IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エス4・エナジー・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-29
(45)【発行日】2022-10-07
(54)【発明の名称】フライホイールシステム
(51)【国際特許分類】
   F16H 33/02 20060101AFI20220930BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20220930BHJP
   F16F 15/315 20060101ALI20220930BHJP
【FI】
F16H33/02 A
F16F7/00 E
F16F15/315 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018563081
(86)(22)【出願日】2017-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 NL2017050357
(87)【国際公開番号】W WO2017209612
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】2016882
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】516300885
【氏名又は名称】エス4・エナジー・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】フィッサー,レーンデルト
(72)【発明者】
【氏名】テールリンク,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー・ホフ,ドミニク
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0138573(US,A1)
【文献】特表2015-522771(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第2050108(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0025625(US,A1)
【文献】特開2005-329857(JP,A)
【文献】特開昭62-103476(JP,A)
【文献】米国特許第6203924(US,B1)
【文献】特開昭62-103480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 33/02
F16F 7/00
F16F 15/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-リング状かつ回転軸に配置されたフライホイールロータと、
-災害時に前記フライホイールロータを閉じ込めるために少なくとも半径方向に前記フライホイールロータを包囲する実質的に円筒状のケーシング壁と、
を備えるフライホイールシステムであって、
-前記ケーシング壁は、前記フライホイールロータを包囲するケーシング壁の前記回転軸の横断面における円形状からの偏りを画定する少なくとも1つの内方突出バンパーを備え、前記少なくとも1つの内方突出バンパーは、前記ケーシング壁の一部に形成され、前記少なくとも1つの内方突出バンパーは、前記フライホイールロータが運転状態において回転するのに十分な空間をもたらし、前記ケーシング壁は、前記ケーシング壁の補強材を備え、前記ケーシング壁の前記補強材は、前記少なくとも1つの内方突出バンパーの位置に配置された支持材によって形成されていることを特徴する、フライホイールシステム。
【請求項2】
前記ケーシング壁は、少なくとも2つの内方突出バンパーを備えている、請求項1に記載のフライホイールシステム。
【請求項3】
前記内方突出バンパーは、前記ケーシング壁の周りに均一に分配されている、請求項2に記載のフライホイールシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの内方突出バンパーは、前記ケーシング壁の接線方向の不連続部によって画定されており、前記不連続部は、円形状部の接線方向の変化によって偏りを生じている、請求項1~3のいずれか1つに記載のフライホイールシステム。
【請求項5】
前記フライホイールロータの回転方向において、前記ケーシング壁は、前記フライホイールロータの半径よりも少なくともいくらか大きい半径を有する略円湾曲を有している、請求項1~4のいずれか1つに記載のフライホイールシステム。
【請求項6】
緊急時に前記フライホイールロータを減速させるために作動時に少なくとも前記フライホイールロータに作用するように構成されたブレーキをさらに備えている、請求項1~5のいずれか1つに記載のフライホイールシステム。
【請求項7】
前記ケーシング壁は、リング状又は円筒状壁又はディスク状基部のいずれかを備え、
前記ケーシング壁は、前記フライホイールロータが前記ケーシング壁に衝突した時に衝撃エネルギーを吸収するために、前記フライホイールロータに対して同心形態からある程度の遊びが生じるように締付けられている、請求項1~6のいずれか1つに記載のフライホイールシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのバンパーは、少なくとも1つの垂直プレートから構成されており、前記少なくとも1つの垂直プレートは、前記フライホイールロータの周りに境界線を描く包絡円形状部又は円筒形状部と並んで、前記ケーシング壁の円形状部に対する円区域に配置されている、請求項1~7のいずれか1つに記載のフライホイールシステム。
【請求項9】
前記ケーシング壁は、前記ケーシング壁の前記円形状に対する偏りと衝撃吸収バンパーとを画定する少なくとも1つの前プレートを備えている、請求項1~8のいずれか1つに記載のフライホイールシステム。
【請求項10】
前記前プレートは、前記フライホイールロータよりも軟らかく及び/又は前記フライホイールロータの融点よりも低い融点を有する材料から作製されている、請求項9に記載のフライホイールシステム。
【請求項11】
前記前プレートは、摩擦低減皮膜によって被覆されている、請求項9又は10に記載のフライホイールシステム。
【請求項12】
前記ケーシング壁は、プレートのアセンブリから構成された少なくとも1つのバンパーを備えている、請求項1~11のいずれか1つに記載のフライホイールシステム。
【請求項13】
前記アセンブリは、前記ケーシング壁に接続又は一体化された裏当てプレート、真鍮製前プレート、ガラス繊維層、及び基部プレートの少なくとも2つを含む、請求項12に記載のフライホイールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フライホイールシステムに関する。従来から、大型フライホイールシステムは、回転軸に配置されたリング状フライホイールロータと、災害時にフライホイールを閉じ込めるために少なくとも半径方向にフライホイールロータを包囲する実質的に円筒状のケーシングと、を備えている。本開示では、このケーシングが、回転軸、軸受及び/又は部品、及びフライホイールロータと共に組み込まれた構成部品の故障のような緊急時に、フライホイールロータを規制又は束縛することが意図されている。
【背景技術】
【0002】
従来、このようなケーシングは、円形壁を備えている。円形壁は、該円形壁によって画定された領域内にフライホイールロータを保持することが意図されている。例えば、部品破損のような緊急時に、フライホイールロータは、自転による回転を停止し、ケーシング壁を転がり始める。緊急時に、軸受又はロータアセンブリが破損した後、フライホイールロータは、ケーシング壁に接触し始め、これらの部品又は構成部品の1つ又は複数が破損した時、軸方向及び半径方向に自在に運動する可能性がある。
【0003】
もしロータがケーシング内において規制されずに運動したなら、ロータの回転は、ロータとケーシングとの間の摩擦によって転動に変換されるだろう。最初、遠心力及び摩擦力が緩慢に増大し、その後、予期されない形態で転動が制御されずに増大し、これによって生じる力が急激に大きくなる。ケーシング、更に具体的には、ケーシング壁へのこの急激又は迅速な転動速度及び付随する力の増大は、構造の全体(ロータ、ケーシング、基礎)への重負荷及び振動を与え、最終的に壊滅的破損をもたらすことになる。これに関連して、本開示は、例えば又は好ましくは、これに制限されるものではないが、少なくとも0.85m、好ましくは、少なくとも1m、更に好ましくは、少なくとも1.30mの半径方向における外径;少なくとも0.20m又は0.30m、好ましくは、少なくとも0.45m、更に好ましくは、少なくとも0.60mの軸方向における厚み;及び少なくとも2.5トン、好ましくは、少なくとも4トン、更に好ましくは、少なくとも5トンの重量を有するフライホイールロータに関することに留意されたい。このような寸法では、例えば、少なくとも600rpm、場合によっては、最大1800rpmの回転数において遊離したフライホイールが、補強されたケーシング壁に最初に衝突した時点で壊滅的影響を及ぼすことが明らかである。これらの寸法及びパラメータは、本開示が関連する大型フライホイールロータの単なる例にすぎないことに留意されたい。
【0004】
ここに引用する特許文献1は、フライホイールを包囲する内壁を有するケーシングを開示している。ケーシング内壁の内側に完全な円筒状ライナー及びエネルギーを吸収する拘束リブが設けられている。このライナー及びエネルギーを吸収する拘束リブによっていくらかの減衰がもたらすことが予期されるが、これらの対策は、ロータが遊離する災害時におけるロータの急激な回転上昇に対処するのに効果的ではない。また、ここに引用する特許文献2は、空気放出及び関連する空気流れガイドプレートを開示している。空気流れガイドプレートは、完全な円筒形状(円断面)からの偏りを画定している。しかし、この空気放出及び空気流れプレートは、災害の影響に対処するのに全く寄与しない。最後に引用する特許文献3は、水平軸を中心として回転するように直立して配置されたフライホイールを開示している。この場合、ケーシングは、設けられていない。このフライホイールでは、フライホイールが軸振れした場合に回転速度を低下させるブレーキがフライホイールの下に配置されている。
【0005】
論理的な解決策として、当業者は、ケーシングの更なる強化及び可能であれば、ブレーキングシステムの設置を考えるだろう。しかし、ケーシングの更なる強化は、意外にも遊離したフライホイールの及ぼす影響を悪化させることでしかない。何故なら、フライホイールは、自己加速する固有振動数に基づく回転モードに入り、制御されずに加速するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2004/025625号明細書
【文献】独国特許出願公開第2050108号明細書
【文献】独国特許出願公開第2049629号明細書
【発明の概要】
【0007】
本開示によれば、今日の当業者によって考えられることが予期される最も論理的な解決策と違って、本フライホイールシステムは、少なくとも半径方向においてフライホイールロータを包囲するケーシングが、フライホイールロータを包囲するケーシング壁の円断面形状(円筒形状)からの偏りを画定する少なくとも1つの内方突出バンパーを備える特徴を有している。ケーシング壁の非円形状の效果として、フライホイールロータの固有振動数又は自己加速状態への急激な上昇が中断され、急激又は迅速な加速が阻止されるか又は少なくとも実質的に低減され、これによって、自己加速の固有振動数モードへのフライホイールの壊滅的な移行時においてさえもフライホイールの制御が可能になる。また、更なる予期されない有益な效果又は利点として、遊離状態で回転しているフライホイールロータの揺動(回転軸の方向の変動)が減衰されることになる。
【0008】
災害時においてフライホイールを拘束するためのバンパーの設置は、当業者の通常の考えと全く異なっている。何故なら、当業者の考えでは、ケーシングへのフライホイールの衝撃は、通常、可能な限り阻止されるからである。全く対照的に、本開示では、災害時においてフライホイールが自然周波数又は固有周波数に基づく回転状態で回転するのに防ぐために、フライホイールが衝突するバンパーが意図的に設けられている。
【0009】
ここに開示される実施形態の範囲を規定する添付の請求項によれば、本開示は、概して多くの好ましい実施形態を含んでおり、それらのいくつかは、以下の実施形態の説明において記載されるが、それらのいくつかは、従属請求項において具体的に規定されることになる。
【0010】
好ましい実施形態では、本開示によるフライホイールシステムは、ケーシング壁が、少なくとも1つの内方突出バンパー、好ましくは、少なくとも2つのバンパー、更に好ましくは、少なくとも3つのバンパーを備える特徴を有している。このようなバンパーは、遊離したフライホイールロータをシステムの全体に壊滅的な影響を生じさせないように十分に阻止し得る円形ケーシング壁からの偏りの1つの特定されたものと考えることができる。
【0011】
加えて、フライホイールロータに対して意図的に衝突するフライホイールロータのための3つの点状のストッパ又はバッファを画定する3つのバンパーの構成は、フライホイールロータに極めて効果的な筐体をもたらすこと、及びもしフライホイールロータの直径が互いに隣接するバンパー間の直接的な周方向距離よりも大きいなら、ケーシング壁は、フライホイールロータが突起、ストッパ又はバッファの形態にあるバンパー間を通ることができるどのような部分も有しないことに留意されたい。
【0012】
例えば、突起、点状ストッパ、又は点状バッファによって形成された少なくとも2つ以上、好ましくは、少なくとも3つのバンパーを有する好ましい実施形態では、好ましくは、フライホイールシステムは、内方突出バンパーがケーシング壁上、特にその内周上に均一に分布されているという特徴を有している。その結果、ケーシング及びケーシング壁の周囲への衝撃力の均一な分布が達成されることになる。
【0013】
少なくとも1つのバンパーを有する任意の実施形態では、好ましくは、少なくとも1つのバンパーは、ケーシング壁の接線方向の不連続部によって画定されており、該不連続部は、円形状部の接線方向の変化によって偏りを生じている。これによって、遊離したフライホイールロータは、ケーシング内壁を転動している時に中心に向かって繰り返し押し出され、これによって、フライホイールロータのエネルギーを低下させ、接触衝撃力も迅速且つ効果的に低下させることになる。この效果は、前述したように、ケーシング壁の円形状又は円筒形状に対するいくらかの不連続性によって達成されるものである。
【0014】
少なくとも1つのバンパーを有する任意の実施形態では、好ましくは、少なくとも1つの内方突出バンパーは、ケーシング壁の隣接部分に対してフライホイールロータに向かって内方に突出している。
【0015】
少なくとも1つのバンパーを有する任意の実施形態では、好ましくは、フライホイールロータの回転方向において、(円筒状の)ケーシング壁は、フライホイールロータの半径よりも少なくともいくらか大きい半径を有する略円湾曲断面を有している。これによって、フライホイールは、わずかな距離にわたってケーシング内壁を転動し、この後、ケーシング内壁の円形状からの偏りによって画定されたバンパーによって中心に向かって押し出されることになる。
【0016】
任意の実施形態において、ケーシング壁の非円形特性が1つ又は複数の突起、ストッパ、及びバッファ、ケーシング内壁の楕円形状又は他の形状、等によって達成されているかどうかに関わらず、フライホイールシステムは、ケーシングがケーシング壁の補強材を備える特徴を追加的又は代替的に有している。ケーシング壁の非円形状のみが緊急時であってもフライホイールロータの制御の維持に大幅に寄与するが、内壁の周囲の適切な位置を補強することによって、内壁を比較的軽量なものとして具体化することができる。
【0017】
補強材は、少なくとも1つの内方突出バンパーの位置に支持材を備えているとよい。最も有効且つ効率的な補強材がこのように配置されるとよい理由は、突起、ストッパ、バッファ、等が遊離した状態にあるフライホイールによって衝突されるように設計されており、その結果、支持材によって最も効果的に補強されるからである。このような支持材は、他の箇所では省略されてもよいし、頑丈さがより劣る実施形態では、他の箇所に設けられてもよい。
【0018】
更に、本開示によるフライホイールシステムは、ブレーキの特徴を有している。ブレーキは、緊急時に作動されると、少なくともフライホイールロータに作用し、該フライホイールロータを減速させるように構成されている。このようなブレーキは、遊離した後のフライホイールロータの回転速度の減速に寄与するが、揺動に起因してわずかしか機能しない。この揺動の抑止は、一般的にはケーシング壁の非円形状又はその特性、好ましくは、軸方向に延在する突起、ストッパ、又はバッファによって達成されることになる。
【0019】
更に、本開示によるフライホイールシステムは、フライホイールロータに接続された駆動装置及び/又は発電装置の特徴を有している。
【0020】
更に、本開示のフライホイールシステムは、フライホイールがケーシング壁に衝突した時に衝撃エネルギーを吸収するために、フライホイールに対して同心形態からある程度の遊びが生じるように締付けられたリング状又は円筒状壁又はディスク状基部のいずれかを備える特徴と有している。これによって、本発明は、完全な円筒断面又は円断面のケーシング壁に対して少なくとも1つの内方突出バンパーを備えない(すなわち、バンパーのない)実施形態をもその権利内に含むと考えられる。
【0021】
本開示によるフライホイールシステムは、ケーシング壁がそれ自体円形(すなわち、円筒状)であり、ケーシング壁の円形状からの偏りを画定する少なくとも1つのバンパーを備える特徴を有している。
【0022】
更に、本開示によるフライホイールシステムは、バンパーが、少なくとも1つの垂直プレートから構成され、該少なくとも1つの垂直プレートは、フライホイールロータの周りに境界線を描く包絡円形状部又は円筒形状部と並んで、ケーシング壁の円形状部に対する円区域に配置される特徴を有している。
【0023】
更に、本開示によるフライホイールシステムは、ケーシング壁が、ケーシング壁の円形状に対する偏りと衝撃吸収バンパーとを画定する少なくとも1つの前プレートを備える特徴を有している。このような実施形態では、前プレートは、フライホイールよりも軟らかく及び/又はフライホイールの融点よりも低い融点を有する材料から作製されているとよい。前プレートを有する実施形態では、前プレートは、摩擦低減皮膜によって被覆されているとよい。
【0024】
更に、本開示によるフライホイールシステムは、ケーシング壁がプレートアセンブリから構成された少なくとも1つのバンパーを備える特徴を有している。このような実施形態では、このアセンブリは、ケーシング壁に接続又は一体化された裏当てプレート、真鍮製前プレート、ガラス繊維層、及び基部プレートの少なくとも2つを含むとよい。
【0025】
本開示によるフライホイールシステムの実施形態の多くの他の特徴は、好ましい実施形態の添付の図面が参照される以下の実施形態の説明から明らかになるだろう。なお、種々の実施形態における同様又は同一の要素、部品及び特徴部は、それらの機能が全ての実施形態において本質的に同じである限り、同じ参照番号によって呼称されるものとする。更に、図示且つ記載される実施形態は、本開示を実施するための考えられる方法の単なる例を提示するにすぎず、添付の請求項の保護の範囲は、代替例が記載又は図示されていなくても、以下の実施形態の説明における特徴のいずれかに制限されると解釈されるべきではない。添付の独立請求項の範囲のみが本開示の保護の範囲を決定し、本開示が出願される前であっても具体的に規定された特徴に対する予期しない代替例を含むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示による一実施形態によるフライホイールシステムの略斜視図である。
図1A.1B】正常な回転状態及びフライホイールロータが遊離してケーシングの内面を転動する状態における、2突起式フライホイールシステムの上面図である。
図2A.2B】正常な回転状態及びフライホイールロータが遊離してケーシングの内面を転動する状態における、3突起式フライホイールシステムの上面図である。
図3A.3B】正常な回転状態及びフライホイールロータが遊離してケーシングの内面を転動する状態における、4突起式フライホイールシステムの上面図である。
図4】ブレーキを備える実施形態の細部の側断面図である。
図5】0.5m/sの初期衝撃速度における回転速度に対するロータ変位を示すグラフである。
図6】2.8m/sの初期衝撃速度における回転速度に対するロータ変位を示すグラフである。
図7図1A,1Bの構成の代替例の概略図である。
図8】ケーシング壁の内面の非円形状が2つの位置ずれした円から構成され、位置ずれした円は、各々、フライホイールロータの直径よりも大きい直径を有している、更なる実施形態を誇張して示す図である。
図9】フライホイールシステムの更なる実施形態の斜視図である。
図10図9の矢印Xに沿った図である。
図11】任意のフライホイールシステム内における又は任意のフライホイールシステムのためのバンパーの例示的実施形態でを示す図である。
図12図11のバンパーの線XII-XIIに沿った側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、3突起式フライホイールシステム1の略斜視図である。フライホイールシステム1は、基部4及びケーシング壁5を備えるケーシング2と、ディスク状又はリング状フライホイールロータ3とを有している。フライホイールロータは、巨大であり、軸受又は回転軸7から遊離した時、巨大な力を生じ、凄まじい動力を解放することになる。なお、回転軸7は、フライホイールロータ3を(駆動装置/発電機6と呼ばれる)エネルギー貯蔵装置又はエネルギー回収発電機に接続するものである。
【0028】
図2A及び図2Bの実施形態は、突起の数に関して、図1の実施形態に最も密接に類似している。この実施形態では、突起を画定する3つのバンパー8が、フライホイールロータ3の周りに均等又は均一に分配されるように配置されている。フライホイールロータが図2Aの状態にある限り、何も問題が生じない。
【0029】
しかし、フライホイールロータ3は、図2Bにおけるように、遊離した時にケーシング壁5の内面に沿って転動し始め、場合によっては、揺動し始め、すなわち、図2A及び図2Bの図面の面に対して上下動し始めることもある。バンパー8は、突起、さらに一般的には、ケーシング壁5の円内面からの(本開示における意味の)偏りを画定している。フライホイール3がこのようなバンパ8に衝突するごとに、該フライホイールは、ケーシング壁の中心に向かって押し出され、その結果、芯出しされることになる。バンパー8は、システム1の回転軸7の軸方向に延在している。これによって、フライホイール3は、遊離した後に傾斜し始め、その結果として揺動した時、フライホイールロータ3の外面及び細長バンパー8の相対的な配向によって、フライホイールロータ3の平滑化がもたらされることになる。これによって、以下の状況、すなわち、フライホイールロータ3がその傾斜位置によってケーシング2に瞬間的に衝突し、これによって、ロータ3の極めて急激な停止が生じ、その結果、破断結果をもたらす状況を効果的に防ぐことができる。
【0030】
図1A及び図1Bは、図1A及び図1Bにおいてシステム9が突起を画定する2つのバンパー8を備えること以外は、図2A及び図2Bによる構成と本質的に同じ構成を有している。ここでも、バンパー8は、均一に分配されている。但し、図2A図2B図3A及び図3Bの構成に対して、他の分配も同様に考えられる。図3A及び図3Bも、システム10が4つのバンパー8を有することを除けば、本質的に同じである。
【0031】
図7は、図1A及び図1Bの実施形態といくらか異なる実施形態を誇張して示している。この実施形態は、突起が移行領域又は移行点13によって形成されている点において異なっている。移行点13において、ケーシング壁5の内面を形成する2つの円形状部14,15が交差している。この図は、ロータがこれらの円の1つの内側で回転することができ又は8字状軌道に沿って走行するように誇張されているが、この実施形態の特徴は、円形状部14,15が交差し、接線方向T1,T2における不連続な移行を画定する移行点における形状にある。
【0032】
図8は、内部に画定された突起に関する更に他の実施形態を示している。ここでは、本質的に三角形の旋回ブロック16が、ケーシング壁5の内面にヒンジ17によって配置されている。脚19が、旋回ブロック16をフライホイールロータ3に向かってあまり延び過ぎないように阻止している。バネ18又は他の撓み吸収要素が、旋回ブロック16の半径方向後方に設けられ、旋回ブロック16をフライホイールロータ3に向かって内方に押し込んでいる。フライホイールロータ3が遊離した状態にあり、ケーシング壁5の内面を転動する時、旋回ブロック16がバネ18の反力に対して押し出される。このバネ力は、フライホイール3をケーシングの中心に押し戻すことになる。また、このバネは、旋回ブロック16の撓みによってエネルギーを吸収し、これによって、迅速な減速に寄与することになる。
【0033】
図1A図1B図2A図2B図3A及び図3Bにおける各バンパー8は、フレーム12内に囲い込まれた傾斜支持部材11を備えている。特に、バンパーは、フライホイールロータがその軸受又は回転軸等から遊離した時にバンバーに加えられる力に耐えることができるように、傾斜支持部材11によって補強されるとよい。
【0034】
図4は、ブレーキ20に関する更なる特徴部を示している。ブレーキ20は、以下の2つの理由、すなわち、
-フライホイールロータ3の線速度は、フライホイールロータの周縁におけるよりもフライホイールロータの中心において低く、特に、1m以上の半径における1800rpm以下又は1800rpm超の高回転速度及び5トン以上の重量のフライホイールロータ3では、フライホイールロータ3の外径に位置するブレーキは、実際には設置の直後に焼損するという理由、及び
-細長体として実施される突起は、フライホイール3の揺動の抑制に驚くほど役立つが、このような揺動は、前述の理由から、フライホイールロータ3の外径において最も大きく、フライホイールロータの回転速度が低く且つフライホイールの直径が小さい場合に低くなるので、もしブレーキがフライホイール3の周辺に配置されたなら、該ブレーキの有効性が低下するという理由、
からフライホイールロータの中心の近くに配置されている。
【0035】
ブレーキは、概略的に示されるように、フライホイール3が二重矢印Aによって示されるように制御されずに回転し、ケーシング壁5の内面を転動し始めた後、該フライホイールディスク3の上面に力Fによって締付けられるディスクとして、構成されているとよい。代替的に、(図示されない)ブレーキ要素が、フライホイールロータ3が回転する軸22、ケーシング壁5の内面等から突出するようになっていてもよい
【0036】
図9及び図10は、フライホイール3の衝突時にエネルギーを吸収するために、ケーシング壁5又は基部4を制限された遊びが生じるように締め付けることができる方法を示している。直立材又はアンカー24が、(図示されない)地面又は基礎に係留される構造要素を構成している。直立材又はアンカー24は、ケーシング壁5又は基部4に沿って又はケーシング壁5又は基部4を通って延在している。図10の構成では、ケーシング壁5は、基部4上に配置されたリングの形態を有している。リング状壁5が基部4に固定されているか又は基部4に一体化されている実施形態では、基部4が(図示されない)地面、床、又は基礎に係留されるとよい。具体的には、直立材又はアンカー24は、図1及び図9に示される基部4の傾斜した端部内又は端部上に配置されてもよい。
【0037】
直立材又はアンカー24は、ケーシング壁5又は基部4、具体的には、ケーシング壁5又は基部4の孔26を貫通している。孔26は、直立材24の直径よりも大きい直径を有するように寸法決めされている。これによって、リング状ケーシング壁5又は基部4をその元の配置、すなわち、ケーシング壁5又は基部4がフライホイール3と同心関係にある配置から制限された距離だけ変位させることが可能になる。
【0038】
締付けブロック25が、ケーシング壁5又は基部4の下又は上に配置され、締付力Fをリング状ケーシング壁5又は基部4に加える。フライホイール3がその理由に関わらず遊離した時、該フライホイール3は、ケーシング壁5又は基部4に衝突する傾向にある。従って、ケーシング壁5又は基部4は、この時に直立材24の直径と孔26の直径との間の寸法差に対応するわずかな距離だけ位置ずれするように設計されている。その結果、締付けブロック25は、リング状ケーシング壁5又は基部4のこの変位を抑え、これによって、衝撃エネルギーをより迅速に吸収することになる。
【0039】
リング状壁5を有する実施形態では、下側の締付けブロック25は、基部4の上面によって形成されているとよい。上側の締付けブロック25は、ケーシング壁5又は基部4に所望の又は必要な締付/緩和力Fを生じさせるために、どのような要素又は部品に接続されてもよいし、又は直立材に取り付けられるか又は一体化されてもよい。
【0040】
図11及び図12は、ケーシング壁5の完全な円形状に対するその変形を画定するバンパー8の更に他の実施形態を示している。この実施形態におけるバンパー8は、裏当て材28を備えている。裏当て材28は、ケーシング壁5の一部を成すか又はケーシング壁5に剛性的に接続されている。裏当て材28は、真鍮又は銅製の前プレート31と、隔離用の中間ガラス繊維層30と、基部プレート29とのアセンブリの収容体を画定している。真鍮製の前プレートの特徴によって、該前プレートの材料は、その変形によっていくらかの衝撃エネルギーを吸収することが可能である。何故なら、真鍮は、比較的軟質の材料だからである。要素28~31の全てが垂直プレートであり、その結果、真鍮プレートの前面は、上面図において、ケーシング壁5の円形状の区域とこの円形状内に入り込んだ突起を画定している。これらのバンパー8は、協働して、フライホイール3が正常な運転状態において回転するのに十分な空間をもたらすようになっている。フライホイールは、遊離するとバンパーによって画定された制御された衝撃点に衝突し、これによって、エネルギーを消失し、減速することになる。
【0041】
代替的に、前プレート31は、鋳鉄から作製されていてもよい。いくつかの実施形態では、前プレート31の実際に選択された材料に応じて、隔離用の中間ガラス繊維層30及び基部プレート29が省略されてもよい。
【0042】
銅又は真鍮の代替材料も適切であることが分かっている。銅、真鍮、及び/又は鋳鉄が選択される目的は、その材料がフライホイール3よりも融点が低く及び/又は軟質であり、これによって、衝撃時にフライホイールが前プレート31を突き破らないことに関連している。
【0043】
前プレートは、隔離用の中間ガラス繊維層30及び基部プレート29を有するか又は有しない任意の実施形態において、衝撃時にバンパー8に対するフライホイール3の横滑りを促進するために、前プレートへの皮膜としての摩擦低減特性の付与を考慮して、テフロン(登録商標)、ナイロン、UHMWPE等のプラスチック又は任意の他の適切な材料からなる摩擦低減皮膜が施されていてもよい。
【0044】
本開示によるケーシングの内壁5の非円形状、特に制限されるものではないが、突起によるケーシングの内壁5の非円形状の有効性の実証として、図5及び図6は、0.5m/s及び2.8m/sの初期回転衝撃速度に対して、図4における矢印Aの方向におけるロータ変位に関する減衰を示している。明らかなことではあるが、フライホイールロータ3の半径方向変位の減衰は、秒単位で達成されている。これは、前述したようなフライホイールロータ3の巨大な寸法及びフライホイール3のかなり大きい回転速度を考慮すると、極めて驚くべきことである。
【0045】
本開示の全体としての範囲又は添付の請求項に規定された保護の範囲は、前述の実施形態の枠内において明示的に記載されたどのような特徴にも制限されるものではない。添付の請求項のみがこのような制限を与え、ブレーキが存在しない形態、図示されたブレーキの代替物、ケーシング壁の円形状から偏っているバンパーを画定するための突起又は突出物以外の特徴部、例えば、図7及び/又は図8に示される実施形態、すなわち、楕円形状のケーシング壁さえもより大きい楕円直径に対してより小さい直径のバンパーと見なされるものを備える実施形態、等を許容することになる。
図1
図1A.1B】
図2A.2B】
図3A.3B】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12