ歯車との噛合いを解除してラッチ歯車の回転を許容するように回転変位するべく、回転自在に軸支された爪部材と、この爪部材のラッチ歯車への噛合いを解除するように爪部材を第二の状態の回転変位に弾性的にもたらす弾性部材とを具備している窓開閉装置。
【請求項3】
遊星歯車機構は、回転軸を有したキャリヤに加えて、電動モータの出力回転軸の回転と共に回転するべく、電動モータの出力回転軸に連結された太陽歯車と、この太陽歯車に噛合うと共にキャリヤに回転自在に支持された複数の遊星歯車とを具備している請求項2に記載の窓開閉装置。
【請求項4】
機械的切替機構は、ラッチ機構の弾性部材の弾性力に抗してラッチ機構の爪部材を第一の状態の回転変位にもたらすように、爪部材を引っ張る牽引機構と、ラッチ機構の弾性部材の弾性力によりラッチ機構の爪部材を第二の状態の回転変位にもたらすように牽引機構による爪部材に対する引っ張りを解除する解除機構とを具備している請求項2または3に記載の窓開閉装置。
【請求項5】
解除機構は、牽引機構による爪部材に対する引っ張りの解除を指示する人手により操作可能な解除ボタン又は解除レバーを具備している請求項4に記載の窓開閉装置。
【請求項6】
ラッチ機構は、第二の状態では、電動モータでの巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づく回転ドラムからのワイヤの自由繰り出しを許容するようになっている請求項1から5のいずれか一項に記載の窓開閉装置。
【請求項7】
ラッチ機構は、ワイヤの他端が固着されていると共に当該ワイヤが巻き付けられた他の回転ドラムを具備しており、第一の状態では、他の回転ドラムによるワイヤの巻き取り及び繰り出しを禁止するようになっている一方、第二の状態では、電動モータでの巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づく他の回転ドラムからのワイヤの自由繰り出しを許容するようになっている請求項
2から6のいずれか一項に記載の窓開閉装置。
【請求項8】
機械的切替機構は、ラッチ機構を第二の状態に切替えた後に、ラッチ機構を第一の状態に手動で復帰させる手動復帰機構を具備している請求項1から7のいずれか一項に記載の窓開閉装置。
【請求項9】
電気的切替装置と機械的切替機構とは、窓の下方の室内において人手により切替操作可能に配されるようになっている請求項1から8のいずれか一項に記載の窓開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓開閉装置、特に排煙窓の開閉に好適な窓開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の窓開閉装置は、常時は開放方向の開放力が付与されている障子に連結されたワイヤの一端が固着された回転ドラムを電動モータで正転させることによりワイヤを回転ドラムに巻き取って障子を閉鎖し、障子への開放力に基づく回転ドラムの逆転によりワイヤを回転ドラムから繰り出して障子を開放するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-213233号公報
【文献】特開2016-102388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、斯かる電動モータを用いた窓開閉装置を排煙窓に適用しようとする場合、実際に煙が生じる火災時でも電動モータを動作させるために非常電源装置を必要とする上に、電動モータ及び電動モータへの給電線等に対して高価な耐熱、耐火設備を必要とし、加えて、通常、部屋壁の高所に設けられる排煙窓に近接して窓開閉装置が設置される結果、排煙後において窓開閉装置を排煙窓を開閉できるように復帰させるためには、脚立、梯子等を用いた高所作業が強いられ、早急、容易な復帰を期待し難い。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、常時は、必要に応じて電動モータにより窓を開閉でき、火災時には、電動モータの損傷の有無に拘わらずに、窓を開放でき、而して、低い耐熱性、耐火性をもって実施できる窓開閉装置を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的とするところは、部屋壁の高所に設けられる窓、特に、排煙窓に適用しても、排煙後において脚立、梯子等を用いた高所作業をもっての復帰作業を必要としない窓開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による窓開閉装置は、窓を開閉するように当該窓に配されていると共に常時は窓開放力が付与されている障子を繰り出し及び巻き取りで開閉させるように当該障子に張設されたワイヤと、このワイヤの一端が固着されていると共に障子に付与されている窓開放力に抗して障子を窓閉鎖位置に配するべく正転によりワイヤを巻き取る一方、障子に付与されている窓開放力により障子を窓開放位置に配するべく逆転によりワイヤを繰り出すようになっている回転ドラムと、この回転ドラムを正転させてワイヤを回転ドラムに巻き取らせる巻き取り力を発生する一方、回転ドラムを逆転させてワイヤを回転ドラムから繰り出す繰り出し力を発生する電動モータと、この電動モータでの巻き取り力及び繰り出し力の発生を選択的に電気的に切替えることができる電気的切替装置と、第一の状態では、電動モータで発生された巻き取り力及び繰り出し力を回転ドラムへ伝達させる一方、第二の状態では、電動モータでの巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づくワイヤの自由繰り出しを許容するラッチ機構と、このラッチ機構を第一及び第二の状態に選択的に機械的に切替えることができる機械的切替機構とを具備している。
【0008】
本発明の窓開閉装置によれば、回転ドラムを正転させてワイヤを回転ドラムに巻き取らせる巻き取り力を発生する一方、回転ドラムを逆転させてワイヤを回転ドラムから繰り出す繰り出し力を発生する電動モータを具備した巻き取り及び繰り出し機構と、この巻き取り及び繰り出し機構での巻き取り力及び繰り出し力の発生を選択的に電気的に切替えることができる電気的切替装置と、第二の状態では、巻き取り及び繰り出し機構での巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づくワイヤの自由繰り出しを許容するラッチ機構と、ラッチ機構を第一及び第二の状態に選択的に機械的に切替えることができる機械的切替機構とを具備しているために、常時は、必要に応じて電動モータを具備した巻き取り及び繰り出し機構により窓を開閉でき、火災時には、電動モータの損傷の有無に拘わらずに、窓を開放でき、而して、本発明に係る窓開閉装置を低い耐熱性、耐火性をもって実施できる。
【0009】
本発明の窓開閉装置において、ラッチ機構は、遊星歯車機構と、この遊星歯車機構のキャリヤの回転軸に取付けられたラッチ歯車と、第一の状態では、ラッチ歯車に噛合ってラッチ歯車の回転を阻止するように回転変位する一方、第二の状態では、ラッチ歯車との噛合いを解除してラッチ歯車の回転を許容するように回転変位するべく、回転自在に軸支された爪部材と、この爪部材のラッチ歯車への噛合いを解除するように爪部材を第二の状態の回転変位に弾性的にもたらす弾性部材とを具備していてもよい。
【0010】
本発明に係る遊星歯車機構は、好ましい例では、回転軸を有したキャリヤに加えて、電動モータの出力回転軸の回転と共に回転するべく、電動モータの出力回転軸に連結された太陽歯車と、この太陽歯車に噛合うと共にキャリヤに回転自在に支持された複数の遊星歯車とを具備している。
【0011】
本発明の窓開閉装置において、機械的切替機構は、ラッチ機構の弾性部材の弾性力に抗してラッチ機構の爪部材を第一の状態の回転変位にもたらすように、爪部材を引っ張る牽引機構と、ラッチ機構の弾性部材の弾性力によりラッチ機構の爪部材を第二の状態の回転変位にもたらすように牽引機構による爪部材に対する引っ張りを解除する解除機構とを具備していてもよい。
【0012】
本発明に係る解除機構は、好ましい例では、牽引機構による爪部材に対する引っ張りの解除を指示する人手により操作可能な解除ボタン又は解除レバーを具備している。
【0013】
本発明の窓開閉装置において、ラッチ機構は、第二の状態では、電動モータでの巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づく回転ドラムからのワイヤの自由繰り出しを許容するようになっていてもよい。
【0014】
本発明の窓開閉装置において、ラッチ機構は、ワイヤの他端が固着されていると共に当該ワイヤが巻き付けられた他の回転ドラムを具備しており、第一の状態では、他の回転ドラムによるワイヤの巻き取り及び繰り出しを禁止するようになっている一方、第二の状態では、電動モータでの巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、障子に付与されている窓開放力に基づく他の回転ドラムからのワイヤの自由繰り出しを許容するようになっていてもよい。
【0015】
本発明の窓開閉装置において、機械的切替機構は、ラッチ機構を第二の状態に切替えた後に、ラッチ機構を第一の状態に手動で復帰させる手動復帰機構を具備していてもよい。
【0016】
機械的切替機構が斯かる手動復帰機構を具備していると、排煙後において脚立、梯子等を用いた高所作業をもっての復帰作業を必要としない窓開閉装置を提供することができる。
【0017】
本発明の窓開閉装置において、電気的切替装置と機械的切替機構とは、窓の下方の室内において人手により切替操作可能に配されるようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、常時は、必要に応じて電動モータにより窓を開閉でき、火災時には、電動モータの損傷の有無に拘わらずに、窓を開放でき、而して、低い耐熱性、耐火性をもって実施できる窓開閉装置を提供することができ、その上、ラッチ機構を第二の状態に切替えた後に、ラッチ機構を第一の状態に手動で復帰させる手動復帰機構を機械的切替機構が具備していると、部屋壁の高所に設けられる窓、特に、排煙窓に適用しても、排煙後において脚立、梯子等を用いた高所作業をもっての復帰作業を必要としない窓開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい一具体例の斜視説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電動モータ及びラッチ機構等の一部断面説明図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す電気的切替装置及び機械的切替機構の斜視説明図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す機械的切替機構の一部VI-VI線矢視断面を示す正面断面説明図である。
【
図7】
図7は、
図1に示す電気的切替装置及び機械的切替機構において機械的切替機構の作動の斜視説明図である。
【
図8】
図8は、
図1に示す電気的切替装置及び機械的切替機構において機械的切替機構の作動の断面説明図である。
【
図9】
図9は、
図1に示すラッチ機構と機械的切替機構との作動の説明図である。
【
図11】
図11は、電気的切替装置及び機械的切替機構の他の例の斜視説明図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す機械的切替機構の一部XIII-XIII線矢視断面を示す正面断面説明図である。
【
図16】
図16は、手動復帰機構の他の例の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい具体例を参照して更に詳細に説明する。なお、本発明はこの具体例に何等限定されないのである。
【0021】
図1から
図6において、本例の排煙窓用の窓開閉装置1は、建物の壁の高所に設けられた窓、即ち排煙窓2を開閉するように当該排煙窓2に配されていると共に常時はガスステイ3のガス圧に基づく伸長力による窓開放力Fが付与されている障子としてのガラス障子4の夫々に張設されたワイヤ5と、ワイヤ5の一端6が固着されていると共にガラス障子4の夫々に付与されている窓開放力F(本例のように外倒し窓の場合には排煙窓2の開度によって増減する重量に基づく窓開放力をも含む、以下、同じ)に抗してガラス障子4の夫々を窓全閉位置(
図1において実線で示す位置)に配するべく正転、即ち方向R1の回転により外周面7でワイヤ5を巻き取る一方、ガラス障子4の夫々に付与されている窓開放力Fによりガラス障子4の夫々を窓全開位置(
図1において点線で示す位置)に配すべく逆転、即ち方向R2の回転により外周面7からワイヤ5を繰り出すようになっている回転ドラム8と、回転ドラム8を方向R1に回転させてワイヤ5を回転ドラム8の外周面7に巻き取らせる巻き取り力を発生する一方、回転ドラム8を方向R2に回転させてワイヤ5を回転ドラム8の外周面7から繰り出す繰り出し力を発生する電動モータ9を具備した巻き取り及び繰り出し機構10と、巻き取り及び繰り出し機構10での巻き取り力及び繰り出し力の発生を選択的に電気的に切替えることができる電気的切替装置11と、第一の状態では、巻き取り及び繰り出し機構10で発生された巻き取り力及び繰り出し力を回転ドラム8へ伝達させる一方、第二の状態では、巻き取り及び繰り出し機構10の電動モータ9での巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、ガラス障子4に付与されている窓開放力Fに基づく回転ドラム8の外周面7からのワイヤ5の自由繰り出しを許容するラッチ機構12と、ラッチ機構12を第一及び第二の状態に選択的に機械的に切替えることができる機械的切替機構13とを具備している。
【0022】
各ガスステイ3は、ガラス障子4の枠15と建物の壁に取付けられた窓枠16との間に配されており、各ガラス障子4を常時その内部のガス圧に基づく伸長力による窓開放力Fで開放方向に付勢しており、ガラス障子4及び窓枠16等からなる排煙窓2の窓枠16に一端で回動自在に軸支された各ガラス障子4の夫々及び窓枠16には、プーリ17が取り付けられており、他端18が窓枠16に固定されたワイヤ5は、各プーリ17を通って配索されている。
【0023】
回転ドラム8は、ワイヤ5が巻き付けられる円筒状の外周面7及び円筒状の内周面21を有した中空円筒状のドラム本体22と、外周面7の軸方向の一端に一体的に設けられた鍔部23と、ドラム本体22の内周面21の軸方向の一端に一体的に設けられた円環板部24と、円環板部24に一体的に設けられた円筒状の軸受部25とを具備しており、軸受部25で玉軸受26を介して巻き取り及び繰り出し機構10の一端の円環板部27に方向R1及び方向R2に回転自在に支持されている。
【0024】
巻き取り及び繰り出し機構10は、電動モータ9及び円環板部27に加えて、電動モータ9の出力回転軸の回転を減速する減速機31と、電動モータ9への非給電時には、当該電動モータ9の出力回転軸に減速機構を介して連結されている減速機31の出力回転軸32に機械的に制動を加えて当該出力回転軸32を不動にする一方、電動モータ9への給電時には、減速機31の出力回転軸32への機械的な制動を解除して、電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の回転を許容する電磁クラッチ・ブレーキ等の制動機構33と、電気的切替装置11からの電気信号及び排煙窓2の全開及び全閉を検出するべくガラス障子4の枠15及び窓枠16のうちの少なくとも一方に設けられた図示しない発光素子及び受光素子を有した光学的な近接スイッチ若しくはリミットスイッチ等の機械的な近接スイッチからの電気信号に基づいて、100V商用電源の給電線34からの電力の電動モータ9への給電及び非給電並びに制動機構33への制動及び制動解除を行わせる制御器35とを具備しており、減速機31の出力回転軸32が回転自在に貫通する円環板部27は、制動機構33の外枠36に固定支持されている。
【0025】
制動機構33は、電動モータ9への非給電時に加えて、給電線34から制動機構33自体、制御器35及び電気的切替装置11に作動用の電力が給電されない時、例えば停電時にも、減速機31の出力回転軸に機械的に制動を加えて当該出力回転軸を不動にするようになっている。
【0026】
排煙窓2が設置された室の壁であって当該室に出入りする人に手動操作可能な排煙窓2の下方の位置に操作自在に取付けられた操作盤41に機械的切替機構13と共に設けられている電気的切替装置11は、回転ドラム8を方向R1に回転させるべく、電動モータ9への給電を制御器35に電気的に指示する感圧スイッチ42と、回転ドラム8を方向R2に回転させるべく、電動モータ9への給電を制御器35に電気的に指示する感圧スイッチ43と、減速機31の出力回転軸32に制動を加えて当該出力回転軸32を不動にするべく、電動モータ9への非給電を制御器35に電気的に指示する感圧スイッチ44と、感圧スイッチ42、43及び44の電気的な指示を制御器35に与えるべく、これら感圧スイッチ42、43及び44を制御器35に電気的に接続する接続ケーブル45とを具備しており、感圧スイッチ42、43及び44は、操作盤41の筐体46の前面47に設けられている。
【0027】
電気的切替装置11において、排煙窓2に対するガラス障子4の窓全閉位置でいない状態で感圧スイッチ42が人手により押下されると、制御器35を介して制動機構33の減速機31の出力回転軸32に対する制動が解除されると共に制御器35を介して給電線34からの電力が電動モータ9に給電されて電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の方向R2の回転が生起され、出力回転軸32の方向R2の回転で回転ドラム8は方向R1に回転され、回転ドラム8の方向R1の回転でワイヤ5がガスステイ3のガス圧に基づく伸長力による窓開放力Fに抗して回転ドラム8の外周面7に巻き取られ、ワイヤ5の回転ドラム8の外周面7への巻き取りでガラス障子4が窓全閉位置に配され、ガラス障子4の窓全閉位置を検出する近接スイッチからの電気信号に基づいて制御器35を介して制動機構33の減速機31の出力回転軸32に対する制動が開始されると共に制御器35を介して給電線34からの電力の電動モータ9への給電が停止され、電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の方向R2の回転が停止されて、ガラス障子4は、排煙窓2に対して窓全閉位置に不動に配置される。
【0028】
また、電気的切替装置11において、排煙窓2に対するガラス障子4の窓全開位置でいない状態で感圧スイッチ43が人手により押下されると、制御器35を介して制動機構33の減速機31の出力回転軸32に対する制動が解除されると共に制御器35を介して給電線34からの電力が電動モータ9に給電されて電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の方向R1の回転が生起され、出力回転軸32の方向R1の回転で回転ドラム8は方向R2に回転され、回転ドラム8の方向R2の回転でワイヤ5がガスステイ3のガス圧に基づく伸長力による窓開放力Fの助力と共に回転ドラム8の外周面7から繰り出され、ワイヤ5の回転ドラム8の外周面7からの繰り出しでガラス障子4が窓全開位置に配され、ガラス障子4の窓全開位置を検出する近接スイッチからの電気信号に基づいて制御器35を介して制動機構33の減速機31の出力回転軸32に対する制動が開始されると共に制御器35を介して給電線34からの電力の電動モータ9への給電が停止され、電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の方向R1の回転が停止されて、ガラス障子4は、排煙窓2に対して窓全開位置に不動に配置される。
【0029】
電気的切替装置11において、更にまた、回転ドラム8の方向R1又は方向R2の回転中に感圧スイッチ44が人手により押下されると、制御器35を介して制動機構33の減速機31の出力回転軸32に対する制動が開始されると共に制御器35を介して給電線34からの電力の電動モータ9への給電が停止され、電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の回転が停止されて、回転ドラム8の方向R1又は方向R2の回転が停止され、ガラス障子4は、排煙窓2に対して窓全開位置と窓全閉位置との間で不動に配置される。
【0030】
そして、電気的切替装置11において、ガラス障子4が排煙窓2に対して窓全閉位置に不動に配置されている場合、即ち、ガラス障子4の窓全閉位置を検出する電気信号を近接スイッチから制御器35が受信している場合に、感圧スイッチ42が人手により押下されても、また、ガラス障子4が排煙窓2に対して窓全開位置に不動に配置されている場合、即ち、ガラス障子4の窓全開位置を検出する電気信号を近接スイッチから制御器35が受信している場合に、感圧スイッチ43が人手により押下されても、そして、排煙窓2に対してのガラス障子4の窓全閉位置を検出する電気信号を近接スイッチから制御器35が受信している場合又は排煙窓2に対してのガラス障子4の窓全開位置を検出する電気信号を近接スイッチから制御器35が受信している場合に、感圧スイッチ44が人手により押下されても、制御器35は、排煙窓2に対してのガラス障子4の窓全閉位置又は窓全開位置を維持するように、その押下を無視するようになっている。
【0031】
ラッチ機構12は、回転軸51及び回転軸51に固定されたキャリヤ52を有した遊星歯車機構53と、回転軸51が貫通していると共に回転軸51を玉軸受54を介して方向R1及び方向R2に回転自在に支持する基板55と、回転軸51に固定されていると共に円環状の外周面56に歯57を有したラッチ歯車58と、第一の状態(
図3に示す状態)では、ラッチ歯車58の歯57のいずれかに爪部59で噛合ってラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転を阻止するように方向R3に回転変位する一方、第二の状態(
図9に示す状態)では、爪部59のラッチ歯車58の歯57への噛合いを解除してラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転を許容するように方向R3に対して逆の方向R4に回転変位するべく、基板55に軸60を介して当該軸60を中心として方向R3及びR4に回転自在に一端61で軸支されていると共に当該爪部59を側面62の他端に有した爪部材63と、爪部59の歯57への噛合いを解除するように爪部材63を第二の状態の回転変位に弾性的にもたらす弾性部材としてのコイルばね64とを具備している。
【0032】
遊星歯車機構53は、基板55に玉軸受54を介して方向R1及び方向R2に回転自在に支持された回転軸51を有したキャリヤ52に加えて、電動モータ9の出力回転軸の正回転及び逆回転により方向R1及び方向R2に回転されるように、減速機31の出力回転軸32に取付けられた太陽歯車71と、太陽歯車71に噛合されていると共にキャリヤ52に各軸72を介して当該各軸72を中心として回転自在に支持されている複数、本例では四個の遊星歯車74と、遊星歯車74の夫々に噛合されていると共に回転ドラム8の内周面21に設けられた内歯75とを具備している。
【0033】
基板55は、防炎ケース78に固定支持されており、斯かる防炎ケース78は、巻き取り及び繰り出し機構10、制御器35及びラッチ機構12を内部に収容して窓枠16に取付けられており、コイルばね64は、一端で基板55に、他端で爪部材63の一端に夫々連結固定されており、爪部材63を方向R4に回転変位させるべく、その弾性力としての弾性引張力を爪部材63の一端に付与している。
【0034】
遊星歯車機構53では、ラッチ歯車58の歯57のいずれかと爪部59との噛合いでのラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転の阻止により回転軸51を介してのキャリヤ52の方向R1及び方向R2の回転が阻止され、しかも、排煙窓2に対するガラス障子4の窓全閉位置でいない状態で、電動モータ9の出力回転軸の回転が感圧スイッチ42の人手による押下で指示されると、電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の方向R2の回転で太陽歯車71が同じく方向R2に回転され、太陽歯車71の方向R2の回転で四個の遊星歯車74が各軸72を中心として回転され、太陽歯車71の方向R2の回転に基づく遊星歯車74の回転で、遊星歯車74に噛合う内歯75を有する回転ドラム8が方向R1に回転され、また、ラッチ歯車58の歯57のいずれかと爪部59との噛合いでのラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転の阻止により回転軸51を介してのキャリヤ52の方向R1及び方向R2の回転が阻止され、しかも、排煙窓2に対するガラス障子4の窓全開位置でいない状態で、電動モータ9の出力回転軸の回転が感圧スイッチ43の人手による押下で指示されると、電動モータ9の出力回転軸の回転に従う減速機31の出力回転軸32の方向R1の回転で太陽歯車71が同じく方向R1に回転され、太陽歯車71の方向R1の回転で四個の遊星歯車74が各軸72を中心として回転され、太陽歯車71の方向R1の回転に基づく遊星歯車74の回転で、遊星歯車74に噛合う内歯75を有する回転ドラム8が方向R2に回転される一方、排煙窓2に対するガラス障子4の窓全開位置でない状態で、ラッチ歯車58の歯57のいずれかと爪部59との噛合いの解除でのラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転の阻止の解除により回転軸51を介してのキャリヤ52の方向R1及び方向R2の回転の阻止が解除されると、キャリヤ52が方向R1及び方向R2に回転自在となる結果、減速機31の出力回転軸32に対する制動の有無に拘わらず回転ドラム8も方向R1及び方向R2に回転自在となり、而して、ガスステイ3の窓開放力Fにより回転ドラム8が方向R2に回転されて、回転ドラム8の方向R2の回転でワイヤ5が回転ドラム8の外周面7から繰り出され、ワイヤ5の回転ドラム8の外周面7からの繰り出しでガラス障子4が排煙窓2に対して窓全開位置に配され、減速機31の出力回転軸32に対する制動の有無に拘束されないで、排煙窓2からの排煙が可能となるようになっている。
【0035】
機械的切替機構13は、ラッチ機構12のコイルばね64の弾性引張力に抗してラッチ機構12の爪部材63を第一の状態の回転変位にもたらすように、爪部材63を引っ張る牽引機構81と、ラッチ機構12のコイルばね64の弾性引張力によりラッチ機構12の爪部材63を第二の状態の回転変位にもたらすように牽引機構81による爪部材63に対する引っ張りを解除する解除機構82と、ラッチ機構12を第二の状態に切替えた後に、ラッチ機構12を第一の状態に手動で復帰させる手動復帰機構83とを具備している。
【0036】
牽引機構81は、筐体46内で当該筐体46に取付け部材90を介して支持されて設けられた支持板91と、一端92で爪部材63の他端93に連結された牽引ワイヤ94と、支持板91に軸心95を中心として方向R5及び方向R5に対して逆方向の方向R6に回転自在に支持されていると共に牽引ワイヤ94の他端96が連結されている円柱状のワイヤ巻き取り部材97と、他端96側の牽引ワイヤ94を部分的に巻き取っているワイヤ巻き取り部材97の方向R5の回転を許容する一方、ワイヤ巻き取り部材97の方向R6の回転を阻止するラチェット機構98と、基板55に取付られていると共に牽引ワイヤ94の一端92側を案内する案内部材99とを具備している。
【0037】
一端92側で案内部材99を貫通して案内部材99により案内された牽引ワイヤ94は、一端92側と他端96側との間で排煙窓2が設置された室の壁に回転自在に設置された複数の滑車等により案内されて張設されている。
【0038】
ラチェット機構98は、支持板91に軸110を介して軸110を中心として方向R7及び方向R7に対して逆方向の方向R8に回転自在に支持されていると共に爪部111を有した爪部材112と、ワイヤ巻き取り部材97と同心に当該ワイヤ巻き取り部材97に一体的に固定されて支持板91に方向R5及び方向R6に回転自在に支持されていると共に円柱状の外周面113に傾斜歯114を有する中空の歯車115と、一端が支持板91に連結されている一方、他端が爪部材112に接触していると共に爪部材112の爪部111を歯車115の傾斜歯114のいずれかに弾性的に噛合わせる弾性力を発生する弾性部材としてのコイルばね116とを具備しており、爪部材112は、支持板91の空所117を貫通して設けられている。
【0039】
ラチェット機構98は、爪部111が傾斜歯114のいずれかに弾性的に噛合っている場合には、歯車115の方向R6の回転、即ち、ワイヤ巻き取り部材97の方向R6の回転を禁止する一方、歯車115の方向R5の回転、即ち、ワイヤ巻き取り部材97の方向R5の回転を許容し、そして、爪部111が傾斜歯114のいずれにも弾性的に噛合っていない場合には、歯車115の方向R5及び方向R6の回転、即ち、ワイヤ巻き取り部材97の方向R5及び方向R6の回転を許容するようになっている。
【0040】
解除機構82は、牽引機構81による爪部材63に対する引っ張りの解除を指示する人手により操作可能に筐体46の前面47の開口121にスナップフィト式に収容されていると共に方向R9に回動自在に下端で筐体46に軸支された解除レバー122と、一端部123が解除レバー122の中間部124に回動自在に連結されている一方、両他端部125が筐体46の側壁126に上下方向に伸びて設けられた長穴127に挿入されたU字形の連結棒部材128(
図8参照)と、一端部129で連結棒部材128の他端部125に取付けられていると共に他端部130に上下方向に伸びた長穴131を有して上下方向の移動が側壁126によって案内されるように設けられた作動部材132と、長穴131の下端に上下方向に移動自在に挿入されていると共に爪部材112の一端部133に取付けられた突起部材134とを具備している。
【0041】
解除機構82では、火災等で排煙が必要な際に、
図7から
図9に示すように、解除レバー122の上部片140を人の指で引っ張って解除レバー122をR9方向に回動させて開口121から部分的に引き出すと、連結棒部材128の両他端部125が長穴127に案内されて下方に移動され、両他端部125の下方への移動で作動部材132が同じく下方へ移動され、作動部材132の下方への移動で他端部130に設けられた長穴131も下方へ移動され、解除レバー122が最大に回動されると、長穴131の上端を規定する他端部130の部位により突起部材134が下方へ移動され、突起部材134の下方への移動でコイルばね116の弾性力に抗して爪部材112が軸110を中心として方向R8に回転され、爪部材112の方向R8の回転で爪部111と傾斜歯114との弾性的な噛合が解除され、方向R8の回転に加えてワイヤ巻き取り部材97の方向R6の回転が可能となり、而して、ワイヤ巻き取り部材97に他端96側で部分的に巻き取られている牽引ワイヤ94に生じているコイルばね64の弾性的な引張力により当該ワイヤ巻き取り部材97は、方向R6に回転され、ワイヤ巻き取り部材97の方向R6の回転で、ワイヤ巻き取り部材97に他端96側で部分的に巻き取られた牽引ワイヤ94は、当該ワイヤ巻き取り部材97から繰り出され、牽引ワイヤ94のワイヤ巻き取り部材97からの部分的な繰り出しで、他端93に牽引ワイヤ94の一端92が連結された爪部材63は、コイルばね64の弾性力により爪部59のラッチ歯車58の歯57への噛合いを解除してラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転を許容するようになっている。
【0042】
ラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転が許容されると、前述したように、キャリヤ52が方向R1及び方向R2に回転自在となる結果、減速機31の出力回転軸32に対する制動の有無に拘わらず回転ドラム8も方向R1及び方向R2に回転自在となり、而して、ガスステイ3の窓開放力Fにより回転ドラム8が方向R2に回転されて、回転ドラム8の方向R2の回転でワイヤ5が回転ドラム8の外周面7から繰り出され、ワイヤ5の回転ドラム8の外周面7からの繰り出しでガラス障子4が排煙窓2に対して窓全開位置に配され、減速機31の出力回転軸32に対する制動の有無に拘束されないで、排煙窓2からの排煙が可能となる。
【0043】
手動復帰機構83は、
図10に示すように、手動復帰用の工具141の先端の六角部142を受容できるように歯車115に形成された六角穴143と、六角穴143に対面して解除レバー122に形成された貫通孔144とを具備している。
【0044】
手動復帰機構83において、排煙窓2からの排煙の完了後、解除レバー122を手で押して回動させて開口121に収容させると、作動部材132の上方への移動で長穴131も上方へ移動され、長穴131の上方への移動で、長穴131の上端を規定する他端部130の部位と突起部材134との接触が解除される一方、長穴131の下端を規定する他端部130の部位により突起部材134が上方へ移動され、突起部材134の上方への移動でコイルばね116の弾性力の援助で爪部材112が軸110を中心として方向R7に回転され、爪部材112の方向R7の回転で爪部111が傾斜歯114のいずれかと弾性的に噛合い、爪部111と傾斜歯114のいずれかとの弾性的な噛合いで、歯車115の方向R6の回転、即ち、ワイヤ巻き取り部材97の方向R6の回転が禁止される一方、歯車115の方向R5の回転、即ち、ワイヤ巻き取り部材97の方向R5の回転が許容された後に、解除レバー122の前面を部分的に覆ってスナップフィト式に解除レバー122に取付けられている化粧カバー145を取り外し、解除レバー122に形成された貫通孔144を露出させ、貫通孔144を介して工具141の先端の六角部142を歯車115に形成された六角穴143に嵌合させた後、ワイヤ巻き取り部材97が方向R5に回転される方向に工具141を回転させ、ワイヤ巻き取り部材97により牽引ワイヤ94をコイルばね64の弾性引張力に抗して他端96側で部分的に巻き取らせ、爪部材63の爪部59をラッチ歯車58の歯57のいずれかに噛合わせた後に、工具141の回転を停止し、工具141の先端の六角部142を六角穴143から抜き出して、化粧カバー145をスナップフィト式に解除レバー122に取付けることにより、通常動作が行えるように窓開閉装置1を復帰させることができる。
【0045】
以上の窓開閉装置1では、排煙窓2に対するガラス障子4の窓全閉位置で若しくは排煙窓2に対するガラス障子4の部分的開閉位置で、しかも、開口121に解除レバー122が収容されている状態で、感圧スイッチ43が人手により押圧されることにより、電動モータ9が作動されて、回転ドラム8の方向R2の回転でワイヤ5が回転ドラム8の外周面7から繰り出され、ワイヤ5の繰り出しで、排煙窓2に対してガラス障子4が窓全開位置に配され、排煙窓2に対するガラス障子4の窓全開位置で若しくは排煙窓2に対するガラス障子4の部分的開閉位置で、しかも、開口121に解除レバー122が収容されている状態で、感圧スイッチ42が人手により押圧されることにより、電動モータ9が作動されて、回転ドラム8の方向R1の回転でワイヤ5が回転ドラム8の外周面7に巻き付けられ、ワイヤ5の巻き付けで、排煙窓2に対してガラス障子4が窓全閉位置に配され、排煙窓2に対してのガラス障子4の開閉動作中、即ち、電動モータ9の作動中に感圧スイッチ44が人手により押圧されることにより、電動モータ9の作動停止と共に回転ドラム8の回転も停止され、排煙窓2に対してガラス障子4が部分的開閉位置に配され、而して、排煙窓2を換気窓として使用できる。
【0046】
そして、窓開閉装置1では、解除レバー122が開口121から部分的に引き出されると、爪部59のラッチ歯車58の歯57への噛合いが解除され、回転ドラム8が方向R1及び方向R2に回転自在となり、ガスステイ3の窓開放力Fにより回転ドラム8が方向R2に回転され、ガラス障子4が排煙窓2に対して窓全開位置に配されて、排煙窓2からの排煙が可能となる。
【0047】
斯かる窓開閉装置1によれば、回転ドラム8を正転させてワイヤ5を回転ドラム8に巻き取らせる巻き取り力を発生する一方、回転ドラム8を逆転させてワイヤ5を回転ドラム8から繰り出す繰り出し力を発生する電動モータ9を具備した巻き取り及び繰り出し機構10と、巻き取り及び繰り出し機構10での巻き取り力及び繰り出し力の発生を選択的に電気的に切替えることができる電気的切替装置11と、第二の状態では、巻き取り及び繰り出し機構10での巻き取り力及び繰り出し力の発生の有無に拘わらずに、ガラス障子4に付与されている窓開放力Fに基づくワイヤ5の自由繰り出しを許容するラッチ機構12と、ラッチ機構12を第一及び第二の状態に選択的に機械的に切替えることができる機械的切替機構13とを具備しているために、常時は、必要に応じて電動モータ9を具備した巻き取り及び繰り出し機構10により排煙窓2を換気窓として開閉でき、火災時には、電動モータ9の損傷の有無に拘わらずに、排煙窓2を開放でき、而して、窓開閉装置1を低い耐熱性、耐火性をもって実施でき、しかも、排煙後において脚立、梯子等を用いた高所作業をもっての復帰作業を行う必要もなくし得る。
【0048】
ところで、上記の具体例の窓開閉装置1では、解除機構82は、牽引機構81による爪部材63に対する引っ張りの解除を指示する人手により操作可能な解除レバー122を具備しているが、これに代えて
図11から
図16に示す解除機構150を用いてもよく、解除機構150は、牽引機構81による爪部材63に対する引っ張りの解除を指示する人手により操作可能に筐体46の中間壁151の開口152に中間壁151及び筐体46の後壁153に向かう方向Hに滑り移動自在に設けられた解除ボタン154を具備しており、解除ボタン154は、中間壁151に方向Hに滑り移動自在に嵌装されたボタンカバー155と、ボタンカバー155に内装された基部156及び基部156から後壁153に向かって突出して当該基部156に一体的に形成された作動部157を有した解除ボタン本体158とを具備しており、作動部157は、突起部材134に代えて爪部材112の一端部133に形成された切欠き159に部分的に配されていると共に係合斜面161が形成された先端部162を有している。
【0049】
解除ボタン154を具備した解除機構150では、火災等で排煙が必要な際に、ボタンカバー155を後壁153に向かって押して先端部162を切欠き159に更に挿入させ、一端部133の切欠き159への先端部162の更なる挿入で、係合斜面161に案内されて爪部材112の一端部133が軸110を中心として方向R8に回転され、爪部材112の一端部133の軸110を中心とした方向R8の回転で、爪部材112も軸110を中心として方向R8に回転され、爪部材112の方向R8の回転で爪部111と傾斜歯114との弾性的な噛合が解除され、以後、解除レバー122を具備した解除機構82と同様にして、コイルばね64の弾性力により爪部59のラッチ歯車58の歯57への噛合いが解除されてラッチ歯車58の方向R1及び方向R2の回転が許容される結果、ガスステイ3の窓開放力Fにより回転ドラム8が方向R2に回転されて、回転ドラム8の方向R2の回転でワイヤ5が回転ドラム8の外周面7から繰り出され、ワイヤ5の回転ドラム8の外周面7からの繰り出しでガラス障子4が排煙窓2に対して窓全開位置に配され、減速機31の出力回転軸32に対する制動の有無に拘束されないで、排煙窓2からの排煙が可能となる。
【0050】
解除ボタン154を具備した解除機構150では、手動復帰機構83は、六角穴143に対面して解除レバー122に形成された貫通孔144に代えて、六角穴143に対面して中間壁151に形成された貫通孔171を具備し、解除ボタン154を具備した解除機構82での手動復帰機構83においては、排煙窓2からの排煙の完了後、ボタンカバー155を人手により後壁153から離反するように引き出すと、作動部157の先端部162の係合斜面161が切欠き159から部分的に抜け出され、係合斜面161の切欠き159からの抜け出しにより、コイルばね116の弾性力の援助で爪部材112が軸110を中心として方向R7に回転され、解除レバー122を具備した解除機構82と同様にして、ワイヤ巻き取り部材97の方向R5の回転が許容された後に、中間壁151に形成された貫通孔171を介して工具141の先端の六角部142を歯車115に形成された六角穴143に嵌合させた後、ワイヤ巻き取り部材97が方向R5に回転される方向に工具141を回転させ、ワイヤ巻き取り部材97により牽引ワイヤ94をコイルばね64の弾性引張力に抗して他端96側で部分的に巻き取らせ、爪部材63の爪部59をラッチ歯車58の歯57のいずれかへ噛合わせた後に、工具141の回転を停止し、工具141の先端の六角部142を六角穴143から抜き出すことにより、通常の動作が行えるように窓開閉装置1を復帰させることができる。
【0051】
ところで、上記の具体例では、ワイヤ5の一端6を回転ドラム8に固着し、ワイヤ5の他端18を窓枠16に固定し、ワイヤ5の一端6側を巻き取り及び繰り出しするようにしたが、これに代えて、ワイヤ5の一端6側の機構と同様の機構をワイヤ5の他端18側にも設け、ワイヤ5の一端6側の巻き取り及び繰り出しに加えて、ワイヤ5の他端18側も巻き取り及び繰り出しできるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 窓開閉装置
2 排煙窓
3 ガスステイ
4 ガラス障子
5 ワイヤ
6 一端
7 外周面
8 回転ドラム
9 電動モータ
10 巻き取り及び繰り出し機構
11 電気的切替装置
12 ラッチ機構
13 機械的切替機構