(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】治療及びフィジカルトレーニングデバイス
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20220930BHJP
A63B 69/00 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
A61H1/02 Z
A63B69/00 A
(21)【出願番号】P 2018534096
(86)(22)【出願日】2016-12-28
(86)【国際出願番号】 IL2016051391
(87)【国際公開番号】W WO2017115366
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-12-12
(32)【優先日】2015-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】318017763
【氏名又は名称】ヴィーアールヘルス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】オル,エラン
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0230792(US,A1)
【文献】特開平10-151162(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0241969(US,A1)
【文献】中国実用新案第203838407(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0253241(US,A1)
【文献】国際公開第2014/197443(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02-3/00
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの対応する身体部分上にそれぞれ配置される1つ以上の運動センサと、
アプリケーションを動作させるプロセッサを含む第1のコンピュータと、
前記第1のコンピュータにより生成された画像を前記ユーザが見ることができるディスプレイを有するヘッドマウントハウジングと、
ユーザに装着され、前記第1のコンピュータ、第2のコンピュータ、または前記第1のコンピュータとデータ通信するプロセッサとデータ通信する1つ以上のバイオフィードバックセンサと、
を備える
頸部運動障害の治療および
頸筋のフィジカルトレーニングシステムであって、
前記アプリケーションを動作させる前記プロセッサは、前記バイオフィードバックセンサのそれぞれから、または前記バイオフィードバックセンサのそれぞれとデータ通信する前記第2のコンピュータから入力を受信するように構成され、
前記アプリケーションは、エクササイズに関連した身体運動の実行中に前記対応する身体部分のそれぞれのリアルタイム配置に対応して、前記ユーザが見ることのできるバーチャルリアリティオブジェクトを生成するように構成され、前記オブジェクトは、前記ユーザの固有のエクササイズプログラムに従うために、前記ユーザによってなされるさらなる身体運動を示し、
前記1つ以上のバイオフィードバックセンサのそれぞれが、前記身体運動の実行中、またはさらなる身体運動の実行中に、前記ユーザにより経験された痛み強度レベルを示す信号を示すように構成され、且つ、前記1つ以上の運動センサのそれぞれが、前記身体運動または前記さらなる身体運動の実行からの開始位置および終了位置を含む前記ユーザの固有の機能障害のレベルを示す信号を出力するように構成され、
前記アプリケーションは、前記身体運動または前記さらなる身体運動の実行中に、前記ユーザの経験する痛み強度レベルを示す信号が所定の強度を下回る場合に、前記ユーザが前記終了位置を越えて動作を継続するように促すように構成され
、
前記1つ以上のバイオフィードバックセンサは、少なくとも頸筋により生じた電気的ポテンシャルを検出するEMGセンサを含む
システム。
【請求項2】
前記アプリケーションを動作させる前記プロセッサは、前記1つ以上のバイオフィードバックセンサのそれぞれから、前記第1のコンピュータから、または前記第2のコンピュータから入力を受信するように構成され、前記アプリケーションはまた、前記エクササイズに関連した身体運動の実行中の所定の閾値を下回るリアルタイム痛み強度レベルに対して、前記エクササイズに関連した身体運動の継続を促すべく前記ユーザが見ることのできるバーチャルリアリティオブジェクトを生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のコンピュータは、バーチャルリアリティプラットフォームと共に提供され、かつヘッドマウントハウジングに接続される、パーソナルコンピュータである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1のコンピュータは、前記ヘッドマウントハウジング内に収容される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ヘッドマウントハウジングは、前記バーチャルリアリティオブジェクトを伝送可能な少なくとも1つの結像レンズを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ヘッドマウントハウジングは、少なくとも一つの結像レンズと、
スマートフォンを挿入可能なスロットを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
頸部運動障害に苦しむ患者の頸筋のリハビリテーションを促進するための自動化された方法であって、
a)1つ以上の運動センサおよびプロセッサが設けられたヘッドハーネスを装着するステップであって、前記ヘッドハーネス
は画像を見ることができるヘッドマウントディスプレイに接続される、ステップと、
b)身体運動の実行中にユーザにより痛み強度レベルを示す信号を前記プロセッサへ出力するように構成された1つ以上のバイオフィードバックセンサを装着するステップと、
c)
前記プロセッサが、前記ディスプレイに前記画像を表示するステップと、
d)前記生成された画像により頭部動作を前記患者に促すステップと、
e)前記プロセッサが、選択された頸部領域に関する終了位置を判定し、前記終了位置および前記終了位置で患者により経験された痛み強度レベルを示す信号を、前記ディスプレイとデータ通信するコンピュータ化されたデバイスに送信するステップと、および
f)前記コンピュータ化されたデバイスが、そのときの痛み強度レベルが所定の閾値を下回る場合に、前記終了位置を越えて前記頭部動作を継続することを前記患者に促すべくさらなる画像を生成するステップと、
を含
み、
前記1つ以上のバイオフィードバックセンサは、少なくとも頸筋により生じた電気的ポテンシャルを検出するEMGセンサを含む
方法。
【請求項8】
前記方法が、
前記プロセッサが、前記1つ以上のバイオフィードバックセンサのそれぞれか
ら入力を受信するステップと、
前記コンピュータ化されたデバイスが、エクササイズに関連した身体運動の実行中の所定の閾値を下回るリアルタイム痛み強度レベル表示に対応して、前記エクササイズに関連した身体運動の継続を促すべく前記ユーザが見ることができるバーチャルリアリティオブジェクトを生成するステップと
をさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記コンピュータ化されたデバイスが、バーチャルリアリティプラットフォームと共に提供されかつ前記ヘッドマウントディスプレイに接続されるパーソナルコンピュータである、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータ化されたデバイスが、前記ヘッドハーネス内に収容される、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘッドマウントディスプレイが、前記バーチャルリアリティオブジェクトが伝送可能な少なくとも1つの結像レンズ
を有する、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療及びフィジカルトレーニングデバイスの分野に関する。より具体的には、本発明は、頸部又は身体の他の部分の筋のリハビリテーション及び強化を促進する、バーチャルリアリティにより強化された治療及びフィジカルトレーニングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの人々が、頸部の痛みに苦しんでいる又は多くの理由で頸部のエクササイズを行う必要がある。例えば、自動車事故に巻き込まれた人々又はフットボールなどの体がぶつかるスポーツをしている間に怪我を負った人々は、頸筋に又は頸部の構造に損傷を引き起こし得る加速・減速機構又はあらゆる他の衝撃から生じる症状である外傷性頸部症候群(WAD)を発症しがちである。WADのために米国だけで毎年およそ400万人が入院するが、その1/4近くは決して十分には回復しない。健康保険給付支払を含むWAD負傷に関するコストは、1年に1000億米ドルを超える。
【0003】
非特異的頸部痛(NSNP)に苦しんでいる人々の大多数は、WADに関連した症状を経験している又は診断未確定の頸部椎間板ヘルニアを患っている場合がある。この人々の群のために、推奨される治療計画は、頸部の運動及び他の機能的活動トレーニングを促進し、改善されたリハビリテーションに導く、様々なエクササイズを含む。
【0004】
一般に、これらのエクササイズは、自宅に居ながらにして行われる場合がある。しかしながら、これらのエクササイズの単調な性質に起因して、又は関連する痛みに起因して、多くの人々は、推奨される治療計画を忠実に守らず、したがって、痛みの感覚が十分に軽減しない。
【0005】
H.Bahat他、「Cervical Kinematic Training with and without Interactive VR Training for Chronic Neck Pain-A Randomized Clinical Trial」、Manual Therapy 20(2015)68-78は、ユーザの注意が身体運動にではなく外部刺激に向けられる、頸部の運動学的評価及びトレーニングツールとして用いるためのバーチャルリアリティ(VR)デバイスを開示する。このハードウェアは、三次元モーショントラッカを有するヘッドマウントディスプレイを含む。対話型3D仮想環境により提供される視覚刺激へのユーザの反応によって頸部の動作を引き出すべく、可動域(ROM)、速度、及び精度モジュールの使用により動的モーション追跡データが解析される。VRセッション中に、仮想オブジェクトが、屈曲、伸展、右回旋、及び左回旋の4方向のユーザの頭部動作により制御される。トレーニングセッションはまた、頭部追跡タスクを果たすべくユーザの頭部上にマウントされるレーザポインタを含む。このような構成の欠点は、頸部の負傷からの回復又は頸部の負傷の予防を必要とする人々にこのトレーニングを利用しにくいものにする専用のVRシステムの必要性及びコストである。
【0006】
家でのトレーニングはいくつかの限界を有する。臨床医からの直接の指導なしでは、患者は必要とされるエクササイズの正しい実行を確認するための即座のフィードバックを有さない。また、このような指導及び監督がないと、さらに忠実度が低下することが多く、現在の文献は、家でのトレーニングの忠実度は低いことを論じており、患者は規定された家でのトレーニングの重要性を軽視しがちであると提唱している。さらに、慢性の又は他の長期の症状(WAD又はNSNPに関連したものなど)に苦しんでいる患者は、より一層、推奨される家でのトレーニングをする気にはならない(J.Kirsten他、「Barriers to Treatment Adherence in Physiotherapy Outpatient Clinics:A Systematic Review」、Man Ther.Jun,2010;15(32):220-228)。結果として、最初に知覚された症状の痛みは、持続するか又はさらに悪化する場合があり、防ぐことができたかもしれない他の必要な医療的介入につながり、したがって、最初の症状の関連するコストも増加する(「Adherence to Long-Term Therapies:Evidence for Action」、World Health Organization,Geneva,Switzerland,2003)。
【0007】
骨格の姿勢を支える筋の活性化は、例えば、「Cervical Resistance Training-Effects on Isometric and Dynamic Strength」(Taylor et al.,Aviation,Space,and Environmental Medicine,Vol.77,No.11,November 2006)で開示されるように多くの怪我を防ぐのに効果的な方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、頸部の可動性の回復を容易にする、エクササイズ計画の遵守を促進する、費用効果の高い、頸部治療及びフィジカルトレーニングデバイスを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、所与の身体部分のリハビリテーション及び改善される調整を容易にする、治療及びフィジカルトレーニングデバイスを提供することである。
【0010】
本発明の他の目的及び利点は、説明が進むにつれて明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、頸部治療及びフィジカルトレーニングデバイスであって、ヘッドハーネスと、前記ヘッドハーネスの選択された領域に取り付けられる1つ以上の抵抗適用要素とを備え、前記1つ以上の要素が、固有の頸部関連症状のための頸筋活動を促進する、所望の頭部運動へのユーザにより選択される位置固有レベルの抵抗を与えるように構成される、デバイスを提供する。
【0012】
ヘッドハーネスは、好ましくは、複数の間隔をおいて配置された頭部に係合可能なストラップと共に構成され、前記ストラップのそれぞれが、抵抗適用要素と結合可能な領域のうちの少なくとも1つを備え、結合された抵抗適用要素は、それと反対側に存在する頸部関連筋を伸張させ、頭部がバランスのとれた状態を達成するまで前記伸張した筋を収縮させることを促進するように適合される。
【0013】
本明細書で言及される場合の「それと反対側に存在する」という用語は、頭部運動の前の、結合された抵抗適用要素に対する頸部関連筋又は筋群の相対的な幾何学的位置を意味し、したがって、前記頸部関連筋又は筋群は、抵抗適用要素から頭部に関連した回旋の中心を通って延びる線上に存在する組織と一致する又はつながり、この場合、前記頭部に関連した回旋の中心は、前記組織と前記抵抗適用要素との間に位置する。筋又は筋群が、互いに左右対称であり得る2つの対側性に存在する抵抗適用要素により伸張されるときに、該筋又は筋群と一致する又はつながる組織は、2つの抵抗適用要素の中間に延びる、頭部に関連した回旋の中心を通る線上に存在する。
【0014】
一実施形態では、頸部治療デバイスは、コンピュータにより生成された画像をそれで見ることができ、これにより、バーチャルリアリティ強化と協働して頸部のリハビリテーショントレーニングを可能にする、ヘッドハーネスに接続されるヘッドマウントディスプレイをさらに備える。
【0015】
ヘッドマウントディスプレイは、結像レンズと、スマートフォンなどのプロセッサによりイネーブルにされるデバイスを挿入可能なスロットと共に構成されてよい。
【0016】
本発明はまた、頸部治療デバイスと、前記画像を生成するように構成されたコンピュータと、ヘッドハーネスが装着されるときにユーザの頭部のリアルタイム三次元配置を検出するための前記コンピュータとデータ通信するセンサと、前記コンピュータのプロセッサ上で動作するアプリケーションとを備えるシステムを対象とする。
【0017】
前記アプリケーションは、前記センサから入力を受信し、前記リアルタイム配置に対応してユーザが前記ディスプレイ上で見ることができるバーチャルリアリティオブジェクトを生成するように構成され、前記オブジェクトは、ユーザ固有のエクササイズプログラムに従うためにユーザによってなされるべきさらなる頭部運動を示す。
【0018】
本発明はまた、治療及びフィジカルトレーニングシステムであって、ユーザの対応する身体部分上にそれぞれ配置される1つ以上の運動センサと、アプリケーションを動作させるプロセッサ上の第1のコンピュータと、前記第1のコンピュータにより生成された画像を前記ユーザが見ることができるディスプレイと共に構成されるヘッドマウントハウジングとを備える、システムにを対象とする。
【0019】
前記アプリケーションは、前記センサのそれぞれから又は前記センサのそれぞれとデータ通信する第2のコンピュータから入力を受信するように構成され、前記アプリケーションはまた、エクササイズに関連した身体運動の実行中の前記対応する身体部分のそれぞれのリアルタイム配置に対応して、前記ユーザが見ることができるバーチャルリアリティオブジェクトを生成するように構成され、前記オブジェクトは、ユーザ固有のエクササイズプログラムに従うために前記ユーザによってなされるべきさらなる身体運動を示す。
【0020】
一実施形態では、システムは、前記ユーザに装着され、第1のコンピュータと又は第1のコンピュータとデータ通信するプロセッサとデータ通信する1つ以上のバイオフィードバックセンサをさらに備え、前記1つ以上のバイオフィードバックセンサのそれぞれは、身体運動又はさらなる身体運動の実行中にユーザにより経験された痛み強度レベル及びユーザ固有の機能障害レベルを示す信号を出力するように構成される。アプリケーションは、1つ以上のバイオフィードバックセンサのそれぞれから、第1のコンピュータから、又は第2のコンピュータから入力を受信するように構成され、前記アプリケーションはまた、エクササイズに関連した身体運動の実行中の所定の閾値を下回るリアルタイム痛み強度レベル表示に対応して、エクササイズに関連した身体運動の継続を促すべく前記ユーザが見ることができるバーチャルリアリティオブジェクトを生成するように構成される。
【0021】
本発明はまた、頸部可動域を判定するためのシステムであって、複数の間隔をおいて配置された頭部に係合可能なストラップと、上方に存在する、実質的に水平に配置された、そこから前記複数のストラップが延びる頭蓋冠領域と共に構成された、ヘッドハーネスと、前記頭蓋冠領域に取り付けられたセンサブロックであって、前記センサブロックは、複数の並進方向及び複数の回旋方向の、頭部に関連した回旋の中心に関する頭部運動を検出するように適合された1つ以上のセンサと、前記1つ以上のセンサからデータを受信し、前記受信したデータに基づいて、開始位置と終了位置との間の選択された頸部領域の変位に対応する頸部可動域を判定するように動作可能なプロセッサとを備える、センサブロックと、前記判定された頸部可動域を表すデータを出力するための手段とを備える、システムを対象とする。
【0022】
本発明はまた、頸部運動障害に苦しんでいる患者の頸筋のリハビリテーションを促進するための自動化された方法であって、1つ以上の運動センサとプロセッサが設けられたヘッドハーネスを装着するステップであって、前記ヘッドハーネスは、コンピュータにより生成された画像をそれで見ることができるヘッドマウントディスプレイに接続されるステップと、身体運動の実行中にユーザにより経験された痛み強度レベルを示す信号を前記プロセッサに出力するように構成された1つ以上のバイオフィードバックセンサを装着するステップと、前記ディスプレイにより前記画像を見るステップと、前記生成された画像により促される対応する頭部動作を行うステップと、前記プロセッサにより、選択された頸部領域に関する終了位置を判定し、前記終了位置及び前記終了位置で前記患者により経験された痛み強度レベルを示す信号を、前記ディスプレイとデータ通信するコンピュータ化されたデバイスに送信するステップと、前記コンピュータ化されたデバイスにより、そのときの痛み強度レベルが所定の閾値を下回る場合に、前記終了位置を越えて頭部動作を継続することを前記患者に促すべくさらなる画像を生成するステップと、を含む方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】組み立てられた状態で概略的に示される、本発明の一実施形態に係る頸部治療デバイスの前からの斜視図である。
【
図1B】装着したユーザが
図1Aに示された配置に対して頭部を動かした後を示す、
図1Aの頸部治療デバイスの前からの斜視図である。
【
図2A】本発明の別の実施形態に係る頸部治療デバイスの前からの斜視図である。
【
図3A】本発明の別の実施形態に係る頸部治療デバイスの後ろからの斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る体にマウントされたときの治療及びフィジカルトレーニングシステムの正面概略図である。
【
図5A】本発明の別の実施形態に係る頸部治療デバイスの上及び横からの斜視図である。
【
図5B】装着したユーザが頭部を動かした後を示す、
図5Aの頸部治療デバイスの前からの斜視図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係る頸部治療デバイスの正面上方からの斜視図である。
【
図7】
図6の頸部治療デバイスと併せて用いられるセンサブロックのブロック図である。
【
図8】頸部可動域を判定するための
図7のセンサブロックを採用するシステムの概略図である。
【
図9】本発明の別の実施形態に係る頸部治療デバイスの正面上方からの斜視図である。
【
図10】頸部運動障害に苦しんでいる患者を自動的にリハビリするための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の頸部治療デバイスは、理学療法士又はトレーナにより開発された矯正エクササイズプログラムに従ってユーザにより選択される位置固有レベルの抵抗を適用可能なヘッドハーネスにより具体化される。エクササイズプログラムの遵守は、頸筋のリハビリテーションを最適化する又は体操セッションを最適化する対話型刺激活動の過程でユーザが頭部動作を行うことを促進する、VRアプリケーションによって容易にされる。ヘッドハーネスとバーチャルリアリティシステムとの両方とも高価でなく、ユーザが推奨される頸部のエクササイズを自宅に居ながらにして行うことを可能にする。
【0025】
図1A~
図1Cは、頸部治療デバイス10が、フック・ループ締結材、取り外し可能な接着材、スナップ、磁石、又は当業者によく知られた他の取り外し可能な締結手段により例えば10グラムのオーダーのリハビリ用ウェイト3を取り外し可能に取り付けることができる複数の間隔をおいて配置されたパッチ2が設けられたヘッドハーネス1を備え、第1の締結要素がパッチに固定され、第1の要素と結合するための第2の締結要素がウェイトに固定される、本発明の第1の実施形態を例示する。
【0026】
例えば、磁石が採用されるとき、各ウェイト3は、例えば、内側の鉛層と外側のシリコーン層又はファブリック層で覆われるネオジム磁石を内蔵してよい。したがって、ウェイト3は、磁気係止システムによって、選択されたパッチ2に形成された鉄領域に取り付け可能及びそこから取り外し可能である。
【0027】
ヘッドハーネス1は、パッチ2が貼り付けられる2つのストラップを有する。第1のストラップ12は、装着されたときに、横断面を近似する平面を画定するように頭部を取り囲む。第1のストラップ12の後部は、後頭部に係合するように適合され、その右前部及び左前部は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)4に固定され、これは対応する側頭部と係合するように適合されている状態で鼻により支持されてよい。第1のストラップ12に実質的に垂直な第2のストラップ13も設けられ、HMD4に及び後頭部の第1のストラップ12の一部に取り付けられ、ゆえに、装着されたときに、側頭骨、例えば額及び頭頂骨と係合している状態で前額面を近似する平面を画定するように頭蓋を取り囲む。第1のストラップ12の右前部及び左前部は、対応する連結部材7を介してHMD4に解放可能に固定されてよい。
【0028】
第1のストラップ12及び第2のストラップ13は、ストラップを最初に引き伸ばすことによりヘッドハーネス1が頭部にマウントされる又はそこから取り外されることを可能にするべくエラストマー材料で作製されてよい。代替的に、それらは、可撓性のプラスチック材料、例えばポリプロピレン、又は皮革などの硬質の引き伸ばし可能でない材料で作製され、バックルなどの適切な締結具により互いに固定されてよい。ストラップ12及び13は、例えばマイクロファイバファブリック又はシリコーンで作製されたパッドで異なる位置にクッションが与えられてよい。
【0029】
ヘッドハーネス1は、リハビリ用ウェイト3が頭蓋の選択された領域でパッチ2又は任意の他の締結具に取り外し可能に取り付けられ得る限り、他の方法で同様に構成されてもよいことが理解されるであろう。
【0030】
理学療法士又は任意の他の医師は、頸部の痛みの発生源を突き止め、リハビリテーションと痛みの軽減との両方を最適にもたらすことになるエクササイズプログラムを開発する。抵抗のレベルは、より多くのウェイト3が対応するパッチ2に取り付けられるときに増加する。ウェイトは、ユーザが反応して、弱っていることが判明している頸筋を強化することになる頭部動作をするように促すことになる、ヘッドハーネス1上のパッチの位置に取り付けられる。
【0031】
デバイス10を使用してすることができる矯正的な頭部動作、例えば
図1Bに示された傾ける頭部動作は、顎が下に向くように頭部が前屈されるときの屈曲、顎が上に向くように頭部が後屈されるときの伸展、頭部を横に傾けること、頭部を左又は右に回旋すること、頸部の全長を変化させる長さ方向の伸展又は収縮、及びその任意の組み合わせから選択することができる。頭部の回旋を支援する又はこれに抵抗するべく、特定の頭部領域でのウェイトの適用に反応して頭部によってかかるモーメントが計算されてよい。
【0032】
一態様では、エクササイズプログラムを確実に遵守するために、ユーザは、ユーザの目を覆うように寸法設定されるバーチャルリアリティディスプレイを提供するHMD4を通じて現れる仮想オブジェクトによりガイドされる。HMDは、立体的な像を生成するべく各目での偏光レンズなどで奥行きの知覚をもたらすように構成される。仮想オブジェクトは、対話型刺激活動の過程で、ユーザが前もって開発されたエクササイズプログラムに従って矯正的な頭部動作をするように促されるような様態で生成される。
【0033】
頸部治療デバイスをバーチャルリアリティにより強化されたされたものにするために、厚くされたHMD4は、スマートフォン5を挿入可能なスロット6と共に構成される。スロット6内に挿入された後のスマートフォン5は、HMD4の平坦な外面に実質的に平行であり、ゆえに、スマートフォンのディスプレイ画面は、ユーザの目に面し、一方、結像レンズは、ディスプレイ画面とユーザの目との間に、例えば目から80mmの距離に位置する。
【0034】
ゲームなどのバーチャルリアリティ体験をもたらすためのアプリケーションが、スマートフォン5上で動作する。アプリケーションは、有利には、配向センサ、ジャイロスコープ、加速度計、及び地球磁場センサ、又はこれらの組合せなどの、リアルタイム3D頸部配置を判定するスマートフォン5内に搭載されたセンサからその入力を受信する。代替的に、アプリケーションは、ヘッドハーネス上にマウントされた1つ以上のセンサからその入力を受信する。3D頸部配置に対応して、画像がアプリケーションにより生成され、ユーザの目で見ることができる。ユーザは、普通は、ユーザのリハビリの必要に応じてプログラムされた結果が達成可能となるように、対応してさらなる頭部運動を行うことが期待される。
【0035】
例えば、アプリケーションは、ポインタ及び目標を含む画像を生成する。ポインタと目標との空間的距離は、ポインタを目標と位置合わせさせる適切な頭部運動がその後行われるときにユーザが所与のエクササイズプログラムを確実に遵守するようにプログラムされる。
【0036】
アプリケーションは、好ましくは、スマートフォン5に、フィードバックとして機能する信号を、適切なデータネットワーク上で、理学療法士とインターフェースするコンピュータ化されたデバイスへ送信させるように適合される。送信された信号は、理学療法士がユーザの頸部の動作を経時的にオンラインで監視し、エクササイズの遵守度を判定することを可能にする、センサ入力を示してよい。理学療法士は、理学療法士により選択される画像が代わりに表示されることになるように、予めプログラムされたユーザ反応画像をオーバーライドすることになるデータを、ユーザのスマートフォン5上で動作するアプリケーションに直ちに送信してよい。理学療法士により選択される画像は、開発されたエクササイズプログラムをさらに遵守するようユーザに促すように適合される。そうすることが望まれるなら、理学療法士により選択される画像は、ユーザがゲームの1ステージで最適なエクササイズ順守を達成することを促進する、理学療法士とユーザとの間でプレイされるマルチステージ対話型ゲームの1ステージであってよい。
【0037】
理解され得るように、頭部動作のリアルタイム追跡及び監視のための及び入力信号の遠隔送信のための手段としてのスマートフォン5の使用は、VRシステムに接続される専用の高価な従来技術のコンピュータの代わりとなり、バーチャルリアリティにより強化された頸部治療デバイスのコストを顕著に低減する。
【0038】
別の態様では、治療デバイスのリハビリ能力は、配向センサなどの外部センサを腕又は脚などの理学療法を必要としている身体部分に装着することにより増加され得る。この外部センサは、例えば近距離Bluetooth(登録商標)信号をスマートフォンのトランシーバに送信することによりスマートフォン5と無線データ通信してよい。アプリケーションは、外部センサから入力を受信し、対応して、ユーザのリハビリの必要に応じてプログラムされた結果が達成されることを可能にするスマートフォンの画面上で見ることができる画像を生成する。プログラムされた結果、例えば、矯正的な身体アクションに追従するポインタを、目標とされる生成された画像と位置合わせすることは、装着した身体部分の又はその近傍の身体部分のリハビリテーションを容易にする。
【0039】
外部センサから導出される画像が、内蔵センサから導出される画像に加えてスマートフォンの画面上に生成されてよく、頸部の並びに所与の身体部分のバーチャルリアリティにより強化されたリハビリテーションを可能にする。代替的に、単一の目標画像が、頸部と所与の身体部分との両方が矯正的なアクションを一斉に行うときにのみ達成することができるプログラムされた結果の達成を容易にするべくスマートフォンの画面上に表示されてよい。代替的に、単一の目標画像が、所与の身体部分によってのみ達成することができるプログラムされた結果の達成を容易にするべくスマートフォンの画面上に表示されてよい。
【0040】
図2A~
図2Bは、頸部治療デバイス20が、ヘッドハーネス21、ボディハーネス23、複数の交換可能又は調節可能な抵抗コード22、及びHMD25を備える、本発明の第2の実施形態を例示する。ヘッドハーネス21は、HMD25に固定される。ヘッドハーネス21とHMD25との両方は、第1の実施形態でのそれらの対応する部分と同様に構成されてよく、又は代替的に、僅かに異なって構成されてもよい。
【0041】
各コード22の第1の長手方向の端は、ヘッドハーネス21の選択された領域に固定され、各コード22の第2の長手方向の端は、ボディハーネス23の選択された領域に固定される。コード22の第1及び第2の長手方向の端は、対応する留め要素24により固定される。留め要素24は、次に、クリップなどによりヘッドハーネス21又はボディハーネス23のファブリックに解放可能に取り付けられてよく、又はファブリックに恒久的に取り付けられてよい。代替的に、2つ以上のコード22の一端が、単一の留め要素24に固定されてよい。各コード22により提供される抵抗のレベルは、その長さを変えることにより調節されてよい。長さを変える作業は、留め要素24の位置を移動させることにより行われてよい。所望であれば、第1の長さを有する第1のコードは、異なる抵抗を与えるべく第2の長さを有する第2のコードと交換されてよい。理学療法士は、弱っていることが判明している頸筋を強化することになる頭部動作の実行中にリハビリテーションと痛みの軽減との両方をもたらすためのユーザ固有のエクササイズプログラムを開発するべく、所定のレベルの抵抗が適用されるべき頭部の領域を選択する。
【0042】
頸部治療デバイス10と同様に、頸部治療デバイス20と協働して行うことができるリハビリ活動を、バーチャルリアリティにより強化されたされたものにするために、HMD25内にスマートフォンを挿入可能である。
【0043】
本発明の別の実施形態では、本発明の治療デバイスは、身体活動の過程でユーザを監視及び誘導するように適合される1つ以上のバイオフィードバックセンサを備える。
【0044】
図3A~
図3Bは、頸部治療デバイス30が、それぞれにリハビリ用ウェイトを取り外し可能に取り付けることができる複数の間隔をおいて配置されたパッチ2と、スマートフォンを挿入可能な、前述のバーチャルリアリティ体験を容易にするための光学要素44と共に設けられるHMD42と、複数のバイオフィードバックセンサとが設けられたヘッドハーネス38を備える、本発明の別の実施形態を例示する。光学要素44は、ヘッドハーネス38の外部にマウントされ、光学要素の駆動ユニットに運動学的に接続された、1つ以上のダイヤル57の操作により焦点合わせされてよい。
【0045】
1つのバイオフィードバックセンサは、額の側部上の触知できる浅側頭動脈と接触するようにヘッドハーネス38の第1のストラップの内面上に配置可能な心拍変動(HRV)センサ52であってよい。したがって、HRVセンサ52は、独立して又は他のバイオフィードバックセンサと組み合わせて、パルスの急激な変化を感知することによりユーザの痛みへの反応を検出するように適合される。突然の痛みが検出されるとき、例えばユーザが特定の3D頸部配置を達成したときに、ユーザは、痛みの感覚を生じる、リハビリする必要がある頸部の領域に気付くことになる。バイオフィードバックセンサは、スマートフォンと無線データ通信してよく、対応して、アプリケーションが、ユーザの実行を示す、例えば、スマートフォンの画面で見ることができる画像により最適なエクササイズプログラムを提案することができる、目標データを受信することを可能にする。
【0046】
別のバイオフィードバックセンサは、所与の活動中に頸筋により生じた電気的ポテンシャルを検出するための筋電位(EMG)センサ51であってよい。したがって、ユーザに係合可能な感知パッド56と共に設けられ得るEMGセンサ51は、エクササイズプログラム中の筋活動を測定し、測定したデータをアプリケーションに送信することができる。エクササイズプログラムは、受信したデータに対応して自動的に修正されてよく、或いはユーザ又は理学療法士の入力により手動で変更されてよい。理学療法士のコンピュータは、通信リンクによりアプリケーションと接続されてよい。
【0047】
デバイス30と併せて用いられ得る第3のタイプのバイオフィードバックセンサは、エクササイズプログラムの過程でユーザの脳の電気活性を検出するための脳波(EEG)センサ54である。したがって、エクササイズプログラムは、突然感じた痛みの感覚を示し得るユーザの判定された認知負荷に対応して修正されてよい。
【0048】
発汗センサ53などの他のタイプのバイオフィードバックセンサが同様に用いられてよいことが理解されるであろう。
【0049】
図4に示された本発明の別の実施形態では、フィジカルトレーニングシステム60は、腕61又は脹脛63などの選択された身体部分上に配置される1つ以上のセンサを備える。これらのセンサは、
図3A~
図3Bに例示されたバイオフィードバックセンサ51~54のいずれか、或いは位置センサ又は配向センサなどの当業者によく知られた任意の他のセンサであってよい。
【0050】
センサは、アームストラップ66又はレッグストラップ67などのストラップによって又は任意の他のよく知られた締結手段によって、選択された身体部分に近接して配置されてよい。ストラップは、センサと通信するマイクロコントローラ、検出したデータをヘッドハーネス38に接続されるハウジング42内に保持されたスマートフォンに及びスマートフォンのプロセッサ上で動作するアプリケーションに送信するための無線通信デバイス、及びセンサに電力を与えるための例えば3.3Vの容量を有するバッテリパックと共に構成されてよい。
【0051】
所与の調整プログラムの達成を容易にする、所望の身体運動への位置固有レベルの抵抗を与えるために、選択された身体部分の近傍に1つ以上のウェイト69又は当業者によく知られた抵抗適用要素が適用される。ユーザは、ハウジング42の光学要素を通じて、ユーザ固有のエクササイズプログラムに従うためにユーザによってなされる必要があるさらなる身体運動の提案である1つ以上のバーチャルリアリティオブジェクトを見る。HMD42がヘッドハーネス38に接続されるので、ユーザは、スマートフォン又は任意の他のコンピュータ化されたデバイスを保持する必要はなく、アプリケーションにより推奨されるエクササイズを行うのに手が自由となることを可能にする。
【0052】
各ウェイト69は、スマートフォンと無線通信する通信デバイスを備えてよい。したがって、アプリケーションは、各ウェイト69及び各センサを一意識別子により識別することができ、ゆえに、エクササイズプログラムの順守を判定することができる。
【0053】
図5Aは、頸部治療デバイス70が、頬骨、頬骨突起(ほお骨として普通に知られている)、及び/又は側頭骨と係合するように適合された薄い前後方向に延びる右支持区域81及び左支持区域83、前後方向に延びる支持区域81及び83よりも下方に存在する薄い僅かに前方に湾曲した後頭支持区域87、後頭支持区域87に或る角度をなして連結するべく湾曲した上縁及び下縁を有する各前後方向に延びる支持区域の連結部分88、及び頭蓋冠又は頭蓋の実質的に平坦な頂部上にフィットするように適合された上方に存在する水平に配置された頭蓋冠領域89と共に構成されたヘッドハーネス78を備える、本発明の別の実施形態を例示する。前後方向に延びる支持区域81及び83の前端は、HMD82の対応する横方向の端に取り付けられる、例えば、その後部領域に取り外し可能に取り付けられる。
【0054】
頭蓋冠領域89は、そこから複数のストラップ71~76、例えば弓形に形状設定されたストラップが下方に支持区域へ延びる接合部である。ストラップ71及び72は、支持区域83のそれぞれ前端及び後端に取り付けられる。ストラップ75及び76は、支持区域81のそれぞれ後端及び前端に取り付けられる。頭頂骨に沿って後方に延びるストラップ73及び74は、支持区域87のそれぞれ左領域及び右領域に取り付けられる。
【0055】
ストラップ71~76のそれぞれは、リハビリ用ウェイトを生理学的に重要な頸部関連位置に配置するために用いられる。この実施形態では、各リハビリ用ウェイト91は、ウェイト91がヘッドハーネス78に迅速に適用される又はそこから解放されることを可能にするべく、支持区域から又はストラップから突き出る対応するねじ付き支柱94とねじ式に係合可能である。ねじ付き支柱94と係合されるナット96は、接着又は融着などにより支持区域又はストラップに固定されてよく、又は代替的に、ねじ付き支柱94は、支持区域又はストラップに直接固定されてよい。
【0056】
公知の解剖学的特徴と一致し得る頭部に関連した回旋の中心又は回旋軸を中心としたHMD82の重量により課されるモーメントのバランスをとるために、少なくとも150g、例えば300gの比較的重いウェイトが、支持区域87とストラップ73及び74との接合部に適用される。
【0057】
他のウェイト91は、異なるヘッドハーネス領域で対応するねじ付き支柱94に適用されるときに、反対側に存在する頸部関連筋を伸張させ、これにより、抵抗及び頭部が直立するまで前庭系と協働して頭部をバランスのとれた平衡状態に戻すべく該筋を収縮させた後の筋の成長を誘発するのに用いられる。これらの他のウェイトは、かなり軽くてもよく、例えば10~100gの範囲であってよい。もちろん、実際の適用されるウェイトは、計画されたエクササイズプログラムを遵守するために医療従事者の裁量に従って変更されてよい。
【0058】
ストラップ76と支持区域81の接合部と、ストラップ71と支持区域83の接合部との両方のねじ付き支柱94に適用されるウェイトが、屈曲、すなわち顎を胸に当てようとする運動を引き起こす。屈曲は、頭蓋の後部下から骨盤までずっと延びる脊柱起立筋を構成する腸肋筋、最長筋、及び棘筋での抵抗を誘発し、腰で前屈するのを支援するばかりでなく、背中が立位に戻ることを促進するのを支援する。
【0059】
単一の前後方向に延びる支持区域の後方に存在する支柱94のうちの1つ以上に適用されるウェイトが、頭部の1つの回旋方向の回旋を引き起こすことにより、反対側に存在する胸鎖乳突筋(SCM)及び頸部の側方に存在する斜角筋群での抵抗を誘発する。
【0060】
ストラップ73及び74の中央に存在する支柱94のうちの1つ以上に適用されるウェイトが、顎が上を向くように頭部の伸展を引き起こすことにより、椎前筋である頸長筋及び頭長筋での抵抗を誘発する。
【0061】
図5Bは、頸部治療デバイス70のヘッドハーネス78を装着した、耳を肩に当てようとして頸部を傾けることにより
頸椎の側方屈曲運動を行ったユーザ65を例示する。
【0062】
図6に示すように、ヘッドハーネス78の頭蓋冠領域89は、その上に配置されるセンサブロック105を支持するように構成される。センサブロック105は、6つの並進方向と3つの回旋方向との9つの方向の、頭部に関連した回旋の中心に関する頭部運動を検出するように適合される。加速度計又は他のタイプの運動センサは、垂直に配置されたときよりも水平に配置されたときに顕著により高レベルの精度を有することが分かっており、したがって、センサブロック105を頭蓋冠領域89の上に実質的に水平に配置することは、頭部運動の測定精度を増加させる。
【0063】
センサブロック105のブロック図が
図7に示される。センサブロック105は、デカルト軸のそれぞれに沿った動きを感知するための加速度計などの直線運動検出器103と、デカルト軸のそれぞれを中心とした角運動を検出するためのジャイロスコープなどの角運動検出器106を備える。所望であれば、検出器103及び106は、慣性計測装置(IMU)などの単一のデバイスに組み合わされてよい。ローカルプロセッサ107が、検出器103及び106のそれぞれから入力を受信し、これらの入力と格納された命令に基づいて、運動融合モジュールの9軸アルゴリズムなどによってリアルタイム3D頸部配置を判定する。トランシーバなどの送信器109が、プロセッサ107により出力されたデータを、コンピュータ化されたデバイス111に信号Sにより無線で送信し、コンピュータ化されたデバイス111は、判定されたリアルタイム3D頸部配置に対応して推奨されるユーザ固有のアクションを生成する。送信器109は、関連する通信回路と共に、近距離信号S又は代替的にリモート信号を、セルラーネットワークを経由して又は例えばセンサブロック105に設けられたUSBポートに差し込まれたドングルによって送信するように適合されてよい。
【0064】
コンピュータ化されたデバイス111が、VRアプリケーションが動作する、HMD内に収容される、スマートフォン又は任意の他の専用のプロセッサによりイネーブルにされるモバイルデバイスであるとき、推奨されるユーザ固有のアクションは、1つ以上の特定の頸筋をリハビリするべくHMDを通じて見られるアプリケーションにより生成される画像に応答した矯正的な頭部動作である。矯正的な頭部動作が、位置固有の頸筋を、選択的に適用されたウェイトにより課される負荷により伸張させることになり、その後、該頸筋を強化することになる。
【0065】
コンピュータ化されたデバイス111が、ローカルユーザがアクセス可能なコンピュータ、例えばHMD内に収容されるコンピュータと通信リンクにより接続される、理学療法士又は医師などの保健専門家のコンピュータであるとき、矯正的な頭部動作は、アプリケーションにより生成される画像によって表されるものに取って代る又は初めから計画されたエクササイズプログラムである最適なエクササイズプログラムを考慮に入れるべく保健専門家によって計画される。矯正的な頭部動作に関する命令は、例えばアプリケーションと協働して、ローカルユーザがアクセス可能なコンピュータのマイクロフォン又は画面により又はHMDを介して通信されてよい。
【0066】
代替的に、コンピュータ化されたデバイス111は、はるかにより高レベルのコンピュータリソース、したがって、例えばユーザのモバイル性があまり重要ではない診療室内での使用のための、プロセッサによりイネーブルにされるモバイルデバイスよりも洗練されたより高品質の画像生成能力を有するPCベースのVRプラットフォームを構成するローカルユーザがアクセス可能なコンピュータであってよい。コンピュータ化されたデバイス111は、有線接続又は無線接続によりVRプラットフォームからの入力と対話するためのディスプレイ及びソフトウェアを備えるHMDに接続される。頭部の位置がHMDにより導出される間に他の身体部分を追跡するべく外部センサが用いられてよい。
【0067】
図8に示すように、センサブロック105は、ウェイト結合手段なしに及びHMDなしに構成された
図9に示されたヘッドハーネス78と協働して頸部可動域(CROM)を判定するための診断ツールとして用いられるシステム100の一部であってよい。湾曲経路又は直線経路に沿ったユーザの頭部動作中に、センサブロック105のプロセッサ107が、直線運動検出器及び角運動検出器のそれぞれから入力を受信した後で、例えば物理基準点又は仮想基準点に対する、開始位置と終了位置との間の選択された頸部領域の変位を判定する。変位は、健康な人の同様の頭部動作に関する期待される変位と比較されてよい。期待される変位は、例えば、多数の被検者、例えば1000人の被検者の平均変位であってよい。
【0068】
頸部の痛みに関連した機能障害のレベルを定量化するためのCROM評価は、従来技術ではゴニオメータ及びインクリノメータにより実行されるが、普通はこれらのデバイスで測定することができるのは二次元の動きのみである。三次元の動きを測定するために電磁気モーション追跡デバイスが用いられるが、それらの使用は、それらのコスト、技術的複雑さ、及び選択された頸部領域のリアルタイムの連続追跡中に大量のコンピュータリソースの利用を必要とすることに起因して制限される。対照的に、システム100のプロセッサは、開始位置と終了位置のみを判定するようにプログラムされる。したがって、費用効果の高い診断ツールを提供するべく、コンピュータリソースへの最小の負荷で、さらに驚くほど高レベルの精度で、選択された頸部領域のCROMが得られるようにすることができる。したがって、本発明の診断ツールは、CROMを判定することにより障害のレベルを評価するために政府機関への大きな有用性を有する。
【0069】
図7に例示されたセンサブロック105のコンポーネントに加えて、システム100は、所与の活動中に頸筋により生じた電気的ポテンシャルを検出するためのEMGセンサ51、パルスの急激な変化を検出するためのHRVセンサ52、発汗センサ53、及び脳の電気活性を検出するためのEEGセンサ54などの、プロセッサ107と無線又は有線データ通信する1つ以上のバイオフィードバックセンサを付加的に備える。バイオフィードバックセンサは、ヘッドハーネス上に又は適切な身体部分上にマウントされてよい。プロセッサ107は、これらのバイオフィードバックセンサのうちの1つ以上から突然に検出された痛み感覚を示す信号Pを受信した後で、コンピュータ化されたデバイス111に信号S又は信号Tを送信し、これにより、推奨されるユーザ固有のアクションが、格納された命令に対応して生成されることになる。信号Tは、所定の強度レベルを上回る痛みが感知されていることを示し、信号Sは、終了頸部位置又は痛みが感知されているときの所与の動作中の全変位を表す。プロセッサ107は、ユーザが異なる識別可能な痛み強度レベルに従って分類することができた、各痛み強度レベルはバイオフィードバックセンサのうちの1つ以上の測定値に対応することが見出された異なるタイプの痛みを生じた後で信号Tを出力するべく、前もって校正されてよい。
【0070】
トランシーバなどの送信器109は、プロセッサ107により出力されたデータを、コンピュータ化されたデバイス111に信号Sにより無線で送信し、コンピュータ化されたデバイス111は、判定されたリアルタイムCROMに対応して推奨されるユーザ固有のアクションを生成する。医療従事者は、示された痛み強度レベルが過度に高くなければ、患者、すなわち、ヘッドハーネスが装着されるユーザに、ユーザが行った終了位置を越えて頸部の運動を続けることを促進するべく、痛み強度レベルの表示に依拠してよい。
【0071】
図10は、頸部運動障害に苦しんでいる患者を自動的にリハビリするための方法を例示する。ステップ121でVRにより支援されるセンサブロックがマウントされたヘッドハーネスが患者に装着された後で、ステップ123でアプリケーションがHMDを通じて患者により見られる画像を生成する。したがって、患者は、ステップ125で、生成されたVR画像により促される対応する頭部動作を行う。ステップ127で、センサブロックが、コンピュータ化されたデバイスに、頭部動作の終了位置及び終了位置での患者の痛み強度レベルを示す信号を送信し、次に、ステップ129で、コンピュータ化されたデバイスが、そのときの痛み強度レベルが格納された命令により定義される所定の閾値を下回る場合に、以前の終了位置を越えて頭部動作を継続するように患者に促すべくさらなる画像を生成する。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態が例示として説明されているが、本発明は、請求項の範囲を超えずに、多くの修正、変形、及び適応と共に、並びに、当業者の範囲内にある多くの均等物又は代替的解決策の使用と共に、実施することができることが明白であろう。